(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】二次電池モジュールのセル加圧範囲の設定方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20240325BHJP
H01M 50/211 20210101ALI20240325BHJP
H01M 50/264 20210101ALI20240325BHJP
【FI】
H01M50/262 E
H01M50/211
H01M50/262 S
H01M50/264
(21)【出願番号】P 2022541682
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 KR2021012854
(87)【国際公開番号】W WO2022097912
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0146829
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チョン-ス・ハ
(72)【発明者】
【氏名】セ-ホ・キム
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-522881(JP,A)
【文献】特開2015-037047(JP,A)
【文献】特開2005-339925(JP,A)
【文献】特開2018-092833(JP,A)
【文献】特開2017-147021(JP,A)
【文献】特開2016-039022(JP,A)
【文献】特開2016-039023(JP,A)
【文献】特開2013-200977(JP,A)
【文献】特開2008-288168(JP,A)
【文献】特開2004-063352(JP,A)
【文献】特開2001-313013(JP,A)
【文献】特表2020-520060(JP,A)
【文献】特開2001-167745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/262
H01M 50/211
H01M 50/264
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池モジュールにおいて二次電池セルに対するセル加圧範囲の設定方法であって、
二次電池モジュールに適用する前記二次電池セルを決定し、圧力を高めていきながら前記二次電池セルを加圧したときに示される前記二次電池セルの性能データに基づいて、前記二次電池セルの性能具現のための最小加圧力をPcell_minに決定し、前記二次電池セルの性能具現のための最大加圧力をPcell_maxに決定する第1段階と、
前記二次電池セルを一方向に積層してセル積層体を形成し、前記セル積層体をモジュールハウジングに収納したとき、前記セル積層体を支持及び固定できる最小加圧力をPmodule_minに決定し、前記二次電池セルの寿命末期(End Of Life:EOL)において前記モジュールハウジングが破損することなく前記セル積層体を加圧できる最大加圧力をPmodule_maxに決定する第2段階と、を含み、
前記Pcell_min~前記Pcell_maxの範囲と前記Pmodule_min~前記Pmodule_maxの範囲との共通集合範囲を前記セル加圧範囲に設定することを特徴とする、セル加圧範囲の設定方法。
【請求項2】
前記第1段階において、
前記二次電池セルの性能データは、前記二次電池セルの容量退化率、抵抗増加率、分離膜厚の維持率を含むことを特徴とする、請求項1に記載のセル加圧範囲の設定方法。
【請求項3】
前記Pmodule_minが、
前記二次電池セルの寿命初期(Begin Of Life:BOL)において前記セル積層体を支持及び固定できる最小加圧力であることを特徴とする、請求項1または2に記載のセル加圧範囲の設定方法。
【請求項4】
前記二次電池セルが、パウチ型二次電池セルであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のセル加圧範囲の設定方法。
【請求項5】
前記二次電池セルのスウェリングによる前記モジュールハウジングの膨張許容寸法を予め決定し、
前記二次電池セルの寿命初期(Begin Of Life:BOL)において前記セル積層体を加圧して前記膨張許容寸法以内に前記モジュールハウジングの寸法を管理可能な最小加圧力をPdimension_minに決定し、前記二次電池セルの寿命末期(End Of Life:EOL)において前記セル積層体を加圧して前記膨張許容寸法以内に前記モジュールハウジングの寸法を管理可能な最小加圧力をPdimension_maxに決定する第3段階をさらに含み、
