IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ファンケルの特許一覧

<>
  • 特許-化粧水 図1
  • 特許-化粧水 図2
  • 特許-化粧水 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】化粧水
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20240326BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 8/68 20060101ALI20240326BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/86
A61K8/34
A61K8/68
A61Q19/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020004942
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021113156
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】寺西 諒真
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-019077(JP,A)
【文献】特開2019-014709(JP,A)
【文献】特開2010-248128(JP,A)
【文献】特開2008-297301(JP,A)
【文献】特開2014-208626(JP,A)
【文献】国際公開第2019/240290(WO,A1)
【文献】Japan Beauty Products, Japan,White Lotion,Mintel GNPD [online],2017年09月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#5099175, [検索日:2023.09.22], 表題部分及び成分
【文献】Morinda, Germany,AA Serum,Mintel GNPD [online],2019年09月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#6823125, [検索日:2023.09.22], 表題部分,成分及び製品分析
【文献】Kodawari Tomo, Japan,In Seven Exceed Limit DG Serum,Mintel GNPD [online],2016年12月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#4500787, [検索日:2023.09.22], 表題部分,成分及び製品分析
【文献】Kose, Japan,Lotion Ceramizer Extra Rich,Mintel GNPD [online],2009年10月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#1199666, [検索日:2023.06.16], 表題部分及び成分
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)~(E)を含有する化粧水。
(A)セスキオレイン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタンから選ばれる1以上の脂肪酸ソルビタン
(B)ポリオキシエチレン鎖の平均重合度が60~100であるポリオキシエチレン水添ヒマシ油
(C)ジプロピレングリコール及び/又はペンチレングリコール(ジプロピレングリコールのみを配合する場合は、配合するセラミド量に対して20倍量以上を含有する。またペンチレングリコールのみを配合する場合は、配合するセラミド量に対して15倍量以上を含有する。ペンチレングリコールとジプロピレングリコールの両方を配合する場合は、配合するセラミド量に対して合計量が15倍量以上を含有する。)
(D)セラミドがセラミド2及び/又はセラミド3
(E)水
但し、
チャ葉エキス及び白金コロイドの両方を含有する場合を除く。
及び、
次の成分を含有する化粧水を除く。
水、ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、フェノキシエタノール、イソステアリン酸ソルビタン、クエン酸ナトリウム、PEG-60水添ヒマシ油(加水分解)、グリチルリチン酸2カリウム、キサンタンガム、テトラ2ヘキシルデカン酸アスコルビル、メントール、クエン酸、ラウロイル乳酸ナトリウム、加水分解コンキオリン、ウシ糖たん白液、加水分解コラーゲン、ハトムギ種子エキス及びセラミドNP
【請求項2】
(B)ポリオキシエチレン鎖の平均重合度が60~100であるポリオキシエチレン水添ヒマシ油と(A)脂肪酸ソルビタンの含有質量比(B):(A)が4:6~8:2である請求項1に記載の化粧水。
【請求項3】
