(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】固定クランプ
(51)【国際特許分類】
F16B 2/12 20060101AFI20240325BHJP
【FI】
F16B2/12 B
(21)【出願番号】P 2023220967
(22)【出願日】2023-12-27
【審査請求日】2023-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520407046
【氏名又は名称】八洲防災設備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】一條 陽一
(72)【発明者】
【氏名】村田 厚
(72)【発明者】
【氏名】矢部 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 達也
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-219964(JP,A)
【文献】特開2017-089218(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0279805(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建具を挟持する一対の挟持片と、
前記一対の挟持片のそれぞれを、互いに近づく向き及び離れる向きに移動させる一対のボルトと、
前記一対のボルトがそれぞれねじ込まれるボルト収容部を先端側に有する一対のアームと、
前記一対のアームそれぞれの基端側に設けられ、前記アームと交差する方向に延びるレール部と、
対向配置された一対の前記レール部をスライド可能に支持する係合部と、
前記係合部の前記一対のレール部を支持する面とは反対側の面に設けられ、被取付機器が取り付けられる取付面とを備えた
固定クランプ。
【請求項2】
前記取付面及び前記係合部には、前記一対のレール部のスライド方向と交差する方向に貫通し、ビスが挿入される固定穴が設けられており、
前記固定穴に挿入された前記ビスの先端部が、前記一対のレール部に係止される
請求項1に記載の固定クランプ。
【請求項3】
前記レール部には、前記レール部の前記スライド方向と長軸とが一致するように形成された長穴が設けられており、
前記固定穴に挿入された前記ビスの先端部が、前記長穴の縁に係止される
請求項2に記載の固定クランプ。
【請求項4】
前記レール部と前記係合部の一方には、前記レール部のスライド方向に沿って配置された複数の溝が設けられ、他方には、前記溝に嵌合する突起が設けられており、前記突起が前記溝に嵌合することで、前記レール部と前記係合部とが位置決めされる
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の固定クランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知器又は電気機器等を建具に固定する固定クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
建物には、火災を検出する火災感知器の設置が義務づけられている。また、防犯又は防災を目的とした監視機器、非常灯、スピーカ、防犯センサ等の電気機器が建物に設置されることも多い。このような火災感知器又は電気機器を建物に設置する際には、火災感知器又は電気機器をネジ止めすることが一般的である。しかし、火災感知器を天井又は壁にネジ止め固定すると、天井又は壁等の施工面を傷つけてしまう。重要文化財又は歴史的建造物等においては、とりわけ、そのような傷を避けたいという要請がある。
【0003】
施工面を傷つけることなく取付け及び取外しを行うことができる火災警報器として、建具を挟持する一対の挟持片と、挟持片を移動自在に支持する支持部と、挟持片の移動を規制する固定部とを備えた火災警報器が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1において、一方の挟持片にはT字型形状に突出する係合部が設けられており、この係合部が、支持部に形成された溝部に移動自在に係合されている。そして、固定された挟持片に対して、係合部が設けられた挟持片が近づけられることで、挟持片と挟持片との間に建具が挟持される。さらに、係合部が設けられた挟持片の外側に固定片を当接させ、この固定片をネジ部でネジ止めしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の火災警報器は、固定された挟持片に対して他方の挟持片を支持部に沿って移動させて建具を挟み込む構造である。このため、建具を挟み込んだときに挟持片が建具に加える力と、挟持片が建具に加える力とのバランスをとるのが難しかった。したがって、建具を過度な力で挟んで建具を傷つけたり、建具を挟む力が不足して火災警報器を落下させたり、力のバランスが悪くて火災警報器が傾いたり、といった不具合が生じる可能性があった。このような不具合を生じさせないように火災警報器を取り付けるためには、作業への熟練あるいは作業の微調整が必要であり、作業性の向上が望まれていた。
