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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A46B 5/00 20060101AFI20240325BHJP
   A46B 3/20 20060101ALI20240325BHJP
   A46B 9/02 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
A46B5/00 F
A46B3/20
A46B9/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022570746
(86)(22)【出願日】2021-05-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 GB2021051074
(87)【国際公開番号】W WO2021234343
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】2007572.7
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500024469
【氏名又は名称】ダイソン・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】クリス テイラー ファン ケンペン
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3150597(JP,U)
【文献】実公昭03-000312(JP,Y1)
【文献】実公第027852(大正15年)(JP,Y1T)
【文献】国際公開第2016/162825(WO,A1)
【文献】特開2016-013190(JP,A)
【文献】実開平03-087320(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0055788(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 1/00 - 9/12
A46D 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアに固定された複数の剛毛を備えるブラシであって、各剛毛は、他の全ての剛毛から独立して枢動することができ、前記キャリアが各剛毛の根元を包囲するように前記キャリアが前記剛毛に成形され、各剛毛が貫通孔を備え、各剛毛を前記キャリアに固定するための付加的な構造を提供するために、前記キャリアは前記貫通孔の中へ突出している、ブラシ。
【請求項2】
各剛毛が根元と、前記根元から上方に延在するシャフトとを含み、
前記根元が基部と、前記基部から上方に延在するステムとを含み、
前記基部が前記ステムを超えて外方に延在しており、
前記貫通孔が前記ステムに形成されている、
請求項に記載のブラシ。
【請求項3】
前記ステムに、前記貫通孔が形成されているアンダーカットを含む、請求項に記載のブラシ。
【請求項4】
前記キャリアがシリコーンゴムで形成されている、請求項1~のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項5】
前記キャリアが、50未満のショアAデュロメータを有する材料から形成されている、
請求項1~のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項6】
各剛毛が根元と、前記根元から上方に延在するシャフトとを含み、前記シャフトが少なくとも1.2mmの直径を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項7】
各剛毛が前記シャフトの丸みを帯びた端部として形成された先端を含む、請求項に記載のブラシ。
【請求項8】
各剛毛が根元と、前記根元から上方に延在するシャフトとを備え、前記シャフトの長さが少なくとも15mmである、請求項1~のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項9】
