IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧 ▶ ルノー エス.ア.エス.の特許一覧

特許7459367ハイブリッド車両制御方法及びハイブリッド車両制御装置
<>
  • 特許-ハイブリッド車両制御方法及びハイブリッド車両制御装置 図1
  • 特許-ハイブリッド車両制御方法及びハイブリッド車両制御装置 図2
  • 特許-ハイブリッド車両制御方法及びハイブリッド車両制御装置 図3
  • 特許-ハイブリッド車両制御方法及びハイブリッド車両制御装置 図4
  • 特許-ハイブリッド車両制御方法及びハイブリッド車両制御装置 図5
  • 特許-ハイブリッド車両制御方法及びハイブリッド車両制御装置 図6
  • 特許-ハイブリッド車両制御方法及びハイブリッド車両制御装置 図7
  • 特許-ハイブリッド車両制御方法及びハイブリッド車両制御装置 図8
  • 特許-ハイブリッド車両制御方法及びハイブリッド車両制御装置 図9
  • 特許-ハイブリッド車両制御方法及びハイブリッド車両制御装置 図10
  • 特許-ハイブリッド車両制御方法及びハイブリッド車両制御装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両制御方法及びハイブリッド車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/12 20160101AFI20240325BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20240325BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240325BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20240325BHJP
   B60W 20/13 20160101ALI20240325BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20240325BHJP
【FI】
B60W20/12
B60K6/46 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/26 900
B60W20/13
B60L50/61
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023500119
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 IB2021000108
(87)【国際公開番号】W WO2022175702
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 武司
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-99076(JP,A)
【文献】特開2011-148439(JP,A)
【文献】特開2016-83958(JP,A)
【文献】特開2015-147498(JP,A)
【文献】特開2015-145157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/12
B60K 6/46
B60W 10/06
B60W 10/26
B60W 20/13
B60L 50/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンにより駆動されて発電する発電用モータジェネレータと、
走行用モータジェネレータと、
前記発電用モータジェネレータにより発電される電力により充電され、前記走行用モータジェネレータに電力を供給するバッテリと、を備えるハイブリッド車両を制御する方法であって、
コントローラが、
目的地に到着するまでの間に前記エンジンを停止して前記走行用モータジェネレータにより走行するEVモードを実行する区間を設けることで、前記目的地に到着する時点での前記バッテリの充電率を上限充電率より低くする充電率低下制御を実行する、ハイブリッド車両制御方法において、
前記コントローラは、
前記充電率低下制御を実行する際には、前記EVモードで目的地まで到達可能になったら、前記目的地まで前記EVモードを継続したと仮定した場合における、前記目的地に到達するまでのエンジン冷却液の最低温度の推定値が第1閾値以上であれば、前記目的地まで前記EVモードを継続可能になったら前記EVモードを開始して前記目的地まで実行し、
前記最低温度の推定値が前記第1閾値より低ければ、前記EVモードを実行する区間を、前記最低温度の推定値が前記第1閾値以上の場合より短くする、ハイブリッド車両制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両制御方法において、
前記最低温度が前記第1閾値より低い場合の前記EVモードを実行する区間の長さは、前記目的地に到着した時の前記エンジン冷却液の温度が前記第1閾値以上となる長さである、ハイブリッド車両制御方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハイブリッド車両制御方法において、
前記最低温度が前記第1閾値より低い場合には、前記コントローラは前記EVモードを実行する区間を短くした分、前記EVモードの開始タイミングを遅らせる、ハイブリッド車両制御方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のハイブリッド車両制御方法において、
前記最低温度が前記第1閾値より低い場合には、前記コントローラは、前記エンジン冷却液が前記最低温度になる地点に到達する前に、前記最低温度が前記第1閾値以上の場合より短い区間で前記EVモードを実行する、ハイブリッド車両制御方法。
