(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】情報処理装置および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20240325BHJP
【FI】
G16H20/00
(21)【出願番号】P 2022548327
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2020034371
(87)【国際公開番号】W WO2022054215
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】安岡 秀訓
(72)【発明者】
【氏名】古泉 秀太
(72)【発明者】
【氏名】永澤 恵
(72)【発明者】
【氏名】田村 和義
【審査官】玉木 宏治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/048812(WO,A1)
【文献】特開2011-253464(JP,A)
【文献】特開2014-008993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実施された内視鏡検査の検査日および診断データを含む検査データを複数保持する記録装置に接続する情報処理装置であって、
前記記録装置に保持されている複数の検査データの中から、所定の診断データを含む検査データを特定する第1検査特定部と、
前記記録装置に保持されている複数の検査データの中から、前記第1検査特定部により特定された検査データに含まれる検査日の後に、同じ患者に対して実施された複数の検査の検査データを特定する第2検査特定部と、
前記第1検査特定部および前記第2検査特定部により特定された複数の検査データにもとづいて、前記第1検査特定部により特定された検査データに含まれる検査日から当該患者が完治するまでの期間と、当該患者が完治するまでに実施された検査の回数とを取得する情報取得部と、
複数の患者の検査データから前記情報取得部が取得した期間および検査回数をもとに、適切な検査間隔および検査回数を導出する導出部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記第1検査特定部は、癌の再発可能性があることを示す検査データを特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
適切な検査間隔および検査回数に関する情報を通知する通知処理部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記導出部が導出した適切な検査間隔および検査回数を用いて、患者の経過観察のための検査予定を生成する検査予定生成部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
癌の再発リスクに関する患者情報を取得する患者情報取得部と、
取得した患者情報に応じて、検査予定を修正する検査予定修正部と、をさらに備える、
ことを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
実施された内視鏡検査の検査日および診断データを含む検査データを複数保持する記録装置に接続する情報処理装置における情報処理方法であって、
前記情報処理装置が、
前記記録装置に保持されている複数の検査データの中から、所定の診断データを含む検査データを特定する第1ステップと、
前記記録装置に保持されている複数の検査データの中から、第1ステップにより特定された検査データに含まれる検査日の後に、同じ患者に対して実施された複数の検査の検査データを特定する第2ステップと、
前記第1ステップおよび前記第2ステップにより特定された複数の検査データにもとづいて、前記第1ステップにより特定された検査データに含まれる検査日から当該患者が完治するまでの期間と、当該患者が完治するまでに実施された検査の回数とを取得する第3ステップと、
複数の患者の検査データから前記第3ステップで取得した期間および検査回数をもとに、適切な検査間隔および検査回数を導出する第4ステップと、
を実施する情報処理方法。
【請求項7】
実施された内視鏡検査の検査日および診断データを含む検査データを複数保持する記録装置に接続するコンピュータに、
前記記録装置に保持されている複数の検査データの中から、所定の診断データを含む検査データを特定する第1機能と、
