(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】改質シリコン材料及び製造方法、負極材料、負極極板、二次電池、電池モジュール、電池パック並びに電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20240325BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240325BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240325BHJP
C01B 33/10 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/48
C01B33/10
(21)【出願番号】P 2023502605
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(86)【国際出願番号】 CN2021126778
(87)【国際公開番号】W WO2023070382
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2023-01-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】官英▲傑▼
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼玉珍
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼晴岩
(72)【発明者】
【氏名】温▲嚴▼
(72)【発明者】
【氏名】黄起森
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼▲豊▼▲剛▼
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/001620(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第113270587(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/10
H01M 4/36
H01M 4/38
H01M 4/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシェル構造を有する改質シリコン材料であって、コアと、前記コアを被覆する第一の被覆層と、前記第一の被覆層の外を被覆する第二の被覆層とを含み、前記コアは、シリコン単体及び/又はシリコン合金であり、前記第一の被覆層は、シリコン酸化物を含み、前記第二の被覆層は、フッ化リチウム、炭酸リチウム及び炭素を含み、
前記フッ化リチウムの含有量は0.35%~1.27%であり、前記炭酸リチウムの含有量は0.01%~0.25%であり、前記炭素の含有量は0.80%~1.50%であり、前記改質シリコン材料にお
いて、炭素元素
に対するリチウム元素の重量比は
6.63%~25.54%である、改質シリコン材料。
【請求項2】
前記第二の被覆層は、水酸化リチウムをさらに含む、請求項1に記載の改質シリコン材料。
【請求項3】
前記シリコン酸化物は、SiO
xであり
、0<x<2で
ある、請求項1又は2に記載の改質シリコン材料。
【請求項4】
前記シリコン酸化物は、0.3≦x≦1.5である、請求項3に記載の改質シリコン材料。
【請求項5】
前記第二の被覆層は
、
0~0.07%の水酸化リチウ
ムを含む、請求項1
乃至4のいずれか1項に記載の改質シリコン材料。
【請求項6】
前記改質シリコン材料の粒径D
v50は、1~3.5μmで
ある、請求項1
乃至5のいずれか1項に記載の改質シリコン材料。
【請求項7】
前記改質シリコン材料の粒径D
v
50は、1.1~3μmである、請求項6に記載の改質シリコン材料。
【請求項8】
前記改質シリコン材料の比表面積は、5.5~14m
2/gで
ある、請求項1
乃至7のいずれか1項に記載の改質シリコン材料。
【請求項9】
前記改質シリコン材料の比表面積は、6~13m
2
/gである、請求項8に記載の改質シリコン材料。
【請求項10】
前記改質シリコン材料の単一の粒子内の孔
の数は、10よりも小さく、前記孔の孔径は、50nmよりも低くない、請求項1
乃至9のいずれか1項に記載の改質シリコン材料。
【請求項11】
前記改質シリコン材料におけるフッ素元素の重量パーセントは、0.1%~3%で
ある、請求項1
乃至10のいずれか1項に記載の改質シリコン材料。
【請求項12】
前記改質シリコン材料におけるフッ素元素の重量パーセントは、0.2%~2%である、請求項11に記載の改質シリコン材料。
【請求項13】
前記シリコン合金は、珪素鉄合金、シリコンアルミニウム合金、シリコンマンガン合金、シリコン錫合金及びシリコンゲルマニウム合金から選択される少なくとも一つである、請求項1
乃至12のいずれか1項に記載の改質シリコン材料。
【請求項14】
前記第一の被覆層の厚さは、1~8nmである、請求項1
乃至13のいずれか1項に記載の改質シリコン材料。
【請求項15】
前記第二の被覆層の厚さは、5~45nmである、請求項1
乃至14のいずれか1項に記載の改質シリコン材料。
【請求項16】
改質シリコン材料の製造方法であって
(1)シリコン単体及び/又はシリコン合金であるコアを酸素含有雰囲気において熱処理し、前処理物を得るステップと、
(2)前記前処理物と、PVDFと、炭酸リチウム及び/又は水酸化リチウムであるリチウム含有化合物と、溶媒とを混合するステップと、
(3)混合物に対して順に乾燥、焙焼、冷却、破砕、篩分を行い、改質シリコン材料を得るステップとを含
み、
前記改質シリコン材料は、前記コアを被覆する第一の被覆層と、前記第一の被覆層の外を被覆する第二の被覆層とを含み、前記第一の被覆層は、シリコン酸化物を含み、前記第二の被覆層は、フッ化リチウム、炭酸リチウム及び炭素を含み、前記フッ化リチウムの含有量は0.35%~1.27%であり、前記炭酸リチウムの含有量は0.01%~0.25%であり、前記炭素の含有量は0.80%~1.50%であり、前記改質シリコン材料において、炭素元素に対するリチウム元素の重量比は6.63%~25.54%である、改質シリコン材料の製造方法。
【請求項17】
ステップ(1)では、200℃~400℃で0.5~3時間熱処理する、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(3)では、前記焙焼を不活性ガス雰囲気で行い、前記焙焼の温度は、800℃~1000℃であり
、前記焙焼の時間は、3~5時間である、請求項
16又は
17に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(3)では、焙焼前、乾燥後の物質を300℃~500℃で1~2時間予熱する、請求項
16乃至18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(2)では、前記PVDFと、リチウム含有化合物と、前処理物との重量比率は、1:(0.1~2):(13~155)である、請求項
16乃至19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
負極活物質であって、請求項1
乃至15のいずれか1項に記載の改質シリコン材
料である、負極活物質。
【請求項22】
負極極板であって、請求項
21に記載の負極活物質を含む、負極極板。
【請求項23】
二次電池であって、請求項
22に記載の負極極板を含む、二次電池。
【請求項24】
電池モジュールであって、請求項
23に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項25】
電池パックであって、請求項
24に記載の電池モジュールを含む、電池パック。
【請求項26】
電力消費装置であって、請求項
23に記載の二次電池、請求項
24に記載の電池モジュール又は請求項
