(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】計測支援装置、計測支援方法及び計測支援プログラム
(51)【国際特許分類】
B60M 1/28 20060101AFI20240326BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20240326BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20240326BHJP
【FI】
B60M1/28 R
G06T7/60 180B
G06T7/70 A
(21)【出願番号】P 2020017680
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500233049
【氏名又は名称】株式会社富士テクニカルリサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】猿田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】柴田 和喜
(72)【発明者】
【氏名】名取 孝
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-169979(JP,A)
【文献】再公表特許第2018/087931(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 1/28
G06T 7/60
G06T 7/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールモデルの少なくとも一部の軌道中心を決定する軌道中心決定手段と、
前記軌道中心の延伸方向を第1軸方向として決定し、前記レールモデルにおけるレール上面の少なくとも一部を含む基準平面において前記第1軸方向と直交する方向を第2軸方向として決定し、前記基準平面の法線方向を第3軸方向として決定し、前記第1、第2及び第3軸方向に基づく座標系を決定する座標系決定手段と、
前記座標系における前記第1軸方向の座標が共通する2つのトロリ線モデルのそれぞれにおける点座標を含む位置セットを計測対象位置として決定する位置決定手段と、
前記計測対象位置に基づき前記第3軸方向における2つの前記トロリ線モデルの離間距離を前記基準平面から
2つの前記トロリ線モデルまでの高低差を
算出するために決定する距離決定手段と、を有する計測支援装置。
【請求項2】
前記位置決定手段は、前記第2軸方向に所定距離移動された前記軌道中心と2つの前記トロリ線モデルの一方の前記トロリ線モデルとの交点を示す点座標を含み前記点座標と前記第1軸方向の座標が共通する2つの前記トロリ線モデルの他方の前記トロリ線モデルの点座標を含む位置セットを前記計測対象位置として決定する
請求項1に記載の計測支援装置。
【請求項3】
前記位置決定手段は、2つの前記トロリ線モデルの交点である点座標から前記第1軸方向において所定距離離間し前記第1軸方向の座標が共通する2つの前記トロリ線モデルのそれぞれにおける点座標を含む位置セットを前記計測対象位置として決定する
請求項1に記載の計測支援装置。
【請求項4】
前記軌道中心決定手段は、前記レールモデルを複数の線分からなる多線分モデルとして近似し複数の前記線分のそれぞれにおいて前記軌道中心を決定し、
前記座標系決定手段は、当該それぞれにおいて前記座標系を決定し、
前記位置決定手段は、当該それぞれと対応する前記トロリ線モデルの一部における前記計測対象位置を当該一部と対応する前記座標系に基づき決定する
請求項1~3の何れかに記載の計測支援装置。
【請求項5】
レールモデルの少なくとも一部の軌道中心を決定する軌道中心決定ステップと、
前記軌道中心を第1軸方向として決定し、前記レールモデルにおけるレール上面の少なくとも一部を含む基準平面において前記第1軸方向と直交する方向を第2軸方向として決定し、前記基準平面の法線方向を第3軸方向として決定し、前記第1、第2及び第3軸方向に基づく座標系を決定する座標系決定ステップと、
前記座標系における2つのトロリ線モデルのそれぞれの前記第1軸方向の座標が共通する位置セットを計測対象位置として決定する位置決定ステップと、
前記計測対象位置に基づき前記第3軸方向における2つの前記トロリ線モデルの離間距離を前記基準平面から
2つの前記トロリ線モデルまでの高低差を
算出するために決定する距離決定ステップと、をコンピュータに実行させる計測支援方法。
【請求項6】
コンピュータを、
レールモデルの少なくとも一部の軌道中心を決定する軌道中心決定手段と、