【請求項5】
請求項1に記載のハイブリッド車両制御方法において、
前記コントローラは、前記EVモードの実行中に前記エンジン冷却液の温度が前記第1閾値まで低下したら、前記走行用モータジェネレータによる走行を継続しつつ、前記発電用モータジェネレータが発電しない動作点で前記エンジンを運転する、ハイブリッド車両制御方法。
【請求項6】
請求項1に記載のハイブリッド車両制御方法において、
前記コントローラは、前記EVモードの実行中に、前記エンジン冷却液の温度が前記第1閾値より高く、かつ前記発電用モータジェネレータが発電しない動作点で前記エンジンを運転することで維持される温度である第2閾値まで低下したら、そこから前記目的地まで前記第1閾値以上の前記エンジン冷却液の温度を維持できる場合には前記EVモードを継続し、維持できない場合は、前記走行用モータジェネレータによる走行を継続しつつ、前記発電用モータジェネレータが発電しない動作点で前記エンジンを運転し、前記目的地まで前記第1閾値以上の前記エンジン冷却液の温度を維持できる地点に到達したら前記EVモードを再開する、ハイブリッド車両制御方法。
【請求項7】
請求項1に記載のハイブリッド車両制御方法において、
前記コントローラは、前記EVモードの実行中に、前記エンジン冷却液の温度が前記第1閾値より高く、かつ暖房要求及びデフロスタ要求を満足する温度である第3閾値まで低下したら、そこから前記目的地まで前記第1閾値以上の前記エンジン冷却液の温度を維持できる場合には前記EVモードを継続し、維持できない場合は、前記走行用モータジェネレータによる走行を継続しつつ、前記充電率と前記エンジン冷却液の温度とに応じて作動と停止を繰り返す通常制御により前記エンジンを運転し、前記目的地まで前記第1閾値以上の前記エンジン冷却液の温度を維持できる地点に到達したら前記EVモードを再開する、ハイブリッド車両制御方法。
【請求項8】
エンジンと、
前記エンジンにより駆動されて発電する発電用モータジェネレータと、
走行用モータジェネレータと、
前記発電用モータジェネレータにより発電される電力により充電され、前記走行用モータジェネレータに電力を供給するバッテリと、を備えるハイブリッド車両を制御する装置であって、
コントローラが、目的地に到着するまでの間に前記エンジンを停止して前記走行用モータジェネレータにより走行するEVモードを実行する区間を設けることで、前記目的地に到着する時点での前記バッテリの充電率を上限充電率より低くする充電率低下制御を実行する、ハイブリッド車両制御装置において、
前記コントローラは、
前記充電率低下制御を実行する際には、前記EVモードで目的地まで到達可能になったら、前記目的地まで前記EVモードを継続したと仮定した場合における、前記目的地に到達するまでのエンジン冷却液の最低温度の推定値が第1閾値以上であれば、前記目的地まで前記EVモードを継続可能になったら前記EVモードを開始して前記目的地まで実行し、
前記最低温度の推定値が前記第1閾値より低ければ、前記EVモードを実行する区間を、前記最低温度の推定値が前記第1閾値以上の場合より短くする、ハイブリッド車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2017-81416Aには、ハイブリッド車両の制御として、走行経路上に駐車時間が閾値よりも長くなると予測される駐車地点がある場合には、駐車地点に到達したときのバッテリの充電率を低下させるために、電気エネルギによる走行を優先する制御が開示されている。充電率を低下させるのは、長時間駐車の後の走行時に、暖機のために駆動するエンジンの駆動力を利用してバッテリを充電する「冷間充電」の利用効率を高めるためである。
【発明の概要】
【0003】
ところで、充電率を低下させるためにエンジン停止状態での走行を続けると、エンジン冷却液温度が低下する。一般的なハイブリッド車両においては、エンジン停止中にエンジン冷却液温度が暖房装置やデフロスタ装置の性能を確保し得る下限値に到達すると、エンジンは再始動される。つまり、上記文献の制御では、エンジン冷却液温度の低下に伴いエンジンが再始動してしまい、意図した通りに充電率を下げられなくなるおそれがある。一方、エンジン冷却液温度が上記下限値に到達した後もエンジン停止状態を維持し続けると、暖房装置やデフロスタ装置の性能が低下してしまう。
【0004】
そこで本発明は、暖房装置及びデフロスタ装置の性能を低下させることなく、目標地点までに充電率を低下させることを目的とする。
【0005】
本発明のある態様によれば、エンジンと、エンジンにより駆動されて発電する発電用モータジェネレータと、走行用モータジェネレータと、発電用モータジェネレータにより発電される電力により充電され、走行用モータジェネレータに電力を供給するバッテリと、を備えるハイブリッド車両を制御する方法が提供される。この制御方法において、コントローラは、目的地に到着するまでの間にエンジンを停止して走行用モータジェネレータにより走行するEVモードを実行する区間を設けることで、目的地に到着する時点でのバッテリの充電率を上限充電率より低くする充電率低下制御を実行する。また、コントローラは、充電率低下制御を実行する際には、目的地までEVモードを継続したと仮定した場合における、目的地に到達するまでのエンジン冷却液の最低温度の推定値が第1閾値以上であれば、目的地までEVモードを継続可能になったらEVモードを開始して目的地まで実行し、最低温度の推定値が第1閾値より低ければ、EVモードを実行する区間を、最低温度の推定値が第1閾値以上の場合より短くする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、ハイブリッド車両の概略構成図である。
図2図2は、コントローラの概略構成図である。
図3図3は、第1実施形態にかかる充電率低下制御のフローチャートである。
