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特許7459342画像処理装置、内視鏡システム、画像処理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】画像処理装置、内視鏡システム、画像処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20240325BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
A61B1/045 610
A61B1/00 511
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023060973
(22)【出願日】2023-04-04
(62)【分割の表示】P 2019049084の分割
【原出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2023076608
(43)【公開日】2023-06-01
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】313009556
【氏名又は名称】ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 陽久
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/101128(WO,A1)
【文献】特開2017-153748(JP,A)
【文献】特開2015-029841(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230095(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/022324(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリおよびハードウェアからなる少なくとも1つ以上のプロセッサを備える画像処理装置であって、
前記プロセッサは、
被検体からの蛍光を撮像して得られる蛍光観察画像情報が入力され、前記蛍光観察画像情報の明るさを取得し、
前記蛍光観察画像情報に対して画素の画素値を増幅する第1のゲイン処理を行い、
前記第1のゲイン処理が行われた前記蛍光観察画像情報に対して、所定の閾値よりも低い画素の画素値を低減させる低減処理を行い、
前記明るさに応じて前記第1のゲイン処理におけるゲイン量を変更し、
前記明るさが第1の明るさであるときに、前記第1のゲイン処理におけるゲイン量を第1のゲイン量に設定し、かつ、前記低減処理における前記所定の閾値を第1の閾値に設定して前記低減処理を行い、
前記明るさが前記第1の明るさよりも暗い第2の明るさであるときに、前記第1のゲイン処理における前記ゲイン量を、前記第1のゲイン量よりも大きい第2のゲイン量に設定し、かつ、前記低減処理における前記所定の閾値を前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値に設定して前記低減処理を行う、
画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記プロセッサは、
前記明るさが小さいほど、前記第1のゲイン処理におけるゲイン量を大きくし、
前記ゲイン量が大きいほど、前記所定の閾値を大きくすることによって前記低減処理を行う、
画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記プロセッサは、
画素値をパラメータとする関数またはルックアップテーブルにより前記所定の閾値よりも低い画素の画素値を低減させる前記低減処理を行う、
画像処理装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一つに記載の画像処理装置であって、
前記プロセッサは、
前記被検体からの反射光を撮像して得られる複数の画素を有する被検体観察画像情報に対して、前記被検体観察画像情報が有する複数の画素の画素値を増幅する第2のゲイン処理を行い、かつ、前記低減処理を行わず外部へ出力する、
画像処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記プロセッサは、
前記蛍光観察画像情報の画素値から所定の閾値を減算することによって、前記低減処理を行う、
画像処理装置。
【請求項6】
請求項4に記載の画像処理装置であって、
前記被検体観察画像情報が有する複数の画素の画素値から前記被検体観察画像情報の明るさを検出し、
前記被検体観察画像情報の明るさが小さいほど、前記第2のゲイン処理におけるゲイン量を大きくする、
画像処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記蛍光観察画像情報は、
所定の波長帯域を有する励起光が照射されることで蛍光を発する薬剤が投与された被検体からの蛍光を撮像して得られる複数の画素を有する薬剤観察画像情報であり、
前記プロセッサは、
前記薬剤観察画像情報における前記複数の画素の画素値から前記薬剤観察画像情報の明るさを取得し、
前記薬剤観察画像情報に対して前記複数の画素の画素値を増幅する前記第1のゲイン処理を行い、
前記第1のゲイン処理が行われた前記薬剤観察画像情報に対して、前記低減処理を行い、
前記明るさが小さいほど、前記第1のゲイン処理におけるゲイン量を大きくし、
前記ゲイン量が大きいほど、前記所定の閾値を大きくすることによって前記低減処理を行う、
画像処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載の画像処理装置と、
被検体に挿入可能であり、観察像を結像する光学系を有する挿入部と、
前記挿入部を介して、前記観察像を撮像することによって撮像信号を生成する撮像部が配置された撮像装置と、
前記挿入部を介して、少なくとも前記被検体に赤外光を出射する光源装置と、
を備え、
前記プロセッサは、
前記撮像信号が前記蛍光観察画像情報として入力される、
内視鏡システム。
【請求項9】
メモリおよびハードウェアからなる少なくとも1つ以上のプロセッサを備える画像処理装置が実行する画像処理方法であって、
前記プロセッサが、
被検体からの蛍光を撮像して得られる蛍光観察画像情報が入力され、前記蛍光観察画像情報の明るさを取得し、
前記蛍光観察画像情報に対して画素の画素値を増幅する第1のゲイン処理を行い、
前記第1のゲイン処理が行われた前記蛍光観察画像情報に対して、所定の閾値よりも低い画素の画素値を低減させる低減処理を行い、
前記明るさに応じて前記第1のゲイン処理におけるゲイン量を変更し、