前記軌道中心を第1軸方向として決定し、前記レールモデルにおけるレール上面の少なくとも一部を含む基準平面において前記第1軸方向と直交する方向を第2軸方向として決定し、前記基準平面の法線方向を第3軸方向として決定し、前記第1、第2及び第3軸方向に基づく座標系を決定する座標系決定手段と、
前記座標系における2つのトロリ線モデルのそれぞれの前記第1軸方向の座標が共通する位置セットを計測対象位置として決定する位置決定手段と、
前記計測対象位置に基づき前記第3軸方向における2つの前記トロリ線モデルの離間距離を前記基準平面から
2つの前記トロリ線モデルまでの高低差を
算出するために決定する距離決定手段と、として機能させる計測支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測支援装置、計測支援方法及び計測支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
架空電車線方式に基づく電気鉄道では、隣接線へ列車が分岐する際に、列車へ電気を常に供給するため、本線と隣接線を交差するわたり線という設備を架設する必要がある。わたり線装置箇所においてパンダグラフがわたり線に割り込むような事故が多く発生しており、特に管理を要する重要な設備として認識されている。
【0003】
上記事故は、トロリ線同士の高低差の算出結果に基づく対策が施されることで、未然に防ぐことができる。当該高低差は、列車が走行しない手続きなどを行った上で、トロリ線と接触するような測定器を用いて計測される場合がある。当該高低差の算出は、例として、軌道中心と測定対象トロリ線とのある定められた距離の箇所において、人力でそれぞれのトロリ線高さを測定する必要があった。しかし、接触を伴う手法に基づくトロリ線の高低差計測は、夜間作業で多くの手続や要員を必要とする測定方法であり、煩雑な測定方法であるため、非効率である。
【0004】
特許文献1では、レーザを利用して直線状に延びる第1及び第2構造物間の距離を測定するための距離測定方法についての発明が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、トロリ線に係る高低差を計測するための箇所を都度、指定する必要があり、改善の余地が残されている。
【0006】
特許文献2では、対象物を3次元計測して得られた点の集合である点群データから、電車が走行する軌道を構成するレールを検出するレール検出部と、検出されたレールに基づいて、トロリ線上の点の高さおよび偏位を計測する際の基準となる基準を設定する基準設定部と、点群データからトロリ線上の点を検出するトロリ線検出部と、基準を用いて、トロリ線上の点の高さおよび偏位を計測する高さ偏位計測部と、を備えるトロリ線計測装置についての発明が開示されている。
【0007】
特許文献2に記載の発明は、上述のような接触を伴う手法に基づかないため、夜間作業で多くの手続や要員を必要としない測定方法であるが、特定の距離における軌道中心の割出しを行う労力が新たに必要となり、効率化に向けた改善の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-19923号公報
【文献】特許第6223601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記事情を鑑みて、本発明は、高効率にトロリ線同士の高低差を計測できるような新規の技術を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、計測支援装置であって、レールモデルの少なくとも一部の軌道中心を決定する軌道中心決定手段と、前記軌道中心の延伸方向を第1軸方向として決定し、前記レールモデルにおけるレール上面の少なくとも一部を含む基準平面において前記第1軸方向と直交する方向を第2軸方向として決定し、前記基準平面の法線方向を第3軸方向として決定し、前記第1、第2及び第3軸方向に基づく座標系を決定する座標系決定手段と、前記座標系における前記第1軸方向の座標が共通する2つのトロリ線モデルのそれぞれにおける点座標を含む位置セットを計測対象位置として決定する位置決定手段と、前記計測対象位置に基づき前記第3軸方向における2つの前記トロリ線モデルの離間距離を決定する距離決定手段と、を有する。
【0011】