前記Pcell_min、前記Pmodule_min及び前記Pdimension_minのうち最大値を前記セル加圧範囲の最小加圧力に設定し、
[前記Pdimension_max<前記Pcell_max]及び[前記Pdimension_max<前記Pmodule_max]を満たす場合、前記Pcell_min及び前記Pmodule_minのうち小さい値を前記セル加圧範囲の最大加圧力に設定することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のセル加圧範囲の設定方法。
【請求項6】
前記モジュールハウジングは、前記セル積層体の下部に配置される下部プレートと、前記下部プレートにおいて相互に対向する両エッジから折り曲げられて上方へ延び、前記モジュールハウジングの内側へ所定の角度の勾配を有する左側プレート及び右側プレートを含み、
前記セル積層体を前記左側プレートと前記右側プレートとの間に入れて加圧することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のセル加圧範囲の設定方法。
【請求項7】
前記左側プレート及び前記右側プレートの勾配を調整して前記セル加圧範囲を調整することを特徴とする、請求項6に記載のセル加圧範囲の設定方法。
【請求項8】
前記モジュールハウジングは、内部に板バネを備え、前記板バネによって前記セル積層体を加圧することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のセル加圧範囲の設定方法。
【請求項9】
請求項
1に記載のセル加圧範囲の設定方法によって製作した二次電池モジュー
ルであって、
パウチ型二次電池セルを一方向に積層したセル積層体と、
前記セル積層体を収納するように設けられ、前記セル積層体を加圧する両側壁を備えるモジュールハウジングと、を含み、
前記セル積層体は、請求項1に記載の前記Pcell_min~前記Pcell_maxの範囲と前記Pmodule_min~前記Pmodule_maxの範囲との共通集合範囲内の加圧力を受けるように前記モジュールハウジングの両側壁によって加圧されたことを特徴とする、二次電池モジュール。
【請求項10】
請求項9に記載の二次電池モジュールを含む、二次電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池モジュールの製作方法に関し、より具体的には、二次電池モジュールの性能最適化及び構造安定性のために二次電池セルに対する最適加圧範囲を設定する方法に関する。
【0002】
本出願は、2020年11月05日出願の韓国特許出願第10-2020-0146829号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
現在、広く使用される二次電池の種類としては、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池などがある。このような単位二次電池セルの作動電圧は約2.5V~4.2Vである。したがって、これよりさらに高い出力電圧が要求される場合、複数の二次電池セルを直列で接続するか、または充放電容量に応じて複数の二次電池セルを直列及び並列で接続してバッテリーモジュールを構成する。
【0004】
なお、複数のバッテリーセルを直列・並列接続して重・大型のバッテリーモジュールを構成する場合、エネルギー密度が高く、かつ積層が容易なリチウム-ポリマーパウチ型二次電池セルを複数個使用してセル積層体を形成する。その後、セル積層体をモジュールハウジングに収納して保護し、二次電池セルの電気的接続及び電圧測定のために電装品を追加してバッテリーモジュールを構成する方法が一般的である。
【0005】
ところが、リチウム-ポリマーパウチ型二次電池は、反復的な充放電過程で電極が厚くなるか、または副反応によって内部電解質が分解されてガスが発生することがある。この際、電極の膨張及び/または発生したガスによってパウチ型二次電池セルが膨れ上がる現象を「スウェリング現象」と言う。参考までに、スウェリング現象は、充放電時における電極膨張による要因にさらに起因する。
【0006】
パウチ型二次電池セルにスウェリング現象が深化する場合、二次電池セルの性能が低下するだけでなく、モジュールハウジングの外形を歪ませてバッテリーモジュールの構造的安定性に悪影響を及ぼし得る。
【0007】
現在までの研究によると、積層されている二次電池セルを組立て初期から強く圧迫する場合、相対的にスウェリングによる厚さ膨張が少なくなると知られている。これによって、スウェリング現象防止技術のうち二次電池セルとセルの間に圧迫パッドを挿入して膨張力を分散させる技術と、モジュールハウジングをストラップ(strap)で締めて圧迫する技術が知られている。
