(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】技術装置を制御及び調整するための多次元特性マップを使用及び作成する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B60W 50/00 20060101AFI20240325BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20240325BHJP
F02D 41/24 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
B60W50/00
F02D45/00 372
F02D41/24
(21)【出願番号】P 2022581566
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2021065755
(87)【国際公開番号】W WO2022002561
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】102020208321.5
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ケアン
【審査官】竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102010040873(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0069336(US,A1)
【文献】特表平10-501038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
F02D 45/00
F02D 41/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御ユニット(3)により、特性マップメモリ(4)に記憶された多次元特性マップを用いて技術装置(2)を動作させるためのコンピュータ実装による方法であって、
前記制御ユニット(3)は、前記特性マップを用いて動作パラメータBを求めるように構成されており、前記動作パラメータBは、補正パラメータ、適応化パラメータ、又は、物理的特性を描写する関数の関数値を表し、前記動作パラメータBによって前記技術装置(2)が動作させられ、
前記特性マップは、それぞれ1つの特性マップ値(y
i)が割り当てられた補間点によって定義されており、
前記特性マップを読み出すために、前記技術装置(2)に対し評価すべき入力変数点
【数1】
に依存して、1つの補間点の各次元に割り当てられた一次元基底関数
【数2】
を用いて、1つの出力値
【数3】
が決定され、
前記一次元基底関数
【数4】
の関数値はそれぞれ、
前記基底関数が関数値0を有する隣接する補間点までは単調な推移を有し、
前記補間点と前記隣接する補間点
との間の領域の外側では0であり、
評価すべき1つの入力変数点
【数5】
に対し、前記出力値
【数6】
を決定するために、前記入力変数点
【数7】
を各次元に関して取り囲む前記補間点の前記一次元基底関数
【数8】
の関数値が乗算され、
前記出力値
【数9】
に依存して前記技術装置(2)が動作させられる、
多次元特性マップを用いて技術装置(2)を動作させるためのコンピュータ実装による方法。
【請求項2】
三次元以上の入力変数点
【数10】
に対し前記出力値
【数11】
を計算するために、前記一次元基底関数
【数12】
の関数値の乗算結果が記憶されて繰り返し使用される、
請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記特性マップの前記補間点は、非構造化グリッドを形成しており、前記グリッドは、前記特性マップの次元よりも1だけ大きい互いに直接隣接する複数の補間点同士を結ぶ単体として、基本単位を含み、
前記出力値
【数13】
を計算するために、1つの入力変数点
【数14】
に依存して、当該入力変数点
【数15】
を取り囲むn個の単体からn+1次元空間への変換が実行され、前記単体が対応する1つの単位単体に変換され、
前記変換は、前記単体のノードの投影により得られる(n+1)×(n+1)の投影行列との乗算によって記述され、
前記出力値
【数16】
は、前記投影行列と、値1を有する成分で補完された入力変数点
【数17】
との乗算によって得られる、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
制御ユニット(3)により、特性マップメモリ(4)に記憶された多次元特性マップを用いて技術装置(2)を動作させるためのシステムであって、