各剛毛が、少なくとも1GPaの曲げ弾性率または少なくとも500N/mの曲げ剛性を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項10】
前記剛毛が金属で形成されている、請求項1~のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項11】
前記ブラシが、複数の穴を含むフレームを備え、各剛毛が前記フレームの各穴を貫通している、請求項1~10のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項12】
前記フレームが双曲放物面形状である、請求項11に記載のブラシ。
【請求項13】
前記キャリアが前記フレームに成形されている、請求項11または12に記載のブラシ。
【請求項14】
前記ブラシが本体を備え、前記キャリアが各剛毛にて前記フレームと前記本体との間に保持されている、請求項1113のいずれか一項に記載のブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシに関しており、限定しないが、特にヘアブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシは、可撓性を持つクッションに固定された剛毛を含むことができる。しかしながら、ブラシを繰り返し使用することにより、剛毛が緩み、クッションから飛び出す場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、キャリアに固定された複数の剛毛を備えるブラシを提供し、各剛毛は、キャリアが突出する貫通孔を備える。
【0004】
キャリアが突出する貫通孔を設けることによって、各剛毛がキャリアから飛び出す可能性が低減される。これは、キャリアが比較的軟質および/または不活性な材料で形成されている場合に、特に当てはまる。
【0005】
キャリアは、剛毛に成形することができる。これには、剛毛がキャリアにより良好に固定され、従って、キャリアから飛び出す可能性が低減されるという利点がある。更に、剛毛とキャリアとの間に隙間が形成される可能性が低減され、さもなければ、この隙間は、毛髪を捕集する、および/または汚れやその他のゴミを蓄積する可能性がある。
【0006】
各剛毛は、根元と、根元から上方に延在するシャフトとを備えてもよい。更に、根元は、基部と、基部から上方に延在するステムとを含んでもよい。基部は、ステムを越えて外方に延在しており、貫通孔がステムに形成される。ステムを越えて外方に延在する基部を有することにより、基部は、キャリアに対する剛毛の上方への動きに対抗する表面(例えば、環状)を提供する。結果的に、剛毛をキャリアから引っ張り出すことがより困難となる。
【0007】
ステムは、アンダーカットを含むことができ、このアンダーカットに貫通孔を形成することができる。その結果、ステムは、キャリアに対する剛毛の下方への動きに対抗する表面を提供し、従って、剛毛をキャリアから押し出すことがより困難となる。貫通孔の直径は、比較的小さくてもよい。結果的に、貫通孔内に突出するキャリアの部分は、比較的細いスレッドを形成することができる。アンダーカットに貫通孔を形成することによって、貫通孔の長さ、従って、キャリアのスレッドの長さを縮小することができる。その結果、貫通孔を貫通するキャリアの部分がより頑丈になる。
【0008】
キャリアは、エラストマーで形成することができる。より具体的には、キャリアはシリコーンゴムで形成することができる。シリコーンゴムは、比較的不活性であり、それ故、使用者の頭皮に何らかの悪影響を及ぼす可能性が低いという利点を有する。更に、シリコーンゴムは、高い熱安定性および優れた耐薬品性を備えている。結果的に、キャリアは、毛髪の乾燥中の高温および/または毛髪製品の形態の化学薬品に曝され得るヘアブラシでの使用によく適している。
【0009】
キャリアは、50未満のショアAデュロメータを有する材料から形成することができる。結果的に、キャリアは、比較的軟質であり、剛毛のより大きな可動範囲を可能にする。
【0010】
