IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンコール メディカル,エルピー ディビーエー ディージェーオー サージカルの特許一覧

<>
  • 特許-寛骨臼カップシステム 図1
  • 特許-寛骨臼カップシステム 図2
  • 特許-寛骨臼カップシステム 図3
  • 特許-寛骨臼カップシステム 図4
  • 特許-寛骨臼カップシステム 図5
  • 特許-寛骨臼カップシステム 図6
  • 特許-寛骨臼カップシステム 図7
  • 特許-寛骨臼カップシステム 図8A
  • 特許-寛骨臼カップシステム 図8B
  • 特許-寛骨臼カップシステム 図8C
  • 特許-寛骨臼カップシステム 図8D
  • 特許-寛骨臼カップシステム 図9
  • 特許-寛骨臼カップシステム 図10
  • 特許-寛骨臼カップシステム 図11
  • 特許-寛骨臼カップシステム 図12
  • 特許-寛骨臼カップシステム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】寛骨臼カップシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/34 20060101AFI20240325BHJP
【FI】
A61F2/34
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022547025
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-31
(86)【国際出願番号】 US2021016411
(87)【国際公開番号】W WO2021158661
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】62/970,044
(32)【優先日】2020-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522132122
【氏名又は名称】アンコール メディカル,エルピー ディビーエー ディージェーオー サージカル
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】アクセルソン,スチュアート エル.
(72)【発明者】
【氏名】シャレンベルク,アダム
(72)【発明者】
【氏名】ウィルズ,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】リンク,ディビッド
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0159902(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0228966(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0310946(US,A1)
【文献】特開平11-253472(JP,A)
【文献】特開2003-190194(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0161072(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寛骨臼カップシステムであって、
複数のライナーのうちのいずれか1つを受容するように構成されたカップであって、前記カップが、
生体構造に係合するように構成された外面、
前記カップの上端における頂面、及び
略凹状の内面であって、
前記頂面に隣接する複数の内向きの凹型スカラップがその中に配設された円筒形バンドと、
前記円筒形バンドに隣接して配設されたテーパ状壁と、
前記テーパ状壁に隣接する内側球面であって、前記内側球面が、実質的に均一な曲率半径、及び前記球面を遮断する単一の溝を有する、内側球面と、を備える略凹状の内面を備える、カップと、
前記カップの前記凹状の内面内に受容されるように構成された実質的に凸状の外面を有するライナーであって、前記ライナーが、リム、及び前記リムに隣接する複数の外側に突き出るスカラップと、前記カップの前記内側球面に配設された前記単一の溝内に固定されるように構成されたロック機構とを備える、ライナーと、を備え、
前記ロック機構が、
前記ライナーの前記凸状の外面から逸脱するように実質的に垂直な配向を有する傾斜部と、
前記傾斜部から実質的に垂直に延在する延在リップであって、前記延在リップが、前記カップの前記単一の溝に係合するように構成されている、延在リップと、を備え、
前記カップの前記単一の溝の上部内側面と前記ロック機構の前記延在リップの上面との間の第1の距離が、前記傾斜部から前記ロック機構の前記延在リップの最も外側の先端までの第2の距離以上であり、
前記ライナーが前記カップ内に着座したときに、前記ライナーの前記外側に突き出るスカラップの各々が、前記カップの前記内向きの凹型スカラップのそれぞれ1つと係合するように構成されている、
寛骨臼カップシステム。
【請求項2】
前記カップの前記外面が、多孔質コーティングを含む、請求項1に記載のカップシステム。
【請求項3】
前記ライナーが、金属材料を含む、請求項1に記載のカップシステム。
【請求項4】
前記金属材料が、ステンレス鋼、コバルト基合金、形状記憶合金、タンタル、金属複合材、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項3に記載のカップシステム。
【請求項5】
前記ライナーの前記外面が、前記ライナーが前記カップ内に着座したときに前記カップの前記テーパ状壁と係合するように構成されたテーパ部を備え、それによって、前記ライナーを前記カップ内に保持する、請求項1に記載のカップシステム。
【請求項6】
前記円筒形バンドの前記複数の内向きの凹型スカラップが、少なくとも12個の内向きの凹型スカラップを含む、請求項1に記載のカップシステム。
【請求項7】
前記複数の外側に突出するスカラップが、少なくとも6つの外側に突出するスカラップを含む、請求項1に記載のカップシステム。
【請求項8】
前記カップが、開口をさらに備え、前記ライナーが、ペグをさらに備え、前記開口が、前記ペグを受容するように構成されており、それによって、前記ライナーを前記カップに固定する、請求項1に記載のカップシステム。
【請求項9】
前記ペグの底部が、前記ライナーの前記複数の外側に突出するスカラップが前記カップの前記頂面上に配設され、かつ前記ライナーの前記複数の外側に突出するスカラップが前記カップの前記複数の内向きのスカラップと噛み合うのを防止するために前記カップに対して十分に軸回転した状態で配向されているときに、前記カップの前記開口と位置合わせされ、かつ前記カップの前記開口の上方に所定の距離だけ懸架されるように構成されている、請求項8に記載のカップシステム。
【請求項10】
前記ペグが、前記ライナーの前記複数の外側に突出するスカラップが前記カップの前記複数の内向きのスカラップと噛み合うまで前記ライナーを軸方向に回転させたときに、前記所定の距離を閉じ、かつ前記カップの前記開口内に正確に着座するように構成されており、それによって、前記ライナーを前記カップ内に固定する、請求項9に記載のカップシステム。
【請求項11】
前記ライナーが、ポリエチレンを含む、請求項1に記載のカップシステム。
【請求項12】
前記ロック機構が、実質的に三角の形状を有する、請求項に記載のカップシステム。
【請求項13】
前記ロック機構が、前記ライナーの前記外面の周りに連続的に延在する、請求項に記載のカップシステム。
【請求項14】
前記ロック機構が、前記ライナーの前記外面の周りに不連続に配設された複数の別々の突起を備える、請求項に記載のカップシステム。
【請求項15】
前記ライナーが前記カップ内に着座したときに、前記延在リップの上面が、前記単一の溝の上部内側面の配向に実質的に平行な、実質的に水平な配向を有する、請求項に記載のカップシステム。
【請求項16】
前記ライナーが前記カップ内に着座したときに、前記単一の溝が前記延在リップ上に変形力を及ぼすように、前記延在リップの外径が前記単一の溝の内径よりも大きい、請求項に記載のカップシステム。
【請求項17】
前記延在リップの前記外径が、前記単一の溝の前記内径よりも最大0.03インチ大きい、請求項16に記載のカップシステム。
【請求項18】
前記延在リップの厚さが、0.016インチ以上である、請求項に記載のカップシステム。
【請求項19】
前記延在リップの厚さが、0.02インチ以下である、請求項に記載のカップシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寛骨臼カップ及びベアリングに関し、より詳細には、人工股関節置換術デバイス及び方法に関連して使用するための寛骨臼カップ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
人工股関節置換術(hip arthroplasty)又は人工股関節置換術(hip replacement)は、股関節を人工装具のインプラントによって置き換える外科的処置を指す。人工股関節全置換術は、破壊された股関節の治療のために1960年代以来用いられており、関節の大腿骨コンポーネント及び寛骨臼表面の両方を置き換える。人工股関節は、一般に、自然な関節機能に可能な限り忠実に合致するように設計されたボール及びソケット関節である。一般に、人工ソケットは寛骨臼の骨内に埋め込まれ、人工ボールはソケット内で関節接合する。ボールに取り付けられたステム構造が患者の大腿骨に埋め込まれ、それによってボールを所定の位置に固定する。人工股関節全置換術では、患者の本来の股関節は、寛骨臼ソケットを置き換える寛骨臼カップコンポーネント、及び大腿骨頭を置き換える大腿骨コンポーネント又はステム-ボールコンポーネントによって置き換えられる。
