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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】処置具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20240325BHJP
   A61B 17/28 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
A61B18/12
A61B17/28
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022576937
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2021002444
(87)【国際公開番号】W WO2022157974
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】辻 知宏
(72)【発明者】
【氏名】宮島 千賀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕昌
(72)【発明者】
【氏名】塩田 裕亮
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/206042(WO,A1)
【文献】米国特許第5704925(US,A)
【文献】特開2002-330973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
A61B 17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シースと、
前記シースの先端に開閉自在に設けられた鉗子と、
前記鉗子の先端に突没可能に設けられ、高周波電流が通電されるロッドと、
前記シースの基端に設けられ、前記ロッドを進退させる操作部と
備え、
前記ロッドは、ロッド本体と、前記ロッド本体の先端側に設けれた突当部とを有し、
前記突当部の径方向の長さは、前記ロッド本体の前記径方向の長さより長く、
前記ロッドの後退動作に伴って前記突当部が突き当たるように配置された受け部を有し、
前記受け部前記ロッドの前記突当部突き当ることによって、前記鉗子を閉状態から開状態に遷移させる、
処置具。
【請求項2】
前記鉗子は、第一鉗子片と第二鉗子片とを有し、
前記ロッドは、前記第一鉗子片と前記第二鉗子片に挟まれたロッド通過領域を進退移動でき、
前記ロッド通過領域は、先端側の第一ロッド通過領域と、基端側の第二ロッド通過領域とを有し、
前記突当部が前記第二ロッド通過領域に位置したとき、前記受け部としての前記第一鉗子片と前記第二鉗子片の少なくとも一か所に前記突当部が接触する、
請求項1に記載の処置具。
【請求項3】
閉状態の前記鉗子の少なくとも一部を収容可能なスリーブを有し、
前記スリーブは、前記ロッドの基端に接続され、前記ロッドの進退移動と連動する、
請求項2に記載の処置具。
【請求項4】
閉状態の前記鉗子の少なくとも一部を収容可能なスリーブを有し、
前記スリーブは、前記シースの先端に摺動可能に設けられ、
前記受け部は、前記スリーブの一部に形成されている、
請求項1に記載の処置具。
【請求項5】
前記鉗子は、第一鉗子片と第二鉗子片とを有し、
前記ロッドは、前記第一鉗子片と前記第二鉗子片に挟まれた領域を通過し、
前記第一鉗子片は、前記第二鉗子片と対向する内周面に第一係合面を有し、
前記第二鉗子片は、前記第一鉗子片と対向する内周面に第二係合面を有し、
前記受け部は、前記第一係合面と前記第二係合面である、
請求項1に記載の処置具。
【請求項6】
前記鉗子は、閉状態にあるとき、先端側に前記ロッドが挿通可能な貫通孔を形成する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の処置具。
【請求項7】
前記突当部は、前記ロッドの先端に設けられた電極である、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の処置具。
【請求項8】
前記第一鉗子片と前記第二鉗子片は、前記ロッド通過領域側と反対側の外表面に絶縁コーティングを有する、
請求項2または請求項3に記載の処置具。
【請求項9】
前記鉗子は、導電性の素材で形成され、前記突当部が前記鉗子に当接することによって通電する
請求項1に記載の処置具。
【請求項10】
前記鉗子は、第一鉗子片および第二鉗子片を含み、
前記受け部は、前記第一鉗子片の一部および前記第二鉗子片の基端側の一部である、
請求項1に記載の処置具。
【請求項11】
前記鉗子の一部を収容可能なスリーブをさらに有し、
前記受け部は、前記スリーブの内方に突出された突起であり、
前記ロッドの後退動作に伴って前記突当部が前記受け部に突き当たることにより、前記鉗子に対して前記スリーブが後退するとともに前記鉗子が閉状態から開状態に遷移する、
請求項1に記載の処置具。
【請求項12】
前記鉗子は、第一鉗子片、第二鉗子片、および該第一鉗子片と該第二鉗子片を回動自在に連結する連結部を有し、
前記第一鉗子片は、前記第二鉗子片に対向する内方に凸状に延びる第一凸状係合部材を有し、
前記第二鉗子片は、前記第一鉗子片に対向する内方に凸状に延びる第二凸状係合部材を有し、
前記第一凸状係合部材および前記第二凸状係合部材は、前記受け部を含む、
請求項1に記載の処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などの内視鏡治療において、高周波ナイフなどの切開・剥離用の内視鏡用処置具が使用されている。手技中に出血が生じた場合には、切開・剥離用の内視鏡用処置具を体腔内から一旦取り出し、止血用の内視鏡用処置具に入れ替えて、内視鏡的止血術を行う必要がある。
