(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】遠隔操作運転セッションを呼び出すための方法、コンピュータプログラムおよび装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20240325BHJP
H04W 4/40 20180101ALI20240325BHJP
H04W 92/18 20090101ALI20240325BHJP
【FI】
G08G1/09 V
H04W4/40
H04W92/18
(21)【出願番号】P 2022561993
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2021058899
(87)【国際公開番号】W WO2021204777
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-11-04
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596107062
【氏名又は名称】フォルクスヴァーゲン アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
【住所又は居所原語表記】Berliner Ring 2, 38440 Wolfsburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム ジョルノ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス プファードラー
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/066069(WO,A1)
【文献】特開2019-185293(JP,A)
【文献】特開2020-031563(JP,A)
【文献】国際公開第2017/077621(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/09
H04W 4/40
H04W 92/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(40)に対して遠隔操作運転セッションを呼び出す
ための自動運転機能が装備された前記車両(40)の計算装置(60)に実装された方法であって、前記方法は、
-
周囲を観察するための前記車両(40)のセンサ(150,151,182,186)によって得られるデータに基づいて、または別の車両(41)からのサイドリンク通信から、前記計算装置(60)が、遠隔操作運転セッションを必要とし得る切迫した
デッドロック状況を識別するステップ(10)と、
-
前記計算装置(60)が、前記遠隔操作運転セッションが実行されるべき位置に対し、前記車両(40)とコントロールセンタとの間の通信についての予測サービス品質(PQoS)を予測するステップ(11)と、
-
前記計算装置(60)が、前記予測サービス品質(PQoS)を用いて、遠隔操作運転セッションについての最大運転可能速度まで前記車両(40)の速度を低下させるステップ(12)と、
を有する方法。
【請求項2】
さらに、前記遠隔操作運転セッションが必要とされることが確認されると、
前記計算装置(60)が、前記遠隔操作運転セッションを開始するステップ(13)を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、
前記計算装置(60)が、遠隔操作運転セッションが必要とされる確率を決定するステップ(10)であって、前記確率が第1閾値を上回る場合に遠隔操作運転セッションを必要とする可能性がある切迫した
デッドロック状況を識別するステップ(10)を有する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記確率が第2閾値を上回る場合に、前記遠隔操作運転セッションが必要とされることを確認する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
周囲を観察するための前記車両(40)のセンサ(150,151,182,186)によって得られるデータから、または別の車両(41)からのサイドリンク通信から前記確率を導出する、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
前記計算装置(60)が、以前に特定されたサービス品質についてのデータ、別の車両(41)からのサイドリンク通信からのデータ、または前記遠隔操作運転セッションが実行されるべき位置についての周囲データを使用して、前記サービス品質(PQoS)を予測する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記車両(40)の以前の測定から、またはサービスプロバイダによって提供されたデータから、以前に特定されたサービス品質についての前記データを得る、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記周囲データは、建造物または通信インフラストラクチャの位置についての情報を有する、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
コンピュータによって実行される場合に、自動運転機能が装備された車両(40)に対して遠隔操作運転セッションを呼び出す、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法を前記コンピュータに実行させる命令を有するコンピュータプログラム。
【請求項10】
自動運転機能が装備された車両(40)に対して遠隔操作運転セッションを呼び出すための装置(20)であって、前記装置(20)は、
-
周囲を観察するための前記車両(40)のセンサ(150,151,182,186)によって得られるデータに基づいて、または別の車両(41)からのサイドリンク通信から、遠隔操作運転セッションを必要とし得る切迫した
デッドロック状況を識別する(10)ように構成された識別モジュール(22)と、
-前記遠隔操作運転セッションが実行されるべき位置に対し、前記車両(40)とコントロールセンタとの間の通信についての予測サービス品質(PQoS)を予測する(11)ように構成されている予測モジュール(23)と、
-前記予測サービス品質(PQoS)を用いて、遠隔操作運転セッションについての最大運転可能速度まで前記車両(40)の速度を低下させる(12)ように構成された速度制御モジュール(24)と、