【0003】
人工股関節全置換術(THA)は、非手術的治療に反応しない末期の股関節炎を有する患者に疼痛緩和及び機能改善を提供する最も成功している外科的処置のうちの1つと考えられている。医療が改善し続け、平均余命が延びるにつれて、このより活動的な高齢人口を反映して人工関節全置換術の需要が増加する。米国で実施されるTHAの数は、2030年までに572,000に達すると予測され、2005年と比較して174%増加する。
【0004】
医学的及び機械的合併症、例えばTHAの術後の不安定性を軽減又は防止することが最も重要である。初回装着及び再装着におけるTHA後の不安定性の発生率は、それぞれ7%及び25%に達すると報告されている。THA後の不安定性の危険因子は多因子性であり、患者特異的(性別、年齢、外転筋の欠乏)であり得るか、又は手術による変数(外科的アプローチ、コンポーネントの位置異常、大腿骨頭の直径)に関連し得る。THA後の不安定性は、依然として再入院及び再置換術の主な原因の1つであり、米国ではTHA再入院の32.4%及びTHA再置換全体の22.5%を占めている。
【0005】
人工股関節全置換術では、大腿骨頭及び寛骨臼の表面が人工装具のデバイスで置換される。寛骨臼カップを設置するために、外科医は、寛骨臼ソケットをリーミングしてカップを受け入れるための表面を作成することによって骨を整える。カップは、骨セメント、締まり嵌め若しくは圧入、又は骨ねじによって定位置に保持されてもよい。新しい寛骨臼カップは、整えられた半球状のソケット内に確実に埋め込まれる。インプラントの内側部分は、金属カップ内に配置され、適所に固定される。その後、大腿骨は、ステムを受容するように整えられる。大腿骨の近位端は、骨の中心部分を露出させるために少なくとも部分的に切除される。一般に、大腿骨大転子の少なくとも一部は、大腿骨の中心部分、具体的には髄腔へのアクセスを得るために切除される。中心部分には、既存の髄腔を利用して、インプラントステムの形状に合致する空洞が作成される。大腿骨の頂上端は、平坦化及び平滑化されてもよい。ボールが別体である場合、適切なサイズが選択され、取り付けられる。最後に、ボールがカップ内に着座され、それにより、関節が正確に位置合わせされ、切開部が閉じられる。
【0006】
人工股関節全置換術の処置が直面している課題のうちの1つは、大腿骨インプラントと寛骨臼カップコンポーネントと患者の骨との間の確実な取付けを達成することである。従来の寛骨臼カップデバイスは、典型的には、整えられた寛骨臼内に固定された半球状のカップである。寛骨臼カップ、及びベアリング又はライナーを含む、寛骨臼システムが開発されている。寛骨臼カップは、一般に、テーパ状の硬質又は軟質ベアリングを挿入することができるテーパ状の内側幾何学的形状及びロック溝を含む。
【0007】
人工股関節置換術では、インプラントのカップ部に対して様々なベアリング材料が利用可能であり、特定のベアリング材料の選択は、手術前又は手術中にさえも外科医によって決定され得る。患者のニーズに応じて、ベアリング/ライナーは、ポリエチレン又は生体適合性金属で構成することができる。米国特許出願公開第2017/0020688号に記載されているように、外科医が適したライナーを選択して嵌め合いを最適化及び/又は患者のニーズに対処し得るように、複数のベアリングライナーを受け入れる寛骨臼カップを利用することが有利であり得る。複数のベアリングと共に使用するための寛骨臼カップ組立体は、製造の観点(複数の用途に対して1つのカップのみが必要であるため)と、股関節プロテーゼに対する調整を行うためのより大きな柔軟性を提示し、かつ全体的な手術時間を短縮することができる理由による、外科医の観点との両方から価値がある。
【0008】
ライナーとカップとの間の微動を低減する寛骨臼システムが必要とされている。さらにそれは、外科医が股関節プロテーゼに対する調整を行うための改良された嵌め合い及びより大きな柔軟性を提供する寛骨臼カップ組立体の人工股関節置換術に恩恵をもたらすこととなり得る。
【0009】
この背景技術は、特許請求される主題の範囲を決定するのを支援することを意図するものではなく、特許請求される主題を上記で提示された欠点又は問題のうちのいずれか又はすべてを解決する実施態様に限定するものと見なされるものでもないことに留意されたい。この背景技術のセクションにおける任意の技術、文献、又は参照の議論は、記載された材料が本明細書で特許請求される主題のいずれかに対する先行技術であることの承認として解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、以下の[1]から[41]を含む。
[1]寛骨臼カップシステムであって、
複数のライナーのうちのいずれか1つを受容するように構成されたカップであって、上記カップが、
生体構造に係合するように構成された外面、
上記カップの上端における頂面、及び
略凹状の内面であって、
上記頂面に隣接する複数の内向きの凹型スカラップがその中に配設された円筒形バンドと、
上記円筒形バンドに隣接して配設されたテーパ状壁と、
上記テーパ状壁に隣接する内側球面であって、上記内側球面が、実質的に均一な曲率半径、及び上記球面を遮断する単一の溝を有する、内側球面と、を備える略凹状の内面を備える、カップと、
上記カップの上記凹状の内面内に受容されるように構成された実質的に凸状の外面を有するライナーであって、上記ライナーが、リム、及び上記リムに隣接する複数の外側に突き出るスカラップを備える、ライナーと、を備え、
上記ライナーが上記カップ内に着座したときに、上記ライナーの上記外側に突き出るスカラップの各々が、上記カップの上記内向きの凹型スカラップのそれぞれ1つと係合するように構成されている、
寛骨臼カップシステム。
[2]上記カップの上記外面が、多孔質コーティングを含む、上記[1]に記載のカップシステム。
[3]上記ライナーが、金属材料を含む、上記[1]に記載のカップシステム。
[4]上記金属材料が、ステンレス鋼、コバルト基合金、形状記憶合金、タンタル、金属複合材、及びそれらの組合せからなる群から選択される、上記[3]に記載のカップシステム。[5]上記ライナーの上記外面が、上記ライナーが上記カップ内に着座したときに上記カップの上記テーパ状壁と係合するように構成されたテーパ部を備え、それによって、上記ライナーを上記カップ内に保持する、上記[1]に記載のカップシステム。
[6]上記円筒形バンドの上記複数の内向きの凹型スカラップが、少なくとも12個の内向きの凹型スカラップを含む、上記[1]に記載のカップシステム。
[7]上記複数の外側に突出するスカラップが、少なくとも6つの外側に突出するスカラップを含む、上記[1]に記載のカップシステム。
[8]上記カップが、開口をさらに備え、上記ライナーが、ペグをさらに備え、上記開口が、上記ペグを受容するように構成されており、それによって、上記ライナーを上記カップに固定する、上記[1]に記載のカップシステム。
[9]上記ペグの底部が、上記ライナーの上記複数の外側に突出するスカラップが上記カップの上記頂面上に配設され、かつ上記ライナーの上記複数の外側に突出するスカラップが上記カップの上記複数の内向きのスカラップと噛み合うのを防止するために上記カップに対して十分に軸回転した状態で配向されているときに、上記カップの上記開口と位置合わせされ、かつ上記カップの上記開口の上方に所定の距離だけ懸架されるように構成されている、上記[8]に記載のカップシステム。
[10]上記ペグが、上記ライナーの上記複数の外側に突出するスカラップが上記カップの上記複数の内向きのスカラップと噛み合うまで上記ライナーを軸方向に回転させたときに、上記所定の距離を閉じ、かつ上記カップの上記開口内に正確に着座するように構成されており、それによって、上記ライナーを上記カップ内に固定する、上記[9]に記載のカップシステム。
[11]上記ライナーが、ポリエチレンを含む、上記[1]に記載のカップシステム。
[12]上記ライナーが、上記カップの上記内側球面に配設された上記単一の溝内に固定されるように構成されたロック機構を備える、上記[1]に記載のカップシステム。
[13]上記ロック機構が、実質的に三角の形状を有する、上記[12]に記載のカップシステム。
[14]上記ロック機構が、上記ライナーの上記外面の周りに連続的に延在する、上記[12]に記載のカップシステム。
[15]上記ロック機構が、上記ライナーの上記外面の周りに不連続に配設された複数の別々の突起を備える、上記[12]に記載のカップシステム。
[16]上記ロック機構が、
上記ライナーの上記凸状の外面から逸脱するように実質的に垂直な配向を有する傾斜部と、
上記傾斜部から実質的に垂直に延在する延在リップであって、上記延在リップが、上記カップの上記単一の溝に係合するように構成されている、延在リップと、を備える、
上記[12]に記載のカップシステム。
[17]上記ライナーが上記カップ内に着座したときに、上記延在リップの上面が、上記単一の溝の上部内側面の配向に実質的に平行な、実質的に水平な配向を有する、上記[16]に記載のカップシステム。
[18]上記ライナーが上記カップ内に着座したときに、上記単一の溝が上記延在リップ上に変形力を及ぼすように、上記延在リップの外径が上記単一の溝の内径よりも大きい、上記[16]に記載のカップシステム。
[19]上記延在リップの上記外径が、上記単一の溝の上記内径よりも最大0.03インチ大きい、上記[18]に記載のカップシステム。