【0008】
しかし、二次電池セルを加圧するに際し、どのぐらいの圧力を加えればよいか経験的に設定するだけで、定性的/定量的データに基づく加圧力の設定方法が提示されてない。そこで、二次電池モジュールの性能の最適化及び構造安定性のためにセル加圧力設定範囲を体系化する方案が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、二次電池モジュールの製作に際し、二次電池セルに対する最適の加圧範囲を設定する方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解でき、本発明の実施例によってより明らかに理解されるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施例によるセル加圧範囲の設定方法は、二次電池モジュールに適用する二次電池セルを決定し、圧力を高めていきながら前記二次電池セルを加圧したときに示される前記二次電池セルの性能データに基づいて、前記二次電池セルの性能具現のための最小加圧力をPcell_minに決定し、前記二次電池セルの性能具現のための最大加圧力をPcell_maxに決定する第1段階と、前記二次電池セルを一方向に積層してセル積層体を形成し、前記セル積層体をモジュールハウジングに収納したとき、前記セル積層体を支持及び固定できる最小加圧力をPmodule_minに決定し、前記二次電池セルの寿命末期(End Of Life:EOL)において前記モジュールハウジングが破損することなく前記セル積層体を加圧できる最大加圧力をPmodule_maxに決定する第2段階と、を含み、前記Pcell_min~前記Pcell_maxの範囲と前記Pmodule_min~前記Pmodule_maxの範囲との共通集合範囲を前記セル加圧範囲に設定され得る。
【0012】
前記第1段階において、前記二次電池セルの性能データは、前記二次電池セルの容量退化率、抵抗増加率、分離膜厚の維持率を含み得る。
【0013】
前記Pmodule_minは、前記二次電池セルの寿命初期(Begin Of Life:BOL)において前記セル積層体を支持及び固定できる最小加圧力であり得る。
【0014】
前記二次電池セルは、パウチ型二次電池セルであり得る。
【0015】
前記二次電池セルのスウェリングによる前記モジュールハウジングの膨張許容寸法を予め決定し、前記二次電池セルの寿命初期(Begin Of Life:BOL)において前記セル積層体を加圧して前記膨張許容寸法以内に前記モジュールハウジングの寸法を管理可能な最小加圧力をPdimension_minに決定し、前記二次電池セルの寿命末期(End Of Life:EOL)において前記セル積層体を加圧して前記膨張許容寸法以内に前記モジュールハウジングの寸法を管理可能な最小加圧力をPdimension_maxに決定する第3段階をさらに含み、前記Pcell_min、前記Pmodule_min及び前記Pdimension_minのうち最大値を前記セル加圧範囲の最小加圧力に設定し、[前記Pdimension_max<前記Pcell_max]及び[前記Pdimension_max<前記Pmodule_max]を満たす場合、前記Pcell_min及び前記Pmodule_minのうち小さい値を前記セル加圧範囲の最大加圧力に設定し得る。
【0016】
前記モジュールハウジングは、前記セル積層体の下部に配置される下部プレートと、前記下部プレートにおいて相互に対向する両エッジから折り曲げられて上方へ延び、前記モジュールハウジングの内側へ所定の角度の勾配を有する左側プレート及び右側プレートを含み、前記セル積層体を前記左側プレートと前記右側プレートとの間に入れて加圧するように構成され得る。
【0017】
前記モジュールハウジングは、前記左側プレート及び前記右側プレートの勾配を変更することで前記セル加圧範囲を調整し得る。
【0018】
前記モジュールハウジングは、内部に板バネを備え、前記板バネによって前記セル積層体を加圧するように構成され得る。
【0019】
なお、本発明の他の様態によると、前述したセル加圧範囲の設定方法に用いて製作した二次電池モジュールが提供され得る。
【0020】
本発明のさらに他の様態によると、前記二次電池モジュールを一つ以上含む二次電池パックが提供され得る。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一面によると、定量的なデータに基づいて二次電池セルを最適の加圧範囲内で加圧可能にするセル加圧範囲の設定方法が提供できる。