を有する、装置(20)。
【請求項11】
自動運転機能が装備された車両(40)において、前記車両(40)は、請求項10記載の装置(20)を有するか、または遠隔操作運転セッションを呼び出す、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法を実行するように構成されている、ことを特徴とする、自動運転機能が装備された車両(40)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転機能が装備された車両に対して遠隔操作運転セッションを呼び出すための方法、コンピュータプログラムおよび装置に関する。本発明はさらに、このような方法または装置を使用する、自動運転機能が装備された車両に関する。
【0002】
遠隔操作運転にはますます多くの関心が集まっている。本明細書の文脈における遠隔操作運転とは、外部オペレータが車両を遠隔でコントロールすることである。外部オペレータは、コントロールセンタにいる。コントロールセンタと車両との間には大きな距離があってよい。コントロールセンタと車両とは、無線通信システムおよびそのバックホールを介して接続される。無線通信システムは主として、LTE(Long Term Evolution)または5Gのような公衆移動体通信システムの一部である。
【0003】
遠隔操作運転は、安全関連のタイムクリティカルな応用に属する。情報交換について主に要求されるのは、低遅延、高データレートおよび高い信頼性である。
【0004】
オートマチックドライビング、オートメーテッドドライビングまたはパイロッテッドドライビングとも称される自律運転は、大部分が自律的である車両、移動ロボット、および無人搬送システムを動かすことである。自律運転にはさまざまな段階がある。欧州では、さまざまな運輸省庁、例えば、ドイツの連邦道路交通研究所(Bundesanstalt fuer Strassenwesen)が以下の自律段階を定義している。すなわち、
・レベル0:「運転者のみ」、運転者が自身で運転し、操舵し、加速し、制動するなど。
・レベル1:ACC(オートクルーズコントロール)のようなクルーズコントロールシステムを含め、特定の支援システムにより、車両操作が支援される。
・レベル2:部分自動化。そこでは、自動駐車、追尾機能、一般的な長手方向ガイダンス、加速、減速などが、衝突回避を含め、支援システムによってテイクオーバーされる。
・レベル3:高度な自動化。運転者は、システムを絶えず監視する必要がない。車両により、方向指示器のトリガ、車線変更、および追尾のような機能が単独で実行される。運転者は、別の事柄に取り掛かっていてよいが、要求される場合には、運転者は事前警告期間内に制御をテイクオーバーしなければならない。
・レベル4:完全自動化。車両のガイドは、システムによって永続的に実行される。システムが、もはやタスクを処理できなくなった場合には、運転者は、制御をテイクオーバーするように求められることがある。
・レベル5:運転者は不要。ターゲットの設定およびシステムの始動を除いて、人間の介入は必要とされない。
【0005】
わずかに異なるレベルの定義は、SAE(Society of Automotive Engineers)から公知である。これに関しては、SAE J3016規格を参照されたい。これらのような定義は、上で示した定義の代わりに使用されることもある。
【0006】
レベル4およびレベル5で運転される車両に走行車両に関する問題を解決するために、遠隔操作運転が、重要な技術となる可能性がある。自律的に運転する車両は、その周囲の認知と、あらかじめ定められた交通規則とに基づいてその決定を行う。しかしながら、例えば、周囲の誤った解釈、センサ故障、不十分な道路状況、または不明確な交通状況、例えば、事故または建設現場などに起因して、自律車両が、計画ルートをもはや継続できなくなるということが起こり得る。このような状況において車両に必要であるのは、この状況を解決するために、別の誰かからの、例えば、コントロールセンタにいる外部オペレータからの外部の指示である。車両がその自律運転操作を再開できるようになるまで、車両は、遠隔操作運転セッションの間、外部オペレータによって遠隔で運転されることになる。
【0007】
これに関し、米国特許出願公開第2017/0308082号明細書には、自律車両を支援する方法が開示されている。車両が自律的に運転している間、特定のイベントが発生すると、車両は、コントロールセンタに警報を発するか、またはコントロールセンタとの対話を開始することができる。イベントには、デッドロック状況を含め、さまざま状況が含まれていてよい。デッドロック状況は、自律車両ソフトウェア解析が、不確実性レベル閾値もしくはリスクレベル閾値に達する場合、または自律制御の故障が生じている場合に発生し得る。
【0008】
米国特許出願公開第2019/0049948号明細書には、車両内の自律制御システムと、遠隔オペレータとの間で切り換えることによって車両を運転する方法が開示されている。完全自律的に運転している場合、車両運転システムは、故障運転状態をチェックすることができる。このような状態が検出されると、車両運転システムは、同時に車両速度を低下させて遠隔オペレータに遭難コールを送信することができる。
【0009】
国際公開第2018/141415号には、車両の遠隔制御を可能にする方法が開示されている。この方法は、車両データプロバイダによって実行される。車両データプロバイダにより、遠隔オペレータによる手動支援が必要とされることが検出されると、遠隔制御が始まる前の時間に関する車両データのストリームが取得される。車両データは、再生の持続時間を調整することによって修正される。修正された車両データは次いで、再生のためにオペレータに提供される。
【0010】
米国特許出願公開第2017/0192423号明細書には、自律車両を遠隔支援する方法が開示されている。自律車両からのセンサデータは、集められた、支援の望まれるシナリオが識別される。センサデータに基づいて支援要求が生成され、この支援要求が遠隔支援インタフェースに送られる。次いで、支援要求に対する応答が受信されて処理される。
【0011】
遠隔操作運転のパフォーマンスは、通信リンクパフォーマンスに関連することが公知である。このリンクには、車両と基地局との間のエアインタフェースが含まれ、さらに、オペレータのバックボーン、すなわちコアネットワークを介する接続が含まれている。特に、最大速度のような遠隔操作運転についての運転パラメータは、コマンドセンタとの通信品質に適合されなければならない。遠隔操作運転についての本解決手段によれば、デッドロックが発生したとき、車両は、停止し、コントロールセンタと連絡をとり、遠隔操作運転セッションを開始する必要がある。これにより、ドライビングエクスペリエンスは中断される。円滑なテイクオーバーはまだ不可能である。