各剛毛は、根元と、根元から上方に延在するシャフトとを備えることができ、シャフトは、少なくとも1.2mmの直径を有することができる。シャフトの直径は、シャフトの長さに沿って均一であり得る。比較的太いシャフトは、剛毛がより硬く、従って、ブラシの使用中に湾曲または変形する可能性がより低減されるという利点を有する。剛毛の動きは、剛毛の作用する力に応答して変形するキャリアによって提供される。
【0011】
各剛毛は、シャフトの丸みを帯びた端部として形成された先端を含むことができる。従来のブラシの剛毛は、比較的細く、尖った先端を有する場合がある。このデザインの剛毛は絡みを取り除くのに効果的であり得るが、ブラシは、剛毛が頭皮に接触する際に一般的に不快である。快適性を向上させるために、各剛毛のシャフトの端部にボールを設けることができる。しかしながら、これにより快適性を向上させることはできるが、ボールがあらゆる絡みに引っかかる傾向がある。比較的太いシャフトおよび丸みを帯びた端部を有する剛毛を設けることにより、引っかかることなく改善された快適性を達成することができる。特に、剛毛が絡みに遭遇すると、剛毛が後方に枢動し、絡みが剛毛の端部から滑り落ちることを可能にする。
【0012】
各剛毛は、根元と、根元から上方に延在するシャフトとを備えることができる。キャリアは根本を包囲し、シャフトは少なくとも15mmの長さを有し得る。これには、剛毛がより深く毛髪に入り込み得るという利点がある。対照的に、剛毛がより短いブラシは、毛髪の同じ領域を複数回通過する必要がある場合がある。剛毛の長さが増加すると、隣接する剛毛が使用中に衝突する可能性が高まる。従って、シャフトは、22mm以下の長さを有することができる。
【0013】
各剛毛は、少なくとも1GPaの曲げ弾性率および/または少なくとも500N/mの曲げ剛性を有することができる。結果的に、ブラシの使用中に、剛毛が湾曲または変形する可能性が低減される。更に、剛毛は比較的硬いため、根元にて枢動する可能性が高く、これにより、絡みが剛毛から滑り落ちやすくなる。対照的に、従来のブラシの剛毛は、はるかに低い曲げ弾性率および曲げ剛性を有する場合がある。剛毛は、使用中に枢動するのではなく、湾曲または屈曲する。しかしながら、剛毛は、弾性限界を超える屈曲または剛毛が繰り返し屈曲することによる疲労に起因して、損傷する可能性が高まる。更に、剛毛内の奥深くに絡まった絡みが捕集される可能性が高くなる。
【0014】
剛毛は、ステンレス鋼またはアルミニウム等の金属で形成することができる。従って、剛毛は比較的強く、丈夫かつ硬く、使用中や不注意によりブラシを落とした場合に損傷する可能性が低減される。
【0015】
ブラシは、複数の穴を備えるフレームを含むことができ、各剛毛は、フレームの各穴を貫通して延在することができる。フレームは、キャリアが保持されている剛性構造を提供することができる。フレームの穴を貫通して延在する各剛毛は、フレームに対して自由に枢動できる。
【0016】
フレームは、双曲放物面形状であることができる。従って、同じ長さの剛毛を使用すると、剛毛は、同様に双曲放物面形状である上方プロファイルを有するベッドを形成する。剛毛ベッドは、ブラッシング方向に垂直な方向に凹状であり、ブラッシング方向に平行な方向に凸状であり得る。凹状形状であることにより、剛毛が使用者の頭部の形状により良好に適合し、それによって快適性が向上する。ブラシが毛髪を通して下方に引っ張られると、使用者はブラシを回転させる傾向がある。ブラッシング方向に平行な方向に凸状形状を有することにより、毛髪が剛毛により深く入り込みやすくなり、これは、使用者が毛髪により高い張力を発生させたい場合に有効である。
【0017】
キャリアは、フレームに成形されてもよい。結果的に、キャリアとフレームとの間の隙間を回避することができ、これもまた、毛髪を捕集する、および/または汚れやその他のゴミを蓄積する可能性がある。
【0018】