【0003】
特許文献1には、組織の切開・剥離処置と止血処置とを実施できる高周波ナイフが記載されている。特許文献1に記載の高周波ナイフは、止血鉗子による止血処置を実施できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/206042号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された高周波ナイフは、切開・剥離処置を実施する高周波ナイフと止血処置を実施する止血鉗子の操作をそれぞれ独立操作しており、切り替える操作ステップが多いので煩雑であった。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、切開・剥離処置と止血処置とを実施できる処置具であって、切開・剥離処置を実施する処置具と止血処置を実施する止血鉗子との切替操作が容易な処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係る処置具は、シースと、前記シースの先端に開閉自在に設けられた鉗子と、前記鉗子の先端に突没可能に設けられ、高周波電流が通電されるロッドと、前記シースの基端に設けられ、前記ロッドを進退させる操作部と、を備え、前記ロッドは、前記ロッド本体と、ロッド本体の先端側に設けれた突当部とを有し、前記突当部の径方向の長さは、前記ロッド本体の前記径方向の長さより長く、前記ロッドの後退動作に伴って前記突当部が突き当たるように配置された受け部を有し、前記受け部前記ロッドの前記突当部突き当ることによって、前記鉗子を閉状態から開状態に遷移させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の処置具によれば、切開・剥離処置と止血処置とを実施でき、かつ、切開・剥離処置を実施する処置具と止血処置を実施する止血鉗子との切替操作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一実施形態に係る内視鏡処置システムの全体図である。
図2】同内視鏡処置システムの処置具を示す全体図である。
図3】同処置具の先端部の側面図である。
図4】同処置具の先端部の断面図である。
図5】鉗子が閉じた状態である同処置具の先端部の正面図である。
図6】鉗子が開いた状態である同処置具の先端の正面図である。
図7】第二ロッド通過領域を通過する電極部および鉗子の側面図である。
図8】出血箇所を止血処置する同処置具の先端部の側面図である。
図9】出血箇所を止血処置する同処置具の先端部の側面図である。
図10】同処置具のロッドの変形例を示す側面図である。
図11】第二実施形態に係る処置具の先端部の側面図である。
図12】同処置具の先端部の断面図である。
図13図11のX-X線に沿う押さえ管等の断面図である。
図14】電極部が後退した同処置具の先端部の側面図である。
図15】鉗子が開いた状態である同処置具の先端の正面図である。
図16】第三実施形態に係る処置具の先端部の側面図である。
図17】同処置具の先端部の断面図である。
図18図16のY-Y線に沿う鉗子等の断面図である。
図19】電極部が後退した同処置具の先端部の断面図である。
図20】第四実施形態に係る処置具の先端部の断面図である。
図21】電極部が後退した同処置具の先端部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係る内視鏡処置システム300について、図1から図9を参照して説明する。図1は本実施形態に係る内視鏡処置システム300の全体図である。
【0011】
[内視鏡処置システム300]
内視鏡処置システム300は、図1に示すように、内視鏡200と処置具100とを備えている。処置具100は、内視鏡200に挿入して使用される。
【0012】
[内視鏡200]
内視鏡200は、公知の軟性内視鏡であり、先端から体内に挿入される挿入部202と、挿入部202の基端に取り付けられた操作部207と、を備える。
【0013】
挿入部202は、撮像部203と、湾曲部204と、軟性部205と、を有する。挿入部202の先端から、撮像部203、湾曲部204および軟性部205の順でそれぞれが配されている。挿入部202の内部には、処置具100を挿入するためのチャンネル206が設けられている。挿入部202の先端には、チャンネル206の先端開口部206aが設けられている。
【0014】
撮像部203は、例えばCCDやCMOSなどの撮像素子を備えており、処置対象となる部位を撮像可能である。撮像部203は、処置具100がチャンネル206の先端開口部206aから突出している状態において、処置具100の鉗子3を撮像することができる。
【0015】
湾曲部204は、操作者による操作部207の操作に従って湾曲する。軟性部205は、可撓性を有する管状の部位である。
【0016】
操作部207は、軟性部205に接続されている。操作部207は、グリップ208と、入力部209と、チャンネル206の基端開口部206bと、ユニバーサルコード210と、を有する。グリップ208は、操作者によって把持される部位である。入力部209は、湾曲部204を湾曲動作させるための操作入力を受け付ける。ユニバーサルコード210は、撮像部203が撮像した画像を外部に出力する。ユニバーサルコード210は、プロセッサなどを備えた画像処理装置を経由して、液晶ディスプレイなどの表示装置に接続される。
【0017】
[処置具100]
