(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】多層圧延複合板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20240325BHJP
C22C 38/14 20060101ALI20240325BHJP
C22C 38/38 20060101ALI20240325BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20240325BHJP
C21D 9/00 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C22C38/00 301Z
C22C38/14
C22C38/38
C21D9/46 Z
C21D9/00 Z
C22C38/00 301R
C22C38/00 301W
C22C38/00 301A
(21)【出願番号】P 2022530327
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(86)【国際出願番号】 CN2020131388
(87)【国際公開番号】W WO2021104292
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】201911179893.X
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】302022474
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】薛 鵬
(72)【発明者】
【氏名】朱 暁 東
(72)【発明者】
【氏名】▲ヤン▼ 博
(72)【発明者】
【氏名】焦 四 海
【審査官】浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-293673(JP,A)
【文献】特開平07-090492(JP,A)
【文献】特開2010-132938(JP,A)
【文献】特開平02-095842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00~38/60
C21D 9/00~ 9/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの隣接する複合層の間に配置された遷移層を含む、上記の遷移層は、異方性の薄い鋼板であることを特徴とする多層圧延複合板
であって、
組立て前の異方性の薄い鋼板の配向度は、1.25≧AI≧1.05を満たし、
上記の異方性の薄い鋼板の各層の厚さは、多層圧延複合板の全厚の5%未満で、
上記の異方性の薄い鋼板の化学元素組成質量パーセントは、C:0.01-0.10%;Si:0.01-0.5%;Mn:0.5-2.5%;Al:0.01-0.06%;Ti:≦0.06%;Cr:≦0.50%;Mo:≦0.30%;残部はFeと不可避不純物で、
前記複合層は軟鋼、高強度鋼、マルテンサイト鋼または高析出強化鋼であって、
前記軟鋼の化学元素組成質量パーセントは、C:0.0005-0.003%;Si:0.001-0.01%;Mn:0.1-0.5%;Al:0.01-0.04%;Ti:≦0.06%;残部はFeと不可避不純物である、または、
前記軟鋼の化学元素組成質量パーセントは、C:0.01-0.04%;Si:0.01-0.05%;Mn:0.1-0.5%;Al:0.01-0.04%;残部はFeと不可避不純物であって、
前記高強度鋼の化学元素組成質量パーセントは、C:0.1-0.3%;Si:1.3-2.0%;Mn:1.5-3.0%;Al:0.01-0.05%;Ti:0.01-0.03%;Mo:≦0.3%;残部はFeと不可避不純物である、または、
前記高強度鋼の化学元素組成質量パーセントは、C:0.05-0.15%;Si:0.1-0.4%;Mn:1.5-3.0%;Al:0.01-0.05%;Ti:0.01-0.03%;Cr:0.4-0.6%;Mo:0.1-0.3%;残部はFeと不可避不純物であって、
前記マルテンサイト鋼の化学元素組成質量パーセントは、C:0.2-0.3%;Si:0.1-0.5%;Mn:1.0-1.6%;Al:0.01-0.25%;B:0.001-0.005%;Ti:≦0.05%;Cr:≦0.3%;Mo:≦0.2%;残部はFeと不可避不純物であって、
前記高析出強化鋼の化学元素組成質量パーセントは、C:0.03-0.08%;Si:0.1-0.4%;Mn:1.0-1.5%;Al:0.01-0.05%;Ti:0.05-0.12%;残部はFeと不可避不純物である、