ブラシは本体を備えることができ、キャリアは各剛毛にてフレームと本体との間に保持することができる。即ち、キャリアは、各剛毛の周りの1つ以上のポイントにて保持することができる。従って、特定の剛毛が枢動し、その剛毛の周りのキャリアが変形する場合、隣接する剛毛が変形からより良好に隔離される。従って、各剛毛は、他の剛毛から独立して動くことができ、即ち、各剛毛は、他の剛毛を動かすことなく動くことができる。これには、ブラシが毛髪に使用され、剛毛が絡みに遭遇したときに、隣接する剛毛が絡みに集まることなく、剛毛が枢動して絡みを通過させることができるという利点がある。対照的に、従来のヘアブラシでは、剛毛が絡みに遭遇すると、剛毛の動きによりクッションが撓み、これにより、隣接する剛毛が絡みに集まる。結果的に、絡みが剛毛を通過することがより困難となる。
【0019】
次に、実施形態を、添付の図面を参照して、例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態によるブラシを示す図である。
図2】ブラシの分解図である。
図3】ブラシの平面図である。
図4図3の線A-Aに沿った、ブラシの断面図である。
図5】ブラシの剛毛形成部分を示す図である。
図6】第2の実施形態によるブラシの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1図5のブラシ1は、ヘッド3に取り付けられたハンドル2を備える。ヘッド3は、本体4、キャリア5、複数の剛毛6、およびフレーム7を備える。
【0022】
本体4は、熱可塑性物質のような剛性材料で形成されており、本体4の上面に形成された複数の円筒形キャビティ10を備える。
【0023】
キャリア5は、ショアAデュロメータが約20~30のシリコーンゴムで形成されている。
【0024】
各剛毛6は、根元20と、先端21と、根元20から先端21まで延在するシャフト22とを備える。根元20は、基部25と、基部25から上方に延在するステム26と、ステム26に形成される貫通孔27と、を備える。基部25は、ステム26を越えて半径方向外方に延在し、ステム26はシャフト22を越えて半径方向外方に延在している。各剛毛のシャフト22は、長さが17mmおよび直径が1.7mmである。更に、各剛毛6は、ステンレス鋼で形成されている。結果的に、各剛毛6は比較的硬く、約193GPaの曲げ弾性率および約48kN/mの曲げ剛性を有する。曲げ剛性(flexural stiffness)(曲げ剛性(flexural rigidityまたはbending stiffness)とも呼ばれる)は、根元20に固定されたときの剛毛6の先端21の片持ち撓みとして測定される。
【0025】
各剛毛6は、キャリア5に固定されている。より具体的には、キャリア5は、シャフト22がキャリア5から突出して延在するように、各剛毛6の根元20に成形されている。
【0026】
フレーム7は、熱可塑性物質のような剛性材料で形成されており、複数の穴11を備える。フレームは、双曲放物面形状である。より具体的には、フレーム7は、ヘッド3の長さに沿って(即ち、ブラッシング方向に垂直に)凹状であり、ヘッド3の幅に沿って(即ち、ブラッシング方向に平行に)凸状である。フレーム7は、フレーム7の周囲の1つ以上のポイントにて、例えば、スナップフィット、接着剤または超音波溶接によって、本体4に固定されている。
【0027】
キャリア5は本体4とフレーム7との間に保持され、各剛毛6はフレーム7のそれぞれの穴11を貫通して延在している。各剛毛6が本体4のキャビティ10上に位置するように、キャリア5を本体4とフレーム7との間に保持する。更に、キャリア5は、各剛毛6の周りにて本体4とフレーム7との間に保持される。
【0028】
剛毛6の枢動に応答して、剛毛6の根元20のキャリア5が変形する。キャリア5は、各剛毛6の周りで本体4とフレーム7との間に保持されている故、隣接する剛毛6は、キャリアの変形から遮断される。即ち、1本の剛毛の根元の周りのキャリア5の変形は、隣接する剛毛の根元の周りのキャリア5を変形または移動させない。従って、各剛毛6は、個々のエラストマービーズに固定されているかのように反応する。特に、各剛毛6は、他の全ての剛毛から独立して枢動することができる。
【0029】