図4図4は、比較例としてのタイミングチャートである。
図5図5は、図3の制御を実行した場合のタイミングチャートの一例である。
図6図6は、第2実施形態にかかる充電率低下制御のフローチャートである。
図7図7は、図6の制御を実行した場合のタイミングチャートの一例である。
図8図8は、第3実施形態にかかる充電率低下制御のフローチャートである。
図9図9は、図8の制御を実行した場合のタイミングチャートの一例である。
図10図10は、第4実施形態にかかる充電率低下制御のフローチャートである。
図11図11は、図10の制御を実行した場合のタイミングチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0008】
[第1実施形態]
図1はハイブリッド車両100の概略構成図である。図2はコントローラ20の概略構成図である。
【0009】
ハイブリッド車両は、エンジン1と、発電用モータジェネレータ2と、走行用モータジェネレータ3と、第1インバータ4と、第2インバータ5と、バッテリ6と、ディファレンシャル機構7と、駆動輪8と、コントローラ20と、を備える。以下では、ハイブリッド車両100を車両100と称し、モータジェネレータをMGと称す。
【0010】
エンジン1は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンといった内燃機関である。エンジン1は図示しない減速機構を介して発電用MG2に接続される。発電用MG2はエンジン1により駆動されて発電する。走行用MG3は、ディファレンシャル機構7を介して駆動輪8と接続される。走行用MG3は、車両100の駆動を行う一方、減速時には回生発電を行う。
【0011】
発電用MG2と走行用MG3とは、第1インバータ4、第2インバータ5及びバッテリ6等とともに高電圧の電圧回路9を形成する。第1インバータ4は発電用MG2の制御に用いられ、第2インバータ5は走行用MG3の制御に用いられる。第1インバータ4及び第2インバータ5それぞれは、コントローラ20からの指令に基づき三相交流を生成し、生成した三相交流を発電用MG2及び走行用MG3のうち対応するMGに印加する。第1インバータ4及び第2インバータ5は、統合されてもよい。バッテリ6は、発電用MG2及び走行用MG3の電力源を構成する。バッテリ6は発電用MG2で発電された電力及び走行用MG3で回生発電された電力により充電される。
【0012】
コントローラ20は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えた1又は複数のマイクロコンピュータで構成される。コントローラ20は、ROM又はRAMに格納されたプログラムをCPUによって実行することで、エンジン1、第1インバータ4、第2インバータ5等を統合的に制御する。
【0013】
コントローラ20には、バッテリ6の充電率(SOC:State of Charge)を検出するためのSOCセンサ22、エンジン1の冷却液の温度を検出する冷却液温センサ23、車外の温度を検出する外気温センサ24の他、様々なセンサ・スイッチ類からの信号が入力される。また、コントローラ20には、ナビゲーションシステム21から後述する種々の情報が入力される。これらの信号及び情報はコントローラ20が行う制御に用いられる。
【0014】
コントローラ20は、車両100の走行モードとして、EVモードとシリーズハイブリッドモード(以下、シリーズHEVモードと称す)とを有する。EVモードは、エンジン1を停止し、バッテリ6から供給される電力によって走行用MG3を駆動し、走行用MG3のみの駆動力によって走行するモードである。シリーズHEVモードは、エンジン1を駆動して、発電用MG2で発電を行いながら走行用MG3を駆動するモードである。
【0015】
コントローラ20は、アクセル開度APOと、ブレーキペダルの踏力BPFと、車速VSPに基づき、図示しない走行モード選択マップを参酌して走行モードを選択し、選択された走行モードが実現されるようエンジン1及び走行用MG3を駆動する。なお、運転者の操作によりEVモードを選択可能なEVモードスイッチを備える場合には、運転者がEVモードを選択するとEVモードが優先的に実行される。
【0016】
上記の通り、図1に示す車両100のハイブリッドシステムは、エンジン1が専ら発電用MG2の駆動に用いられ、駆動輪8は専ら走行用MG3により駆動される、シリーズ式のハイブリッドシステムである。しかし、本実施形態は、エンジン1が駆動輪8の駆動にも用いられるパラレル式のハイブリッドシステムにも適用可能である。パラレル式の場合も、シリーズ式と同様に、EVモードではエンジン1が停止し、HEVモードではエンジン1が作動する。
【0017】
図2は、コントローラ20の概略構成図である。なお、図2はコントローラ20の機能の一部をブロック図として表したものであり、各ブロックは物理的な構成を意味するものではない。
【0018】
コントローラ20には、イベント検出部20A、エネルギ推定部20B,エンジン冷却液温度推定部20C、目標SOC演算部20D、HEVエネルギ管理部20E及びHMI管理部20Fを備える。
【0019】
イベント検出部20A及びエネルギ推定部20Bには、ナビゲーションシステム21から所定区間毎の地図情報が入力される。地図情報とは、例えば、道路勾配、統計上の平均車速、制限速度、目的地までの距離等である。また、イベント検出部20A及びエネルギ推定部20Bには、ディスプレイ等のインタフェース機器を介して運転者により起動された機能に関する情報も入力される。
【0020】
イベント検出部20Aは、入力された情報に基づいて、目的地までの走行経路上のイベント情報を検出する。イベント情報とは、例えば、登坂路や降坂路の有無、交差点や横断歩道等の有無、高速道路か否か、目的地に到着したか否か等といった、車両100の出力や速度等の制御に影響のあるイベントに関する情報である。これらのイベント情報はエネルギ推定部20Bおよびエンジン冷却液温度推定部20Cへ出力される。
