(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】酸素水素浴システム
(51)【国際特許分類】
A61H 33/14 20060101AFI20240325BHJP
【FI】
A61H33/14 A
(21)【出願番号】P 2023117824
(22)【出願日】2023-07-19
【審査請求日】2023-11-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503327347
【氏名又は名称】株式会社 エイム
(74)【代理人】
【識別番号】100088214
【氏名又は名称】生田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】小山 孝
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特許第6133526(JP,B1)
【文献】国際公開第2019/064893(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/14
A61G 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが導入されるガス供給口を有し、人体全体を収容可能なチャンバと、
前記ガス供給口と接続される気体供給管を有し、該気体供給管を介して前 記チャンバ内に酸素を含む気体を供給して前記チャンバ内部の圧力を大気圧よりも高圧にするガス供給部と、
前記気体供給管とY字型Aジョイントを介して接続される水素供給管と、水素ガス発生器を有し、該水素供給管を介して前記チャンバ内に前記水素ガス発生器からの水素ガスを供給する水素供給部と、
前記チャンバと連通され、安全弁又はON/OFF操作によって前記チャンバ内を所定の圧力範囲内に維持する弁を有し、該弁を介して前記チャンバから前記気体及び前記水素ガスを排出するガス排気部と、
を備える酸素水素浴システムにおいて、
前記ガス供給部の前記気体供給管は、前記Y字型Aジョイントの位置よりも前記ガス供給部に近い位置に、前記ガス供給部からの前記気体の流路を2等分割するY字型Bジョイントを有し、
前記Y字型Bジョイントから延びる一方の枝管Aは、前記水素供給管と前記Y字型Aジョイントにて合流した後前記ガス供給口に接続し、他方の枝管Bは、レデューサーを介して延びた後T型ジョイントを介してガス排気部に接続する
ことを特徴とする酸素水素浴システム。
【請求項2】
前記弁によって、前記チャンバ内の圧力が1.1~1.35気圧に維持され、前記チャンバ内の前記水素ガスの体積濃度が1.0~2.0体積%に維持されることを特徴とする請求項1記載の酸素水素浴システム。
【請求項3】
前記ガス供給部が前記気体を前記チャンバ内に供給している間、前記水素供給部が前記水素ガスを前記チャンバ内に供給する請求項1又は2に記載の酸素水素浴システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素水素浴システムに関する。
【背景技術】
【0002】
(本出願の位置付け)
本出願人は、別途、発明の名称を「酸素水素浴システム」と称する特許(特許第6133526号(以下、特許文献1)を保有しているが、本出願は、かかる特許に記載の発明の改良発明に係る出願である。
【0003】
特許第6133526号が対象とする発明は、水素水を経口摂取する場合よりも多くの水素を体内に取り込んで活性酸素の削減効果を得やすくすることができる酸素水素浴システムに係る発明であるが、近年になり、従来にも増して余剰の活性酸素を体内から排除することが健康維持のために求められるようになっている。このようなニーズを持つ人の中には、時間に追われる多忙なビジネスマンも含まれており、このようなビジネスマンは勤務中であっても短時間で酸素水素浴ができれば大きなメリットを享受できることが期待される。