前記記録装置に保持されている複数の検査データの中から、前記第1機能により特定された検査データに含まれる検査日の後に、同じ患者に対して実施された複数の検査の検査データを特定する第2機能と、
前記第1機能および前記第2機能により特定された複数の検査データにもとづいて、前記第1機能により特定された検査データに含まれる検査日から当該患者が完治するまでの期間と、当該患者が完治するまでに実施された検査の回数とを取得する第3機能と、
複数の患者の検査データから前記第3機能により取得した期間および検査回数をもとに、適切な検査間隔および検査回数を導出する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査データを管理する医療支援技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設は、癌が再発する可能性のある患者をハイリスク患者として扱い、当該患者に対して内視鏡検査を定期的に実施し、経過観察する。たとえば内視鏡検査で早期癌の診断を受け、内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection:EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection:ESD)を施された患者は、癌の再発可能性が高いハイリスク患者として扱われ、経過観察の対象となる。従来、ハイリスク患者の検査日程は担当医師が決定しており、医師によって検査間隔や検査回数にばらつきが生じている。
【0003】
特許文献1は、特定の疾病を患った被検者ごとに、異常なしと診断された検査データの検査日と、その後の、当該疾病と診断された検査データの検査日との差分の日数を算出し、それらを統計処理することにより、当該疾病の推奨検査間隔を決定する医療業務支援装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハイリスク患者に検査を高頻度に実施することで、癌が再発した場合に早期発見できるようになるが、高頻度な検査は患者にとって負担となる。また医療施設にとって一人の患者に高頻度に検査を実施することは、医療資源を無駄に使用することになりかねない。そこで経過観察中の患者に対して、内視鏡検査を適切な頻度で、適切な回数実施することが望まれている。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、内視鏡検査を支援するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の情報処理装置は、実施された内視鏡検査の検査日および診断データを含む検査データを複数保持する記録装置に接続する情報処理装置であって、記録装置に保持されている複数の検査データの中から、所定の診断データを含む検査データを特定する第1検査特定部と、記録装置に保持されている複数の検査データの中から、第1検査特定部により特定された検査データに含まれる検査日の後に、同じ患者に対して実施された複数の検査の検査データを特定する第2検査特定部と、第1検査特定部および第2検査特定部により特定された複数の検査データにもとづいて、第1検査特定部により特定された検査データに含まれる検査日から当該患者が完治するまでの期間と、当該患者が完治するまでに実施された検査の回数とを取得する情報取得部と、複数の患者の検査データから情報取得部が取得した期間および検査回数をもとに、適切な検査間隔および検査回数を導出する導出部と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態にかかる医療システムの構成の例を示す図である。
【
図2】記録装置に保持される検査データの例を示す図である。
【
図3】患者の検査データの時系列の例を示す図である。
【
図4】患者の検査データの時系列の例を示す図である。
【
図5】患者の検査データの時系列の例を示す図である。
【
図6】患者の検査予定を生成するフローチャートである。
【
図7】レポート入力画面上に表示される通知画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施形態にかかる医療システム1の構成例を示す。実施形態の医療システム1は病院などの医療施設に設けられ、情報処理装置10、記録装置4、統計データ記録部12および検査予定情報記録部14を備える。情報処理装置10、記録装置4、統計データ記録部12および検査予定情報記録部14は、LAN(ローカルエリアネットワーク)などのネットワーク2によって通信可能に接続される。
