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  • 特許-ピッキングシステム 図1
  • 特許-ピッキングシステム 図2
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  • 特許-ピッキングシステム 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ピッキングシステム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/137 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
B65G1/137 F
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018144627
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020019620
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-06
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000110011
【氏名又は名称】トーヨーカネツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 謙二
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】吉田 昌弘
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-309409(JP,A)
【文献】特開2016-222426(JP,A)
【文献】実開平4-9092(JP,U)
【文献】特開2001-341817(JP,A)
【文献】特開2010-170226(JP,A)
【文献】特開2004-18177(JP,A)
【文献】特開昭61-64044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/137
G09F 9/00-9/33
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピッキングシステムにおいてピッキングすべき物品が複数載置される物品棚と、
前記物品棚から前記ピッキングすべき物品の近傍で、かつ前記ピッキングすべき物品と対応関係にある位置に配置された複数の表示器と、
作業者がピッキングすべき物品に対応する表示器を点灯又は点滅させる制御手段と、を備え
前記複数の表示器は、前記作業者が該表示器を頻繁に凝視しても前記作業者の眼に対する疲労を激しくせず、低輝度の場合でも前記作業者が前記表示器への視認性を低下させないための色として、赤色ではなく、
記図において
赤色として表示される色であって波長略620nm~略695nmを有する発光スペクトルの色、以外の特定の色である橙色として表示される色であって波長略565nm~略620nmを有する発光スペクトルの色、であることを特徴するピッキングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多くの物品を収容する収容手段において、収容された物品をピッキングするピッキングシステムに関し、特にピッキングシステムに使用する表示器に関する。
【背景技術】
【0002】
物流におけるピッキングシステムは、物品の格納手段として物品棚を備えている。ピッキングシステムにおいて、物品棚には通常複数の保管箱が載置され、各保管箱に同一種類の物品が1つ以上収容されている。ピッキング作業者は、ピッキングシステムを管理する制御手段の指令に従って必要な物品を取り出して、コンベヤ上の集品箱等に入れ、出荷ラインに移送する。例えば、物品棚を多数横に配列し、それに沿うようにコンベヤによる搬送ラインを設け、ピッキング作業者は棚からピッキングすべき商品を取り出してから搬送ラインに流れている集品箱に投入する。
【0003】
この場合において、複数の保管箱の中から取り出すべき物品の保管箱をピッキング作業者が識別できるように、物品棚の前面に表示器が配置されている。表示器は、例えば7セグメントLEDで構成され、取り出すべき物品の数量を表示できるようになっている。
【0004】
表示器を使用するピッキングシステムとして、下記の特許文献1が知られている。特許文献1においては、図3に示すように、作業者は保管棚の複数段(図では4段)のそれぞれ」に載置された複数個(図では3個)の保管箱から必要な数量の物品を取り出す。この場合において、それぞれの保管箱に対応して表示部が設けられている。表示部は、ピッキング指示の表示部(図では42)及びピッキングする商品の数を指示するデジタル数値表示部(図では43)で構成されている。特許文献1に限らず一般に、デジタル数値表示部は、7セグメントLEDが用いられており、ピッキング指示の表示部に比較して相対的にその面積及び輝度が小さくなる(特許文献1の段落番号0003)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-222426号公報
【0006】
特許文献1に限らず従来のピッキングシステムには赤色発光の7セグメント発光ダイオード(LED)が使用されている。その理由として、第1に赤色発光の7セグメントLEDの輝度がLEDの開発当初から高かったことが挙げられる。第2に赤色は人間の注意を喚起する作用が強いことが挙げられる。例えば、交通信号の赤にしても、緊急自動車の赤ランプにしてもしかりである。
【0007】
したがって、物流のピッキングシステムだけでなく、他のシステムにおいてもその効率を上げるために、強い刺激を与える赤色発光の表示器がなかば習慣的に使用されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ピッキングシステムは、システムと作業者とのコラボレーションである以上、システム側の効率化だけでなく作業者の疲労についても考慮する必要があることは明らかである。光の色が人間に与える影響については、60年以上も前から研究が行われてきた。例えば、1950年に発表のF. Birren 氏の論文(Color Physiology and Color
Therapy)には、赤色光は血圧を上昇し、脈拍を高め、呼吸を早くする効果があることが記載されている。また、最近では、アドレナリンを分泌して人間を興奮させその本能を刺激する赤色をマーケティングに応用することが検討されている。