(D)セラミド2及び/又はセラミド3によって形成されたベシクル構造を含む請求項1又は2に記載の化粧水。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時安定性と耐塩性に優れたセラミド含有化粧水に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミドは角層細胞間脂質の主成分である。セラミドを化粧品に配合すると、皮膚バリアー機能が向上することが知られている。このため、セラミドを配合した化粧品が多数提供されている。しかしながら、セラミドは、水にも油にも溶けにくく、結晶化する特性を持つため、化粧品の保存安定性に問題があることが指摘されている。とりわけ化粧水のように油性成分をほとんど含まない剤型への配合は困難である。また、含有される塩類によってセラミドの沈殿が生じる現象(耐塩性に欠ける)が指摘されている。
【0003】
このようにセラミド自体が有している高い結晶性から、化粧品への安定配合は難しかった。とりわけ化粧水のように油をほとんど含まない剤型への配合は困難であり、配合できた場合においても安定性および耐塩性は不十分である。
【0004】
セラミドを配合した化粧水として、特許文献1には、セラミド、油性成分、非イオン性界面活性剤、水を含有する半透明化粧料が開示されている。この化粧料はセラミドを含有したO/Wエマルションである。半透明の外観を有しており、かつ温度安定性を有しているが、O/Wエマルションであるため、耐塩性に問題が生じる恐れがある。
特許文献2には、セラミド、ペンタンジオールまたはヘキサンジオール、水を含有する透明化粧料が開示されている。この発明では、界面活性剤や溶媒を適切に選択することで、セラミドを多価アルコールと界面活性剤からなるミセルに可溶化させることができ、化粧水を透明化する。しかしこの透明化粧水は、50℃における安定性や耐塩性に問題がある。特に化粧水中に塩を配合するとミセルの状態が変化し、セラミドの化粧水中での安定性が損なわれる恐れがある。
【0005】
特許文献3には、HLB4~7、25℃液状、グリセリル基を有する非イオン界面活性剤、数平均分子量2000~200000のポリエチレングリコール、エタノール、水、および冷感剤、温感剤、殺菌剤制汗剤、収斂剤、消臭剤、美白剤、セラミド類、抗炎症剤、血行促進剤、紫外線防御剤、酸化防止剤及び粉体から選ばれる1種または2種以上の有効成分を含む皮膚化粧料が開示されている。この化粧料は、セラミドを配合する際にはエタノールに溶解させて添加する。このため化粧料中には、常にエタノールが5~50質量%含有されており、皮膚化粧水として好ましくない組成である。またこの組成は、セラミドが化粧水中で結晶化する等の保存安定性に、問題が生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2004/045566号
【文献】特開2014-148473号公報
【文献】特開2014-205664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来のセラミド含有化粧水は、セラミドの保存安定性と耐塩性に問題がある。本発明は、セラミドを配合した化粧水の保存安定性と耐塩性を高めることを課題とする。また本発明は保存安定性の高いセラミド含有化粧水の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)下記の(A)~(E)を含有する化粧水。
(A)脂肪酸ソルビタン
(B)ポリオキシエチレン鎖の平均重合度が60~100であるポリオキシエチレン水添ヒマシ油
(C)ジプロピレングリコール及び/又はペンチレングリコール
(D)セラミド
(E)水
(2)(B)ポリオキシエチレン鎖の平均重合度が60~100であるポリオキシエチレン水添ヒマシ油と(A)脂肪酸ソルビタンの含有質量比(B):(A)が4:6~8:2である(1)に記載の化粧水。
(3)(A)脂肪酸ソルビタンがセスキオレイン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタンから選ばれる1以上の物質である(1)又は(2)に記載の化粧水。
(4)(D)セラミドがセラミド2及び/又はセラミド3である(1)~(3)のいずれかに記載の化粧水。
(5)(A)脂肪酸ソルビタン、(B)ポリオキシエチレン鎖の平均重合度が60~100であるポリオキシエチレン水添ヒマシ油、(D)セラミドによって形成されたベシクルが分散している化粧水。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化粧水は、セラミドを含有するにも関わらず、保存に際して、沈殿、分離などが発生せず、さらに塩類濃度が高い場合もセラミドの結晶が析出しない耐塩性の高い化粧料となる。その結果本発明の化粧水は、セラミドが効果的に作用して皮膚バリアー能を高める。このため、日常的に使用するに適した、皮膚水分保持のための化粧水として最適のものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の化粧料中に含まれる脂肪酸ソルビタン、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)、セラミドにより形成されるベシクル作成の模式図とベシクル構造の模式図である。
図2】実施例14の化粧料を各種温度条件に保存したときのベシクル粒子の平均粒径の経時変化測定結果を示すグラフである。