【0022】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解でき、本発明の実施例によってより明らかに理解されるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】圧力と単位二次電池セルの性能関係を概略的に示したグラフである。
【
図2】本発明の一実施例によるセル加圧範囲の設定方法の第1段階の遂行結果によるセル加圧範囲を示した図である。
【
図3】本発明の一実施例によるセル加圧範囲の設定方法の第1段階及び第2段階の遂行結果によるセル加圧範囲を示した図である。
【
図4】本発明の一実施例による二次電池モジュールの構成を概略的に示した図である。
【
図5】
図4のモジュールハウジングにおいてセル積層体を加圧する方法を示した図である。
【
図6】
図5によるセル積層体の加圧方法の変形例を示した図である。
【
図7】本発明の一実施例によるセル加圧範囲の設定方法の第1段階、第2段階及び第3段階の遂行結果によるセル加圧範囲を示した図である。
【
図8】本発明によるセル加圧力の設定方法を適用した二次電池モジュールの設計方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものであり、図面における構成要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために誇張または省略されるか、概略的に示されることがある。したがって、各構成要素の大きさや割合は、実際の大きさや割合を完全に反映することではない。
【0025】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0026】
本明細書で記述するセル加圧範囲の設定方法とは、二次電池モジュールの製作過程で二次電池セルをモジュールハウジングに加圧して収納するに際し、前記二次電池セルに対する最適の加圧範囲の設定のための方法を意味する。
【0027】
本発明の一実施例によるセル加圧範囲の設定方法は、単位二次電池セル110の特性から加圧範囲を導出する第1段階と、二次電池モジュールの設計段階で二次電池セル110とモジュールハウジング300の特性から加圧力の範囲を導出する第2段階と、を含む。
【0028】
本実施例において、二次電池セル110はパウチ型二次電池を意味する。前記パウチ型二次電池は、電極組立体及び電解液をパウチシートで密封した形態の二次電池である。
【0029】
前記電極組立体は、電極と分離膜の組立体であって、一つ以上の正極板及び一つ以上の負極板が分離膜を挟んで配置された形態で構成され得る。電極組立体の各電極板には電極タブが備えられ、前記電極タブが電極リードと接続され、前記電極リードは一端がパウチ外装材の外部に露出することで電極端子として機能できる。パウチ外装材は、外部絶縁層、金属層及び内部接着層を備え、電極組立体と電解液を収納し、その周縁部が熱溶着される。このようなパウチ型二次電池セル110の構成は、本願発明が属する技術分野における当業者にとって自明な事項であるのでより詳細な説明は省略する。
【0030】
本実施例は、パウチ型二次電池セル110を対象としたが、二次電池モジュールを構成するに際し、パウチ型二次電池セル110の代案として直方体の形態の扁平な角形二次電池セル110を使用してもよい。
【0031】
本発明によるセル加圧範囲の設定方法の第1段階は、二次電池セル110の最適の性能具現のための加圧範囲を探すための段階であって、二次電池モジュールに適用する単位二次電池セル110を対象にして圧力を加え、前記二次電池セル110が最適の性能を現すデータを根拠にして加圧範囲を決定する。
【0032】
図1は、圧力と単位二次電池セル110の性能関係を概略的に示したグラフである。
【0033】
圧力を高めていきながら単位二次電池セル110を加圧して充放電を行ったとき、単位二次電池セル110は通常、
図1のように、容量退化率、内部抵抗増加率、分離膜厚の維持率を示す。
【0034】
図1のグラフにおいて、f
1は容量退化率、f
2は抵抗増加率、f
3は分離膜厚の維持率を各々示す。
【0035】
例えば、
図1のグラフにおいて、P3よりも大きい圧力が二次電池セル110に加えられると、分離膜にクラックが生じ得る。そのため、第1段階でセル加圧範囲の最大加圧力はP3より小さい値に決定する。
【0036】
ある二次電池セル110の容量退化率が特定の値y1を超過するか、または抵抗増加率が特定の値y2を超過すると、二次電池セルの性能が大幅低下し得る(
図1のy1とy2は、二次電池セル110毎に相異なる値であり得る)。したがって、容量退化率がy1以下であり、かつ抵抗増加率はy2以下の圧力範囲を探す。そうすると、
