(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】光電変換装置、撮像システム、移動体
(51)【国際特許分類】
H04N 25/773 20230101AFI20240325BHJP
【FI】
H04N25/773
(21)【出願番号】P 2023009354
(22)【出願日】2023-01-25
(62)【分割の表示】P 2019014727の分割
【原出願日】2019-01-30
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】大田 康晴
【審査官】三沢 岳志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/158384(WO,A1)
【文献】特開2019-009768(JP,A)
【文献】特表2012-530917(JP,A)
【文献】特開2018-157387(JP,A)
【文献】特開2018-198388(JP,A)
【文献】特開2018-182051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/773
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電圧と第2の電圧が供給される
ように接続されたアバランシェ増倍型のフォトダイオードと、
前記フォトダイオードで生じるパルスをカウントし、カウント値を保持するカウンタと、
前記フォトダイオード
への前記第1の電圧
の供給を制御する制御回路とを有し、
前記制御回路に入力される信号は
前記制御回路を介して前記フォトダイオードに前記第1の電圧を供給する第1のレベルと
前記フォトダイオードに前記第1の電圧を供給しない第2のレベルを有し、
前記カウンタの前記カウント値をリセットしてから前記カウンタの前記カウント値を読み出すまでの期間は、第1の期間と、前記第1の期間の後の第2の期間を有し、
前記第2の期間は、前記カウント値が閾値に達した後の期間であり、
前記第1の期間において、前記第1のレベルの長さに対する前記第2のレベルの長さの割合は、第1の値であり、
前記第2の期間において、前記第1のレベルの長さに対する前記第2のレベルの長さの割合は、第2の値であり、
前記第2の値は、前記第1の値よりも大き
く、
前記カウンタから出力された前記カウント値が前記閾値を上回る場合、前記第2のレベルの長さに基づいて前記カウント値の補正を行う補正部をさらに有することを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記第1の期間において、前記制御回路に入力される信号は、前記第1のレベルに維持され、
前記第2の期間において、前記制御回路に入力される信号は、前記第1のレベルと前記第2のレベルに順次複数回設定されることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記第1の期間において、前記制御回路に入力される信号は、前記第1のレベルと前記第2のレベルに順次複数回設定され、
前記第2の期間において、前記制御回路に入力される信号は、前記第1のレベルと前記第2のレベルに順次複数回設定されることを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記第2の期間の後の第3の期間を更に有し、
前記第3の期間は、前記カウント値が前記閾値よりも大きい第2の閾値に達した後の期間であり、
前記第3の期間において、前記制御回路に入力される信号は、前記第1のレベルと前記第2のレベルに順次複数回設定され、
前記第3の期間の前記第2のレベルの長さは、前記第2の期間の前記第2のレベルの長さよりも長いことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記補正が、以下の(A)式によって行われることを特徴とする請求項
1から4のいずれか1項に記載の光電変換装置。
Nx2=n・Nx1-(n-1)・N1 ・・・(A)
Nx2:補正後の前記カウント値
n:前記カウント値が前記閾値に達した後における、前記第1のレベルの期間の長さ/(前記第1のレベルの期間の長さ+前記第2のレベルの期間の長さ)
Nx1:補正前の前記カウント値
N1:前記閾値
【請求項6】
前記制御回路は、リチャージ回路
を含み、
前記第1のレベルの信号が前記制御回路に入力された場合、前記リチャージ回路によりリチャージ動作が行われ、
前記第2のレベルの信号が前記制御回路に入力された場合、前記リチャージ回路によるリチャージ動作が休止されることを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記第1の電圧は、前記フォトダイオードのアノード
に供給される電圧であり、
前記第2の電圧は、前記フォトダイオードのカソード
に供給される電圧であり、
前記制御回路が、前記フォトダイオードのアノード側の電位を変更するように構成されていることを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記第1の電圧は、前記フォトダイオードのカソードに供給される電圧であり、
前記第2の電圧は、前記フォトダイオードのアノードに供給される電圧であり、
前記制御回路が、前記フォトダイオードのカソード側の電位を変更するように構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記フォトダイオードを備える複数の画素を有し、
前記制御回路は、制御信号生成部を含み、
前記複数の画素に対して前記制御回路
の前記制御信号生成部が共通に接続されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記フォトダイオードが第1の半導体基板に配され、前記カウンタが第2の半導体基板に配され、
前記第1の半導体基板と、前記第2の半導体基板とが積層されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置から出力される信号を処理する信号処理部と