前記明るさが第1の明るさであるときに、前記第1のゲイン処理におけるゲイン量を第1のゲイン量に設定し、かつ、前記低減処理における前記所定の閾値を第1の閾値に設定して前記低減処理を行い、
前記明るさが前記第1の明るさよりも暗い第2の明るさであるときに、前記第1のゲイン処理における前記ゲイン量を、前記第1のゲイン量よりも大きい第2のゲイン量に設定し、かつ、前記低減処理における前記所定の閾値を前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値に設定して前記低減処理を行う、
画像処理方法。
【請求項10】
メモリおよびハードウェアからなる少なくとも1つ以上のプロセッサを備える画像処理装置が実行するプログラムであって、
前記プロセッサに、
被検体からの蛍光を撮像して得られる蛍光観察画像情報が入力され、前記蛍光観察画像情報の明るさを取得させ、
前記蛍光観察画像情報に対して画素の画素値を増幅する第1のゲイン処理を行い、
前記第1のゲイン処理が行われた前記蛍光観察画像情報に対して、所定の閾値よりも低い画素の画素値を低減させる低減処理を行わせ、
前記明るさに応じて前記第1のゲイン処理におけるゲイン量を変更させ、
前記明るさが第1の明るさであるときに、前記第1のゲイン処理におけるゲイン量を第1のゲイン量に設定し、かつ、前記低減処理における前記所定の閾値を第1の閾値に設定して前記低減処理を行わせ、
前記明るさが前記第1の明るさよりも暗い第2の明るさであるときに、前記第1のゲイン処理における前記ゲイン量を、前記第1のゲイン量よりも大きい第2のゲイン量に設定し、かつ、前記低減処理における前記所定の閾値を前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値に設定して前記低減処理を行わせる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬剤観察画像情報に対して画像処理を行う画像処理装置、画像処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡では、白色画像および蛍光画像の各々に対して、画像処理を行うプロセッサに出力する前段階で、互いに異なるノイズ除去度合いでノイズ除去を行うことで、画質の劣化を防止する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。この技術では、白色画像の場合と比べて、蛍光画像の場合、ノイズ除去度合いを大きくするとともに、時間的に連続する複数の蛍光画像の各々に重み付け係数を乗算した後に平均化を行うことによってノイズ除去を行う。また、白色画像や蛍光画像の各画素において近傍画素の画素値との平均値を算出することでノイズ除去を行う技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-95525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1では、ノイズの平均化を行うまでに時間的に連続する複数の蛍光画像が必要となるため、動画像としての応答性が悪くなることで、残像が目に付くという問題点があった。
【0005】
また、上述した従来の各画素において近傍画素の画素値との平均値を算出する方法では、解像度の低下を招くという問題点もあった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、解像度の低下を抑制するとともに、残像が目に付くことを防止することができる画像処理装置、画像処理方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る画像処理装置は、メモリおよびハードウェアからなる少なくとも1つ以上のプロセッサを備える画像処理装置であって、前記プロセッサは、所定の波長帯域を有する励起光が照射されることで蛍光を発する薬剤が投与された被検体からの蛍光を撮像して得られる複数の画素を有する薬剤観察画像情報が入力され、前記薬剤観察画像情報に対して前記複数の画素の画素値を増幅する第1のゲイン処理を行い、前記第1のゲイン処理が行われた前記薬剤観察画像情報に対して、所定の閾値よりも低い画素の画素値を低減させる低減処理を行う。
【0008】
また、本開示に係る画像処理装置は、上記開示において、前記プロセッサは、前記薬剤観察画像情報における前記複数の画素の画素値から前記薬剤観察画像情報の明るさを検出し、前記明るさが小さいほど、前記第1のゲイン処理におけるゲイン量を大きくし、前記ゲイン量が大きいほど、前記所定の閾値を大きくすることによって前記低減処理を行う。
【0009】
また、本開示に係る画像処理装置は、上記開示において、前記プロセッサは、画素値をパラメータとする関数またはルックアップテーブルにより前記所定の閾値よりも低い画素の画素値を低減させる前記低減処理を行う。
【0010】
また、本開示に係る画像処理装置は、上記開示において、前記プロセッサは、前記被検体からの反射光を撮像して得られる複数の画素を有する被検体観察画像情報に対して、前記被検体観察画像情報が有する複数の画素の画素値を増幅する第2のゲイン処理を行い、かつ、前記低減処理を行わず外部へ出力する。
【0011】
また、本開示に係る画像処理装置は、上記開示において、前記被検体観察画像情報が有する複数の画素の画素値から前記被検体観察画像情報の明るさを検出し、前記被検体観察画像情報の明るさが小さいほど、前記第2のゲイン処理におけるゲイン量を大きくする。
【0012】
また、本開示に係る画像処理方法は、メモリおよびハードウェアからなる少なくとも1つ以上のプロセッサを備える画像処理装置が実行する画像処理方法であって、前記プロセッサが、所定の波長帯域を有する励起光が照射されることで蛍光を発する薬剤が投与された被検体からの蛍光を撮像して得られる複数の画素を有する薬剤観察画像情報が入力され、前記薬剤観察画像情報に対して前記複数の画素の画素値を増幅する第1のゲイン処理を行い、前記第1のゲイン処理が行われた前記薬剤観察画像情報に対して、所定の閾値よりも低い画素の画素値を低減させる低減処理を行う。
【0013】
また、本開示に係るプログラムは、メモリおよびハードウェアからなる少なくとも1つ以上のプロセッサを備える画像処理装置が実行するプログラムであって、前記プロセッサに、所定の波長帯域を有する励起光が照射されることで蛍光を発する薬剤が投与された被検体からの蛍光を撮像して得られる複数の画素を有する薬剤観察画像情報が入力され、前記薬剤観察画像情報に対して、前記複数の画素の画素値を増幅する第1のゲイン処理を行わせ、前記第1のゲイン処理が行われた前記薬剤観察画像情報に対して、所定の閾値よりも低い画素の画素値を低減させる低減処理を行わせる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、解像度の低下を抑制するとともに、残像が目に付くことを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施の形態1に係る内視鏡システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態1に係る内視鏡システムが備える光源装置、カメラヘッドおよび制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態1に係る制御装置が実行する処理の概要を示すフローチャートである。
