(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】制振ブレース及び構造物
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20240325BHJP
F16F 7/12 20060101ALI20240325BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20240325BHJP
E01D 1/00 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
F16F15/02 Z
F16F7/12
E04H9/02 311
E01D1/00 Z
(21)【出願番号】P 2023064784
(22)【出願日】2023-04-12
(62)【分割の表示】P 2019116117の分割
【原出願日】2019-06-24
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 仁志
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 泰邦
(72)【発明者】
【氏名】有薗 和樹
(72)【発明者】
【氏名】塩田 啓介
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-198539(JP,A)
【文献】特開2019-065683(JP,A)
【文献】特開2015-017371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
F16F 7/12
E04H 9/02
E01D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸力材と、
前記軸力材が内挿される補剛材と、
前記軸力材の軸方向の両端に接合された第1取付部材及び第2取付部材と、
変位計と、を備え、
前記変位計は、
前記補剛材の一方の端部である摺動側端部及び前記第2取付部材の間に設置され、前記補剛材の一方の端部と前記第2取付部材との間の相対変位を測定し、
前記第1取付部材は、
端部接続材を介して前記補剛材と接合され、
前記補剛材の他方の端部である固定側端部は、
前記端部接続材に接合され、前記端部接続材を介して前記第1取付部材に固定されて
おり、
前記補剛材の前記固定側端部と前記第1取付部材との間は、
連結板により接続固定されている、制振ブレース。
【請求項2】
前記軸力材及び前記補剛材は、
板状の部材により構成され、
前記補剛材の前記固定側端部と前記第1取付部材とは、
ボルトにより固定され、
前記補剛材の前記摺動側端部と前記軸力材は、
摺動自在に構成されている、請求項1に記載の制振ブレース。
【請求項3】
前記変位計は、
直線運動伝達部と、回転運動伝達部と、一方向回転変換部と、累積変位量表示部と、を備え、
前記直線運動伝達部は、
前記補剛材の前記一方の端部及び前記第2取付部材の間の前記相対変位に応じて前記軸力材の軸方向に直線運動し、
前記回転運動伝達部は、
前記直線運動伝達部の前記直線運動を回転運動に変換し、
前記一方向回転変換部は、
複数の回転要素で構成され、前記回転運動伝達部から伝達された正逆方向の回転を一方向回転に変換し、
前記累積変位量表示部は、
前記一方向回転変換部から伝達された前記一方向回転を利用して前記相対変位の累積を累積変位量として表示する、請求項1
又は2に記載の制振ブレース。
【請求項4】
前記変位計は、
前記回転運動伝達部、前記一方向回転変換部、及び前記累積変位量表示部を有する本体部を備え、
前記第2取付部材に固定され、
前記直線運動伝達部は、
前記補剛材の前記摺動側端部に固定部材により接続される、請求項
3に記載の制振ブレース。
【請求項5】
前記直線運動伝達部は、
前記固定部材に対し前記軸力材の軸方向の直角方向に移動自在に接続され、
前記軸力材の軸方向に前記固定部材と共に変位するように接続されている、請求項
4に記載の制振ブレース。
【請求項6】
前記固定部材は、
前記軸力材の軸方向の直角方向に長径を有する長孔を備え、
前記直線運動伝達部は、
前記長孔に挿通される運動伝達ピンを備える、請求項
5に記載の制振ブレース。
【請求項7】
前記変位計の前記本体部は、
前記本体部から突出する変位計固定プレートを備え、
前記変位計固定プレートは、
前記第2取付部材に固定されている、請求項
4~
6の何れか1項に記載の制振ブレース。
【請求項8】
前記変位計固定プレートは、
変位計固定添接板を介して前記第2取付部材に固定されている、請求項
7に記載の制振ブレース。
【請求項9】
前記変位計は、
前記相対変位の最大値を表示する最大変位表示部を備える、請求項
3~
8の何れか1項に記載の制振ブレース。
【請求項10】
請求項1~
9の何れか1項に記載の制振ブレースの前記第1取付部材及び前記第2取付部材が、架構の取付部に連結されている、構造物。
【請求項11】
前記変位計固定プレートは、
前記第2取付部材と前記取付部とを接合する添接板と一体に形成されている、請求項
7を引用する請求項
10に記載の構造物。
【請求項12】
前記変位計固定添接板は、
前記第2取付部材と前記取付部とを接合する添接板と一体に形成されている、請求項
8を引用する請求項
10に記載の構造物。
【請求項13】
前記制振ブレースは、
前記変位計のある前記第2取付部材を下方に位置する様に設置されている、請求項
10~