同特許に記載の発明の技術的思想の基本は、酸素水素浴用のチャンバに、チャンバ外で一定の水素ガスの濃度になった空気を、一定の速度と量で供給しつつ、チャンバ内の空気の水素体積濃度を動的平衡に維持するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明を実施する酸素水素浴システムでは、水素ガス発生器の使用に伴う危険性の観点から、その水素ガス発生能力は100%の水素ガスを1分当り500cc発生させる能力に制限されており、かつ、チャンバ内の水素濃度は動的平衡に達したときに1.0体積%までしか維持できない。従って、これよりもより短時間で十分な量、あるいは、同じ時間内であればより多くの量の水素を体内に取り込むことに対する市場ニーズには十分対応できていない側面がある。
【0006】
このような場合、一般的に考えられる解決策は、システム全体を変えることなく、単に水素ガス発生器の能力を上げることがあるが、この解決策では、発生される水素ガスの量が、安全性が確認された範囲を超え、水素爆発の危険性が懸念されるので好ましくない。また、製造コストを大きく左右する新たな水素ガス発生器の導入が必要となり、製造コストが増大するために、ビジネスの観点からすると好ましくない。
【0007】
そこで、本発明者は、特許文献1(従来技術)の酸素水素浴システムの長年の使用により発生される水素ガスの量が安全圏内となる安全性確認済の水素ガス発生器を使いつつ、かつ、製造コストが大きく増大することを回避しつつ目的を達成する解決策を鋭意研究した結果、特許文献1に記載の酸素水素浴システムに使用される水素ガス発生器を変えることなく、同システムの空気供給管の途中にシンプルな低コストのY字型ジョイントを間挿し、一方の枝管を特許文献1と同様に配管し、他方の枝管にレデューサーを間挿し、その先をT型ジョイントを介して特許文献1のガス排気部に接続するだけで、酸素水素浴システムのチャンバ内の水素濃度を、同文献に記載の発明では得られなかった水素濃度に高めて維持することができることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を為した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、第1の発明は、ガスが導入されるガス供給口を有し、人体全体を収容可能なチャンバと、
前記ガス供給口と接続される気体供給管を有し、該気体供給管を介して前記チャンバ内に酸素を含む気体を供給して前記チャンバ内部の圧力を大気圧よりも高圧にするガス供給部と、
前記気体供給管とY字型ジョイントAを介して接続される水素供給管と、水素ガス発生器を有し、該水素供給管を介して前記チャンバ内に前記水素ガス発生器からの水素ガスを供給する水素供給部と、
前記チャンバと連通され、安全弁又はON/OFF操作によって前記チャンバ内を所定の圧力範囲内に維持する弁を有し、該弁を介して前記チャンバから前記気体及び前記水素ガスを排出するガス排気部と、
を備える酸素水素浴システムにおいて、
前記ガス供給部の前記気体供給管は、前記Y字型ジョイントAの位置よりも前記ガス供給部に近い位置に、前記ガス供給部からの前記気体の流路を2等分割するY字型ジョイントBを有し、
前記Y字型ジョイントBの一方の枝管Aは、前記水素供給管と前記Y字型ジョイントAにて合流した後前記ガス供給口に接続し、他方の枝管Bは、レデューサーを介して延在した後T型ジョイントを介してガス排気部に接続する
ことを特徴とする酸素水素浴システムである。
【0009】
第2の発明は、前記第1の発明において、 前記弁によって、前記チャンバ内の圧力が1.1~1.35気圧に維持され、前記チャンバ内の前記水素ガスの体積濃度が1.0~2.0体積%に維持されることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、前記第1又は第2の発明において、前記ガス供給部が前記気体を前記チャンバ内に供給している間、前記水素供給部が前記水素ガスを前記チャンバ内に供給することを特徴とする。
【0011】
なお、本願請求項1に記載の発明の構成は、既に特許となっている特許第6133526号の請求項1記載発明の構成に、下記下線が付された構成要件を加えるものであるので、この追加された構成要件特許性は十分にあると考えられる。
ガスが導入されるガス供給口を有し、人体全体を収容可能なチャンバと、
前記ガス供給口と接続される気体供給管を有し、該気体供給管を介して前 記チャンバ内に酸素を含む気体を供給して前記チャンバ内部の圧力を大気圧よりも高圧にするガス供給部と、