このような構成とすることで、本発明は、イメージセンシング等により取得されたレール及びトロリ線のモデルに基づきトロリ線に係る高低差を非接触に計測することができる。また、このような構成とすることで、レール線の傾き等に応じて定義された座標系に基づき上位箇所の指定を自動化し当該高低差を高効率に計測することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記位置決定手段は、第2軸方向に所定距離移動された前記軌道中心と2つの前記トロリ線モデルの一方の前記トロリ線モデルとの交点である点座標を含み前記点座標と前記第1軸方向の座標が共通する2つの前記トロリ線モデルの他方の前記トロリ線モデルの点座標を含む前記位置セットを前記計測対象位置として決定する。
【0013】
このような構成とすることで、本発明は、レールの軌道中心から任意の所定距離の範囲のトロリ線の高低差を計測することができるため、上記事故が発生し易いと経験的に判断されるような領域の当該高低差の計測を、高効率・高精度に実現することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記位置決定手段は、2つの前記トロリ線モデルの交点である点座標から前記第1軸方向において所定距離離間し前記第1軸方向の座標が共通する2つの前記トロリ線モデルのそれぞれにおける点座標を含む位置セットを計測対象位置として決定する。
【0015】
このような構成とすることで、本発明は、トロリ線が交差する箇所から任意の所定距離の範囲のトロリ線の高低差を計測することができるため、上記事故が発生し易いと経験的に判断されるような領域の当該高低差の計測を高効率・高精度に実現することができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記軌道中心決定手段は、前記レールモデルを複数の線分からなる多線分モデルとして近似し複数の前記線分のそれぞれにおいて前記軌道中心を決定し、前記座標系決定手段は、当該それぞれにおいて前記座標系を決定し、前記位置決定手段は、当該それぞれと対応する前記トロリ線モデルの一部における前記計測対象位置を当該一部と対応する前記座標系に基づき決定する。
【0017】
このような構成とすることで、本発明は、曲線形状等の非直線形状を呈するレールモデルを多線分モデルに近似することで、トロリ線に係る高低差計測のための計算コストを削減することができ、当該高低差の計測を高効率・高精度に実現することができる。
【0018】
上記課題を解決するため、本発明は、計測支援方法であって、レールモデルの少なくとも一部の軌道中心を決定する軌道中心決定ステップと、前記軌道中心を第1軸方向として決定し、前記レールモデルにおけるレール上面の少なくとも一部を含む基準平面において前記第1軸方向と直交する方向を第2軸方向として決定し、前記基準平面の法線方向を第3軸方向として決定し、前記第1、第2及び第3軸方向に基づく座標系を決定する座標系決定ステップと、前記座標系における2つのトロリ線モデルのそれぞれの前記第1軸方向の座標が共通する位置セットを計測対象位置として決定する位置決定ステップと、前記計測対象位置に基づき前記第3軸方向における2つの前記トロリ線モデルの離間距離を決定する距離決定ステップと、コンピュータに実行させる。
【0019】
上記課題を解決するため、本発明は、計測支援プログラムであって、コンピュータを、レールモデルの少なくとも一部の軌道中心を決定する軌道中心決定手段と、前記軌道中心を第1軸方向として決定し、前記レールモデルにおけるレール上面の少なくとも一部を含む基準平面において前記第1軸方向と直交する方向を第2軸方向として決定し、前記基準平面の法線方向を第3軸方向として決定し、前記第1、第2及び第3軸方向に基づく座標系を決定する座標系決定手段と、前記座標系における2つのトロリ線モデルのそれぞれの前記第1軸方向の座標が共通する位置セットを計測対象位置として決定する位置決定手段と、前記計測対象位置に基づき前記第3軸方向における2つの前記トロリ線モデルの離間距離を決定する距離決定手段と、として機能させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、高効率にトロリ線同士の高低差を計測できるような新規の技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るハードウェア構成図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る全体のフローチャート。
【
図4】本発明の一実施形態に係るレールモデル及びトロリ線モデル。
【
図5】本発明の一実施形態に係る座標系定義のフローチャート。
【
図6】本発明の一実施形態に係る座標系定義の説明図。
【
図7】本発明の一実施形態に係る計測対象位置決定のフローチャート。
【
図8】本発明の一実施形態に係る計測対象位置決定の説明図。
【
図9】本発明の一実施形態に係る計測対象位置決定のフローチャート。
