(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】混合装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/24 20060101AFI20240325BHJP
【FI】
F01N3/24 N
F01N3/24 E
(21)【出願番号】P 2022560538
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(86)【国際出願番号】 JP2020041203
(87)【国際公開番号】W WO2022097198
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000220804
【氏名又は名称】東京濾器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】木地谷 潤
(72)【発明者】
【氏名】馬場 琢麻
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-173018(JP,A)
【文献】特開2013-142368(JP,A)
【文献】特開2009-156073(JP,A)
【文献】特許第6077665(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスが吹き出る吹出部を有するフィルタ又は触媒の前記吹出部を包囲するケースと、
前記吹出部に対向する前記ケース内の領域において鉛直下方に向かって前記吹出部に近づくように鉛直方向に対して傾斜し、前記吹出部の方の反対に向いて開口する開口部を有する上部管部と、
前記上部管部の下端から曲げられ、鉛直下方に向かって前記吹出部から離れるように鉛直方向に対して傾斜し、前記ケースから外に突き出て選択触媒還元装置に連結される下部管部と、
前記ケースに取り付けられ、前記ケースの内側且つ上部管部の外側であって前記開口部に対向する領域に向けて液状の添加剤を噴射する噴射装置と、
を備える混合装置。
【請求項2】
前記上部管部の内面のうち前記開口部の対向位置に設けられ、前記添加剤の液滴を捕捉する捕捉部
を備える請求項1に記載の混合装置。
【請求項3】
前記捕捉部が前記対向位置から前記上部管部の内側へ突出するように設けられている
請求項2に記載の混合装置。
【請求項4】
前記捕捉部が前記対向位置を前記上部管部の外側に貫通するように設けられている
請求項2又は3に記載の混合装置。
【請求項5】
前記捕捉部が、前記上部管部の軸方向に間隔を置いて設置される複数段の捕捉板を有する
請求項2から4の何れか一項に記載の混合装置。
【請求項6】
前記ケースの内側且つ上部管部の外側であって前記開口部に対向する前記領域において、前記上部管部の軸方向に間隔を置いて設置される複数段のバッフルプレート
を備え、
前記バッフルプレートと前記捕捉板が前記上部管部の軸方向において互い違いに配列されている
請求項5に記載の混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択触媒還元装置の上流側に設けられ、排ガスと添加剤を混合する混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出される排ガス中の窒素酸化物を低減するために、窒素酸化物を触媒にて選択的に還元反応させる選択触媒還元装置がディーゼルエンジンの排気系に採用されている。触媒は、酸素等の還元よりも、窒素酸化物の還元を優先して起こすために用いられる。窒素酸化物の還元のためには、尿素水溶液等の還元剤が選択触媒還元装置の上流において排ガスに添加される。窒素酸化物の還元効率を高めるためには、添加剤が選択触媒還元装置に到達する前に、添加剤が気化する必要があるとともに、ガス状の添加剤の加水分解若しくは熱分解又はこれらの両方によってアンモニアが生成される必要がある。特許文献1には、添加剤の気化及び分解の効率を高めるための技術が開示されている。以下、特許文献1に記載の構成要素に付される参照符号を括弧書きで示し、特許文献1に記載の技術について簡単に説明する。
【0003】