【0009】
したがって、人間の眼に対して強い刺激を与える赤色発光の7セグメントLEDをピッキングシステムに使用した場合、作業者は長時間にわたってその影響を受けることになる。特に、相対的にその面積及び輝度が小さくなる7セグメントLEDにおいては、取り出す物品の数量を確認するために、作業者は頻繁に赤色発光の7セグメントLEDを凝視するので、眼の疲労が激しくなる。さらに、眼の疲労に起因して頭痛や肩こりを伴う恐れもある。
【0010】
一方、赤色光については、輝度が低い場合、視認性が低下するという実験結果も報告されている。例えば、2006年3月10日付の高知工科大学情報システム工学科 島田謙氏の論文(車載メーター色の変化による速度視認性への影響)には、車の速度計の発光色を白、緑、赤の三色を用いて高輝度の場合と低輝度の場合に分けて実験をしたところ、高輝度の場合はどの色も特に視認性に影響があるとはいえなかったが、低輝度の場合は明らかに赤色光で視認性の低下が見られたことが報告されている。つまり、赤色は、目に刺激的なだけでなく、低輝度では視認性が悪くなることから、赤色をピッキングシステムに用いる場合はピッキングミスを起こす恐れが高くなることも考えられる。
【0011】
このように、赤色発光の7セグメントLEDをピッキングシステムに使用した場合には、システム側の効率を重視するあまり、ピッキング作業者の労働環境の観点が欠如する結果となり、人間工学的に大きな課題がある。また、低輝度では視認性が悪くなることから、ピッキングミスを起こす恐れが高くなるという課題もある。
【0012】
従って、本発明は、ピッキング作業者の労働環境を十分に考慮したシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために、ピッキングシステムにおいてピッキングすべき物品が複数載置される物品棚と、上記物品棚から上記ピッキングすべき物品の近傍で、かつ上記ピッキングすべき物品と対応関係にある位置に配置された複数の表示器と、作業者がピッキングすべき物品に対応する表示器を点灯又は点滅させる制御手段と、を備え、上記複数の表示器は、上記作業者の眼に対して強い刺激を与える色以外の他の特定の色で発光する発光素子を有することを特徴とする。
【0014】
この場合において、上記作業者の眼に対して強い刺激を与える色は、ピーク波長が略670ナノメータの赤色であることを特徴とする。
【0015】
さらに、上記特定の色は、ピーク波長が略600ナノメータのオレンジ色であることを特徴する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ピッキング作業者の労働環境を考慮した人間工学的に優れたピッキングシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による一実施形態のピッキングシステムにおいて物品を収容する保管箱から作業者が物品を取り出す様子を示す図である。
図2図1の物品棚の正面図である。
図3】従来の表示器を示す平面図である。
図4】色の波長を示す図である。
図5】LEDの発光素子の発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、図面に示した実施形態を用いてより詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能であり、特許請求の範囲に記載した技術思想によってのみ限定されるものである。
【0019】
図1は、本発明による一実施形態のピッキングシステムにおいて物品を収容する保管箱から作業者が物品を取り出す様子を示す図である。なお、物品棚については、小間に区切り、保管箱を省略できる構成にしてもよい。
【0020】
なお、図1に示した物品棚1は、一人の作業者6に割り当てられた作業ゾーンであり、実際には、複数の作業者に対してその熟練度に応じて、より大きな又はより小さな物品棚のピッキングゾーンが割り当てられている。
【0021】
図2は、図1の物品棚の正面図である。物品棚の複数の保管棚2にはそれぞれ複数の保管箱3が載置されている。各保管箱3の近傍の対応する位置に、表示器4が設けられている。
【0022】
図3は、従来の表示器4の平面図である。図3に示すように、表示器4は、照光式スイッチ42、7セグメントLED43を含む構成になっている。
【0023】
ピッキングの際には、図1に示すように、作業者6が取り出すべき物品の保管箱2と一意に対応関係がある表示器4の照光式スイッチ42が点灯又は点滅され、7セグメントLED43に取り出すべき物品の数量が表示される。
【0024】
本実施形態においては、7セグメントLED43はオレンジ色で物品の数量を表示する。すなわち、7セグメントLED43は、作業者6の眼に対して強い刺激を与える赤色ではなく、オレンジ色で発光する発光素子を有する。なお、照光式スイッチ42もオレンジ色で発光することが望ましい。
【0025】
図4は、可視光の色と波長との関係を示す図である。また、図5は、LEDの発光素子の発光スペクトルを示す図である。7セグメントLED42は、ピーク波長が略600ナノメータのオレンジ色(橙色)で発光するので、ピーク波長が略670ナノメータの赤色と比較して、作業者の眼に対して強い刺激を与えることがない。したがって、ピッキング作業者の労働環境を十分に考慮した人間工学的に優れたシステムを提供することができる。
【0026】
なお、青色発光の7セグメントLEDを使用することも考えられるが、青色は人間の興奮を抑制する効果があると言われている。このため、寝室の壁を青色にすればゆったりとした気持ちで安眠できるという研究結果がある。しかし、ピッキング作業者の気持ちがゆったりし過ぎると、緊張感が希薄になり、却って作業効率が低下する恐れがある。
【0027】
このため、作業者に対する刺激が強すぎずかつ弱すぎないオレンジ色の発光素子を有する7セグメントLED42は、ピッキングシステムに最も適した表示器4を提供する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、ピッキング作業者の労働環境を考慮した表示器を使用したピッキングシステムを提供することで、産業上の利用価値を高めることに貢献する。
【符号の説明】
【0029】
2 物品棚
3 保管箱
4 表示器
41 表示器の指示状態
42 照光式スイッチ
43 7セグメントLED
図1
図2
図3
図4
図5