【
図10】本発明の一実施形態に係る計測対象位置決定の説明図。
【
図11】本発明の一実施形態に係る多線分モデルに基づく処理のフローチャート。
【
図12】本発明の一実施形態に係る多線分モデルに基づく処理の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書は、本発明の一実施形態に係る構成や作用効果等について、図面を交えて説明する。本発明は、以下の一実施形態に限定されず、様々な構成を採用し得る。また、本発明の一実施形態は、各実施形態のそれぞれにおける構成の一部を、本発明の一実施形態が目的とする作用効果の実現を阻害しない範囲で互いに採用してよい。
【0023】
本発明に係る計測支援装置、計測支援方法、計測支援プログラム及び計測支援プログラム媒体のそれぞれは、同様の作用効果を奏する。例として、計測支援装置等における各手段のそれぞれと、計測支援方法における各ステップのそれぞれと、は同様の作用効果を奏する。
【0024】
本発明に係る計測支援装置、計測支援プログラム及び計測支援プログラム媒体のそれぞれにおける各手段の作用効果は、後述のプロセッサ等の演算装置が発揮する、と把握することができる。また、計測支援方法の各ステップの作用効果も当該プロセッサ等の演算装置により実現される、と把握することができる。
【0025】
本発明に係る計測支援プログラム媒体は、計測支援プログラムが格納された記録媒体であり、フラッシュメモリ等の非一過性の記録媒体である。当該計測支援プログラム媒体は、既知又は慣用のコンピュータに対して計測支援プログラムの少なくとも一部をインストール可能である、という作用効果を奏する。
【0026】
〈ハードウェア構成〉
図1に例示されるように、計測支援装置・計測支援方法・計測支援プログラム・計測支援プログラム媒体は、既知又は慣用のコンピュータ装置1を含む(利用する)。コンピュータ装置1は、少なくとも、演算装置11、主記憶装置12、補助記憶装置13及びバスインタフェースを有する。これらの各装置は、本発明が発揮する作用効果を実現する上で適宜、用いられる。なお、コンピュータ装置1は、上記構成に加えて、入力装置14、出力装置15及び通信装置16を備える構成でよい。
【0027】
なお、本発明の一実施形態に係るコンピュータ装置1は、1つの端末であってよく、1つのサーバ装置であってよく、当該端末及びサーバ装置の組み合わせであってよく、複数のサーバ装置からなるサーバ群であってよい。1以上のコンピュータ装置のそれぞれは、コンピュータ装置1が有する各手段の少なくとも一部を有する。
【0028】
演算装置11は、命令セットを実行可能な既知又は慣用のプロセッサを有する。主記憶装置12は、命令セットを記憶可能な既知又は慣用の揮発性メモリを有する。補助記憶装置13は、プログラム等を記録可能な既知又は慣用の不揮発性メモリ等の記録媒体を有する。入力装置14は、例えば意思入力が可能な既知又は慣用のインタフェースである。出力装置15は、視覚的・聴覚的・触覚的な報知を可能とするような既知又は慣用のインタフェースである。通信装置16は、ネットワークへの接続を実現するための有線方式又は無線方式に基づく既知又は慣用のネットワークインタフェースを有する。上記ネットワークは、既知又は慣用のプロトコル(トランスポート層及びアプリケーション層を指す。)に適宜、基づく。
【0029】
〈機能ブロック〉
図2に例示されるように、コンピュータ装置1は、レールモデル1001の少なくとも一部の軌道中心30を決定する軌道中心決定手段101(軌道中心決定ステップ101s)を、有する(プロセッサに実行させる)。なお、当該レールモデル1001は予め、データベースDBに格納された状態で適宜、参照される構成であってよい。
【0030】
本明細書中の説明における「レールモデル1001」とは、既知又は慣用のデータフォーマットに基づきレールの位置・形状等の幾何学的特徴を示す3次元モデルを指す。本発明の一実施形態に係るレールモデル1001は、モデルパターンマッチング等の既知又は慣用の手法に基づき計測点群データから生成されてよく、設計データ等の既存のCADデータのインポート処理により準備されてよく、モデルの準備手法に制限はない。
【0031】
本明細書中の説明における「軌道中心30」とは、レール1001a等の進展方向に平行であり、当該進展方向と直交する方向における中点を通る線分を指す。
【0032】
コンピュータ装置1は、軌道中心30の延伸方向を第1軸方向32xとして決定し、レールモデル1001におけるレール上面10011の少なくとも一部を含む基準平面31において第1軸方向32xと直交する方向を第2軸方向32yとして決定し、基準平面31の法線方向を第3軸方向32zとして決定し、第1軸方向32x・第2軸方向32y・第3軸方向32zに基づく座標系32を決定する座標系決定手段102(座標系決定ステップ102s)を、有する(プロセッサに実行させる)。