内燃機関から排出された排ガスは、第1排ガス後処理部材(3)に流入して、排ガスが排ガス後処理部材(3)の酸化触媒コンバータ(11)を通過する。排ガス後処理部材(3)の下流側には、酸化触媒コンバータ11の排出シュートとして機能する第1排気管部材(13)が設けられている。この第1排気管部材(13)の導入開口部(15)によって定義される仮想的な平面は、酸化触媒コンバータ(11)から第1排気管部材(13)へ流れる排ガスの流れ方向に対して平行である。第1排気管部材(13)の排出開口部(17)によって定義される仮想的な平面は、導入開口部(15)によって定義される仮想的な平面に対して垂直である。第1排気管部材(13)内には、オーバーフロー管(21)が収容されている。このオーバーフロー管(21)の長手方向の軸は、酸化触媒コンバータ(11)から第1排気管部材(13)へ流れる排ガスの流れ方向に対して平行に対して垂直であり、第1排気管部材(13)の排出開口部(17)によって定義される仮想的な平面に対しても垂直である。オーバーフロー管(21)の外周面うち導入開口部(15)の方の反対を向いた面には、流入開口部(31)が形成されている。従って、酸化触媒コンバータ(11)から第1排気管部材(13)に流入した排ガスは、オーバーフロー管(21)の脇を通ってオーバーフロー管(21)の裏側に回り込んで、流入開口部(31)を通ってオーバーフロー管(21)内に流れ込む。オーバーフロー管(21)の外側且つ流入開口部(31)の前の流動室(45)の上には、噴射ユニット(35)が設けられている。この噴射ユニット(35)は、オーバーフロー管(21)の長手方向の軸に対して平行な方向に液状の添加剤を噴射する。添加剤の液滴が、流動室(45)内のバッフルプレート(51,51’,51”)に衝突して、微細化される。
【0004】
オーバーフロー管(21)は第1排気管部材(13)の排出開口部(17)を通って第1排気管部材(13)の外を突き出て、第1排気管部材(13)の外側において排気管(29)に連結されている。この排気管(29)は、選択的触媒反応用の触媒コンバータ39を有する第2排ガス後処理部材(9)に連結されている。そのため、還元剤を含む排ガスが第2排ガス後処理部材(9)に流れ込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、排ガスが流動室(45)から流入開口部(31)を通ってオーバーフロー管(21)内に流入すると、排ガス中の液滴がオーバーフロー管(21)の内周面、特に流入開口部(31)に対向する部分に衝突する。そうすると、オーバーフロー管(21)の内周面には、液膜が形成される。そのような液膜はオーバーフロー管(21)の内周面に沿って流れ落ち、液状の添加剤が第2排ガス後処理部材(9)に流れ込んでしまう。そのため、想定外の箇所で、添加剤が気化前に析出してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、選択触媒還元装置の上流において添加された添加剤が気化しやすくすることと、添加剤の析出を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、混合装置が、排ガスが吹き出る吹出部を有するフィルタ又は触媒の前記吹出部を包囲するケースと、前記吹出部に対向する前記ケース内の領域において鉛直下方に向かって前記吹出部に近づくように鉛直方向に対して傾斜し、前記吹出部の方の反対に向いて開口する開口部を有する上部管部と、前記上部管部の下端から曲げられ、鉛直下方に向かって前記吹出部から離れるように鉛直方向に対して傾斜し、前記ケースから外に突き出て選択触媒還元装置に連結される下部管部と、前記ケースに取り付けられ、前記ケースの内側且つ上部管部の外側であって前記開口部に対向する領域に向けて液状の添加剤を噴射する噴射装置と、を備える。
【0009】
噴射装置によって噴射された添加剤の液滴が排ガスの流れに乗って、開口部を通って上部管部内に移動して、上部管部の内周面、特に開口部に対向する部分に衝突する。そのため、添加剤の液膜が上部管部の内周面に形成される。上部管部が鉛直方向に対して傾斜しているため、上部管部の内周面に形成された液膜が下方に流れにくく、開口部に対向した部分に滞留しやすい。液膜が上部管部の内周面に沿って下に流れても、上部管部と下部管部との間の曲げ部に滞留しやすい。上部管部及び曲げ部はフィルタ又は触媒の吹出部から吹き出た排ガスによって加熱されやすいため、液膜が気化しやすい。よって、添加剤の析出を抑えることができる。
【発明の効果】
【0010】
添加剤が気化しやすく、添加剤の析出が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】混合装置を備える排ガス浄化装置の概略斜視図である。
【
図4】
