(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】引出しの蓋、ならびに引出し内室を監視する方法
(51)【国際特許分類】
F25D 23/00 20060101AFI20240325BHJP
A47B 88/919 20170101ALI20240325BHJP
F25D 25/00 20060101ALI20240325BHJP
A47B 77/16 20060101ALN20240325BHJP
A47B 81/00 20060101ALN20240325BHJP
A47B 71/00 20060101ALN20240325BHJP
【FI】
F25D23/00 302A
A47B88/919
F25D25/00 E
F25D23/00 302L
A47B77/16
A47B81/00 F
A47B71/00 Z
(21)【出願番号】P 2022534822
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(86)【国際出願番号】 EP2020084738
(87)【国際公開番号】W WO2021115975
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-01
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Julius Blum GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1, 6973 Hoechst, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ベアチー
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/141574(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/186132(WO,A1)
【文献】特公昭54-002784(JP,B1)
【文献】特開平07-322411(JP,A)
【文献】実開平04-049276(JP,U)
【文献】特開2011-252613(JP,A)
【文献】国際公開第2007/023443(WO,A2)
【文献】欧州特許出願公開第00368839(EP,A1)
【文献】特表2017-508125(JP,A)
【文献】特開2000-258016(JP,A)
【文献】特開2009-039000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/00
F25D 25/00
F25D 17/04
A23L 3/3418
B65D 81/20
A47B 71/00,77/16
A47B 81/00,88/919
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空引出し装置(0)の引出し(3)の引出し内室(R)を、前記引出し(3)上に蓋(2)が気密に閉鎖されて支持されている間に監視する方法であって、前記蓋(2)は、制御装置と、前記制御装置によって自動化されて作動させられる電気的な排気手段および
除湿手段とに作用接続しており、
前記排気手段は、ポンプ(11’)を含み、前記蓋(2)内の、前記制御装置に作用接続している少なくとも1つの弁(80’)の開放状態で、前記ポンプ(11’)によって、前記蓋(2)内の少なくとも1つの排気通路(83’)を介した前記引出し内室(R)の排気が実施され、
前記除湿手段は、少なくとも1つの送風機(81’)を含み、前記少なくとも1つの弁(80’)の開放状態で、前記少なくとも1つの送風機(81’)によって、前記引出し内室(R)からの少なくとも1つの除湿通路(87’)を通った空気の排出が実施され、
前記方法は、
-前記蓋(2)
内の
前記少なくとも1つの除湿通路(87’)の延在において配置された少なくとも1つの湿度センサ(82’)によって、相対的な空気湿度を周期的に測定するステップと、
-測定された前記相対的な空気湿度を上限値と比較するステップ
と、
-
測定された前記相対的な空気湿度が前記上限値を超過すると、前記少なくとも1つの弁(80’)を開放し、前記蓋(2)内の切欠き(A)内にまたは前記少なくとも1つの除湿通路(87’)の延在内に配置された