【0021】
エネルギ推定部20Bは、ナビゲーションシステム21から入力された情報及びイベント検出部20Aで検出されたイベント情報に基づいて、目的地に到着するまでの電力の使用量、回生量、及び発電量を推定する。推定結果は目標SOC演算部20Dへ出力される。
【0022】
エンジン冷却液温度推定部20Cは、イベント検出部20Aで検出されたイベント情報と、冷却液温センサ23の検出値及び外気温センサ24の検出値とに基づいて、目的地に到着するまでのエンジン冷却液温度Tclの推移を推定する。推定結果はHEVエネルギ管理部20Eへ出力される。
【0023】
目標SOC演算部20Dは、エネルギ推定部20Bによる推定結果に基づいて、バッテリ6の目標SOCを演算する。例えば、この先に登坂路や高速道路がある場合には、高出力に対応するために上限SOC又はこれに近いSOCを目標SOCとする。また、この先に降坂路がある場合には、降坂路における回生電力を受け入れる余裕を設けるため、降坂路に進入する前の目標SOCを低めに設定する。目標SOCはHEVエネルギ管理部20Eへ出力される。
【0024】
HEVエネルギ管理部20Eは、入力された情報に基づいて、エンジン1の作動・停止及び動作点、走行用MG3の動作点等を決定し、これらに基づいてエンジン1や走行用MG3を制御する。エンジン1の動作点等の情報はHMI管理部20Fへ出力される。
【0025】
エンジン1は、基本的には選択された走行モードに応じて作動、停止する。ただし、HEVモードが選択されているときでもバッテリ6のSOCが上限SOCに到達したらエンジン1は停止し、EVモードが選択されているときでも下限SOCに到達したらエンジン1は作動する。上限SOC及び下限SOCは、バッテリ6の劣化防止の観点から予め設定される。また、EVモードが選択されているときに、エンジン冷却液温度Tclが閾値まで低下したらエンジン1は作動する。これは、エンジン冷却液を熱源とする暖房装置及びデフロスタ装置の機能を確保するためである。エンジン冷却液温度Tclの低下に応じて作動したエンジン1は、エンジン冷却液温度Tclが所定温度まで上昇したら停止する。上述したようにバッテリ6のSOC及びエンジン冷却液温度Tclに応じてエンジン1を作動、停止させる制御を、通常制御と称する。
【0026】
HMI管理部20Fは、HEVエネルギ管理部20Eで決定された情報に基づいて、各アプリケーションの動作状態についての情報を生成し、ナビゲーションシステム21を介してこれらの情報をディスプレイ等のインタフェース機器に表示する。
【0027】
ところで、コントローラ20は、エンジン1がいわゆる冷機状態にあるときにハイブリッドシステムが起動されると、暖機のため、つまりエンジン1本体及びエンジン冷却液の昇温、排気浄化触媒の活性化促進等のために、エンジン1を作動させる。このとき、エンジン1に発電用MG2を駆動させることで、バッテリ6の充電も行う。ハイブリッドシステム全体の効率を考えると、バッテリ6の充電のためだけにエンジン1を作動させるよりも、暖機のためにエンジン1を作動させたときに併せて充電も行う方が望ましい。しかし、システム始動時にバッテリ6のSOCが上限SOCに達していると、暖機中の充電をすることができない。
【0028】
そこで、コントローラ20は、目的地に到達した後に、エンジン1が冷機状態またはこれに近い状態になる程度の長時間の駐車が見込まれる場合には、目的地に到達するまでにバッテリ6のSOCを十分に低下させるために、EVモードを積極的に行う。このバッテリ6のSOCを十分に低下させるためにEVモードを積極的に行う制御を、充電率低下制御と称する。なお、長時間の駐車が見込まれる場合とは、例えば、目的地が自宅の場合、つまり外出先から帰宅する場合や、目的地が旅行先の宿泊施設の場合等である。
【0029】
ただし、EVモード中はエンジン1が停止しているため、エンジン冷却液温度Tclが低下する。このため、EVモードを行う時間が長くなると、エンジン冷却液温度Tclが低下することによって暖房装置及びデフロスタ装置の性能が低下するおそれがある。上記の通常制御によれば、エンジン冷却液温度Tclが低下した場合にはエンジン1が作動するので暖房装置等の性能低下は防止できるが、同時に発電用MG2による発電も行われるので、バッテリ6のSOCを十分に低下させることができない。
【0030】
そこで、コントローラ20は、目的地到達までにバッテリ6のSOCを十分に低下させ、かつ暖房装置及びデフロスタ装置の性能低下を防止するために、以下に説明する制御を実行する。
【0031】
図3は、本実施形態における充電率低下制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【0032】
本制御ルーチンは、目的地到達までにバッテリ6のSOCを低下させる必要がある場合に、そこから目的地までEVモードを実行するとエンジン冷却液温度Tclがどこまで低下するかを推定し、第1閾値Tcl1を下回ると推定した場合にはEVモードを行う区間を縮小するものである。本制御ルーチンは、目的地までの詳細なイベント情報がナビゲーションシステム21から入力された時点で開始する。詳細なイベント情報は、例えば数キロメートルの区間毎に入力されるので、本制御ルーチンは、目的地まで数キロメートルの地点で開始される。なお、所定の走行条件におけるEVモードでの走行可能距離をバッテリ6の容量に基づいて予め求めておき、目的地までの距離が当該走行可能距離以下になったら開始してもよい。本制御ルーチンによりEVモードを開始するまでは、エンジン1は上述した通常制御により作動する。
【0033】
また、本制御ルーチンは、目的地到着後の長時間の駐車によってエンジン1が冷機状態になることを前提とするものなので、運転者により設定された目的地が、長時間の駐車が行われないことが明らかな場所である場合には、必ずしも本制御ルーチンを実行する必要はない。以下、ステップにしたがって説明する。