12の何れか1項に記載の構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震発生時の地震エネルギーを吸収する軸力材と、これを補剛する補剛材とを具備する制振ブレース及び制振ブレースを備える構造物に関し、特に変位計を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制振ブレースは、地震エネルギーなどの建築構造物を振動させるエネルギーを吸収し、建築構造物の柱や梁などの主要構造部材の損傷を低減するための制振ダンパーとして建築構造物に設置される。制振ブレースは、一般的には座屈拘束ブレースが用いられ、軸力材、補剛材、及び軸力材を主架構に接合するための取付部材で構成される。地震による建築構造物の振動により、座屈拘束ブレースは軸方向に圧縮される。座屈拘束ブレースの軸方向の圧縮は、座屈拘束ブレースの軸力材が負担する。軸方向圧縮により軸力材が座屈することなくブレース軸方向に塑性変形するように、座屈拘束ブレースは、軸力材のたわみ及び座屈を補剛する補剛材を備えている。補剛材は、座屈拘束ブレースに入力された軸力を負担することなく、軸力材の座屈拘束材として軸力材の周囲を覆うよう設けられている。座屈拘束ブレースは、上記の構造により、圧縮軸力作用時にも軸力材の全体座屈の発生を防止ないしは発生時期を遅らせて、安定した軸方向変形を生じせしめて、地震エネルギーの吸収能力を大きくするようになっている。
【0003】
鋼材を制振ブレースの軸力材として使用する場合には、繰り返し荷重による疲労耐久性及び最大伸縮量の限界を考慮して使用する必要がある。つまり、大地震の作用を受けた場合に、疲労耐久性及び最大伸縮量の限界値に対して、制振ブレースの残存寿命を把握し、継続使用が可能か、取り換えの必要があるのか判定することが重要である。座屈拘束ブレースの残存寿命を測定するために、座屈拘束ブレースに取り付ける変位計(累積変位計又は最大変位計)が知られており、変位計の適用例として、座屈拘束ブレースにより構成された制振ダンパーに適用した場合が示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-128896号公報
【文献】特開2017-198539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に開示されているところによれば、制振ダンパーに累積変位計や最大変位計が取り付けられており、制振ダンパーを構成する補剛材の一端と軸力材に接合されている取付部材との間に変位計が装着されている。これにより、補剛材の一端と取付部材との間の相対変位を計測する。しかし、これらの変位計付き制振ダンパーにおいては、補剛材の他端と他端側の取付部材との間が接合されておらず、補剛材と取付部材との相対変位を測定することは可能であるが、軸力材全長の伸縮量の測定としては精度に課題があった。そのため、軸力材の全長の伸縮量によって把握される、制振ダンパーの残存寿命の判定精度に課題があった。
【0006】
本発明は上記要請に応えるものであって、軸力材の全長の伸縮量を精度良く測定する変位計を備える制振ブレース及び構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る制振ブレースは、軸力材と、前記軸力材が内挿される補剛材と、前記軸力材の軸方向の両端に接合された第1取付部材及び第2取付部材と、変位計と、を備え、前記変位計は、前記補剛材の一方の端部である摺動側端部及び前記第2取付部材の間に設置され、前記補剛材の一方の端部と前記第2取付部材との間の相対変位を測定し、前記第1取付部材は、端部接続材を介して前記補剛材と接合され、前記補剛材の他方の端部である固定側端部は、前記端部接続材に接合され、前記端部接続材を介して前記第1取付部材に固定されており、前記補剛材の前記固定側端部と前記第1取付部材との間は、連結板により接続固定されている。
【0008】
本発明に係る構造物は、上記の制振ブレースの前記第1取付部材及び前記第2取付部材が、架構の取付部に連結されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、補剛材の一方の端部と第2取付部材との間の相対変位を測定する変位計を備え、補剛材の他方の端部が第1取付部材に固定されているため、変位計は、軸力材の伸縮量を精度良く測定することができ、制振ブレースの残存寿命の判定精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る制振ブレース50が用いられる構造物の一例の模式図である。
【
図3】実施の形態1に係る変位計付制振ブレース100の側面図である。
【
図4】
図3の制振ブレース50の断面を示した図である。
【
図5】
図3の制振ブレース50の補剛材52の固定側端部52aの断面図である。
【
図6】
図3の制振ブレース50の第2取付部材53bの断面図である。
【
図7】実施の形態1に係る制振ブレース50の補剛材52の摺動側端部52bに固定された固定部材21の断面図である。
【
図8】実施の形態1に係る制振ブレース50の第2取付部材53b及び変位計10の断面図である。
【
図9】実施の形態1に係る変位計10の内部構造の一例を示す説明図である。
【
図10】実施の形態1に係る変位計付制振ブレース100の変形例を示す側面図である。
【
図11】実施の形態1に係る変位計付制振ブレース100の変形例を示す側面図である。
【
図12】実施の形態1に係る変位計付制振ブレース100の変形例を示す側面図である。
【
図13】
図12の変位計付制振ブレース100cの断面図である。
【
図14】
図12の変位計付制振ブレース100cの断面図である。
【
図15】
図12の変位計付制振ブレース100cの断面図である。
【
図16】
図12の変位計付制振ブレース100cの断面図である。
【