前記少なくとも1つの送風機(81’)を始動させるステップであって、この際に、前記少なくとも1つの湿度センサ(82’)によって測定される前記相対的な空気湿度が下限値に達するまで、少なくとも1つの空気流入開口(86’)から新鮮な空気を吸い込み、循環させ、次いで再び前記少なくとも1つの除湿通路(87’)と、前記除湿通路に連通された前記引出し内室(R)とから排出するステップと、
-前記下限値で、前記少なくとも1つの弁(80’)を閉じ、前記少なくとも1つの送風機(81’)を停止させ、次いで再び前記制御装置を湿度監視モードに切替えるステップと、
を有する監視する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの弁(80’)の閉鎖後、前記排気手段を始動させ、前記引出し内室(R)を所望の負圧にもたらし、所望の負圧に到達後、前記制御装置が前記排気手段も停止させる、請求項1記載の監視する方法。
【請求項3】
真空引出し装置(0)の引出し(3)上に載置するための蓋(2)であって、昇降手段(7)を有しており、前記蓋(2)は、
前記引出し(3)に対して引出し内室(R)を密封することができ、前記蓋(2)と前記昇降手段(7)とは、制御装置に作用接続しており、
前記蓋(2)内には
、前記制御装置に作用接続している少なくとも1つの制御可能な弁(80’)
、ポンプ(11’)および
少なくとも1つの送風機(81’)、ならびに空気流出開口(85’)、空気流入開口(86’)、
少なくとも1つの排気通路(83’)、および
少なくとも1つの除湿通路(87’)
が設けられており、これにより時間的な間隔をおいて、前記蓋(2)および前記引出し内室(R)の外側から新鮮な空気が導入可能であり、循環可能であり、さらに
、前記ポンプ(11’)および前記少なくとも1つの弁(80’)によって制御されて、前記少なくとも1つの排気通路(83’)を介した前記引出し内室(R)の排気が実施可能であり、かつ、前記少なくとも1つの送風機(81’)および前記
少なくとも1つの弁(80’)によって制御されて前記引出し内室(R)から再び排出可能であることを特徴とする、
蓋(2)。
【請求項4】
少なくとも1つの湿度センサ(82’)
が設けられており、前記湿度センサは前記制御装置に作用接続されており、前記引出し内室(R)もしくは前記
少なくとも1つの除湿通路(87’)もしくは前記
少なくとも1つの送風機(81’)の場所における相対的な空気湿度の制御された測定および監視を可能にする、請求項3記載の蓋(2)。
【請求項5】
前記
少なくとも1つの弁(80’)は、サンドイッチ構造形式で構成された前記蓋(2)のコア層(21’)における1つ以上の切欠き(A)内に配置されている、請求項3または4記載の蓋(2)。
【請求項6】
前記
少なくとも1つの弁(80’)は、ベース成形体(45’)に対して相対的に線形に移動可能な可変の成形体(46’)と、前記ベース成形体(45’)と可変の成形体(46’)とに設けられた必要な開口とを含む線形弁として配置されており、これにより両成形体の相対位置に応じて異なる開口が互いに開放または閉鎖される、請求項3から5までのいずれか1項記載の蓋(2)。
【請求項7】
前記ベース成形体(45’)に対して相対的な前記可変の成形体(46’)の各位置を検出するためのスライドポテンショメータ(47’)が前記
少なくとも1つの弁(80’)に配置されており、前記スライドポテンショメータは前記制御装置に作用接続している、請求項6記載の蓋(2)。
【請求項8】
前記可変の成形体(46’)は、モータホルダ(42’)を介して前記ベース成形体(45’)に取り付けられた伝動モータ(41’)によって、軸カップリング(43’)とスピンドル(44’)とを介して操作可能である、請求項6または7記載の蓋(2)。
【請求項9】
前記制御装置は、制御ボード(101’)として、前記蓋(2)内に
形成されて配置されている、請求項3から8までのいずれか1項記載の蓋(2)。
【請求項10】
前記制御装置は、サンドイッチ構造形式で構成された前記蓋(2)のコア層(21’)における1つ以上の切欠き(A)内に形成されて配置されている、請求項9記載の蓋(2)。
【請求項11】
少なくとも1つの光源(36’)が機械的に、前記蓋(2)の表面にまたは前記蓋(2)内に配置されていて、前記制御装置に電気的に接続されており、前記光源は、前記制御装置によって制御されて、460nm(±10nm)の波長の青色光を、前記引出し(3)内の前記引出し内室(R)に、もしくはコンテナ(14)の内室内に放射する、請求項3から
10までのいずれか1項記載の蓋(2)。
【請求項12】