【0034】
ステップS100で、コントローラ20は外気温が判定用の閾値である第1外気温より高いか否かを判定し、第1外気温より高い場合にはステップS101の処理を実行し、第1外気温以下の場合は本ルーチンを終了する。第1外気温は、予め設定した判定用の閾値であり、目的地到着後の駐車中にエンジン1が冷機状態になる可能性がある気温である。
【0035】
ステップS101で、コントローラ20は、そこから目的地までEVモードを実行すると仮定した場合の、目的地までに使用するエネルギ(電力)をイベント情報に基づいて予測する。例えば、目的地までの走行経路において、登坂路の区間が長いほど使用エネルギは大きくなり、また、交差点や横断歩道といった停止と発進を伴うイベントが多いほど使用エネルギは大きくなる。一方、降坂路の区間が長いほど使用エネルギは小さくなり、また、一定車速で走行できる区間が長いほど使用エネルギは小さくなる。
【0036】
ステップS102で、コントローラ20は、EVモードで目的地まで到達できるか否かを判定し、到達できる場合はステップS103の処理を実行し、到達できない場合はステップS101の処理を繰り返す。
【0037】
ステップS103で、コントローラ20は、目的地までEVモードを実行すると仮定した場合の、目的地に到達するまでの最低エンジン冷却液温度Tclminを予測し、この最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1以上であるか否かを判定する。第1閾値Tcl1は、例えば、暖房装置及びデフロスタ装置が要求性能を満たすことが可能な下限温度とする。
【0038】
コントローラ20は、ステップS103において最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1以上であると判定した場合はステップS104の処理を実行し、そうでない場合はステップS103の処理を繰り返す。
【0039】
ステップS104で、コントローラ20は、EVモードを開始し、目的地到着までEVモードを継続する。
【0040】
次に、上記制御ルーチンを実行することによる効果について説明する。
【0041】
図4は、比較例の充電率低下制御を実行した場合のタイミングチャートである。比較例の充電率低下制御は、目的地に到着するまでのエンジン冷却水温を考慮せずに、バッテリ6のSOCのみに基づいてEVモード実行の可否を判断するものである。図5は、本実施形態の充電率低下制御を実行した場合のタイミングチャートである。図4図5のいずれも、目的地までの距離がD1[m]の地点で制御ルーチンを開始し、タイミングT41、タイミングT51において、EVモードで目的地まで到達可能になったものとする。
【0042】
比較例の制御では、図4に示す通り、EVモードで目的地まで到達可能になったタイミングT41でEVモードが開始される。このため、エンジン冷却液温度Tclが第1閾値Tcl1に到達したタイミングT42においてエンジン1が始動してしまう。エンジン1の通常制御では、エンジン冷却液温度維持のためにエンジン始動した場合にはエンジン冷却液温度Tclが所定量上昇するまでエンジン1が作動し続ける。そして、エンジン冷却液温度Tclが所定量上昇したタイミングT43で、EVモードが再開される。
【0043】
これに対し、本実施形態の制御では、図5に示す通り、タイミングT51でEVモードを開始すると図中に破線で示した通り最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1を下回るとコントローラ20が予測するので、タイミングT51においてEVモードは開始されない。そして、タイミングT52において、目的地到着までEVモードを実行しても最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1を下回ることがないとコントローラ20が判定したら、EVモードが開始される。すなわち、目的地到着までに最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1を下回る場合には、下回ることがないと判定した場合に比べて、EVモードを実行する区間が短く、かつEVモードの開始時期が遅くなる。なお、最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1より低い場合においてEVモードを実行する区間の長さは、目的地到着時のエンジン冷却液温度Tclが第1閾値Tcl1以上となる長さである。
【0044】
上記の通り、比較例の制御では、いったん停止したエンジン1を再始動し、また停止するという制御の煩わしさがある。これに対し、本実施形態の制御では、EVモードを開始した後は目的地までエンジン1は作動しない。
【0045】
また、比較例の制御では、エンジン1が再始動するタイミングが目的地に近いと、目的地到着時までにバッテリ6のSOCが十分に低下しないおそれがある。これに対し本実施形態の制御では、目的地に到着するタイミングT54において、バッテリ6のSOCは上限SOC(図中のSOC2)より十分に低いSOC1まで低下させることができ、かつ、目的地到着までエンジン冷却液温度Tclを第1閾値Tcl1より高く維持することができる。
【0046】
さらには、比較例の制御ではエンジン冷却液温度Tclが通常制御により維持される基準温度TclSより低くなる区間、つまり暖房装置やデフロスタ装置の性能が通常制御時より低下する区間がタイミングT41から目的地到着まで続く。これに対し本実施形態の制御では、エンジン冷却液温度Tclが基準温度TclSより低くなる区間はタイミングT52から目的地到着までであり、比較例の制御より短い。
【0047】