[20]上記延在リップの厚さが、0.016インチ以上である、上記[16]に記載のカップシステム。
[21]上記延在リップの厚さが、0.02インチ以下である、上記[16]に記載のカップシステム。
[22]上記カップの上記単一の溝の上部内側面と上記ロック機構の上記延在リップの上面との間の第1の距離が、上記傾斜部から上記ロック機構の上記延在リップの最も外側の先端までの第2の距離以上である、上記[16]に記載のカップシステム。
[23]寛骨臼カップシステムを使用する方法であって、上記方法が、
上記寛骨臼カップシステムのカップを受容するために患者の骨を整えるステップと、
上記カップを上記患者の上記整えられた骨に固定するステップであって、上記カップが、
生体構造に係合するように構成された外面、
上記カップの上端における頂面、及び
略凹状の内面であって、
上記頂面に隣接する複数の内向きの凹型スカラップがその中に配設された円筒形バンドと、
上記円筒形バンドに隣接して配設されたテーパ状壁と、
上記テーパ状壁に隣接する内側球面であって、上記内側球面が、実質的に均一な曲率半径、及び上記球面を遮断する単一の溝を有する、内側球面と、を備える、略凹状の内面を備える、ステップと、
上記カップの上にライナーを位置合わせするステップであって、上記ライナーが、
上記カップの上記凹状の内面内に受容されるように構成された実質的に凸状の外面、
リム、及び
上記リムに隣接する複数の外側に突き出るスカラップを備える、ステップと、
上記ライナーの上記外側に突き出るスカラップの各々が、上記カップの上記内向きの凹型スカラップのそれぞれ1つと係合するように、上記ライナーを上記カップ内に固定するステップと、
を含む、方法。
[24]上記カップの上記外面が、上記患者の上記整えられた骨と上記カップの上記外面との間の骨の内部成長を助けるように構成された多孔質コーティングを含む、上記[1]に記載の方法。
[25]上記ライナーが、金属材料を含む、上記[1]に記載の方法。
[26]上記金属材料が、ステンレス鋼、コバルト基合金、形状記憶合金、タンタル、金属複合材、及びそれらの組合せからなる群から選択される、上記[25]に記載の方法。
[27]上記ライナーの上記外面が、テーパ部を含み、上記ライナーを上記カップ内に固定する上記ステップが、上記ライナーの上記テーパ部を上記カップの上記テーパ状壁と実質的に締まり嵌めで係合させるステップを含む、上記[23]に記載の方法。
[28]上記円筒形バンドの上記複数の内向きの凹型スカラップが、少なくとも12個の内向きの凹型スカラップを含む、上記[23]に記載の方法。
[29]上記複数の外側に突出するスカラップが、少なくとも6つの外側に突出するスカラップを含む、上記[23]に記載の方法。
[30]上記カップが、開口をさらに備え、上記ライナーが、ペグをさらに備え、上記ライナーを上記カップ内に固定する上記ステップが、上記ペグを上記開口内に受容するステップを含む、上記[23]に記載の方法。
[31]上記カップの上に上記ライナーを位置合わせする上記ステップが、上記ペグの底部を、上記ライナーの上記複数の外側に突出するスカラップが上記カップの上記頂面上に配設され、かつ上記ライナーの上記複数の外側に突出するスカラップが上記カップの上記複数の内向きのスカラップと噛み合うのを防止するために上記カップに対して十分に軸回転した状態で配向されているときに、上記カップの上記開口から所定の距離上方に位置合わせするステップを含む、上記[30]に記載の方法。
[32]上記ライナーを上記カップ内に固定する上記ステップが、上記ライナーの上記複数の外側に突出するスカラップが上記カップの上記複数の内向きのスカラップと噛み合い、かつ上記ペグが上記所定の距離を閉じて、上記カップの上記開口内に正確に着座するまで、上記ライナーを軸方向に回転させるステップを含む、上記[31]に記載の方法。
[33]上記ライナーが、ポリエチレンを含む、上記[23]に記載の方法。
[34]上記ライナーが、ロック機構を備え、上記ライナーを上記カップ内に固定する上記ステップが、上記ロック機構を上記カップの上記内側球面に配設された上記単一の溝内に固定するステップを含む、上記[23]に記載の方法。
[35]上記ロック機構が、実質的に三角の形状を有する、上記[34]に記載の方法。[36]上記ロック機構が、上記ライナーの上記外面の周りに連続的に延在する、上記[34]に記載の方法。
[37]上記ロック機構が、上記ライナーの上記外面の周りに不連続に配設された複数の別々の突起を備える、上記[34]に記載の方法。
[38]上記ロック機構が、
上記ライナーの上記凸状の外面から逸脱するように実質的に垂直な配向を有する傾斜部と、
上記傾斜部から実質的に垂直に延在する延在リップであって、上記延在リップが、上記カップの上記単一の溝に係合するように構成されている、延在リップと、を備える、
上記[34]に記載の方法。
[39]上記ライナーが上記カップ内に着座したときに、上記延在リップの上面が、上記単一の溝の上部内側面の配向に実質的に平行な、実質的に水平な配向を有する、上記[38]に記載の方法。
[40]上記ライナーを上記カップ内に固定しながら上記単一の溝が上記延在リップ上に変形力を及ぼすように、上記延在リップの外径が上記単一の溝の内径よりも大きい、上記[34]に記載の方法。
[41]上記カップの上記単一の溝の上部内側面と上記ロック機構の上記延在リップの上面との間の第1の距離が、上記傾斜部から上記ロック機構の上記延在リップの最も外側の先端までの第2の距離以上である、上記[34]に記載の方法。
一実施態様では、寛骨臼カップシステムが提供されている。システムは、複数のライナーを受容するように構成されたカップを備える。カップは、生体構造(anatomy)に係合するように構成された外面を備える。カップは、略凹状の内面を備える。カップは、カップの上端に頂面を備える。内面は、頂面に隣接する複数の内向きの凹型スカラップがその中に配設された円筒形バンドを備える。内面は、円筒形バンドに隣接して配設されたテーパ状壁を備える。内面は、テーパ状壁に隣接する内側球面であって、内側球面が、実質的に均一な曲率半径、及び球面を遮断する単一の溝を共に有する、内側球面を備える。システムは、カップの凹状の内面内に受容されるように構成された実質的に凸状の外面を有するライナーを備える。ライナーは、リム、及びリムに隣接する複数の外側に突き出るスカラップを備える。ライナーがカップ内に着座したときに、ライナーの外側に突き出るスカラップの各々が、カップの内向きの凹型スカラップのそれぞれ1つと係合するように構成されている。
【0011】
別の実施態様では、寛骨臼カップシステムを使用する方法が提供されている。方法は、寛骨臼カップシステムのカップを受容するために患者の骨を整えるステップを含む。方法は、カップを患者の整えられた骨に固定するステップを含む。カップは、生体構造に係合するように構成された外面と、カップの上端における頂面と、略凹状の内面と、を備える。略凹状の内面は、頂面に隣接する複数の内向きの凹型スカラップがその中に配設された円筒形バンドと、円筒形バンドに隣接して配設されたテーパ状壁と、テーパ状壁に隣接する内側球面であって、内側球面が、実質的に均一な曲率半径、及び球面を遮断する単一の溝を有する、内側球面と、を備える。方法は、カップの上にライナーを位置合わせするステップを含む。ライナーは、カップの凹状の内面内に受容されるように構成された実質的に凸状の外面と、リムと、リムに隣接する複数の外側に突き出るスカラップと、を備える。方法は、ライナーの外側に突き出るスカラップの各々が、カップの内向きの凹型スカラップのそれぞれ1つと係合するように、ライナーをカップ内に固定するステップを含む。
【0012】
主題の技術の様々な構成が本開示から当業者に明らかになり、主題の技術の様々な構成が例示として示されかつ説明されることが理解される。理解されるように、主題の技術は、他の異なる構成が可能であり、そのいくつかの詳細は、すべて主題の技術の範囲から逸脱することなく、様々な他の点で修正が可能である。したがって、概要、図面、及び詳細な説明は、本質的に例示的であり、制限的ではないと見なされるべきである。
【0013】
様々な実施形態は、有利な特徴を強調することに重点を置いて、以下に説明する図面と併せて詳細に論述される。これらの実施形態は、例示のみを目的としており、そこに例示され得るいかなるスケールも、開示された技術の範囲を限定するものではない。これらの図面は以下の図を含み、同様の符号は同様の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】いくつかの実施形態による、カップ及びライナーを有する寛骨臼カップ組立体の断面図である。
【0015】
図2】いくつかの実施形態による、寛骨臼カップ及びライナーの上面斜視図である。
【0016】
図3】いくつかの実施形態による、寛骨臼カップの断面図である。
【0017】
図4】いくつかの実施形態による、図3の寛骨臼カップの一部の拡大断面図である。
【0018】
図5】いくつかの実施形態による、図2の寛骨臼カップの一部の上面斜視図である。
【0019】
図6】いくつかの実施形態による、ライナーの断面図である。
【0020】
図7】いくつかの実施形態による、図5のライナーのロック機構の拡大断面図である。
【0021】
図8A】いくつかの実施形態による、寛骨臼カップの溝と係合されたライナーのロック機構の断面図である。
図8B】いくつかの実施形態による、寛骨臼カップの溝と係合されたライナーのロック機構の断面図である。
図8C】いくつかの実施形態による、寛骨臼カップの溝と係合されたライナーのロック機構の断面図である。
図8D】いくつかの実施形態による、寛骨臼カップの溝と係合されたライナーのロック機構の断面図である。