を有することを特徴とする撮像システム。
【請求項12】
移動体であって、
請求項1から10のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置からの信号に基づく視差画像から、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段と、
前記距離情報に基づいて前記移動体を制御する制御手段と
を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、撮像システム、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
アバランシェ増倍を行う受光部に入射する光子の数をデジタル的に計数し、その計数値をデジタル信号として画素から出力するフォトンカウント型の光電変換装置が知られている。特許文献1には、アバランシェ増倍を行うフォトダイオードがアバランシェ増倍を行った後、再びアバランシェ増倍を行うためにフォトダイオードをリチャージする動作を、所定の期間、休止する動作が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、入射光の輝度に対応した画素の消費電力の低減に関し検討が為されていないため、カウント値の増加に対応した休止動作の設定が為されていない。このため、例えば、高照度の光が画素に入射した場合など、アバランシェ増倍が頻繁に行われると、画素の消費電力が増加する課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の課題を鑑みて為されたものであり、一の態様は、アバランシェ増倍を行うフォトダイオードと、前記アバランシェ増倍によって生じるパルスを所定の期間にカウントし、カウント値を有するカウント信号を生成するカウンタと、前記フォトダイオードを、前記アバランシェ増倍が可能な待機状態と、前記アバランシェ増倍を休止する休止状態とに制御する制御回路と、を有し、前記制御回路は、前記カウント値が閾値に達する前の期間に比べて、前記カウント値が前記閾値に達した後の期間の方が、前記待機状態にある期間の長さに対する前記休止状態にある期間の長さの割合を多くする制御を行う回路であることを特徴とする光電変換装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、画素の消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による光電変換装置及びその駆動方法について、
図1乃至
図3を用いて説明する。
【0009】
図1は、本実施形態による光電変換装置の概略構成を示すブロック図である。
図2は、本実施形態による光電変換装置の画素の概略構成を示すブロック図である。
図3は、本実施形態による光電変換装置における画素の構成例を示す回路図である。
【0010】
本実施形態による光電変換装置100は、
図1に示すように、画素領域10と、垂直選択回路30と、信号処理回路40と、水平選択回路50と、出力回路60と、制御回路70と、を含む。
【0011】
画素領域10には、複数行及び列方向に渡ってマトリクス状に配された複数の画素Pが設けられている。
図1には、第0行から第5行までの6行と、第0列から第5列までの6列に配された36個の画素Pを、行番号及び列番号を示す符号とともに示している。例えば、第1行、第4列に配された画素Pには、「P14」の符号を付している。
【0012】
なお、画素領域10を構成する画素アレイの行数及び列数は、特に限定されるものではない。また、画素領域10には、必ずしも画素Pが2次元状に配されている必要はない。例えば、画素領域10は1つの画素Pにより構成されていてもよいし、画素領域10に画素Pが行方向又は列方向に1次元状に配されていてもよい。
【0013】
画素領域10の画素アレイの各行には、第1の方向(
図1において横方向)に延在して、制御線PVSELが配されている。制御線PVSELは、第1の方向に並ぶ画素Pにそれぞれ接続され、これら画素Pに共通の信号線をなしている。制御線PVSELの延在する第1の方向は、行方向或いは水平方向と表記することがある。なお、
図1には、制御線PVSELを、行番号を示す符号とともに表している。例えば、第1行の制御線には、「PVSEL[1]」の符号を付している。
【0014】
各行の制御線PVSELは、垂直選択回路30に接続されている。垂直選択回路30は、画素P内の信号生成回路(図示せず)を駆動するための制御信号を、制御線PVSELを介して画素Pに供給する回路部である。垂直走査回路30は、後述する、画素11が有するカウンタがカウントを積算する期間の開始、終了を制御する。
【0015】
画素領域10の画素アレイの各列には、第1の方向と交差する第2の方向(
図1において縦方向)に延在して、出力線POUTが配されている。出力線POUTは、第2の方向に並ぶ画素Pにそれぞれ接続され、これら画素Pに共通の信号線をなしている。出力線POUTの延在する第2の方向は、列方向或いは垂直方向と表記することがある。なお、
図1には、出力線POUTを、列番号を示す符号とともに表している。例えば、第4列の出力線には、「POUT4」の符号を付している。出力線POUTの各々は、nビットのデジタル信号を出力するためのn本の信号線を備えている。
【0016】
出力線POUTは、信号処理回路40に接続されている。信号処理回路40は、画素領域10の画素アレイの各列に対応してそれぞれ設けられており、対応する列の出力線POUTに接続されている。信号処理回路40は、対応する列の出力線POUTを介して画素Pから出力される信号を保持する機能を備える。画素Pから出力される信号は、出力線POUTのn本の信号線を介して入力されるnビットの信号であるため、信号処理回路40の各々は各ビットの信号を保持するため少なくともn個の保持部を有する。
【0017】
水平選択回路50は、信号処理回路40から信号を読み出すための制御信号を信号処理回路40に供給する回路部である。水平選択回路50は、各列の信号処理回路40に、制御線PHSELを介して制御信号を供給する。水平選択回路50から制御信号を受信した信号処理回路40は、保持部に保持している信号を、水平出力線HSIGを介して出力回路60へと出力する。なお、