【0006】
また、取付先の天井又は壁等の建具の寸法は、均一ではない。特に、重要文化財又は歴史的建造物等においては、建具の寸法は画一化されておらず、大小様々である。このような様々な寸法の建具に特許文献1に記載の固定手段を用いて火災感知器又は電気機器等の被取付機器を取り付けようとすると、最大寸法の建具に合わせて支持部の長さを設定した固定手段を製造する必要がある。しかし、最大寸法の建具に支持部の長さを合わせると、寸法の小さい建具への取り付けの際には、挟持片の外にはみ出た長い支持部が露出し、美観を損ねてしまう。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、取付け作業性がよく、様々なサイズの取付先の建具に対応できて美観を損ねにくい被取付機器の固定クランプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る固定クランプは、建具を挟持する一対の挟持片と、前記一対の挟持片のそれぞれを、互いに近づく向き及び離れる向きに移動させる一対のボルトと、前記一対のボルトがそれぞれねじ込まれるボルト収容部を先端側に有する一対のアームと、前記一対のアームそれぞれの基端側に設けられ、前記アームと交差する方向に延びるレール部と、対向配置された一対の前記レール部をスライド可能に支持する係合部と、前記係合部の前記一対のレール部を支持する面とは反対側の面に設けられ、被取付機器が取り付けられる取付面とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の固定クランプによれば、被取付機器を取付先の建具に取り付ける際の作業性を向上できる。また、本発明の固定クランプは、様々なサイズの取付先の建具に対応できて美観を損ねにくい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る固定クランプの分解斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る固定クランプの斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る固定クランプの斜視図である。
【
図4】実施の形態に係る最小幅状態の固定クランプによる被取付機器の取り付け態様を説明する図である。
【
図5】実施の形態に係る最大幅状態の固定クランプによる被取付機器の取り付け態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る固定クランプの実施の形態を、図面を参照して説明する。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これらは説明のためのものであって、本発明を限定するものではない。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係又は形状等が実際のものとは異なる場合がある。
【0012】
実施の形態.
図1は、実施の形態に係る固定クランプ100の分解斜視図である。
図2及び
図3は、実施の形態に係る固定クランプ100の斜視図である。
図1~
図3及び後述する図には、互いに直交するX、Y、Z方向を示す矢印を記載して、各図の方向の対応関係を示している。固定クランプ100は、火災感知器、監視カメラ、非常灯、スピーカ、防犯センサ、スイッチ、電気配線等の被取付機器を建物に取り付ける際に使用される器具である。
【0013】
固定クランプ100は、
図1に示すように、1つのベース部101と、ベース部101に対して移動可能な一対のスライド部102とを備える。2つのスライド部102は、互いに同じ構造を有しており、X方向に対称の向きで配置されている。
【0014】
(ベース部)
ベース部101は、2つのスライド部102を支持するとともに、被取付機器を支持する。ベース部101は、係合部10、台座11、溝部12、固定穴13、センター目印14及び取付面15を有する。
【0015】
係合部10は、スライド部102のレール部6が係合される長尺状の部材である。係合部10のX-Z面に平行な面には、係合部10の短手方向に外側へ突出する台座11が設けられている。台座11は、被取付機器が取り付けられる取付面15の一部を構成するとともに、ベース部101のX方向中央に向かうスライド部102のスライド移動を規制する。台座11には、被取付機器から延びる電気配線が通過する開口が設けられていてもよく、このようにすることで電気配線の取り回しが容易になる。
【0016】