前記気体供給管とY字型Aジョイントを介して接続される水素供給管と、水素ガス発生器を有し、該水素供給管を介して前記チャンバ内に前記水素ガス発生器からの水素ガスを供給する水素供給部と、
前記チャンバと連通され、安全弁又はON/OFF操作によって前記チャンバ内を所定の圧力範囲内に維持する弁を有し、該弁を介して前記チャンバから前記気体及び前記水素ガスを排出するガス排気部と、
を備える酸素水素浴システムにおいて、
前記ガス供給部の前記気体供給管は、前記Y字型Aジョイントの位置よりも前記ガス供給部に近い位置に、前記ガス供給部からの前記気体の流路を2等分割するY字型Bジョイントを有し、
前記Y字型Bジョイントから延びる一方の枝管Aは、前記水素供給管と前記Y字型Aジョイントにて合流した後前記ガス供給口に接続し、他方の枝管Bは、レデューサーを介して延びた後T型ジョイントを介してガス排気部に接続する
ことを特徴とする酸素水素浴システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特許文献1に記載の発明(従来技術)の酸素水素浴システムの長年の使用により、発生される水素ガスの量が安全圏内となる安全性確認済の水素ガス発生器を使いつつ、従来技術による場合よりもより多くの水素をより短い時間に人体の皮膚及び粘膜から効率よく体内に取り込んで活性酸素の削減効果を得やすくすることが期待できるだけでなく、酸素ガスと水素ガスを共に溶存型としてより多く人体に取り込んで溶存型酸素・水素を血液又は体液中で増加させることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】従来技術によるシステム概念図である。なお、図中の参照番号は、特許第6133526号公報の図面における参照番号と同じであり、かかる参照番号は、本発明の実施態様を図示する
図2、
図3において同じ要素を示す。
【
図2】本発明のシステム概念図(
図1の記載方法に倣った概念図)である。同図において、
図1における参照番号と同じ参照番号は、
図1における構成要素と同じものであることを意味する。
【
図3】本発明の配管の分岐部、接続部、レデューサー部をクローズアップしたシステム概念図である。同図において、
図1における参照番号と同じ参照番号は、
図1における構成要素と同じものであることを意味する。
【
図4】チャンバの概念図(従来技術と同じ概念図)である。なお、図中の参照番号は、特許第6133526号公報の図面における参照番号と同じであり、かかる参照番号は、本発明の実施態様を図示する
図2、
図3において同じ要素を示す。
【
図5】従来技術によるチャンバ内の水素濃度(体積%)の時間変化を示すグラフである。
【
図6】本発明によるチャンバ内の水素濃度(体積%)の時間変化を示すグラフである。同図では、2本の折れ線グラフが記載されているが、上側の折れ線グラフは高速運転の場合であり、下側の折れ線グラフは通常運転の場合を示す。なお、スタートから経過時間25分までは、これら2本の折れ線グラフが重なっている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態)
本発明に係る実施形態について、以下、図を参照して説明する。
本発明は従来技術(特許文献1記載発明)の改良発明であり、従来技術のシステム構成に新たな構成要素を追加することで改良発明としている。そこで、先ず、従来技術のシステム構成と比較してどの構成要素が新たに追加されているかについての理解を容易にすべく、従来技術のシステム構成の概念図を示す
図1と、本発明のシステム構成の概念図を示す
図2を準備した。なお、
図2のシステム構成概念図の表記は、従来技術である特許文献1におけるシステム構成図の表記を踏襲したものである。
図3は、
図2のシステム構成図における分岐部、接続部等をクローズアップして表記したものである。
【0015】
本実施形態に係る酸素水素浴システム10は、不図示の人体全体を収容するチャンバ11と、チャンバ11内に空気を供給して内部の圧力を大気圧よりも高圧にするガス供給部12と、チャンバ11内に水素ガスを供給する水素供給部13と、チャンバ11から空気及び水素ガスを排出するガス排気部15と、ガス供給部12とチャンバ11とを繋ぐ管路の途中のY字型Aジョイント42及びY字型Bジョイント44と、ガス供給部12とガス排気部15とを繋ぐ管路の途中のレデューサー40と、レデューサー40から延びる配管がガス排気部15と接続する箇所のT型ジョイント46と、チャンバ内の環境を測定する計測部16と、チャンバ内の環境を制御する制御部17と、を備えている。