図17】実施の形態2に係る変位計付制振ブレース200の側面図である。
【
図18】
図17の変位計付制振ブレース200の断面図である。
【
図19】実施の形態2に係る変位計付制振ブレース200が振動を受けて補剛材52が変位したときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。各図は模式的に示すものであって、各部材の相対的な大きさや板厚等は図示する寸法に限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る制振ブレース50が用いられる構造物の一例の模式図である。
図2は、
図1の橋脚90の正面図である。
図2は、
図1のM方向視点における橋脚90の構造を表したものである。橋脚90は、地盤93に形成された基礎92の上に立設され、地盤93の谷に渡された橋梁91を支持するものである。
図2に示される様に、橋脚90は、例えば2本の柱96の間に柱96に直交する方向に梁94を渡して接合して形成される。柱96と梁94とにより形成される架構には、斜めに制振ブレース50が設置されている。制振ブレース50の両端に備えられた取付部材53(
図3参照)は、梁94の中央部及び柱96と梁94との接合部に設けられているガセットプレート等の取付部95に接合されている。
【0013】
橋梁91が地震等により振動し、
図2に示される矢印W方向に変位すると、橋脚90も、振動し架構が変形する。制振ブレース50は、架構の変形により矢印Vに示される様に伸縮し、振動によるエネルギーを吸収する。振動によるエネルギーの吸収は、制振ブレース50の軸力材51が塑性変形することにより行われる。制振ブレース50が振動によるエネルギーを吸収することにより、橋脚90及び橋梁91に及ぶ振動が減衰される。
【0014】
実施の形態1において、橋脚90には、8本の制振ブレース50が設置されている。そのうち、1箇所の制振ブレースは、変位計10が設けられている変位計付制振ブレース100である。橋脚90に設置されている制振ブレース50のうち、少なくとも1箇所に変位計付制振ブレース100を設置することにより、制振ブレース50を管理する管理者等は、変位計付制振ブレース100が受けた変位量又は伸縮量、特に最大変位量及び累積変位量を知ることができる。変位計付制振ブレース100により、管理者等は、変位計10により測定される最大変位量及び累積変位量から疲労寿命を判定することができる。例えば、最大変位量及び累積変位量の少なくとも1つが所定の値以上である場合、制振ブレース50は交換される。また、変位計付制振ブレース100の疲労寿命を判定することにより、同じ橋脚90に設置されたその他の制振ブレース50の寿命も予測できる。つまり、構造物の少なくとも1箇所に設置された変位計付制振ブレース100の変位計10により、構造物に設置された全ての制振ブレース50の寿命が予測される。そのため、構造物に設置された制振ブレース50の交換時期が適切に行われるため、構造物の安全性及び信頼性を適正に維持することができる。なお、変位計10を全ての制振ブレース50の中で最も変位量が大きい制振ブレース50に設置すると、その変位量の計測値により制振ブレース50の交換時期を予測出来る。これは、変位計10を設置した制振ブレース50以外の制振ブレース50は、変位計10を設置した制振ブレース50よりも変位量が小さく疲労寿命が長いため、安全側で寿命判定ができるからである。
【0015】
なお、
図2に示される橋脚90に設置される制振ブレース50の数及び位置は、一例であり、適宜変更することができる。なお、変位計付制振ブレース100及び制振ブレース50は、橋脚90だけでなく、水門などの土木構造物、ビル又は塔などの建築構造物に適用することができる。
【0016】
(制振ブレース50)
図3は、実施の形態1に係る変位計付制振ブレース100の側面図である。
図4は、
図3の制振ブレース50の断面を示した図である。
図4は、
図3のA-A部の断面である。変位計付制振ブレース100は、制振ブレース50に変位計10を取り付けて構成される。変位計付制振ブレース100の変位計10を取り付ける構造以外の制振ブレース50の構造は、
図2に示される他の制振ブレース50と同じである。
【0017】
図4に示される様に、制振ブレース50は、円筒形状の軸力材51と、軸力材51の外周を覆う円筒形状の補剛材52を有する。
図3に示されている中心軸Lは、制振ブレース50の中心軸であり、軸力材51の中心軸と同じである。補剛材52の中心軸も中心軸Lと同じ位置になるように同心配置されている。つまり、軸力材51は、円筒形状の補剛材52の内部の中心を長手方向に貫通するものである。軸力材51は、補剛材52により外周を包囲され、変形が拘束される。軸力材51の長手方向の一方の端部51aは、固定側口金54aに接合されている。また、補剛材52の長手方向の一方の端部である固定側端部52aは、固定材41及び連結板40により軸力材51に接合されている第1取付部材53aに接続されている。これにより、補剛材52の固定側端部52aは、第1取付部材53aと相対変位しないように固定される。
【0018】
軸力材51の長手方向の他方の端部51bは、摺動側口金54bに接合されている。補剛材52の長手方向の端部である摺動側端部52bは、軸力材51及び摺動側口金54bと相対変位ができるように構成されている。補剛材52の内側面と軸力材51の外周面及び摺動側口金54bの外周面との間は、所定の隙間が形成されており、制振ブレース50に橋脚90の変形による荷重が加わった場合に軸力材51が伸縮しても、補剛材52は中心軸L方向の荷重が加わらないように構成されている。
【0019】