【0022】
図9】いくつかの実施形態による、図6図8Dのライナーの上面斜視図である。
【0023】
図10】いくつかの実施形態による、ライナーの側面図である。
【0024】
図11】いくつかの実施形態による、図10のライナーの斜視上面図である。
【0025】
図12】いくつかの実施形態による、カップ、ライナー、及び大腿骨組立体を有する寛骨臼カップ組立体を示す図である。
【0026】
図13】いくつかの実施形態による、寛骨臼カップ組立体を使用する方法に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の説明及び例は、開示された発明のいくつかの例示的な実施態様、実施形態、及び配置を詳細に示す。当業者は、本発明の範囲によって包含される本発明の数多くの変形及び修正があることを認識するであろう。したがって、特定の例示的な実施形態の説明は、本発明の範囲を限定すると見なされるべきではない。
【0028】
本明細書に記載の技術の実施態様は、概して、カップとライナーとを備える寛骨臼カップ組立体を対象とする。
【0029】
本開示の一般的な解釈原理
新規のシステム、装置、及び方法の様々な態様が、添付の図面を参照して以下により十分に説明される。しかしながら、教示の開示は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本開示を通して提示される任意の特定の構造又は機能に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの態様は、本開示が徹底的かつ完全となり、本開示の範囲を当業者に完全に伝えることとなるように提供される。本明細書の教示に基づいて、当業者は、本開示の範囲が、本開示の任意の他の態様から独立して実装されるか、又は本開示の任意の他の態様と組み合わせられるかにかかわらず、本明細書に開示された新規のシステム、装置、及び方法の任意の態様を網羅することを意図していることを理解するはずである。例えば、システム若しくは装置が実装されてもよく、又は方法が、本明細書に記載の態様のうちの任意の1つ又はそれ以上を使用して実行されてもよい。さらに、本開示の範囲は、本明細書に記載の本開示の様々な態様に加えて、又はそれ以外の、他の構造、機能性、若しくは構造及び機能性を使用して実行されるそのようなシステム、装置、又は方法を網羅することを意図している。本明細書に開示された任意の態様は、請求項の1つ又はそれ以上の要素に記載され得ることを理解されたい。好ましい態様のいくつかの利益及び利点が言及されているが、本開示の範囲は、特定の利益、使用、又は目的に限定されることを意図するものではない。詳細な説明及び図面は、限定ではなく本開示の単なる例示であり、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される。
【0030】
本明細書における複数対単数の用語の使用に関して、当業者は、文脈及び/又は用途に適切であるように、複数から単数へ、かつ/又は単数から複数へと変換することができる。様々な単数/複数の置換は、明確にするために本明細書に明示的に記載され得る。
【0031】
本明細書に記載されたもの又は行為の特性又は性質の絶対値を説明する場合、「実質的な」、「実質的に」、「本質的に」、「およそ」という用語、及び/又は程度についての他の用語若しくは語句は、数値範囲の特定の記載なしに使用され得る。本明細書に記載のもの又は行為の特性又は性質に適用される場合、これらの用語は、その特性又は性質に関連する所望の機能を提供することと一致する特性又は性質の範囲を指す。
特性又は性質に対して単一の数値が与えられる場合、それは、与えられた数値の有効数字1桁以内のその値の偏差を少なくともカバーすると解釈されることを意図している。
【0032】
本明細書に記載のもの又は行為の特性又は性質を定義するために数値又は数値範囲が提供される場合、その値又は範囲が程度についての用語で制限されるか否かにかかわらず、特性又は性質を測定する特定の方法も同様に本明細書で定義され得る。特性又は性質を測定する特定の方法が本明細書で定義されておらず、かつ特性又は性質について様々な一般に受け入れられている測定方法がある場合、測定方法は、特性又は性質の説明及び文脈を考慮すると当業者によって採用される可能性が最も高いであろう測定方法として解釈されるべきである。さらなる場合には、特性又は性質を測定するために当業者によって採用される可能性が等しく高い2つ又はそれ以上の測定方法がある場合、値又は値の範囲は、どの測定方法が選択されるかにかかわらず満たされると解釈されるべきである。
【0033】
本明細書、及び特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本文)で使用される用語は、特に他の指示がない限り、「オープン」な用語として意図されることが当業者によって理解されよう(例えば、「含んでいる」という用語は、「含んでいるがこれに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む」という用語は、「含むがこれに限定されない」と解釈されるべきである、などである)。
【0034】
特定数の導入された請求項の記載が意図される場合、そのような意図は請求項に明確に記載されることとなり、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しないことが当業者によってさらに理解されるであろう。例えば、理解の支援として、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項の記載を導入するために、導入句「少なくとも1つ」及び「1つ又はそれ以上」の使用を含み得る。しかしながら、そのような語句の使用は、同じ請求項が導入句「1つ又はそれ以上」又は「少なくとも1つ」及び不定冠詞、例えば「a」若しくは「an」を含むときであっても、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の記載の導入が、このような導入された請求項の記載を含む任意の特定の請求項を、1つのこのような記載のみを含む実施形態に限定することを意味すると考えられるべきではない(例えば、「a」及び/又は「an」は、典型的には、「少なくとも1つ」又は「1つ又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである)。同じことが、請求項の記載を導入するために使用される定冠詞の使用にも当てはまる。さらに、たとえ特定数の導入された請求項の記載が明示的に記載されているとしても、当業者は、そのような記載が典型的には少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきであることを認識するであろう(例えば、他の修飾語を含まない「2つの記載」であるそのままの記載は、典型的には、少なくとも2つの記載、又は2つ若しくはそれ以上の記載を意味する)。
【0035】
「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」に類似した慣例が使用される場合、そのような構造は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、CなしでA及びBを一緒に、BなしでA及びCを一緒に、AなしでB及びCを一緒に、並びにA、B、及びCを一緒に有するシステムを含み得る。2つ又はそれ以上の代替的な用語を提示する事実上任意の選言的な単語及び/又は語句は、明細書、特許請求の範囲、又は図面のいずれかにかかわらず、用語のうちの1つ、用語のうちのいずれか、又は両方の用語を含む可能性を考慮すると理解されるべきであることが当業者によってさらに理解されるであろう。例えば、「A又はB」という語句は、Bを含まないA、Aを含まないB、並びにA及びBを一緒に含むと理解されることとなる。
【0036】
本開示に記載された実施態様に対する様々な修正は、当業者にとっては容易に明らかであり得、本明細書で定義された一般的な原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく他の実施態様に適用することができる。したがって、本開示は、本明細書に示された実施態様に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲、原理、及び本明細書に開示された新規の特徴と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。「例示的」という用語は、本明細書では「例、事例、又は例示としての役割を果たす」を意味するために排他的に使用される。本明細書で「例示的」として説明される実施態様は、必ずしも他の実施態様よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。
【0037】
別個の実施態様の文脈で本明細書に記載されている特定の特徴は、単一の実施態様において組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実施態様の文脈で説明されている様々な特徴は、複数の実施態様において別々に、又は任意の好適な部分的組合せで実装することもできる。さらに、特徴は、特定の組合せで作用するものとして上記で説明することができ、さらには最初にそのように特許請求されることができるが、特許請求される組合せからの1つ又はそれ以上の特徴は、場合によっては、組合せから削除することができ、特許請求される組合せは、部分的な組合せ又は部分的な組合せの変形を対象とすることができる。