【0012】
本発明の目的は、車両に対して遠隔操作運転セッションを呼び出すための改善された解決手段を提供することである。
【0013】
この目的は、請求項1記載の方法によって、この方法を実装する請求項9記載のコンピュータプログラムによって、また請求項10記載の装置によって達成される。従属請求項には、以下に説明する、本方式のさらなる有利な発展形態および改善形態が含まれている。
【0014】
第1態様によれば、自動運転機能が装備された車両に対して遠隔操作運転セッションを呼び出す方法は、次のステップを有する、すなわち、
-遠隔操作運転セッションを必要とし得る切迫した状況を識別するステップと、
-遠隔操作運転セッションが実行されるべき位置に対し、車両とコントロールセンタとの間の通信についてのサービス品質を予測するステップと、
-予測サービス品質を用いて、遠隔操作運転セッションについての最大運転可能速度まで車両の速度を低下させるステップとを有する。
【0015】
これに応じて、コンピュータプログラムは、少なくとも1つのプロセッサによって実行される場合に、自動運転機能が装備された車両に対して遠隔操作運転セッションを呼び出すための次のステップを少なくとも1つのプロセッサに実行させる命令を有する、すなわち、
-遠隔操作運転セッションを必要とし得る切迫した状況を識別するステップと、
-遠隔操作運転セッションが実行されるべき位置に対し、車両とコントロールセンタとの間の通信についてのサービス品質を予測するステップと、
-予測サービス品質を用いて、遠隔操作運転セッションについての最大運転可能速度まで車両の速度を低下させるステップとを有する。
【0016】
「コンピュータ」という語は広義に理解されなければならない。特に、これには、電子制御ユニット、組込み装置および他のプロセッサベースのデータ処理装置も含まれる。
【0017】
コンピュータプログラムコードは、例えば、電子的な取り出しに利用可能とすることができるか、またはコンピュータ可読記憶媒体に記憶することができる。
【0018】
別の態様によれば、自動運転機能が装備された車両に対して遠隔操作運転セッションを呼び出すための装置は、
-遠隔操作運転セッションを必要とし得る切迫した状況を識別するように構成された識別モジュールと、
-遠隔操作運転セッションが実行されるべき位置に対し、車両とコントロールセンタとの間の通信についてのサービス品質を予測するように構成された予測モジュールと、
-予測サービス品質を用いて、遠隔操作運転セッションについての最大運転可能速度まで車両の速度を低下させるように構成された速度制御モジュールとを有する。
【0019】
本発明によると、自動化車両により、例えば、デッドロック状況に起因して、近い将来に遠隔操作運転セッションが必要になり得ることが特定されるだけでなく、この遠隔操作運転セッション中に使用されることになる通信リンクについてのサービス品質も予測される。与えられた状況、特に予測サービス品質に基づいて、遠隔操作運転セッションについて最大運転可能速度が計算される。次いで、必要に応じて、準備動作としてこの最大駆動可能速度に自動化車両の速度を低下させる。最大駆動可能速度に速度を先立って低下させることにより、発生し得る自動化車両の緊急ブレーキが回避され、ひいては、より円滑なテイクオーバーにつながる。
【0020】
通信リンクについてのサービス品質を予測するためには、いくつかの選択肢が存在する。第1の選択肢によると、車両それ自体によってサービス品質を推定することができる。例えば、G. Jornod等による論文:"Packet Inter-Receiving Time Conditional Density Estimation Based on Surrounding Traffic Distribution"、IEEE Open Journal of Intelligent Transportation Systems、第1巻(2020)、第51~第62ページには、IEEE802.11pネットワークにおけるパケットインターレセプションタイムプラトーンメッセージについて予測モデルが示されている。第2の選択肢によると、ネットワークによってサービス品質を供給することができる。リリース16において、3GPP標準化団体によって導入されたのは、サービス品質の予測または推定される変化が実際に発生する前に、セルラ5G通信システムが、V2X(Vehicle-to-Everything)アプリケーションにそのことを通知できるようにする解決手段である。この手順は、3GPP標準では、サービス品質持続可能性解析と称され、アプリケーション変更が必要な場合に、V2Xアプリケーションが、予防的かつ安全な方法で決定を支援する。さらなる詳細は、例えば、3GPP Technical Specification TS 23.287、すなわち"Architecture enhancements for 5G System (5GS) to support Vehicle-to-Everything (V2X) services (v16.1.0, Release 16)"、または3GPP Technical Specification TS 23.288、すなわち"Architecture enhancements for 5G System (5GS) to support network data analytics services (v16.2.0, Release 16)"に見つけることができる。
【0021】
有利な実施形態では、遠隔操作運転セッションが必要とされることが確認されると、遠隔操作運転セッションを開始する。上述のように、自動化車両は、遠隔操作運転セッションが必要とされ得る状況に備えて、最大運転可能速度までその速度を低下させる。当然のことながら、実際には遠隔操作運転セッションが必要でないことが後で判明することがある。しかしながら遠隔操作運転セッションが実際に必要とされることが確認されると、自動化車両はこのセッションを開始する。このようにして、コントロールセンタには十分に先立って連絡がとられ、これにより、コントロールセンタによるコントロールの適時なテイクオーバーが保証される。
【0022】