真空引出し装置(0)であって、押込み運動方向(S)で線形に可動の引出し(3)を含み、前記引出しは、少なくとも1つの引出し内室(R)と、制御装置と、請求項3から
11までのいずれか1項記載の蓋(2)とを有する、真空引出し装置(0)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空引出し装置の引出し上に載置するための蓋であって、昇降手段を有しており、蓋は、蓋内の適切な手段によって、引出しに対して引出し内室を密封することができ、蓋と昇降手段とは、制御装置に作用接続している蓋、ならびに真空引出し装置の引出しの引出し内室を、引出し上に蓋が気密に閉鎖されて支持されている間に監視する方法であって、蓋は、制御装置と、制御装置によって自動化されて作動させられる電気的な排気手段および/または除湿手段とに作用接続している、監視する方法を記載している。
【0002】
先行技術
食品を貯蔵するための冷蔵庫は、庫内を継続的に強力に冷やすために常に多くの電気エネルギを必要とするので、いくつかの欠点を有している。冷蔵庫の庫内気候については、これまであまり注目されていなかった。「Hygiene Report 2010」という国際調査を実施したHygiene Councilの調査によれば、冷蔵庫は、1平方センチメートルあたり約100個の病原体で汚染されているトイレよりも多い、1平方センチメートルあたり約11400000個の病原体で汚染されている。この2010年の報告書は、メディアの大きな反響を呼んだが、冷蔵庫をより頻繁にクリーニングすることが推奨されたことの他には、今のところ実感できる改善は行われていない。
【0003】
独国特許出願公開第202017006169号明細書において初めて、引出しおよび蓋を備えた真空引出し装置が一般に開示され、この装置では、ポンプによって引出し内室内に負圧を形成することができた。真空引出し装置は、複数の壁と1つの引出し内室とを備えた引出しを含んでおり、引出しは、蓋に作用接続可能であり、引出し本体内側で線形に可動に支持されている。しかし、引出し、蓋、場合によっては昇降手段および排気手段に関するよりより正確な詳細は、独国特許出願公開第202017006169号明細書において十分に開示されていない。
【0004】
最も近い先行技術は、本出願人の国際公開第2019/141574号である。必ずしも冷やしたくない食品を真空引出し装置内において常温で貯蔵することができ、この場合、冷却のための高いエネルギ消費は不要である。
【0005】
引出し内室は、大気圧より低い軽度の負圧にまで排気され、この負圧は制御されて発生させられかつ維持される。これにより食品を簡単により長期にわたって可食に、または賞味可能に保持することができる。内室内の酸素脱気は数分後に終了し、その後はほとんど電気を必要としないので、真空引出し装置を備えた引出し本体における貯蔵に必要なエネルギは、冷蔵庫よりも少ない。真空引出し装置は、冷媒または断熱材のような有害な材料なしに実現される。真空機器による公知の真空化におけるプラスチックバッグの消費量を著しく減じることができ、食品をより長期にわたって問題なく貯蔵することができる。真空引出し装置によって食品をより簡単に、かつより環境に優しく、よりエネルギ効率よく貯蔵することができる。このことは、食品の品質および消費者の健康に良い影響を与える。食品の品質をより長期に保つことができるので、破棄される食品もより減じられ、しばしば批判される「フードロス」、つまり食品の無駄を抑えることができる。
【0006】
引出し本体は外側ケースを形成しており、このケース内で蓋と引出しとが保護されて可動に支持されている。制御装置を介して電気的に作動可能な昇降手段および排気手段は、蓋または引出し内に配置されているので、排気は、蓋が引出し上に載置されている場合に、制御されて可能にされている。空気通路を通して、空気が引出し内室から送出可能である。センサが配置されている場合は、排気を自動化して行うことができ、引出しを開ける前の給気も検知し、制御装置により排気を自動的に開始することができる。
【0007】
国際公開第2019/141574号では、簡単に既存に引出しに組み付けることができる可能な限りコンパクトな蓋が多層に形成されて設けられている。蓋の構成高さを低く保つために、昇降手段と排気手段とは可能な限り蓋内に組み込まれている。
【0008】