図3に示すIV-IV線に沿う面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。但し、以下に述べる実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されているところ、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0013】
図1及び
図2は、排ガス浄化装置1の概略斜視図である。
図1及び
図2においては、排ガス浄化装置1を鉛直面に沿って破断した状態で示す。この排ガス浄化装置1は、内燃機関、特にディーゼルエンジンの後段に連結されており、ディーゼルエンジンから流れ込んできた排ガスを浄化する。
【0014】
排ガス浄化装置1は、排ガスの流れの上流から下流へ順に、ディーゼル酸化触媒装置、ディーゼル微粒子フィルタ装置3、混合装置5及び選択触媒還元(SCR:Selective catalytic reduction)装置8を備える。内燃機関から排出された排ガスが順にディーゼル酸化触媒装置、ディーゼル微粒子フィルタ装置3、混合装置5及び選択触媒還元装置8を通過する。
【0015】
ディーゼル酸化触媒装置は、白金族金属(例えば白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム)等からなる触媒成分が担体に担持されてなるディーゼル酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)と、ディーゼル酸化触媒を収容したケースと、を備える。ディーゼル酸化触媒装置は、排ガス中の未燃焼成分(例えば、一酸化炭素、炭化水素及び一酸化炭素等)を酸化する。そのような酸化により二酸化炭素、水素及び二酸化窒素等が生成される。
【0016】
ディーゼル微粒子フィルタ装置3は、ディーゼル酸化触媒装置からディーゼル微粒子フィルタ装置3に流れてきた排ガス中に含まれる粒子状物質を捕捉する。ディーゼル微粒子フィルタ装置3は、捕捉した粒子状物質を酸化する再生機能を有してもよい。
【0017】
ディーゼル微粒子フィルタ装置3は筒状のケース31及びフィルタ32を有する。フィルタ32はハニカム構造のDPF(Diesel Particulate Filter)である。フィルタ32がケース31に収容されて、このフィルタ32の外周面がケース31の内周面に接触している。ディーゼル微粒子フィルタ装置3の再生機能を実現するべく、白金族金属等からなる触媒がフィルタ32に担持されていてもよい。なお、
図1においてケース31及びフィルタ32は鉛直面に沿って破断されるように図示されている。
【0018】
混合装置5は、ディーゼル微粒子フィルタ装置3から混合装置5に流れてきた排ガスに液状の添加剤を添加して、添加剤を気化させる。添加剤は、例えば尿素水溶液、アンモニア水溶液若しくは無水アンモニア又はこれらの中の2以上からなる混合体である。添加剤が熱分解若しくは加水分解又はこれらの両方の反応によってアンモニア(NH3)に変換される。従って、混合装置5から選択触媒還元装置8に流れ込む排ガスには、アンモニアが混合されている。混合装置5の構成については後に詳述する。
【0019】
選択触媒還元装置8は排ガス中の窒素酸化物(NOx)を選択的に還元して、窒素酸化物を窒素(N2)及び水(H20)に変換する。選択触媒還元装置8はケース81及び触媒82を有する。ケース81は筒状に設けられており、触媒82がケース81に収容されて、触媒82の外周面がケース81の内周面に当接する。触媒82は、ゼオライト系触媒又はバナジウム系触媒が担体に担持された選択式還元触媒である。
【0020】
図3及び
図4を用いて混合装置5について詳細に説明する。
図3は混合装置5の鉛直断面図であり、
図4は
図3に示すIII-III面に沿った断面図である。
【0021】
図3及び
図4に示すように、混合装置5はケース51、エグゾーストパイプ52、噴射装置53、バッフルプレート54、支持板55及び捕捉板56を備える。なお、
図3において、ケース31、フィルタ32、ケース51及びエグゾーストパイプ52は鉛直面に沿って破断した状態で示されており、噴射装置53、バッフルプレート54、支持板55及び捕捉板56は破断していない状態で示されている。
【0022】
ケース51はディーゼル微粒子フィルタ装置3のケース31の下流側端部から膨出するように設けられ、ケース51の内側にはチャンバー51aが形成されている。ケース51はケース31と一体成形されていてもよいし、ケース31に組み付けられていてもよい。ケース31がディーゼル微粒子フィルタ装置3のフィルタ32の下流側端面32aを包囲し、ディーゼル微粒子フィルタ装置3のフィルタ32の下流側端面32aがチャンバー51a内で露出している。そのため、フィルタ32を通過する排ガスがフィルタ32の下流側端面32aからチャンバー51aに吹き出る。フィルタ32の下流側端面32aは吹出部に相当する。なお、以下では、フィルタ32の下流側端面32aが向く方向を後方とし、その反対方向を前方とする。