図2は、処置具100を示す全体図である。
処置具100は、切開・剥離処置と止血処置とを実施できる処置具である。処置具100は、シース1と、ロッド2と、鉗子(ジョー)3と、操作ワイヤ4(図4に図示)と、操作部5と、を備える。以降の説明において、処置具100の長手方向Aにおいて、患者の体内に挿入される側を「先端側(A1)」、操作部5側を「基端側(A2)」という。
【0018】
シース1は、可撓性および絶縁性を有し、先端1aから基端1bまで延びる長尺な部材である。シース1は、内視鏡200のチャンネル206に挿入可能な外径を有する。図1に示すように、シース1がチャンネル206に挿入された状態において、シース1の先端1aは、チャンネル206の先端開口部206aから突没可能である。また、シース1の先端のエッジはラウンド形状であってもよい。
【0019】
図3は、処置具100の先端部の側面図である。
ロッド2は、ステンレス等の金属素材で形成された略丸棒状の部材であり、シース1の先端1aに突没可能に設けられている。ロッド2は、ロッド本体20と、電極部21と、ストッパ22(図4に図示)と、を有する。
【0020】
図4は、処置具100の先端部の断面図である。
ロッド2は、長手方向Aに沿って移動可能であり、鉗子3を貫通している。ロッド2の長手方向Aにおける中心軸O2は、シース1の長手方向Aにおける中心軸O1と略一致している。
【0021】
ロッド本体20は、ステンレス等の金属素材で形成された丸棒状の部材である。ロッド本体20の基端には操作ワイヤ4が取り付けられている。操作ワイヤ4は、ストッパ22によってロッド本体20に接続されている。ロッド本体20は、操作部5と接続された操作ワイヤ4から供給される高周波電流を電極部21および鉗子3に供給する。ロッド本体20が鉗子3先端から露出する部分および電極部21は、生体組織に高周波電流を通電する高周波電極の機能を有しており、主に切開・剥離処置に用いられる。ただし、状況によっては、ロッド本体20が鉗子3先端から露出する部分および電極部21は、止血処置に用いてもよい。
【0022】
図5は、鉗子3が閉じた状態である処置具100の先端部の正面図である。
電極部21は、ロッド本体20の先端に設けられた円板状の導電部材である。長手方向Aに対して水平な方向から見た正面視において、電極部21の外周は、ロッド本体20の外周と同心円状に形成されている。図4に示すように、電極部21の長手方向Aに対して垂直な径方向Rの長さL1は、ロッド本体20の径方向Rの長さL2よりも長い。
【0023】
ストッパ22は、ロッド本体20と操作ワイヤ4の外周に設けられており、ロッド本体20と操作ワイヤ4とを接続する。また、ストッパ22はロッド本体20が鉗子3の先端から露出する長さを規制している。その結果、電極部21の突出量も規制する。ストッパ22は、図4に示すように、シース1の先端1aに設けられた係合部1cと係合することでシース1に対する電極部21の突出量を規制する。
【0024】
鉗子(ジョー)3は、ステンレス等の金属素材で形成された導電性部材である。鉗子3は、生体組織に高周波電流を通電する高周波電極の機能を有しており、主に止血処置を行う。鉗子3は、図4に示すように、第一鉗子片31と、第二鉗子片32と、連結部34と、を有する。
【0025】
第一鉗子片31と第二鉗子片32とは、基端側A2の連結部34において連結されており、先端側A1に向かって開閉自在に設けられている。連結部34は、第一鉗子片31と第二鉗子片32とが接触して閉じるように付勢されている。連結部34は、シース1の先端1aの内部に収容されている。
【0026】
第一鉗子片31と第二鉗子片32とは、鉗子3の長手方向Aにおける中心軸O3に対して対称となるように配置されている。図4に示すように、鉗子3の長手方向Aにおける中心軸O3は、シース1の長手方向Aにおける中心軸O1と略一致している。
【0027】
ロッド2は、第一鉗子片31と第二鉗子片32とが連結された連結部34を貫通しており、第一鉗子片31と第二鉗子片32に挟まれた領域を通過する。以降の説明において、第一鉗子片31と第二鉗子片32に挟まれた領域であってロッド2が通過する領域を、「ロッド通過領域E」ともいう。
【0028】
図6は、鉗子3が開いた状態である処置具100の先端の正面図である。
第一鉗子片31は、先端側A1に設けられた第一凹状底部311と、第二鉗子片32と対向する位置に設けられた第一円弧状縁部312と、第一凹状底部311の基端側A2に設けられた第一基端支持部315(図7に図示)と、を有する。
【0029】
第一凹状底部311は、カップ状に形成されており、鉗子3の開閉方向Bにおいて第二鉗子片32側に向かって開口している。
【0030】
第一円弧状縁部312は、第一凹状底部311の開口縁であり、円弧状に形成されている。第一円弧状縁部312は、第一先端凹部313と、第一鋸歯部314と、を有する。第一先端凹部313は、先端側に設けられた凹部である。第一鋸歯部314は、長手方向Aおよび開閉方向Bに垂直な幅方向Cの両側に設けられた鋸歯状の凹凸である。
【0031】
第一基端支持部(受け部)315は、長手方向Aに延びて形成されており、先端側A1において第一凹状底部311を支持する。第一鉗子片31と第二鉗子片32とが閉状態のとき、第一基端支持部315は、第一凹状底部311と比較して、中心軸O3に近い位置に配置される。
【0032】
第二鉗子片32は、先端側A1に設けられた第二凹状底部321と、第一鉗子片31と対向する位置に設けられた第二円弧状縁部322と、第二凹状底部321の基端側A2に設けられた第二基端支持部325と、を有する。
【0033】
第二凹状底部321は、カップ状に形成されており、鉗子3の開閉方向Bにおいて第一鉗子片31側に向かって開口している。