溝部12は、スライド部102のスライド移動量を規定するための溝である。溝部12は、複数の溝で構成されている。複数の溝は、スライド部102のスライド方向、すなわちX方向に沿って配置されている。溝部12を構成する溝のそれぞれは、Z方向、すなわちスライド部102のスライド方向と直交する方向に延びている。
図1では、係合部10の紙面左側に設けられた溝部12のみが示されているが、係合部10の紙面右奥の面にも、溝部12が設けられている。
【0017】
固定穴13は、ベース部101とスライド部102とを固定するビス20が挿入される穴である。固定穴13は、係合部10をZ方向に貫通している。
【0018】
センター目印14は、ベース部101のX方向における中心を示す。センター目印14は、本実施の形態では台座11の側面に設けられた突起であるが、溝であってもよいし、印刷又は刻印された線であってもよい。センター目印14は、固定クランプ100と建具との位置合わせに用いられる。
【0019】
取付面15は、被取付機器が取り付けられる平面である。取付面15は、係合部10と台座11により形成された面一の面である。取付面15は、係合部10がレール部6を支持する面(
図1の紙面上側の面)とは反対側の面(
図1の紙面下側の面)である。
【0020】
(スライド部)
一対のスライド部102は、建具を挟持する部材である。各スライド部102は、挟持片1と、ボルト2と、アーム3と、アーム3に設けられたボルト収容部4と、基部5と、レール部6と、カバー7とを備える。
【0021】
挟持片1は、柱又は竿縁等の建具を挟持する部材である。本実施の形態の挟持片1は、円柱状あるいは円盤状であり、外周に角がないので、建具を挟んだときに建具に挟持片1の縁の跡が付きにくい。なお、挟持片1の形状は、円柱状あるいは円盤状に限定されず、多角柱状であってもよい。挟持片1は、例えばシリコンなどのクッション性又は弾性を有する材料で構成されているとよい。これにより、一対の挟持片1で建具を挟み込んだときに、建具に傷を付けにくくなる。
【0022】
カバー7は、一対の挟持片1の互いに対向する面を少なくとも覆う。カバー7は、例えばシリコンなどのクッション性又は弾性を有する材料で構成される。このような弾性体からなるカバー7を挟持片1に取り付けることで、一対の挟持片1で建具を挟み込んだときに、建具に傷を付けにくくなる。また、挟持片1に対して着脱自在のカバー7は、劣化した場合には取り替えることができるので、長期間にわたって固定クランプ100の性能を維持することができる。カバー7の厚みは、0.5mm~3mm程度、例えば2mm程度とすることができるが、この具体的数値に限定されない。なお、カバー7は設けられていなくてもよい。また、
図1ではカバー7を図示しているが、
図1以外の図では、カバー7の図示を省略している。
【0023】
一対の挟持片1及び一対のカバー7の互いに向かい合う表面は、平らであってもよいし、凹凸を有していてもよい。このような凹凸を設けることで、建具との間の摩擦力が向上し、建具に対する一対の挟持片1又は一対のカバー7の位置ズレを抑制することができる。
【0024】
ボルト2は、アーム3に形成されたボルト収容部4に挿入され、挟持片1を、他の挟持片1に近づく向き及び離れる向きに移動させる。ボルト2の先端と挟持片1とは、溶接等により連結されていてもよいし、一体成形されていてもよい。また、挟持片1に設けられたネジ穴1aにボルト2をねじ込むことで、挟持片1とボルト2とを連結する構成であってもよい。
【0025】
作業者は、ボルト2の頭を把持して時計回り又は反時計回りに回転させることで、ボルト2を移動させる。ボルト2の頭は、ボルト2の軸部に対して取り外し可能であってもよい。
【0026】
アーム3は、ボルト2がねじ込まれるボルト収容部4を有する部材である。アーム3は、Z方向に沿って延びている。アーム3の先端にボルト収容部4が形成され、アーム3の基端に基部5が設けられている。
【0027】
ボルト収容部4は、ボルト2が挿入される穴である。ボルト収容部4の内面には、ボルト2がねじ込まれるネジ溝が設けられている。ボルト収容部4の内径は、X方向に沿って均一であってもよいが、X方向においてベース部101から遠い部分の内径が、近い部分の内径よりも大きくてもよい。このようにすることで、内径の大きい部分に、ボルト2の頭を収容することができる。
【0028】
基部5は、アーム3の基端を支持するとともに、レール部6を支持する。基部5は、アーム3の基端から、スライド部102のスライド方向(X方向)に沿って延びている。
【0029】
レール部6は、ベース部101の係合部10にスライド可能に係合する。レール部6は、
図1の紙面下向きに開口した断面コの字状の部材であり、X方向に沿って延びている。レール部6のコの字状の凹部の中に、係合部10が配置され、レール部6は係合部10に沿って移動する。
【0030】