図1においてP1~P2が前記圧力範囲になり、前記P1を二次電池セル110の性能具現のための最小加圧力Pcell_minに決定し、前記P2を二次電池セル110の性能具現のための最大加圧力Pcell_maxに決定する。
【0037】
図2のように、第1段階で導出したPcell_minとPcell_maxを各々、セル加圧範囲の最小値(以下、Pdesign_minとする。)とセル加圧範囲の最大値(以下、Pdesign_maxとする。)としてセッティングする。
【0038】
本実施例では、Pcell_minを100kPaとして例示し、Pcell_maxは550kPaとして例示したが、これは説明の便宜のためにPcell_minの値とPcell_maxの値を任意に特定したことであり、どの二次電池セルを使用したかによって変わり得る。
【0039】
参考までに、パウチ型二次電池セル110の場合にも、その製造方式、内部構成、初期容量が相違に製作され得る。このように、製造方式、内部構成、初期容量などが異なる二次電池セル110は、同じ加圧力を提供するとしても容量退化率や抵抗増加率などが相違し得る。
【0040】
したがって、二次電池セル110を類型別に分けて各々テストし、その結果による最小加圧力Pcell_minと最大加圧力Pcell_maxをルックアップテーブルに整理しておくと、追って二次電池モジュールに適用する特定の諸元の二次電池セル110を決定し、前記二次電池セル110が最適の性能を発揮できる条件の加圧範囲をすぐ前記ルックアップテーブルから探してPcell_minとPcell_maxに決定し得る。
【0041】
本発明によるセル加圧範囲の設定方法の第2段階は、二次電池モジュールの設計に際し、構造安定性の具現のための加圧範囲を探すための段階といえる。即ち、第2段階は、二次電池モジュールの構造安定性の具現のための最小加圧力(以下、Pmodule_minとする。)と最大加圧力(以下、Pmodule_maxとする。)を探すことである。
【0042】
前記Pmodule_minは、二次電池セル110を一方向へ積層してセル積層体100を形成し、前記セル積層体100をモジュールハウジング300に収納したとき、前記セル積層体100を支持及び固定できる最小加圧力として設定され得る。そして、前記Pmodule_maxは、二次電池セル110の寿命末期(End Of Life:EOL)においてモジュールハウジング300が破損しない圧力範囲でセル積層体100を加圧できる最大加圧力として設定され得る。
【0043】
例えば、二次電池セル110の電極リードをバスバーに溶接して二次電池セル110を電気的に接続できるが、外部衝撃や振動によって二次電池セル110が動くと、電気的信頼性が低下し得る。したがって、セル積層体100を加圧する構造のバッテリーモジュールの場合、二次電池セル110の性能維持と電気的安定性の確保のためには、少なくともセル積層体100がモジュールハウジング300の両側壁によって圧迫された状態で支持及び固定される必要がある。
【0044】
第2段階では、前記のような事項を反映してモジュールハウジング300の内部でセル積層体100を支持及び固定できる最小加圧力をPmodule_minに設定する。
【0045】
ここで、前記Pmodule_minは、前記二次電池セル110の寿命初期(Begin Of Life:BOL)において前記セル積層体100を支持及び固定できる圧力値であり得る。これは、未使用状態の二次電池セル110を積層してセル積層体100を構成し、モジュールハウジング300に加圧して収納する場合を想定したためである。ここで、寿命初期(BOL)は、二次電池セル110を製造した後、活性化のための充放電サイクルを所定の回数行った状態であり、容量退化がない状態を意味し得る。
【0046】
前記Pmodule_maxの決定は、二つの要素を反映して決定する。
【0047】
第一に、モジュールハウジング300によってセル積層体100を加圧する場合、作用反作用の法則によってモジュールハウジング300がセル積層体100に作用する圧力とセル積層体100がモジュールハウジング300に作用する圧力とは同一である。したがって、一定の圧力以上にセル積層体100を加圧すると、モジュールハウジング300にクラックが生じて二次電池モジュールの構造的安定性が壊れる。したがって、Pmodule_maxは、モジュールハウジング300が耐える圧力、言い換えれば、モジュールハウジング300の破損なくセル積層体100を加圧できる最大限界圧力以内に決定することが望ましい。
【0048】
第二に、二次電池セル110は、反復的な充放電過程で電極が厚くなるか、または副反応で内部電解質が分解されて少量のガスが発生することがある。即ち、二次電池セル110は、電極膨張及び/または発生した少量のガスによって膨れ上がるスウェリング現象が現われ得る。この際のスウェリング圧力がモジュールハウジング300の構造の剛性に影響を及ぼし得る。したがって、Pmodule_maxを決定するときには、二次電池セル110のスウェリング圧力を反映する。