【0011】
記録装置4は、患者に対して実施された内視鏡検査に関する情報を含む検査データを複数保持する。記録装置4は、HDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)などの補助記憶装置であってよい。統計データ記録部12および検査予定情報記録部14は、記録装置4とは独立して設けられてよいが、記録装置4における記録領域にとして構成されてもよい。
図1に示す構成例では、記録装置4が医療施設内のネットワーク2に接続しているが、記録装置4がクラウドサーバとして構成されて、インターネット経由で情報処理装置10と接続してもよい。
【0012】
図2は、記録装置4に保持される検査データの例を示す図である。医療システム1では、1つの内視鏡検査に対して、1つの検査データが生成される。検査データのフォーマットは、検査ID、患者データ、検査日、検査種別、所見データ、診断データ、処置データの項目を含む。患者データは、患者ID、氏名、性別および生年月日を含む。
【0013】
検査ID“100001”を付与された検査の検査データは、患者“3131”に対して実施された内視鏡検査に関する情報を含む。この検査では、隆起性病変が胃体部で観察されて、早期胃癌と診断され、内視鏡的粘膜切除術(EMR)が施されている。医療システム1において、EMRなどの処置が施された患者は、癌の再発可能性の高いハイリスク患者として扱われ、経過観察の対象となる。
【0014】
医療システム1では、ハイリスク患者を効率的に経過観察するために、情報処理装置10が、ハイリスク患者と認定される内視鏡検査が行われた日(以下、「基準日」とも呼ぶ)を基準として、適切な検査間隔および検査回数を、記録装置4に蓄積した過去の検査データから導出する機能をもつ。なお検査間隔は、2つの検査の間の期間を意味する。
【0015】
検査ID“100002”を付与された検査の検査データは、患者“3541”に対して実施された内視鏡検査に関する情報を含む。この検査では、異常所見はなかったが、「要経過観察」とされている。この例で患者“3541”は過去にハイリスク患者と認定されており、導出された適切な回数分の検査が終了するまで、異常所見がなくても「要経過観察」の状態が維持される。そのため患者“3541”は、2020/8/18の検査終了後、導出された適切な検査間隔にもとづいて、次回の検査予定を設定される。
【0016】
検査ID“100003”を付与された検査の検査データは、患者“4123”に対して実施された内視鏡検査に関する情報を含む。この検査では、異常所見はなく、「要経過観察」とされていない。ハイリスク患者は経過観察期間中に、適切な検査間隔で、適切な回数分の検査を受け、最後の検査で異常所見が見つからなければ、経過観察は終了となる。この患者“4123”は、経過観察を終了した患者であり、次の検査予定は設定されない。
【0017】
図1に戻り、実施形態の情報処理装置10は、検索部20、解析部30、検査予定生成部40、患者情報取得部42、検査予定修正部44、通知処理部46および表示処理部50を備える。検索部20は、第1検査特定部22および第2検査特定部24を有し、解析部30は、情報取得部32および導出部34を有する。
【0018】
図1に示す構成はハードウエア的には、任意のプロセッサ、メモリ、補助記憶装置、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0019】
情報処理装置10は、記録装置4に記録されている複数の過去の検査データを統計処理することで、ハイリスク患者の経過観察を目的とする適切な検査間隔および検査回数を導出する機能をもつ。情報処理装置10は、医師が患者の診断データ等を入力したときに、入力された診断内容に応じた検査間隔および検査回数を算出してよいが、様々な種類の診断内容に応じた検査間隔および検査回数を、所定のタイミングで統計データとして算出して統計データ記録部12に登録しておいてもよい。後者の場合、情報処理装置10は、医師が患者の診断データ等を入力したときに、入力された診断内容に応じた検査間隔および検査回数を、統計データ記録部12から読み出して取得する。実施形態において、診断内容に応じた適切な検査間隔および検査回数は、検索部20および解析部30によって導出される。