図3】実施例15の化粧料を各種温度条件に保存したときのベシクル粒子の平均粒径の経時変化測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、経時安定性と耐塩性に優れたセラミド含有化粧水である。
本発明の化粧水は、特に限定されるものではないが、その外観は白濁状が好ましく、性状も液状から粘性液状であれば、さらなる使用感の向上を発揮する。また本発明で言う、白濁とは、透明な精製水の可視光領域(660nm)における光路長1cmの透過率を100とした場合に、0.1~90のものをさし、液状から粘性液状とは、室温における粘度が1~10000mPa・sのものである。また化粧水として具体的な態様は、ローション、水性化粧料、水性化粧用組成物、水系化粧料、水系化粧用組成物のいずれであってもよい。
本発明の化粧水に含有される成分について説明する。
なお、本発明にあっては、界面活性剤などの両親媒性の分子またはイオンの集合体で構成される二分子膜の小胞体であって、コロイド粒子の大きさに相当する、球状粒子をベシクルと呼ぶ。なお本発明にかかる「ベシクル」は、(A)成分である脂肪酸ソルビタンが形成した二分子膜粒子表面を、(B)成分であるポリオキシエチレン鎖の平均重合度が60~100であるポリオキシエチレン水添ヒマシ油が安定化させた構造を持つ平均粒径が100~250nmの粒子である。なお(D)成分であるセラミドがベシクル膜中に複合化されている。
(A)脂肪酸ソルビタン
ソルビタン脂肪酸とも呼ばれる。ソルビタンと脂肪酸のエステルで、食品用乳化剤や化粧品・工業用界面活性剤として、単独または他の界面活性剤と配合して用いられる。
本発明の化粧水において、脂肪酸ソルビタンは、0.01~5質量%、好ましくは0.05~1質量%、特に好ましくは0.2~1質量%含有する。また、本発明において使用するに適した脂肪酸ソルビタンは、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタンであり、好ましくはセスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンであり、より好ましくはセスキオレイン酸ソルビタンである。
脂肪酸ソルビタンは、単独の化合物または2種以上を組み合わせて、化粧料に含有させて良い。
【0012】
(B)ポリオキシエチレン水添ヒマシ油
本発明におけるポリオキシエチレン水添ヒマシ油は、ポリオキシエチレン鎖の平均重合度が60~100であり、好ましくは80~100であり、より好ましくは100のものを含有させる。ポリオキシエチレン鎖の平均重合度が60より小さい場合、本発明の課題としているセラミドの配合に好ましくない。ポリオキシエチレン水添ヒマシ油のポリエチレン鎖の異なる鎖長のものを2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明に使用するポリオキシエチレン水添ヒマシ油としてはPEG60水添ヒマシ油、PEG80水添ヒマシ油、PEG100水添ヒマシ油を例示できる。
本発明の化粧水におけるポリオキシエチレン水添ヒマシ油の含有量は、0.05~5質量%、好ましくは0.1~2質量%、特に好ましくは0.4~1質量%である。
【0013】
本発明の化粧水において、(A)脂肪酸ソルビタンと(B)ポリオキシエチレン水添ヒマシ油の含有質量比率は、(B):(A)比が4:6~8:2であることが好ましく、5:5~7:3がより好ましく、特に好ましくは5:5~6:4である。
【0014】
(C)ジプロピレングリコール及び/又はペンチレングリコール
本発明の化粧水は、多価アルコールとしてジプロピレングリコール及び/又はペンチレングリコールを必須成分として含有する。本発明の化粧料におけるジプロピレングリコール及び/又はペンチレングリコールの総量は、ジプロピレングリコールのみを配合する場合は、配合するセラミド量に対して20倍量以上を含有するように配合する。またペンチレングリコールのみを配合する場合は、配合するセラミド量に対して15倍量以上が好ましい。ペンチレングリコールとジプロピレングリコールの両方を配合する場合は、配合するセラミド量に対して合計量が15倍量以上になるように配合する。
ジプロピレングリコール及び/又はペンチレングリコールの総配合量が不足すると、化粧料に含有するセラミドが不安定化する恐れがある。
【0015】
(D)セラミド
本発明の化粧水には、セラミドを含有する。
本発明において「セラミド」とは分子中に1個以上の長鎖の直鎖および/もしくは分岐アルキルまたはアルケニル基、更に、少なくとも2個以上の水酸基、1個以上のアミド基(及び/またはアミノ基)を有する非イオン系両親媒性物質をいう。
本発明に使用可能な具体的なセラミドとしては、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシンの長鎖脂肪酸アミドであるセラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド3B、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド6I、セラミド6II等の天然セラミド類等が挙げられる。また、セラミド EOP、セラミド EOS、セラミド NS、セラミド NG、セラミド NP、セラミド AP等も挙げられる。