【0049】
二次電池セル110のスウェリング現象は、二次電池セル110の寿命として定義する寿命末期(End Of Life:EOL)において最も明らかに現われる(ここで、EOLは、通常、容量が寿命初期(Begin of Life:BOL)における容量の80%になるまでと定義することがある)。通常、正常に使用及び管理された二次電池セル110は、EOLでスウェリングの程度が予め予測され得る。したがって、スウェリング現象が最も明らかな二次電池セル110のEOLにおいてモジュールハウジング300の破損なくセル積層体100を加圧できる最大限界圧力をPmodule_maxとして設定する。
【0050】
その後、上述した第1段階及び第2段階を行って求めたPcell_min、Pcell_max、Pmodule_min、Pmodule_maxを比較して、次のように、Pdesign_minとPdesign_maxを決定する。
【0051】
Pdesign_min=Max.(Pcell_min,Pmodule_min)
【0052】
Pdesign_max=Min.(Pcell_max,Pmodule_max)
【0053】
したがって、本発明によるセル加圧範囲、Pdesign_min~Pdesign_maxは、Pcell_min~Pcell_maxとPmodule_min~Pmodule_maxとの共通集合範囲といえる。
【0054】
例えば、
図3のように、Pcell_minは100kPa、Pcell_maxは550kPa、Pmodule_minは80kPa、Pmodule_maxは450kPaである場合、Pdesign_min=Max.(100kPa,80kPa)であり、Pdesign_max=Min.(550kPa,450kPa)になる。したがって、本実施例の二次電池モジュールは、組立て時、セル積層体100が100kPa~450kPa範囲内の加圧力を受けるように組み立てると、二次電池モジュールの性能と構造安定性とを共に満たすことができる。
【0055】
図4は、本発明の一実施例による二次電池モジュールの構成を概略的に示した図であり、
図5は、
図4のモジュールハウジング300によってセル積層体100を加圧する方法を示した図である。
【0056】
続いて、
図4及び
図5を参照して本発明の一実施例によるセル積層体100の加圧方法及び加圧構造を説明する。
【0057】
二次電池モジュールは、セル積層体100、ICB(Inter Connection Board)カバー組立体200及びモジュールハウジング300を含んで構成され得る。
【0058】
セル積層体100は、前述したように広い面が互いに対面するように積層されたパウチ型二次電池セル110の集合体である。
【0059】
ICB(Inter Connection Board)カバー組立体200は、二次電池セル110の電気的接続のための複数のバスバー(図示せず)、モジュールのターミナル、これらの外部露出を阻むためのカバーを備え、
図4のようにモジュールハウジング300に装着され、セル積層体100の前方と後方に配設され得る。
【0060】
モジュールハウジング300は、セル積層体100を収納する内部空間を備え、前記セル積層体100に機械的な支持力を提供し、外部の衝撃などから保護する役割を果たす剛性構造物である。このようなモジュールハウジング300は、剛性の確保のために金属材質であることが望ましいが、金属に相応する剛性を有する材質なら非金属材質でも差し支えない。
【0061】
例えば、モジュールハウジング300は、底面を形成する下部プレート311と左側壁面を形成する左側プレート312と右側壁面を形成する右側プレート313とで構成されたUフレーム310と、前記Uフレーム310の上端に結合する上部プレート320と、からなる四角管状で設けられ得る。
【0062】
セル積層体100をUフレーム310に収納するとき、左側プレート312と右側プレート313がセル積層体100を圧迫し、前記左側プレート312の上端と前記右側プレート313の上端に上部プレート320を載置して溶接することでモジュールハウジング300の中でセル積層体100が加圧されるようにすることができる。
【0063】
具体的には、
図5の(a)を参照すると、左側プレート312及び右側プレート313は、前記下部プレート311の互いに対向する両エッジから上方へ延び、モジュールハウジング300の内側方向へ所定の角度の勾配を有するように構成され得る。
【0064】