【0033】
本明細書中の説明における「レール上面10011の少なくとも一部を含む基準平面31」とは、対をなす2つのレール1001a及び1001bを示すレールモデル1001における2つのレール上面10011を含むような、当該2つのレール上面のそれぞれと平行であるような、平面を指す。
【0034】
本明細書中の説明における「座標系32を決定する」とは、三次元座標系である座標系32を構成する第1軸方向32x、第2軸方向32y及び第3軸方向32zのそれぞれと対応する方向(ベクトル)を定義することを指す。
【0035】
コンピュータ装置1は、座標系32における第1軸方向32xの座標が共通する2つのトロリ線モデル1002a及び1002bのそれぞれにおける点座標を含む位置セットを計測対象位置40として決定する位置決定手段103(位置決定ステップ103s)を、有する(プロセッサに実行させる)。なお、当該トロリ線モデル1002a及び1002bは予め、データベースDBに格納された状態で適宜、参照される構成であってよい。
【0036】
本明細書中の説明における「トロリ線モデル1002」とは、既知又は慣用のデータフォーマットに基づきトロリ線の位置・形状等の幾何学的特徴を示す3次元モデルを指す。本発明の一実施形態に係るトロリ線モデル1002は、モデルパターンマッチング等の既知又は慣用の手法に基づき計測点群データから生成されてよく、設計データ等の既存のCADデータのインポート処理により準備されてよく、モデルの準備手法に制限はない。
【0037】
本明細書中の説明における「第1軸方向32xの座標が共通する」とは、第1軸方向32xの座標値が一致又は略一致することを指す。
【0038】
コンピュータ装置1は、計測対象位置40に基づき第3軸方向32zにおける2つのトロリ線モデル1002a及び1002bの離間距離を決定する距離決定手段104(距離決定ステップ104s)を、有する(プロセッサに実行させる)。
【0039】
本明細書中の説明における「計測対象位置40に基づき離間距離を決定する」とは、計測対象位置40を構成する位置セットにおけるユークリッド距離を決定することを指す。
【0040】
本明細書中の説明における「2つのトロリ線モデル1002a及び1002bの離間距離」は、本発明の一実施形態においてその算出を目的とする高低差を指す。当該離間距離は、第3軸方向32zに沿った離間距離であることを、その特徴とする。
【0041】
〈フローチャート(処理全体)〉
図3に例示されるように、本発明の一実施形態に係る高低差の算出は、以下の手順に従って行われる。本発明の一実施形態では、先ず、コンピュータ装置1は、レールモデル1001及びトロリ線モデル1002に係る準備・参照・読込を適宜、行う。次に、軌道中心決定手段101は、当該レールモデル1001に基づき軌道中心30を決定する。次に、座標系決定手段102は、当該レールモデル1001及び軌道中心30に基づき座標系32を決定する。次に、位置決定手段103は、計測対象位置401等を決定する。最後に、距離決定手段104は、2つのトロリ線モデル1002a及び1002bに係る離間距離を決定し高低差の算出を行う。
【0042】
〈レールモデル1001及びトロリ線モデル1002〉
図4に例示されるように、本発明の一実施形態に係るレールモデル1001及びトロリ線モデル1002を含むモデルデータは、吊架線モデル1003等のレール周辺の構造物モデルを適宜、含む。当該構造物モデルは、枕木、碍子、ビーム、ハンガ等の鉄道車両周辺に位置する既知の構造物を含んでよい。当該モデルデータは、データベースDB上に適宜、格納され得る。
【0043】
〈フローチャート(座標系32の定義)〉
本発明の一実施形態に係る座標系32の定義について、
図5及び
図6を交えて説明する。座標系32の定義は以下の手順に従って行われる。本発明の一実施形態では、先ず、座標系決定手段102は、レール上面10011(レール上面10011a及び10011b)を含む基準平面31を決定する。次に、座標系決定手段102は、第1軸方向32xと直交し基準平面31と平行な第2軸方向32yを決定する。最後に、座標系決定手段102は、基準平面31の法線方向である第3軸方向32zを決定する。第1軸方向32x、第2軸方向32y及び第3軸方向32zは、互いに直交する。
【0044】
〈フローチャート(計測対象位置40の決定)〉
本発明の一実施形態に係る計測対象位置40の決定について、
図7及び