図1には、制御線PHSELを、列番号を示す符号とともに表している。例えば、第4列の制御線には、「PHSEL[4]」の符号を付している。水平出力線HSIGは、nビットのデジタル信号を出力するためのn本の信号線を備えている。
【0018】
出力回路60は、水平出力線HSIGを介して供給された信号を、出力信号SOUTとして光電変換装置100の外部へ出力するための回路部である。制御回路70は、垂直選択回路30、信号処理回路40、水平選択回路50、出力回路60の動作やそのタイミングを制御する制御信号を供給するための回路部である。なお、垂直選択回路30、信号処理回路40、水平選択回路50、出力回路60の動作やそのタイミングを制御する制御信号の少なくとも一部は、光電変換装置100の外部から供給してもよい。
【0019】
各々の画素Pは、
図2に示すように、アバランシェ増倍型のフォトダイオードPDと、画素制御回路12、セレクタ13、PD制御回路14、波形生成回路15、カウンタ16を有する。
【0020】
なお、本明細書では、画素制御回路12を制御信号生成部、PD制御回路14をカソード電圧制御部と表記することがある。
【0021】
【0022】
画素制御回路12は、信号P1、P2、P3をセレクタ13に出力する。セレクタ13は、画素制御回路12から入力される信号P1、P2、P3のいずれかの信号を信号Pctrlとして、PD制御回路14に出力する。
【0023】
PD制御回路14は、電圧Vddと電圧Vssとの間の電気的経路において直列に接続されたPMOSトランジスタ、NMOSトランジスタを有する。電圧Vddは、本実施形態では3V程度の電圧としている。一方、電圧Vssは接地電圧、Vaは、-20V程度の電圧としている。なお、電圧Vdd、Vss、Vaは適宜変更される。
【0024】
このPMOSトランジスタ、NMOSトランジスタの各々のゲートには、信号Pctrlが入力される。PMOSトランジスタは、電圧Vcathがアバランシェ増倍によって低下した後、電圧Vcathを電圧Vdd近傍の電圧に戻すリチャージ動作を行うためのリチャージ回路である。電圧Vcathが電圧Vdd近傍の電圧に復帰することにより、フォトダイオードPDはアバランシェ増倍が可能な状態(アバランシェ増倍の待機状態)となる。なお、本明細書では、アバランシェ増倍の待機状態にある期間を待機期間、アバランシェ増倍を休止する状態にある期間を休止期間とする。
【0025】
PMOSトランジスタ、NMOSトランジスタが接続されるノードに、フォトダイオードPDのカソードと、波形生成回路15が接続される。
【0026】
フォトダイオードPDのアノード端子は、電圧Vaの電源ノードに接続されている。電圧Vaは、典型的には負の高電圧である。フォトダイオードPDのカソードは、PD制御回路14に接続されている。フォトダイオードPDのカソードの電圧を電圧Vcathと記載する。
【0027】
波形生成回路15は、SRラッチ回路151と、NOR回路152とを有する。SRラッチ回路151のS端子はフォトダイオードPDのカソードが接続され、電圧Vcathが入力される。R端子には信号Pctrlが入力される。NOR回路152の入力部は、フォトダイオードPDのカソードと、SRラッチ回路151とに接続される。NOR回路152には、電圧Vcathと、SRラッチ回路151が出力する信号Vlatを反転させた信号とが入力される。NOR回路152の出力部は、カウンタ16に接続される。カウンタ16は、所定の期間(垂直走査回路30によって設定される期間)、NOR回路152が出力する信号Ppのパルスをカウントし、積算する。このカウントを積算した結果であるカウント信号を、カウンタ16は信号POUTとして画素の外部に出力する。垂直走査回路30によって設定されるカウントの積算を行う積算期間は、例えば光電変換装置が出力する信号を用いて形成される画像の1フレームに対応する期間とすることができる。なお、別の形態としては、1フレームを複数のフィールドに分割し、この複数のフィールドのうちの1つのフィールドに対応する期間を、カウントの積算期間とすることもできる。カウンタ16は、積算期間の開始から終了までの期間、カウントの積算を行う。積算が終了し、信号POUTの読み出しが終了した後、カウンタ16のカウント信号は初期値にリセットされる。
【0028】
カウンタ16はセレクタ13にもまた接続されている。セレクタ13は、カウンタ16のカウント値が閾値に到達したか否かによって、信号Pctrlを信号P1~P3のいずれかとするかを切り替える。つまり、セレクタ13は、カウント信号に基づいて、信号P1~P3のどの信号を出力するかを切り替える制御回路である。このように、セレクタ13は、カウント信号に基づいて、アバランシェ増倍を行うための待機状態と、アバランシェ増倍を休止する休止状態とを切り替える選択回路である。
【0029】
フォトダイオードPDは、アノードとカソードとの間に印加される逆バイアス電圧がブレイクダウン電圧Vbd以上であるとき、光子の入射を受けてアバランシェ電流を発生する。フォトダイオードPDにアバランシェ電流が流れることにより、フォトダイオードPDのカソードの電圧Vcathが変化する。電圧Vcathの変化によって、波形整形回路15が出力する信号Ppの信号が変化し、カウンタ16へと光子検出パルスが出力される。
【0030】
セレクタ13が出力する信号PctrlがLowレベルである場合、PD制御回路14は電圧Vcathがアバランシェ電流によって低下すると、リチャージ動作を行う。つまり、PMOSトランジスタを介して電圧Vddのノードから電圧Vcathのノードに電流が流れ、電圧Vcathが上昇する。そして、再びフォトダイオードPDのアノード、カソード間の電圧がブレイクダウン電圧Vbd以上となる。これにより、フォトダイオードPDが再びアバランシェ増倍の動作を行うことができる状態となる。
【0031】
一方、信号PctrlがHighレベルの状態となると、電圧Vcathは、電圧Vss付近の値で一定となる。したがって、フォトダイオードPDはアバランシェ増倍を行わない休止状態となる。
【0032】