図4図4は、実施の形態1に係る低減処理部が行う低減処理前の薬剤観察画像情報における所定の水平ラインにおける各画素の画素値を模式的に示す図である。
図5図5は、実施の形態1に係る低減処理部が行う低減処理後の薬剤観察画像情報における所定の水平ラインにおける各画素の画素値を模式的に示す図である。
図6図6は、実施の形態1に係る低減処理部が低減処理を行った薬剤観察画像情報を模式的に示す図である。
図7図7は、実施の形態1に係る低減処理部が低減処理を行っていない薬剤観察画像情報を模式的に示す図である。
図8図8は、被検体観察画像情報に低減処理部が低減処理を行った薬剤観察画像情報を重畳した重畳画像を模式的に示す図である。
図9図9は、被検体観察画像情報に低減処理部が低減処理を行っていない薬剤観察画像情報を重畳した重畳画像を模式的に示す図である。
図10図10は、実施の形態1の変形例に係るγ補正部が行う通常のγ補正のトーンカーブを模式的に示す図である。
図11図11は、実施の形態1の変形例に係るγ補正部が行うγ補正のトーンカーブを模式的に示す図である。
図12図12は、実施の形態1の変形例に係るγ補正部が行う別のγ補正のトーンカーブを模式的に示す図である。
図13図13は、実施の形態2に係る内視鏡システムの概略構成を示す図である。
図14図14は、実施の形態3に係る手術用顕微鏡システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を図面とともに詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により、本開示が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本開示の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示しているに過ぎない。即ち、本開示は、各図で例示された形状、大きさ、および位置関係のみに限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付して説明する。さらにまた、本開示に係る医療用観察システムの一例として、内視鏡システムについて説明する。また、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付して説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る内視鏡システムの概略構成を示す図である。図1に示す内視鏡システム1は、医療分野に用いられ、人や動物の生体等の被検体の内部(生体内)に挿入され、内部を撮像した画像を表示することによって被検体を観察する装置である。なお、実施の形態1では、内視鏡システム1として、図1に示す硬性鏡(挿入部2)を用いた硬性内視鏡システムについて説明するが、これに限定されることなく、例えば軟性内視鏡システムであってもよい。
【0018】
図1に示す内視鏡システム1は、挿入部2(内視鏡)と、光源装置3と、ライトガイド4と、カメラヘッド5(内視鏡用撮像装置)と、第1の伝送ケーブル6と、表示装置7と、第2の伝送ケーブル8と、制御装置9と、第3の伝送ケーブル10と、を備える。
【0019】
挿入部2は、硬質または少なくとも一部が軟性で細長形状を有し、患者等の被検体内に挿入される。挿入部2の内部には、1または複数のレンズを用いて構成され、観察像を結合する光学系が設けられている。
【0020】
光源装置3は、ライトガイド4の一端が接続される。光源装置3は、制御装置9による制御のもと、ライトガイド4の一端に被検体内を照明するための白色光、被検体に投与または散布された薬剤に励起光または赤外光を出射(供給)する。光源装置3は、LED(Light Emitting Diode)光源やLD(Laser Diode)等の半導体レーザ素子を用いて構成される。光源装置3と制御装置9とは、図1に示すように個別で通信する構成をしてもよいし、一体化した構成であってもよい。
【0021】
ライトガイド4は、一端が光源装置3に着脱自在に接続され、かつ、他端が挿入部2に着脱自在に接続される。ライトガイド4は、光源装置3から出射された光を一端から他端に導光し、挿入部2へ供給する。
【0022】
カメラヘッド5は、挿入部2の接眼部21が着脱自在に接続される。カメラヘッド5は、制御装置9の制御のもと、挿入部2によって結像された観察像を撮像することによって撮像信号を生成し、この撮像信号(電気信号)を出力する。また、カメラヘッド5は、円周方向に回転可能に設けられた操作リング部51と、内視鏡システム1の各種の操作を指示する指示信号の入力を受け付ける複数の入力部52と、を備える。
【0023】
第1の伝送ケーブル6は、一端が第1のコネクタ部61を介して制御装置9に着脱自在に接続され、他端が第2のコネクタ部62を介してカメラヘッド5に接続される。第1の伝送ケーブル6は、カメラヘッド5から出力される撮像信号を制御装置9へ伝送し、かつ、制御装置9から出力される制御信号、同期信号、クロック信号および電力等をカメラヘッド5へ伝送する。
【0024】
表示装置7は、第2の伝送ケーブル8を介して制御装置9に接続可能であり、制御装置9の制御のもと、制御装置9において処理された薬剤観察画像情報または被検体観察画像情報に基づく表示画像を表示する。
【0025】
第2の伝送ケーブル8は、一端が表示装置7に着脱自在に接続され、他端が制御装置9に着脱自在に接続される。第2の伝送ケーブル8は、制御装置9において処理された薬剤観察画像情報または被検体観察画像情報に基づく表示画像を表示装置7に伝送する。
【0026】
制御装置9は、メモリと、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)およびFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを有するプロセッサを用いて構成され、メモリに記録されたプログラムに従って、第1の伝送ケーブル6、第2の伝送ケーブル8および第3の伝送ケーブル10の各々を介して、光源装置3、カメラヘッド5および表示装置7の動作を統括的に制御する。
【0027】
第3の伝送ケーブル10は、一端が光源装置3に着脱自在に接続され、他端側が制御装置9に着脱自在に接続される。第3の伝送ケーブル10は、制御装置9からの制御信号を光源装置3に伝送する。