【0023】
エグゾーストパイプ52は曲げられている。エグゾーストパイプ52の曲げ部52b及びそれよりも上側の部分(以下、上部管部という。)52aがケース51内に収容され、曲げ部52bよりも下側の部分(以下、下部管部という。)52cがケース51からその外へ突き出て選択触媒還元装置8のケース81に連結されている。上部管部52aはフィルタ32の下流側端面32aに対向する領域において鉛直方向から後傾している。つまり、上部管部52aの軸が上から下に向かってフィルタ32の下流側端面32aに近づくように鉛直方向に対して傾斜しており、エグゾーストパイプ52の中では曲げ部52bがフィルタ32の下流側端面32aに最も近くにある。下部管部52cは鉛直方向から前傾している。つまり、下部管部52cの軸が上から下に向かってフィルタ42の下流側端面32aから離れるように鉛直方向に対して傾斜しており、エグゾーストパイプ52の中では曲げ部52bがフィルタ32の下流側端面32aに最も離れている。なお、上部管部52aの軸は上部管部52aの長手方向に延在し、下部管部52cの軸は下部管部52cの長手方向に延在する。
【0024】
エグゾーストパイプ52はフィルタ32の下流側端面32aから吹き出た排ガスによって加熱されるところ、エグゾーストパイプ52の曲げ部52bがフィルタ32の下流側端面32aに最も近いので、曲げ部52bが最も加熱されやすい。
【0025】
エグゾーストパイプ52の上端はエンドプレート52fによって閉塞されている。
図1及び
図2においては、エグゾーストパイプ52の内側を見やすくするために、エンドプレート52fの図示を省略する。なお、エグゾーストパイプ52の上端がチャンバー51aの天井面によって閉塞されてもよい。
【0026】
上部管部52aの外周面うちフィルタ32の下流側端面32aの方の反対を向いた面には、つまり上部管部52aの後面には開口部52dが形成されている。この開口部52dはフィルタ32の下流側端面32aの方の反対に向いて開口している。上部管部52aの外周面がケース81の内面から離間しているため、フィルタ32の下流側端面32aから吹き出た排ガスは、矢印A,Bに示すようにエグゾーストパイプ52の脇を通ってエグゾーストパイプ52の裏側に回り込んで、開口部52dを通ってエグゾーストパイプ52の中に流れ込む。また、排ガスが開口部52dを通過する際にも排ガスの流速が増すため、排ガスが上部管部52aの内周面の一部52eに当たることになる。この部分52eは開口部52dに対向する。以下、この部分52eを対向部52eという。
【0027】
排ガスが対向部52eに当たると、排ガスの流れが矢印A,Bに示すようにエグゾーストパイプ52の内周面に沿って一方の周方向と他方の周方向に分かれる。それゆえ、エグゾーストパイプ52の内側では、互いに反対向きに旋回する2つの螺旋流が生じる。排ガスは2つの螺旋流に乗ってエグゾーストパイプ52内を選択触媒還元装置8のケース81の方へ移動する。
【0028】
エグゾーストパイプ52内にて2つの螺旋流が生じやすいように、エグゾーストパイプ52の軸方向に直交する面に沿ったエグゾーストパイプ52の断面形状は長円形に成しており、その長径はフィルタ32の下流側端面32aに対して平行である。ここでいう長円形には、楕円形、角丸長方形及びオーバル型も含む意である。
【0029】
上部管部52aがチャンバー51aの後ろ内面から前に離間しているため、上部管部52aの後ろ側には、チャンバー51aの一部となるスペース51bが形成されている。スペース51bの下側には、下部管部52cが存在する。そのため、エグゾーストパイプ52の脇を通ってエグゾーストパイプ52の裏側に回り込む排ガスが絞られるため、スペース51bに流れ込む排ガスの流速が増す。
【0030】
スペース51bの上において、噴射装置53がケース51に取り付けられている。噴射装置53は、下方に向けて、つまり開口部52dが向いた領域の方に向けて設置されている。噴射装置53は3つの噴射ノズルを有し、各噴射から添加剤を下方に向けて噴射する。そのため、噴射装置53の噴射先には、添加剤の3つの噴射流が形成される。各噴射流は噴射装置53から下方に離れるにつれて広がるため、各噴射流がほぼ円錐状になる。