実際に、このような真空引出し装置内に貯蔵される食品は、負圧もしくは軽度の真空により部分的には著しくガスを放出することがわかっている。各食品に帰属させることができる水分活性により、様々な多数の湿分/水が、食品から、食品の表面へと拡散し、液体もしくは水蒸気としてその表面に到り、もしくはその表面から流出する。数時間後には、その間に引出し内室もしくはコンテナ内室を排気手段によってポンプ式に排気しても、食品の表面には液膜が形成される。このような湿った食品表面には比較的早く菌が発生する、または表面が汚く変色するので、例えばパンや開封済みバルクシリアルをこのような真空引出し装置内に継続的に貯蔵すると、開かれたパン用ケースに貯蔵した場合よりも早く腐敗することがある。しかし、ユーザの希望は、できるだけ食品を事前に仕分けすることなく、冷蔵貯蔵しないすべての食品を、このような真空引出し装置内に貯蔵することである。
【0009】
発明の開示
本発明の課題は、食品表面の変色がほぼ防止され、食品表面上の菌の発生が自動的に阻止される、真空引出し装置の蓋、引出しと、昇降手段と、排気手段と、このような蓋とを含む真空引出し装置、ならびに引出し内室を監視する方法を提供することである。
【0010】
この課題は、請求項1による引出し内室を監視する方法、請求項3による蓋、および請求項11による真空引出し装置によって解決される。
【0011】
蓋の内側に配置されている除湿手段の他に、オプションとして青色可視光によって引出し内室もしくはコンテナ内室の照射が行われ、これにより食品上の湿分層が阻止されるほか、付加的にカビの形成が放射により阻止される。
【0012】
排気とは、この場合、引出し内室内もしくは引出し内のコンテナの内室内に形成可能な、大気圧よりも150mbar以上低い軽度の負圧、つまり850mbar未満の絶対圧であると理解される。
【0013】
本発明の対象の好ましい実施例を以下に添付された図面に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】引出しの開放状態で、引出し本体内の真空引出し装置を示す斜視図である。
【
図2】引出しもしくは真空引出し装置の閉鎖状態で、引出し本体内の
図1の真空引出し装置を示す概略的な部分図である。
【
図3】引出し上に配置された状態で蓋を示す平面図であり、この図には、組み込まれた構成部品、切欠き、および通路が示されている。
【
図4】破線で示された蓋における、蓋の、引出し本体に面した側から、制御可能な弁を見た斜視図である。
【
図5】完成したシール手段および照明手段と共に、引出し本体に面した、蓋の下面を示す平面図である。
【0015】
説明
真空引出し装置0が、ここでは全体を符号0で示されていて、引出し内室Rを有する引出し3と、昇降手段7によって昇降方向Hで相対運動可能な蓋2とを備えている。引出し3は、壁30と引出し内室Rとを含み、押込み運動方向(Schubbewegungsrichtung)Sで開閉運動可能に支持されており、排気可能に形成されている。引出し3は、蓋2に作用接続可能であり、引出し本体9内で、押込み運動方向Sで線形に可動に支持されている。引出し本体9は、外側ケースを形成しており、このケース内に、蓋2と引出し3とが保護されて可動に支持されている。引出し3は、詳しくは説明されていない引出し用引出し装置内に線形に可動に支持されているので、引出し3を開放位置および閉鎖位置にもたらすことができ、
図1では引出し3の開放位置が示されている。
【0016】
排気可能な引出し内室Rは、複数のコンテナ14から成っており、コンテナ14は、引出し3の内側で位置決めされて配置されていて、それぞれ同じ高さを有しているが、様々なサイズを有している。引出し内室Rと共に、コンテナ14の内室も排気することができる。好ましくは、コンテナ14は、ガストロノームコンテナとして形成されていて、その内室は、蓋2によって閉鎖可能かつ排気可能な引出し内室R全体を形成することができる。コンテナ14は、引出し3内に支持されていて、引出し3一緒に可動であるが、取り出すこともできる。しかしながらコンテナ14は、別の形状およびサイズを有していてもよい。
【0017】
引出し本体9の内側に可動に配置された蓋2は、引出し内室Rの排気のために機能し、この蓋は気密に形成されていて、押込み運動方向Sに対して垂直な昇降方向Hで、引出し3上に降ろすことができるように支持されている。蓋2は、組付けブラケット19で引出し本体9に取り付けられているので、引出し3に対する蓋2の相対運動が可能となる。
【0018】
引出し本体9の内側で、蓋2の表面上にかつ/または部分的に蓋2内に昇降手段7が配置されていて、この昇降手段は、引出し本体9の内側で蓋2を昇降方向Hで可動に保持している。昇降手段7の構成は、様々な形式で構成されていてよく、これについて本明細書ではこれ以上言及しない。