本実施形態では、カウンタ16のカウント値が閾値に達した時、セレクタ13が出力する信号Pctrlの信号レベルがLowレベルからHighレベルに遷移する動作を行う。そして、本実施形態の画素は、カウント値の増加に対応して、フォトダイオードPDのアバランシェ増倍の休止期間を長くする。
【0033】
図4は、本実施形態の画素の動作を示したフローチャートである。
【0034】
ステップS101では、不図示の制御回路がカウンタ16のカウント値を初期値にリセットする。典型的には、初期値は全てのビット値が0の値である。
【0035】
ステップS102では、現時刻が、カウンタ16がカウントを行うカウント期間内にある場合には、動作はステップS103に進む。一方、現時刻がカウント期間内にない場合には、動作は終了する。
【0036】
ステップS103では、カウンタ16が、信号Ppのパルスをカウントするカウント動作を行う。
【0037】
ステップS104では、カウンタ16のカウント値が閾値N1に達したか否かによって動作が分岐される。カウント値が閾値N1に達していない場合には、動作は再びステップS102に戻る。一方、カウント値が閾値N1に達した場合には、動作はステップS105に進む。
【0038】
ステップS105では、アバランシェ増倍のインターバルが間隔Int1にセットされる。後述するが、このインターバルの設定は、セレクタ13が、信号Pctrlとして出力する信号を信号P2に設定することによって行われる。別の言い方をすれば、アバランシェ待機期間同士の間に、長さInt1のアバランシェ休止期間が設けられる、とも言える。
【0039】
ステップS106では、現時刻が、カウンタ16がカウントを行うカウント期間内にある場合には、動作はステップS107に進む。一方、現時刻がカウント期間内にない場合には、動作はステップS113に進む。
【0040】
ステップS107では、カウンタ16が、信号Ppのパルスをカウントするカウント動作を行う。
【0041】
ステップS108では、カウンタ16のカウント値が閾値N2に達したか否かによって動作が分岐される。カウント値が閾値N2に達していない場合には、動作は再びステップS106に戻る。一方、カウント値が閾値N2に達した場合には、動作はステップS109に進む。
【0042】
ステップS109では、アバランシェ増倍のインターバルが、間隔Int1よりも長い間隔Int2にセットされる。後述するが、このインターバルの設定は、セレクタ13が、信号Pctrlとして出力する信号を信号P3に設定することによって行われる。別の言い方をすれば、アバランシェ増倍の待機期間同士の間に、長さInt2のアバランシェ休止期間が設けられる、とも言える。
【0043】
ステップS110では、現時刻が、カウンタ16がカウントを行うカウント期間内にある場合には、動作はステップS111に進む。一方、現時刻がカウント期間内にない場合には、動作はステップS113に進む。
【0044】
ステップS111では、カウンタ16が、信号Ppのパルスをカウントするカウント動作を行う。
【0045】
ステップS112では、現時刻が、カウンタ16がカウントを行うカウント期間内にある場合には、動作はステップS111に戻り、カウント動作を継続する。一方、現時刻がカウント期間内にない場合には、動作はステップS113に進む。
【0046】
ステップS113では、カウンタ16から、カウント値が信号POUTとして画素の外部に出力される。その後、動作は終了する。
【0047】
図5は、本実施形態の画素の動作を示したタイミング図である。
図5に記載した各信号は、
図3に記載した各信号に対応している。
【0048】
時刻t1において、セレクタ13は信号Pctrlとして信号P1を選択している。
【0049】
光子がフォトダイオードPDに入射すると、アバランシェ増倍が生じ、電圧Vcathは低下する。SRラッチ回路151のR端子に入力される信号PctrlがLowレベルであるため、S端子に入力される電圧Vcathのレベルによらず、信号VlatはHighレベルを維持する。
【0050】
NOR回路152には、信号Vlatを反転した信号、つまりLowレベルの信号が入力される。よって、電圧VcathがNOR回路152の論理閾値の電圧を下回った場合に、NOR回路152が出力する信号PpはHighレベルに変化する。一方、電圧Vcathがリチャージ動作によって、NOR回路152の論理閾値を上回った場合に、信号PpはLowレベルに変化する。
【0051】
カウンタ16は、信号PpがLowレベルからHighレベルに変化する都度、カウント値を1つずつ増加させる。
【0052】
時刻t2に、カウント値が閾値N1に到達する。カウント値が閾値N1に到達したことによって、セレクタ13は、信号Pctrlとして出力する信号として、信号P2を選択する。これにより信号Pctrlは、LowレベルからHighレベルに遷移してから、再びLowレベルに遷移するまでの間隔Int1を有する信号となる。
【0053】
前述したように、PD制御回路14は、信号PctrlがLowレベルである期間は、電圧Vcathの低下が生じると、電圧Vddに戻すリチャージ動作を行う。一方、信号PctrlがHighレベルである期間は、電圧Vcathは電圧Vss付近の電圧(Lowレベル)で一定となる。
【0054】
S端子に入力される電圧VcathがLowレベルであり、R端子に入力される信号PctrlがHighレベルである期間は、信号Vlatは、Lowレベルとなる。信号PctrlがLowレベルとなって、電圧VcathがHighレベルとなると、信号Vlatは再びHighレベルとなる。
【0055】
このように、カウント値が閾値N1に到達すると、フォトダイオードPDのアバランシェ増倍を間隔Int1の間、休止するようにする。
【0056】
時刻t2から時刻t3までの期間において、アバランシェ増倍を行う期間が占める割合と、アバランシェ増倍を休止する期間が占める割合は、ともに50%ずつとしている。つまり、第1の長さのアバランシェ待機期間と、同じ第1の長さのアバランシェ増倍の休止期間とが順次、交互に設定されている。
【0057】