前記制御ユニット(3)は、前記特性マップを用いて動作パラメータBを求めるように構成されており、前記動作パラメータBは、補正パラメータ、適応化パラメータ、又は、物理的特性を描写する関数の関数値を表し、前記動作パラメータBによって前記技術装置(2)が動作させられ、
前記特性マップは、それぞれ1つの特性マップ値(y
i)が割り当てられた補間点によって定義されており、
当該システムは、前記特性マップを読み出すために、前記技術装置(2)に対し評価すべき入力変数点
【数18】
に依存して、1つの補間点の各次元に割り当てられた一次元基底関数
【数19】
を用いて、1つの出力値
【数20】
を決定するように構成されており、
前記一次元基底関数
【数21】
の関数値はそれぞれ、
前記基底関数が関数値0を有する隣接する補間点までは単調な推移を有し、
前記補間点と前記隣接する補間点
との間の領域の外側では0であり、
当該システムは、評価すべき入力変数
【数22】
に対し、前記出力値
【数23】
を決定するために、前記入力変数点
【数24】
を各次元に関して取り囲む前記補間点の前記一次元基底関数
【数25】
の関数値を乗算し、
前記出力値
【数26】
に依存して前記技術装置を動作させるように構成されている、
多次元特性マップを用いて技術装置(2)を動作させるためのシステム。
【請求項5】
技術装置(2)を動作させるために多次元特性マップを供給するコンピュータ実装による方法であって、
前記特性マップは、それぞれ1つの特性マップ値(y
i)が割り当てられた補間点によって定義されており、
前記技術装置(2)に対し評価すべき入力変数点
【数27】
に依存して、1つの補間点の各次元に割り当てられた一次元基底関数
【数28】
を用いて、1つの出力値
【数29】
が決定されており、
前記一次元基底関数
【数30】
の関数値はそれぞれ、
前記基底関数が関数値0を有する隣接する補間点までは単調な推移を有し、
前記補間点と前記隣接する補間点
との間の領域の外側では0であり、
1つ又は複数の予め定められた入力変数点
【数31】
及びそれぞれ割り当てられた出力値
【数32】
によって、前記特性マップが較正又は適応化され、
ここで、前記入力変数点
【数33】
における出力値と、前記入力変数点
【数34】
に対する前記特性マップの前記出力値
【数35】
との間の総合誤差が最小化されるように、前記特性マップ値(y
i)が調整される、
多次元特性マップを供給するコンピュータ実装による方法。
【請求項6】
前記特性マップの前記補間点は、非構造化グリッドを形成しており、前記グリッドは、前記特性マップの次元よりも1だけ大きい互いに直接隣接する複数の補間点同士を結ぶ単体として、基本単位を含み、
前記非構造化グリッドの前記基底関数
【数36】
は、選択された補間点から前記単体を介して求められ、
前記補間点の分布密度は、前記出力値
【数37】
の予期される特性を、前記補間点間の線形補間によって描写し得るように選択される、
請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
技術装置(2)を動作させるために多次元特性マップを供給するシステムであって、
前記特性マップは、それぞれ1つの特性マップ値(y
i)が割り当てられた補間点によって定義されており、
前記技術装置(2)に対し評価すべき入力変数点
【数38】
に依存して、1つの補間点の各次元に割り当てられた一次元基底関数
【数39】
を用いて、1つの出力値
【数40】
が決定されており、
前記一次元基底関数
【数41】
の関数値はそれぞれ、
前記基底関数が関数値0を有する隣接する補間点までは単調な推移を有し、
前記補間点と前記隣接する補間点
との間の領域の外側では0であり、
当該システムは、1つ又は複数の予め定められた入力変数点
【数42】
及びそれぞれ割り当てられた出力値
【数43】
によって、前記特性マップを較正又は適応化するように構成されており、
ここで、前記入力変数点
【数44】
における出力値
【数45】
と、前記入力変数点
【数46】
に対する前記特性マップの前記出力値
【数47】
との間の総合誤差が最小化されるように、前記特性マップ値(y
i)が調整される、
多次元特性マップを供給するシステム。
【請求項8】
コンピュータプログラムが計算ユニット上において実行されるときに、請求項1乃至
3までのいずれか一項及び請求項
5乃至
6までのいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項
8に記載のコンピュータプログラムが記憶されている機械可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に内燃機関、燃料電池などの分野において、多種多様な技術装置を制御及び調整するための特性マップを利用及び作成する方法に関する。
【0002】
背景技術
技術装置のモデリング、較正及びパラメータ化のために、入力変数に依存して出力変数を供給する特性マップが利用されることが多い。特性マップはしばしば、物理的モデルを用いて捕捉すべき依存関係を描写せず又は完全には描写しない。