【0034】
第二円弧状縁部322は、第二凹状底部321の開口縁であり、円弧状に形成されている。第二円弧状縁部322は、第二先端凹部323と、第二鋸歯部324と、を有する。第二先端凹部323は、先端側に設けられた凹部である。第二鋸歯部324は、幅方向Cの両側に設けられた鋸歯状の凹凸である。
【0035】
第二基端支持部(受け部)325は、長手方向Aに延びて形成されており、先端側A1において第二凹状底部321を支持する。第一鉗子片31と第二鉗子片32とが閉状態のとき、第二基端支持部325は、第二凹状底部321と比較して、中心軸O3に近い位置に配置される。
【0036】
第一鉗子片31と第二鉗子片32とが閉じた閉状態において、図3に示すように、第一鋸歯部314と第二鋸歯部324は噛み合う。
【0037】
第一鉗子片31と第二鉗子片32とが閉じた閉状態において、図4および図5に示すように、第一先端凹部313と第二先端凹部323とは、接触せずに貫通孔33を形成する。一方、貫通孔33を形成する部分以外において、第一円弧状縁部312と第二円弧状縁部322とは当接する。
【0038】
貫通孔33は、図5に示すように、長手方向Aに対して水平な方向から見た正面視において、中心軸O3を中心とした円状に形成されている。貫通孔33の径方向Rの長さL3は、図4に示すように、電極部21の径方向Rの長さL1よりも長い。そのため、ロッド本体20および電極部21は、貫通孔33を長手方向Aに沿って進退移動できる。以降の説明において、ロッド2が先願側A1に移動することを「前進」、基端側A2に移動することを「後退」ともいう。
【0039】
第一鉗子片31と第二鉗子片32とが閉じた閉状態において、図4に示すように、第一凹状底部311と第二凹状底部321とに挟まれたロッド通過領域Eの径方向Rの長さL4は、電極部21の径方向Rの長さL1よりも長い。以降の説明において、第一凹状底部311と第二凹状底部321とに挟まれたロッド通過領域Eを「第一ロッド通過領域E1」ともいう。
【0040】
長さL4は長さL1より長いため、第一鉗子片31と第二鉗子片32とが閉じた閉状態において、ロッド本体20および電極部21は第一ロッド通過領域E1を長手方向Aに沿って進退移動できる。
【0041】
第一鉗子片31と第二鉗子片32とが閉じた閉状態において、図4に示すように、第一基端支持部315と第二基端支持部325とに挟まれたロッド通過領域Eの径方向Rの長さL5は、ロッド本体20の径方向Rの長さL2よりも長く、電極部21の径方向Rの長さL1よりも短い。以降の説明において、第一基端支持部315と第二基端支持部325とに挟まれたロッド通過領域Eを「第二ロッド通過領域E2」ともいう。
【0042】
長さL5は長さL2より長いため、第一鉗子片31と第二鉗子片32とが閉じた閉状態において、ロッド本体20は第二ロッド通過領域E2を長手方向Aに沿って進退移動できる。一方、長さL5は長さL1より短いため、電極部21は第二ロッド通過領域E2を長手方向Aに沿って進退移動する場合、第一基端支持部315と第二基端支持部325の少なくとも一か所に接触する。
【0043】
なお、第二ロッド通過領域E2の径方向Rの長さL5は、第一鉗子片31と第二鉗子片32とが閉状態のときにおける、第一基端支持部315と第二基端支持部325との間の最短長さである。電極部21は、第二ロッド通過領域E2を通過するとき、第一基端支持部315と第二基端支持部325の少なくとも一か所に接触する。
【0044】
電極部21が通電した状態で、第一基端支持部315に接触した時、第一鉗子片31に高周波電流が通電される。また、電極部21が通電した状態で、第二基端支持部325に接触した時、第二鉗子片32に高周波電流が通電される。
もちろん、電極部21が通電していない状態で、第一基端支持部315や第二基端支持部325に接触したあと、電極部21を通電させて第一鉗子片31や第二鉗子片32に高周波電流を通電させてもよい。
【0045】
第一鉗子片31および第二鉗子片32は、ロッド通過領域E側と反対側の外表面に、絶縁コーティングを有する。具体的には、第一鉗子片31における第一凹状底部311と第一円弧状縁部312以外の部分と、第二鉗子片32における第二凹状底部321と第二円弧状縁部322以外の部分に絶縁コーティングが設けられている。この構成により、鉗子3に通電を行った際に、意図しない組織を焼灼してしまう可能性を下げることができる。
【0046】
図7は、第二ロッド通過領域E2を通過する電極部21および鉗子3の側面図である。
電極部21は、第二ロッド通過領域E2を通過するとき、第一基端支持部315と第二基端支持部325に接触し、第一基端支持部315と第二基端支持部325とを径方向R外側に押しのける。電極部21は、第二ロッド通過領域E2を通過するとき、第一基端支持部315と第二基端支持部325に対する「突当部」として機能する。その結果、第一鉗子片31と第二鉗子片32とは、閉状態から開状態となる。
【0047】
図8に示すように、操作ワイヤ4は、ステンレス等の金属素材で形成されたワイヤであり、シース1の内部空間1sを挿通している。図4に示すように、操作ワイヤ4の先端はストッパ22に接続され、操作ワイヤ4の基端は操作部5に接続されている。
【0048】
操作部5は、図1および図2に示すように、操作部本体51と、スライダ52と、給電コネクタ53と、を有する。
【0049】
操作部本体51の先端部は、シース1の基端1bと接続されている。操作部本体51は、操作ワイヤ4が挿通可能な内部空間を有している。操作ワイヤ4は、シース1の内部空間および操作部本体51の内部空間を通過してスライダ52まで延びている。