【0028】
〔光源装置、カメラヘッドおよび制御装置の詳細な構成〕
次に、光源装置3、カメラヘッド5および制御装置9の機能構成について説明する。図2は、内視鏡システム1が備える光源装置3、カメラヘッド5および制御装置9の機能構成を示すブロック図である。なお、図2においては、説明の便宜上、挿入部2、ライトガイド4、第1の伝送ケーブル6、第2の伝送ケーブル8および第3の伝送ケーブル10を省略している。
【0029】
〔光源装置の構成〕
まず、光源装置3の構成について説明する。
光源装置3は、第1の光源部31と、第2の光源部32と、光源制御部33と、を備える。
【0030】
第1の光源部31は、パルス発光可能であり、挿入部2を介して被検体に照射される白色光を発光することによって挿入部2へ供給する。具体的には、第1の光源部31は、光源制御部33の制御のもと、被検体からの反射光を撮像する被検体観察モードの白色光を発光することによって挿入部2へ供給する。第1の光源部31は、赤色(波長帯域600nm~700nm)の光を照射可能な赤色の半導体レーザ素子と、青色(波長帯域400nm~500nm)の光を照射可能な青色の半導体レーザ素子と、緑色(波長帯域500nm~600nm)の光を照射可能な緑色の半導体レーザ素子と、を用いて構成される。なお、第1の光源部31は、赤色、青色および緑色の半導体レーザ素子を用いて構成しているが、これに限定されることなく、白色光を照射可能な白色の半導体レーザ素子を用いてもよい。また、第1の光源部31は、パルス発光ができれば、半導体レーザ素子である必要はなく、例えば発光LED(Light Emitting Diode)等であってもよい。
【0031】
第2の光源部32は、パルス発光可能であり、挿入部2を介して被検体に照射される赤外光を発光する。具体的には、第2の光源部32は、光源制御部33の制御のもと、被検体に投入された薬剤(蛍光物質)を励起させ、薬剤の発光を撮像する薬剤観察モードの赤外光(波長帯域700~1000nm)を発光することによって挿入部2へ供給する。第2の光源部32は、蛍光物質を励起する光(700~1000nm)を照射可能な半導体レーザ素子と所定の波長帯域のみを透過させるフィルタ等を用いて構成される。なお、以下においては、第2の光源部32が発光する光を赤外光として説明するが、これに限定されることなく、例えば、ヘマトポルフィリン誘導体等の光感受性物質を腫瘍組織に予め蓄積させて蛍光を観察させるPDD(Photo Dynamic Diagnosis)観察に用いられる光(波長帯域405nm近傍)、およびコラーゲン等の蛍光物質からの自家発光を観察するAFI(Auto Fluorescence Imaging)観察に用いられる光(波長帯域390~470nm+波長帯域540~560nm)等であってもよい。
【0032】
光源制御部33は、制御装置9の制御のもと、第1の光源部31および第2の光源部32の発光を制御する。光源制御部33は、メモリと、CPU、ASIC、FPGA等のハードウェアを有するプロセッサを用いて構成される。
【0033】
〔カメラヘッドの構成〕
次に、カメラヘッド5の構成について説明する。
カメラヘッド5は、レンズユニット501と、撮像部502と、通信モジュール503と、カメラヘッドメモリ504と、カメラヘッド制御部505と、を備える。
【0034】
レンズユニット501は、1または複数のレンズを用いて構成され、撮像部502の受光面に被写体像を結像する。また、レンズユニット501は、カメラヘッド制御部505の制御のもと、図示しない駆動部がレンズを光軸方向に沿って移動させることによって焦点位置を変化させるAF(Auto Focus)および焦点距離を変化させる光学ズームを行う。なお、本実施の形態1では、レンズユニット501に絞り機構および光軸上に挿脱可能な光学フィルタ機構を設けてもよい。
【0035】
撮像部502(撮像素子)は、カメラヘッド制御部505の制御のもと、挿入部2およびレンズユニット501が結像した被写体像を受光して光電変換を行うことによって撮像信号(RAWデータ)を生成し、この撮像信号を通信モジュール503へ出力する。撮像部502は、第2の光源部32が被検体に投与された薬剤に赤外光を照射することによって撮像する薬剤観察モード時に生成した撮像信号を薬剤観察画像情報として通信モジュール503へ出力する。また、撮像部502は、第1の光源部31が被検体に照射し、被検体からの反射光を撮像する被検体観察モード時に生成した撮像信号を被検体観察画像情報として通信モジュール503へ出力する。撮像部502は、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等用いて構成される。
【0036】
通信モジュール503は、第1の伝送ケーブル6を介して制御装置9から送信された各種の信号をカメラヘッド5内の各部に出力する。また、通信モジュール503は、第1の伝送ケーブル6を介して、撮像部502が生成した薬剤観察画像情報、被検体観察画像情報、カメラヘッド5の現在の状態に関する情報等に対してパラレルシリアル変換処理等を行って制御装置9へ出力する。
【0037】
カメラヘッドメモリ504は、カメラヘッド5を識別するカメラヘッド情報およびカメラヘッド5が実行する各種のプログラムを記憶する。ここで、カメラヘッド情報には、撮像部502の画素数、画素ピッチおよびカメラヘッド5の識別ID等が含まれる。カメラヘッドメモリ504は、揮発性メモリおよび不揮発性メモリ等を用いて構成される。
【0038】
カメラヘッド制御部505は、通信モジュール503から入力された各種信号に基づいて、カメラヘッド5を構成する各部の動作を制御する。カメラヘッド制御部505は、メモリとCPU等のハードウェアを有するプロセッサを用いて構成される。
【0039】
〔制御装置の構成〕
次に、制御装置9の構成について説明する。
制御装置9は、通信モジュール91と、信号処理部92と、画像処理部93と、入力部94と、メモリ95と、出力部96と、制御部97と、を備える。
【0040】
通信モジュール91は、カメラヘッド5から入力された撮像信号を含む各種信号を制御部97や信号処理部92へ出力する。また、通信モジュール91は、制御部97から入力された各種信号をカメラヘッド5へ送信する。具体的には、通信モジュール91は、制御部97から入力された信号に対してパラレルシリアル変換処理等を行ってカメラヘッド5へ出力する。さらに、通信モジュール91は、カメラヘッド5から入力された信号に対して、シリアルパラレル変換処理等を行って制御装置9を構成する各部に出力する。
【0041】
信号処理部92は、通信モジュール91を介してカメラヘッド5から入力された薬剤観察画像情報または被検体観察画像情報に対して、ノイズ低減処理やA/D変換処理等の信号処理を行って画像処理部93へ出力する。