多層圧延複合板。
【請求項2】
上記の異方性の薄い鋼板は、冷間圧延鋼板または熱間圧延酸洗鋼板であることを特徴とする請求項1に記載された多層圧延複合板。
【請求項3】
多層圧延複合版が1つまた
は複数の
遷移層を有することを特徴とする請求項1に記載された多層圧延複合板。
【請求項4】
上記の多層圧延複合複合板は、基材層、基材層の片側または両側に配置された遷移層、および遷移層の外側に配置された複合材料層を含む;ただし、基板層の厚さは、0.5~4.0mmであり、各の複合材料層の厚さは、0.05~0.4mmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載された多層圧延複合板。
【請求項5】
上記の多層圧延複合板の少なくとも1つの表面は、金属または非金属メッキ層を有することを特徴とする請求項1に記載された多層圧延複合板。
【請求項6】
上記の異方性の薄い鋼板の化学元素組成質量パーセントは、C:0.01-0.10%;Si:0.01-
0.4%;Mn:
1.0-2.3%;Al:
0.02-0.04%;Ti:≦
0.05%;Cr:≦0.50%;Mo:≦0.30%;残部はFeと不可避不純物であることを特徴とする請求項1に記載された多層圧延複合板。
【請求項7】
上記の多層圧延複合板は、基材層、遷移層、と複合材料層を含み、ただし、遷移層のC含有量は、基材層と複合材料層との間にあることを特徴とする請求項1に記載された多層圧延複合板。
【請求項8】
以下のステップを含むことを特徴とする請求項1-
7のいずれか一つに記載された多層圧延複合板の製造方法:
(1)隣接する複合層の間に遷移層を設定して、ビレットの組み立を行い、各層間を真空にする;
(2)複合圧延:ビレットを1100-1260℃まで加熱し、0.5時間以上保温し、Ar3以上の温度で熱間圧延し、最終圧延温度を超820℃に制御し、圧延後30~100℃/sの速度で冷却してから巻取りを行い、巻取り温度を20~750℃に制御する。
【請求項9】
さらにステップ(3)の冷間圧延を含むことを特徴とする請求項
8に記載された製造方法。
【請求項10】
さらにステップ(4)の焼鈍:均熱温度は700~880℃であり、その後、3~20℃/秒の速度で600~780℃の急速冷却開始温度に冷却され、その後、20-1000℃/sの速度で150-550℃に冷却することを含むことを特徴とする請求項
9に記載された製造方法。
【請求項11】
さらにステップ(5)の焼戻し:焼戻し温度は150~550℃であり、焼戻し時間は100~400秒であることを特徴とする請求項1
0に記載された製造方法。
【請求項12】
さらに平坦化ステップを含むことを特徴とする請求項
8~1
1のいずれか一つに記載された製造方法。
【請求項13】
上記の異方性の薄い鋼板の各層の厚さは、0.5-10.0m
mであることを特徴とする請求項1に記載された多層圧延複合板。
【請求項14】
上記の異方性の薄い鋼板の各層の厚さは、1-3mmであることを特徴とする請求項13に記載された多層圧延複合板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼板及びその製造方法に関し、特に圧延複合板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延複合とは、2枚又は以上のきれいな金属板を互いに接触し、高温大変形で圧延により発生するせん断力によって金属接触面の表面層を破壊し、新鮮な金属を押し出し、外力の作用下で界面での冶金学的結合を実現する特殊な圧延方法を指し、複合板を製造するための一般的な方法であり、そのプロセスも成熟して安定する。
【0003】
多層金属圧延複合板は、2つ以上の金属を、熱間圧延複合によって接続することで形成され、コストを削減するだけでなく、単一成分の金属にはない物理的および化学的特性を得ることができる。例えば、強度の高い金属と靭性の高い金属を複合すると、材料の強度と靭性が統一され、さまざまなエンジニアリング構造部品の製造に使用できる。
【0004】
生産環境の影響や生産設備の能力制限により、複合板の接合界面では、酸化物や接合を妨げる欠陥などの問題が発生しやすく、熱間圧延複合の過程では、元素の拡散も発生しやすく、深刻な場合には、基材と複合材料の各の特性にも影響を及ぼす。たとえば、基材としての22MnB5と複合材料としてのIF鋼を複合してなる複合板には、22MnB5が強度の基礎を提供し、IF鋼が表面成形性を向上させるが、複合する際に、Cの厳重な拡散は、22MnB5層の強度の低下およびIF鋼層の靭性の低下をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の1つは、多層圧延複合板を提供することであり、当該多層圧延複合板は、組成やプロセスに応じて大幅に変更でき、100MPaから1700MPaまでのさまざまな強度レベルを達成でき、鋼板全体にさまざまな特定の機械的特性の基礎を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、2つの隣接する複合層の間に配置された遷移層を含む多層圧延複合板を提案し、ただし、遷移層は、異方性の薄い鋼板である。