固定側口金54a及び摺動側口金54bは、軸力材51が接合されている側と反対方向に突出する取付部材53に接合されている。取付部材53は、固定側口金54aに接合されている方を第1取付部材53a、摺動側口金54bに接合されている方を第2取付部材53bと称する場合がある。取付部材53は、制振ブレース50を橋脚90などの構造物に設けられたガセットプレート等の取付部95と接合するための継手となる。
【0020】
(軸力材)
軸力材51は、長尺材であって、断面円筒形状の鋼材である。実施の形態1においては、断面円筒形状の鉄鋼製の長尺材である軸力材51が示されているが、軸力材51は、例えば、棒鋼又は平板を断面十字に接合したものであってもよく、制振ブレース50の中心軸Lに対し垂直な面で切った断面形状は限定されるものではない。軸力材51の長手方向の一方の端部51aには、固定側口金54aが接合されている。また、軸力材51の長手方向の他方の端部51bには、摺動側口金54bが接合されている。
【0021】
軸力材51は、塑性変形する材料によって形成され、軸力材51が塑性変形する際に制振ブレース50に入力されたエネルギーを吸収し、より高い耐震、制振ダンパーとしての効果が得られる。
【0022】
(補剛材52)
補剛材52は、例えば断面円筒形状の鋼管であり、管内部に軸力材51を貫通させる構造になっている。なお、補剛材52は、円筒形状に限られない。軸力材51が軸力によりたわんだ際に、軸力材51が座屈しないようそのたわみを拘束できれば、例えば、断面が矩形の角筒であってもよい。補剛材52の長手方向寸法は、軸力材51の長手方向寸法よりも長くなっていることが望ましい。また、軸力材51と補剛材52との間にモルタル等を充填して補剛しても良い。さらには、角型鋼管を複数接合して補剛材52を形成し、軸力材51のたわみを拘束しても良い。補剛材52の構造は、軸力材51の形状及びたわみの態様に応じて適宜変更することができる。
【0023】
図5は、
図3の制振ブレース50の補剛材52の固定側端部52aの断面図である。
図6は、
図3の制振ブレース50の第1取付部材53aの断面図である。
図5に示される様に補剛材52は、固定側端部52aの外周から2つの固定材41により包囲されている。2つの固定材41は、連結板40及び補剛材52の固定側端部52aを挟み込んだ状態でボルト42及びナット43により互いに締結固定されている。補剛材52の固定側端部52aは、2つの固定材41により締め付けられ、固定材41が補剛材52に対し中心軸L方向に変位しないように固定される。連結板40は、一方の端部が固定材41に対し中心軸L方向に変位しないように固定され、他方の端部が添接板60を介して第1取付部材53aに固定されている。これにより、補剛材52の固定側端部52aは、第1取付部材53aに対し中心軸L方向に変位しないように固定される。
【0024】
補剛材52の長手方向の他方の端部である摺動側端部52bは、軸力材51及び摺動側口金54bに対し径方向に隙間を持っており、軸力材51及び摺動側口金54bと相対変位ができるように構成されている。従って、制振ブレース50に橋脚90の変形による荷重が加わった場合に軸力材51が伸縮しても、補剛材52は中心軸L方向の荷重が加わらないように構成されている。つまり、実施の形態1の制振ブレース50においては、補剛材52には、軸力(制振ブレース50の中心軸L方向に働く力)が入力されない。補剛材52に軸力が入力されないため、補剛材52は、軸力が作用する場合と比較して、軸力材51の座屈を拘束出来る板厚及び外径の範囲の中で板厚を薄く、また外径をより小さくすることができる。これにより、補剛材52を大きくする必要がなく、制振ブレース50のコスト及び重量を抑えることができる。
【0025】
(変位計10)
図3(a)は、制振ブレース50に中心軸L方向に荷重が加わっていない通常の状態を示している。
図3(b)は、制振ブレース50が中心軸L方向に伸びる荷重が加わった状態を示している。
図3(c)は、制振ブレース50が中心軸L方向に縮む荷重が加わった状態を示している。上述したように、制振ブレース50は、補剛材52に軸力が加わらず変形しないのに対し、軸力材51が軸力を受けて伸縮できるように構成されている。従って、軸力材51が接合されている第2取付部材53bに対し、補剛材52の摺動側端部52bは、中心軸L方向に相対変位する。つまり、
図3(b)に示される様に軸力材51が距離δだけ伸びるように変形した場合、補剛材52の摺動側端部52bは、第2取付部材53bから距離δだけ離れるように変位する。また、
図3(c)に示される様に軸力材51が距離δだけ縮むように変形した場合、補剛材52の摺動側端部52bは、第2取付部材53bに距離δだけ近づく様に変位する。
【0026】
変位計10は、補剛材52の摺動側端部52bと第2取付部材53bの相対変位の距離δを検知できる様に制振ブレース50に取り付けられる。
【0027】
図7は、実施の形態1に係る制振ブレース50の補剛材52の摺動側端部52bに固定された固定部材21の断面図である。
図8は、実施の形態1に係る制振ブレース50の第2取付部材53b及び変位計10の断面図である。変位計10は、直線運動伝達部11と、回転運動伝達部8(
図9参照)、一方向回転変換部9(
図9参照)、及び累積変位量表示部12を内部に有する本体部13と、を備える。直線運動伝達部11が本体部13に対し中心軸L方向に直線運動する。そして、本体部13に内蔵された回転運動伝達部8及び一方向回転変換部9が直線運動伝達部11の直線運動を一方向回転に変換する。累積変位量表示部12は、一方向回転により指針32(
図9参照)が表示回転軸31(
図9参照)周りに移動することにより、直線運動伝達部11の変位の累積を表示する。
【0028】