【0050】
スライダ52は、操作部本体51に対して長手方向Aに沿って移動可能に取り付けられている。スライダ52には、操作ワイヤ4の基端部が接続されている。術者がスライダ52を操作部本体51に対して相対的に進退させることにより、操作ワイヤ4およびロッド2がシース1に対して進退する。スライダ52には給電コネクタ53が固定されている。
【0051】
給電コネクタ53は、図示しない高周波電源装置に接続可能であり、操作ワイヤ4の基端部と電気的かつ物理的に接続されている。給電コネクタ53は、高周波電源装置から供給された高周波電流を、操作ワイヤ4およびロッド2を経由して電極部21および鉗子3に供給可能である。
【0052】
[内視鏡処置システム300の使用方法]
次に、本実施形態の内視鏡処置システム300を用いた手技(内視鏡処置システム300の使用方法)について説明する。具体的には、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などの内視鏡治療における病変部の切開・剥離処置および止血処置について説明する。
【0053】
準備作業として、術者は、公知の方法により病変部を特定し、病変部を膨隆させる。具体的には、術者は内視鏡200の挿入部202を消化管内(例えば、食道、胃、十二指腸、大腸)に挿入し、内視鏡の撮像部203で得られる画像を観察しながら病変部を特定する。次に、術者は公知の粘膜下局注針を挿入部202のチャンネル206に挿通し、粘膜下局注針により局注用の液体(局注液)を注入し病変部を膨隆させる。局注液を注入後、粘膜下局注針をチャンネル206から抜去する。
【0054】
術者は処置具100をチャンネル206に挿入し、挿入部202の先端開口部206aからシース1の先端1aを突出させる。介助者は、操作部5のスライダ52を操作部本体51に対して相対的に前進させ、ロッド2を突出させる。
【0055】
術者は、ロッド2を前進させ、高周波電流を通電させた状態で電極部21を移動させて病変部の粘膜の切開を行う。また、術者は、ロッド2を前進させ、高周波電流を通電させた状態で、切開した病変部の粘膜を持ち上げて粘膜下層を露出させながら、切開した病変部の粘膜下層を剥離する。
【0056】
切開・剥離処置では、出血を伴うことが多い。出血した場合、術者は止血処置を行う。止血処置は、病変部を剥離した後の潰瘍部や切開、剥離処置中に出血した出血箇所Tを焼灼して止血する処理である。
【0057】
図8は、出血箇所を止血処置する処置具100の先端部の側面図である。
術者は、電極部21を第二ロッド通過領域E2まで後退させることにより、電極部21を第一基端支持部315と第二基端支持部325と接触させる。電極部21は、第一基端支持部315と第二基端支持部325とを径方向R外側に押しのける。その結果、第一鉗子片31と第二鉗子片32とは、閉状態から開状態となる。電極部21を後退させるほど、第一鉗子片31と第二鉗子片32とは大きく開く。術者および介助者は、操作部5を長手方向Aに対して時計回りもしくは反時計回りに回転させたり、シース1を進退させたりして、開状態となった鉗子3の位置を調整して出血箇所の生体組織を把持する。
【0058】
図9は、出血箇所を止血処置する処置具100の先端部の側面図である。
術者は、電極部21を第一ロッド通過領域E1まで前進させることにより、電極部21を第一基端支持部315と第二基端支持部325とから離す。その結果、第一鉗子片31と第二鉗子片32とは、開状態から閉状態に遷移しようとする。第一鉗子片31と第二鉗子片32とは、生体組織を把持する。
【0059】
鉗子3は、第一鋸歯部314と第二鋸歯部324とを有する。そのため、術者が第一鋸歯部314と第二鋸歯部324により生体組織を挟み込んだとき、生体組織が鉗子3に対してずれにくい。その結果、術者は出血箇所Tを第一凹状底部311と第二凹状底部321との間に好適に把持することができる。
【0060】
術者は、第一鉗子片31と第二鉗子片32とがロッド2に接触している状態で、ロッド2に高周波電流を通電させる。その動作(処置)により、生体組織が接触している第一円弧状縁部312と第二円弧状縁部322に高周波電流が通電され、出血箇所Tを焼灼できる。また、場合によっては、出血箇所Tを第一凹状底部311と第二凹状底部321との間に好適に挟み込んだあと、電極部21をさらに前進させて出血箇所Tに当接させ、出血箇所Tをピンポイントに焼灼してもよい。術者は、必要に応じて上述の動作(処置)を継続し、最終的に病変部を切除し、ESDの手技を終了する。
【0061】
本実施形態に係る処置具100によれば、切開・剥離処置と止血処置とを実施でき、かつ、切開・剥離処置を実施するロッド2と止血処置を実施する鉗子3との切替操作が容易である。術者は、ロッド2を進退移動させるのみで、切開・剥離処置を実施するロッド2と止血処置を実施する鉗子3とを切替えられる。
【0062】
以上、本発明の第一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0063】
(変形例1-1)
上記実施形態において、内視鏡200は軟性内視鏡である。処置具100は硬性内視鏡とともに使用してもよい。その場合は、シース1は、可撓性を有さなくてもよい。
【0064】
(変形例1-2)
上記実施形態において、電極部21は、第二ロッド通過領域E2を通過するとき、第一基端支持部315と第二基端支持部325に対する「突当部」として機能する。しかしながら、第一基端支持部315と第二基端支持部325とを径方向R外側に押しのける突当部の態様はこれに限定されない。ロッド2は、電極部21とは分離した突当部を有してもよい。
【0065】