25に記載の電池パックから選択される少なくとも一つを含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、リチウム電池の技術分野に関し、特にコアシェル構造を有する改質シリコン材料、改質シリコン材料の製造方法、負極活物質、負極極板、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池の応用範囲がますます広がっていることにつれて、リチウムイオン電池は、水力、火力、風力、太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動工具、電動自転車、電動バイク、電気自動車、軍事用機器、航空・宇宙飛行などの多くの分野で広く使われている。リチウムイオン電池が飛躍的に発展しているため、そのエネルギー密度、サイクル性能及び安全性能などにもより求められる。
【0003】
シリコン材料は、リチウムイオン電池に用いられる通常の負極活物質であるが、シリコン材料は、グラム容量が低く、導電性が低いため、リチウムイオン電池の初回クーロン効率が低くくなってしまう。また、シリコン材料は、電池の充放電過程に副反応が発生しやすいため、電解液の消費量が増大し、電池のサイクル性能が低下してしまう。現在、主にフッ素塩又はリチウムパウダーを原料として採用してシリコン材料の表面にフッ化リチウム被覆層を形成し、又はアスファルト又はポリマーを採用してシリコン材料の表面に被覆層を形成することで、副反応を抑制する。しかし、前の方法では、フッ化リチウム被覆層は、シリコン材料の膨張収縮過程に欠落しやすく、材料安定性が低いとともに、フッ素塩の毒性が比較的に強く、リチウムパウダーが燃えやすく、原料の安全性が低い。後の方法で製造した改質シリコン材料からなるSEI膜は、有機成分含有量が高く、導電性が低い。
【0004】
そのため、現在、リチウムイオン電池の初回クーロン効率及びサイクル性能を向上させるために、グラム容量が高く、導電性が良好な改質シリコン材料が早急に必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本出願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シリコン材料のグラム容量が低く、導電性が低い問題を解決しつつ、電池の初回クーロン効率が低く、サイクル容量保持率が低い問題を解決するために、コアシェル構造を有する改質シリコン材料、改質材料の製造方法、負極活物質、負極極板、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するために、本出願の第一の方面によるコアシェル構造を有する改質シリコン材料は、コアと、コアを被覆する第一の被覆層と、第一の被覆層の外を被覆する第二の被覆層とを含み、コアは、シリコン単体及び/又はシリコン合金であり、第一の被覆層は、シリコン酸化物を含み、第二の被覆層は、フッ化リチウム、炭酸リチウム及び炭素を含み、改質シリコン材料におけるリチウム元素と炭素元素との重量比は、6%~52%であり、選択的に、6.5%~50%である。
【0007】
これにより、本出願の改質シリコン材料は、グラム容量が高く、導電性が良好で、プレス密度が高く、電解液の浸潤性が良好で、体積拡張率が低く、電池に用いられる時に生じた副反応が少なく、本出願の改質シリコン材料で製造された電池は、エネルギー密度が高く、初回クーロン効率が高く、サイクル容量保持率が高い。
【0008】
いずれかの実施の形態では、第二の被覆層は、水酸化リチウムをさらに含む。これにより、改質シリコン材料は、グラム容量が高く、導電性が良好で、プレス密度が高く、電解液の浸潤性が良好で、体積拡張率が低く、電池に用いられる時に生じた副反応が少なく、本出願の改質シリコン材料で製造される電池は、エネルギー密度が高く、初回クーロン効率及びサイクル容量保持率が高い。
【0009】
いずれかの実施の形態では、シリコン酸化物は、SiOxであり、そのうち、0<x<2であり、選択的に、0.3≦x≦1.5である。これにより、改質シリコン材料の体積拡張率を低減させ、シリコン材料が電池に用いられる時に副反応の発生を減少させる。
【0010】
いずれかの実施の形態では、第二の被覆層は、
フッ化リチウムであり、0.1%~2.9%(選択的に、0.27%~2.73%)のフッ化リチウムと、
炭酸リチウムであり、0.005%~3.8%(選択的に、0.01%~3.5%)の炭酸リチウムと、
炭素であり、0.15%~3%(選択的に、0.3%~2.8%)の炭素と、
水酸化リチウムであり、0~0.07%(選択的に、0~0.06%)の水酸化リチウムとを含み、
これにより、改質シリコン材料の体積拡張率をさらに低減させ、改質シリコン材料のグラム容量、導電性及び電解液の浸潤性を向上させ、改質シリコン材料が電池に用いられる時に副反応の発生をさらに減少させ、本出願の改質シリコン材料で製造される電池のエネルギー密度、初回クーロン効率及びサイクル容量保持率をさらに向上させる。
【0011】
いずれかの実施の形態では、改質シリコン材料の粒径Dv50は、1~3.5μmであり、選択的に、1.1~3μmである。粒径が大きすぎると、電池の充放電サイクル過程でリチウム析出が発生しやすく、改質シリコン材料粒子が集電体との電気的接触を失いやすいため、電池の初回クーロン効率及びサイクル性能が低下してしまう。粒径が小さすぎると、改質シリコン材料におけるSEI膜を形成する電気化学反応サイトが多すぎるため、電池の初回クーロン効率が低下するとともに、改質シリコン材料のプレス密度及び電解液の浸潤性が低下し、電池のサイクル性能が劣化し、これにより、本出願では、改質シリコン材料のプレス密度及び電解液の浸潤性を向上させ、改質シリコン材料の体積拡張率を低減させ、電池の充放電サイクル過程での改質シリコン材料のリチウム析出の問題を緩和し、改質シリコン材料粒子と集電体との電気的接触を保持することにより、電池の初回クーロン効率及びサイクル容量保持率を向上させる。
【0012】
いずれかの実施の形態では、改質シリコン材料の比表面積は、5.5~14m2/gであり、選択的に、6~13m2/gである。これにより、改質シリコン材料は、適切な反応活性サイトの数を有し、改質シリコン材料が電池に用いられる時に副反応の発生をさらに減少させ、それにより、電池のサイクル性能をさらに向上させる。
【0013】
いずれかの実施の形態では、改質シリコン材料の単一の粒子内の孔数は、10よりも小さく、例えば、0、1、2、3、4、5、7、9であり、孔の孔径は、50nmよりも低くない。これにより、改質シリコン材料の孔隙界面の副反応を低減させ、改質シリコン材料の電解液の浸潤性を高めることにより、電池の初回クーロン効率及びサイクル性能をさらに向上させる。
【0014】
いずれかの実施の形態では、改質シリコン材料におけるフッ素元素の重量パーセントは、0.1%~3%であり、選択的に、0.2%~2%である。これにより、改質シリコン材料の導電性をさらに向上させ、材料の表面抵抗を低減させ、改質シリコン材料の電池の充放電サイクル過程での副反応を減少させ、それにより、電池の初回クーロン効率及びサイクル性能をさらに向上させる。
【0015】
いずれかの実施の形態では、改質シリコン材料における炭素元素の重量パーセントは、0.2%~3%であり、選択的に、0.3%~2.8%である。これにより、改質シリコン材料のグラム容量及び導電性をさらに向上させ、改質シリコン材料の体積拡張率及び副反応をさらに減少させ、それにより、電池の初回クーロン効率及びサイクル性能をさらに向上させる。
【0016】
いずれかの実施の形態では、シリコン合金は、珪素鉄合金、シリコンアルミニウム合金、シリコンマンガン合金、シリコン錫合金及びシリコンゲルマニウム合金から選択される少なくとも一つである。シリコン合金を選択することにより、改質シリコン材料の体積拡張率をさらに低減させ、電池の初回クーロン効率及びサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0017】