言い換えると、変位計10は、直線運動伝達部11と本体部13との相対変位の累積値を表示するものである。実施の形態1においては、制振ブレース50の疲労寿命を判定するため、変位計10の直線運動伝達部11と本体部13との相対変位は、軸力材51の伸縮量と一致させる必要がある。そのため、変位計10の本体部13は、第2取付部材53bに固定され、直線運動伝達部11は、補剛材52の摺動側端部52bに固定される。これにより、第2取付部材53bと補剛材52の摺動側端部52bとの相対変位が、変位計10の直線運動伝達部11と本体部13との相対変位と一致する。そして、変位計10は、軸力材51の伸縮量の累積値を表示することができる。
【0029】
図7に示される様に、直線運動伝達部11は、補剛材52の摺動側端部52bに固定される。補剛材52の摺動側端部52bは、2つの部材により構成された固定部材21により外周を包囲されている。固定部材21の2つの部材は、補剛材52を挟み込み、ボルト42及びナット43により互いに締結固定することにより、補剛材52の摺動側端部52bに固定される。直線運動伝達部11は、固定部材21に対し中心軸L方向に相対変位しないように固定される。つまり、直線運動伝達部11は、補剛材52の摺動側端部52bと共に中心軸L方向に直線運動する。
【0030】
図8(a)に示される様に、本体部13は、筐体から突出して形成された変位計固定プレート16を備える。変位計固定プレート16は、2枚の変位計固定添接板20により板面方向から挟まれ、第2取付部材53bに接続固定される。つまり、変位計固定添接板20は、変位計固定プレート16と第2取付部材53bとの両者を間に挟み込んで、ボルト42及びナット43が締結されることにより、変位計固定プレート16と第2取付部材53bとを一体化させている。また、
図3に示される様に、変位計固定添接板20は、第2取付部材53bと構造物に形成された取付部95とを接続する。つまり、変位計固定添接板20は、添接板60の機能も有している。
【0031】
図8(b)及び
図8(c)は、変位計固定プレート16と第2取付部材53bとの接合部分の構造の変形例を示す断面図である。
図8(b)に示される様に、変位計固定プレート16の片面側のみに変位計固定添接板20を用い、1枚の変位計固定添接板20と1枚の添接板60とで変位計固定プレート16と第2取付部材53bとを接続しても良い。つまり、変位計固定プレート16と1枚の変位計固定添接板20とを接続固定し、1枚の添接板60及び変位計固定添接板20と第2取付部材53bとを接続固定し、変位計固定プレート16と第2取付部材53bとを接続する。このとき、1枚の変位計固定添接板20と1枚の添接板60とは、第2取付部材53bと橋脚90の取付部95とを接続する機能を有している。この構成によれば、変位計固定添接板20が第2取付部材53bに固定された状態のまま、制振ブレース50に変位計10を設置又は取り外しができる。
【0032】
図8(c)に示される様に、変位計固定プレート16は、第2取付部材53bに直接取り付けられても良い。このとき、変位計固定プレート16は、ボルト42及びナット43により第2取付部材53bの板面に直接固定される。この構成により、変位計固定プレート16と第2取付部材53bとの接合部分の部品点数を削減することができ、変位計10の取付作業も容易になる。このとき、変位計固定プレート16は、変位計固定添接板20及び添接板60の機能を有している。つまり、変位計固定プレート16は、第2取付部材53b及び橋脚90の取付部95の双方に接合されている。そして、変位計固定プレート16は、第2取付部材53bを挟んで相対する添接板60と共に、第2取付部材53bを取付部95に固定している。
【0033】
(変位計10による累積変位測定)
図9は、実施の形態1に係る変位計10の内部構造の一例を示す説明図である。
図3に示されるように、補剛材52と第2取付部材53bとの相対変位は、軸力材51の軸方向の伸縮変位によって生じる。軸力材51の軸方向の伸縮変位は、制振ブレース50の軸方向に作用する圧縮及び引張りの軸荷重により生じる。
【0034】
図9(a)は、軸力材51が引張り方向に変位したときの累積変位量表示部12の動作を示し、
図9(b)は、軸力材51が圧縮方向に変位したときの累積変位量表示部12の動作を示している。なお、
図9(a)、(b)において、R1は矢印R視点において時計回りの回転を示しており、R2は反時計回りの回転を示している。
【0035】
軸力材51が引張り方向に変位すると、
図9(a)に示すように、直線運動伝達部11の往動作によりラック歯に噛合しているピニオン70が正回転し、このピニオン70の回転がウォーム81を介してウォーム歯車71にR1方向の回転として伝達される。
【0036】
ウォーム歯車71に伝達されたR1方向の回転は、第1ワンウェイクラッチ72及び第1クラッチ歯車73を介して第1分岐歯車74にR2方向の回転として伝達される。第1分岐歯車74に伝達されたR2方向の回転は、第2分岐歯車75を介して合成歯車76にR1方向の回転として伝達される。
【0037】
そして、合成歯車76に伝達されたR1方向の回転が出力軸77を介して表示回転軸31に伝達されることで、累積変位量表示部12の指針32が、軸力材51が引張り方向に変位したときの累積変位量として、所定角度だけ時計回りに回転する。
【0038】
また、軸力材51が圧縮方向に変位すると、
図9(b)に示すように、直線運動伝達部11の復動作によりラック歯に噛合しているピニオン70が逆回転し、このピニオン70の回転がウォーム81を介してウォーム歯車71にR2方向の回転として伝達される。
【0039】