【0007】
本発明の技術的解決策において、異方性の薄い鋼板は、他の複合板の各層の成分が互いに拡散することを妨げる役割を果たすことができる。さらに、異方性の薄い鋼板は、複合板の各層の間の結合強度を高める役割を果たすことができる。
【0008】
さらに、本発明の多層圧延複合板において、異方性の薄い鋼板は、冷間圧延鋼板または熱間圧延酸洗鋼板である。
【0009】
上記の解決策では、異方性薄鋼板の配向度は、冷間圧延の圧下率、焼鈍温度、または熱間圧延最終圧延温度を制御することによって制御することができる。
【0010】
また、本発明の多層圧延複合板において、ビレットの組み立
【0011】
前の異方性薄鋼板の配向度は、1.25≧AI≧1.05を満たす。
本発明の技術的解決策において、異方性の薄い鋼板の配向度が高い場合、結晶粒内の欠陥密度が増加し、オーステナイト再結晶および結晶粒成長速度が増加し、鋼板に垂直な方向の再結晶駆動力は、鋼板に平行な方向の鋼板の駆動力よりも大きいので、熱間圧延鋼板の加熱・均熱過程では、鋼板の配向度が高いことは、遷移層としての異方性薄鋼板が、ビレットの組み立て中に母材の表面の酸化膜を溶解し、複合板の他の層と急速に冶金学的に結合することに寄与する。配向度が大きすぎることを考慮すると、複合層内の異方性の薄い鋼板の成分の拡散率が高くなり、層間の成分の拡散を制御することは困難であり、これに基づいて、組立て前の異方性の薄い鋼板の配向度は、1.25≧AI≧1.05を満たすように制御される。
【0012】
また、本発明の多層圧延複合板では、遷移層は1つまた以上の層を有する。
また、本発明の多層圧延複合板では、異方性の薄い鋼板の各層の厚さは、多層圧延複合板の全厚の5%未満、好ましくは全厚の1%未満である。
【0013】
また、本発明の多層圧延複合板では、圧延前の異方性の薄い鋼板の各層の厚さは、0.5~10.0mmである。
【0014】
また、本発明の多層圧延複合板では、圧延前の異方性の薄い鋼板の各層の厚さは、1~3mmである。
【0015】
また、本発明の多層圧延複合板では、圧延前の異方性の薄い鋼板の各層の厚さは、同じでも異なってもよい。
【0016】
また、本発明の多層圧延複合板のいくつかの実施形態では、異方性の薄い鋼板の化学元素組成質量パーセントは、C:0.01-0.10%;Si:0.01-0.5%;Mn:0.5-2.5%;Al:0.01-0.06%;Ti:≦0.06%;Cr:≦0.50%;Mo:≦0.30%;残部はFeと不可避不純物である。好ましくは、異方性の薄い鋼板の化学元素組成質量パーセントは、C:0.01-0.10%;Si:0.01-0.4%;Mn:1.0-2.3%;Al:0.02-0.04%;Ti:≦0.05%;Cr:≦0.50%;Mo:≦0.30%;残部はFeと不可避不純物である。
【0017】
本発明の多層圧延複合板は、基材層、基材層の片側または両側に配置された遷移層、および遷移層の外側に配置された複合材料層を含む。最終製品では、基板層の厚さは、通常、0.5~4.0mm、例えば1.50~2.0mmの範囲にある。複合材料層は、基材層と複合するのに使用される鋼板であり、各複合材料層の厚さは同じでも異なっていてもよく、最終製品では、各の複合材料層の厚さは、通常、0.05~0.4mm、例えば0.15~0.25mmの範囲にある。本発明の例示的な多層圧延複合板の構造は、複合材料層-遷移層-基材層、複合材料層-遷移層-基材層-遷移層-複合材料層である。
【0018】
基板層は、当技術分野でよく知られている様々な鋼であっても良く、マルテンサイト鋼、軟鋼、高強度鋼、高析出強化鋼などを含むが、これらに限定されない。複合材料層は、当技術分野でよく知られている様々な鋼であっても良く、軟鋼、高強度鋼、マルテンサイト鋼などを含むが、これらに限定されない。例示的なマルテンサイト鋼の化学元素組成質量パーセントは、C:0.2-0.3%;Si:0.1-0.5%;Mn:1.0-1.6%;Al:0.01-0.25%;B:0.001-0.005%;Ti:≦0.05%;Cr:≦0.3%;Mo:≦0.2%;残部はFeと不可避不純物である。