【0016】
本発明のシステム概念図を示す
図3と、従来技術のシステム概念図を示す
図1とを比較すると明らかなように、本発明のシステムにおいては、Y字型Aジョイント42と、Y字型Bジョイント44と、レデューサー40と、T型ジョイント46が、
図3に示された箇所にそれぞれ配置され、これらが
図3における各直線で示された配管で接続されており、これらの配管は、従来技術において使用される配管と同じ材質のものである(それぞれの配管の外径及び肉厚については、以下に述べる)。
【0017】
チャンバ11は、例えばアルミやステンレス等の円筒状金属部材で構成され、非通気性、非透湿性を有し、少なくとも1.4気圧以上の気圧に耐えられる強度を有する。チャンバ11の側面には人の出入りが可能な開口部11aが配されるとともに、開口部11aを塞ぐ開閉部18が配されている。また、チャンバ11の側面には、ガス供給部12と接続されたガス供給口20が配されている。
【0018】
ガス供給部12は、空気(酸素を含む空気)を大気圧よりも高圧にしてチャンバ11内に取り込むためのコンプレッサ22と、空気供給管(気体供給管)23と、を備えている。ここで、ガス供給部12は、空気の供給圧力を調整する空気圧力調整弁をさらに備えていてもよい。なお、コンプレッサ22の代わりに大気圧よりも高圧の空気が圧入された不図示の圧力容器を備えていても構わない。
【0019】
ここで、コンプレッサ22で圧縮された空気(酸素を含む空気)は、空気供給管23内をチャンバ11に向かって流れるのであるが、その流路の途中に、1本の流路から流入する流量を2本の流路からそれぞれ2等分割された流量を流出させるためのY字型Aジョイント44と、水素ガス発生部13からの水素ガスの流れとコンプレッサ22からの圧縮された空気の流れとを合流させるためのY字型Bジョイント42とが間挿されている。Y字型Aジョイント44は、一般的なY字型ジョイントの構成であり、入口側の管の外径及び肉厚と出口側2本の管の外径及び肉厚が同じ構成となっている。Y字型Aジョイント44は、コンプレッサ22で圧縮された空気が通る空気供給管23の経路中に間挿されており、この圧縮された空気の量を1/2に均等分割して、それぞれ、枝管に流出させる。また、Y字型Bジョイント42も、一般的なY字型ジョイントの構成であるが、ここでは、それぞれ外径及び肉厚が異なる2本の流路を1本の流路に合流させる構成となっている。具体的には、Y字型Aジョイント44から枝分かれした枝管の一方からの空気と、水素供給部13からの水素ガスとを合流させるように構成されている。ここで合流された空気・水素混合ガスが一体となってガス供給口20を介してチャンバ11内に流入する。
【0020】
水素供給部13は、水を電気分解して高濃度の水素ガスを生成する水素ガス発生器25と、水素ガス発生器25とチャンバ11との間に配された水素供給弁26と、これらをつなぐ水素供給管27と、を備えている。この水素供給管27は、Y字型Bジョイントにおいて、Y字型Aジョイントからの一方の枝管と合流する。ここで、水素供給部13は、水素ガスの供給圧力を調整する不図示の水素圧力調整弁をさらに備えていてもよい。水素供給管27の先端は、チャンバ11の外側で、空気供給管23の途中の位置にあるY字型Bジョイントにおいて、空気供給管のY字型Aジョイントからの枝管と合流する。なお、水素ガス発生器25の代わりに大気圧よりも高圧の水素ガスが圧入された不図示の圧力容器を備えていても構わない。
【0021】
ガス排気部15は、チャンバ11内部に導入された空気及び水素ガスをチャンバ11外へ排出する排気弁28を備えている。ガス排気部15は、制御部17によりON/OFF操作されてチャンバ11内部の圧力を所定圧力範囲内(即ち、大気圧以上かつ排気弁28の使用可能圧力以下)に維持する。ガス排気部15は、チャンバ11内の圧力が所定圧力以上になったときに自動的に内部の気体を排気する不図示の安全弁をさらに備えていてもよい。
【0022】