【0020】
検索部20は、記録装置4にアクセスして、記録装置4に保持されている検査データを探索する機能をもつ。
第1検査特定部22は、記録装置4に保持されている複数の検査データの中から、癌の再発可能性があることを示す所定の診断データを含む検査データを特定する。医療システム1において、癌の再発可能性があるハイリスク患者は、早期癌の診断を受け、且つ病変部を除去する処置を施された患者として定義される。実施形態では、第1検査特定部22が、癌の再発可能性があることを示す検査データとして、「早期胃癌」の診断データを含み、且つ病変部を除去する処置データを含む検査データを探索する。なお別の例では、第1検査特定部22が、ハイリスク患者と認定するための別の条件に合致した検査データを探索してよい。
【0021】
第2検査特定部24は、記録装置4に保持されている複数の検査データの中から、第1検査特定部22により特定された検査データに含まれる検査日(基準日)の後に、同じ患者に対して実施された複数の検査の検査データを特定する。つまり第2検査特定部24は、基準日の後に実施された、経過観察を目的とする検査の検査データを特定する。以下、患者ごとの検査データの時系列の例を示す。
【0022】
図3は、患者Aの検査データの時系列を示す。第1検査特定部22は、“早期胃癌”の診断データを含み、且つ病変部に対して実施された処置データを記録した検査データを特定する。
図3に示す例では、第1検査特定部22が、検査日が2017/8/1である患者Aの検査データを特定し、この検査データには、病変部に対して実施された処置として“EMR”が記録されている。
【0023】
第2検査特定部24は、第1検査特定部22により特定された検査データの検査日(2017/8/1)を基準日とし、当該基準日の後に患者Aに対して実施された複数検査の検査データを特定する。
図3に示す例では、第2検査特定部24が、以下の3つの検査の検査データを特定している。
【0024】
(1)1回目の検査
検査日:2018/8/1
診断内容:胃癌疑い
(2)2回目の検査
検査日:2019/8/1
診断内容:異常なし(要経過観察)
2回目検査の検査データにおいて、「要経過観察」の診断データは、まだ経過観察が継続中であり、医師が患者Aの完治を診断していないことを示す。
(3)3回目の検査
検査日:2020/8/1
診断内容:異常なし(完治)
3回目の検査の検査データにおいて、「完治」の診断データは、医師が患者Aの完治を診断して、経過観察が終了したことを示す。なお「完治」の診断データが登録されていない場合であっても、診断データが、異常なしであり、且つ「要経過観察」を含まなければ、当該診断データは、医師が患者Aの完治を診断して、経過観察が終了したことを示す。
【0025】
図4は、患者Bの検査データの時系列を示す。第1検査特定部22は、“早期胃癌”の診断データを含み、且つ病変部に対して実施された処置データを記録した検査データを特定する。
図4に示す例では、第1検査特定部22が、検査日が2017/4/1である患者Bの検査データを特定し、この検査データには、病変部に対して実施された処置として“EMR”が記録されている。
【0026】
第2検査特定部24は、第1検査特定部22により特定された検査データの検査日(2017/4/1)を基準日とし、当該基準日の後に患者Bに対して実施された複数検査の検査データを特定する。
図4に示す例では、第2検査特定部24が、以下の5つの検査の検査データを特定している。
【0027】
(1)1回目の検査
検査日:2017/12/1
診断内容:胃癌疑い
(2)2回目の検査
検査日:2018/8/1
診断内容:胃癌疑い
(3)3回目の検査
検査日:2019/4/1
診断内容:異常なし(要経過観察)
(4)4回目の検査
検査日:2019/12/1
診断内容:異常なし(要経過観察)
(5)5回目の検査
検査日:2020/8/1
診断内容:異常なし(完治)
上記したように、「完治」の診断データは、医師が患者Bの完治を診断して、経過観察が終了したことを示すが、「完治」の診断データが登録されていない場合であっても、診断データが、異常なしであり、且つ「要経過観察」を含まなければ、当該診断データは、医師が患者Bの完治を診断して、経過観察が終了したことを示す。
【0028】
以上、
図3に示した患者Aの検査データの時系列と、