【0042】
画像処理部93は、制御部97の制御のもと、信号処理部92から入力される薬剤観察画像情報または被検体観察画像情報に対して、各種の画像処理を行って表示装置7へ出力する。ここで、所定の画像処理としては、補間処理、色補正処理、色強調処理および輪郭強調処理等の各種の公知の画像処理である。画像処理部93は、メモリと、GPU、FPGAまたはCPU等のハードウェアを有するプロセッサと、を用いて構成される。また、実施の形態1では、画像処理部93が画像処理装置として機能する。また、画像処理部93は、少なくとも、検出部931と、クランプ処理部932と、ゲイン調整部933と、低減処理部934と、γ補正部935と、重畳部936と、を有する。
【0043】
検出部931は、信号処理部92から入力される薬剤観察画像情報または被検体観察画像情報の各々の明るさを検出し、この検出結果を制御部97へ出力する。具体的には、検出部931は、薬剤観察画像情報における複数の画素の画素値から薬剤観察画像情報の明るさとして制御部97へ出力するとともに、被検体観察画像情報における複数の画素の画素値から被検体観察画像情報の明るさとして制御部97へ出力する。具体的には、検出部931は、薬剤観察画像情報の各画素の輝度値の平均値を薬剤観察画像情報の明るさとして制御部97へ出力するとともに、被検体観察画像情報の各画素の輝度値の平均値を被検体観察画像情報の明るさとして制御部97へ出力する。
【0044】
クランプ処理部932は、制御部97の制御のもと、信号処理部92から入力される薬剤観察画像情報または被検体観察画像情報に対して、黒レベルを固定するクランプ処理を行ってゲイン調整部933へ出力する。
【0045】
ゲイン調整部933は、制御部97の制御のもと、薬剤観察画像情報に対して、薬剤観察画像情報を構成する複数の画素の画素値を増幅する第1のゲイン処理を行って低減処理部934へ出力する。具体的には、ゲイン調整部933は、制御部97の制御のもと、検出部931が検出した薬剤観察画像情報の明るさが小さいほど、薬剤観察画像情報に対して、薬剤観察画像情報を構成する複数の画素の画素値を増幅する第1のゲイン処理におけるゲイン量を大きくして低減処理部934へ出力する。また、ゲイン調整部933は、制御部97の制御のもと、被検体観察画像情報を構成する複数の画素の画素値を増幅する第2のゲイン処理を行ってγ補正部935へ出力する。具体的には、ゲイン調整部933は、制御部97の制御のもと、検出部931が検出した被検体観察画像情報の明るさが小さいほど、被検体観察画像情報を構成する複数の画素の画素値を増幅する第2のゲイン処理におけるゲイン量を大きくしてγ補正部935へ出力する。
【0046】
低減処理部934は、低減処理部934は、制御部97の制御のもと、ゲイン調整部933によって第1のゲイン処理を行った薬剤観察画像情報に対して、所定の閾値よりも低い画素の画素値を低減させる低減処理を行う。具体的には、低減処理部934は、ゲイン調整部933による第1のゲイン処理のゲイン量が大きいほど、所定の閾値を大きくし、薬剤観察画像情報の各画素の画素値から所定の閾値を減算することによって、所定の閾値よりも低い画素の画素値を低減する。
【0047】
γ補正部935は、制御部97の制御のもと、低減処理部934によって低減処理が行われた薬剤観察画像情報に対して、γ補正処理を行って表示装置7または重畳部936へ出力する。また、γ補正部935は、制御部97の制御のもと、ゲイン調整部933によって第2のゲイン処理が行われた被検体観察画像情報に対して、γ補正処理を行って表示装置7へ出力する。
【0048】
重畳部936は、制御部97の制御もと、被検体観察画像情報に薬剤観察画像情報を重畳して表示装置7へ出力する。
【0049】
入力部94は、キーボード、マウスおよびタッチパネル等を用いて構成される。入力部94は、ユーザの操作による各種情報の入力を受け付ける。
【0050】
メモリ95は、揮発性メモリ、不揮発性メモリおよびフレームメモリ等を用いて構成される。メモリ95は、内視鏡システム1が実行する各種のプログラムや処理中に使用される各種のデータを記憶する。なお、メモリ95は、制御装置9に対して装着自在なメモリカード等をさらに備えてもよい。
【0051】
出力部96は、スピーカ、プリンタおよびディスプレイ等を用いて構成される。出力部96は、内視鏡システム1に関する各種情報を出力する。
【0052】
制御部97は、内視鏡システム1を構成する各部を統括的に制御する。制御部97は、メモリおよびCPU等のハードウェアを用いて構成される。
【0053】
〔制御装置の処理〕
次に、制御装置9が実行する処理について説明する。図3は、制御装置9が実行する処理の概要を示すフローチャートである。
【0054】
図3に示すように、まず、制御部97は、通信モジュール91を介してカメラヘッド5からカメラヘッド情報、およびメモリ95から内視鏡システム1の現在の観察モードを示す観察モード情報を取得する(ステップS101)。
【0055】
続いて、制御部97は、内視鏡システム1が薬剤観察モードに設定されているか否かを判断する(ステップS102)。制御部97によって内視鏡システム1が薬剤観察モードに設定されていると判断された場合(ステップS102:Yes)、制御装置9は、後述するステップS103へ移行する。これに対して、制御部97によって内視鏡システム1が薬剤観察モードに設定されていないと判断された場合(ステップS102:No)、制御装置9は、後述するステップS114へ移行する。なお、制御部97は、入力部94から入力される観察モードを指示する指示信号に応じて、内視鏡システム1が薬剤観察モードに設定されているか否かを判断してもよい。
【0056】
ステップS103において、画像処理部93は、制御部97の制御のもと、通信モジュール503、通信モジュール91および信号処理部92を介して、第2の光源部32が赤外光を照射することによって撮像部502が被検体に投与された薬剤からの発光を撮像して生成した薬剤観察画像情報を取得する。
【0057】
続いて、検出部931は、制御部97の制御のもと、薬剤観察画像情報の明るさを検出する(ステップS104)。具体的には、検出部931は、薬剤観察画像情報の各画素の画素値(出力値)の平均値を薬剤観察画像情報の明るさとして検出し、この検出結果を薬剤観察画像情報の明るさ情報として制御部97へ出力する。
【0058】
その後、クランプ処理部932は、制御部97の制御のもと、薬剤観察画像情報に対して、黒レベルを固定するクランプ処理を行う(ステップS105)。具体的には、クランプ処理部932は、薬剤観察画像情報に含まれるオプティカルブラック領域(撮像部502の遮光領域)の出力値(画素値)に基づいて、黒レベルを示すクランプ値が目標値となるように調整し、この調整したクランプ値に基づいた薬剤観察画像情報をゲイン調整部933へ出力する。