【0019】
引出し3に面した蓋の側で、蓋2を、引出し3またはコンテナ14の縁部上に載置することができ、これにより少なくとも1つの引出し内室Rは閉鎖可能である。蓋2は、引出し本体9に対してかつ引出し3に対して相対的に可動に支持されている。引出し3上に蓋2を配置することができ、これにより引出し内室Rは密に閉鎖されている。閉鎖は、引出し3の閉鎖位置でのみ行われ、
図1に示した引出し3の開放位置では、蓋2は引出し3を完全に開放している。引出し3を取っ手12で把持し、押込み運動方向Sで摺動させることができる。蓋2の操作ボタン104’で、真空引出し装置0を作動および停止させることができる。蓋2には少なくとも1つの閉鎖位置センサ29’を配置することができ、この閉鎖位置センサは
図1に示されていない制御装置に、蓋2が閉鎖されていることを信号で伝える。
【0020】
蓋2は、昇降手段7によって、引出し3もしくはコンテナ14とは逆方向に制御されて持ち上げることができるように、そして再び引出しもしくはコンテナの上に降ろすことができるように配置されている。これにより、引出し3の押込み運動方向Sに対して垂直な昇降方向Hでの蓋2の昇降運動が行われる。ユーザが手で、引出し3を閉め、引出し3の閉鎖位置で蓋2がコンテナ14の上に降下し、このコンテナを上方から気密に閉鎖することにより、全体として従来の引出しとは異なり、真空引出し装置0の引出し3の内側にあるコンテナ14を上方に対して閉鎖することができる。
【0021】
図2には、気密に構成された蓋2が、引出し3もしくはシール金具15上に載置された状態で示されている。周囲の引出し本体9は単純化の目的で示されておらず、引出し壁30としてのオプションであるフロントパネル17と取っ手12とを備えた引出し3が断面図で示されている。コンテナ内室Rもしくはコンテナ14を気密に閉鎖するように、蓋2が載置されている。
【0022】
蓋2のコンパクトな構造形式を達成するために、できるだけ多数の電子部品が蓋2内に組み込まれている。
【0023】
排気手段の他に、ここには蓋2の内側に、様々な通路、センサ、および除湿手段が、複数の切欠きA内に配置されている。排気および除湿の際の空気の様々な経路は、破線により示されている。
【0024】
電源ケーブル27’は、接続コネクタ25’に向かって延在するように配置されていて、これにより、昇降手段、排気手段、除湿手段、およびセンサを制御する制御装置に電圧が供給される。制御装置も、この場合、蓋2内の切欠きA内に配置されているが、引出し本体9の内側に蓋2とは分離されて配置されていてもよい。
【0025】
蓋2は、好ましくはサンドイッチ構造形式で製造されていて、様々な層にある様々な材料によって1つの蓋2が構成されている。蓋2は、2つの気密な外側カバー層22’,22’’とコア層21’とを有している。この場合、付加的なプリント基板20’が配置されているが、このプリント基板を、気密な外側カバー層22’,22’’のうちの一方に代えて使用することもできる。
【0026】
層20’,21’,22’,22’’は互いに静的に作用するように接着されて、多層の蓋2を形成しており、この蓋は相応にねじれ剛性的に構成されている。上側のカバー層22’は気密に構成されていて、MDF、CFK、またはガラスから成っていてよい。しかしながら、上側のカバー層22’の気密性を達成するために、上側のカバー層22’として、空気不透過性のプラスチックコーティングを、空気透過性の材料の上に配置することもできる。
【0027】
コア層21’には、切欠きAが設けられていて、この切欠き内には、排気手段および除湿手段のような電気機器が配置されている。
図3にさらに明瞭に示されているように、昇降手段のモータまたはその他の構成部分も、部分的に切欠きA内に組み込むことができる。
【0028】
できるだけコンパクトな蓋2を得るために、できるだけすべての構成部品を蓋2の内側に収容することが望ましく、これによりこのような蓋2は、簡単に既存の引出し3と組み合わせることもでき、これにより真空引出し装置0を、既存の引出し本体9、引出し3、および蓋2から製造することができる。
【0029】
コア層21’は、硬質発泡プラスチックから、またはハニカム状プラスチック構造体またはソリッドなプラスチック層から製造することができ、この場合、必要な切欠きAを配置しなければならない。通路と切欠きAとは、コア層21’の材料から切欠かれてよい。
【0030】