有利な実施形態では、遠隔操作運転セッションが必要とされる確率を決定し、ここでは確率が第1閾値を上回る場合に遠隔操作運転セッションを必要とする可能性がある切迫した状況を識別する。実際の運転条件下では、遠隔操作運転セッションが実際に必要となるかどうかについて、早期の段階で明確な決定を下すことは困難であることが多い。したがって、確率に頼ることが推奨される。例えば、自動化車両により、デッドロック状況の確率を連続的に決定して評価することができる。この確率が十分に高くなると、デッドロックを処理するために必要なアクションを開始し、すなわち、車両により、予測サービス品質についての情報を収集し、それに応じて速度を低下させる。当然のことながら、デッドロック状況とは関係なく、予測サービス品質についての情報も同様に連続的に収集可能である。第1閾値の値は、車両の速度の滑らかな低下と、不要な減速の回数との間にトレードオフが達成されるように選択可能である。第1閾値が極めて低く設定されると、自動化車両は、遠隔操作運転セッションが実際には必要ない多くの状況において、その速度を低下させることになる。第1閾値が極めて高く設定されると、間に合うように最大運転可能速度を達成するために、自動化車両は、かなり強く制動しなければならない事態が起こり得る。第1閾値についての適切な値の決定は、当業者の判断に委ねられている。
【0023】
遠隔操作運転セッションが必要とされる確率を決定するために、車両センサの感知不確実性を使用することができる。LIDARセンサまたはRADARセンサのような車両センサにより、通常、信頼水準が提供される。感知不確実性が高いほど、遠隔操作運転セッションが必要とされる確率が高くなる。択一的または付加的には、周囲情報を評価することができる。例えば、車両が走行している地域を考慮することができる。遠隔操作運転セッションが必要とされる確率は、高速道路または農村地域よりも市街地において高い。同様に、この地域内の別の車両が、遠隔操作運転セッションにすでに入っているかどうかも解析することができる。この場合には、遠隔操作運転セッションが必要とされる確率はより高くなる。この解析に必要な情報は、例えば、ブロードキャスティングを介して共有可能である。評価可能な別の周囲情報は、気象条件および交通情報である。遠隔操作運転セッションが必要とされる確率は、雪、地獄石、霧などのような悪天候条件では、晴天の場合よりも高くなる。同様に、交通渋滞が検出される場合には、または低車両密度に対するよりも高車両密度の場合には、この確率は高い。上述した解析は、統計、経験または学習に基づくアプローチと組み合わせ可能である。このようなアプローチは、感知不確実性および周囲情報に関する条件が、遠隔操作運転セッションにつながった頻度を考慮している。
【0024】
有利な実施形態では、確率が第2閾値を上回る場合に、遠隔操作運転セッションが必要とされることを確認する。確率に基づいて遠隔操作運転セッションの必要性を確認することは、コントロールセンタにかなり早く連絡することができ、これにより、オペレータが制御をテイクオーバーするために利用可能な時間が増大するという利点を有する。第2閾値の値は、コントロールセンタへの円滑なハンドオーバーと、不必要に呼び出される、遠隔操作運転セッションの回数との間のトレードオフが達成されるように選択可能である。前述のように、第2閾値についての適切な値の決定は、当業者の判断に委ねられている。当然のことながら、遠隔操作運転セッションの必要性の確認は、ユーザ入力、例えば、運転者による押しボタンの作動を介して得ることも可能である。
【0025】
有利な実施形態では、車両のセンサによって得られるデータから、または別の車両からのサイドリンク通信から確率を導出する。例えば、道路が遮断されていることを特定するために、RADAR(Radio Detection and Ranging)センサ、LIDAR(Light Detection and Ranging)センサ、または2D画像および3D画像取得用のカメラが使用されてよい。択一的または付加的には、自動化車両は、別の車両から、例えば、発生している可能性のあるデッドロック状況に近い車両から、またはすでに遠隔操作運転セッションで、デッドロック状況を通って運転されている車両から、関連情報を受け取ることができる。
【0026】
有利な実施形態では、以前に特定されたサービス品質についてのデータ、別の車両からのサイドリンク通信からのデータ、または遠隔操作運転セッションが実行されるべき位置についての周囲データを使用して、サービス品質を予測する。以前に特定されたサービス品質についてのデータは、例えば、車両の以前の測定から、またはサービスプロバイダによって提供されたデータから得ることができる。例えば、自動化車両は、以前の移動中に特定の位置に対し、通信リンクのサービス品質についての情報をすでに収集している可能性があるか、または別の車両からそのような情報を受信している可能性がある。択一的には、サービスプロバイダにより、そのような情報を含むマップデータが提供されてよい。周囲データを使用してサービス品質が予測される場合、これらのデータは好ましくは、建造物または通信インフラストラクチャの位置についての情報を有する。このようなデータに基づき、特定の位置について、建造物によって生じる干渉が予想されるか否かを解析することができる。
【0027】
有利には、自律車両または半自律車両は、本発明による装置を有するか、または遠隔操作運転セッションを呼び出す、本発明による方法を実行するように構成されている。このようにして車両は、遠隔操作運転セッションを呼び出す必要がある場合、改善された挙動を示す。車両は、任意のタイプの車両、例えば、自動車、バス、オートバイ、商用車、特に、トラック、農業機械、建設機械、鉄道車両などであってよい。より一般的に本発明は、陸上車両、鉄道車両、船舶および航空機に使用可能である。明示的にこれには、表現上、ロボットおよびドローンが含まれる。
【0028】
本発明の別の特徴は、図面に関連する以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】自動運転機能が装備された車両に対して遠隔操作運転セッションを呼び出す方法を略示する図である。
【
図2】自動運転機能が装備された車両に対して遠隔操作運転セッションを呼び出すための装置の第1実施形態を略示する図である。
【
図3】自動運転機能を備えた車両に対して遠隔操作運転セッションを呼び出すための装置の第2実施形態を略示する図である。
【
図4】V2VおよびV2X通信システムの基本アーキテクチャを示す図である。
【
図6】遠隔操作運転の応用シナリオとして、例示的なデッドロック状況を示す図である。
【
図7】自動運転機能が装備された車両の経路に沿ったデッドロックの推定確率を示す線図である。
【