図10は、ロッド2の変形例であるロッド2Aを示す側面図である。
ロッド2Aは、ロッド本体20と、電極部21と、ストッパ22と、突当部23と、を有する。突当部23は、電極部21の基端側A2に設けられている。突当部23の径方向Rの長さは、長さL5より大きい。また、突当部23は、径方向Rの長さが先端側A1ほど大きくなるテーパ形状の形成されている。術者は、突当部23を第二ロッド通過領域E2まで後退させることにより、突当部23を第一基端支持部315と第二基端支持部325と接触させる。突当部23は、第一基端支持部315と第二基端支持部325とを径方向R外側に押しのける。突当部23が上記のようなテーパ形状であるため、第一鉗子片31と第二鉗子片32とを閉状態から開状態にスムーズに移行させることができる。
【0066】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態に係る処置具100Bについて、図11から図15を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0067】
[処置具100B]
図11は、処置具100Bの先端部の側面図である。
処置具100Bは、第一実施形態の処置具100と同様に、内視鏡200とともに内視鏡処置システムとして使用される。処置具100Bは、切開・剥離処置と止血処置とを実施できる処置具である。処置具100Bは、シース1Bと、ロッド2と、鉗子(ジョー)3Bと、操作ワイヤ4(図12に図示)と、操作部5と、押さえ管6と、バネ7と、を備える。
【0068】
シース1Bは、先端1aの外周部に凹部12を有する点を除いて、第一実施形態のシース1と同様の部材である。凹部12は、シース1Bの周方向に沿って形成されている。
【0069】
図12は、処置具100Bの先端部の断面図である。
鉗子(ジョー)3Bは、導電性金属により形成され、生体組織に高周波電流を通電する高周波電極として機能する。鉗子3は、第一鉗子片31と、第二鉗子片32と、連結部34Bと、を有する。
【0070】
第一鉗子片31と第二鉗子片32とは、基端側A2の連結部34Bにおいて連結されており、先端側A1に向かって開閉自在に設けられている。連結部34Bは、第一鉗子片31と第二鉗子片32とが開状態となるように付勢されている。連結部34Bは、シース1Bの先端1aの内部に収容されている。
【0071】
押さえ管(スリーブ)6は、シース1の先端1aに摺動可能に設けられた管状部材である。押さえ管6の基端側の内周面には、シース1Bの凹部12と係合する凸部66が周方向に沿って形成されている。押さえ管6の長手方向Aにおける中心軸O6は、シース1の長手方向Aにおける中心軸O1と略一致している。
【0072】
押さえ管6は、鉗子3Bの一部を収容して鉗子3Bを閉状態に維持する部材である。図12に示すように、鉗子3Bの基端側A2は、押さえ管6の内部空間6sに収容される。
【0073】
図13は、図11のX-X線に沿う押さえ管6等の断面図である。
押さえ管6は、先端側A1において押さえ管6の内部空間6sと外部空間とを隔てる先端壁63を有する。先端壁(受け部)63は、ロッド貫通孔60と、第一鉗子片貫通孔61と、第二鉗子片貫通孔62と、を有する。
【0074】
ロッド貫通孔60は、長手方向Aに対して水平な方向から見た正面視において、中心軸O6を中心とした円状に形成されている。ロッド貫通孔60の径方向Rの長さL6は、ロッド本体20の径方向Rの長さL2よりも長く、電極部21の径方向Rの長さL1よりも短い。そのため、ロッド本体20はロッド貫通孔60を長手方向Aに沿って進退移動できる。一方、電極部21はロッド貫通孔60を通過できない。
【0075】
第一鉗子片貫通孔61は、第一鉗子片31が挿通する貫通孔である。第二鉗子片貫通孔62は、第二鉗子片32が挿通する貫通孔である。第一鉗子片貫通孔61と第二鉗子片貫通孔62とは、開閉方向Bにおいて中心軸O6を挟んで両側に配置されている。
【0076】
バネ7は、シース1Bの凹部12に格納された圧縮バネであり、復元力により押さえ管6を先端側に付勢する。図12に示すように、バネ7が押さえ管6を最も先端側A1に移動させることにより、第一鉗子片貫通孔61の縁が第一鉗子片31を閉じる方向に移動させ、第二鉗子片貫通孔62の縁が第二鉗子片32を閉じる方向に移動させる。その結果、バネ7によって先端側A1に移動する押さえ管6は、鉗子3Bが開こうとする力に抗して、鉗子3Bを閉状態にする。
【0077】
図14は、電極部21が後退した処置具100Bの先端部の側面図である。
術者がロッド2を後退させると、電極部21が先端壁63に接触する。電極部21は、ロッド貫通孔60を通過するとき、先端壁63に対する「突当部」として機能する。術者がさらにロッド2を後退させると、バネ7は復元力に抗して縮む。その結果、押さえ管6はシース1Bに対して基端側A2に移動する。なお、電極部21が接触する押さえ管6の部分は、先端壁63に限定されず、押さえ管6の一部であればよい。
【0078】
図15は、鉗子3Bが開いた状態である処置具100Bの先端の正面図である。
押さえ管6がシース1Bに対して基端側A2に移動すると、第一鉗子片貫通孔61の縁と第一鉗子片31との接触部分が基端側に移動する。また、第二鉗子片貫通孔62の縁と第二鉗子片32との接触部分が基端側に移動する。その結果、第一鉗子片31と第二鉗子片32とは、閉状態から開状態となる。
【0079】
術者は、第一実施形態と同様に、ロッド2を後退させることにより、第一鉗子片31と第二鉗子片32とを開状態にできる。また、術者は、第一実施形態と同様に、ロッド2を前退させることにより、第一鉗子片31と第二鉗子片32とを閉状態にできる。術者は、処置具100Bにより、第一実施形態と同様に、切開・剥離処置と止血処置とを実施できる。