【0031】
スペース51bにおいては、バッフルプレート54が上部管部52aの軸方向に間隔を置いて複数段状に設置されている。バッフルプレート54は上部管部52aの軸方向に対して垂直になっている。バッフルプレート54の後端部が支持板55に係合し、支持板55がチャンバー51aの後ろ内面に溶接され、以てバッフルプレート54がケース51の内側に取り付けられている。
【0032】
バッフルプレート54の一部が開口部52dを通って上部管部52aの内側に突き出ている。エグゾーストパイプ52の内側におけるバッフルプレート54の幅は開口部52dの幅よりも大きく、エグゾーストパイプ52の外側におけるバッフルプレート54の幅も開口部52dの幅よりも大きい。エグゾーストパイプ52の内側におけるバッフルプレート54の幅はエグゾーストパイプ52の幅よりも小さい。そのため、
図4のように上部管部52aの軸方向に見て、エグゾーストパイプ52の内側のバッフルプレート54の両側には、スペース51fが形成されている。スペース51fが存在することによって、螺旋流の流れが阻害されない。
【0033】
バッフルプレート54には、矩形状のノッチ54aが形成されている。噴射装置53によって噴射された噴射流の一部がバッフルプレート54に衝突し、他の一部がノッチ54aを通過する。噴射流が何れのバッフルプレート54にも均一な流量で衝突するように、各ノッチ54aの位置、大きさ及び形状が設計されている。
【0034】
噴射流に含まれる添加剤の液滴がバッフルプレート54に衝突すると、その液滴が加熱されて気化しやすくなる。また、バッフルプレート54に衝突した液滴が複数に分割されて、衝突した液滴よりも微細な液滴がバッフルプレート54から跳ね返る。また、跳ね返った液滴は、隣りのバッフルプレート54にも衝突することによって更に微細化される。液滴の跳ね返り回数が多くなるほど、液滴が気化しやすい。
【0035】
跳ね返った液滴は、排ガスの流れに乗って開口部52dを通ってエグゾーストパイプ52の内側に進入する。その液滴が対向部52eに衝突することによって、その対向部52eには添加剤の液膜が形成される。その液膜が直接的にはエグゾーストパイプ52によって、間接的にはエグゾーストパイプ52の外周面に当たる排ガスによって加熱されるため、添加剤が気化する。
【0036】
上述のように、上部管部52aが鉛直方向に対して傾斜しているため、対向部52eに形成された液膜が下方に流れにくくなっている。よって、液膜の加熱時間が長く、添加剤が気化しやすい。
【0037】
対向部52eに形成された液膜がその場所に滞留しやすくするために、その対向部52eには複数の捕捉板56が取り付けられている。これら捕捉板56は対向部52eから上部管部52aの内側に突き出るように設けられているとともに、上部管部52aの軸方向に対して垂直になっている。これら捕捉板56は上部管部52aの軸方向に間隔を置いて複数段状に設置されている。捕捉板56はバッフルプレート54から上部管部52aの軸方向にずれて配置されており、捕捉板56とバッフルプレート54が上部管部52aの軸方向において互い違いに配列されている。それゆえ、上部管部52a内において螺旋状に流れる排ガスが捕捉板56の間の隙間及びバッフルプレート54の間の隙間に流れ込んで、排ガスの流れが阻害されない。
【0038】
図4のように上部管部52aの軸方向に見て、捕捉板56はバッフルプレート54に重なっていない。エグゾーストパイプ52の内側における捕捉板56の幅はエグゾーストパイプ52の幅よりも小さい。そのため、
図4のように上部管部52aの軸方向に見て、エグゾーストパイプ52の内側の捕捉板56の両側には、スペース51fが形成されている。スペース51fが存在することによって、螺旋状に流れる排ガス流れが阻害されない。
【0039】
捕捉板56は、対向部52eに形成された液膜を滞留させるのみならず、排ガス中の液滴を捕捉する。つまり、開口部52dを通過した排ガス中の液滴が捕捉板56に衝突することによって、液滴が捕捉板56の表面に付着したり、捕捉板56間に入り込んで滞留したりする。また、捕捉板56は、対向部52eに排ガスが当たることによる添加剤のしぶきの発生を抑える。
【0040】
捕捉板56は対向部52eを貫通して、エグゾーストパイプ52の外側に突き出ている。そのため、フィルタ32の下流側端面32aから吹き出た排ガスが捕捉板56に当たり、捕捉板56が加熱されやすい。熱は捕捉板56をエグゾーストパイプ52の内側へ伝導するので、捕捉板56に衝突する液滴が加熱される上、捕捉板56の表面に付着した液膜も加熱される。よって、添加剤が気化しやすい。なお、捕捉板56のうちエグゾーストパイプ52の外側に突出した部分を突出部56aという。