図8】自動運転機能が装備された車両の経路に沿った、コントロールセンタとの通信の予測サービス品質を示す線図である。
【
図9】本解決手段を用いた場合と、用いない場合との速度プロファイルの比較を示す線図である。
【0030】
本明細書により、本開示の方式を説明する。したがって、本明細書では明示的に説明されていないかまたは示されていないが、本開示の方式を実施するさまざまな装置を当業者が考え出すことができることが理解されよう。
【0031】
本明細書で列挙される全ての実施例および条件的な言い回しは、本開示の方式と、当該技術分野を進展させるために発明者が寄与したコンセプトとの理解において、読者を助けるという教育目的のために意図されており、またこのような特に列挙された実施例および条件に限定されるものではないと解釈されるべきである。
【0032】
さらに、本開示の方式、態様、および実施形態、ならびにその特定の実施例を列挙している本明細書の全ての記載は、それらの構造的および機能的な同等物の両方を包含することが意図されている。加えて、そのような等価物には、現在知られている等価物と、構造にはかかわらずに、将来的に開発される等価物、すなわち、同じ機能を実行する任意の開発される要素との両方が含まれることが意図されている。
【0033】
したがって、例えば、当業者には、本明細書で示される図は、本開示の方式を実施する例示的な回路の概念図を表していることが理解されよう。
【0034】
図に示されたさまざま要素の機能は、専用のハードウェアも使用することによって、また適切なソフトウェアに関連して、ソフトウェアを実行可能なハードウェアを使用することによって提供されてよい。プロセッサによって提供される場合、機能は、単一の専用プロセッサによって、単一の共有プロセッサによって、またはなかには共有され得る複数の個別プロセッサによって提供されてよい。さらに、「プロセッサ」または「コントローラ」という用語の明示的な使用は、ソフトウェアを実行可能なハードウェアだけを指すと解釈されるべきではなく、暗示的には、DSP(digital signal processor)ハードウェア、ソフトウェアを格納するためのROM(read only memory)、RAM(random access memory)および不揮発性記憶装置が含まれていてよいが、これらには限定されない。
【0035】
別のハードウェア、慣用および/または特定用途向けのハードウェアも含まれてよい。同様に、図面に示されているスイッチはいずれも概念的なものにすぎない。それらの機能は、プログラムロジックの動作を介して、専用ロジックを介して、プログラム制御と専用ロジックとの相互作用を介して実行可能であり、さらに手動でも実行可能であり、文脈からいっそう具体的に理解できるように、特定の技術は、実装者によって選択されてよい。
【0036】
本願の特許請求の範囲では、特定の機能を実行するための手段として表される任意の要素には、その機能を実行する任意の仕方が含まれることが意図されており、これには、例えば、その機能を実行する回路要素の組み合わせが含まれ、または任意の形態のソフトウェア、したがって、機能を実行するためにそのソフトウェアを実行するための適切な回路と組み合わせられるファームウェア、マイクロコードなどを含めたソフトウェアが含まれる。このような特許請求の範囲によって定められる開示の実体は、列挙されたさまざまな手段によって提供される機能が、特許請求の範囲によって要求される仕方で組み合わされてまとめられることにある。したがって、それらの機能を提供することができる任意の手段は、本明細書に示されたものと同等であると考えられる。
【0037】
図1には、自動運転機能が装備された車両に対して遠隔操作運転セッションを呼び出す、本発明による方法が略示されている。第1ステップ10では、遠隔操作運転セッションを必要とし得る切迫した状況を識別する。このために、遠隔操作運転セッションが必要とされる確率を決定することができる。次いで、確率が第1閾値を上回る場合、ステップ10において、遠隔操作運転セッションを必要とし得る切迫した状況を識別する。この確率は、車両のセンサによって得られるデータから、または別の車両からのサイドリンク通信から導出可能である。さらに、ステップ11では、遠隔操作運転セッションが実施されるべき位置に対し、車両とコントロールセンタとの間の通信についてのサービス品質を予測する。サービス品質は、以前に特定されたサービス品質についてのデータ、別の車両からのサイドリンク通信からのデータ、または遠隔操作運転セッションが実行されるべき位置についての周囲データを使用して、ステップ11において、予測可能である。以前に特定されたサービス品質についてのデータは、例えば、車両の以前の測定から、またはサービスプロバイダによって提供されたデータから得ることができる。周囲データは好ましくは、建造物または通信インフラストラクチャの位置についての情報を有する。次いで、ステップ12では、予測サービス品質を用いて、遠隔操作運転セッションについての最大運転可能速度まで車両の速度を低下させる。遠隔操作運転セッションが必要とされることが確認されると、ステップ13では、遠隔操作運転セッションを開始する。例えば、遠隔操作運転セッションが必要とされる確率が、第2閾値を上回る場合に、遠隔操作運転セッションが必要とされることを確認することができる。
【0038】
図2には、自動運転機能が装備された車両に対して遠隔操作運転セッションを呼び出すための、本発明による装置20の第1実施形態のブロック図が略示されている。装置20は、例えば、車両のセンサ150,151,182,186から、別の車両41から、または基地局210から、データを受信するための入力部21を有する。識別モジュール22は、受信したデータに基づいて、遠隔操作運転セッションが必要とされ得る切迫した状況を識別するように構成されている。このために、識別モジュール22は、遠隔操作運転セッションが必要とされる確率を特定するように構成されていてよい。確率が第1閾値を上回ると、遠隔操作運転セッションが必要とされ得る切迫した状況を識別する。同様に、確率が第2閾値を上回ると、遠隔操作運転セッションが必要とされることを確認することができる。この確率は、車両のセンサによって得られるデータから、または別の車両からのサイドリンク通信から導出可能である。識別モジュール22はさらに、遠隔操作運転セッションが必要とされることが確認されると、遠隔操作運転セッションを開始するように構成可能である。予測モジュール23は、遠隔操作運転セッションが実行されるべき位置に対し、車両とコントロールセンタとの間の通信についてのサービス品質PQoSを予測する。例えば、予測モジュール23は、以前に特定されたサービス品質についてのデータ、別の車両からのサイドリンク通信からのデータ、または遠隔操作運転セッションが実行されるべき位置についての周囲データを使用して、サービス品質PQoSを予測するように構成可能である。以前に特定されたサービス品質についてのデータは、例えば、車両の以前の測定から、またはサービスプロバイダによって提供されたデータから得ることができる。周囲データは好ましくは、建造物または通信インフラストラクチャの位置についての情報を有する。次いで、速度制御モジュール24は、予測サービス品質PQoSを用いて、遠隔操作運転セッションについての最大運転可能速度v