レール部6の、係合部10と対向する内面には、突起6aが設けられている。突起6aは、レール部6が係合部10に係合した状態において、溝部12を構成する複数の溝のいずれかに嵌合する。ベース部101に対してスライド部102が押圧されると又は引っ張られると、突起6aが、溝部12の溝と溝の間の山を一つずつ乗り越えて、スライド部102が移動する。作業者は、ベース部101に対して、一対のスライド部102それぞれを、溝部12の溝につき同数だけ移動させることで、ベース部101のX方向の中心に対して等しい距離に、一対のスライド部102を配置することができる。
【0031】
レール部6には、レール部6をZ方向に貫通する長穴6bが設けられている。長穴6bは、レール部6のスライド方向すなわちX方向と、長軸とが一致するように形成されている。レール部6が係合部10に係合した状態において、長穴6bの一部が、固定穴13と重なる位置に配置される。この状態で、ビス20が固定穴13に挿入され、ビス20の先端が長穴6bの縁に係止される。なお、本実施の形態では、レール部6に2つの長穴6bがX方向に沿って並んでいる例を示すが、長穴6bの数は1つ又は3つ以上であってもよい。
【0032】
アーム3、基部5、レール部6及びベース部101は、合成樹脂又はアルミ、より好ましくは難燃性の合成樹脂で構成されているとよい。合成樹脂及びアルミは、鉄と比べて軽量であるため、建具に固定クランプ100が取り付けられたときに建具にかかる荷重を軽減できる。したがって、建具の損傷を抑制できる。また、アーム3、基部5、レール部6及びベース部101には、肉抜きを設けてもよい。このように肉抜きを設けることで、固定クランプ100を軽量化できるので、建具の損傷を抑制する効果を高めることができる。また、固定クランプ100を軽量化することで、固定クランプ100に取り付けられた被取付機器の落下を抑制することができる。さらに好ましくは、アーム3、基部5、レール部6及びベース部101は、難燃性に関するUL94規格の要件を満たす材料で構成されているとよい。また、合成樹脂で構成されたアーム3、基部5、レール部6及びベース部101に、アルミ等の金属製の補強板を入れてもよい。
【0033】
(ベース部とレール部との固定)
本実施の形態の固定クランプ100は、ベース部101に対する一対のスライド部102の位置を調整することで、一対の挟持片1同士の距離を調整することができる。これにより、一対の挟持片1の間に、様々な寸法の建具を挟持できる。以下、作業者によるベース部101とスライド部102との固定作業を説明する。
【0034】
作業者は、
図1に示すように、ベース部101とスライド部102とが離間した状態において、レール部6の先端を係合部10の先端の上にかぶせ、一対のスライド部102を互いに近づく方向に押圧して移動させる。一対の挟持片1の間の距離が、挟持する建具の寸法に適した距離になると、移動を停止させる。このとき、長穴6bの一部が、固定穴13と重なる位置に配置されている。続けて作業者は、ビス20を取付面15側から固定穴13に挿入し、ビス20の先端のネジを長穴6bに螺合させる。そうすると、ベース部101に対し、一対のスライド部102がビス20によって固定される。
【0035】
本実施の形態では、スライド部102の移動に伴って、溝部12を構成する複数の溝への突起6aの嵌合と、突起6aによる溝の間の山の乗り越えとが繰り返される。この際の振動を、作業者はベース部101及びスライド部102から把握することができる。このため、一方のスライド部102の移動量、すなわち移動した溝の数と、他方のスライド部102の移動量とを一致させることで、ベース部101のX方向の中央部に対して等しい位置に一対のスライド部102を配置する際の作業性を向上させることができる。
【0036】
(固定クランプを用いた被取付機器の取り付け態様)
図4は、実施の形態に係る最小幅状態の固定クランプ100による被取付機器の取り付け態様を説明する図である。また、被取付機器の一例であるスポット型の火災感知器30及び建具31を併せて図示している。
図4に示すように、固定クランプ100の取付面15の下に、火災感知器30が取り付けられる。なお、
図4では、固定クランプ100に火災感知器30が取り付けられた状態を示しているが、固定クランプ100の建具31への固定の後に、火災感知器30を固定クランプ100に取り付けてもよい。
【0037】
作業者は、建具31のX方向の長さに合わせて、上述のようにレール部6のスライド移動量を調整する。
図4に示すように、建具31と挟持片1と間に距離があくようにして、スライド部102の位置が決定される。ただし、この距離は、ボルト2による挟持片1の移動距離未満とする。
図4では、一対のレール部6が最も近づいている最小幅状態の固定クランプ100を示している。建具31と固定クランプ100とのX方向における中心の位置合わせは、センター目印14を用いて行うことができる。