その後、時刻t3にカウント値が閾値N2に到達する。カウント値が閾値N2に到達したことによって、セレクタ13は、信号Pctrlとして出力する信号として、信号P3を選択する。これにより信号Pctrlは、LowレベルからHighレベルに遷移してから、再びLowレベルに遷移するまでの間隔Int2を有する信号となる。
【0058】
フォトダイオードPDがアバランシェ増倍を休止する間隔が、間隔Int1から間隔Int2に伸びる他は、時刻t2から時刻t3までの動作と同じである。
【0059】
時刻t3以降の期間において、アバランシェ増倍を行う期間が占める割合は25%、アバランシェ増倍を休止する期間が占める割合は75%としている。つまり、第1の長さのアバランシェ待機期間と、第1の長さよりも長い第2の長さ(本実施形態では第1の長さの3倍)のアバランシェ増倍の休止期間とが順次、交互に設定されている。
【0060】
このように、本実施形態の光電変換装置は、カウント値の増加にしたがって、アバランシェ増倍を行う期間(待機期間)同士の間の間隔(すなわち休止期間の長さ)を長くする。別の言い方をすれば、カウント値が閾値に達する前の期間に比べて、カウント値が閾値に達した後の期間の方が、待機状態にある期間の長さに対する休止状態にある期間の長さの割合を多くする制御を行う。
【0061】
このようにして、本実施形態の光電変換装置は、高照度の光が入射した場合における、アバランシェ増倍を行う回数を減らす。これにより、画素の消費電力を低減することができる。
【0062】
なお、カウンタ16のカウント信号は、全てのビットがセレクタ13に出力される必要は無い。例えば、閾値に対応する最上位ビットの信号のみがセレクタ13に出力するように構成されていても良い。この構成の場合には、閾値に対応する最上位ビットの信号レベルが変化したことを受けて、セレクタ13は信号Pctrlとして出力する信号を変更するようにすればよい。
【0063】
また、別の例としては、カウンタ16のカウント値と閾値とを比較した結果を示す比較部を設けても良い。この比較部が出力する信号がセレクタ13に入力される。比較部が出力する信号の変化したことを受けて、セレクタ13は信号Pctrlとして出力する信号を変更するようにすればよい。
【0064】
次に、本実施形態の画素が出力する信号POUTの補正処理について説明する。
【0065】
図6は、フォトダイオードPDの光子入射数と、信号POUTの関係を示した図である。
【0066】
信号POUTが閾値N1に到達するまでは、光子入射数と信号POUTの傾きは、傾きaの関係となる。理想的には、フォトダイオードPDに入射したすべての光子を漏れなくカウンタ16がカウントしたとすれば、傾きaは1であって、光子数P1と閾値N1は一致する。
【0067】
信号POUTが閾値N1に到達すると、上述したように、第1の長さのアバランシェ待機期間と、同じ第1の長さのアバランシェ増倍の休止期間とが交互に設けられる。したがって、光子入射数に対する信号POUTの傾きは、a/2となる。なお、一般化すると、傾きa×アバランシェ待機期間の長さ/(アバランシェ待機期間の長さ+アバランシェ休止期間の長さ)となる。アバランシェ待機期間の長さ/(アバランシェ待機期間の長さ+アバランシェ休止期間の長さ)をnとすれば、傾きはa/nとなる。本実施形態は、nは2である。
【0068】
信号POUTが閾値N2に到達すると、上述したように、第1の長さのアバランシェ待機期間と、第1の長さよりも長い第2の長さ(本実施形態では第1の長さの3倍)のアバランシェ増倍の休止期間とが交互に設けられる。したがって、光子入射数に対する信号POUTの傾きは、a/4となる。なお、一般化すると傾きa×アバランシェ待機期間の長さ/(アバランシェ待機期間の長さ+アバランシェ休止期間の長さ)となる。アバランシェ待機期間の長さ/(アバランシェ待機期間の長さ+アバランシェ休止期間の長さ)をnとすれば、傾きはa/mとなる。本実施形態では、mは4である。
【0069】
信号POUTの補正処理は、カウント値Nxが閾値N1よりも大きい場合に行われる。本実施形態では、光子入射数に対する信号POUTの傾きが、傾きaとは異なる範囲にあるカウント値に対して、傾きaに合わせるように補正する。
【0070】
光子入射数Px(Pxは、P1<Px<P2を満たす)に対応する信号POUTのカウント値はNx1として得られる。この補正前のカウント値Nx1は、以下のように補正後のカウント値Nx2として補正される。
Nx2=n・Nx1-(n-1)・N1 ・・・(1)
ここで本実施形態ではn=2であるので、
Nx2=2Nx1-N1 ・・・(2)
となる。
【0071】
また、光子入射数Py(Pyは、P2<Pyを満たす)に対応する信号POUTのカウント値はNy1として得られる。この補正前のカウント値Ny1は、以下のように補正後のカウント値Ny2として補正される。
Ny2=m・Ny1-(m-n)・N2-(n-1)・N1 ・・・(3)
ここで本実施形態では、m=4、n=2であるので、
Ny2=4Ny1-2N2-N1 ・・・(4)
となる。
【0072】
このように補正することによって、
図6に示したように、光子入射数に対して傾きaの関係で対応した信号POUTを得ることができる。
【0073】
なお、この補正処理を行う補正部は、
図1に示した光電変換装置の信号処理回路22であっても良いし、出力回路60であっても良い。また、光電変換装置の外部に設けられた信号処理回路が、この補正処理を行う補正部であっても良い。
【0074】
このように、本実施形態の光電変換装置は、高照度の光が入射した場合において、アバランシェ増倍の回数を抑制することによって、画素の消費電力を低減することができる。また、画素が出力する信号POUTを補正することによって、フォトダイオードPDに入射した光子の数に対応したカウント値を得ることができる。
【0075】
なお、本実施形態では、アバランシェ休止期間の長さを2つの閾値N1、N2を用いて変更した。この例に限定されるものでは無く、閾値は1つのみであっても良いし、さらに多くても良い。さらに閾値を設ける場合には、
図6に示した、光子入射数と信号POUTの傾きが、1/2
nの関係になるように、アバランシェ待機期間と、アバランシェ休止期間とを設けることが好ましい。これは、