maxまで車両の速度を低下させる。制御モジュール24または識別モジュール22によって生成される制御信号は、出力部27を介してさらにオートマチックドライビングユニット184に供給されてよい。ローカル記憶ユニット26は、例えば、処理中にデータを格納するために設けられている。出力部27は、入力部21と組み合わせて単一の双方向インタフェースにすることも可能である。
【0039】
識別モジュール22、予測モジュール23および速度制御モジュール24は、コントローラ25によって制御可能である。識別モジュール22、予測モジュール23、速度制御モジュール24またはコントローラ25の設定をユーザが変更できるようにするために、ユーザインタフェース28を設けることができる。識別モジュール22、予測モジュール23、速度制御モジュール24およびコントローラ25は、専用のハードウェアユニットとして実施可能である。当然のことながら、これらは同様に、完全にまたは部分的に、単一のユニットに組み合わせ可能であり、またはプロセッサ、例えばCPUまたはGPUにおいて動作するソフトウェアとして実装可能である。
【0040】
自動運転機能が装備された車両に対して遠隔操作運転セッションを呼び出すための、本発明による装置30の第2実施形態のブロック図は
図3に示されている。装置30は、処理装置31およびメモリ装置32を有する。例えば、装置30は、コンピュータ、電子制御ユニットまたは組み込みシステムであってよい。メモリ装置32には、処理装置31によって実行されるときに、記載した方法の1つにしたがってステップを装置30に実行させる命令が記憶されている。したがって、メモリ装置32に記憶されている命令は、本方式にしたがい、本明細書に記載されているようにプログラムステップを実行するために、処理装置31によって実行可能な命令のプログラムを有形に実施している。装置30は、データを受信するための入力部33を有する。処理装置31によって生成されたデータは、出力部34を介して利用可能にされる。さらに、このようなデータは、メモリ装置32に記憶されてよい。入力部33と出力部34とは、単一の双方向インタフェースに組み合わせることができる。
【0041】
この実施例で使用される処理装置31には、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサのような1つまたは複数の処理ユニット、またはそれらの組み合わせが含まれていてよい。
【0042】
ローカル記憶ユニット26およびメモリ装置32は、揮発性および/または不揮発性のメモリ領域、ならびにハードディスクドライブ、光学ドライブおよび/またはソリッドステートメモリのような記憶装置を含んでいてよい。
【0043】
以下では、
図4~
図9を参照して、本発明の好ましい実施形態をより詳細に説明する。
【0044】
図4には、V2V(Vehicle-to-Vehicle)およびV2X(Vehicle-to-Everything)通信システムの基本アーキテクチャが示されている。参照符号40は、この実施例では自動車、特に乗用車である車両を示している。車両40には、この車両40があらゆる形態の移動体通信サービスに関与できるようにする、対応するアンテナを含む車載通信モジュール160が装備されている。
図4に示したように、車両40は、V2N(Vehicle-to-Network)通信リンクUuを使用して、移動体通信サービスプロバイダの基地局210に信号を送信し、またここから信号を受信することができる。
【0045】
このような基地局210は、LTE移動体通信サービスプロバイダのeNodeB(Evolved Node B)基地局または5G移動体通信プロバイダのgNB(Next Generation Node B)基地局であってよい。基地局210および対応する機器は、複数のネットワークセルを有する移動体通信ネットワークの一部であり、それぞれのセルは1つの基地局210によってサービスされる。
【0046】
図4の基地局210は、車両40が走行している主要道路の近くに位置付けられている。当然のことながら、別の車両41も、この道路上を走行していてよい。LTEの術語では、モバイル端末は、無線インタフェースを介してUTRAN(UMTS(Universal Mobile Telecommunications System) Tertial Radio Access Network)またはEvolved-UTRANに接続してユーザがネットワークサービスにアクセスできるようにするユーザ装置に対応する。一般に、このようなユーザ装置は、スマートフォンに対応する。当然のことながら、モバイル端末は、上述の車載通信モジュール160の形態で、車両40,41においても使用される。これらの車載通信モジュール160は、LTE、5G、または車両40,41が、ダウンストリーム方向にモバイルデータを受信し、アップストリームまたは直接にデバイス間方向にこのようなデータを送信できるようにする任意の別の通信モジュールである。
【0047】
LTE移動通信システムに関し、Evolved-UTRANは、複数のeNodeBから構成され、これにより、ユーザ装置に向かって、E-UTRAユーザプレーンプロトコル終結、すなわちPDCP(Packet Data Convergence Protocol)と、RLC(Radio Link Control)と、MAC(Media Access Control)と、PHY(Physical Layer)と、コントロールプレーン終結、すなわちRRC(Radio Resource Control)とが提供される。eNodeBは、いわゆるX2インタフェースによって相互接続される。eNodeBはまた、いわゆるS1インタフェースによってEPC(Evolved Packet Core)200に接続され、より具体的には、S1-MMEインタフェースによってMME(Mobility Management Entity)に、またS1-Uインタフェースによってサービングゲートウェイに接続される。