図4に示した患者Bの検査データの時系列は、ハイリスク患者が、経過観察の後、完治したことを示している。
【0029】
なお第1検査特定部22が、癌の再発可能性があることを示す検査データを特定し、第2検査特定部24が、経過観察を目的とする検査の検査データを特定した結果、癌が再発したことを示す検査データの時系列も存在する。
【0030】
図5は、患者Cの検査データの時系列を示す。第1検査特定部22は、“早期胃癌”の診断データを含み、且つ病変部に対して実施された処置データを記録した検査データを特定する。
図5に示す例では、第1検査特定部22が、検査日が2017/6/1である患者Cの検査データを特定し、この検査データには、病変部に対して実施された処置として“EMR”が記録されている。
【0031】
第2検査特定部24は、第1検査特定部22により特定された検査データの検査日(2017/6/1)を基準日とし、当該基準日の後に患者Cに対して実施された複数検査の検査データを特定する。
図5に示す例では、第2検査特定部24が、以下の2つの検査の検査データを特定している。
【0032】
(1)1回目の検査
検査日:2018/12/1
診断内容:異常なし(要経過観察)
(2)2回目の検査
検査日:2020/6/1
診断内容:早期胃癌
処置:ESD
2回目検査において、患者Cに癌が再発していることが診断されている。患者Cはハイリスク患者であり、確率的に癌の再発は生じうることである。この検査では、ESDが施されており、したがって患者Cは、この後もハイリスク患者として扱われることになる。
【0033】
以上のように、検索部20は、ハイリスク患者と認定するための条件を満たす検査データと、後続する検査データとを特定する。記録装置4には多数の患者の検査データが蓄積されており、検索部20は、多数のハイリスク患者の検査データを特定して、検査間隔および検査回数を算出するための材料を解析部30に提供する。解析部30は、検索部20により特定された検査データにもとづいて、ハイリスク患者に対する適切な検査間隔および検査回数を導出する。
【0034】
情報取得部32は、第1検査特定部22および第2検査特定部24により特定された複数の検査データにもとづいて、第1検査特定部22により特定された検査データに含まれる検査日(基準日)から患者が完治するまでの期間と、当該患者が完治するまでに実施された検査の回数とを取得する。
【0035】
・患者Aの検査データについて
情報取得部32は、患者Aの検査データの時系列を参照して、基準日から完治診断されるまでの期間(経過観察期間)と、基準日から完治診断されるまでの間に実施された検査の回数を、以下のように取得する。
経過観察期間:3年
検査回数:3回
経過観察期間は、基準日(2017/8/1)から完治診断日(2020/8/1)までの期間として取得される。また検査回数は、基準日の後、完治診断日までに実施された検査の回数として取得される。
【0036】
・患者Bの検査データについて
情報取得部32は、患者Bの検査データの時系列を参照して、基準日から完治診断されるまでの期間(経過観察期間)と、基準日から完治診断されるまでの間に実施された検査の回数を、以下のように取得する。
経過観察期間:3年4月
検査回数:5回
経過観察期間は、基準日(2017/4/1)から完治診断日(2020/8/1)までの期間として取得される。また検査回数は、基準日の後、完治診断日までに実施された検査の回数として取得される。
【0037】
以上のように情報取得部32は、完治したハイリスク患者の検査データの時系列から、それぞれの患者の経過観察期間と、検査回数とを取得する。
【0038】
導出部34は、複数のハイリスク患者の検査データから情報取得部32が取得した経過観察期間および検査回数をもとに、適切な検査間隔Iおよび検査回数Nを導出する。導出部34は、情報取得部32が取得した経過観察期間および検査回数をそれぞれ統計処理して、適切な検査間隔Iおよび検査回数Nを導出してよい。
【0039】
たとえば導出部34は、適切な検査回数Nとして、情報取得部32が取得した複数の検査回数の中央値を導出してよい。なお統計処理の手法としては、中央値に限らず、最頻値を用いてもよく、また平均値を用いてもよく、さらに別の手法を用いてもよい。なお平均値を用いる場合には、小数点以下を四捨五入して、整数となるように調整する必要がある。
【0040】