図6を参照しながら説明したカウント値の補正処理の演算を容易にすることができるためである。
【0076】
なお、本実施形態では、
図1に示したように、1つの半導体基板に画素11の構成の全てが設けられた構成として説明した。この例に限定されるものでは無く、第1の半導体基板にフォトダイオードPDを設け、別の第2の半導体基板に、カウンタ16を設ける。そして、第1の半導体基板と第2の半導体基板とを積層した積層センサとしても良い。なお、画素制御回路12、セレクタ13、PD制御回路14、波形整形回路15は、第1の半導体基板、第2の半導体基板のいずれかに設けるようにすればよい。
【0077】
別の一例としては、フォトダイオードPDが第1の半導体基板に設けられ、画素制御回路12、セレクタ13、PD制御回路14、波形整形回路15が第2の半導体基板に設けられる。この場合には、第1の半導体基板のフォトダイオードPDと、第2の半導体基板のPD制御回路14とが基板間の接続ノードを介して接続される。また、第1の半導体基板のフォトダイオードPDと、第2の半導体基板の波形整形回路15とが別の接続ノードを介して接続される。
【0078】
[第2実施形態]
本実施形態の光電変換装置について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0079】
図7は、本実施形態の画素11の構成を示した図である。本実施形態では、PD制御回路14の構成が第1実施形態と異なる。
【0080】
本実施形態のPD制御回路は、PMOSトランジスタ141とPMOSトランジスタ142をカスコード接続としている。PMOSトランジスタ141のゲートに入力される電圧Vqは、PMOSトランジスタ141のソース、ドレイン間を導通状態とする電圧である。PMOSトランジスタ142は、その寄生容量が、PMOSトランジスタ141の寄生容量よりも小さくなるように構成される。典型的には、PMOSトランジスタ142のサイズはPMOSトランジスタ141のサイズよりも小さい。トランジスタのサイズを小さくするには、例えば、ゲート長、ゲート幅の少なくとも一方を小さくするようにすればよい。
【0081】
そして、本実施形態では、フォトダイオードPDに接続されるPMOSトランジスタの寄生容量を、第1実施形態のPD制御回路14のPMOSトランジスタよりも小さくする。
【0082】
これにより、電圧Vcathがアバランシェ増倍により低下した後のリチャージ動作を高速化することができる。よって、第1実施形態に比べて、アバランシェ増倍が生じてから、再びアバランシェ増倍が可能になるまでの期間を短縮することができる。よって、光子がフォトダイオードPDに入射してもカウント値が増加しない、光子のカウント漏れを低減することができる。
【0083】
[第3実施形態]
本実施形態について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0084】
図8は、本実施形態の画素11の構成を示した図である。
【0085】
第1実施形態では、フォトダイオードPDのアバランシェ待機期間と休止期間の制御を、セレクタ13がPD制御回路14のPMOSトランジスタ(リチャージ素子)、NMOSトランジスタを制御して行っていた。本実施形態では、フォトダイオードPDのアノードの電位を制御することによって、フォトダイオードPDのアバランシェ待機期間と休止期間とを制御する。また、本実施形態では、波形整形回路15は、インバータ回路としている。
【0086】
本実施形態の動作は、第1実施形態と同じとすることができる。これにより、本実施形態の光電変換装置においても、第1実施形態の光電変換装置と同じ効果を得ることができる。
【0087】
[第4実施形態]
本実施形態について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0088】
図9は、本実施形態の光電変換装置が有する画素11の構成を示した図である。
【0089】
本実施形態の光電変換装置では、画素11のPD制御回路が、セレクタ145、PMOSトランジスタ146を有する。PMOSトランジスタ146のゲートに入力される電圧Vqは、PMOSトランジスタ146のソース、ドレイン間を導通状態とする電圧である。
【0090】
セレクタ145は、セレクタ13から信号Pctrlが入力される。セレクタ145は、信号PctrlがLowレベルの場合には電圧VddをPMOSトランジスタ146に出力する。セレクタ145は、信号PctrlがHighレベルの場合には電圧VssをPMOSトランジスタ146に出力する。したがって、第1実施形態と同じく、信号PctrlがLowレベルにある期間がアバランシェ待機期間である。また、第1実施形態と同じく、信号PctrlがHighレベルにある期間がアバランシェ増倍の休止期間である。
【0091】
本実施形態の光電変換装置の動作は、第1実施形態で説明した
図5と同じとすることができる。
【0092】
本実施形態においても、第1実施形態の光電変換装置と同じ効果を得ることができる。
【0093】
[第5実施形態]
本実施形態について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0094】
第1実施形態では、画素制御回路12は、複数の画素11のそれぞれが有していた。本実施形態では、複数の画素11で、1つの画素制御回路12を共有する。
【0095】
図10は、本実施形態の光電変換装置の画素部の構成を示した図である。1行に配された複数列の画素11が、1つの画素制御回路12を共有する。1行目の画素制御回路12は、対応する行の複数列の画素11に対し、信号P11、P12、P13を出力する。
【0096】
信号P11、P12、P13のそれぞれは順に、第1実施形態で説明した、信号P1、P2、P3のそれぞれと同じ信号である。本実施形態の光電変換装置の動作は、第1実施形態で説明した
図5の動作と同じとすることができる。
【0097】
このように、本実施形態では、複数の画素11で1つの画素制御回路12を共有している。これにより、第1実施形態に比べて、画素制御回路12の数を減らすことができるため、回路面積を低減することができる。