いずれかの実施の形態では、第一の被覆層の厚さは、1~8nmであり、例えば、2、3、4nmである。このように設置することにより、改質シリコン材料の体積拡張率をさらに低減させ、改質シリコン材料が電池に用いられる時に副反応の発生を減少させるとともに、十分な導電性を確保する。
【0018】
いずれかの実施の形態では、第二の被覆層の厚さは、5~45nmであり、選択的に、7~43nmである。このように設置することにより、改質シリコン材料のグラム容量及び導電性を向上させ、改質シリコン材料の電解液の浸潤性を向上させることにより、電池の初回クーロン効率及びサイクル容量の保持を向上させる。
【0019】
本出願の第二の方面による改質シリコン材料の製造方法を提供し、
(1)シリコン単体及び/又はシリコン合金であるコアを酸素含有雰囲気において熱処理し、前処理物を得るステップと、
(2)前処理物と、PVDFと、炭酸リチウム及び/又は水酸化リチウムであるリチウム含有化合物と、溶媒とを混合するステップと、
(3)混合物に対して順に乾燥、焙焼、冷却、破砕、篩分を行い、改質シリコン材料を得るステップを含む。
【0020】
これにより、本出願の方法で製造される改質シリコン材料は、グラム容量が高く、導電性が良好で、プレス密度が高く、電解液の浸潤性が良好で、体積拡張率が低く、電池に用いられる時に生じた副反応が少なく、この材料で製造される電池のエネルギー密度が高く、初回クーロン効率及びサイクル容量保持率が高い。
【0021】
いずれかの実施の形態では、ステップ(1)では、200℃~400℃で0.5~3時間熱処理する。これにより、得られた前処理物の外層は、シリコン酸化物である。
【0022】
いずれかの実施の形態では、ステップ(3)では、焙焼を不活性ガス雰囲気で行い、焙焼の温度は、800℃~1000℃であり、選択的に、焙焼の時間は、3~5時間である。
【0023】
これにより、本出願の方法で製造される改質シリコン材料は、グラム容量が高く、導電性が良好で、プレス密度が高く、電解液の浸潤性が良好で、体積拡張率が低く、電池に用いられると副反応が少なく、この改質シリコン材料で製作される電池のエネルギー密度が高く、初回クーロン効率及びサイクル容量保持率が高い。
【0024】
いずれかの実施の形態では、ステップ(3)では、焙焼前、乾燥後の物質を300℃~500℃で1~2時間予熱する。
【0025】
いずれかの実施の形態では、ステップ(2)では、PVDFと、リチウム含有化合物と、前処理物との重量比率は、1:(0.1~2):(13~155)である。
【0026】
いずれかの実施の形態では、本出願の第一の方面の負極活物質は、本出願の第二の方面の方法で製造される。
【0027】
本出願の第三の方面に係る負極活物質は、本出願の第一の方面の改質シリコン材料、又は本出願の第二の方面の方法で製造される改質シリコン材料である。
【0028】
本出願の第四の方面に係る負極極板は、本出願の第三の方面の負極活物質を含む。
【0029】
本出願の第五の方面による二次電池は、本出願の第四の方面の負極極板を含む。
【0030】
本出願の第六の方面による電池モジュールは、本出願の第五の方面の二次電池を含む。
【0031】
本出願の第七の方面による電池パックは、本出願の第六の方面の電池モジュールを含む。
【0032】
本出願の第八の方面による電力消費装置は、本出願の第五の方面の二次電池、本出願の第六の方面の電池モジュール又は本出願の第七の方面の電池パックから選択される少なくとも一つを含む。
【0033】
本出願は、以下の有益な効果が得られる。
【0034】
本出願の改質シリコン材料は、グラム容量が高く、導電性が良好で、プレス密度が高く、電解液の浸潤性が良好で、体積拡張率が低く、本出願の改質シリコン材料は、電池に用いられる時に生じた副反応が少なく、本出願の改質シリコン材料で製造される電池は、エネルギー密度が高く、初回クーロン効率が高く、サイクル容量保持率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本出願の一実施の形態の二次電池の概略図である。
【
図2】
図1に示す本出願の一実施の形態の二次電池の分解図である。
【
図3】本出願の一実施の形態の電池モジュールの概略図である。
【
図4】本出願の一実施の形態の電池パックの概略図である。
【
図5】
図4に示す本出願の一実施の形態の電池パックの分解図である。
【
図6】本出願の一実施の形態の二次電池が電源として用いられる電力消費装置の概略図である。
【
図7】実施例1における前処理物のフーリエ変換型赤外分光減衰全反射図である。
【
図8】実施例1における負極活物質のXRD図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、添付図面を適当に参照しながら、本出願の改質シリコン材料、改質シリコン材料の製造方法、負極活物質、負極極板、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を具体的に開示した実施の形態について詳細に説明する。しかし、必要としない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じ構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定するためのものではない。
【0037】
本出願に開示される「範囲」は、下限及び上限の形式で限定され、所定範囲は、特定の範囲の境界を限定する1つの下限と1つの上限を選定することによって限定される。このように限定される範囲は、端値を含んでもよく含まなくてもよく、そして任意に組み合わせてもよく、即ち、任意の下限と任意の上限との組合せにより一つの範囲を形成してもよい。例えば、特定のパラメータに対して60~120と80~110の範囲がリストアップされた場合、60~110と80~120の範囲として理解されることも想定できることである。なお、リストアップされた最小範囲値が1と2で、かつリストアップされた最大範囲値が3、4と5である場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4と2~5の範囲の全ては想定できるものである。本出願において、別段の説明がない限り、数値範囲「a~b」は、aないしbの間の任意の実数の組み合わせを表す省略表現であり、ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、「0-5」という数値範囲は、本明細書において「0-5」の間の全ての実数を列挙していることを意味し、「0-5」は、これらの数値の組合せの省略表現だけである。また、あるパラメータ≧2の整数であると表記すると、そのパラメータが例えば、整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示していることに相当する。
【0038】
特に説明されていない限り、本出願の全ての実施の形態及び選択可能な実施の形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成してもよい。
【0039】
特に説明されていない限り、本出願の全ての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成してもよい。
【0040】
特に説明されていない限り、本出願の全てのステップは、順次に行われてもよく、ランダムに行われてもよく、選択的に、順次に行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、前記方法が順次に行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順次に行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、以上で言及した前記方法がステップ(c)をさらに含むことは、ステップ(c)が任意の順で前記方法に追加されてもよいことを表し、例えば、前記方法は、ステップ(a)、(b)と(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)と(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)と(b)などを含んでもよい。