【0059】
図3に戻り、ステップS106以降の説明を続ける。
ステップS106において、ゲイン調整部933は、制御部97の制御のもと、検出部931が検出した薬剤観察画像情報の明るさ情報に基づいて、薬剤観察画像情報の各画素の画素値(出力値)を増幅する第1のゲイン処理を行う。具体的には、ゲイン調整部933は、薬剤観察画像情報の明るさが小さいほど、ゲイン処理におけるゲイン量を大きくすることによって薬剤観察画像情報の各画素の画素値を増幅する第1のゲイン処理を行う。
【0060】
続いて、低減処理部934は、制御部97の制御のもと、ゲイン調整部933によって第1のゲイン処理が行われた薬剤観察画像情報に対して、所定の閾値よりも低い画素の画素値を低減させる低減処理を行う(ステップS107)。
【0061】
図4は、低減処理部934が行う低減処理前の薬剤観察画像情報における所定の水平ラインにおける各画素の画素値を模式的に示す図である。図5は、低減処理部934が行う低減処理後の薬剤観察画像情報における所定の水平ラインにおける各画素の画素値を模式的に示す図である。図6は、低減処理部934が低減処理を行った薬剤観察画像情報を模式的に示す図である。図7は、低減処理部934が低減処理を行っていない薬剤観察画像情報を模式的に示す図である。図4および図5において、横軸が薬剤観察画像情報における所定の水平ラインにおける各画素の座標を示し、縦軸が薬剤観察画像情報における各画素の画素値(出力値)を示す。また、図4において、曲線Lが低減処理前の薬剤観察画像情報における所定の水平ラインにおける各画素の画素値を示し、直線LBがクランプ値を示す。直線Lが閾値を示す。さらに、図5において、曲線Lが低減処理後の薬剤観察画像情報における所定の水平ラインにおける各画素の画素値を示す。
【0062】
図4に示すように、低減処理部934は、薬剤観察画像情報の各画素に対して、閾値Lを減算することによって(図4の曲線L図5の曲線L)、閾値Lよりも低い画素の画素値を低減する。この場合、低減処理部934は、制御部97の制御のもと、ゲイン調整部933によるゲイン量に基づいて、閾値Lを変更する。具体的には、低減処理部934は、制御部97の制御のもと、ゲイン調整部933によるゲイン量が大きいほど、閾値Lを大きくし、薬剤観察画像情報の各画素の画素値から閾値Lを減算することによって、閾値Lよりも低い画素の画素値を低減する。これにより、図6に示す薬剤観察画像情報P1は、蛍光領域W1がノイズに埋もれることなく、蛍光領域W1と他の領域とを識別することができる。これに対して、図7に示す薬剤観察画像情報P2は、低減処理部934が低減処理を行っていないため、ノイズによって全体的に白い画像となり、蛍光領域W1がノイズに埋もれてしまうことで、蛍光領域W1と他の領域とを識別することが難しく、蛍光が発せられているように視認されてしまう。なお、図6および図7では、ノイズを表現するため、ハッチングの密度で模式的に表現した。
【0063】
図3に戻り、ステップS108以降の説明を続ける。
ステップS108において、γ補正部935は、制御部97の制御のもと、薬剤観察画像情報に対して、γ補正処理を行って出力する(ステップS108)。
【0064】
その後、制御部97は、内視鏡システム1が薬剤観察画像情報と被検体観察画像情報とを重畳して表示する重畳表示モードが設定されているか否かを判断する(ステップS109)。制御部97によって内視鏡システム1が重畳表示モードに設定されていると判断された場合(ステップS109:Yes)、制御装置9は、後述するステップS110へ移行する。これに対して、制御部97によって内視鏡システム1が重畳表示モードに設定されていないと判断された場合(ステップS109:No)、制御装置9は、後述するステップS113へ移行する。
【0065】
ステップS110において、重畳部936は、制御部97の制御のもと、薬剤観察画像情報に被検体観察画像情報を重畳する重畳処理を実行する。
【0066】
続いて、画像処理部93は、制御部97の制御のもと、重畳部936が生成した重畳画像を表示装置7へ出力する(ステップS111)。図8は、被検体観察画像情報に低減処理部934が低減処理を行った薬剤観察画像情報を重畳した重畳画像を模式的に示す図である。図9は、被検体観察画像情報に低減処理部934が低減処理を行っていない薬剤観察画像情報を重畳した重畳画像を模式的に示す図である。図8に示すように、重畳画像P10は、蛍光領域W1がノイズに埋もれることなく、蛍光領域W1と他の領域とを識別することができる。これに対して、図9に示すように、重畳画像P11は、低減処理部934が低減処理を行っていないため、蛍光領域W1がノイズに埋もれてしまうことで、蛍光領域W1と他の領域とを識別することが難しい。なお、図9では、ノイズを表現するため、ハッチングで模式的に表現した。
【0067】
その後、入力部94から被検体の観察を終了する指示信号が入力された場合(ステップS112:Yes)、制御装置9は、本処理を終了する。これに対して、入力部94から被検体の観察を終了する指示信号が入力されていない場合(ステップS112:No)、制御装置9は、上述したステップS102へ戻る。
【0068】
ステップS113において、画像処理部93は、制御部97の制御のもと、γ補正部935によってγ補正された薬剤観察画像情報を表示装置7へ出力する。ステップS113の後、制御装置9は、ステップS112へ移行する。
【0069】
ステップS114において、画像処理部93は、制御部97の制御のもと、通信モジュール503、通信モジュール91および信号処理部92を介して撮像部502が生成した被検体観察画像情報を取得する。
【0070】
続いて、検出部931は、制御部97の制御のもと、被検体観察画像情報の明るさを検出する(ステップS115)。
【0071】
その後、クランプ処理部932は、制御部97の制御のもと、被検体観察画像情報に対して、黒レベルを固定するクランプ処理を実行する(ステップS116)。
【0072】
続いて、ゲイン調整部933は、制御部97の制御のもと、被検体観察画像情報の各画素の画素値を増幅する第2のゲイン処理を行う(ステップS117)。具体的には、ゲイン調整部933は、被検体観察画像情報の明るさが小さいほど、ゲイン処理におけるゲイン量を大きくすることによって被検体観察画像情報の各画素の画素値を増幅する第2のゲイン処理を行う。
【0073】
その後、γ補正部935は、ゲイン調整部933から入力された被検体観察画像情報に対して、γ補正を行う(ステップS118)。
【0074】
続いて、画像処理部93は、制御部97の制御のもと、γ補正部935によってγ補正された被検体観察画像情報を表示装置7へ出力する(ステップS119)。ステップS119の後、制御装置9は、ステップS112へ移行する。
【0075】