【0098】
なお、本実施形態では、1行複数列に配された複数の画素11で1つの画素制御回路12を共有するようにしたが、この例に限定されるものでは無く。別の例として、複数行1列に配された複数の画素11で1つの画素制御回路12を共有するようにしても良い。また、画素アレイを複数行複数列の複数の画素11をそれぞれが有する複数のブロックに分け、1つのブロックが含む複数の画素11が1つの画素制御回路12を共有するようにしても良い。
【0099】
なお、本実施形態の考え方は、第2~第4実施形態にも適用することができる。つまり、第2~第4実施形態のそれぞれに記載した画素制御回路12についても、複数の画素11で共有するようにしても良い。
【0100】
[第6実施形態]
本実施形態について、第5実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0101】
第5実施形態では、画素制御回路12が出力する信号を、信号P11~P13として複数の画素制御回路12において互いに同位相の信号を出力するようにしていた。本実施形態では、複数の画素制御回路12において、異なる位相の信号を出力するようにする。
【0102】
図11は、本実施形態の光電変換装置の画素部の構成を示した図である。
【0103】
本実施形態では、行位置を示す場合に明細書および図面において(n)を信号あるいは部材の符号の末尾に付す。(n)はn行目に対応する信号あるいは部材であることを示している。
【0104】
1行目の画素制御回路12(1)は信号P1(1)~P3(1)を、対応する行の複数列の画素11に出力する。
【0105】
2行目の画素制御回路12(2)は信号P1(2)~P3(2)を、対応する行の複数列の画素11に出力する。
【0106】
3行目の画素制御回路12(3)は信号P1(3)~P3(3)を、対応する行の複数列の画素11に出力する。
【0107】
図12は、本実施形態の画素11の動作を示した図である。
図12に示した各信号は、
図11で示した各信号に対応している。
【0108】
信号P1(1)、P1(2)、P1(3)は、Lowレベルで一定である。
【0109】
信号P2(1)、P2(2)、P2(3)は、周期が同じ信号である。信号P2(1)、P2(2)は、位相が逆位相の関係となっている。信号P2(1)、P2(3)は、同位相の信号である。
【0110】
信号P3(1)、P3(2)、P3(3)は周期が同じ信号である。信号P3(2)、P3(1)に対して、位相が遅れた(信号P2の半周期分)信号である。同じく、信号P3(3)は信号P3(2)に対して、位相が遅れた(信号P2の半周期分)信号である。信号P3(3)は信号P3(1)に対して信号P2の1周期分、位相が遅れた信号である。
【0111】
アバランシェ増倍によるアバランシェ電流によって、電圧Vddを供給するノードに電圧変動が生じる。アバランシェ増倍が同時に生じる画素11が増加するにつれて、電圧Vddの電位変動が増加する。これにより、PD制御回路14のリチャージ動作の遅延や、他の回路素子の誤動作や動作精度の低下が生じる。
【0112】
本実施形態では、ある行の画素制御回路12(n)の信号P2(n)と別の行の画素制御回路12(m)の信号P2(m)とで位相を異ならせている。これにより、信号P2(n)によってアバランシェ増倍が制御される画素11と、信号P2(m)によってアバランシェ増倍が制御される画素11とで、アバランシェ待機期間のタイミングを異ならせることができる。これにより、同時にアバランシェ増倍を生じさせる画素数を減らすことができ、電圧Vddの電位変動を抑制することができる。
【0113】
同じく、ある行の画素制御回路12(n)の信号P3(n)と別の行の画素制御回路12(m)の信号P3(m)とで位相を異ならせている。これにより、信号P3(n)によってアバランシェ増倍が制御される画素11と、信号P3(m)によってアバランシェ増倍が制御される画素11とで、アバランシェ待機期間のタイミングを異ならせることができる。
【0114】
このように、本実施形態の光電変換装置では、ある画素制御回路12と他の画素制御回路12が出力する信号の位相を異ならせる。これにより、同時にアバランシェ増倍を生じさせる画素数を減らすことができ、電圧Vddの電位変動を抑制することができる。
【0115】
なお、本実施形態では、一例として、信号P2(1)に対して信号P2(2)が半周期分、信号が遅延している例を説明したが、信号の遅延量は任意に選択できる。
【0116】
また、同様に、信号P3(1)に対する信号P3(2)の信号の遅延量もまた、本実施形態以外の遅延量を任意に選択できる。
【0117】
[第7実施形態]
本発明の第7実施形態による撮像システムについて、
図13を用いて説明する。
図13は、本実施形態による撮像システムの概略構成を示すブロック図である。
【0118】
上記第1乃至第6実施形態で述べた光電変換装置100は、種々の撮像システムに適用可能である。適用可能な撮像システムの例としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、監視カメラ、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星などが挙げられる。また、レンズなどの光学系と撮像装置とを備えるカメラモジュールも、撮像システムに含まれる。
図13には、これらのうちの一例として、デジタルスチルカメラのブロック図を例示している。
【0119】
図13に例示した撮像システム200は、撮像装置201、被写体の光学像を撮像装置201に結像させるレンズ202、レンズ202を通過する光量を可変にするための絞り204、レンズ202の保護のためのバリア206を有する。レンズ202及び絞り204は、撮像装置201に光を集光する光学系である。撮像装置201は、第1乃至第5実施形態のいずれかで説明した光電変換装置100であって、レンズ202により結像された光学像を画像データに変換する。
【0120】