【0038】
本明細書に開示された任意の方法は、記載された方法を達成するための1つ又はそれ以上のステップ又は動作を含む。方法ステップ及び/又は動作は、特許請求の範囲から逸脱することなく互いに交換され得る。言い換えれば、ステップ又は動作の特定の順序が指定されない限り、特定のステップ及び/又は動作の順序及び/又は使用は、特許請求の範囲から逸脱することなく修正され得る。
【0039】
いくつかの例示的な実施形態の開示
次に図面を参照すると、図1は、寛骨臼カップ組立体10を示している。組立体10は、寛骨臼カップ20及び寛骨臼ライナー50を含む。カップ20は、少なくとも図2図13を参照して以下により詳細に説明するように、ライナー50と共に使用するように適合されている。図3に最もよく見られるように、カップ20は、内面14及び外面16を備える。外面16は、略半球の形状であり、骨盤の整えられた寛骨臼の骨との圧入を作り出すように構成されている。外面16は、無機化のための改善されたマトリックスを提供し、かつカップ20内への骨の内部成長を促進するように構成された、多孔質コーティングを含むことができる。多孔質コーティングは、カップ20の外面16の全部又は一部のみを覆ってもよい。カップ20は、生体適合性金属又は他の好適な材料、例えばセラミック材料で構成することができる。好適な金属には、限定されないが、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、コバルトクロムモリブデン、コバルトクロム、又は他の生体適合性材料が含まれる。
【0040】
いくつかの実施形態では、カップ20は、固定デバイス、例えばねじ又はペグを受容して、カップ20を整えられた寛骨臼に取り付けるように構成された、1つ又はそれ以上の固定孔40を備える(例えば、図3を参照)。固定孔40(複数可)は、一般に、寛骨臼カップ20の埋め込み及び固定中にねじ又は他の固定部材を寛骨臼部分内に通すために使用することができる。カップ20上の様々な位置に複数の固定孔を設けることができ、臨床医又は施術者は、カップ20を患者の寛骨臼に固定するためのねじを選択的に通すことができることが理解されよう。本開示のいずれかの箇所に記載されているように、モジュール式のペグ、突起、スパイク、又はカップ20の外面の多孔質コーティングを含むがこれらに限定されない追加の固定手段を採用して、カップ20を骨盤に固定することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、カップ20は、いくつかの実施形態では、ライナー50の嵌合ペグ70(例えば、図10及び図12を参照)を受容するように構成された開口又は孔38をさらに備える。少なくとも図1に示すように、開口38は、ライナー50のそのような嵌合ペグ70を受容し、かつ係合するようにねじ切りされてもよい。一実施形態では、開口38は、少なくとも図1及び図3に示すように、カップ20の頂点(例えば、極基部(polar base))に位置する。しかしながら、カップ20は、カップ20を整えられた寛骨臼内に挿入し、挿入具を受容し、かつ/又はライナー50をカップ20内に受容しかつ/若しくは固定する目的のために、任意選択的に他の場所に追加の開口を含むことができることが理解されよう。
【0042】
図1図3に最もよく見られるように、カップ20の内面14は、略凹形状を有する。それにもかかわらず、他の形状を採用してもよいことが理解されよう。内面14は、ライナー50(本明細書ではベアリングとも呼ばれる)を受け入れてロックするように設計されている。いくつかの実施形態では、ライナー50は、ポリエチレン(例えば、「ポリ」)ライナー又はベアリングを含むことができ、ライナー又はベアリングは、いくつかの実施形態では、ライナーロック機構を有し、いくつかの実施形態では、少なくとも図6図9を参照して以下により詳細に説明するように、標準的なモビリティ・アーティキュレーションにおいて使用される。いくつかの実施形態では、ライナー50は、少なくとも図10図12を参照して以下により詳細に説明するように、デュアル・モビリティ・アーティキュレーションのための金属及び/又は金属合金のライナー若しくはベアリングを含むことができる。
【0043】
カップ20は、カップ20の上端に形成された環状円筒形バンド26を備える。環状円筒形バンド26は、平坦な頂面18を有する。環状円筒形バンド26の内面は、内面14の隣接する下部と比べて嵌め込まれているか又は凹んでいてもよく(例えば、半径方向に嵌め込まれているかつ/又は凹んでいる)、それによってライナー50の係合を可能にする。
【0044】
複数の内向きの凹型スカラップ22が、環状円筒形バンド26の内面上に、頂面18に隣接して配設されている。内向きの凹型スカラップ22は、ライナー50上の嵌合する外側に突出するスカラップ58を受容して受け入れるように構成されており、それによって、ライナー50とカップ20との間の非回転性の安定を達成及び/又は提供する。いくつかの実施形態では、複数の内向きの凹型スカラップ22は、環状円筒形バンド26を回って等間隔に離間及び/又は分布することができる。いくつかの実施形態では、カップ20は、少なくとも12個の内向きの凹型スカラップ22を含む。しかしながら、本開示はそのように限定されず、任意の数の内向きの凹型スカラップ22が考えられる。有利には、いくつかの実施形態では、カップ20は、ライナー50上に存在する、対応する外側に突出するスカラップ58と同じ数の内向きの凹型スカラップ22を含む。いくつかの他の実施形態では、カップ20は、ライナー50が有する外側に突出するスカラップ58(例えば、6つの外側に突出するスカラップ)よりも多数の内向きの凹型スカラップ22(例えば、12個の内向きの凹型スカラップ)を含む。いくつかの実施形態では、カップ20とライナー50との間の複数の適合する回転配向を保証するために、カップ20のいくつかの等間隔に離間した内向きの凹型スカラップ22は、ライナー50上のいくつかの均等に外側に突出するスカラップ58の整数倍である。
【0045】
円筒形バンド26と複数の内向きの凹型スカラップ22との組合せもまた、製造に関して利点をもたらす。より具体的には、カップ20内の複数の内向きのスカラップ22が、テーパ状の又は実質的に半球状の面ではなく、実質的に垂直方向に配向された円筒形バンド26から突き出ているため、ライナー50上の嵌合する外側に突出するスカラップ58は、標準的な旋盤機器を使用して容易に、対応する円筒形バンドに基づいて機械加工することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、環状円筒形バンド26の下部は、内向きの凹部又は溝24を含む(例えば、図3及び図5を参照)。この凹部又は溝24は、外科用器具、例えばトライアルライナーなどと共に使用するように構成されてもよいが、ライナー50に影響を与えるか、又はライナーと相互作用することを意図しない。
【0047】
カップ20は、円筒形バンド26の直下でカップ20の底部に向かって延在する上部の部分的なテーパ面28をさらに含む。いくつかのそのような実施形態では、上部テーパ状壁部28のテーパは、例えば、上部テーパ状壁部28の内向きの面の断面(例えば、図3を参照)が、湾曲した又は半円形の線よりもむしろ、実質的には直線に従うように、実質的に半半球の形状よりもむしろ、実質的に半円錐の形状を有する。いくつかの実施形態では、テーパ状壁部28は、ライナー50との締まり嵌めを作成する。いくつかの実施形態では、上部テーパ状壁部28は、カップ20が図3に示すように配向されているときの垂直な配向から約2度~約40度のテーパを有することができる。いくつかの実施形態では、上部テーパ状壁部28は、約9度~約20度のテーパを有する。いくつかの実施形態では、上部テーパ状壁部28は、約10度~約15度のテーパを有する。別の態様では、上部テーパ状壁部28は、約12度のテーパを有する。いくつかの実施形態では、寛骨臼カップ20の設計は、テーパ状壁部28に対してポリライナーのための隙間を提供する。
【0048】
テーパ状壁部28の基部又は底縁に隣接して、カップ20は、内側球面32を備える。いくつかの実施形態では、環状溝34がカップ20の内面14に形成され、かつ内側球面32の頂部30が環状溝34の上方に配設され、内側球面32の残りの部分が環状溝34の下方に配設されるように、内側球面32を横切るか又は遮断する。いくつかのそのような実施形態では、溝34は、カップ20の内側球面32を回って周方向又は円周方向に延在して、内側球面32の頂部30の底縁を画定する。いくつかの実施形態では、溝34は、実質的に円筒形の形状を有し、例えば、カップ20が、例えば、図3及び図4に示す配向にあるとき、環状溝34の側壁は、実質的に垂直な配向を有する。いくつかの実施形態では、溝34は、カップ20の内部を完全に回って延在する。いくつかの他の実施形態では、溝34は、カップ20の内部で不連続に離間されてもよく、「C」形状、半球形状、又は何らかの他の好適な形状を有してもよい。
【0049】
溝34の上方(30)及び下方(32)の内側球面32のセクションは、均一な曲率半径を有する。したがって、カップ20の球状内面32の遮断部としてのロック溝34の拡大断面図を示す図4に少なくとも見られるように、溝34は、テーパ状壁部28の基部を越えて突出しない。すべてではないが一部の実施形態では、溝34は、ライナー50のためのロック機構として機能する。いくつかのそのような実施形態では、溝34は、少なくとも図6図8Dを参照して以下に論述するように、ライナー50のロック機構62を捕捉するように構成されている。
【0050】