なお、本実施形態の制御は、エンジン冷却液温度Tclに応じてEVモードを実行する区間を短くするものであるが、この「短くする」にはEVモードを実行しないことも含まれる。例えば、極低温の環境下で走行している場合のように、エンジン1を停止するとエンジン冷却液温度Tclが直ちに第1閾値Tcl1を下回るためEVモードを実行可能な区間がごくわずかになるときには、EVモードを行わないようにしてもよい。
【0048】
以上の通り本実施形態のハイブリッド車両制御方法は、エンジン1と、エンジン1により駆動されて発電する発電用MG2と、走行用MG3と、発電用MG2により発電される電力により充電され、走行用MG3に電力を供給するバッテリ6と、を備える車両100を制御する方法である。この制御方法において、コントローラ20は、目的地に到着するまでの間にエンジン1を停止して走行用MG3により走行するEVモードを実行する区間を設けることで、目的地に到着する時点でのバッテリ6のSOCを上限SOCより低くする充電率低下制御を実行する。また、コントローラ20は、充電率低下制御を実行する際には、目的地までEVモードを継続したと仮定した場合における、目的地に到達するまでのエンジン冷却液の最低温度の推定値である最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値以上であれば、目的地までEVモードを継続可能になったらEVモードを開始して目的地まで実行する。最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値より低ければ、EVモードを実行する区間を、最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値以上の場合より短くする。これにより、エンジン冷却液温度Tclの低下が抑制されるので、暖房装置及びデフロスタ装置の性能低下を抑制できる。
【0049】
本実施形態では、最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1より低い場合のEVモードを実行する区間の長さは、目的地到着時のエンジン冷却液温度Tclが第1閾値Tcl1以上となる長さである。これにより、目的地到着まで暖房装置及びデフロスタ装置の性能を維持できる。
【0050】
本実施形態では、最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1より低い場合には、コントローラ20はEVモードを実行する区間を短くした分、EVモードの開始タイミングを遅らせる。これにより、EVモード実行中にエンジン1が再始動することがなく、かつ、目的地到着まで暖房装置及びデフロスタ装置の性能を維持できる。
【0051】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。本実施形態は第1実施形態と車両100及びコントローラ20の構成は同じであるが、充電率低下制御の内容が相違する。以下、この相違する点を中心に説明する。
【0052】
図6は、本実施形態にかかる充電率低下制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。ステップS200からS202は第1実施形態のステップS100からS102と同様なので説明を省略する。
【0053】
コントローラ20は、ステップS203においてEVモードを開始し、続くステップS204において、第1実施形態のステップS103と同様の予測及び判定を行う。そして、コントローラ20は、目的地までに最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1を下回ると判定した場合はステップS205の処理を実行する。一方、コントローラ20は、目的地まで最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1以上であると判定した場合は、そのまま本制御ルーチンを終了する。つまり、目的地到着までEVモードを継続する。
【0054】
ステップS205において、コントローラ20は、エンジン冷却液温度Tclが第1閾値Tclに到達したら、エンジン1を非発電動作点で運転する。非発電動作点とは、発電用MG2で発電が行われない動作点である。例えば、エンジン1のアイドリング制御と同様の制御ルーチンにより、発電用MG2で発電が行われず、かつエンジン冷却液温度Tclが第1閾値Tcl1に維持される動作点でエンジン1を運転する。これにより、バッテリ6のSOCを増大させることなく、エンジン冷却液温度Tclを第1閾値Tcl1以上に維持することができる。
【0055】
図7は、本実施形態の充電率低下制御を実行した場合のタイミングチャートである。
【0056】
本実施形態では、EVモードで目的地まで到達可能になったタイミングT71でEVモードが開始される。そして、タイミングT72においてエンジン冷却液温度Tclが第1閾値Tcl1に到達したら、そこから目的地に到着するタイミングT73まで、エンジン1は非動作点で運転される。つまり、EVモードで走行可能な区間がタイミングT71からタイミングT73であるのに対し、実際にEVモードを実行する区間はタイミングT71からタイミングT72までに短縮される。そして、タイミングT72以降は、エンジン1が非発電動作点で作動することになる。換言すると、最低エンジン冷却液温度Tclminになる地点に到達する前に、最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1以上の場合より短い区間でEVモードを実行する。これにより、バッテリ6のSOCを低下させつつ、エンジン冷却液温度Tclを第1閾値Tcl1以上に維持することができる。
【0057】