計測部16は、制御部17と接続されている。チャンバ11と制御部17とは接続されており、計測部16は、チャンバ11内の圧力を計測する圧力センサ30を備えている。
【0023】
制御部17は、不図示のCPU、メモリ、ディスプレイを備えたコンピュータから構成され、圧力センサ30からのデータに基づき、チャンバ11内の環境制御を行う。例えば、コンプレッサ22や水素ガス発生器25及び水素供給用第1電磁弁26のON/OFF操作等を行う。また、排気弁28のON/OFF操作を行い、チャンバ11内の圧力調整を行う。
【0024】
チャンバ11内の環境は、チャンバ11内の圧力、及びチャンバ11内の水素体積濃度が動的平衡に達したときに、チャンバ内の圧力が、好ましくは、圧力が1.10気圧以上1.35気圧以下、又は1.10気圧以上かつ排気弁28の使用可能圧力以下、チャンバ11内の酸素の体積濃度が20%以上30%以下、水素の体積濃度が水素の爆発限界の最小値未満であって1.0%~2.0%となるように全体のシステムが制御される。
【0025】
ここで、水素供給部13は、ガス供給部12が空気を供給している間のみ水素ガスをチャンバ11に向けて供給する。なお、コンプレッサ22や水素ガス発生器25及び水素供給弁26のON/OFF操作を手動操作可能なものとしたり、各種圧力制御は利用者自身がディスプレイに表示される各種圧力等を見ながら手動により調整したりしてもよい。
【0026】
次に本実施形態に係る酸素水素浴システム10の作用について説明する。
まず、チャンバ11の開閉部18を開けて不図示の使用者が開口部11aよりチャンバ11内に入る。
【0027】
開閉部18を閉じた後、制御部17の指示によってシステム全体が稼働し始め、制御部17の指示によってガス供給部12が空気をチャンバ11内に向けて供給し、水素供給部13が水素ガスをチャンバ11内に向けて供給する。
【0028】
このとき、制御部17は、計測部16からのデータに基づくコンプレッサ22のON/OFF操作や、水素ガス発生器25及び水素供給26のON/OFF操作による空気や水素ガスの流量制御、排気弁のON/OFF操作による内圧制御等を適宜行うことで、所望する時間内に、チャンバ11内の環境(特に、圧力と水素体積濃度の状態)が動的平衡状態にする。そして、この動的平衡状態の下で、チャンバ11内圧を1.10気圧以上1.35気圧以下、酸素の体積濃度を20%以上30%以下、水素の体積濃度を、好ましくは1.0%以上2.0%以下に維持する。
【0029】
本発明においては、チャンバ11内の環境を動的平衡状態に維持することが重要なポイントの1つである。使用者(図示せず)は、所望する時間の間チャンバ11内でこの動的平衡状態の環境に身を包ませることとなる。こうして所定時間が経過した後、水素供給部13は水素ガスのチャンバ11内への供給を停止し、その後にガス供給部12は空気のチャンバ11内への供給を停止する。
【0030】
この酸素水素浴システム10によれば、
図5(従来技術による場合)と
図6(本発明の場合)に示すとおり、チャンバ11内の水素体積濃度を、従来技術による場合よりも短い時間で、従来技術で到達できる値よりも高い値に到達させることが可能となり、また、システム内の配管構成によっては、従来技術にて使用する水素発生器と同じ水素発生器を使いつつも、最終的に到達する値を従来技術による場合の2倍近い値に到達させることができ、短時間で効率よく人体に取り込むことが期待できる。
【0031】
また、あわせて、酸素を含む気体の中の酸素濃度を上げることで、大気中の酸素濃度(約21%)よりも高濃度の酸素を大気圧以上に上昇させた高圧且つ高濃度酸素の雰囲気下に人体を晒すことができ、酸素ガスを溶存型酸素としてより多く人体に取り込むことが期待できる。
【0032】
特に、ガス供給部12が空気をチャンバ11内に供給している間、水素供給部13が水素ガスをチャンバ11内に供給するので、チャンバ11内が水素過多になってしまう状態を好適に抑制することができる。
【0033】
また、ガス供給部12、水素供給部13、及びガス排気部15によってチャンバ11内における水素ガスの体積濃度が水素ガスの爆発限界の最小値未満となるように制御することも可能となるので、チャンバ11内で水素爆発が発生するような危険な環境になってしまうことを好適に抑えることができる。