【0003】
入力変数である動作量及びシステムパラメータに依存して、たとえばモデルパラメータ、較正パラメータ又は補正パラメータを出力変数として取得する目的で、この種の特性マップを制御ユニットによって読み出すことができる。
【0004】
この種の特性マップによって、通常、複数の入力変数の値の組合せから成る補間点に、出力変数の対応づけられた出力値が割り当てられ、その際、補間点に対応していない入力変数の値の組合せについては、線形補間又は双線形補間によって出力変数の出力値が求められる。補間点の分布は、通常、オフラインで較正している間に、即ち、技術装置において利用される前に定義されるため、技術装置の実際の動作中に、変化する特性に合わせて後から調整することができない。
独国特許出願公開第102010040873号明細書には、複数の入力変数に依存する少なくとも1つの出力変数を求める方法が開示されており、この場合、出力変数は、少なくとも2つの対応関係を使用して、複数の入力変数の第1の部分集合に依存して記述され、ここで、少なくとも2つの対応関係は、複数の入力変数の第2の部分集合におけるそれぞれ1つの離散的なタプルに依存して形成され、少なくとも1つの出力変数が以下のようにして求められ、即ち、第2の部分集合における入力変数の現在の値に対し、離散的なタプルのうちの少なくとも2つに対する結び付きが求められるようにして、さらに少なくとも2つの離散的なタプルに依存して形成された対応関係の出力変数の間で、上述の結び付きを用いて補間が行われるようにして求められる。
米国特許出願公開第2011/069336号明細書には、装置に依存しない空間において複数の点を有する単体からターゲット単体を識別するステップを含む方法が開示されており、この場合、各点は、装置に依存する入力の対応する組合せを有し、ここで、識別ステップは、テスト単体が装置に依存しない空間においてターゲット結果を含むか否かを判定するステップを含み、その際、テスト単体がターゲット結果を含まない場合には、他の隣接する単体をテスト単体として選択し、ターゲット単体が識別されるまで判定ステップを繰り返し、ターゲット結果について装置に依存する入力の組合せを識別するために、ターゲット単体の点の装置に依存する入力を補間する。
【0005】
発明の開示
本発明によれば、特性マップを用い入力変数の値の組合せに依存して出力変数の出力値を供給する、請求項1に記載のコンピュータ実装による方法、及び、特性マップを作成する別の独立請求項に記載のコンピュータ実装による方法が提案されている。
【0006】
従属請求項には、さらなる実施形態が記載されている。
【0007】
第1の態様によれば、多次元特性マップを用いて技術装置を動作させるためのコンピュータ実装による方法が提案されており、特性マップは、それぞれ1つの特性マップ値が割り当てられた補間点によって定義されており、特性マップを読み出すために、技術装置に対し評価すべき入力変数点に依存して、1つの補間点の各次元に割り当てられた一次元基底関数を用いて、1つの出力値が決定され、一次元基底関数の関数値はそれぞれ、基底関数が関数値0を有する隣接する補間点までは単調な推移を有し、上記の補間点とこの隣接する補間点との間の領域の外側では0であり、出力値に依存して技術装置が動作させられる。
さらに、評価すべき1つの入力変数点に対し、出力値を決定するために、入力変数点を各次元に関して取り囲む補間点の一次元基底関数の関数値が乗算される。
【0008】
特性マップは、通常、完全には物理的に描写できない関係を較正、補正、適応化及びモデリングするために使用される。特性マップは複数の入力変数に対し、技術装置、特に内燃機関、燃料電池、自律型エージェントなどの電子制御ユニットにおいて使用される1つの出力変数を割り当てる。
【0009】
上述の方法の着想は、特性マップを極めて簡単に作成、適応化及び評価できるようにする基底関数を用いて、特性マップの補間点を定義する、ということにある。これらの基底関数を、入力次元(特性マップの描写する入力変数の個数)には関係なく使用することができ、その際に特性マップの補間点ごとに、多次元基底関数を一次元基底関数の積として定義することができる。この場合に特性マップの補間点は、入力変数の選択された値の組合せに対応し、これらの入力変数にはそれぞれ、特性マップの1つの特定の出力値が直接割り当てられる。
【0011】
基底関数は、入力変数のそれぞれ1つの次元に割り当てられている。基底関数の関数値の積の形成が可能であることから、一次元基底関数と、問い合わせされた入力変数点を取り囲む補間点における出力変数の決定された出力値との積によって、特性マップの出力変数の出力値の簡単な補間が得られる。
【0012】
ここで想定されることは、三次元以上の入力変数点に対し出力値を計算するために、一次元基底関数の関数値の乗算結果が記憶されて繰り返し使用される、ということである。