プリント基板20’には少なくとも片面に導体路が配置されていて、これらの導体路には電気的な消費器が接続されている。電気的な構成部品、もしくは制御装置によって制御すべき構成部品および制御装置のプリント基板20’へのコンタクトは、簡単で、複雑ではない。プリント基板20’は、サンドイッチ状の蓋2の一部であり、好ましくは、導体路が、引出し内室Rの方向に面しているように方向付けられて、組み込まれていている。蓋2の外側で引出し本体9内に続いている煩わしい配線は蓋2の内側では生じない。蓋2の製造は簡単であり、蓋2の昇降運動の際の誤操作の生じやすさは最小限にされる。
【0031】
蓋2の安定特性をさらに向上させるために、上側のカバー層22’と同様の特性を備えた下側のカバー層22’’を、サンドイッチ構造の一部として使用することができる。このような下側のカバー層22’’は、引出し内室側で、プリント基板20’に取り付けられている。サンドイッチ状の蓋2を通って空気が流れることができるように、プリント基板20’およびオプションとしてのカバー層22’’に孔を配置しなければならず、これにより引出し内室Rもしくはコンテナ14の内室をポンプ式に排気することができる。
【0032】
蓋2の排気特性もしくは密封特性を向上させるために、シール成形部材31’の層が、引出し内室側に配置されており、これにより、コンテナ14の縁部もしくはシール金具15に対する密封性が改善される。衛生上の理由から、シール成形部材31’は着脱可能に取り付けられていて、ひいてはクリーニング目的で取外し可能に構成されている。
【0033】
下側のカバー層22’’および/またはシール成形部材31’を有しているまたは有していない別の実施形態では、シールホルダ32’と、空気フィルタフリース38’から成る層とが、蓋2の引出し側の面に取り付けられていてよい。
【0034】
上側のカバー層22’を取り外した状態で蓋2を上方から見た図では、蓋フレーム23’を見ることができ、蓋フレーム内には、サンドイッチ構造の個々の層が保持されている。蓋フレーム23’は、安定性を高めるために有利である。この場合、切欠きAを有したコア層21’を見ることができる。コア層21’の下側にはプリント基板20’を見ることができ、この場合、蓋2の層構造は、別のように、例えばプリント基板20’なしで構成されていてもよい。接続コネクタ25’と作用接続可能な電流接続装置20は、上側の蓋フレーム23’に略示されている。
【0035】
昇降手段7はこの場合、蓋2もしくはコア層21’の縁部領域に配置されている2つのモータと1つの機構とを含む。昇降手段7も制御装置に接続されているが、例えば1つだけのモータと別の機構とを有していてもよい。制御装置はこの場合、制御ボード101’として構成されており、この制御ボードも蓋2内に装着されている。
【0036】
排気手段としては、この場合、ポンプ11’と、ポンプ11’に通じる空気ホース12’と、接続部14’とが配置されている。さらに、排気された容積が望ましくない形式で通気されないようにするために、逆止弁13’が有利である。これらの構成部品11’,12’,13’,14’は、制御ボード101’によって制御され、排気手段として理解され、この場合、コア層21’の、のちに設けられるフロントパネル17もしくは操作ボタン104’とは反対側に配置されている。
【0037】
引出し内室Rもしくはコンテナ14の排気は、ポンプ11’によって、蓋2内の排気通路83’と孔84’とを介してガイドされて行われてよい。弁80’によって制御して、少なくとも1つの排気通路83’を開閉することにより、制御可能な弁80’により、制御装置によって自動化されて、引出し内室Rもしくはコンテナ14の排気が実施可能である。弁80’が開かれるとすぐに、ポンプ11’によって空気を押し出すことができる。排気通路83’、孔84’、および制御可能な弁80’も、排気手段の部分である。
【0038】
排気のために、引出し内室Rもしくはコンテナ14における空気圧をもしくは負圧のレベルを制御装置に信号で知らせなければならない。このために、少なくとも1つの圧力センサ17’が、排気通路83’内にもしくは弁80’によって閉鎖可能な切欠きA内に配置されている。したがって、制御装置は、負圧の閾値に合わせてプログラムすることができ、閾値を下回ったことを圧力センサ17’が知らせると、制御装置は、弁80’とポンプ11’とを相応に作動させることができる。空気は、点線で示された矢印により示されており、弁80’が排気位置にあるとき、排気通路83’からポンプ式に排気される。
【0039】