【0034】
(実施例)
図6に示したチャンバ内の水素濃度の時間変化を示すグラフは、下記条件下において得られたグラフである。なお、以下における外径φ10mmの配管は肉厚が1.75mmであり、外径φ6mmの配管は肉厚が1mmであり、外径φ12mmの配管は肉厚が2mmであった。
1)Y字型Aジョイントは分岐用として構成されており、
2)Y字型Aジョイントの入口側で接続する配管の外径φ10mm
Y字型Aジョイントの出口側で接続する2本の配管の外径はそれぞれφ10mm
3)Y字型Bジョイントは合流用として構成されており、
Y字型Bジョイントの入口側で接続する2本の配管のうち、空気(酸素を含む空気)用の配管の外径はφ10mm、水素ガス用の配管の外径はφ6mm
Y字型Bジョイントの出口側で接続する1本の配管の外径はφ10mm
4)レデューサーは、流入側の外径φ10mmの配管を、外径φ12mmに拡大するレデューサー
5)T型ジョイントは流路方向変更用として構成されており、
上記レデューサーから延びる外径φ12mmの配管を、チャンバからの外径φ12mmの排気ラインの途中に接続する。
6)コンプレッサは毎分200リットルの吐出能力で運転し、水素発生器は100%純粋な水素ガスを常温で毎分500ccの生成能力で運転させた。
7)上記条件下で運転したところ、Y字型Bジョイントの出口での水素体積濃度は約3%であった。
8)なお、同じY字型Bジョイントを有するが、Y字型Aジョイントと、レデューサーと、T型ジョイントを有しない従来型システムの場合、同じコンプレッサと同じ水素発生器を使ったとき、Y字型Bジョイントの出口での水素体積濃度は約1%であった。
【0035】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、ガス供給部12は空気をチャンバ11内に供給するとしているが、空気に限らず、酸素を所定の濃度で含有しかつ人体に安全な気体であれば、空気に限らず他のガスであっても構わない。また、各構成要素の空間配置に制約はなく、例えば、水素ガス供給口がチャンバの下方に配される構成も本発明の範囲に含まれる。
【0036】
また、計測部16は、酸素濃度センサや水素濃度センサを備えていてもよい。この場合、チャンバ11内の酸素濃度や水素濃度をリアルタイムで計測することができる。
【0037】
さらに、水素供給部13の水素供給管27は、空気供給管23と接続されているとしているが、これに限らず、チャンバに別途水素供給口を設けて空気と別々に供給できるようにしても構わない。また、このとき、チャンバ内に使用者が入った際に水素供給口から使用者の顔の位置となる近傍まで水素供給管が伸びるようにしてもよい。これによって、水素をより効率よく体内に摂取させることができる。
【0038】
また、開閉部はスライド式でも構わない。さらに、使用時にはチャンバ11内 部の圧力が大気圧以上になるので、チャンバの内面側でスライドする構造がより好ましい。
【符号の説明】
【0039】
10 酸素水素浴システム
11 チャンバ
12 ガス供給部
13 水素供給部
15 ガス排気部
20 ガス供給口
23 空気供給管
27 水素供給管
28 排気弁)
40 レデューサー
42 Y字型Bジョイント
44 Y字型Aジョイント
46 T型ジョイント
【要約】 (修正有)
【課題】より多くの水素をより速く体内に取り込んで活性酸素の削減効果を得やすくできる酸素水素浴システムを提供する。
【解決手段】ガス供給口20を有し、人体を収容するチャンバ11と、空気供給管23を介してチャンバ内に酸素を含む気体を供給して内部圧力を大気圧よりも高圧にするガス供給部12と、水素供給管27を介してチャンバ内に水素ガスを供給する水素供給部13と、チャンバ内を所定の圧力範囲内に維持する排気弁28を介してチャンバから気体及び水素ガスを排出するガス排気部15と、を備え、排気弁によりチャンバ内の圧力が大気圧以上かつ排気弁の使用可能圧力以下に維持される酸素水素浴システムにおいて、ガス供給部とガス供給口との間を結ぶ流路の途中に、水素供給管からの水素ガスが合流する合流点よりもガス供給部側に近い点に流路分岐点を設け、一方の枝流路がガス供給口に向かい、他方の枝流路がガス排気部に向かうことを特徴とする。
【選択図】
図3