【0080】
本実施形態に係る処置具100Bによれば、切開・剥離処置と止血処置とを実施でき、かつ、切開・剥離処置を実施するロッド2と止血処置を実施する鉗子3Bとの切替操作が容易である。術者は、ロッド2を進退移動させるのみで、切開・剥離処置を実施するロッド2と止血処置を実施する鉗子3Bとを切替えられる。
【0081】
以上、本発明の第二実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0082】
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態に係る処置具100Cについて、図16から図19を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
[処置具100C]
図16は、処置具100Cの先端部の側面図である。
処置具100Cは、第一実施形態の処置具100と同様に、内視鏡200とともに内視鏡処置システムとして使用される。処置具100Cは、切開・剥離処置と止血処置とを実施できる処置具である。処置具100Cは、シース1と、ロッド2と、鉗子(ジョー)3Cと、操作ワイヤ4と、操作部5と、押さえ管6と、板バネ7Cと、を備える。
【0083】
図17は、処置具100Cの先端部の断面図である。
鉗子(ジョー)3Cは、導電性金属により形成され、生体組織に高周波電流を通電する高周波電極として機能する。鉗子3Cは、第一鉗子片31Cと、第二鉗子片32Cと、連結部34Cと、を有する。
【0084】
図18は、図16のY-Y線に沿う鉗子3C等の断面図である。
第一鉗子片31Cと第二鉗子片32Cとは、基端側A2に設けられた連結部34Cにおいて連結されており、先端側A1に向かって開閉自在に設けられている。連結部34Cは、第一鉗子片31Cと第二鉗子片32Cとを回動自在に連結している。連結部34Cの基端側は、シース1の先端1aの内部に収容されている。
【0085】
第一鉗子片31Cは、第一凹状底部311Cと、第二鉗子片32Cと対向する位置に設けられた第一円弧状縁部312Cと、第一凹状底部311Cの内周面に設けられた第一凸状係合部316と、を有する。
【0086】
第一凹状底部311Cは、第一鉗子片31Cの先端から基端までに形成されている点を除いて、第一実施形態の第一凹状底部311と同様の部材である。
【0087】
第一円弧状縁部312Cは、第一凹状底部311Cの開口縁であって、第一実施形態の第一円弧状縁部312と同様の部材である。
【0088】
第一凸状係合部316は、第一凹状底部311Cにおける第二鉗子片32Cと対向する内周面であって、連結部34Cよりも先端側に設けられた凸状部材である。第一凸状係合部316は、電極部21と係合する第一係合面(受け部)317を有する。第一鉗子片31Cと第二鉗子片32Cとが閉じた閉状態において、第一係合面317は、鉗子3Cの長手方向Aにおける中心軸O3に対して傾斜しており、先端側A1より基端側A2の方が中心軸O3に近い。
【0089】
第二鉗子片32Cは、第二凹状底部321Cと、第一鉗子片31Cと対向する位置に設けられた第二円弧状縁部322Cと、第二凹状底部321Cの内周面に設けられた第二凸状係合部326と、を有する。
【0090】
第二凹状底部321Cは、第二鉗子片32Cの先端から基端までに形成されている点を除いて、第一実施形態の第二凹状底部321と同様の部材である。
【0091】
第二円弧状縁部322Cは、第二凹状底部321Cの開口縁であって、第一実施形態の第二円弧状縁部322と同様の部材である。
【0092】
第二凸状係合部326は、第二凹状底部321Cにおける第一鉗子片31Cと対向する内周面であって、連結部34Cよりも先端側に設けられた凸状部材である。第二凸状係合部326は、電極部21と係合する第二係合面327を有する。第一鉗子片31Cと第二鉗子片32Cとが閉じた閉状態において、第二係合面(受け部)327は、鉗子3Cの長手方向Aにおける中心軸O3に対して傾斜しており、先端側A1より基端側A2の方が中心軸O3に近い。
【0093】
第一凸状係合部316と第二凸状係合部326は、図17に示すように、中心軸O3を挟んで両側に配置されている。第一凸状係合部316と第二凸状係合部326との間の最短長さL7は、ロッド本体20の径方向Rの長さL2よりも長く、電極部21の径方向Rの長さL1よりも短い。そのため、ロッド本体20は第一凸状係合部316と第二凸状係合部326との間を長手方向Aに沿って進退移動できる。一方、電極部21は第一凸状係合部316と第二凸状係合部326との間を通過するとき、第一凸状係合部316と第二凸状係合部326と係合する。
【0094】
板バネ7Cは、図16から図18に示すように、第一板バネ71と、第二板バネ72と、を有する。
【0095】
第一板バネ71は、シース1と第一鉗子片31Cとに取り付けられている。第一板バネ71は、第一鉗子片31Cと第二鉗子片32Cとが閉じた閉状態において平面状態となるように取り付けられている。そのため、第一板バネ71は、復元力により第一鉗子片31Cを閉状態に付勢する。
【0096】
第二板バネ72は、シース1と第二鉗子片32Cとに取り付けられている。第二板バネ72は、第一鉗子片31Cと第二鉗子片32Cとが閉じた閉状態において平面状態となるように取り付けられている。そのため、第二板バネ72は、復元力により第二鉗子片32Cを閉状態に付勢する。
【0097】
図19は、電極部21が後退した処置具100Cの先端部の断面図である。