このようなUフレーム310にセル積層体100を収納するとき、
図5の (b)のように、左側プレート312と右側プレート313を外側方向へ引っ張って空間を確保し、セル積層体100を入れて下部プレート311に装着する。その後、
図5の(c)のように、左側プレート312と右側プレート313を放してセル積層体100を圧迫する。その後、Uフレーム310の上端に上部プレート320を載置して溶接する。この場合、前記左側プレート312と前記右側プレート313の厚さと勾配を大きくまたは小さく調整することで、セル積層体100に作用する圧力の強度を調整することができる。
【0065】
図6は、
図5によるセル積層体100の加圧方法の変形例を示した図である。
【0066】
セル積層体100を加圧する他の方法として、板バネ330を用い得る。例えば、
図6に示したように、モジュールハウジング300は、セル積層体100において最外側の二次電池セル110と対面する加圧板340と板バネ330をさらに備え得る。前記板バネ330は、前記加圧板340と側板との間に圧縮された状態で配置され得る。この場合、前記板バネ330の弾性復元力がセル積層体100を圧迫する加圧力として作用し得る。
【0067】
その他にもセル積層体100を加圧状態でモジュールハウジング300に収納する方法は多様である。例えば、モジュールハウジング300にセル積層体100を入れる前に、前記セル積層体100を予め圧迫して圧縮した状態にし、この状態でセル積層体100の最外側の二次電池セル110がモジュールハウジング300の側面壁に接触するようにセル積層体100をモジュールハウジング300の中に入れて圧迫することも可能である。
【0068】
一方、本発明によるセル加圧範囲の設定方法は、モジュールハウジング300の膨張許容寸法を追加的に反映してセル加圧範囲を決定する第3段階をさらに含み得る。
【0069】
二次電池モジュールは、必要に応じて多様なサイズに製作され得る。例えば、電気自動車の場合、複数個の二次電池モジュールを接続して二次電池パックを構成し、これを電気自動車に搭載するが、電気自動車ごとに二次電池パックや二次電池モジュールが設置可能な空間的余裕が相違する。したがって、前記二次電池パックや二次電池モジュールは、一定の空間内に設置及びメインテナンスが可能でなければならない。このためには、二次電池パックや二次電池モジュールの寸法管理が重要である。
【0070】
そこで、第3段階では、二次電池モジュールが搭載される環境条件を鑑みて、二次電池セル110のスウェリングによるモジュールハウジング300の膨張許容寸法を予め設定し、前記二次電池セル110の寿命初期(Begin Of Life:BOL)において前記セル積層体100を加圧して前記膨張許容寸法内で前記モジュールハウジング300を管理可能な最小加圧力Pdimension_minを導出し、前記二次電池セル110の寿命末期(End Of Life:EOL)において前記セル積層体100を加圧して前記膨張許容寸法内で前記モジュールハウジング300を管理可能な最小加圧力をPdimension_maxとして導出する。
【0071】
ここで、膨張許容寸法は通常、顧客の要請に応じて決定され得る。例えば、顧客は、二次電池モジュールの幅を120mmにし、かつスウェリングによる膨張許容は123mmに制限し得る。この場合、セル積層体100が3mm以上膨張できないようにセル積層体100を加圧しなければならない。
【0072】
BOLにおいて二次電池セル110のスウェリング現象は、充放電時の電極厚さの収縮、膨張によることから、比較的小さい加圧力でも膨張許容寸法の管理が可能である。これを反映して、BOLにおいて、例えば、セル積層体100が3mm以上膨張しないようにモジュールハウジング300によって二次電池セルを加圧できる最小加圧力をPdimension_minに設定する。
【0073】
EOLは、二次電池セル110のスウェリング現象が電極厚さの膨張とガス発生によるため、BOLの場合よりも相対的に大きい圧力を加えなければ、膨張許容寸法の管理ができない。これを反映して、EOLにおいて、例えば、セル積層体100が3mm以上膨張しないように、モジュールハウジング300によって二次電池セルを加圧できる最小加圧力をPdimension_maxに設定する。
【0074】
その次、Pdimension_min及びPdimension_maxを第1段階と第2段階で求めたPcell_min、Pcell_max、Pmodule_min、Pdimension_maxと、次のような条件下で比較して最終的にセル加圧範囲を設定する。
【0075】
Pdesign_min=Max.(Pcell_min,Pmodule_min,Pdimension_min)
【0076】