【0041】
特に説明されていない限り、本出願で言及した「含む」と「包含」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」は、リストアップされていない他の成分をさらに含み又は包含してもよく、リストアップされた成分のみを含み又は包含してもよいことを表してもよい。
【0042】
特に説明されていない限り、本出願では、「又は」という用語は包括的である。例えば、「A又はB」という用語は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、Aが真(又は存在する)でありかつBが偽(又は存在しない)である条件と、Aが偽(又は存在しない)であるがBが真(又は存在する)である条件と、また、AとBが共に真(又は存在する)である条件のいずれかも「A又はB」を満たしている。
【0043】
[二次電池]
二次電池は、充電電池又は蓄電池とも呼ばれ、電池が放電した後、充電方式によって活物質を活性化し、使用し続けることができる電池を意味する。
【0044】
一般的な場合、二次電池は、正極極板、負極極板、セパレータ及び電解液を含む。電池の充放電過程では、活性イオン(例えば、リチウムイオン)は、正極極板と負極極板との間に往復して吸蔵放出される。セパレータは、正極極板と負極極板との間に設置され、主に正負極の短絡を防止する役割を果たし、また、活性イオンを通過させることができる。電解液は、正極極板と負極極板との間にあり、主に活性イオンを伝導する役割を果たす。
【0045】
コアシェル構造を有する改質シリコン材料
本出願の一実施の形態は、コアシェル構造を有する改質シリコン材料を提供し、コアと、コアを被覆する第一の被覆層と、第一の被覆層の外を被覆する第二の被覆層とを含み、コアは、シリコン単体及び/又はシリコン合金であり、第一の被覆層は、シリコン酸化物を含み、第二の被覆層は、フッ化リチウム、炭酸リチウム及び炭素を含み、改質シリコン材料におけるリチウム元素と炭素元素との重量比は、6%~52%であり、選択的に、6.5%~50%であり、例えば、7%、10%、15%、18%、20%、23%、25%、27%、30%、35%、40%、45%、50%である。
【0046】
メカニズムはまだ不明であるが、本出願者は、以下のことを予期せず発見した。本出願の改質シリコン材料は、グラム容量が高く、導電性が良好で、プレス密度が高く、電解液の浸潤性が良好で、体積拡張率が低く、本出願の改質シリコン材料は、電池の充放電サイクル過程での副反応が少なく、本出願の改質シリコン材料で製作された電池は、エネルギー密度が高く、初回クーロン効率が高く、サイクル容量保持率が高い。
【0047】
いくつかの実施の形態では、第二の被覆層は、水酸化リチウムをさらに含む。これにより、改質シリコン材料は、グラム容量が高く、導電性が良好で、プレス密度が高く、電解液の浸潤性が良好で、体積拡張率が低く、電池に用いられる時に生じた副反応が少なく、本出願の改質シリコン材料で製造される電池は、エネルギー密度が高く、初回クーロン効率及びサイクル容量保持率が高い。
【0048】
いくつかの実施の形態では、シリコン酸化物は、SiOxであり、そのうち、0<x<2であり、選択的に、0.3≦x≦1.5であり、さらに選択的に、0.5≦x≦1である。これにより、改質シリコン材料の体積拡張率を低減させ、シリコン材料が電池に用いられる時に副反応の発生を減少させる。
【0049】
いくつかの実施の形態では、第二の被覆層は、
フッ化リチウムであり、0.1%~2.9%(選択的に、0.27%~2.73%であり、例えば、0.2%、0.3%、0.5%、0.7%、1%、1.1%、1.3%、1.4%、1.7%、2%、2.5%)のフッ化リチウムと
炭酸リチウムであり、0.005%~3.8%(選択的に、0.01%~3.5%であり、例えば、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.26%、0.3%、0.35%、0.4%、0.5%、1%、2%、3%)の炭酸リチウムと、
炭素であり、0.15%~3%(選択的に、0.3%~2.8%であり、例えば、0.2%、0.5%、1%、1.2%、1.6%、1.7%、2%、2.5%、2.9%)の炭素と、
水酸化リチウムであり、0~0.07%(選択的に、0~0.06%であり、例えば、0.04%)水酸化リチウムとを含み、
本出願の改質シリコン材料は、体積拡張率をさらに低減させ、改質シリコン材料のグラム容量、導電性及び電解液の浸潤性を向上させ、改質シリコン材料が電池に用いられる時に副反応の発生をさらに減少させ、本出願の改質シリコン材料で製造される電池のエネルギー密度、初回クーロン効率及びサイクル容量保持率をさらに向上させる。
【0050】
いくつかの実施の形態では、改質シリコン材料の粒径Dv50は、1~3.5μmであり、選択的に、1.1~3μmであり、例えば、1.1μm、1.3μm、1.7μm、2.1μm、3μmである。粒径が大きすぎると、電池の充放電サイクル過程でリチウム析出が発生しやすく、改質シリコン材料粒子が集電体との電気的接触を失いやすいため、電池の初回クーロン効率及びサイクル性能が低下してしまう。粒径が小さすぎると、改質シリコン材料におけるSEI膜を形成する電気化学反応サイトが多すぎるため、電池の初回クーロン効率が低下するとともに、改質シリコン材料のプレス密度及び電解液の浸潤性が低下し、電池のサイクル性能が劣化し、これにより、本出願では、改質シリコン材料のプレス密度及び電解液の浸潤性を向上させ、改質シリコン材料の体積拡張率を低減させ、電池の充放電サイクル過程での改質シリコン材料のリチウム析出の問題を緩和し、改質シリコン材料粒子と集電体との電気的接触を保持することにより、電池の初回クーロン効率及びサイクル容量保持率を向上させる。
【0051】
いくつかの実施の形態では、改質シリコン材料の比表面積は、5.5~14m2/gであり、選択的に、6~13m2/gであり、例えば、6m2/g、6.5m2/g、7.2m2/g、8m2/g、8.3m2/g、8.7m2/g、9m2/g、9.5m2/g、10m2/g、10.5m2/g、12m2/g、13m2/gである。これにより、改質シリコン材料は、適切な反応活性サイトの数を有し、改質シリコン材料が電池に用いられる時に副反応の発生をさらに減少させ、それにより、電池のサイクル性能をさらに向上させる。
【0052】
いくつかの実施の形態では、改質シリコン材料の単一の粒子内の孔数は、10よりも小さく、例えば、0、1、2、3、4、5、7、9であり、孔は、孔径が50nmよりも低くない孔である。これにより、改質シリコン材料の孔隙界面の副反応を低減させ、改質シリコン材料の電解液の浸潤性を高めることにより、電池の初回クーロン効率及びサイクル性能をさらに向上させる。
【0053】
いくつかの実施の形態では、改質シリコン材料におけるフッ素元素の重量パーセントは、0.1%~3%であり、選択的に、0.2%~2%であり、例えば、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.90%、0.92%、1%、1.3%、2%、2.5%である。これにより、改質シリコン材料の導電性をさらに向上させ、材料の表面抵抗を低減させ、改質シリコン材料の電池の充放電サイクル過程での副反応を減少させ、それにより、電池の初回クーロン効率及びサイクル性能をさらに向上させる。
【0054】
いくつかの実施の形態では、改質シリコン材料における炭素元素の重量パーセントは、0.2%~3%であり、選択的に、0.3%~2.8%であり、例えば、0.3%、0.5%、0.8%、0.9%、1%、1.2%、1.4%、1.5%、1.6%、1.9%、2.1%、2.3%、2.8%、3%である。これにより、改質シリコン材料のグラム容量及び導電性をさらに向上させ、改質シリコン材料の体積拡張率及び副反応をさらに減少させ、それにより、電池の初回クーロン効率及びサイクル性能をさらに向上させる。