キャリア5は、フレーム7の各穴11を越えて上方に突出している。より具体的には、キャリア5は、複数のドーム状の突出部を備えると見なすことができ、この突出部はそれぞれ、フレーム7のそれぞれの穴11を越えて突出している。各穴11を越えてキャリア5を突出させることにより、各剛毛6の枢動点が上方に持ち上げられる。更に、キャリア5の変形がより容易になる。結果的に、各剛毛6について、より大きな可動範囲を達成することができる。
【0030】
剛毛6は、キャリア5およびフレーム7から互いに平行な方向に上方に延在している。結果的に、剛毛6は分岐も集中もしない。剛毛6の大部分、特に中央領域を形成する剛毛は、ヘッド3の長さに沿って列をなして配置されており、各列の剛毛6は、隣接する列の剛毛6に対して互い違いに配置されている。剛毛6は、ヘッドの長さに沿って(即ち、ブラッシング方向に垂直に)6.5mmのピッチC1と、ヘッドの幅に沿って(即ち、ブラッシング方向に平行に)13mmのピッチC2とを有する。
【0031】
ブラシ1の使用中、剛毛6が使用者の毛髪に入り込む。ブラシ1が毛髪を通して下方に引っ張られると、剛毛6は僅かに後方に枢動する。剛毛6は比較的硬く、剛毛6のあらゆる動きは、キャリア5の変形によって生じる。剛毛6が毛髪の絡みに遭遇すると、ブラシ1が下方に引っ張られ続ける故に、剛毛6は更に後方に枢動する。従って、剛毛6によって絡みに印加される力が増加する。絡みが特に激しく、剛毛6によって印加される力が絡みをほぐすのに十分でない場合、剛毛6は、絡みが剛毛6から滑り落ちるポイントまで最終的に枢動する。結果的に、ブラシ1は、使用者に大きな不快感を与えることなく、毛髪を通過することができる。次に、後続する毛髪の通過にブラシ1を使用することができ、それぞれの通過によってより多くの絡みをほぐす。重要なことに、ブラシ1が通過するたびに、剛毛6が後方に枢動し続け、力が過剰になると絡みを通過させることを可能にする。結果的に、剛毛の絡みにおける引っ張りに起因する不快感を回避することができる。
【0032】
各剛毛6は、他の剛毛から独立して枢動する。これには、剛毛が絡みに遭遇したときに、隣接する剛毛が絡みに集まることなく、絡みを通過させることを可能にするように剛毛が枢動し得るという利点がある。対照的に、従来のヘアブラシでは、剛毛が絡みに遭遇し、後方に枢動すると、剛毛の動きによりクッションが撓み、これにより、隣接する剛毛が絡みに集まる。結果的に、絡みが剛毛を通過することがより困難となる。
【0033】
フレーム7は、双曲放物面形状である。同じ長さの剛毛6は、同様に双曲放物面形状である上方プロファイルを有するベッドを形成する。剛毛ベッドは、ヘッドの長さに沿って、即ち、ブラッシング方向に垂直な方向に凹状であり、ヘッドの幅に沿って、即ち、ブラッシング方向に平行な方向に凸状である。凹状形状の結果として、剛毛6は使用者の頭部の形状により良好に適合し、それによって、快適性が向上する。ブラシ1が毛髪を通して下方に引っ張られると、使用者は手首を、従って、ブラシ1を回転させる傾向がある。ブラッシング方向に平行な方向に凸状形状を有することにより、毛髪が剛毛6により深く入り込みやすくなり、これは、使用者が毛髪により高い張力を発生させたい場合に有効である。
【0034】
剛毛6の大部分は、それぞれ、6.5mmおよび13.0mmのピッチC1およびC2を有する。従って、剛毛6は、ブラッシング方向に垂直により小さいピッチを有する。結果的に、毛髪の良好な整列を達成することができる。即ち、剛毛がより多くの毛髪束を捕捉して整える。対照的に、より大きなピッチが採用された場合、より多くの毛髪が剛毛の間を通過し、元の無秩序な向きを維持するであろう。ブラッシング方向に垂直な、より小さなピッチは、剛毛の数がより多い故に、一般に、毛髪の絡みをほぐすのに必要な通過がより少なくて済むという更なる利点を有する。一方で、ブラッシング方向に平行な、より大きなピッチを有することにより、剛毛同士が衝突することなく、より広範囲の剛毛の動きが可能となる。より小さなピッチが使用された場合、特定の剛毛が絡みに遭遇して後方に枢動すると、剛毛は真後ろの隣接する剛毛と衝突する可能性がある。この場合、隣接する剛毛は、絡みが剛毛から滑り落ちるのを妨げ得る。もちろん、剛毛6の別のピッチも可能である。しかしながら、5mm~8mmの垂直ピッチC1と、10mm~16mmの平行ピッチC2とを有する互い違いの剛毛は、ブラッシング効果を改善するために高い剛毛数を提供したいという要望と、快適性を向上させるために剛毛の衝突を避けたいという要望との間の良好なバランスを提供することが見出された。