以上説明した実施の形態1によれば、画像処理部93が薬剤観察モードにおいて生成された薬剤観察画像情報に対して、画素値を増幅する第1のゲイン処理を行い、この薬剤観察画像情報に対して、所定の閾値よりも低い画素の画素値を低減させる低減処理を行うので、画像の劣化を防止するとともに、残像が目に付くことを防止することができる。
【0076】
また、実施の形態1によれば、画像処理部93が薬剤観察画像情報の明るさを検出し、この明るさが小さいほど、第1のゲイン処理におけるゲイン量を大きくし、第1のゲイン処理におけるゲイン量が大きいほど、低減処理時における所定の閾値を大きくすることによって低減処理を行うことによって、ゲインに応じて画素値が持ち上がったノイズに対して低減することができるため、画像の劣化を防止することができる。
【0077】
また、実施の形態1によれば、画像処理部93が被検体観察モードで生成された被検体観察画像情報に対して、第2のゲイン処理を行い、かつ、低減処理を行わず表示装置7へ出力するので、被検体観察モード時に画像が劣化することを防止することができる。
【0078】
また、実施の形態1によれば、画像処理部93が検体観察画像の明るさを検出し、被検体観察画像情報の明るさが小さいほど、第2のゲイン処理におけるゲイン量を大きくするので、被写体からの反射光が小さい場合であっても、明るさが調整された画像を得ることができる。
【0079】
なお、実施の形態1では、低減処理部934が薬剤観察画像情報に対して、所定の閾値以下の画素値を削除することによって薬剤観察画像情報に含まれるノイズを低減していたが、例えば所定の閾値以下の画素値に対して所定の係数、具体的には0.1を乗じることによって薬剤観察画像情報に含まれるノイズを低減してもよい。また、所定の係数は、画素値をパラメータとする関数やルックアップテーブルによって決められてもよい。
【0080】
また、実施の形態1では、低減処理部934がゲイン調整部933による第1のゲイン処理のゲイン量に応じて閾値を変更していたが、カメラヘッド情報に含まれる撮像部502の種別または検出部931が検出した薬剤観察画像情報の明るさ、光源装置3が供給する赤外光等の強度、撮像部502のシャッタスピード等のゲイン量と相関するパラメータに応じて閾値を変更してもよい。
【0081】
また、実施の形態1では、低減処理部934がゲイン調整部933による第1のゲイン処理のゲイン量に応じて閾値を変更することによって、薬剤観察画像情報に含まれるノイズを低減していたが、例えばクランプ処理部932のクランプ値を変更することによって薬剤観察画像情報に含まれるノイズを低減してもよい。この場合、クランプ処理部932は、ゲイン調整部933による第1のゲイン処理のゲイン量が大きいほど、クランプ値を大きくしてノイズを低減する低減処理を行うことによって、ゲインに応じて画素値が持ち上がるノイズに対して低減することができるので、画像の劣化を防止することができる。また、さらに、クランプ処理部932は、ゲイン調整部933による第1のゲイン処理のゲイン量だけではなく、撮像部502の温度または撮像部502の種別を考慮してクランプ値を変更してもよい。
【0082】
(実施の形態1の変形例1)
また、実施の形態1では、低減処理部934がゲイン調整部933による第1のゲイン処理のゲイン量に応じて閾値を変更することによって、薬剤観察画像情報に含まれるノイズを低減していたが、例えばγ補正部935がγ補正のトーンカーブを変更することによって薬剤観察画像情報に含まれるノイズを低減してもよい。
【0083】
図10は、γ補正部935が行う通常のγ補正のトーンカーブを模式的に示す図である。図11は、実施の形態1の変形例に係るγ補正部935が行うγ補正のトーンカーブを模式的に示す図である。図10および図11において、横軸が薬剤観察画像情報の補正前データ(入力データ)を示し、縦軸が薬剤観察画像情報の補正後データ(出力データ)を示す。図10において、曲線L10が通常のγ補正のトーンカーブを示す。また、図11において、曲線L11がγ補正のトーンカーブを示す。
【0084】
図10の曲線L10に示すように、通常、γ補正部935は、制御部97の制御のもと、薬剤観察画像情報に対してγ補正を行って出力する。これに対して、図11の曲線L11に示すように、γ補正部935は、制御部97の制御のもと、薬剤観察画像情報において、ノイズと想定される画素値の範囲D1を除去するγ補正を行って出力する。なお、γ補正部935は、制御部97の制御のもと、範囲D1をゲイン調整部933による第1のゲイン処理のゲイン量に応じて変更する。これにより、薬剤観察画像情報に含まれるノイズを低減することができる。
【0085】
以上説明した実施の形態1の変形例1によれば、γ補正部935が薬剤観察画像情報においてノイズと想定される画素値の範囲D1を除去するγ補正を行って出力するので、薬剤観察画像情報に含まれるノイズを低減することができる。
【0086】
なお、実施の形態1の変形例1では、γ補正部935が薬剤観察画像情報においてノイズと想定される画素値の範囲D1を除去するトーンカーブによって薬剤観察画像情報に含まれるノイズを低減していたが、例えば図12の曲線L12に示すようにS字のトーンカーブによって薬剤観察画像情報に含まれるノイズを低減してもよい。
【0087】
また、実施の形態1の変形例1では、γ補正部935がゲイン調整部933による第1のゲイン処理のゲイン量に応じて、ノイズと想定される画素値の範囲D1を変更していたが、カメラヘッド情報に含まれる撮像部502の種別、検出部931が検出した薬剤観察画像情報の明るさ、または光源装置3が照射する赤外光の強度に応じてノイズと想定される画素値の範囲D1を変更してもよい。また、γ補正部935は、ゲイン調整部933による第1のゲイン処理のゲイン量だけではなく、さらに撮像部502の温度や撮像部502の種別を考慮してノイズと想定される画素値の範囲D1を変更してもいい。
【0088】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、硬性鏡を用いた硬性内視鏡システムに適用した場合について説明したが、実施の形態2では、軟性の内視鏡を用いた軟性内視鏡システムに適用した場合について説明する。なお、上述した実施の形態1に係る内視鏡システム1と同一の構成には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0089】
〔内視鏡システムの概略構成〕
図13は、実施の形態2に係る内視鏡システムの概略構成を示す図である。図13に示す内視鏡システム200は、被検体内に挿入部202を挿入することによって観察部位の体内画像を撮像して撮像信号を生成する内視鏡201と、内視鏡201に白色光または赤外光を供給する光源装置210と、内視鏡201が取得した撮像信号に所定の画像処理を施すとともに、内視鏡システム200全体の動作を統括的に制御する制御装置220と、制御装置220が画像処理を施した体内画像を表示する表示装置230と、を備える。