【0013】
基底関数を設け、動作パラメータを補間するためにそれらの基底関数の関数値を乗算することにより、乗算の繰り返しゆえに従来の補間方法と比較して、補間のために必要とされる乗算の数を著しく低減することができる。
【0014】
さらに、特性マップの補間点は、非構造化グリッドを形成することができ、このグリッドは、特性マップの次元よりも1だけ大きい互いに直接隣接する複数の補間点同士を結ぶ単体として、基本単位を含み、出力値を計算するために、1つの入力変数点に依存して、この入力変数点を取り囲むn個の単体からn+1次元空間への変換が実行され、この単体は対応する1つの単位単体に変換され、この変換は、単体のノードの投影により得られる(n+1)×(n+1)の投影行列との乗算によって記述され、出力点は、投影行列と、値1を有する成分で補完された入力変数点との乗算によって得られる。
【0015】
1つの実施形態によれば、入力変数空間の周辺部に位置する、特性マップの複数の周辺補間点の特性マップ値が、重み付けられて合計されるようにして、入力変数空間の外側に位置する入力変数点に対し出力値を外挿することができ、この重み付けは、直線と、それぞれ周辺補間点と入力変数点との間の線分とが成す角度及びこの線分の距離に依存する。
【0016】
さらなる態様によれば、多次元特性マップを用いて技術装置を動作させるためのシステムが提案されており、特性マップは、それぞれ1つの特性マップ値が割り当てられた補間点によって定義されており、このシステムは、特性マップを読み出すために、技術装置に対し評価すべき入力変数点に依存して、1つの補間点の各次元に割り当てられた一次元基底関数を用いて、1つの出力値を決定するように構成されており、一次元基底関数の関数値はそれぞれ、基底関数が関数値0を有する隣接する補間点までは単調な推移を有し、上記の補間点とこの隣接する補間点との間の領域の外側では0であり、このシステムは、入力変数に対し、出力値を決定するために、入力変数点を各次元に関して取り囲む補間点の一次元基底関数の関数値を乗算し、出力値に依存して技術装置を動作させるように構成されている。
【0017】
さらなる態様によれば、技術装置を動作させるために多次元特性マップを供給するコンピュータ実装による方法が提案されており、特性マップは、それぞれ1つの特性マップ値が割り当てられた補間点によって定義されており、技術装置に対し評価すべき入力変数点に依存して、1つの補間点の各次元に割り当てられた一次元基底関数を用いて、1つの出力値が決定されており、一次元基底関数の関数値はそれぞれ、関数値0を有する隣接する補間点までは単調な推移を有し、隣接するこの補間点の外側では0であり、1つ又は複数の予め定められた入力変数点及びそれぞれ割り当てられた出力値によって、特性マップが較正又は適応化され、ここで、入力変数点における出力値と、それらの入力変数点に対する特性マップの出力値との間の総合誤差が最小化されるように、特性マップ値が調整される。
【0018】
ここで想定されることは、特性マップの補間点は非構造化グリッドを形成し、このグリッドは、特性マップの次元よりも1だけ大きい互いに直接隣接する複数の補間点同士を結ぶ単体として、基本単位を含み、非構造化グリッドの基底関数は、選択された補間点からこの単体を介して求められ、補間点の分布密度は、出力値の予期される特性を、補間点間の線形補間によって描写し得るように選択される、ということである。
【0019】
さらなる態様によれば、技術装置を動作させるために多次元特性マップを供給するシステムが提案されており、特性マップは、それぞれ1つの特性マップ値が割り当てられた補間点によって定義されており、技術装置に対し評価すべき入力変数点に依存して、1つの補間点の各次元に割り当てられた一次元基底関数を用いて、1つの出力値が決定されており、一次元基底関数の関数値はそれぞれ、基底関数が関数値0を有する隣接する補間点までは単調な推移を有し、上記の補間点とこの隣接する補間点との間の領域の外側では0であり、このシステムは、1つ又は複数の予め定められた入力変数点及びそれぞれ割り当てられた出力値によって、特性マップを較正又は適応化するように構成されており、ここで、入力変数点における出力値と、それらの入力変数点に対する特性マップの出力値との間の総合誤差が最小化されるように、特性マップ値が調整される。
【0020】
次に、添付の図面に基づき実施形態についてさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】技術装置を動作させるために特性マップメモリにアクセスする制御装置を示す概略図である。
【
図3】特性マップの1つの次元に関する基底関数の推移を示す図である。
【
図4】多次元基底関数の関数値の計算を簡略化するためのツリー構造を示す図である。
【