【0035】
剛毛6は、互いに平行な方向に上方に延在している。結果的に、剛毛6が絡みに対処し、毛髪に入り込む能力が向上する。従来のブラシは、外側に広がっている剛毛を有することが多い。その結果、ブラシの先端部分の剛毛が絡みに遭遇すると、絡みを通過させるために、剛毛はより大きな角度で枢動または屈曲する必要がある。これにより、絡みをブラッシングすることがより困難となる。更に、ブラシの後部の剛毛は、毛髪にそれほど深く入り込まない。対照的に、同じ方向に延在する剛毛6(即ち、分岐も集中もしない剛毛)を有することによって、ブラシ1の先端部分の剛毛6は、絡みに遭遇すると、より小さな角度で移動する一方、ブラシ1の後部の剛毛6は、毛髪内により深く入り込むことが可能となる。
【0036】
各剛毛6は、約193GPaの曲げ弾性率および約48kN/mの曲げ剛性を有する。結果的に、剛毛6がブラシ1の使用中に湾曲または変形する可能性が低減される。更に、剛毛6が比較的硬い故に、根元で枢動する可能性が高くなり、これにより、絡みが剛毛6からより滑り落ちやすくなる。対照的に、従来のブラシの剛毛は、はるかに低い曲げ剛性を有し得る。通常の使用においては、剛毛は枢動するのではなく、湾曲または屈曲する。しかしながら、このタイプの剛毛は、弾性限界を超える屈曲や、剛毛が繰り返し屈曲することによる疲労に起因してより損傷する可能性が高くなる。更に、剛毛の奥深くに絡まった絡みが捕集される可能性がより高まる。
【0037】
ブラシ1の剛毛6は、ステンレス鋼で形成されており、これは、特に剛毛6が乾燥中の高温または毛髪製品の化学物質に曝された場合の損傷の可能性を更に低減させる。更に、剛毛6の表面は、摩擦を低減するために研磨されてもよく、これは、毛髪内の静電気を低減するのに役立つ。
【0038】
前述の利点にも関わらず、別の材料および/または曲げ弾性率および曲げ剛性の剛毛を使用することもできる。特に、剛毛は、アルミニウム等の他の金属で形成されてもよく、これは、比較的高い曲げ弾性率および曲げ剛性を提供し続ける。あるいは、剛毛は、ガラス強化ナイロンで形成されてもよく、これは、摩擦電気系列表で人間の毛髪に比較的近い位置にある。剛毛の曲げ弾性率および曲げ剛性が低下すると、前述の利点は減少する。従って、剛毛は、少なくとも1GPaの曲げ弾性率および/または少なくとも500N/mの曲げ剛性を有することができる。
【0039】
各剛毛6のシャフト22は、直径が1.7mmである。更に、各剛毛6の直径は、シャフト22の長さに沿って均一である。この比較的大きな直径は、剛毛6の比較的高い曲げ剛性を達成するための部分的な要因となっている。しかしながら、比較的大きな直径を有する剛毛6は、更なる利点を有する。特に、剛毛6の先端21は、シャフト22の丸みを帯びた端部として形成することができる。従来のブラシの剛毛は、尖った先端を有する比較的細いものであり得る。このタイプの剛毛は絡みを取り除くのに比較的有効であり得るが、このようなブラシは、一般に、剛毛が頭皮に接触する際に不快である。快適性を向上させるために、各剛毛のシャフトの端部にボールを設けることができる。しかしながら、これにより、快適性は向上し得るが、ボールがあらゆる絡みに引っかかる傾向がある。対照的に、比較的太いシャフトを含み、かつ丸みを帯びた端部を有する剛毛6を有することにより、引っかかることなく、快適性の向上を達成することができる。均一または先細であり得る別の直径を有する剛毛を使用することもできる。しかしながら、先端にて少なくとも1.2mmのシャフト直径を有する剛毛を使用することによって、毛髪に引っかかる可能性のあるボールまたは他の特性を必要とすることなく、比較的快適な状態を達成することができる。
【0040】