ウォーム歯車71に伝達されたR2方向の回転は、第2ワンウェイクラッチ78及び第2クラッチ歯車79を介して第3分岐歯車80にR1方向の回転として伝達される。第3分岐歯車80に伝達されたR1方向の回転は、出力軸77に同軸に固定されている合成歯車76にR1方向の回転として伝達される。
【0040】
そして、合成歯車76に伝達されたR1方向の回転が出力軸77を介して表示回転軸31に伝達されることで、累積変位量表示部12の指針32が、軸力材51が圧縮方向に変位したときの累積変位量として、所定角度だけ時計回りに回転する。
【0041】
ここで、ラックで構成される直線運動伝達部11に噛み合うピニオン70からウォーム81までを回転運動伝達部8と称する。また、ウォーム歯車71から第1ワンウェイクラッチ72又は第2ワンウェイクラッチ78を経て合成歯車76に至るまでの部分を、一方向回転変換部9と称する。一方向回転変換部9は、正逆両方向に回転する回転運動伝達部8の回転運動を一方向回転に変換するものである。
【0042】
変位計10は、以上に説明した機構を備えることにより、軸力材51の伸縮による往復直線運動による累積変位を測定し、累積変位量表示部12に表示させることができる。
【0043】
(変位計10による最大変位測定)
変位計10は、圧縮側変位表示部材14と、引張り側変位表示部材15と、を備えている。圧縮側変位表示部材14は、本体部13を貫通している直線運動伝達部11の補剛材52側の側面及びラック歯に摺動自在に係合している。圧縮側変位表示部材14は、本体部13に接触しないときには直線運動伝達部11上で停止している、門型、又は輪型形状の部材である。圧縮側変位表示部材14は、軸力材51が圧縮方向に変位する際には、
図3(c)に示される様に、本体部13の補剛材52側を向く側面の一部に当接しながら直線運動伝達部11上を端に向かって摺動していく。
【0044】
引張り側変位表示部材15は、本体部13を貫通している直線運動伝達部11の自由端側に突出している直線運動伝達部11の側面及びラック歯に摺動自在に係合している。また、引張り側変位表示部材15は、本体部13に接触しないときには直線運動伝達部11上で停止している門型、又は輪型形状の部材である。引張り側変位表示部材15は、軸力材51が引張り方向に変位する際には、本体部13の前述した側面17aに対して逆側の側面17bの一部に当接しながら直線運動伝達部11の自由端側に摺動していく。
【0045】
圧縮側変位表示部材14及び引張り側変位表示部材15は、
図3(b)及び
図3(c)の状態を経た後に、
図3(a)に示される通常状態に戻っても、直線運動伝達部11上における位置がそのままの状態で維持される。従って、圧縮側変位表示部材14及び引張り側変位表示部材15の当初の位置、つまり
図3(a)に示される圧縮側変位表示部材14及び引張り側変位表示部材15の位置からの移動距離が、軸力材51の伸縮の最大値を示す。つまり、変位計10は、圧縮側変位表示部材14及び引張り側変位表示部材15により相対変位の最大値を表示する最大変位表示部を備える。
【0046】
(変位計付制振ブレース100の効果)
以上に説明したように、実施の形態1に係る変位計付制振ブレース100は、軸力材51と、軸力材51が内挿された補剛材52と、軸力材51の軸方向の両端のそれぞれに接合された第1取付部材53a及び第2取付部材53bと、補剛材52の摺動側端部52b及び第2取付部材53bに設置された変位計10と、を備える。補剛材52の固定側端部52aは、第1取付部材53aと相対変位しないように固定されている。
また、補剛材52は、鋼管であり、補剛材52の固定側端部52aと第1取付部材53aとの間は、連結板40により接続固定されている。
このように構成されることにより、補剛材52は、制振ブレース50の一方の端部の第1取付部材53aと相対変位しないように固定される。そのため、制振ブレース50の他方の端部の第2取付部材53bと補剛材52との相対変位を測定することにより軸力材51の伸縮を精度良く測定することができる。
【0047】
また、変位計10は、直線運動伝達部11と、回転運動伝達部8と、一方向回転変換部9と、累積変位量表示部12と、を備える。直線運動伝達部11は、補剛材52の摺動側端部52b及び第2取付部材53bの間の相対変位に応じて軸力材51の軸方向に直線運動し、回転運動伝達部8は、直線運動伝達部11の直線運動を回転運動に変換し、一方向回転変換部9は、複数の回転要素で構成され、回転運動伝達部8から伝達された正逆方向の回転を一方向回転に変換する。累積変位量表示部12は、一方向回転変換部9から伝達された一方向回転を利用して相対変位の累積を累積変位量として表示する。
また、変位計10は、回転運動伝達部8、一方向回転変換部9、及び累積変位量表示部12を有する本体部13を備え、第2取付部材53bに固定されている。直線運動伝達部11は、補剛材52の摺動側端部52bに固定部材21により接続されている。
以上の構成により、変位計10が橋脚90などの構造物の取付部95に接続されている第2取付部材53bに固定されている。そのため、変位計10は、橋脚90が振動した際においても比較的安定している部分に設置されており、振動による破損及び誤計測を抑制することができる。特に、補剛材52は、長手方向の端部の1箇所が接合されているだけで、摺動側端部52b側が振動の影響を受けやすい。
【0048】