【0055】
いくつかの実施の形態では、シリコン合金は、珪素鉄合金、シリコンアルミニウム合金、シリコンマンガン合金、シリコン錫合金及びシリコンゲルマニウム合金から選択される少なくとも一つである。シリコン合金を選択することにより、改質シリコン材料の体積拡張率をさらに低減させ、電池の初回クーロン効率及びサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0056】
いくつかの実施の形態では、第一の被覆層の厚さは、1~8nmであり、例えば、2、3、4nmである。これにより、改質シリコン材料の体積拡張率をさらに低減させ、改質シリコン材料が電池に用いられる時に副反応の発生を減少させるとともに、十分な導電性を確保する。
【0057】
いくつかの実施の形態では、第二の被覆層の厚さは、5~45nmであり、選択的に、7~43nmであり、例えば、10nm、12nm、15nm、18nm、20nm、23nm、25nm、28nm、30nm、33nm、36nm、38nm、40nm、43nm、45nmである。これにより、改質シリコン材料のグラム容量及び導電性をさらに向上させ、改質シリコン材料の電解液の浸潤性を向上させることにより、電池の初回クーロン効率及びサイクル容量の保持を向上させる。
【0058】
いくつかの実施の形態では、コアの粒径Dv50は、0.5~3μmであり、例えば、0.9μm、1.1μm、1.5μm、1.9μm、2.3μm、2.6μmである。
【0059】
改質シリコン材料の製造方法
本出願の一実施の形態は、改質シリコン材料の製造方法を提供し、この改質シリコン材料の製造方法は、
(1)シリコン単体及び/又はシリコン合金であるコアを酸素含有雰囲気において熱処理し、前処理物を得るステップと、
(2)前処理物と、PVDFと、炭酸リチウム及び/又は水酸化リチウムであるリチウム含有化合物と、溶媒とを混合するステップと、
(3)混合物に対して順に乾燥、焙焼、冷却、破砕、篩分を行い、改質シリコン材料を得るステップとを含む。
【0060】
これにより、本出願の方法で製造される改質シリコン材料は、グラム容量が高く、導電性が良好で、プレス密度が高く、電解液の浸潤性が良好で、体積拡張率が低く、電池に用いられる時に生じた副反応が少なく、この材料で製造される電池は、エネルギー密度が高く、初回クーロン効率及びサイクル容量保持率が高い。
【0061】
いくつかの実施の形態では、ステップ(1)では、200℃~400℃(例えば、300℃)で0.5~3時間(例えば、1時間)熱処理する。これにより、得られた前処理物の外層は、シリコン酸化物である。
【0062】
いくつかの実施の形態では、ステップ(3)では、焙焼を不活性ガス雰囲気で行い、焙焼の温度は、800℃~1000℃(例えば、900℃)であり、選択的に、焙焼の時間は、3~5時間、例えば、4時間である。
【0063】
いくつかの実施の形態では、ステップ(3)では、焙焼前、乾燥後の物質を300℃~500℃(例えば、400℃)で1~2時間(例えば、2時間)予熱し、選択的に、不活性ガス雰囲気で予熱する。
【0064】
いくつかの実施の形態では、ステップ(3)では、100℃~200℃(例えば、150℃)で6~10時間(例えば、8時間)乾燥し、選択的に、減圧条件で乾燥を行う。
【0065】
いくつかの実施の形態では、ステップ(2)では、PVDFと、リチウム含有化合物と、前処理物との重量比率は、1:(0.1~2):(13~155)であり、選択的に、1:(0.174~1.9):(15~150)であり、例えば、1:1.21:150、1:1.213:50、1:1.212:30、1:1.212:21.4、1:1.212:15、1:1.818:30、1:0.786:30、1:0.174:30である。
【0066】
いくつかの実施の形態では、コア粒子の粒径Dv50は、0.5~2μmであり、例えば、1.5μmである。
【0067】
いくつかの実施の形態では、酸素含有雰囲気は、空気雰囲気である。
【0068】
いくつかの実施の形態では、溶媒は、有機溶剤であり、選択的に、N-メチルピロリドンである。
【0069】
負極活物質は、本出願の上記の改質シリコン材料又は本出願の上記方法で製造される改質シリコン材料である。
【0070】
[正極極板]
正極極板は、一般的に、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設置される、正極活物質を含む正極膜層とを含む。
【0071】
例として、正極集電体は、それ自体の厚さ方向に対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一つ又は両方に設置される。
【0072】
いくつかの実施の形態では、正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用することができる。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層と、高分子材料ベース層の少なくとも一つの表面に形成される金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料ベース層(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することで形成されてもよい。
【0073】
いくつかの実施の形態では、正極活物質は、電池に用いられる当技術分野で既知の正極活物質を採用してもよい。例として、正極活物質は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそれらのそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも一つを含んでもよいが、本出願では、これらの材料が限定されず、電池正極活物質として使用できる他の従来の材料を用いてもよい。これらの正極活物質は、一種のみを単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。ここで、リチウム遷移金属酸化物の例としては、リチウムコバルト酸化物(例えば、LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(例えば、LiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(例えば、LiMnO2、LiMn2O4)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM333とも略称されてもよい)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523とも略称されてもよい)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25O2(NCM211とも略称されてもよい)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622とも略称されてもよい)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811とも略称されてもよい)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えば、LiNi0.85Co0.15Al0.05O2)及びそれらの改質化合物などのうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限らない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例としては、リン酸鉄リチウム(例えば、LiFePO4(LFPとも略称されてもよい))、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材、リン酸マンガンリチウム(例えば、LiMnPO4)、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材のうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限らない。