導出部34は、適切な検査間隔Iを導出するために、適切な経過観察期間Pを導出する。導出部34は、適切な経過観察期間Pとして、情報取得部32が取得した複数の経過観察期間の中央値を導出してよい。なお統計処理の手法としては、中央値に限らず、最頻値を用いてもよく、また平均値を用いてもよよく、さらに別の手法を用いてもよい。導出部34は、導出した経過観察期間Pを、導出した検査回数Nで除算(割り算)処理することで、適切な検査間隔I(=P/N)を導出する。
【0041】
導出部34は、導出した検査間隔Iおよび検査回数Nを、早期胃癌の診断を受け、且つ病変部を除去する処置を行ったハイリスク患者の統計データとして統計データ記録部12に記録する。なお上記は、ハイリスク患者が早期胃癌の診断を受けたことを前提としているが、検索部20が、早期大腸癌の診断を受けたハイリスク患者の検査データを特定し、解析部30が、早期大腸癌の診断を受けたハイリスク患者の適切な検査間隔Iおよび検査回数Nを導出してもよい。
【0042】
また実施形態では、内視鏡検査において、早期癌の診断を受け、且つ病変部を除去する処置を施されたことを、ハイリスク患者として認定する条件とし、解析部30が経過観察期間における適切な検査間隔Iおよび検査回数Nを導出している。別の例では、解析部30が、処置の種類ごとに、適切な検査間隔Iおよび検査回数Nを導出してもよい。
【0043】
この場合、検索部20は、早期胃癌の診断を受け、且つEMRを施されたハイリスク患者の検査データの探索と、早期胃癌の診断を受け、且つESDを施されたハイリスク患者の検査データの探索とを、別個に実施してよい。こうすることで解析部30は、EMRを施されたハイリスク患者にとって適切な検査間隔Iおよび検査回数Nと、ESDを施されたハイリスク患者にとって適切な検査間隔Iおよび検査回数Nとを、別個に導出することができる。導出された検査間隔Iおよび検査回数Nは、処置の種別ごとに、統計データ記録部12に記録される。
【0044】
また検索部20は、病変部の位置や大きさなどの病変部の状態ごとに、ハイリスク患者の検査データを特定し、解析部30が、病変部の状態ごとに、経過観察期間における適切な検査間隔Iおよび検査回数Nを導出してもよい。
【0045】
なお導出部34は、再発患者の検査データを、導出した検査間隔Iの適切さの検証に利用してよい。
図5に示す患者Cの検査データでは、検査間隔が1年6月で、2回目の検査で癌の再発が診断されている。このことから、患者Cに関しては、癌の再発を早期発見するために、検査間隔が1年6月より短い方が好ましかったことが言える。そこで導出部34は、導出した検査間隔Iが1年6月より長い場合には、1年6月より短くなるように調整してよい。
【0046】
図6は、ハイリスク患者の検査予定を生成するフローチャートである。検査終了後、表示処理部50は、医師からの指示にもとづき、検査レポート入力画面を表示装置3に表示する。医師は入力部5を操作して、内視鏡検査の診断データおよび処置データ等を、検査レポート入力画面に入力する(S10)。検査予定生成部40は、入力された診断データおよび処置データから、患者がハイリスク患者であるか否か、すなわち癌の再発可能性がある患者であるか否かを判断する(S12)。患者がハイリスク患者でない場合(S12のN)、検査予定生成部40は、経過観察を目的とする検査予定を生成しない。
【0047】
一方、患者がハイリスク患者である場合(S12のY)、検査予定生成部40は、当該患者の診断データおよび処置データに関連する検査間隔Iおよび検査回数Nを統計データ記録部12から読み出して取得する。なお医療システム1が統計データ記録部12を有しない場合、つまり検査間隔Iおよび検査回数Nを統計データとして管理していない場合、検査予定生成部40は、検索部20および解析部30に検査間隔Iおよび検査回数Nの導出処理を指示して、検索部20および解析部30に検査間隔Iおよび検査回数Nを導出させてよい。
【0048】
検査予定生成部40は、検査間隔Iおよび検査回数Nを用いて、患者の経過観察のための検査予定を生成する(S16)。たとえば検査間隔Iが1年、検査回数Nが3回である場合、検査予定生成部40は、患者がハイリスク患者であると認定された検査の検査日から、1年ごとに3回の検査日を設定した検査予定を生成する。具体的に、ハイリスク患者であると認定された検査の検査日が2020/9/1である場合、検査予定生成部40は、2021/9/1に1回目の検査、2022/9/1に2回目の検査、2023/9/1に3回目の検査をスケジューリングする。