撮像システム200は、また、撮像装置201より出力される出力信号の処理を行う信号処理部208を有する。信号処理部208は、撮像装置201が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換を行う。また、信号処理部208はその他、必要に応じて各種の補正、圧縮を行って画像データを出力する動作を行う。信号処理部208の一部であるAD変換部は、撮像装置201が設けられた半導体基板に形成されていてもよいし、撮像装置201とは別の半導体基板に形成されていてもよい。また、撮像装置201と信号処理部208とが同一の半導体基板に形成されていてもよい。
【0121】
撮像システム200は、更に、画像データを一時的に記憶するためのメモリ部210、外部コンピュータ等と通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)212を有する。更に撮像システム200は、撮像データの記録又は読み出しを行うための半導体メモリ等の記録媒体214、記録媒体214に記録又は読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)216を有する。なお、記録媒体214は、撮像システム200に内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。
【0122】
更に撮像システム200は、各種演算とデジタルスチルカメラ全体を制御する全体制御・演算部218、撮像装置201と信号処理部208に各種タイミング信号を出力するタイミング発生部220を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、撮像システム200は少なくとも撮像装置201と、撮像装置201から出力された出力信号を処理する信号処理部208とを有すればよい。
【0123】
撮像装置201は、撮像信号を信号処理部208に出力する。信号処理部208は、撮像装置201から出力される撮像信号に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。信号処理部208は、撮像信号を用いて、画像を生成する。
【0124】
このように、本実施形態によれば、第1乃至第6実施形態による光電変換装置100を適用した撮像システムを実現することができる。
【0125】
[第8実施形態]
本発明の第8実施形態による撮像システム及び移動体について、
図14を用いて説明する。
図14は、本実施形態による撮像システム及び移動体の構成を示す図である。
【0126】
図14(a)は、車載カメラに関する撮像システムの一例を示したものである。撮像システム300は、撮像装置310を有する。撮像装置310は、上記第1乃至第6実施形態のいずれかに記載の光電変換装置100である。撮像システム300は、撮像装置310により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部312と、撮像システム300により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差取得部314を有する。また、撮像システム300は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離取得部316と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部318と、を有する。ここで、視差取得部314や距離取得部316は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部318はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0127】
撮像システム300は車両情報取得装置320と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、撮像システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU330が接続されている。また、撮像システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置340とも接続されている。例えば、衝突判定部318の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU330はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置340は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
【0128】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を撮像システム300で撮像する。
図14(b)に、車両前方(撮像範囲350)を撮像する場合の撮像システムを示した。車両情報取得装置320が、撮像システム300ないしは撮像装置310に指示を送る。このような構成により、測距の精度をより向上させることができる。
【0129】
上記では、他の車両と衝突しないように制御する例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。更に、撮像システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0130】
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0131】
例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態である。
【0132】
また、上記第7及び第8実施形態に示した撮像システムは、本発明の光電変換装置を適用しうる撮像システム例を示したものであり、本発明の光電変換装置を適用可能な撮像システムは
図13及び
図14に示した構成に限定されるものではない。
【0133】
なお、上記実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0134】
12 画素制御回路
13 セレクタ(制御回路)
14 PD制御回路
15 波形生成回路
16 カウンタ