【0074】
いくつかの実施の形態では、正極膜層は、さらに選択的に、接着剤を含む。例として、接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0075】
いくつかの実施の形態では、正極膜層は、さらに選択的に、導電剤を含む。例として、導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0076】
いくつかの実施の形態では、以下の方式によって正極極板を製造することができる。正極極板を製造するための上記成分、例えば、正極活物質、導電剤、接着剤及びいずれかの他の成分を溶媒(例えば、N-メチルピロリドン)に分散させ、正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経ると、正極極板を得ることができる。
【0077】
[負極極板]
負極極板は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一つの表面に設置される負極膜層とを含み、負極膜層は、負極活物質を含み、負極活物質は、本出願の改質シリコン材料又は本出願の上記方法で製造される改質シリコン材料を含む。
【0078】
例として、負極集電体は、その自体の厚さ方向に対向する二つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一つ又は両方に設置される。
【0079】
いくつかの実施の形態では、負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、銅箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層と、高分子材料ベース層の少なくとも一つの表面に形成される金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料ベース層(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することで形成されてもよい。
【0080】
いくつかの実施の形態では、負極活物質は、本出願の上記の負極活物質である。
【0081】
いくつかの実施の形態では、負極膜層は、さらに選択的に、接着剤を含む。例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0082】
いくつかの実施の形態では、負極膜層は、さらに選択的に、導電剤を含む。例として、導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーから選択される少なくとも一つであってもよい。
【0083】
いくつかの実施の形態では、負極膜層は、さらに選択的に、他の助剤、例えば、増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などを含む。
【0084】
いくつかの実施の形態では、以下の方式によって負極極板を製造することができる。負極極板を製造するための上記成分、例えば、負極活物質、導電剤、接着剤及びいずれかの他の成分を溶媒(例えば、脱イオン水)に分散させ、負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経ると、負極極板を得ることができる。
【0085】
[電解質]
電解質は、正極極板と負極極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。本出願では、電解質の種類について具体的には制限せず、需要に応じて選択してもよい。例えば、電解質は、液状、ゲル状又は全固体状であってもよい。
【0086】
いくつかの実施の形態では、電解質は、液状であり、電解質塩及び溶媒を含む。
【0087】
いくつかの実施の形態では、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、リチウムヘキサフルオロアルセネート、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラトホウ酸リチウム)、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート及びリチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェートから選択される少なくとも一つであってもよい。
【0088】
いくつかの実施の形態では、溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトン、スルホン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジエチルスルホンから選択される少なくとも一つであってもよい。
【0089】
いくつかの実施の形態では、電解液は、さらに選択的に、添加剤を含む。例として、添加剤は、負極被膜形成添加剤、正極被膜形成添加剤を含んでもよく、電池のいくつかの性能を改善できる添加剤、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能又は低温性能を改善する添加剤などをさらに含んでもよい。
【0090】
[セパレータ]
いくつかの実施の形態では、二次電池にセパレータがさらに含まれる。本出願では、セパレータの種類について特に制限せず、よく知られている、良好な化学的安定性及び機械的安定性を有するいずれかの多孔質構造セパレータを用いてもよい。
【0091】
いくつかの実施の形態では、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンから選択される少なくとも一つであってもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよく、特に制限されない。セパレータが多層複合フィルムの場合、各層の材料は、同じであってもよく、又は、異なっていてもよく、特に制限されない。
【0092】
いくつかの実施の形態では、正極極板、負極極板及びセパレータを巻回プロセス又は積層プロセスによって電極コンポーネントとして製造してもよい。
【0093】
いくつかの実施の形態では、二次電池は、外装を含んでもよい。この外装は、上記電極コンポーネント及び電解質をパッケージングするために用いられてもよい。
【0094】
いくつかの実施の形態では、二次電池の外装は、硬質ケース、例えば、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼製ケースなどであってもよい。二次電池の外装は、軟質バッグ、例えば、袋式軟質バッグであってもよい。軟質バッグの材質は、プラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネートなどが挙げられてもよい。
【0095】
本出願では、二次電池の形状について特に制限されず、円柱形、四角形又は他のいずれかの形状であってもよい。例えば、
図1は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0096】
いくつかの実施の形態では、
図2を参照し、外装は、ハウジング51と、蓋板53とを含んでもよい。そのうち、ハウジング51は、底板と、底板に接続される側板とを含んでもよく、底板と側板は、囲んで収容室を形成する。ハウジング51は、収容室に連通する開口を有し、蓋板53は、収容室を閉塞するように開口に蓋設することができる。正極極板、負極極板及びセパレータを巻回プロセス又は積層プロセスによって電極コンポーネント52として形成することができる。電極コンポーネント52は、収容室内にパッケージングされる。電解液は、電極コンポーネント52に浸み込んでいる。二次電池5に含まれる電極コンポーネント52の数は、一つ又は複数であってもよく、当業者は、具体的な実際の需要に応じて選択してもよい。