【0049】
通知処理部46は、医師に、適切な検査間隔Iおよび検査回数Nに関する情報を通知する(S18)。通知処理部46は、検査予定生成部40が生成した検査予定日を通知してよいが、検査間隔Iおよび検査回数Nをそのまま通知してもよい。
【0050】
図7は、レポート入力画面上に表示される通知画面60の例を示す。レポート入力画面に、ハイリスク患者の認定条件に合致した診断データおよび処置データが入力されると、通知処理部46は、経過観察を目的とする検査間隔Iおよび検査回数Nに関する情報を医師に通知する。この例で通知処理部46は、検査間隔Iおよび検査回数Nに関する情報を含む通知画面60を表示装置3に表示するが、これらの情報を音声によって通知してもよい。医師は、患者の検査予定情報を、患者IDに対応付けて検査予定情報記録部14に記録する(S20)。なお、検査予定情報記録部14への記録は、医師の手を介さず、自動的に行われてよい。
【0051】
以上は、通知処理部46が、医師によるレポート入力中に検査間隔Iおよび検査回数Nに関する情報を通知する例であるが、通知処理部46は、検査予定情報記録部14に記録された検査予定情報を参照して、検査予定に関する通知を行ってもよい。具体的に通知処理部46は、検査予定情報記録部14に記録された検査予定日を参照し、検査予定日が近づいてくると、医師または看護師などの医療従事者に、患者の検査予定日が近いことを通知する。これにより医療従事者は、検査予定日が近いことを当該患者に知らせることができ、経過観察を好適に実施することが可能となる。
【0052】
なお検査予定生成部40が検査予定を生成した後、患者の状況が変化することがある。たとえば健康診断により高血圧であると診断された場合や、家族が癌となり、癌家族歴が更新された場合である。これらの場合は、検査予定を生成した時より、客観的な事実として癌の再発リスクが高まっている。そこで患者情報取得部42が、癌の再発リスクに関する患者情報を取得すると、検査予定修正部44が、取得した患者情報に応じて、検査予定情報記録部14に記録されている検査予定を修正してよい。具体的には、検査間隔Iを短縮するように修正しつつ、検査回数Nを増加するように修正する。たとえば元の検査間隔Iが1年、検査回数Nが3回である場合、検査予定修正部44は、検査間隔Iを9月、検査回数Nを4回に修正して、検査予定情報記録部14の検査予定日を更新してよい。
【0053】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。これらの実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0054】
実施形態では、早期胃癌に対して、処置の種類ごとに、適切な検査間隔Iおよび検査回数Nを導出してもよいことを説明した。変形例では、導出部34が、早期胃癌に対して処置の種類に関係なく、共通の検査間隔Iおよび検査回数Nを導出し、検査予定生成部40が、患者に対して施された処置内容に応じて、共通の検査間隔Iおよび検査回数Nを調整してもよい。また処置を行った医師のスキルに応じて、検査予定生成部40が、検査間隔Iおよび検査回数Nを調整してもよい。
【0055】
実施形態では、ハイリスク患者と認定された検査の検査日を開始点とした検査間隔Iおよび検査回数Nを導出している。しかしながら
図5に示す患者Cのように、癌が再発した患者については、再発可能性が高まることが知られている。そこで検索部20は、癌を再発した患者の検査データの時系列を特定して、解析部30が、癌を再発した患者に適切な検査間隔Iおよび検査回数Nを導出してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、検査データを管理する分野において利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1・・・医療システム、2・・・ネットワーク、3・・・表示装置、4・・・記録装置、5・・・入力部、10・・・情報処理装置、12・・・統計データ記録部、14・・・検査予定情報記録部、20・・・検索部、22・・・第1検査特定部、24・・・第2検査特定部、30・・・解析部、32・・・情報取得部、34・・・導出部、40・・・検査予定生成部、42・・・患者情報取得部、44・・・検査予定修正部、46・・・通知処理部、50・・・表示処理部、60・・・通知画面。