Pdesign_max=Min.(Pcell_max,Pmodule_max),[但し、(Pdimension_max<Pcell_max)及び(Pdimension_max<Pmodule_max)を満たすこと。]
【0077】
例えば、
図7のように、Pdimension_minが50kPaであり、Pdimension_maxが400kPaであれば、Pdesign_minは100kPaに設定され、Pdesign_maxは450kPaに設定され得る。
【0078】
もし、第3段階でPdimesion_maxが500kPaとして算出されたと仮定すると、これはモジュールハウジング300が破損し得る圧力であるので、モジュールハウジング300の構造剛性度の設計が誤ったといえるので、モジュールハウジング300の設計をやり直す必要がある。
【0079】
図8は、本発明によるセル加圧力の設定方法を適用した二次電池モジュール設計方法を例示したフローチャートである。
【0080】
図8を参照して、本発明の一実施例によるセル加圧力の設定方法を要約すれば、次のようである。
【0081】
第1段階で、二次電池モジュールに適用する二次電池セル110を決定し、単位二次電池セル110を対象にして加圧力によるセルデータを分析し、これに基づいてPcell_min、Pcell_maxを導出する。
【0082】
第2段階で、前記二次電池セル110を用いてセル積層体100を構成し、 BOLにおいて前記セル積層体100を一体で支持固定できる最小加圧力と、EOLにおいてモジュールハウジング300が破損しない剛性を維持しながら前記セル積層体100を最大限に加圧できる最大加圧力を探し、これをPmodule_min、Pmodule_maxとして導出する。
【0083】
その後、第3段階で、顧客が要求した二次電池モジュールの膨張許容寸法を管理可能なPdimension_min、Pdimesion_maxを導出する。
【0084】
その後、Pdimesion_max値が先立って求めたPcell_maxまたはPmodule_maxよりも大きいと、二次電池セル110またはモジュールハウジング300の設計をやり直し、前述した過程を反復する。Pdimesion_max値が先立って求めたPcell_maxとPmodule_maxよりも小さいと、二次電池セル110とモジュールハウジング300の設計が適合しているといえる。この際、下記の条件に適する値をセル加圧力の設定範囲の最大値、最小値に設定する。
【0085】
Pdesign_min=Max.(Pcell_min,Pmodule_min,Pdimension_min)
【0086】
Pdesign_max=Min.(Pcell_max,Pmodule_max)
【0087】
以上のように、本発明によるセル加圧範囲の設定方法によると、二次電池モジュールの性能、構造安定性、膨張許容寸法の管理が可能な範囲の加圧力で二次電池セル110を加圧できる。
【0088】
一方、本発明による二次電池モジュールは、二次電池セル110の集合体であるセル積層体100と、前記セル積層体100を加圧して収納可能なモジュールハウジング300と、ICBカバー組立体200と、を含んで構成され得る。また、本発明の二次電池モジュールは、上述したセル加圧範囲の設定方法によって設定された加圧力の範囲内でセル積層体100が加圧されるように構成され得る。
【0089】
本発明による二次電池パックは、上述した二次電池モジュールを一つ以上含み得る。二次電池パックには、二次電池モジュールに加え、二次電池モジュールを収納するためのパックケース、二次電池モジュールの充放電を制御するための各種装置がさらに含まれ得る。一例でBMS(Battery Management System)、電流センサー、ヒューズなどがさらに含まれ得る。
【0090】
本発明による二次電池パックは、電気自動車やハイブリッド自動車のような自動車に適用可能である。
【0091】
以上、本発明を限定された実施例と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明が属する技術分野における通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【0092】
なお、本明細書において、上、下、左、右、前、後のような方向を示す用語が使用されたが、このような用語は相対的な位置を示し、説明の便宜のためのものであるだけで、対象となる事物の位置や観測者の位置などによって変わり得ることは、当業者にとって自明である。
【符号の説明】
【0093】
100 セル積層体
110 二次電池セル
300 モジュールハウジング
311 下部プレート
312 左側プレート
313 右側プレート
330 板バネ