以上の通り本実施形態では、最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1より低い場合には、コントローラ20はエンジン冷却液が最低エンジン冷却液温度Tclminになる地点に到達する前に、最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1以上の場合より短い区間でEVモードを実行する。これにより、充電率低下制御を行うことによる暖房装置及びデフロスタ装置の性能低下を抑制できる。
【0058】
本実施形態では、コントローラ20は、EVモードの実行中にエンジン冷却液温度Tclが第1閾値Tcl1まで低下したら、走行用MG3による走行を継続しつつ、発電用MG2が発電しない動作点でエンジンを運転する。これにより、エンジン冷却液温度Tclを第1閾値Tcl1に維持しつつ、バッテリ6のSOCを低下させることができる。
【0059】
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。本実施形態は第2実施形態と車両100及びコントローラ20の構成は同じであるが、充電率低下制御の内容が相違する。以下、この相違する点を中心に説明する。
【0060】
図8は、本実施形態にかかる充電率低下制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。ステップS300からS303は第2実施形態のステップS200からS203と同様なので説明を省略する。
【0061】
ステップS304において、コントローラ20は、目的地到着までの最低エンジン冷却液温度Tclminを推定し、最低エンジン冷却液温度Tclminが第2閾値Tcl2以下になるか否かを判定する。第2閾値は、第1閾値Tcl1より高い温度とする。例えば、第1閾値Tcl1は暖房装置及びデフロスタ装置の性能を確保できるものの、運転者によってはこれらの性能が十分でないと感じる可能性がある温度とし、第2閾値はそのような可能性がない温度とする。
【0062】
コントローラ20は、目的地までに最低エンジン冷却液温度Tclminが第2閾値Tcl2以下になると判定した場合は、ステップS305の処理を実行し、そうでない場合はそのまま本制御ルーチンを終了する。
【0063】
ステップS305において、コントローラ20は第2実施形態のステップS204と同様に、目的地までに最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1を下回るか否かを判定する。そして、最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1を下回ると判定した場合はステップS306の処理を実行し、そうでない場合はそのまま本制御ルーチンを終了する。つまり、目的地に到着するまでに最低エンジン冷却液温度Tclminが第2閾値Tcl2以下になる場合でも、目的地到着時点で第1閾値以上を維持できるのであれば、目的地までEVモードを継続する。
【0064】
ステップS306において、コントローラ20は、エンジン冷却液温度Tclが第2閾値Tcl2に到達したらエンジン1を作動させ、非発電動作点で運転する。ここでの非発電動作点は、発電用MG2で発電が行われず、かつエンジン冷却液温度Tclを第2閾値Tcl2に維持できる動作点である。
【0065】
ステップS307において、コントローラ20はステップS305と同様に、目的地までに最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1を下回るか否かを判定する。この判定は、目的地までに最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1を下回らないと判定されるまで繰り返される。そして、目的地までに最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1を下回らないと判定されたら、コントローラ20はステップS308においてEVモードを再開する。
【0066】
図9は、本実施形態の充電率低下制御を実行した場合のタイミングチャートである。
【0067】
本実施形態では、EVモードで目的地まで到達可能になったタイミングT91でEVモードが開始される。タイミングT92においてエンジン冷却液温度Tclが第2閾値Tcl2に到達したら、エンジン1が非発電動作点で運転されてエンジン冷却液温度Tclが第2閾値Tcl2に維持される。そして、タイミングT93において、目的地到着までEVモード実行しても最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1を下回ることがないとコントローラ20が判定したらEVモードが再開され、目的地に到着するタイミングT94までEVモードが継続される。つまり、EVモードで走行可能な区間がタイミングT91からタイミングT94であるのに対し、実際にEVモードを実行する区間はタイミングT91からタイミングT92までと、タイミングT93からタイミングT94までに短縮される。そして、タイミングT92からタイミングT93までの区間は、エンジン冷却液温度Tclが第2閾値Tcl2に維持される。
【0068】
以上の通り本実施形態では、コントローラ20は、EVモードの実行中に、エンジン冷却液温度Tclが第1閾値Tcl1より高く、かつ発電用MG2が発電しない動作点でエンジン1を運転することで維持される温度である第2閾値Tcl2まで低下したら、そこから目的地まで第1閾値Tcl1以上のエンジン冷却液温度Tclを維持できる場合にはEVモードを継続し、維持できない場合は、走行用MG3による走行を継続しつつ、発電用MG2が発電しない動作点でエンジン1を運転し、目的地まで第1閾値Tcl1以上のエンジン冷却液温度Tcl1を維持できる地点に到達したらEVモードを再開する。これにより、バッテリ6のSOCを低下させつつ、目的地到着までエンジン冷却液温度Tclを第1閾値Tcl1以上に維持できる。さらに、エンジン冷却液温度Tclが第2閾値Tcl2に維持される区間があることにより、エンジン冷却液温度Tclの低下による暖房装置及びデフロスタ装置の性能低下を抑制できる。