これらのセラミドの中でも、本発明に(D)成分として使用するセラミドは、セラミド2及び/又はセラミド3が好ましい。また、これらのセラミドは、天然物由来のものであっても、合成したものであってもよい。
本発明の化粧水には、セラミドを0.05~1質量%、好ましくは0.05~0.5質量%含有する。
【0016】
(E)水
本発明における水は、化粧水としての機能を発揮するうえで重要な成分である。本発明にあっては、化粧水の全体を100質量%としたとき、水の配合量は50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。精製水を使用することが好ましい。
【0017】
(F)その他任意の成分
本発明の化粧水は、用途に基づいて、通常化粧料に用いられる他の成分を含有することができる。このような他の成分としては、例えば、エタノール等の水溶性有機溶剤、キレート剤、美白剤、エモリエント剤、保湿剤、酸化防止剤、色剤、防腐剤、香料(精油含む)、各種の油性成分、各種の水性成分などを挙げることができ、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。
【0018】
・本発明の化粧料の調製
本発明の化粧水は、(A)~(D)成分を加熱して混合し、これを加熱した(E)成分である水に加え、さらに混合した後に室温まで冷却して調製する。このようにして調製すると、化粧水中には、両親媒性物質である脂肪酸ソルビタン、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油、セラミドによってベシクルが形成される。形成されたベシクルは、約200nmの粒径をもち、化粧水中に安定に分散する。
化粧水調製にあたり、加熱温度は、好ましくは80~100℃であり、より好ましくは80~90℃、更に好ましくは85~90℃である。
【0019】
本発明における長期間安定(経時安定)性とは、調製から1ヶ月経過しても、結晶の析出や分離が生じず、さらに分散したベシクル粒子の粒径に±10%以上の変化がない状態を指す。
【0020】
本発明の化粧水においてセラミドは、化粧水の調製方法に記載した工程で(A)脂肪酸ソルビタンと(B)ポリオキシエチレン鎖の平均重合度が60~100であるポリオキシエチレン水添ヒマシ油と(D)セラミドによって構成されるベシクル構造の膜構造中にセラミドが存在するため安定化するものと考えられる。
本発明の化粧水中のベシクルが形成される模式図を図1に示す。図中環状のベシクルの膜構造中に両親媒性分子であるセラミドが取り込まれており、ベシクルとして安定化されている。
【実施例
【0021】
以下に試験例、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
なお安定性試験は、調製した化粧水をスクリューキャップ付きガラスボトルに50ml充填し、これを50℃の恒温槽で1ヶ月保存し、保存期間経過後取り出し、目視によりセラミドの結晶化による分離又は沈殿の発生を評価した。分離又は沈殿が生じた場合を「×」、生じなかった場合はベシクル粒子の平均粒径を測定し、調製直後の平均粒径を100%とした場合に±10%以上の粒径変化がない状態を「〇」、±10%以上の粒径変化を生じた状態を「△」として表の下段に記載した。本試験において「△」のものはなかった。
<試験1 界面活性剤の組み合わせ検討>
下記の表1に示す(A)~(E)の成分を含む組成のセラミドを含有する化粧水(実施例1)及び一部組成を変更した組成(比較例1、2)を調製した。
【0022】
【表1】
【0023】
化粧水中のセラミドを安定化するためには、(A)セスキオレイン酸ソルビタンと(B)PEG-100水添ヒマシ油を含有することが必要であった。
【0024】
<試験2 多価アルコールの検討>
下記の表2に示す(A)~(E)の成分を含む組成のセラミドを含有する化粧水(実施例1、2)及び一部組成を変更した組成(比較例3、4)を調製し、これを試験試料とし、安定性を確認した。
【0025】
【表2】
【0026】
化粧水中のセラミドを安定化するためには、(C)ジプロピレングリコールまたは(C)ペンチレングリコールを含有することが必要であった。
【0027】
<試験例3 脂肪酸ソルビタンの検討>
下記の表3に示す(A)~(E)の成分を含む組成のセラミドを含有する化粧水(実施例1、3、4)を調製し、これを試験試料として安定性を評価した。
【0028】
【表3】
【0029】
化粧水中のセラミドを安定化する脂肪酸ソルビタンは、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタンが適していた。
【0030】
<試験例4 ポリオキシエチレン水添ヒマシ油の検討>
下記の表4に示す(A)~(E)の成分を含む組成のセラミドを含有する化粧水(実施例1、5、6)とポリオキシエチレン水添ヒマシ油を変更した化粧水(比較例5)を調製し、これを試験試料として安定性を評価した。
【0031】
【表4】
【0032】
化粧水中のセラミドを安定化するポリオキシエチレン水添ヒマシ油は、PEG-100水添ヒマシ油、PEG-80水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油が適していた。しかし比較例5では化粧水を調製した直後に結晶浮きが見られた。このためPEG-40水添ヒマシ油は、本発明に適さないと結論した。