【0038】
作業者は、一対のボルト2の頭を回転させる。これにより、一対の挟持片1が、
図4に矢印で示すように互いに近づく。ボルト2の頭を回転させると、ボルト2の頭が徐々にアーム3に形成されたボルト収容部4(
図1参照)に入っていく。そして、締め付けの最終段階においては、図示しないレンチを用いてボルト2を締め付けてもよい。さらに、ボルト2に、ボルト2の頭から軸部の途中に至る穴を設け、この穴に釘等の剛性の高い芯材を挿入してもよく、このようにすることでボルト2の強度を高めることができる。
【0039】
図5は、実施の形態に係る最大幅状態の固定クランプ100による被取付機器の取り付け態様を説明する図である。
図5は、一対のレール部6が最も離れている最大幅状態の固定クランプ100を示している。最大幅状態の固定クランプ100を用いることで、
図4に示した建具31よりも大きい幅の建具31に、火災感知器30を取り付けることができる。最大幅状態の固定クランプ100を使用する場合も、ボルト2の締め付けによって一対の挟持片1で建具31を挟持する作業は、
図4で説明した作業と同じである。
【0040】
以上のように、本実施の形態の固定クランプ100は、一対の挟持片1で建具31を挟み込むので、建具31に傷をつけることがない。また、一対の挟持片1の両方を移動させて、建具31を挟持するため、一方の挟持片1から建具31へ加える力と、他方の挟持片1から建具31に加える力とのバランスを取りやすい。したがって、過度な力で挟んで建具31を傷つけたり、建具31を挟む力が不足して被取付機器を落下させたり、力のバランスが悪くて被取付機器が傾いたり、といった取り付けに係る不具合を回避しやすい。このように、本実施の形態によれば、建具31を傷つけることなく被取付機器を建具31に取り付ける際の作業性を向上させることができる。
【0041】
また、本実施の形態の固定クランプ100は、一対のスライド部102を、ベース部101に対して移動させる。このため、固定クランプ100が最小幅状態と最大幅状態のときとで、幅方向(実施の形態のX方向)において一方にのみ部材が突出することがない。したがって、特許文献1で生じうるような長い部材がはみ出るといった事象が生じず、美観を損ねにくい。
【0042】
また、本実施の形態によれば、取付面15及び係合部10には、一対のレール部6のスライド方向と交差する方向に貫通し、ビス20が挿入される固定穴13が設けられている。固定穴13に挿入されたビス20の先端部は、一対のレール部6に係止される。このため、レール部6と係合部10とを、より強固に固定することができる。
【0043】
また、本実施の形態では、レール部6には、レール部6のスライド方向と長軸とが一致するように形成された長穴6bが設けられており、固定穴13に挿入されたビス20の先端部が、長穴6bの縁に係止される。ビス20の係止先を、レール部6に設けられた長穴6bの縁とすることで、長穴6bに対するビス20の位置の自由度が高まり、ビス20を止める際の作業のしやすさが向上する。なお、ビス20によりレール部6と係合部10とをより強固に固定できるが、ビス20を設けなくてもよい。
【0044】
また、本実施の形態では、係合部10に、レール部6のスライド方向に沿って配置された複数の溝からなる溝部12が設けられ、レール部6には、溝部12の溝に係合する突起6aが設けられている。そして、突起6aが溝に嵌合することで、レール部6と係合部10とが位置決めされる。このため、ベース部101の幅方向(実施の形態ではX方向)の中央部に対して等しい位置に、一対のスライド部102を配置する際の作業性が向上する。なお、複数の溝をレール部6に設け、溝に嵌合する突起を係合部10に設けてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 挟持片、1a ネジ穴、2 ボルト、3 アーム、4 ボルト収容部、5 基部、6 レール部、6a 突起、6b 長穴、7 カバー、10 係合部、11 台座、12 溝部、13 固定穴、14 センター目印、15 取付面、20 ビス、30 火災感知器、31 建具、100 固定クランプ、101 ベース部、102 スライド部。
【要約】
【課題】建具を傷つけず、取付け作業性がよく、様々なサイズの取付先の建具に対応できて美観を損ねにくい被取付機器の固定クランプを得る。
【解決手段】固定クランプは、建具を挟持する一対の挟持片と、一対の挟持片のそれぞれを、互いに近づく向き及び離れる向きに移動させる一対のボルトと、一対のボルトがそれぞれねじ込まれるボルト収容部を先端側に有する一対のアームと、一対のアームそれぞれの基端側に設けられ、アームと交差する方向に延びるレール部と、対向配置された一対のレール部をスライド可能に支持する係合部と、係合部の一対のレール部を支持する面とは反対側の面に設けられ、被取付機器が取り付けられる取付面とを備えた。
【選択図】
図1