【0090】
内視鏡201は、少なくとも、上述したレンズユニット501と、撮像部502と、を有する。
【0091】
光源装置210は、少なくとも、上述した第1の光源部31と、第2の光源部32と、光源制御部33と、を有する。
【0092】
制御装置220は、少なくとも、上述した通信モジュール91と、信号処理部92と、画像処理部93と、入力部94と、メモリ95と、出力部96と、制御部97と、を有する。
【0093】
以上説明した実施の形態2によれば、軟性の内視鏡システム200であっても、上述した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0094】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。上述した実施の形態1,2では、内視鏡システムであったが、実施の形態3では、手術用顕微鏡システムに適用した場合について説明する。なお、上述した実施の形態1に係る内視鏡システム1と同一の構成には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0095】
〔手術用顕微鏡システムの構成〕
図15は、実施の形態3に係る手術用顕微鏡システムの概略構成を示す図である。図15に示す手術用顕微鏡システム300は、被写体を観察するための画像を撮像することによって取得する医療用撮像装置である顕微鏡装置310と、顕微鏡装置310が撮像した画像を表示する表示装置311と、を備える。なお、表示装置311と顕微鏡装置310とを一体に構成することも可能である。
【0096】
顕微鏡装置310は、被写体の微小部位を拡大して撮像する顕微鏡部312と、顕微鏡部312の基端部に接続し、顕微鏡部312を回動可能に支持するアームを含む支持部313と、支持部313の基端部を回動可能に保持し、床面上を移動可能なベース部314と、を有する。ベース部314は、手術用顕微鏡システム300の動作を制御する制御装置315と、顕微鏡装置310から被写体に照射する白色光または赤外光等を生成する光源装置316と、を有する。なお、制御装置315は、少なくとも、上述した通信モジュール91と、信号処理部92と、画像処理部93と、入力部94と、メモリ95と、出力部96と、制御部97と、を有する。また、光源装置316は、少なくとも、上述した第1の光源部31と、第2の光源部32と、光源制御部33と、を有する。また、ベース部314は、床面上に移動可能に設けるのではなく、天井や壁面等に固定して支持部313を支持する構成としてもよい。
【0097】
顕微鏡部312は、例えば、円柱状をなして、その内部に上述したレンズユニット501および撮像部502を有する。顕微鏡部312の側面には、顕微鏡装置310の動作指示の入力を受け付けるスイッチが設けられている。顕微鏡部312の下端部の開口面には、内部を保護するカバーガラスが設けられている(図示せず)。
【0098】
このように構成された手術用顕微鏡システム300は、術者等のユーザが顕微鏡部312を把持した状態で各種スイッチを操作しながら、顕微鏡部312を移動させたり、ズーム操作を行ったり、照明光を切り替えたりする。なお、顕微鏡部312の形状は、ユーザが把持して視野方向を変更しやすいように、観察方向に細長く延びる形状であれば好ましい。このため、顕微鏡部312の形状は、円柱状以外の形状であってもよく、例えば多角柱状であってもよい。
【0099】
以上説明した実施の形態3によれば、手術用顕微鏡システム300においても、上述した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0100】
(その他の実施の形態)
上述した本開示の実施の形態1~3に係る医療用観察システムに開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成することができる。例えば、上述した本開示の実施の形態1~3に係る医療用観察システムに記載した全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、上述した本開示の実施の形態1~3に係る医療用観察システムで説明した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0101】
また、本開示の実施の形態1~3に係る医療用観察システムでは、上述してきた「部」は、「手段」や「回路」などに読み替えることができる。例えば、制御部は、制御手段や制御回路に読み替えることができる。
【0102】
また、本開示の実施の形態1~3に係る医療用観察システムに実行させるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルデータでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)、USB媒体、フラッシュメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0103】
また、本開示の実施の形態1~3に係る医療用観察システムに実行させるプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。
【0104】
なお、本明細書におけるタイミングチャートの説明では、「まず」、「その後」、「続いて」等の表現を用いてタイミング間の処理の前後関係を明示していたが、本開示を実施するために必要な処理の順序は、それらの表現によって一意的に定められるわけではない。即ち、本明細書で記載したタイミングチャートにおける処理の順序は、矛盾のない範囲で変更することができる。
【0105】
以上、本願の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、本発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0106】
1,200 内視鏡システム
2,202 挿入部
3,210,316 光源装置
4 ライトガイド
5 カメラヘッド
6 第1の伝送ケーブル
7 表示装置
8 第2の伝送ケーブル
9,220,315 制御装置
10 第3の伝送ケーブル
91 通信モジュール
92 信号処理部
93 画像処理部
94 入力部
95 メモリ
96 出力部
97 制御部
300 手術用顕微鏡システム
501 レンズユニット
502 撮像部
503 通信モジュール
504 カメラヘッドメモリ
505 カメラヘッド制御部
931 検出部
932 クランプ処理部
933 ゲイン調整部
934 低減処理部
935 γ補正部
936 重畳部
図1
図2
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