次に、ライナー50の特定の態様を、少なくとも図6図11に関連して、かつ少なくとも図10及び図11に関連して説明する。本明細書で使用される場合、「ライナー」及び「ベアリング」という用語は、ベアリング材料を含み、かつ寛骨臼カップ20内に嵌まる、本体を指すために交換可能に使用される。いくつかの実施形態では、ライナー50は、ポリエチレン、例えば、高分子量及び/又は架橋ポリエチレンを含む。あるいは、ライナー50は、例えば、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、コバルトクロムモリブデン、コバルトクロム、形状記憶合金、例えばニチノール、タンタル、又は他の複合材若しくは生体適合性材料(複数可)で構成された、金属ベアリングであってもよい。さらに別の態様では、ライナー50は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、正方晶ジルコニア多結晶体、アルミナ-ジルコニア複合材、並びに/又は非酸化物セラミックス、例えば炭化ケイ素及び窒化ケイ素で作製された、セラミックライナーとすることができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、ライナー50は、患者に挿入する前にカップ20に対して予め組み立てることができる。いくつかの他の実施形態では、最初にカップ20を患者内に位置決めすることができ、次いでライナー50を導入してカップ20内に位置決めすることができる。したがって、本明細書に記載の寛骨臼システムは、手術前又は手術中に組み立てることができる少なくとも2つの部品のコンポーネント設計を企図する。
【0052】
図6を参照すると、いくつかの実施形態では、ライナー50は、中心軸60と一致する少なくとも1つの平面に対して対称である。しかしながら、設置されると、カップ20内のライナー50の回転が防止され、ライナー50上の複数の外側に突出するスカラップ58がカップ20の内向きの突出部22と噛み合う結果として、それらの間の微動が少なくとも部分的に低減される。
【0053】
いくつかの実施形態では、複数の外側に突出するスカラップ58は、ライナー50の周りに等間隔に離間及び/又は分布している。上述したように、いくつかの実施形態では、ライナー50は、カップが有する内向きの凹型スカラップ22と同じ数の外側に突出するスカラップ58を含む。いくつかの他の実施形態では、ライナー50は、カップ50が有する内向きの凹型スカラップ22(例えば、12個の内向きの凹型スカラップ)よりも少ない数の外側に突出するスカラップ58(例えば、6つの外側に突出するスカラップ)を含む。また、いくつかの実施形態では、カップ20とライナー50との間の複数の適合する回転配向を保証するために、カップ20のいくつかの等間隔に離間した内向きの凹型スカラップ22は、ライナー50上のいくつかの均等に外側に突出するスカラップ58の整数倍である。
【0054】
いくつかの実施形態では、例えば、ライナー50がポリライナーである場合、ライナー50は、従来のポリライナーと比較して厚さが増加した少なくとも一部を有することができる。より厚いポリライナーリムは、数多くの利益を提供する。例えば、より厚いポリライナーは、インピンジメント損傷障害の可能性を低減し、ひいては、人工股関節全置換術における深刻な合併症である股関節脱臼の発生率を低減する。より薄いポリライナーは、寛骨臼カップのリム又はロック機構に亀裂をもたらす可能性がある。
【0055】
ライナー50は、カップ20と嵌合するように設計されている。したがって、カップ20と同様に、ライナー50は、実質的に半球の形状であり、(外側から見て)実質的に凸状であるライナー外面52と、(内側から見て)実質的に凹状であるライナー内面54と、を有する。
【0056】
ライナー50は、ライナー外面52の頂上に配設されたライナーリム56を備える。ライナー50は、ライナー外面52とライナー内面54との間で測定された厚さtを有する。いくつかの実施形態では、ライナー50の厚さtは実質的に均一である。いくつかの他の実施形態では、ライナー50の厚さtは、ライナーリム56とライナー頂点(軸60が、図6の底部においてライナー50の断面と交差するところ)との間で変化する。
【0057】
ライナー50は、リム56においてライナー50の外面52から延在する、複数の外側に突出するスカラップ58を備える。上述したように、これらの外側に突出するスカラップ58は、カップ20の内向きの凹型スカラップ22と係合し、かつライナー50をカップ20に対して実質的に回転可能に固定することによって、カップ20に対するライナー50の位置合わせ及び固定を容易にするように構成されている。一実施形態では、外側に突出するスカラップ58の数は、カップ20の内向きの凹型スカラップ22の数に等しい。別の実施形態では、外側に突出するスカラップ58の数は、カップ20の内向きのスカラップ22の数よりも少ない。例えば、いくつかの実施形態では、外側に突出するスカラップ58の数は、カップ20の内向きの凹型スカラップ22の数(例えば、12個)の半分(例えば、6つ)であってもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、ライナー外面52はまた、例えば、図6図9に示すように、ロック機構62を含むことができる。ロック機構62は、従来の成形及び形成技術によって形成することができ、カップ20内へのライナー50の埋め込み、位置決め、及び固定中に、カップ20の内側球面32内の溝34と係合するように構成されている。ロック機構62は、ライナー50と一体であることが好ましい。ロック機構62は、溝34内にスナップ留めされ、それによって、ライナー50をカップ20に対して所定の位置に固定する。いくつかの実施形態では、ロック機構62は、ライナー50の外側の周りの連続的なオーバーハングとして形成されている。いくつかの他の実施形態では、ロック機構62は、代替的に、ライナー50の外側の周りに目立たない突起領域を有する複数のセグメント化された突起を含む。いくつかの実施形態では、ロック機構62は、実質的に角度のある(すなわち、実質的に丸くない)幾何学的形状を有する。
【0059】
一実施形態では、ロック機構62は、図7の拡大部分図に最もよく示すように、実質的に三角の形状である。しかしながら、ロック機構62が溝34と係合するときにロック機構62が十分に捕捉されるように、ロック機構62に様々な幾何学的形状を採用することができることが理解されよう。特に、ロック機構62は、傾斜部64及び延在リップ66を含む。いくつかの実施形態では、傾斜部64は、ライナー50が図6に示すように配向されたときに傾斜部64が実質的に垂直な配向(例えば、実質的に円筒形の面)を有するように、ライナー50の外面52の半球形状から逸脱する。延在リップ66は、傾斜部64から延在する。好ましくは、延在リップ66は、ライナー50が図6に示すように配向されたときに延在リップ66の頂上面が実質的に水平な配向を有するように、例えば、90度の角度で傾斜部64から延在する(すなわち、傾斜部64に対して垂直である)。延在リップ66の頂上面のそのような水平な配向は、ライナー50がカップ20内に正確に着座したときに、溝34の内側の上面の配向と実質的に平行であってもよい。しかしながら、本開示はそのように限定されず、傾斜部64及び/又は延在リップ66は、延在リップ66を溝34に正確にスナップ留めして、ライナー50をカップ20内に固定することを保証するのに好適な、互いに対する、かつ/又はライナー50の外面52に対する任意の配向を有することができる。
【0060】
ロック機構62は、外側に突出するスカラップ58の下方の任意の位置に配設することができる。いくつかの態様では、ロック機構62は、外側に突出するスカラップ58のすぐ下に(例えば、実質的に真下に隣接して)位置決めされている。したがって、ロック機構62は、カップ20と係合するときにロック機構62がカップ20の円筒形バンド26に又はその下方に位置決めされるように、ライナー50の外側に沿って位置決めされる。別の態様では、ロック機構62は、ライナーリム56及び中心軸60の遠位端におけるライナー頂点から測定した中間点又はその周りに位置する。
【0061】
図8A図8Dを参照すると、カップ20の溝34と係合したライナー50のポリライナーロック機構62を有する、カップ20の部分側断面図が示されている。カップ組立体10は、カップ20に対するライナー50の適切な位置、嵌め合い、及び/又は固定を保証するために、ロック機構62と溝34との間の捕捉量を最適化するように寸法決めされている。少なくともロック機構62及び溝34の公差及び寸法によってライナー50とカップ20との間の干渉を最適化することによって、本明細書に開示された寛骨臼カップ組立体10は、組立てのための特性及び分離に対する耐性が改良されている。
【0062】
図8Aに見られるように、ロック機構62とカップ20との係合は、保持が最小量の干渉の状態で十分に強く(すなわち、比較的低い押込力)、かつ最大の干渉の状態で組み立てることができるような(すなわち、デバイスの取り外しは、比較的かつ/又はかなり高い押出力を必要とすべきである)、十分な捕捉を有するべきである。いくつかの実施形態では、ライナー50がカップ20内に導入されると、ロック機構62はカップ20の内面と係合して、溝34内に付勢される。図8Bに見られるように、ロック機構62の外径(D)及びカップ溝34の内径(D)は、ライナーの位置合わせ及び安定性を最適化して押出強度の増加をもたらすように、ロック機構62を圧迫又は非常にわずかに変形させるようなサイズである。例えば、いくつかの実施形態では、ロック機構62の外径(D)は、カップ溝34の内径(D)よりも最大約0.03インチ大きくすることができる。いくつかの実施形態では、ロック機構62の外径(D)は、カップ溝34の内径(D)よりも最大約0.008インチ大きくすることができる。いくつかの実施形態では、ロック機構62の外径(D)は、カップ溝34の内径(D)よりも最大約0.002インチ小さくすることができる。したがって、DがDよりも小さいいくつかの実施形態では、ロック機構62がカップ溝24内に収められたときに、ロック機構62の圧迫及び/又は非常にわずかな変形はもはや生じない場合がある。いくつかのそのような実施形態では、ライナー20が所定の位置に着座したときに、ロック機構62がライナーをカップ20に固定する。