図5】二次元で任意に分散された補間点を有する非構造化特性マップを示す概略図である。
【
図6】局所的に改善された補間点グリッドの例示的な形態を示す図である。
【
図7】非構造化二次元特性マップの線形基底関数を示す図である。
【
図8】非構造化特性マップの補間点により重心座標に形成された三角形を示す図である。
【
図9】非構造化グリッドにおける外挿を示す図である。
【0022】
実施形態の説明
図1には、制御ユニット3を備えた技術装置2を制御するためのシステム1を表すブロック図が示されている。制御ユニット3は、特性マップメモリ4に接続されており、この特性マップメモリ4には、少なくとも1つの特性マップがパラメータ化された手法により記憶されている。
【0023】
技術装置2を動作させるために、制御ユニット3は、動作パラメータBを求めるように構成されており、この動作パラメータBによって、補正パラメータ、適応化パラメータ、又は、物理的特性を描写する関数の関数値を表すことができる。動作パラメータBを求めるために、制御ユニット3は、特性マップメモリ4内の特性マップを利用し、求められた動作パラメータBに応じて技術装置2を動作させる。
【0024】
図2には、この種の特性マップの一例が示されており、この特性マップは、グリッドを定義する入力変数x1,x2と、出力変数yとしての出力側の動作パラメータとを有し、出力変数yの個々の出力値は、グリッド交点に書き込まれた円によってシンボリックに表されている。出力変数(求めるべき動作パラメータ)のそれぞれ1つの出力値が割り当てられている座標は、グリッド交点と一致しており、これらは補間点と称される。
【0025】
入力変数点ごとに1つの多次元基底関数が定義されており、これは、個々の基底関数からの積である。従って、特性マップから出力変数の出力値を、
【数1】
として計算することができる。その際に、インデックスiによって、特性マップグリッドの補間点各々が考慮される。
【0026】
基底関数biは、一次元基底関数の積として、特性マップの入力変数の該当する次元の入力値において計算される。
【0027】
単一の次元xについて、基底関数は、
図3に示されているように、以下の定義に相当する。即ち、
【数2】
【0028】
これに応じて、多次元基底関数が次いで乗算によって求められる。即ち、
【数3】
【0029】
かかる特性マップのトレーニングにあたり、1つの補間点に、出力変数y=f’(x)の1つの出力値が割り当てられる。この目的で学習アルゴリズムは、特定の補間点x1,x2,...において学習すべき動作パラメータを受信し、その際にこの動作パラメータを、現在の学習済みの値を改善又はエントリするために、使用することができる。
【0030】
十分な回数の学習イベントの後、特性マップは、予め定められた入力変数点(入力変数ベクトル)に応じて、出力変数の適正な出力値を表すことができる。特性マップがPT1特性を有するべきである場合には、特性マップから出力される出力値は、次式に従って、学習すべき実際の動作パラメータの方向に向かう傾向にある。即ち、
【数4】
【0031】
積分特性を格納すべきである場合には、特性マップの出力値として、入力変数点
【数5】
の離散的な積分、即ち、
【数6】
が得られる。ここで、Kは、積分速度パラメータに相当し、τは、先行の離散的時間ステップに相当する。ただし、特性マップの出力f’として連続的な関数を利用できるのではなく、対応する入力変数点に対する出力値を、特性マップ値に基づき補間点(特性マップのグリッド交点又は特性マップの補間点におけるエントリ)において近似しなければならない。つまり、以下のとおりとなる。即ち、
【数7】
ここで、
【数8】
は、基底関数であり、y
iは、特性マップの補間点において相応に離散的な学習済み特性マップ値である。
【0032】
オンライン学習ステップ中に、測定
【数9】
が評価される。最初に、現在の学習済みの値の誤差を表す残存誤差δが計算される。積分特性は、
【数10】
に相当する。PT1特性には、
【数11】
が適用され、これは、特性マップの特性マップ値と、測定の入力変数点において現在学習すべき出力値との差に相当する。
【0033】
次に、
【数12】
が上述のように定義された適正な出力値とより良好に一致するように、即ち、残留誤差が補償されるように、補間点において学習済み特性マップ値y
iが修正される。このことは、学習済み特性マップ値を修正するための重みとして基底関数が用いられることによって、達成される。即ち、
【数13】
ここで、Kは、学習速度を表し、積分速度パラメータとして
【数14】
におけるKに相当するものとすることができる。
【0034】
オフライン学習中に、学習済み特性マップ値y
iは、出力
【数15】
が、入力変数点(評価点)
【数16】
に対する特性マップの出力値と最も良く一致するように、決定される。
【0035】
これを、
【数17】