実施の形態1においては、第2取付部材53bに変位計固定プレート16を固定することにより、変位計10を制振ブレース50に取り付けているため、制振ブレース50が構造物に設置された後であっても、変位計10を制振ブレース50に設置することができる。そのため、変位計10の仕様を決定する前に先行して制振ブレース50の製作、調達、及び設置が可能となる。よって、変位計付制振ブレース100を設置する工期の短縮が図れる。また、橋脚90等の構造物に複数の制振ブレース50を設置した後に、どの制振ブレース50に変位計10を取り付けるかを決定することができる。さらには、ボルト接合により第2取付部材53bと変位計固定プレート16とを固定することにより、変位計10の点検、補修、及び交換をする作業が容易になるという利点がある。制振ブレース50の第2取付部材53bは、添接板60を用いて橋脚90のガセットプレート等の取付部95に固定されているが、変位計10は、添接板60を変位計固定添接板20に変更するだけで、第2取付部材53bに設置することができる。
【0049】
また、
図2に示される様に、変位計10が設置されている側を下方に位置するように変位計付制振ブレース100を構造物に設置することにより、制振ブレース50の検査時及び交換時においても、作業者が変位計10を確認し易いという利点がある。また、制振ブレース50は、変位計10側を下にすることにより、開口している補剛材52の摺動側端部52bが下側に向いているため、雨水が補剛材52に浸入しにくく、滞留するのを防止できる。これによって、制振ブレース50を構成する各部材の腐食を抑制することができる。
【0050】
(変位計付制振ブレース100の変形例)
図10は、実施の形態1に係る変位計付制振ブレース100の変形例を示す側面図である。変形例に係る変位計付制振ブレース100aは、制振ブレース50aに変位計10を設置したものである。制振ブレース50aは、制振ブレース50に対し、補剛材52の摺動側端部52bと変位計10との取付構造は同じであるが、補剛材52の固定側端部52aが固定側口金54aに溶接44などの接合手段により固定されている点で異なる。
【0051】
図11は、実施の形態1に係る変位計付制振ブレース100の変形例を示す側面図である。変形例に係る変位計付制振ブレース100bは、制振ブレース50bに変位計10を設置したものである。制振ブレース50bは、制振ブレース50に対し、補剛材52の摺動側端部52bと変位計10との取付構造は同じであるが、補剛材52の固定側端部52aが端部接続材45を介して第1取付部材53aに接合されている点で異なる。端部接続材45は、円筒形状の補剛材52の固定側端部52aの開口に溶接などの手段により接合されている。端部接続材45には、第1取付部材53aが溶接44などの接合手段により固定されている。
【0052】
図10及び
図11に示される様に、補剛材52の固定は、連結板40によらずとも、溶接等の接合手段により行っても、実施の形態1に係る変位計付制振ブレース100と同様の効果を得ることが出来る。
【0053】
図12は、実施の形態1に係る変位計付制振ブレース100の変形例を示す側面図である。
図13、
図14、
図15、及び
図16は、
図12の変位計付制振ブレース100cの断面図である。
図13は、
図12のP-P部、
図14は
図12のQ-Q部、
図15は
図12のR-R部、
図16は
図12のS-S部の各断面を示している。変形例に係る変位計付制振ブレース100cは、制振ブレース50cに変位計10を設置したものである。制振ブレース50cは、制振ブレース50、50a、及び50bと異なり、板状の部材で構成されている。制振ブレース50cの軸力材151は、
図13に示される様に板状の鋼材で構成されており、板の面方向から2枚の補剛材152により挟まれることにより伸縮による座屈変形を抑えられている。補剛材152は、断面がT字形状の部材であり、軸力材151の面と対向している面方向の剛性が高い。軸力材151を挟んで対称的に配置されている2枚の補剛材152の間には軸力材151と並列に2枚のスペーサ57が挟まっている。2枚の補剛材152とスペーサ57とは、ボルト42及びナット43により締結固定されている。軸力材151は、補剛材152とスペーサ57とに包囲され、間隙を持って配置されており、中心軸L方向に伸縮できるように配置されている。
【0054】
図14に示される様に、補剛材152の固定側端部152aは、軸力材151と一体に形成されている第1取付部材53aにボルト42及びナット43により固定されている。補剛材152の固定側端部152aは、第1取付部材53aに対し中心軸L方向に相対変位しないように固定される。
【0055】
図15に示される様に、軸力材151と一体に形成されている第2取付部材53bは、摺動ピン56が面方向に突出するように設置されている。摺動ピン56は、補剛材52に設けられた長孔55に挿通されており、中心軸L方向に移動自在に構成されている。つまり、第2取付部材53bは、補剛材52の摺動側端部52bに対し中心軸L方向に移動できる様に構成されている。つまり、軸力材151が中心軸L方向に荷重を受けて伸縮しても、補剛材52には荷重が伝達しないように構成されている。
【0056】
図16に示される様に、補剛材152の摺動側端部152bは、固定部材21を補剛材152の間に挟み、ボルト42及びナット43により固定している。固定部材21には、直線運動伝達部11が固定されている。変位計10は、実施の形態1に係る変位計付制振ブレース100と同様に、第2取付部材53bに固定されているため、軸力材151の伸縮により変位計10の本体部13と直線運動伝達部11とが相対変位する。これにより、変位計10は、軸力材151の伸縮による累積変位を測定することができる。
【0057】
変形例に係る変位計付制振ブレース100cによれば、軸力材151及び補剛材152は、板状の部材により構成され、補剛材152の固定側端部152aと第1取付部材53aとは、ボルト42により固定され、補剛材152の摺動側端部152bと軸力材151とは、摺動自在に構成されている。このように構成されていても、実施の形態1と同様の効果を得ることが出来る。
【0058】
実施の形態2.