【0048】
この一般的なアーキテクチャに関連して、
図4には、eNodeBが、S1インタフェースを介してEPC200に接続されていることと、EPC200がインターネット300に接続されていることが示されている。車両40,41がメッセージを送信し、車両40,41がメッセージを受信するコントロールセンタコンピュータ320もインターネット300に接続されている。協調型自動運転の分野では、コントロールセンタコンピュータ320は一般に、交通コントロールセンタに配置されており、この交通コントロールセンタでは、車両40,41によって要求される遠隔操作運転セッションに対し、オペレータが作業している。最後に、このケースでは路側ユニット310であるインフラストラクチャネットワークコンポーネントも示されている。実装を容易にするために、全てのコンポーネントには、一般的にはIPv6アドレスの形態で、インターネットアドレスが割り当てていると考えられ、これにより、コンポーネント間でメッセージを伝送するパケットは、相応にルーティング可能である。
【0049】
LTEネットワークアーキテクチャのさまざまなインタフェースが標準化されている。これに関しては、別の実装形態の詳細を十分に開示するために公的に利用可能であるさまざまなLTE仕様を参照されたい。
【0050】
車両40,41には、それらの周囲を観察するための手段が装備されていてもよい。周囲対象体を捕捉するために使用されるそれらのセンサシステムは、応用に応じて、異なる測定方法に基づいている。一般に普及している技術は、とりわけ、RADAR、LIDAR、2Dおよび3D画像取得用のカメラ、ならびに超音波センサである。
【0051】
自動運転は増大中であるため、車両40、41間で、例えば、V2V通信リンクPC5を使用して、また車両40,41とネットワークとの間でも、より多くのデータを交換する必要がある。V2V通信およびV2X通信のための通信システムは、それに対応して適応させられる必要がある。3GPP標準化団体は、V2X機能を含めて、5Gセルラ移動体通信システムの新世代のための機能をこれまで公開しており、またこれからも公開する。インフォテインメントから協調運転までに広がる、車両ユースケースの大型パネルが設計されている。応用に応じて、V2N通信の範囲におけるアクセスリンクUuについての要求は大きく変化する。車両の特定の運転機能がコマンドセンタによってテイクオーバーされる遠隔操作運転などの安全性に関連するタイムクリティカルな応用が関連する場合、これらの要求は、低遅延、高データレートおよび高い信頼性で情報を交換することである。
【0052】
図5には、車両のボード電子システムのブロック図が略示されている。ボード電子システムの一部は、タッチセンシティブなディスプレイユニット50、計算装置60、入力ユニット70およびメモリ装置80を有する含むインフォテインメントシステムである。ディスプレイユニット50は、データライン55を介して計算装置60に接続され、変化するグラフィック情報を表示するための表示領域と、ユーザによるコマンド入力のために表示領域の上方に配置されるオペレータインタフェース(タッチセンシティブレイヤ)との両方を含んでいる。入力ユニット70は、データライン75を介して計算装置60に接続されている。参照番号71は、車両が遮断されておりかつ運転者が、遮断状況から脱する仕方を見つけるために遠隔操作運転オペレータの支援を望む場合に、運転者が手動で遠隔操作運転セッションを要求できるようにする押しボタンを示している。手動制御のための別の手法を用いる場合には、専用の押しボタン71を設ける必要はない。この別の手法には、ディスプレイユニット50に表示されるユーザメニューにおけるオプションの選択、音声認識によるコマンドの検出、またはジェスチャ制御手段の使用が含まれる。
【0053】
メモリ装置80は、データライン85を介して計算装置60に接続されている。メモリ装置80には、付加情報が重畳され得る場合のためにピクトグラムおよび/またはシンボルと共に、ピクトグラムディレクトリおよび/またはシンボルディレクトリが配置されている。
【0054】
カメラ150、ラジオ140、ナビゲーション装置130、電話機120およびインストルメントクラスター110のようなインフォテインメントシステムの別の部分は、データバス100を介して計算装置60に接続されている。データバス100として、ISO規格11898-2に準拠するCAN(Controller Area Network)バスの高速版が使用可能である。択一的には、IEEE802.03cgのようなイーサネットベースのバスシステムが使用可能である。光ファイバを介してデータ伝送を実装するバスシステムも使用可能である。その例は、MOST(Media Oriented System Transport)バスまたはD2B(Domestic Digital Bus)バスである。インバウント無線通信およびアウトバウンド無線通信のために、車両には、車載通信モジュール160が装備されている。これは、移動体通信、例えば、5G規格に準拠する移動体通信に使用可能である。
【0055】
参照符号172は、エンジン制御ユニットを示す。参照符号174は、ESC(electronic stability control)ユニットを示しているのに対し、参照符号176は、トランスミッション制御ユニットを示している。全てがドライブトレインのカテゴリに割り当てられるこのような制御ユニットのネットワーキングは、一般にCANバス104によって行われる。モータビークルにはさまざまなセンサが取り付けられており、これらは、もはや個々の制御ユニットだけに接続されるのではないため、このようなセンサデータは、バスシステム104を介して、個々の制御装置にも分配される。
【0056】
今日の車両は、LIDARセンサ186またはRADARセンサ182のような周囲を走査するための別のセンサのような付加的なコンポーネント、および付加的なビデオカメラ151、例えば、フロントカメラ、リアカメラ、またはサイドカメラを有していてよい。このようなセンサは、周囲を観察するために車両にますます使用されるようになっている。ADC(automatic driving control)ユニット184などのような別の制御装置が、車両に設けられていてよい。RADARセンサ182およびLIDARセンサ186は、250mまでの走査範囲を有し得るのに対し、カメラ150,151は、30m~120mの範囲をカバーし得る。コンポーネント182~186は、データ伝送のためのより広い帯域幅に起因して、別の通信バス102、例えばイーサネットバスに接続されている。