に従って最小二乗法によって実施することができ、ここで、行列要素は、
【数18】
によって与えられている。
【0036】
この場合、方程式の総和形成
【数19】
が、行ごとに積
【数20】
において実行される。
【0037】
かくして基底関数
【数21】
ごとに、学習済み特性マップ値y
iが存在する。これらの基底関数
【数22】
は、学習を実施すべき多次元容積Ωを形成するために選択される。
【0038】
図2から見て取れるように、入力側の変数x1及びx2における二次元特性マップについて示されている構造化された矩形の補間点グリッド上において、基底関数が効率的に定義される。
【0039】
グリッド点は、点{x
1},{x
2}のすべての組合せによって、即ち、
図2におけるすべてのグレーの円によって、表される。複数の補間点によって二次元に拡がるこのように形成された矩形(三次元以上については直方体)によって、入力変数領域Ωが定義される。
【0040】
グリッド点
【数23】
ごとに、1つの多次元基底関数b
iが定義されている。基底関数b
iは、特性マップの入力変数の次元各々に従って、一次元基底関数の積として計算されている。単一の次元xについて、基底関数は、
図3に示されているとおり、上述のように定義されている。これに応じて、多次元基底関数が次いで乗算によって求められる。即ち、
【数24】
【0041】
次いで、基底関数の上述の定義において定められている特性を、より高い次元に拡張することができる。即ち、
【数25】
【0042】
特定の入力変数点
【数26】
の場合には、2
Nの多次元補間点に対応する基底関数は0ではなく、ここで、Nは、次元数を表す。かくして、補間のために2
N個の学習済みの値へのアクセスが行われ又は学習ステップによって修正される。多次元補間点
【数27】
は、一次元基底関数の積を含む。次元ごとに、評価対象入力変数点
【数28】
を含む下方の補間点(インデックスl)及び上方の補間点(インデックスu)の一次元基底関数が考慮される。たとえば、三次元である場合には、8つ(2
3)の多次元基底関数が、評価対象入力変数点
【数29】
を取り囲む、直方体の8つの角に対応する。即ち、
【数30】
ここで、インデックス「l」は、低い方の補間点に対応し、インデックス「u」は、高い方の補間点に対応する。多次元基底関数の計算にあたり積の形成が繰り返し発生することから、
図4に描かれているように、計算木に基づくアプローチを用いることができ、このようにして二重に乗算が行われることを排除することができる。これにより、上述の方程式において与えられている2
N(N-1)個の乗算の代わりに、複雑さを
【数31】
個の乗算に低減することができ、このことは、特に比較的高い次元のために重要である。
【0043】
入力変数空間Ωの外側に位置する評価対象入力変数点に対する出力値の外挿は、入力変数空間Ωの境界上への入力変数点の投影により実施される。入力変数空間Ωは、常に凸状であるので、この投影は明確である。
【0044】
上述の実施例とは異なり、特性マップは、構造化されていなくてもよく、即ち、超直方体の輪郭を有していなくてもよい。このことは、入力変数空間における補間点の直方体ではない集合に対してのみ、入力変数点の学習すべき値(評価点)が存在する場合に、有意なものとなる可能性がある。さもなければ、グリッドが直方体状に配置されている場合に、入力変数点に対し学習すべき出力値が、入力変数空間全体にわたって分配されておらず、そのために、かなり多くの出力値が一度も更新されない又はそれに対しアクセスされない、という事態が発生するおそれがある。このことによって、一方では、利用されない学習済みの動作パラメータを記憶しなければならないことから、リソースを浪費してしまうことになり、他方では、学習済みの値が外挿領域には存在していないことから、即ち、入力変数空間Ωの外側には存在していないことから、読み出し中に、それらの値は、この領域において外挿されない。その代わりに、たとえばゼロのような学習済みの設定値が、相応の外挿領域におけるのと同様に、この領域において出力される。
【0045】
これに加えて、学習済みの値の分解能は、上述のルーチンによって任意に選択することができない。直角のグリッドを用いた場合には、補間点を次元ごとに改善することしかできない。従って、1つの次元における改善が、それが必要であるか否かにかかわらず、他の次元のすべての組合せに適用される。このことによって、不必要に高い分解能が、そのように不必要に高い分解能が不要な動作領域に導入されてしまうことから、リソースが浪費してしまうことになる。また、分解能が不必要に高いと、測定ノイズが空間的変化として誤って解釈されることから、性能及びノイズ抑圧が劣化してしまうおそれもある。
【0046】