フロントパネル17とは反対側の蓋2の後方領域には、空気流出開口85’、制御ボード101’、加速度センサ103’、およびブルートゥース(登録商標)モジュール106’、すなわちブルートゥース規格による無線伝送ユニットが配置されている。この場合、真空引出し装置0の制御装置もしくは制御ボード101’をプログラミングするためにもしくは操作するために、別の無線伝送プロトコルも考えられるだろう。空気流出開口85’を通って、ポンプ11’によって排気された空気が蓋2から除去される。好ましくは、空気流出開口85’は、交換可能な空気フィルタを有している。制御ボード101’は、この場合、昇降手段、排気手段、および除湿手段の制御装置である。
【0040】
引出し内室Rおよび/またはコンテナ14を除湿するために、蓋2はこの場合、除湿手段を有している。除湿手段は、蓋2内に、好ましくはコア層21’の切欠きA内に配置されていて、少なくとも部分的に制御装置に電気的に接続されている。
【0041】
弁80’の開放状態では、蓋2の外側から新鮮な空気が、好ましくは空気フィルタを備えた少なくとも1つの空気流入開口86’から、オプションとして空気流入通路壁860’によって仕切られた除湿通路87’を通り、蓋2の少なくとも1つの脱気開口33’から、引出し内室Rもしくはコンテナ14内まで流入することができる。空気は、引出し内室Rもしくはコンテナ14から、脱気開口33’、少なくとも1つの除湿通路87’を通って送風機81’によって、最終的には空気流出開口85’および/または空気流入開口86’から排出することができる。
【0042】
弁80’の操作は、この場合も制御装置によって自動化されて行われる。少なくとも1つの除湿通路87’は、引出し内室Rもしくはコンテナ内室に連通しているので、少なくとも1つの湿度センサ82’が配置されている場合、実際の空気湿度を測定することができ、制御装置に伝達することができる。少なくとも1つの湿度センサ82’はこの場合、除湿通路87’内に、または引出し内室Rもしくはコンテナ14の1つに連通している切欠き内に配置されている。好ましくは、側壁860’は、除湿通路87’および開口85’,86’に沿って配置されている。
【0043】
除湿工程は、少なくとも1つの送風機81’によって行われ、この送風機は、少なくとも1つの除湿通路87’の延在において切欠きA内に配置されている。送風機81’は、蓋2の閉鎖状態で、引出し内室Rおよびコンテナ14内の新鮮な空気の吸込みおよび分配のために機能し、これにより貯蔵された食品から出る水/水蒸気を排出するように搬送することができる。
【0044】
監視方法および除湿
蓋2が閉鎖された状態で引出し内室Rを監視するために、以下のステップが必要である。制御装置/制御ボード101’は、引出し内室Rもしくはコンテナ内室に除湿通路87’を介して連通している少なくとも1つの湿度センサ82’によって、相対的な空気湿度が、時間的な間隔をおいて継続的に測定されるように、プログラムされている。
【0045】
除湿通路87’内の、引出し内室Rもしくはコンテナ内室内の相対的な空気湿度rFが、上限閾値である80%を超過すると、制御装置は弁80’を開放し、これにより空気流入開口86’からの新鮮な空気が少なくとも1つの送風機81’によって内部で分配されてフラッシングが行われる。送風機81’によって新鮮な空気が循環させられると、供給された空気が、食品表面の湿分を吸収し、これにより湿分が排出させられる。
【0046】
少なくとも1つの湿度センサ82’は、時間的な間隔をおいてさらに測定し、相対的な空気湿度rFが下限閾値としての60%以下に達すると、制御装置に信号で知らせて、少なくとも1つの弁80’を閉鎖させ、少なくとも1つの送風機81’を停止させる。これにより制御装置は次いで再び、監視モードに切替えられる。
【0047】
引き続き食品を長持ちするように保護するために、排気も開始させるべきである。したがって、次いで排気手段が始動させられ、必要であれば、弁80’が排気位置にもたらされ、引出し内室Rもしくはコンテナは所望の負圧にもたらされる。この所望の負圧に達すると、弁80’は閉鎖させられ、ポンプ11’は停止させられる。次いで、制御装置は再び監視モードに移行し、少なくとも1つの湿度センサ82’によって湿度が監視され、オプションとして少なくとも1つの圧力センサ17’によって負圧も監視される。
【0048】
また、事前に相対的な空気湿度を測定することなく、時間制御しながら自動的に除湿工程を開始させることもできる。しかしながらこの場合、不要な除湿となる場合もあるので、エネルギ消費は相応に増大する。