【0057】
自動車通信の特別なニーズに適合された1つのイーサネットバスが、IEEE802.1Q規格において標準化されている。さらに、V2V通信を介して別の車両から、周囲についての多くの情報を受信することができる。特に、観察車両の視線内にない車両については、V2V通信を介して、それらの位置および動きに関する情報を受信することは非常に有利である。
【0058】
参照番号190は、別の通信バス106に接続されている車載診断インタフェースを示す。
【0059】
車載通信モジュール160を介して別の車両に、またはコントロールセンタコンピュータに車両関連のセンサデータを送信するために、ゲートウェイ90が設けられている。ゲートウェイ90は、異なるバスシステム100,102,104および106に接続されている。ゲートウェイ90は、一方のバスを介してこれが受信するデータを、他方のバスの伝送フォーマットに変換するように適合されており、これにより、それぞれの他方のバスについて指定されたパケットを使用して、データを分配させることができる。このデータを外部へ、すなわち、別の車両へまたはコントロールセンタコンピュータへ転送するために、車載通信モジュール160には、これらのデータパケットを受信し、次いで、適切な移動体無線規格の伝送フォーマットにこれらのデータパケットを変換する通信インタフェースが装備されている。
【0060】
図6には、遠隔操作運転の応用シナリオとして、例示的なデッドロック状況が示されている。トラック42が、一方通行路を遮断している。後続の車両40は、この障害物を追い越さなければならない、レベル4またはレベル5の自動運転能力を備えた自動化車両である。自動運転機能は、交通標識および交通信号機などを含む全ての交通規則を遵守しなければならない。自動運転機能にとって、トラック42を追い越すために歩道330上を走行することは選択肢ではないため、車両40は、トラック42の後ろに留まり、トラック42が動き出すまで待機することになる。しかしながら、これには、例えば、故障または道路事故のために不注意でトラック42が停止している場合、数時間かかることがある。このデッドロック状況を克服するために、車両40は、その計画されたルートを継続するために、歩道330上を走行しなければならない。この目標を達成するために、路側ユニット310およびインターネット300を介する接続を使用し、コントロールセンタコンピュータ320において、遠隔操作運転セッションを呼び出す必要がある。遠隔操作運転についての本解決手段によれば、車両40は、停止し、コントロールセンタと連絡をとり、次いで、状況と、遠隔操作運転セッション中の通信に対するサービス品質についての情報とを考慮して、最大運転可能速度に到達する。見て取ることができるように、建造物340は、路側ユニット310との通信に対する障害物を構成しており、すなわち、サービス品質は、この建造物340によって悪影響を受けてしまうことになる。
【0061】
これに対し、本解決手段によると、自動化車両40がデッドロック状況に接近する場合、自動化車両40により最初に、遠隔操作運転セッションが必要とされ得る切迫した状況が識別される。このために、自動化車両40は、その経路に沿ってデッドロックの確率を連続的に判定して評価することができる。
図6の状況についてのデッドロックのこのような推定確率が、
図7のグラフに略示されている。見て取ることができるように、確率は経路に沿って増大する。デッドロックの確率が第1閾値th
1を超えると、自動化車両40によってさらに、車両40とコントロールセンタとの間の通信に対し、予測サービス品質PQoSについての情報が収集される。当然のことながら、デッドロック状況のいかなる確率とも関係なく、予測サービス品質PQoSを同様に連続的に収集することも可能である。
図6の状況についての予測サービス品質PQoSが、
図8のグラフに略示されている。見て取ることができるように、建造物340が存在することにより、予測サービス品質PQoSが低下している。予測サービス品質PQoSの低下と、デッドロックの確率の増大とが一致するため、自動化車両40は、この周囲状況において、遠隔操作運転セッションにおける最大運転可能速度v
maxを目標とするようにその運転設定を変更する。付加的には、例えば、デッドロックの確率が第2閾値th
2を上回っているため、デッドロックが発生することが確認されると直ちに、自動化車両40より、遠隔操作運転セッションが準備される。遠隔操作運転セッションについての最大駆動可能速度v
maxまで速度を低下させ、かつ先立って遠隔操作運転セッションを開始することにより、本解決手段がなければ生じ得る緊急ブレーキおよび待機時間が回避される。本解決手段による速度プロファイル(実線)と、本解決手段によらない速度プロファイル(破線)との比較が
図9に示されている。車両がデッドロック状況に接近するときの車両の初期速度はv0である。
【符号の説明】
【0062】
10 遠隔操作運転を必要とし得る状況を識別する
11 サービス品質を予想する
12 最大運転可能速度まで減速する
13 遠隔操作運転セッションを開始する
20 装置
21 入力部
22 識別モジュール
23 予測モジュール
24 速度制御モジュール
25 コントローラ
26 ローカル記憶ユニット
27 出力部
28 ユーザインタフェース
30 装置
31 処理装置
32 メモリ装置
33 入力部
34 出力部
40 車両
41 別の車両
42 トラック
50 ディスプレイユニット
55 ディスプレイユニットに至るデータライン
60 計算装置
70 入力ユニット
71 押しボタン
75 入力ユニットに至るデータライン
80 メモリユニット
85 メモリユニットに至るデータライン
90 ゲートウェイ
100 第1データバス
102 第2データバス
104 第3データバス
106 第4データバス
110 インストルメントクラスター
120 電話機
130 ナビゲーション装置
140 ラジオ
150 カメラ
151 別のカメラ
160 車載通信モジュール
172 エンジン制御ユニット
174 電子式スタビリティ制御ユニット
176 トランスミッション制御ユニット
182 RADARセンサ
184 オートマチックドライビング制御ユニット
186 LIDARセンサ
190 車載診断インタフェース
200 EPC(evolved packet core)
210 基地局
300 インターネット
310 路側ユニット
320 コントロールセンタコンピュータ
330 歩道
340 建造物
PC5 V2V通信リンク
PQoS 予測サービス品質
S1 S1インタフェース
Uu V2N通信リンク