【0041】
以上に混合装置5の構成について詳細に説明したところ、この混合装置5のメリット及び有利な効果を纏めると以下の(1)~(7)の通りである。
【0042】
(1) 噴射装置53によって噴射された液滴がバッフルプレート54に衝突することによって微細化するため、液滴が気化しやすい。
【0043】
(2) エグゾーストパイプ52内では、添加剤の液滴が排ガスの螺旋流に乗って移動するため、液滴が遠心力によってエグゾーストパイプ52内に接触する。よって、液滴が気化しやすい。
【0044】
(3) エグゾーストパイプ52の内周面のうち開口部52dに対向部52eに形成された添加剤の液膜が対向部52eに滞留しやすい。これは、上部管部52aが鉛直方向に対して傾斜しているためである。また、捕捉板56が対向部52eに取り付けられているためである。対向部52eは、フィルタ32の下流側端面32aから吹き出た排ガスによって加熱されやすく、対向部52eに付着した液膜が気化しやすい。
【0045】
(4) 対向部52eに付着した添加剤の液膜が上部管部52aの内面に沿って下に流れても、流れの向きが曲げ部52bにおいて変化する。そのため、添加剤の液膜が曲げ部52bに滞留しやすい。曲げ部52bはフィルタ32の下流側端面32aから吹き出た排ガスによって最も加熱されやすく、それゆえ、曲げ部52bに滞留する液膜が気化しやすい。
【0046】
(5) 捕捉板56の突出部56aがエグゾーストパイプ52の外側においてフィルタ32の下流側端面32aに向けて突出しているため、捕捉板56が加熱されやすい。よって、捕捉板56に付着した添加剤が気化しやすい。
【0047】
(6) 以上の(1)~(5)のように添加剤が気化しやすいため、添加剤がアンモニアに分解されやすく、選択触媒還元装置8において窒素酸化物が還元しやすい。なお、生成されるアンモニアはエグゾーストパイプ52内の螺旋流によって排ガスに均一に混合される。
【0048】
(7) 以上の(1)~(5)のように添加剤が気化しやすい上、添加剤の液膜が対向部52e及び曲げ部52bに滞留しやすいため、対向部52e及び曲げ部52b以外では、添加剤の液膜が形成されにくい。それゆえ、想定外の箇所に添加剤の析出物の発生することを抑えられる。エグゾーストパイプ52の閉塞も防止できる。
【0049】
以上に幾つかの実施形態について説明したが、以上の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明は前記実施形態に限定して解釈されるものではない。実施形態はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得る。以上の実施形態からの変更点について以下に説明する。
【0050】
(1) 前記実施形態では、捕捉板56の突出部56aがエグゾーストパイプ52の外側においてフィルタ32の下流側端面32aに向けて突出している。それに対して、
図5に示すように、そのような突出部56aが設けられていなくてもよい。
【0051】
(2) 前記実施形態では、捕捉板56が対向部52eに設けられている。それに対して、
図6に示すように、そのような捕捉板56が設けられていなくてもよい。
【0052】
(3) 捕捉板56が板状である。それに対して、棒状、針状、螺旋巻き状又は網状の捕捉部材が対向部52eからエグゾーストパイプ52の内側に突出するように取り付けられてもよい。
【0053】
(4) 金属製の捕捉板56の代わりに多孔質材又は繊維材が対向部52eに設けられていてもよい。対向部52e自体が多孔質材又は繊維材であってもよい。多孔質材又は繊維材を採用しても、対向部52eに排ガスが当たることによる添加剤のしぶきの発生を抑えられる。
【0054】
(5) 前記実施形態では、混合装置5の上流側に設けられた装置がディーゼル微粒子フィルタ装置3である。それに対して、ディーゼル微粒子フィルタ装置3に代えて前記ディーゼル酸化触媒装置が混合装置5の上流側に設けられ、フィルタ32に代えてディーゼル酸化触媒がケース31に収容されていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
5…混合装置
32…フィルタ
51…ケース
52…エグゾーストパイプ
52a…上部管部
52b…曲げ部
52c…下部管部
52d…開口部
52e…対向部
53…噴射装置
54…バッフルプレート
56…捕捉板