【0097】
いくつかの実施の形態では、二次電池は、電池モジュールとして組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池モジュールの応用及び容量に応じて選択してもよい。
【0098】
図3は、一例としての電池モジュール4である。
図3を参照し、電池モジュール4では、複数二次電池5は、電池モジュール4の長さ方向に沿って順に配列設置されてもよい。勿論、他の任意の方式で配列してもよい。さらに、この複数の二次電池5を締め具によって固定してもよい。
【0099】
選択的に、電池モジュール4は、複数の二次電池5が収容される収納空間を有するケーシングをさらに含んでもよい。
【0100】
いくつかの実施の形態では、上記電池モジュールは、さらに電池パックとして組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池パックの応用及び容量に応じて選択してもよい。
【0101】
図4及び
図5は、一例としての電池パック1である。
図4及び
図5を参照し、電池パック1には、電池ボックスと、電池ボックス内に設置される複数の電池モジュール4とが含んでもよい。電池ボックスは、上ボックス2と、下ボックス3とを含み、上ボックス2は、下ボックス3に蓋設でき、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、いずれかの方式で電池ボックスに配列されてもよい。
【0102】
また、本出願は、電力消費装置をさらに提供する。電力消費装置は、本出願による二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも一つを含む。二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、電力消費装置の電源として用いられてもよく、電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。電力消費装置は、モビリティ機器(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電気自動車両(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、これらに限らない。
【0103】
電力消費装置として、その使用需要に応じて、二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0104】
図6は、一例としての電力消費装置である。この電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この電力消費装置による二次電池の高パワー及び高エネルギー密度への需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0105】
[実施例]
以下、本出願の実施例について説明する。以下に記述される実施例は、例示的なものであり、本出願を解釈するためのものだけであり、本出願に対する制限として理解されるべきではない。実施例において具体的な技術又は条件が明記されていないものは、当技術分野の文献に記述されている技術若しくは条件、又は製品説明書に従って実行する。使用される試薬又は機器について、製造メーカーが明記されていないものは、いずれも市販で購入できる一般的な製品である。
【0106】
そのうち、本出願では、体積平均粒径Dv50とは、GB/T 19077-2016「粒度分布レーザ回折法」を参照し、レーザ粒度分析装置(例えば、英国のMalvern Instruments Ltd.社製のMastersizer 2000E型レーザ粒度分析装置)を採用して測定することである。
【0107】
実施例1
(1)ジェットミルを採用してシリコン単体を、粒径Dv50が1.5μmのシリコン粒子に粉砕し、シリコン粒子を空気雰囲気において300℃に加熱して1時間保温し、前処理物1を得、
(2)1gのPVDF粉末と、1.21gの炭酸リチウムと、150mLのNMP溶媒とを混合し、150gの前処理物1を加えて均一に撹拌し、-80kPa、150℃の条件において8h乾燥し、そして高温熱処理炉に入れて不活性ガス雰囲気でまず400℃で2h予熱し、その後、900℃で4h焼結処理して反応させ、室温に冷却させ、機械的に破砕し、篩分をし、粒径Dv50が1.7μmの負極活物質を得た。
【0108】
実施例2-13及び比較例1-9
実施例2-13、比較例1-9は、実施例1の負極活物質の製造方法と似ており、表1は、実施例1-13及び比較例1-9中の区別パラメータをリストアップし、残りのパラメータ及び操作は、同様であった。
【0109】
【0110】
ボタン電池の製作
実施例1-13及び比較例1-9の負極活物質を採用して負極極板を製造し、負極活物質と、導電剤としてのアセチレンブラックと、導電剤としてのCNT(カーボンナノチューブ、Carbon Nano Tube)と、接着剤としてのポリアクリル酸とを重量比60:19:1:20で脱イオン水に溶解し、均一に撹拌して負極スラリーを製造し、負極スラリーを2mg/cm2の塗布量で負極集電体の銅箔に均一に塗布し、乾燥、冷間プレス、スリットを経て、負極極板を得、
金属リチウムシートを対極として採用し、ポリエチレン(PE)膜をセパレータとして採用し、
アルゴンガス雰囲気のグローブボックス(H2O<0.1ppmで、O2<0.1ppmである)で、有機溶剤の炭酸エチレン(EC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とを体積比3/7で均一に混合し、15%(炭酸エチレン及びメチルエチルカーボネートに基づく重量)のフルオロエチレンカーボネート(FEC)を加え、そして12.5%(炭酸エチレン及びメチルエチルカーボネートに基づく重量)のLiPF6を加えて有機溶剤に溶解し、均一に撹拌し、電解液を得、
上記対極、セパレータ、電解液、負極極板を採用してグローブボックスでボタン電池として組み立てた。
【0111】
テスト例1 前処理物の検出
(1)実施例1及び10の前処理物の表層に対してフーリエ変換型赤外分光減衰全反射(ATR-FTIR)テストを行い、そのうち、実施例1の前処理物のスペクトル図は、
図7に示した。
【0112】
その結果、2種の前処理物の表層でいずれもSi-O-Si化学結合及びSi-O化学結合を検出できることがわかった。
【0113】
(2)前処理物の表層厚さの表徴としては、JY/T 011-1996透過電子顕微鏡方法の一般原理を参照し、実施例1における前処理物をFIBで切断した後、形態及び成分分析を行った。その結果、実施例1の前処理物の表層厚さは、3nmであることがわかった。
【0114】
テスト例2 負極活物質の検出
(1)負極活物質の表層成分の定性分析
ドイツのBruker AxS社製のBruker D8 Discover型X線回折計を採用して実施例1-13の負極活物質の表層を検出し、JIS K0131-1996 X線回折分析の一般原理に基づいてテストし、CuKα線を放射源とし、線波長λ=1.5406Åで、走査2θ角範囲20°~80°、走査レート4°/minで、XRD図を得た。図示に基づいて、標準物質標準粉末回折データ(PDF)を用いて標準分析方法に従って対照分析し、負極活物質の表層がフッ化リチウム及び炭酸リチウムを含有すると定性した。そのうち、実施例1の負極活物質の表層のXRD図は、
図8に示した。
【0115】
(2)負極活物質の炭素元素の含有量の測定
GB/T 20123-2006/ISO 15350:2000の測定方法に従って、上海徳凱儀器有限会社製のHCS-140型赤外炭素及び硫黄分析装置を採用して実施例1-13、比較例2-9の負極活物質における炭素元素の含有量を測定し、検出精度が計量検定プロトコルJJG 395-1997標準に合致する。