例示的な軟鋼の化学元素組成質量パーセントは、C:0.0005-0.003%;Si:0.001-0.01%;Mn:0.1-0.5%;Al:0.01-0.04%;Ti:≦0.06%;残部はFeと不可避不純物である;いくつかの実施形態において、軟鋼の化学元素組成質量パーセントは、C:0.01-0.04%;Si:0.01-0.05%;Mn:0.1-0.5%;Al:0.01-0.04%;残部はFeと不可避不純物である。例示的な高強度鋼の化学元素組成質量パーセントは、C:0.1-0.3%;Si:1.3-2.0%;Mn:1.5-3.0%;Al:0.01-0.05%;Ti:0.01-0.03%;Mo:≦0.3%;残部はFeと不可避不純物である;いくつかの実施形態において、高強度鋼の化学元素組成質量パーセントは、C:0.05-0.15%;Si:0.1-0.4%;Mn:1.5-3.0%;Al:0.01-0.05%;Ti:0.01-0.03%;Cr:0.4-0.6%;Mo:0.1-0.3%;残部はFeと不可避不純物である。例示的な高析出強化鋼の化学元素組成質量パーセントは、C:0.03-0.08%;Si:0.1-0.4%;Mn:1.0-1.5%;Al:0.01-0.05%;Ti:0.05-0.12%;残部はFeと不可避不純物である。
【0019】
好ましくは、遷移層のC含有量は、基材層と複合材料層との間にある。
また、本発明の多層圧延複合板において、多層圧延複合板の少なくとも1つの表面は、金属または非金属メッキ層を有する。
【0020】
もちろん、他のいくつかの実施形態において、多層圧延複合板の表面は、メッキ層を有していなくてもよい。
【0021】
したがって、本発明の別の目的は、多層圧延複合板の製造方法を提供することであり、ただし、この製造方法により、多層圧延複合板を得ることができる。
【0022】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下のステップを含む、上記の多層圧延複合板の製造方法を提案する:
(1)隣接する複合層の間に遷移層を設定して、ビレットの組み立を行い、各層間を真空にする;
(2)複合圧延:ビレットを1100-1260℃まで加熱し、0.5時間以上、好ましく0.6時間以上保温し、最終圧延温度を超820℃に制御し、圧延後30~100℃/sの速度で冷却してから巻取りを行い、巻取り温度を20~750℃に制御する。
【0023】
また、本発明の製造方法において、ステップ(3)の冷間圧延も含まれる。いくつかの実施形態において、冷間圧延の変形量≧40%である。
【0024】
また、本発明の製造方法においては、ステップ(4)の焼鈍も含まれる:均熱温度は700~880℃であり、その後、3~20℃/秒の速度で600~780℃、好ましくは600~770℃の急速冷却開始温度に冷却され、その後、20-1000℃/s、好ましくは40-1000℃/sの速度で150-550℃に冷却する。
【0025】
また、本発明の製造方法においては、ステップ(5)の焼戻しも含まれる。焼戻し温度は150~550℃であり、焼戻し時間は100~400秒である。
【0026】
また、本発明の製造方法において、平坦化ステップも含まれる。
【発明の効果】
【0027】
従来技術と比較して、本発明の多層圧延複合板は、以下の利点および有益な効果を有する:
本発明の多層圧延複合板は、組成やプロセスに応じて大幅に変更でき、100MPaから1700MPaまでのさまざまな強度レベルを達成でき、鋼板全体にさまざまな特定の機械的特性の基礎を提供する。
【0028】
また、本発明の製造方法も、上記の利点と有益な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図3】比較例1の比較複合板の微細構造の金属組織図である。
【
図4】実施例1の多層圧延複合板の微細構造の金属組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、明細書図面の説明および具体的な実施例に基づいて、本発明の多層圧延複合板及びその製造方法をさらに解釈・説明するが、該解釈・説明は本発明の技術方案を不当に制限するものではない。
【0031】
実施例1~6及び比較例1
実施例1~6の多層圧延複合板は、以下のステップによって得られる:
(1)隣接する複合層の間に遷移層を設定して、ビレットの組み立を行い、各層間を真空にして、ただし、各層のビレットの質量パーセントを表1に示す。本願には、複合層は、基材層と複合材料層とを含む。
【0032】
(2)複合圧延:ビレットを1100-1260℃まで加熱し、0.5時間以上、好ましく0.6時間以上保温し、最終圧延温度を超820℃に制御し、圧延後30~100℃/sの速度で冷却してから巻取りを行い、巻取り温度を20~750℃に制御する。
【0033】