【0063】
図8Cでは、ロック機構62は、ロック機構62の頂上と溝34の頂上との間の隙間を最適化して、ロック機構62が溝34内に跳ね返り、それにより完全に捕捉されるのに十分な距離(D)を有することを保証するように構成されている。例えば、いくつかの実施形態では、距離(D)は、ロック機構62の傾斜部64からロック機構62の延在リップ66の最も外側の先端までの距離にほぼ等しいか、又はそれよりもわずかに大きい。図8Dでは、ロック機構62は、最も薄い状態で十分な強度を保証するのに十分な鋤先厚さ(shear thickness)(T)で寸法決めされている。有利には、いくつかの実施形態では、鋤先厚さ(T)は0.02インチ以下である。いくつかの実施形態では、鋤先厚さ(T)は0.016インチ以上である。しかしながら、本開示はそのように限定されず、鋤先厚さ(T)は任意の好適な値を有することができる。ロック機構62の厚さは、ライナー50が、溝34内の適所にスナップ留めされるために小さすぎる力で押し出されず、さらに、完全かつ確実な組立てが防止されるような厚すぎる厚さが回避されるような、適切な強度を保証するように選択される。
【0064】
図10及び図11を参照すると、ライナー50の追加の実施形態が示されている。いくつかの実施形態では、ライナー50は、中心軸60を中心に円筒状に対称である。しかしながら、設置されると、カップ20内のライナー50の回転が防止され、ライナー50上の複数の外側に突出するスカラップ58がカップ20の内向きの突出部22と噛み合う結果として、それらの間の微動が少なくとも部分的に低減される。
【0065】
ライナー50は、カップ20と嵌合するように設計されている。したがって、カップ20と同様に、ライナー50は、実質的に半球の形状であり、(外側から見て)実質的に凸状であるライナー外面52と、(内側から見て)実質的に凹状であるライナー内面54と、を有する。
【0066】
ライナー50は、ライナー外面52の頂上に配設されたライナーリム56と、リム56においてライナー50の外面52から延在する複数の外側に突出するスカラップ58と、を備える。一実施形態では、外側に突出するスカラップ58の数は、カップ20の内向きの凹型スカラップ22の数に等しい。別の実施形態では、外側に突出するスカラップ58の数は、カップ20の内向きのスカラップ22の数よりも少なくなる。例えば、いくつかの実施形態では、外側に突出するスカラップ58の数は、カップ20の内向きの凹型スカラップ22の数(例えば、12個)の半分(例えば、6つ)であってもよい。また、いくつかの実施形態では、カップ20とライナー50との間の複数の適合する回転配向を保証するために、カップ20のいくつかの等間隔に離間した内向きの凹型スカラップ22は、ライナー50上のいくつかの均等に外側に突出するスカラップ58の整数倍である。
【0067】
上述したように、これらの外側に突出するスカラップ58は、カップ20の内向きの凹型スカラップ22と係合し、かつライナー50をカップ20に対して実質的に回転可能に固定することによって、カップ20に対するライナー50の位置合わせ及び固定を容易にするように構成されている。いくつかの実施形態では、複数の外側に突出するスカラップ58は、ライナー50がカップ20の頂上に配設されているが、カップ20との「位置合わせされた」位置に対して十分に軸回転した状態で配向されているときに、ライナー50がカップ20の上方の「係合される」位置のできるだけ近くに載置されるように、できるだけ薄い厚さtを有して、最初にライナー50の複数の外側に突出するスカラップ58がカップ20の複数の内向きのスカラップ22と噛み合うのを防止して、最初にライナー50がカップ20内に完全に着座するのを防止する。カップ20とライナー50との間のこの初期配向は、ライナー50が「予め設定された」位置でカップ20と正確に位置合わせされることを保証する。できるだけ薄い厚さtを有する複数の外側に突出するスカラップ58を意図的に提供することは、より大きな厚さを有するシステムよりもいくつかの利益を提供する。例えば、そのような最小厚さtは、ライナー50が上述の「予め設定された」位置から「位置合わせされた」、かつ「係合される」位置までの最小距離のみ下降する必要があることを保証し、これは、ライナー50がカップ20に固定されたときに位置ずれが起こる可能性を大幅に軽減する。
【0068】
いくつかの実施形態では、ライナー50の外面52の少なくとも上部68は、テーパ状(例えば、カップ20の上部テーパ状壁部28に対して嵌合するように構成された上部)にすることができる。有利には、いくつかのそのような実施形態では、そのようなテーパの程度は、カップ20の上部テーパ状壁部28のテーパを反映し、したがって、カップ20の上部テーパ状壁部28に関して上述したように、任意の角度又は角度範囲のテーパの程度を有することができる。いくつかのそのような実施形態では、ライナー50の外面52のテーパ状上部68は、カップ20の上部テーパ状壁部28との干渉及び/又は摩擦嵌めを提供する。いくつかのそのような実施形態では、ライナー50は、カップ20の内面14に形成された任意の環状溝34内に延在するように構成されなくてもよい。したがって、いくつかのそのような実施形態では、ライナー50は、図6図9に関連して前述したようなロック機構62を含まない。さらに、そのような実施形態のすべてではないが一部では、カップ20は、環状溝34を省略することもできる。
【0069】
いくつかの実施形態では、ライナー50は、ライナー50の外面52の底部から延在するペグ70を備える。ペグ70は、ライナー50がカップ20内に正確に着座したときにカップ20の開口38と係合するように構成されている。いくつかの実施形態では、ペグ70は、ねじ切りされて、カップ20の開口38内の嵌合ねじと係合するように構成され、それによって、ライナー50をカップ20内に固定する。いくつかの実施形態では、ペグ70は、ライナー50が上述の「予め設定された」位置でカップ20上に載置されているときに、カップ20の嵌合開口38の真上に載置されるように構成されている。ライナー50が、ライナー50の外側に突出するスカラップ58をカップ20の複数の内向きのスカラップ22と位置合わせするのに十分に回転されると、ライナー50は、ライナー50の外側に突出するスカラップ58の意図的に減少された厚さtによって画定された「位置合わせされた」及び「係合される」位置まで意図的に短縮された距離を降下し、ライナー50のペグ70は、カップ20の開口38と係合し、それによって、ライナー50とカップ20との間の位置ずれを防止する。
【0070】
ライナー50の底部に配設されたペグ70と、ライナー50の外側に突出するスカラップ58及び/又はカップ20の内向きのスカラップ22の意図的に低減された厚さとが一緒に機能して、ライナー50をカップ20と正確にかつ的確に「予め位置合わせ」し、次いでライナー50がカップ20内のその最終位置に着座するときに位置合わせを維持することを理解されたい。対照的に、ライナーの外側に突出するスカラップ及び/又はカップの内向きのスカラップのこのような意図的に低減された厚さに関連してこのようなペグを利用しないシステムは、このような「予め位置合わせされた」位置とこのような「位置合わせされた」かつ「係合される」位置との間の落下距離の増加及び位置合わせがずれる可動性の増加に少なくとも部分的に起因して、カップとライナーとの間のインビボにおける位置ずれの可能性が増加するリスクがある。そのような位置ずれ及び傾いたライナーは、インビボにおいて、埋め込まれた部品の腐食のリスクを著しく増加させることが分かっている。したがって、本明細書に開示されたシステム、ライナー、及び/又はカップは、以前のシステム、ライナー、及び/又はカップよりも新規かつ非自明な改善を提供する。
【0071】
図12を参照すると、いくつかの実施形態では、ライナー50をカップ20に固定すると、ライナー50は、その中に大腿骨組立体300を受容するように構成することができる。いくつかの実施形態では、そのような大腿骨組立体300は、内側ヘッド320の上にかつ/又は周囲に配設された外側ヘッド330と、内側ヘッド320に結合されたステムトラニオン330と、を備えることができる。ステムトラニオン330は、患者の大腿骨内に固定されるように構成され、かつ内側ヘッド320を患者の大腿骨に固定するように構成されている。内側ヘッド320は、患者の大腿骨の本来の近位ヘッドの代わりとして機能するように構成されている。内側ヘッド320は、任意の好適な材料、例えば、金属、金属合金などを含むことができる。いくつかの実施形態では、外側ヘッド330は、ライナー50の内面との低摩擦界面を提供するスリーブとして機能する。外側ヘッド330は、任意の好適な材料、例えば、ポリエチレン、金属、金属合金などを含むことができる。
【0072】