【0069】
[第4実施形態]
第4実施形態について説明する。本実施形態は第3実施形態と車両100及びコントローラ20の構成は同じであるが、充電率低下制御の内容が相違する。以下、この相違する点を中心に説明する。
【0070】
図10は、本実施形態にかかる充電率低下制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。ステップS400からS405と第3実施形態のステップS300からS305とは、ステップS404及びステップS304における判定に用いる閾値が異なる他は同様である。ステップS304では最低エンジン冷却液温度Tclminと第2閾値Tcl2とを比較するが、ステップS404では、最低エンジン冷却液温度Tclminと第3閾値Tcl3とを比較する。本実施形態で用いる第3閾値Tcl3は、運転者によらず暖房装置及びデフロスタ装置の性能が十分であると感じるエンジン冷却液温度Tclである。したがって、第3閾値Tcl3は第2閾値Tcl2に置き換えることもできる。
【0071】
コントローラ20は、ステップS405において目的地到着までに最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1を下回ると判定したら、ステップS406の処理を実行し、そうでない場合はそのまま本制御ルーチンを終了する。
【0072】
ステップS406において、コントローラ20は、エンジン冷却液温度Tclが第3閾値Tcl3に到達したらエンジン1を通常制御にて運転する。つまり、エンジン1が作動することにより発電用MG2が発電する。
【0073】
ステップS407において、コントローラ20は、ステップS404と同様に、目的地到着までの最低エンジン冷却液温度Tclminを推定し、最低エンジン冷却液温度Tclminが第3閾値Tcl3以下になるか否かを判定する。コントローラ20は、最低エンジン冷却液温度Tclminが第3閾値Tcl3以下になると判定した場合はステップS408の処理を実行し、そうでない場合はステップS409の処理を実行する。
【0074】
ステップS408において、コントローラ20は、ステップS405と同様に、目的地までに最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1を下回るか否かを判定する。コントローラ20は、最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1を下回ると判定した場合は、ステップS406の処理に戻り、そうでない場合はステップS409においてEVモードを再開する。
【0075】
図11は、本実施形態の充電率低下制御を実行した場合のタイミングチャートである。
【0076】
本実施形態では、EVモードで目的地まで到達可能になったタイミングT111でEVモードが開始され、タイミングT112においてエンジン冷却液温度Tclが第3閾値Tcl3に到達したら、エンジン1が通常制御にて運転される。そして、タイミングT115において、目的地到着までEVモードを実行しても最低エンジン冷却液温度Tclminが第1閾値Tcl1を下回ることがないとコントローラ20が判定したらEVモードが再開され、目的地に到着するタイミングT116までEVモードが継続される。
【0077】
タイミングT112からタイミングT115までの区間は、図10のステップS406からステップS408が繰り返される。つまり、エンジン1は通常制御で運転されるので、本制御ルーチンと並行して、エンジン冷却液温度Tclが基準温度TclSまで上昇したらエンジン1が停止し、第3閾値Tcl3まで低下したらエンジン1が作動するという制御が実行される。
【0078】
本実施形態の充電率低下制御によれば、第3実施形態と同様に、バッテリ6のSOCを低下させつつ、目的地到着までエンジン冷却液温度Tclを第1閾値Tcl1以上に維持できる。さらに、エンジン冷却液温度Tclが第3閾値Tcl3に維持される区間があることにより、エンジン冷却液温度Tclの低下による暖房装置及びデフロスタ装置の性能低下を抑制できる。ただし、本実施形態ではエンジン1を通常制御にて運転する区間においてバッテリ6のSOCが上昇するので、目的地到着時のバッテリ6のSOCが第3実施形態の場合より高くなるおそれがある。そこで、本実施形態の充電率低下制御は、運転者がEVモードスイッチでEVモードを選択した場合、到着後にエンジン1が冷機状態になるほど長く留まらないことが明らかな目的地が設定されている場合等に実行することとする。
【0079】
以上の通り本実施形態では、コントローラ20は、EVモードの実行中に、エンジン冷却液温度Tclが第1閾値Tcl1より高く、かつ暖房要求及びデフロスタ要求を満足する温度である第3閾値Tcl3まで低下したら、そこから目的地まで第1閾値Tcl1以上のエンジン冷却液温度Tclを維持できる場合にはEVモードを継続する。一方、維持できない場合は、走行用MG3による走行を継続しつつ、バッテリ6のSOCとエンジン冷却液温度Tclとに応じて作動と停止を繰り返す通常制御によりエンジン1を運転し、目的地まで第1閾値Tcl1以上のエンジン冷却液温度Tclを維持できる地点に到達したらEVモードを再開する。これにより、バッテリ6のSOCを低下させつつ、目的地到着までエンジン冷却液温度Tclを第1閾値Tcl1以上に維持できる。さらに、エンジン冷却液温度Tclが第3閾値Tcl3に維持される区間があることにより、エンジン冷却液温度Tclの低下による暖房装置及びデフロスタ装置の性能低下を抑制できる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11