実施の形態2は、実施の形態1に係る変位計付制振ブレース100に対し、変位計10の直線運動伝達部11と補剛材52の摺動側端部52bに取り付けられた固定部材21との接続構造を変更したものである。実施の形態2では、実施の形態1に対する変更点を中心に説明する。
【0059】
図17は、実施の形態2に係る変位計付制振ブレース200の側面図である。
図18は、
図17の変位計付制振ブレース200の断面図である。
図18は、
図17のG-G部の断面である。実施の形態2に係る制振ブレース50の補剛材52の摺動側端部52bに取り付けられた固定部材221には、中心軸Lの直角方向に長径を有する長孔222が形成されている。変位計10が備える直線運動伝達部211は、端部に運動伝達ピン223が設けられており、長孔222内を中心軸Lに対し垂直方向に移動自在に構成されている。また、運動伝達ピン223と長孔222とは、中心軸L方向においては隙間が小さく構成されている。そのため、軸力材51が伸縮することにより補剛材52の摺動側端部52bと第1取付部材53aとの相対変位が生じた場合は、運動伝達ピン223と長孔222とが接触して直線運動伝達部211が移動するように構成されている。
【0060】
図19は、実施の形態2に係る変位計付制振ブレース200が振動を受けて補剛材52が変位したときの断面図である。
図19は、
図17のG-G部の断面である。制振ブレース50は、補剛材52と軸力材51との間に隙間を有する。
図17に示される様に補剛材52は、固定側端部52aにおいて第1取付部材53aと固定されているが、摺動側端部52bが片持ち梁の自由端となっている。そのため、補剛材52の摺動側端部52bは、橋脚90の振動により軸力材51の中心軸Lの直角方向に変位しやすい。従って、第2取付部材53bに固定されている変位計10の直線運動伝達部211と摺動側端部52bに固定されている固定部材221との間には、中心軸Lの直角方向に変位が生じる。
【0061】
固定部材221と直線運動伝達部211とが相対変位できないように固定されていた場合、補剛材52の摺動側端部52bと第2取付部材53bとの相対変位により、直線運動伝達部211又は変位計10の内部の構造に荷重が掛かり、部品の破損や変位の誤計測などの影響を受ける場合がある。例えば、直線運動伝達部211がラック部材により構成されている場合、ラック部材が中心軸Lの直角方向に曲げを受け、ラック部材が損傷したり、変位計10の本体部13の内部においてラックとピニオン70との噛み合わせ部などの損傷及び誤作動を招く。しかし、実施の形態2に係る変位計付制振ブレース200によれば、固定部材221と直線運動伝達部211とは、中心軸Lの直角方向に相対変位自在な構造となっているため、橋脚90などの構造物の振動の影響を受けることなく、精度良く制振ブレース50の累積変位及び最大変位量を計測でき、変位計10の破損を抑制することができる。
【符号の説明】
【0062】
8 回転運動伝達部、9 一方向回転変換部、10 変位計、11 直線運動伝達部、12 累積変位量表示部、13 本体部、14 圧縮側変位表示部材、15 引張り側変位表示部材、16 変位計固定プレート、17a 側面、17b 側面、20 変位計固定添接板、21 固定部材、31 表示回転軸、32 指針、40 連結板、41 固定材、42 ボルト、43 ナット、45 端部接続材、50 制振ブレース、50a 制振ブレース、50b 制振ブレース、50c 制振ブレース、51 軸力材、51a 端部、51b 他方の端部、52 補剛材、52a 固定側端部、52b 摺動側端部、53 取付部材、53a 第1取付部材、53b 第2取付部材、54a 固定側口金、54b 摺動側口金、55 長孔、56 摺動ピン、57 スペーサ、60 添接板、70 ピニオン、71 ウォーム歯車、72 第1ワンウェイクラッチ、73 第1クラッチ歯車、74 第1分岐歯車、75 第2分岐歯車、76 合成歯車、77 出力軸、78 第2ワンウェイクラッチ、79 第2クラッチ歯車、80 第3分岐歯車、81 ウォーム、90 橋脚、91 橋梁、92 基礎、93 地盤、94 梁、95 取付部、96 柱、100 変位計付制振ブレース、100a 変位計付制振ブレース、100b 変位計付制振ブレース、100c 変位計付制振ブレース、151 軸力材、152 補剛材、152a 固定側端部、152b 摺動側端部、200 変位計付制振ブレース、211 直線運動伝達部、221 固定部材、222 長孔、223 運動伝達ピン、L 中心軸、R 矢印、V 矢印、W 矢印、δ 距離。