術者がロッド2を後退させると、電極部21が第一係合面317と第二係合面327と係合する。術者がさらにロッド2を後退させると、電極部21は、第一凸状係合部316と第二凸状係合部326とを径方向R外側に押しのける。電極部21は、第一係合面317と第二係合面327と係合するとき、第一凸状係合部316と第二凸状係合部326とに対する「突当部」として機能する。その結果、第一鉗子片31Cと第二鉗子片32Cとは、板バネ7Cの復元力に抗して、閉状態から開状態となる。
【0098】
術者がロッド2を前退させて電極部21を第一係合面317と第二係合面327とから離すと、板バネ7Cの復元力により、第一鉗子片31Cと第二鉗子片32Cとは、開状態から閉状態となる。
【0099】
術者は、第一実施形態と同様に、ロッド2を後退させることにより、第一鉗子片31Cと第二鉗子片32Cとを開状態にできる。また、術者は、第一実施形態と同様に、ロッド2を前退させることにより、第一鉗子片31Cと第二鉗子片32Cとを閉状態にできる。術者は、処置具100Cにより、第一実施形態と同様に、切開・剥離処置と止血処置とを実施できる。
【0100】
本実施形態に係る処置具100Cによれば、切開・剥離処置と止血処置とを実施でき、かつ、切開・剥離処置を実施するロッド2と止血処置を実施する鉗子3Cとの切替操作が容易である。術者は、ロッド2を進退移動させるのみで、切開・剥離処置を実施するロッド2と止血処置を実施する鉗子3Cとを切替えられる。
【0101】
以上、本発明の第三実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0102】
(第四実施形態)
本発明の第四実施形態に係る処置具100Dについて、図20から図21を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
[処置具100D]
図20は、処置具100Dの先端部の断面図である。
処置具100Dは、第一実施形態の処置具100と同様に、内視鏡200とともに内視鏡処置システムとして使用される。処置具100Dは、切開・剥離処置と止血処置とを実施できる処置具である。処置具100Dは、シース1Dと、ロッド2と、鉗子(ジョー)3Bと、操作ワイヤ4と、操作部5と、チューブ6Dと、を備える。
【0103】
シース1Dは、先端1aの外周部にスリット13を有する点を除いて、第一実施形態のシース1と同様の部材である。スリット13は、長手方向Aに沿って形成されており、シース1Dの内部空間1sから外部空間まで貫通している。
【0104】
チューブ(スリーブ)6Dは、チューブ本体64と、チューブ固定部材65と、を有する。チューブ本体64は、円筒状に形成されており、閉状態の鉗子3Bを収容可能である。チューブ本体64の基端部64bは、シース1Dの先端1aの外周部と嵌合している。
【0105】
チューブ固定部材65は、チューブ本体64の基端部64bと操作ワイヤ4とを連結する部材である。チューブ固定部材65は、スリット13を通過して配置されているため、シース1Dの外側にあるチューブ本体64と、シース1Dの内側にある操作ワイヤ4と、を連結できる。
【0106】
図21は、電極部21が後退した処置具100Dの先端部の断面図である。
術者がロッド2を後退させると、操作ワイヤ4と連結されたチューブ固定部材65およびチューブ本体64も後退する。鉗子3Bの連結部34Bは、第一鉗子片31Bと第二鉗子片32Bとが開状態となるように付勢されている。そのため、チューブ本体64が鉗子3Bに対して後退すると、第一鉗子片31Bと第二鉗子片32Bとは、閉状態から開状態となる。
【0107】
術者がロッド2を前退させると、チューブ本体64が鉗子3Bを収容して、第一鉗子片31と第二鉗子片32とは、開状態から閉状態となる。
【0108】
術者は、第一実施形態と同様に、ロッド2を後退させることにより、第一鉗子片31と第二鉗子片32とを開状態にできる。また、術者は、第一実施形態と同様に、ロッド2を前退させることにより、第一鉗子片31と第二鉗子片32とを閉状態にできる。術者は、処置具100Dにより、第一実施形態と同様に、切開・剥離処置と止血処置とを実施できる。
【0109】
本実施形態に係る処置具100Dによれば、切開・剥離処置と止血処置とを実施でき、かつ、切開・剥離処置を実施するロッド2と止血処置を実施する鉗子3Bとの切替操作が容易である。術者は、ロッド2を進退移動させるのみで、切開・剥離処置を実施するロッド2と止血処置を実施する鉗子3Bとを切替えられる。
【0110】
以上、本発明の第四実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、止血処理に使用される処置具に適用することができる。
【符号の説明】
【0112】
300 内視鏡処置システム
200 内視鏡
100,100B,100C,100D 処置具
1,1B,1D シース
2,2A ロッド
20 ロッド本体
21 電極部
22 ストッパ
23 突当部
3,3B,3C 鉗子(ジョー)
31,31B,31C 第一鉗子片
32,32B,32C 第二鉗子片
33 貫通孔
34,34B,34C 連結部
315 第一基端支持部(受け部)
317 第一係合面(受け部)
325 第二基端支持部(受け部)
327 第二係合面(受け部)
4 操作ワイヤ
5 操作部
51 操作部本体
52 スライダ
53 給電コネクタ
6 押さえ管(スリーブ)
60 ロッド貫通孔
61 第一鉗子片貫通孔
62 第二鉗子片貫通孔
63 先端壁(受け部)
6D チューブ
64 チューブ本体
65 チューブ固定部材
7 バネ
7C 板バネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21