次に、寛骨臼カップ組立体、例えば図1図12のうちのいずれかに関連して説明したような寛骨臼カップ組立体を使用する例示的な方法について論じる。図13は、いくつかの実施形態による、そのような使用方法に対応するフローチャート1300を示している。フローチャート1300は、1つ又はそれ以上の動作及び/又はステップを示しているが、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、1つ又はそれ以上の記載された動作を省略することができ、1つ又はそれ以上の追加の又は代替の動作を追加することができ、かつ/又は1つ又はそれ以上の動作を具体的に記載されたものとは別の順序で実施することができることを理解されたい。
【0073】
ブロック1302は、寛骨臼カップシステムのカップを受容するために患者の骨を整えるステップを含む。例えば、少なくとも1つの図に関連して前述したように、外科医は、寛骨臼ソケットをリーミングしてカップ20を受け入れるための表面を作成することによって骨を整えることができる。
【0074】
ブロック1304は、カップを患者の整えられた骨に固定するステップを含む。例えば、少なくとも1つの図に関連して前述したように、カップ20は、例えば、1つ又はそれ以上の孔40(例えば、図3を参照)を介して、骨セメント、締まり嵌め若しくは圧入、又は1つ又はそれ以上の骨ねじによって所定の位置に保持されてもよい。
【0075】
前述のように、カップ20は、生体構造に係合するように構成された外面16と、カップ20の上端における頂面18と、略凹状の内面14と、を備える。略凹状の内面14は、頂面18に隣接する複数の内向きの凹型スカラップ22をその中に配設した円筒形バンド26と、円筒形バンド26に隣接して配設されたテーパ状壁28と、テーパ状壁28に隣接する内側球面30、32と、を備える。内側球面14は、実質的に均一な曲率半径、及び球面14を遮断する単一の溝34を有する。いくつかの実施形態では、円筒形バンド26の複数の内向きの凹型スカラップ22は、少なくとも12個の内向きの凹型スカラップ22を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、カップ20の外面16は、患者の整えられた骨とカップ20の外面16との間の骨の内部成長を助けるように構成された多孔質コーティングを含む。
【0077】
ブロック1306は、ライナーをカップの上に位置合わせするステップを含む。例えば、少なくとも1つの図に関連して前述したように、外科医は、カップ20の上にライナー50を位置合わせすることができる。前述のように、ライナー50は、カップ20の凹状の内面14内に受容されるように構成された実質的に凸状の外面52と、リム56と、リム56に隣接する複数の外側に突き出るスカラップ58と、を備えることができる。いくつかの実施形態では、ライナー50は金属材料を含む。いくつかの実施形態では、金属材料は、ステンレス鋼、コバルト基合金、形状記憶合金、タンタル、金属複合材、及びそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、複数の外側に突出するスカラップ58は、少なくとも6つの外側に突出するスカラップ58を含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、ライナーをカップの上に位置合わせするステップ(例えば、ブロック1306)は、ライナー50の複数の外側に突出するスカラップ58がカップ20の頂面18上に配設され、かつライナー50の複数の外側に突出するスカラップ58がカップ50の複数の内向きのスカラップ22と噛み合うのを防止するためにカップ20に対して十分に軸回転した状態で配向されているときに、ペグ70の底部をカップ50の開口38の上方に所定の距離t位置合わせするステップを含むことができる。
【0079】
ブロック1308は、ライナーの外側に突き出るスカラップの各々がカップの内向きの凹型スカラップのそれぞれ1つと係合するように、ライナーをカップ内に固定するステップを含む。例えば、少なくとも1つの図に関連して前述したように、いくつかの実施形態では(例えば、図10及び図11を参照)、ライナー50の外面52はテーパ部68を備え、ライナー50をカップ20内に固定するステップは、ライナー50のテーパ部68をカップ20のテーパ状壁28と実質的に締まり嵌めで係合させるステップを含む。いくつかの実施形態では(例えば、図10及び図11を参照)、カップ20は開口38をさらに備え、ライナー50はペグ70をさらに備える。いくつかのそのような実施形態では、ライナー50をカップ20内に固定するステップは、ペグ70を開口38内に受容するステップを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、ライナー50をカップ20内に固定するステップは、ライナー50の複数の外側に突出するスカラップ58がカップ20の複数の内向きのスカラップ22と噛み合い、ペグ70が所定の距離tを閉じ、かつカップ50の開口38内に正確に着座するまで、ライナー50を軸方向に回転させるステップを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では(例えば、図6図9を参照)、ライナー50は、ポリエチレン又は別の適切なプラスチック材料を含む。いくつかのそのような実施形態では、ライナー50はロック機構62を備え、ライナー50をカップ20内に固定するステップは、ロック機構62をカップ20の内側球面14内に配設された単一の溝34内に固定するステップを含む。いくつかの実施形態では、ロック機構62は、実質的に三角の形状を有する。いくつかの実施形態では、ロック機構62は、ライナー50の外面52の周りに連続的に延在する。いくつかの実施形態では、ロック機構62は、ライナー50の外面の周りに不連続に配設された複数の別々の突起を含む。いくつかの実施形態では、ロック機構62は、ライナー50の凸状の外面52から逸脱するように実質的に垂直な配向を有する傾斜部64と、傾斜部34から実質的に垂直に延在し、かつカップ20の単一の溝34に係合するように構成された延在リップ66と、を備える。いくつかの実施形態では、延在リップ66の上面は、ライナー50がカップ20内に着座したときに単一の溝34の上部内側面の配向と実質的に平行な、実質的に水平な配向を有する。いくつかの実施形態では、延在リップ66の外径Dlは、単一の溝34がライナー50をカップ20内に固定しながら延在リップ66上に変形力を及ぼすように、単一の溝34の内径Dgよりも大きい。いくつかの実施形態では、カップ20の単一の溝34の上部内側面とロック機構62の延在リップ66の上面との間の第1の距離Dsは、傾斜部64からロック機構62の延在リップ66の最も外側の先端までの第2の距離以上である。
【0082】
本開示全体を通して「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本開示全体を通して述べられている引用された語句又はその変形は、必ずしもすべてが同じ実施形態を参照しているわけではない。
【0083】
同様に、実施形態の上記の説明では、本開示を簡素化する目的で、様々な特徴が単一の実施形態、図、又はその説明にまとめられていることがあることを理解されたい。しかしながら、この開示方法は、本出願又は本出願に対する優先権を主張する任意の出願における任意の請求項が、その請求項に明示的に述べられたものよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、本発明の態様は、任意の単一の前述の開示された実施形態のすべての特徴よりも少ない特徴の組合せにある。したがって、この「発明を実施するための形態」に続く特許請求の範囲はこの「発明を実施するための形態」に、これによって明示的に組み込まれ、各請求項は別個の実施形態として主張している。本開示は、独立請求項とその従属請求項とのすべての置換を含む。
【0084】
特徴又は要素に関する「第1の」という用語の特許請求の範囲における記載は、第2の又は追加のそのような特徴又は要素の存在を必ずしも暗示しない。
【0085】
本開示の特定の実施形態及び用途を例示しかつ説明してきたが、本開示は、本明細書に開示された正確な構成及び構成要素に限定されないことを理解されたい。本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された本開示の方法及びシステムの構成、運用、及び詳細において、当業者には明らかであろう様々な修正、変更、及び変形が行われ得る。
【符号の説明】
【0086】
10 寛骨臼カップ組立体
14 略凹状の内面/内側球面
16 外面
18 頂面
20 寛骨臼カップ
22 内向きの凹型スカラップ
24 内向きの凹部又は溝
26 環状円筒形バンド
28 上部の部分的なテーパ面/上部テーパ状壁部/テーパ状壁
30 頂部/内側球面
32 球状内面/内側球面
34 カップ溝/単一の溝/ロック溝/環状溝
38 開口又は孔/嵌合開口
40 固定孔
50 寛骨臼ライナー
52 ライナー外面/実質的に凸状の外面
54 ライナー内面
56 ライナーリム
58 外側に突出するスカラップ
60 中心軸
62 ロック機構
64 傾斜部
66 延在リップ
68 テーパ状上部/テーパ部
70 嵌合ペグ
300 大腿骨組立体
320 内側ヘッド
330 ステムトラニオン
1300 フローチャート
1302 ブロック
1304 ブロック
1306 ブロック
1308 ブロック
外径
内径
距離
t 厚さ
厚さ
T 鋤先厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12
図13