【0049】
少なくとも1つの圧力センサ17’によって測定されて、下限負圧を下回った場合も、制御装置が自動的に作動し、引出し内室Rもしくはコンテナ14を再度、排気する。
【0050】
図4には、弁80’を構成することができる好ましい可能性が示されている。この場合、線形に作動する弁80’が設けられており、この弁は伝動モータ41’によって駆動される。ベース成形体45’には、モータホルダ42’を介して伝動モータ41’が取り付けられている。可変の成形体46’に作用結合しているスピンドル44’は、軸カップリング43’を介して操作可能である。したがって、可変の成形体46’は、ベース成形体45’に対して相対的に、両方向矢印で示したように線形に移動させられる。
【0051】
ベース成形体45’には、可変の成形体46’によってシールすることができる、もしくは開放することができる開口が設けられている。可変の成形体46’は、ベース成形体45’に対して相対的に、ベース成形体45’に沿って線形に摺動可能である。可変の成形体46’には、少なくとも1つの空気流出開口48’と少なくとも1つの空気流入開口49’とが切欠かれている。ベース成形体45’に対する可変の成形体46’の相対位置に応じて、空気は貫流することができ、その後の作動で、除湿通路87’および/または排気通路83’内へと流入することができる。
【0052】
制御装置が弁80’の状態もしくは可変の成形体46’の位置を読み取ることができるようにするために、この場合、スライドポテンショメータ47’が配置されていて、その各電気抵抗によって可変の成形体46’の位置を推測することができる。
【0053】
オプションとして、この場合、ポンプ11’を排気通路83’に接続するための開口14’も、ベース成形体45’に配置されている。しかしながら排気は、別の弁によって制御されて実施されてもよい。
【0054】
線形弁80’は、制御装置によって所望のように開閉可能であるので、除湿方法の実施は問題ない。線形弁80’は極めてコンパクトに蓋2の内側に配置されている。線形弁80’は、多層の蓋2の一部を形成することができる。
【0055】
引出し内室Rに面した、蓋2もしくはカバー層22’の下面には、シール成形部材31’と、シールホルダ32’と、空気フィルタフリース38’から成る層とが取り付けられている。シール成形部材31’は、空気フィルタフリース38’をカバーするシールホルダ32’の層を認めることができる個々の区分を取り囲み、コンテナ14はのちにこの区分の下方に位置することになる。このような領域のそれぞれに、脱気開口33’が、図示されていない送風機81’の高さに配置されている。湿度センサ82’のための開口35’も、各領域に配置されている。各シール成形部材31’もしくは引出し内室Rを、制御装置を介して通気することができる吸気開口34’もそれぞれ同様である。
【0056】
シール成形部材31’と、シールホルダ32’と、空気フィルタフリース38’の層とから成るシール手段は、交換可能に蓋2に配置可能に構成されている。例えばクリーニングのために、シール手段を、完全に蓋2から取り外すことができる。
【0057】
コンテナ14もしくは引出し内室Rにそのまま貯蔵された食品の保存性をさらに高めるために、引出し内室Rに、450nm~470nmの波長範囲の青色光、好ましくは460nmの青色光を照射することが望ましい。このためには、引出し内室Rもしくはコンテナを照射するように、蓋2の下面に設けられた少なくとも1つの相応の光源36’が制御装置に接続されて配置されている。光源36’は、その光をシール手段に設けられた開口から、可能な限り最大の光円錐でできるだけ平面状に放射する。光円錐の例は、
図5に破線で示されている。負圧形成は脱気開口33’を通じて、除湿は吸気開口34’を通じて行うことができる。
【0058】
有利には、蓋2内に、もしくは少なくとも1つのカバー層、特にコア層21’における切欠き内に構成部品全体がコンパクトに配置されている。構成部品は、好ましくは少なくとも部分的に切欠きA内に突入している、または切欠きAから突出している。サンドイッチ構造形式のまたはサンドイッチ構造形式ではない蓋2全体は、蓋2が引出し内室Rを十分に外気に対してシールすることができるように気密でなければならない。当業者にとっては自明であるが、機能全体を満たすために、制御装置には十分な電力が供給されなければならない。制御装置が制御ボード101’の形態で構成されている場合でも、電力供給は保証されなければならない。