各剛毛6のシャフト22は、17mmの長さを有する。結果的に、剛毛6の毛髪への良好な入り込みを達成することができ、従って、毛髪を通るブラシ1の通過がより少なくて済む。やはり、別のシャフト長さを有する剛毛6を使用することもできる。しかしながら、シャフト22の長さが減少すると、剛毛6の毛髪への入り込みが減少する。従って、各剛毛6のシャフト22は、少なくとも15mmの長さを有することができる。シャフト22の長さが増加すると、使用中に隣接する剛毛が衝突する可能性が高まる。特に、剛毛が絡みに遭遇して後方に枢動するとき、剛毛が過度に長い場合、剛毛は真後ろにある隣接する剛毛と衝突する可能性があり、これは、剛毛6の長さだけでなく、剛毛6のピッチに依存する。しかしながら、上述のピッチについては、各剛毛6のシャフトは、22mm以下の長さを有することができる。
【0041】
キャリア5は、フレーム7の各穴11を越えて上方に突出しており、これは、上述したように、剛毛6のより広範囲の移動を促進する。図4および図6に示される実施形態では、キャリア5は、それぞれ、フレーム7を超えて、0.85mmおよび5mmだけ突出している。フレーム7を越えて突出する結果として、キャリア5は必然的に毛髪に接触する。キャリア5と毛髪との間の摩擦により、静電気が発生する可能性がある。更に、キャリア5がフレーム7を越えて過度に突出している場合、キャリア5が毛髪を引きずり込む可能性があり、更に悪いことに、キャリア5が隣接する突出部の間に毛髪を捕集または捕捉する可能性がある。従って、キャリア5は、5mm以下の距離だけフレーム7の各穴11を越えて突出することができる。より具体的には、キャリア5は、1mm以下の距離だけフレーム7の各穴11を越えて突出することができる。これには、不利に毛髪を引きずり込むまたは捕集することなく、剛毛6の可動範囲を大きくするという利点がある。
【0042】
キャリア5は、シリコーンゴムで形成されている。シリコーンゴムは比較的不活性である故、使用者の頭皮に何らかの悪影響を及ぼす可能性が少ない。更に、シリコーンゴムは、高い熱安定性および優れた耐薬品性を有する。結果的に、キャリア5は、毛髪の乾燥中の高温および/または毛髪製品の形態の化学薬品に曝され得るヘアブラシでの使用に好適である。しかしながら、シリコーンゴムにも欠点がないわけではない。例えば、シリコーンゴムは比較的高価であり、その不活性に起因して、剛毛に結合するのが困難である場合がある。従って、別の材料、特に、別のエラストマーをキャリア5に使用することができる。
【0043】
キャリア5は、約20~30のショアAデュロメータを有する比較的軟質な材料で形成されている。結果的に、剛毛6について、比較的大きな可動範囲が達成される。しかしながら、異なるショアAデュロメータを有する材料を使用してもよく、ショアAデュロメータが50未満の材料でも良好な可動範囲を達成することができる。
【0044】
ブラシ1は、各剛毛6の下に位置するキャビティ10を備える。これには、各剛毛6が枢動すると、剛毛6の根元20がキャビティ10内に自由に移動できるという利点がある。対照的に、キャビティが設けられていない場合、剛毛6が枢動すると、剛毛6の根元20が片側で上方に持ち上げられる。その場合、キャリア5は毛髪内に更に突出することになり、これは、上記の理由から望ましくない可能性がある。
【0045】
キャリア5は、剛毛6に成形されている。これには、剛毛6がキャリア5により良好に固定され、従って、使用中にキャリア5から飛び出す可能性がより低くなるという利点がある。これは、キャリア5がシリコーンゴム等の軟質かつ不活性の材料で形成されている場合に特に当てはまる。キャリア5を剛毛6に成形することの更なる利点は、毛髪を捕集し、および/または汚れや他のゴミを蓄積する可能性がある隙間が、キャリア5と剛毛6との間に形成されにくいという点である。結果的に、キャリア5とフレーム7との間の隙間を回避することができ、この隙間もやはり、毛髪を捕集するおよび/または汚れや他のゴミを蓄積する可能性がある。
【0046】