いくつの実施形態において、ステップ(3)の冷間圧延も含まれる。
他の実施形態において、ステップ(4)の焼鈍も含まれる:均熱温度は700~880℃であり、その後、3~20℃/秒の速度で600~780℃、好ましくは600~770℃の急速冷却開始温度に冷却され、その後、20-1000℃/s、好ましくは40-1000℃/sの速度で150-550℃に冷却する。
【0034】
他の実施形態において、ステップ(5)の焼戻しも含まれる。焼戻し温度は150~550℃であり、焼戻し時間は100~400秒である。
【0035】
さらに好ましい実施形態において、平坦化ステップも含まれる。
表1に、実施例1~6の多層圧延複合板と比較実施例1の比較複合板の各化学元素の質量パーセントを示した。
【0036】
【0037】
表2は、実施例1~6の多層圧延複合板および比較実施例1の比較複合板の特定のプロセスパラメータをリストした。
【0038】
【0039】
表3に、実施例1~6の複合鋼板の関連する性能パラメータと複合後の利点を示した。
【0040】
【0041】
図1は、比較例1の比較複合板の構造を示す。
図2は、実施例1の多層圧延複合板の構造を示す。
【0042】
図1および
図2を参照すると、3層構造(基材層2と、基材層2に複合された二層の複合材料層1を含む)しかない比較例1の比較複合板と比較して、本願の実施例1の多層圧延複合板、複合材料層1と基材層2との間に、遷移層3を有し、遷移層3は異方性の薄い鋼板である。
【0043】
いくつかの他の実施形態では、遷移層3は、また、複数の層を有しても良い。
遷移層3の異方性の薄い鋼板は、冷間圧延鋼板または熱間圧延酸洗鋼板であり、組立て前の異方性の薄い鋼板の配向度は、1.25≧AI≧1.05を満たすように制御され、異方性の薄い鋼板の各層の厚さは、多層圧延複合板の全厚の5%未満である。
【0044】
他のいくつかの実施形態において、多層圧延複合板の少なくとも1つの表面は、金属または非金属メッキ層を有する。
【0045】
図3は、比較例1の比較複合板の微細構造の金属組織図である。
図4は、実施例1の多層圧延複合板の微細構造の金属組織図である。
【0046】
図3および
図4を参照すると、複合材料層1と基材層2との間のC拡散は、以下の理由により、比較例1の比較複合板と比較して、実施例1の多層圧延複合板には、著しく改善される:C含有量は強度に重要な役割を果たし、C原子の拡散は格子間拡散に属し、拡散速度が大きい、特に、複合界面の両側に大きな炭素電位差がある場合、C原子は拡散しやすく、深刻な場合には、基板層2と複合材料層1の各の特性にも影響を及ぼす;重度のC拡散は、基板層の強度と複合材料層の靭性を低下する;基材層2と複合材料層1との間にC含有量を有する異方性の薄い鋼板を、遷移層3として選択することにより、複合界面の両側の炭素電位差を効果的に低減し、Cの拡散を大幅に遅くすることができる。
【0047】
遷移層3の厚さは比較的薄くなければならなく、その理由としては、遷移層3の厚さが厚い場合、圧延および複合後の結合強度は、遷移層3の材料の強度に依存し、遷移層3が低いと、金属複合板の接着性能が低下する。遷移層3の厚さが薄すぎると、元素の拡散を防ぐという目的を達成することができない。
【0048】
図4から、本願の実施例1の複合界面は、より良好な結合性能を有することが分かる。
つまり、本発明の多層圧延複合板は、組成やプロセスに応じて大幅に変更でき、100MPaから1700MPaまでのさまざまな強度レベルを達成でき、鋼板全体にさまざまな特定の機械的特性の基礎を提供する。
【0049】
また、本発明の製造方法も、上記の利点と有益な効果を有する。
本発明の保護の範囲における従来技術部分は、本出願書類に記載の実施例に限定されるものではなく、本発明の方案と矛盾しない先行技術(先行の特許文献、先行の公開出版物、先行の公開使用などを含むが、それらに限定されない)は、全て本発明の保護の範囲に取り入れられることを説明すべきである。
【0050】
また、本願における各技術特徴の組み合わせは、本願の特許請求の範囲に記載の組み合わせ、若しくは具体的な実施例に記載の組み合わせに限定されるものではなく、互いに矛盾していない限り、本願の記載の技術特徴は全て任意の形態で自由に組み合わせる若しくは結合することができる。
【0051】
さらに、以上に挙げられた実施例は、本発明の具体的な実施例に過ぎないことも、注意すべきである。本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、当業者が本発明の開示内容から直接的に導き出すことができる、又は容易に想到することができる類似の変化若しくは変形はいずれも、本発明の保護範囲に含まれることは、明らかである。