非構造化特性マップを上述の学習アルゴリズムに適用するためのアプローチについて、以下において説明する。単体、即ち、1Dの線セグメント、2Dの三角形、3Dの四面体などを基本単位として用い、任意な形状及び分解能を記述するために、特性マップの補間点グリッドを選択することができる。このアプローチを、あらゆる任意の数の次元に適用することができる。直方体の補間点分布のための上述の学習アプローチ及び評価アプローチの場合には、入力変数空間Ωを特性マップの補間点
【数32】
によって形成することができる。特性マップの補間点ごとに、学習すべき値y
1が記憶される。学習及び読み出しは、基底関数
【数33】
を用いて実施される。基底関数
【数34】
は、上述のように定義されている。
【0047】
これ以前は、補間点は、個々の補間点により次元ごとに定義されている直角の特性マップグリッド上において定義されていた。上述のアプローチを適用するために、非構造化特性マップの補間点は、
図5に例示的に描かれているように、独立した補間点によって形成される。各補間点
【数35】
は、他のすべての補間点に依存しないベクトルによって記述される。グリッドセルΩ
kは、n+1個の補間点同士を結ぶ単体として定義される。かかる補間点グリッドは、任意の形状を有することができ、例示的に
図6に描かれているように、これを局所的に改善することができる。対応する線形基底関数が、二次元について
図7に図形的に描かれている。
【0048】
重心座標を用いることにより、非構造化特性マップグリッドの線形基底関数の計算を効率的に計算することができる。この目的で、n個の単体からn+1次元空間への変換が実行され、この単体は対応する1つの単位単体に変換される。例として、
図8に描かれているように、二次元の三角形を三次元の単位2単体に変換することができる。任意のn個の単体Ω
kに対して、(n+1)×(n+1)行列との乗算によって、変換を記述することができる。
【数36】
ここで、
【数37】
は、値1を有する成分が付け加えられるn次元ベクトル
【数38】
、たとえば(x1,x2,x1)、に依存して、(n+1)次元ベクトルに対応する。
P
kの値は、たとえば
図6のΩ
1の場合のように、単体のノードの投影により得られる。
【数39】
即ち、逆行列P
-1
1の列は、1が付け加えられる単体のノードの座標に対応する。
【0049】
重心座標は、以下の利点を有する。即ち、
・入力変数点
【数40】
が単体Ω
k内又はその境界上に位置するときのみ、
【数41】
のすべての成分は、ゼロ以上になる。このことを、評価点が
【数42】
が内部に位置している単体を効率的に探索するために使用することができる。
・
【数43】
各々のすべての成分の合計は、常に1である。
・
【数44】
である場合には、投影された
【数45】
の成分は、入力変数点
【数46】
における単体Ω
kの角に応じて、線形基底関数の値に等しい。従って、基底関数の値が、重心座標への変換によってそのまま得られる。
【0050】
非構造化グリッドにおける基底関数を、選択された補間点からこの単体を介して求めることができる。これらの補間点は、第一には、入力変数点の予期される領域をカバーするように選択され、第二には、それらの分布密度が、出力値の予期される特性を補間点間の線形補間によって描写することができるように、十分に高くなるように選択される。
【0051】
非構造化特性マップグリッドの外挿は、上述したように容易には実施することができない。なぜならば、特性マップグリッドは、必ずしも凸状ではなく、従って、境界上への一義的な投影が常に存在しているわけではないからである。従って、非構造化特性マップグリッドについては、離散的な入力変数空間Ωの外側の補間点に対し連続的な値を得るために、以下の方法を実施することが提案される。これによってさらに、連続的に変化する入力変数点について、出力値における跳躍的変化を回避することができる。
【0052】
図9に描かれているように、方向が定められたエッジL
kが、外側に向けられた法線
【数47】
と共に、入力変数空間Ωの境界を形成している。特定の評価対象入力変数点
【数48】
について、入力変数点
【数49】
がエッジの外側に位置しているすべてのエッジL
k,outを求めることができる。即ち、
【数50】
ここで、
【数51】
は、エッジL
k上、たとえば境界ノード上の1つの点である。これらのエッジごとに、評価対象入力変数
【数52】
の最も近くに位置するエッジ点
【数53】
が、エッジL
k上において決定される。この点は、エッジ上に位置する可能性があり、又は、エッジの境界ノード上に位置する可能性がある。外挿のための対応する出力値は、ポジション
【数54】
において補間された値であって、その際に
【数55】
により与えられた重みが考慮される。この場合、dは、
【数56】
とエッジ点
【数57】
との間のユークリッド距離であり、δは、法線
【数58】
と
【数59】
との間の角度である。次いで、外挿された出力値y’を、
【数60】
として計算することができる。