キャリア5は、比較的軟質な材料で形成されている。結果的に、キャリア5が剛毛6に成形されている場合でさえも、剛毛が過度に枢動すると、剛毛が飛び出す可能性がある。従って、剛毛6は、剛毛6をキャリア5により良好に固定する特徴を備える。各剛毛6は、キャリア5が突出する貫通孔27を備える。結果的に、各剛毛6はキャリア5により良好に固定される。特に、穴27を貫通するキャリア5の部分が破損した場合にのみ、剛毛6は飛び出すことができる。各剛毛6の根元20は、ステム26を越えて外方に延在する基部25を備える。従って、基部25は、キャリア5に対する剛毛6の上方への動きに対抗する表面(例えば、環状)を提供する。結果的に、剛毛6をキャリア5から引っ張り出すことがより困難となる。ステム26は、アンダーカットを含み、従って、キャリアに対する剛毛6の下方への動きに対抗する表面を提供する。貫通孔27の直径は、比較的小さい。結果的に、貫通孔27内に突出するキャリア5の部分は、比較的細いスレッドを形成する。貫通孔27は、ステム26のアンダーカットに形成される。結果的に、貫通孔27の長さ、従って、キャリア5のスレッドの長さが短縮される。その結果、穴27を貫通するキャリア5の部分がより頑丈になり、破損しにくくなる。
【0047】
各剛毛6は単一の貫通孔27を備えているが、剛毛6は、直交して配置された一対の穴を備えてもよいと考えられる。これにより、剛毛6をキャリア7により良好に固定することができる。単一の貫通孔は、剛毛が枢動する方法に影響を与え得る。特に、剛毛を穴に垂直な方向に枢動させるのはより容易となり、穴に平行な方向に枢動させるのはより困難となり得る。この場合、2つの直交する穴を設けることにより、剛毛のより均一な動きをもたらすことができる。
【0048】
フレーム7は、剛性の材料で形成されているが、比較的薄く、大きな開口領域を有している。結果的に、フレーム7は比較的柔軟である。従って、基部4は、ブラシ1に構造的強度を提供する必要がある。しかしながら、フレーム7がより堅い(例えば、より厚い)場合、基部4は省略され得ると考えられる。次いで、キャリア5をフレーム7に成形または接着する。各剛毛6の周りでキャリア5をフレーム7に接着することによって、ブラシ1は上述の利点を有し続ける。特に、各剛毛6は、他の剛毛から独立して枢動し続けるだろう。
【0049】
図6は、図1図5のブラシ1と多くの点で同一である別のブラシ30を示す。しかしながら、ブラシ30のキャリア5は、異なるプロファイルを有する。特に、キャリア5は、フレーム7の各穴を越えて更に突出している。図4に見られる比較的浅い突出部ではなく、キャリア5は、各穴を越えて上方に延在する複数の円錐突出部を備えてもよい。突出部は、一部のシャワーヘッドに見られるエラストマーノズルに似ている。次いで、各剛毛6は、各突出部の頂点にて固定される。キャリア5は、本体4とフレーム7との間に保持され続け、従って、各剛毛6は、他の剛毛から独立して枢動し続ける。
【0050】
図1図5のブラシ1では、剛毛6が枢動すると、剛毛6を包囲するキャリア5が圧縮および伸張される。結果的に、剛毛6の広範囲の動きを達成するために、比較的軟質な材料が必要とされる。図6のブラシ30では、剛毛6が枢動すると、キャリア5が突出部にて湾曲し、または折り曲がる。従って、キャリア5により硬質な材料を使用して、同じ剛毛6の移動範囲を達成することができる。
【0051】
剛毛6は、図1図5のブラシについて上述したのと同じ方法でキャリア5に固定してもよい。特に、キャリア5は剛毛6に成形されてもよく、各剛毛6は貫通孔27を備えてもよく、この貫通孔27内にキャリア5が突出している。キャリア5により硬質な材料を使用することによって、使用中に、剛毛6が飛び出す可能性が低くなる。実際、剛毛6に貫通孔27を設ける必要なく、剛毛6をキャリア5に良好に固定することができる。
【0052】
キャリア5により硬質な材料を使用することによって、剛毛6をキャリア5に別の方法で固定することができる。例えば、各剛毛6は、キャリア5を通して押し込むことができる。これにより、ブラシ30の製造が簡素化される。
【0053】
これまで特定の実施形態について説明してきたが、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を加え得ることが理解されよう。例えば、本明細書に記載のブラシはヘアブラシであるが、特徴の多くは別のタイプのブラシで使用することも可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6