【0033】
<試験例5 ポリオキシエチレン水添ヒマシ油と脂肪酸ソルビタンの含有比率の検討>
下記の表5に示す(A)~(E)の成分を含み、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油と脂肪酸ソルビタンの含有比率を変更した組成(実施例1、7、8、9、比較例6、7)を調製し、これを試験試料として安定性を評価した。
【0034】
【表5】
【0035】
実施例1、7~9及び比較例6、7の保存安定性の評価結果に示す通り、化粧水中のセラミドを安定化するためには、(B)ポリオキシエチレン水添ヒマシ油と(A)脂肪酸ソルビタンの含有比率が重要であることが分かった。その好ましい(B):(A)の比率が4:6~8:2の間でセラミドを安定化することが分かった。
【0036】
<試験例6 セラミドの種類及び含有比率の検討>
下記の表6に示す(A)~(E)の成分を含み、セラミドの配合量と種類を変更した組成(実施例1、10~13を調製し、これを試験試料として安定性を評価した。
【0037】
【表6】
【0038】
表6に示すようにセラミド3もセラミド2と同様に、本発明に使用可能であった。
【0039】
<試験例7 化粧水の耐塩性試験>
表7に示す、実施例1の組成に、化粧水中のセラミドの安定性に影響を及ぼすことが明らかになっている塩化ナトリウム(Na)0.9質量%を添加した実施例14と硫酸マグネシウム(Mg)0.45質量%を添加した実施例15の組成を調製し、これを40℃又は50℃で1ヶ月保存した。保存期間経過後取り出し、目視によりセラミドの結晶化による濁り又は沈殿の発生を評価した。40℃の保存条件又は50℃の保存条件のいずれかの条件で分離又は沈殿が生じた場合を保存安定性「×」、どちらの条件でも生じなかった場合を「〇」として、表の下段に記載した。
また、セラミドを安定に含有することが知られている化粧水の組成に、実施例14、15同様に塩化ナトリウム又は塩化マグネシウムを添加した組成の化粧水を比較例として調製した。比較例8、9の組成は特許文献1に開示された組成に、塩化ナトリウム又は硫酸マグネシウムを添加したもの、比較例10、11の組成は特許文献2に開示された組成に塩化ナトリウム又は硫酸マグネシウムを添加したものである。
【0040】
【表7】
【0041】
表7に示す通り、実施例14、15は、好ましい耐塩性を示した。一方比較例8~11の組成はいずれも化粧水中のセラミド安定性が不良であった。
すなわち、比較例8は、40℃及び50℃の保管条件で2週間経過すると、化粧水の液面にセラミドが析出した。また比較例9についても40℃および50℃の保管条件で2週間経過すると比較例8と同様に析出が生じた。特に、50℃の保管条件では、3週間でセラミドの分離が確認された。
比較例10および比較例11はいずれも、50℃、2週間の保管条件でセラミドの析出が生じ、沈殿が発生した。
【0042】
<試験例8 分散粒子の粒径測定>
実施例14、15の化粧水を5℃、25℃、40℃、50℃、-5℃~45℃/24時間(cy)で保存し、経時的に粒度分布計(ELSZ-1000:大塚電子製)を用いて、セラミドを含むベシクル粒子のサイズを測定した。
実施例14の測定結果を表8とこれをグラフ化した図2に示す。実施例15の測定結果を表9とこれをグラフ化した図3に示す。
【0043】
【表8】
【0044】
【表9】
【0045】
表8、図2、表9、図3に示す通り、いずれの保存条件においてもベシクル粒子の大きさには変化が認められなかった。
【0046】
<試験例9 異なる温度条件での安定性試験>
実施例1~13の化粧水を、5℃、25℃、40℃、50℃、-5℃~45℃/24時間(cy)の異なる温度条件で保存試験を行った。いずれの温度条件においても、目視評価では分離又は沈殿は生じなかった。
また、粒度分布計(ELSZ-1000:大塚電子製)を用い、分散するベシクル粒子の粒径測定をおこなった。いずれの温度条件でも、1ヶ月保管した後の粒径変化は、変化量が±10%以内であった。
【0047】
以上の試験例1~9の結果から、本発明のセラミドを含有する化粧料は、極めて保存安定性と耐塩性に優れていることが明らかとなった。
【0048】
<処方例1> 化粧水
1.水 残余
2.BG 1.5
3.グリセリン 3
4.DPG 5
5.セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
6.PEG-80水添ヒマシ油 0.5
7.メチルグルセス-10 2.25
8.ベタイン 1.5
9.ラフィノース 0.5
10.ジグリセリン 0.1
11.ペンチレングリコール 1.75
12.エチルヘキシルグリセリン 0.07
13.セラミド2 0.2
14.クエン酸 0.04
15.クエン酸Na 0.13

成分1、2、3、7、8、9、10、12を加熱混合した中に、成分5、6、13、4、11を加熱溶解したものを添加して攪拌し、室温まで冷却して、ベシクルを形成させた水溶液を得た。さらに塩類である成分14、15を添加して化粧水を得た。処方例1の化粧水は、使用感に優れ、極めて保存安定性と耐塩性に優れていた。
図1
図2
図3