【0116】
(3)負極活物質のLi2CO3、LiOHの含有量の測定
実施例1-12、比較例2-9における負極活物質のLi2CO3含有量を測定し、実施例13の負極活物質のLi2CO3の含有量及びLiOHの含有量を測定した。
【0117】
具体的な方法としては、30gの負極活物質を秤量して100gの脱イオン水と撹拌し、静置して吸引濾過し、濾液を収集し、905 Ttrando 電位滴定装置を採用して濾液に対して電位滴定(GB/T 9725-2007 化学試薬電位滴定法の一般原理を参照)を行い、複合pH電極を採用し、滴定剤は、0.5mol/L HCL溶液であり、濾液中のCO3
2-の含有量、OH-の含有量を測定し、Li2CO3及びLiOHの化学計量比に従って換算することにより、負極活物質のLi2CO3の含有量、LiOHの含有量を得た。
【0118】
(4)負極活物質のリチウム元素の含有量の測定
実施例1-13、比較例2-9における負極活物質のリチウム元素の含有量を測定した。
【0119】
具体的な方法としては、EPA-3052-1996『ケイ酸塩のマイクロウェーブ酸分解法』を参照し、質量濃度が65%の10mLの硝酸及び質量濃度が40%の5mLのフッ化水素酸を採用して0.5gの負極活物質に対してマイクロウェーブ分解を行い、分解後、50mLのメスフラスコに入れて定容し、そして、EPA 6010D-2014『誘導結合プラズマ原子発光法』に従って、アメリカのサーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)社製のICAP-7000型誘導結合プラズマ発光装置(ICP-OES)を採用してメスフラスコにおける物質のリチウム元素の含有量を測定し、負極活物質のリチウム元素の含有量を計算し、リチウム元素と炭素元素との含有量の割合をさらに計算した。
【0120】
(5)負極活物質のフッ化リチウムの含有量の計算
以下の式に従って実施例1-12、比較例2-9における負極活物質のフッ化リチウムの含有量を計算した。
【0121】
負極活物質中のフッ化リチウムの含有量(質量パーセント)=[負極活物質中のリチウム元素の含有量(質量パーセント%)/6.941-2×負極活物質中の炭酸リチウムの含有量(質量パーセント%)/73.89]×25.95である。
【0122】
以下の式に従って実施例13の負極活物質のフッ化リチウムの含有量を計算した。
【0123】
負極活物質中のフッ化リチウムの含有量(質量パーセント)=[負極活物質中のリチウム元素の含有量(質量パーセント%)/6.941-2×負極活物質中の炭酸リチウムの含有量(質量パーセント%)/73.89-負極活物質中の水酸化リチウムの含有量(質量パーセント%)/23.95]×25.95である。
【0124】
(6)負極活物質のフッ素元素の含有量の計算
以下の式に従って実施例1-13、比較例2-9における負極活物質のフッ素元素の含有量を計算した。
【0125】
負極活物質中のフッ素元素の含有量(質量パーセント)=負極活物質中のフッ化リチウムの含有量(質量パーセント)×18.998/25.95である。
【0126】
(7)負極活物質の表層厚さの表徴としては、JY/T 011-1996透過電子顕微鏡方法の一般原理を参照し、実施例1-13及び比較例2-9の負極活物質をFIBで切断した後、形態及び成分分析を行い、負極活物質の表層厚さを得た。
【0127】
(8)負極活物質の比表面積の測定
GB/T 19587-2017「気体吸着BET法による固体物質の比表面積の測定」を参照し、アメリカのMicromeritics社製のTri StarII 3020型の比表面及び孔隙分析装置を採用して窒素吸着の比表面積の分析テストを行い、BET(Brunauer Emmett Teller)法によって実施例1-13及び比較例1-9の負極活物質の比表面積を計算した。
【0128】
(9)負極活物質粒子内の孔数の測定
実施例1-13及び比較例1-9の負極活物質の粒子内の孔数を測定した。
【0129】
負極活物質をスラリーに調製し、集電体に塗布し、乾燥した後、電極極板を製造し、プラズマ切断(Plasma Cutting)技術を採用して上記負極極板を切断し、揃った断面を取得し、断面をパワースペクトル(EDS、Energy Disperse Spectroscopy)装置が配置された走査電子顕微鏡に置いて観察し、粒径>800nm(粒子輪郭の外接円の直径は、粒径である)の5つの完全な粒子をランダムに取って分析した。各粒子に対して、パワースペクトル技術を採用して粒子の成分を分析し、粒子のシリコン元素の含有量≧7wt%であると、シリコン粒子であり、
各シリコン粒子の内部の孔隙を測定する。測定方法として、SEM画像の縁の孔隙の数を記録せず、SEM画像の内部の孔隙の数のみを記録し、シリコン粒子の内部の孔隙の外接円の直径を孔隙直径として定義し、孔隙直径≧50nmであると、1つとして記録し、粒子の内部のすべての孔隙を全部で測定するまでカウントされた孔隙の数は、負極活物質の粒子内の孔数であった。
【0130】
以上、各テストが提供できる結果は、表2にリストアップされた。
【0131】
【0132】
表2から分かるように、本出願の負極活物質中のリチウム元素と炭素元素との重量パーセントの割合は、6.63%~49.96%で、フッ素元素の重量パーセントは、0.2%~2%で、炭素元素の重量パーセントは、0.3%~2.8%で、比表面積は、6~13m2/gで、粒子内の孔数は、0~2であった。本出願の負極活物質は、比較例に比べて、電解液の浸潤性がより良く、体積拡張率がより低く、副反応がより少なく、製造される電池セルのエネルギー密度がより高かった。
【0133】
テスト例3
(1)実施例1-13及び比較例1-9の負極活物質のグラム容量を測定し、実施例1-13及び比較例1-9の負極活物質を採用して前述方法に従ってボタン電池を製作し、ボタン電池の初回クーロン効率及びサイクル容量保持率を測定した。
【0134】
具体的な方法
25℃及び常圧環境で、ボタン電池を0.1Cレートの定電流で0.005Vまで放電し、そして0.04Cの定電流で0.005Vまで放電し、その後、10min静置し、この時の放電容量、即ち、1回目のリチウム吸蔵容量を記録し、そして0.1Cレートの定電流で1.5Vに充電し、10min静置し、これは、一つのサイクル充放電過程であり、この時の充電容量、即ち、1回目のリチウム放出容量を記録し、ボタン電池を上記方法に従って50回のサイクル充放電テストを行い、毎回のリチウム放出容量を記録した。
【0135】
1回目のリチウム放出容量は、負極活物質のグラム容量であり、
ボタン電池の初回クーロン効率(%)=100%×1回目のリチウム放出容量/1回目のリチウム吸蔵容量、
ボタン電池のサイクル容量保持率(%)=100%×50回目のリチウム放出容量/1回目のリチウム放出容量である。
【0136】
以上の結果を表3に示した。
【0137】
【0138】
表3から分かるように、本出願の実施例の負極活物質は、比較例に比べて、いずれもグラム容量がより大きく、導電性がより良く、製造される電池の初回クーロン効率及びサイクル容量保持率がより高かった。
【0139】
説明すべきこととして、本出願は、上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態は例に過ぎず、本出願の技術案の範囲内において技術的思想と実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を発揮する実施の形態は、いずれも本出願の技術範囲内に含まれる。なお、本出願の趣旨を逸脱しない範囲で、実施の形態に当業者が想到できる様々な変形を加え、実施の形態における構成要素の一部を組み合わせて構築した他の形態も本出願の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0140】
1 電池パック、2 上ボックス、3 下ボックス、4 電池モジュール、5 二次電池、51 ハウジング、52 電極コンポーネント、53 蓋板。