図8を交えて説明する。本発明の一実施形態では、先ず、位置決定手段103は、軌道中心30a及びトロリ線モデル1002を基準平面31に投影する。次に、位置決定手段103は、軌道中心30aを第2軸方向32yに所定距離41移動し軌道中心30bとして決定する。最後に、軌道中心30b及びトロリ線モデル1002(1002a又は1002b)の交点である点座標401aを含む位置セットを計測対象位置401として決定する。当該位置セットにおける点座標401bは、点座標401aと第1軸方向32xの座標が共通する。
【0045】
本明細書中の説明における「軌道中心30a及びトロリ線モデル1002を基準平面31に投影する」とは、軌道中心30a及びトロリ線モデル1002の第1軸方向32x及び第2軸方向32yの2次元座標値を保持しながら第3軸方向の座標値のみ基準平面31の第3軸方向の座標値に差し替えるような処理を指す。
【0046】
本発明の一実施形態に係る所定距離41は、例として、300mm以上であり、1200mm以下である。当該所定距離は、好ましくは、900mmである。また、当該所定距離41は、300mm、1000mm及び1200mm等の値を取り得る。なお、当該所定距離41の上限及び下限に特に制限はない。
【0047】
本発明の一実施形態に係る計測対象位置40の決定について、
図9及び
図10を交えて説明する。本発明の一実施形態に係る位置決定手段103は、先ず、軌道中心30及びトロリ線モデル1002を基準平面31に投影する。次に、位置決定手段103は、トロリ線モデル1002a及び1002bの交点である点座標420を決定する。最後に、位置決定手段103は、点座標420から第1軸方向32xに所定距離42離間したトロリ線モデル1002上の点座標401aを含む位置セットを計測対象位置401等として決定する。なお、所定距離42は、所定距離421や所定距離422等の複数の距離を含んでよい。
【0048】
本発明の一実施形態に係る所定距離42は、例として、300mmであり、その上限及び下限に特に制限はない。本発明の一実施形態に係る所定距離421及び422は、例として、300mm及び1200mmであり、特に制限はない。
【0049】
本発明の一実施形態に係る位置決定手段103は、複数(複数組)の計測対象位置40を決定する構成であってよい。
【0050】
〈多線分モデルにおける高低差の算出〉
本発明の一実施形態に係る軌道中心決定手段101は、レールモデル1001を複数の線分からなる多線分モデルとして近似し複数の前記線分のそれぞれにおいて軌道中心30を決定し、座標系決定手段102は、当該それぞれにおいて座標系32を決定し、位置決定手段103は、当該それぞれと対応するトロリ線モデル1002の一部における計測対象位置40を当該一部と対応する座標系32に基づき決定してよい。
【0051】
本発明の一実施形態に係る多線分モデルにおける計測対象位置40の決定について、
図11及び
図12を交えて説明する。本発明の一実施形態に係る軌道中心決定手段101は、先ず、コンピュータ装置1により指定/変更された領域に応じて、当該領域における軌道中心30を決定する。次に、座標系決定手段102は、当該領域における基準平面31(例として基準平面31a)及び座標系32を決定する。次に、位置決定手段103は、当該座標系32等と、当該領域におけるトロリ線モデル1002(トロリ線モデル1002a1及び1002b1等)を基準平面31に投影し、計測対象位置40の決定を試みる。当該領域において計測対象位置40が無い場合、処理は、領域の指定/変更の段階に移行する。当該領域において計測対象位置40が有った場合、距離決定手段104は、当該領域における高低差の算出を行う。
【0052】
本発明の一実施形態に係る軌道中心決定手段101は、レールモデル1001やトロリ線モデル1002の多線分モデルへの近似に際し、既知又は慣用の手法に基づき、所定距離毎に単一方向に延伸するような線分への近似を行う。当該所定距離に制限はない。
【0053】
本発明によれば、レールモデルの傾き等に応じて新たに定義される座標系に基づき、好適にトロリ線同士の高低差を計測できる技術を提供することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 :コンピュータ装置
11 :演算装置
12 :主記憶装置
13 :補助記憶装置
14 :入力装置
15 :出力装置
16 :通信装置
30 :軌道中心
30a :軌道中心
30b :軌道中心
31 :基準平面
31a :基準平面
32 :座標系
32x :第1軸方向
32y :第2軸方向
32z :第3軸方向
40 :計測対象位置
41 :所定距離
42 :所定距離
101 :軌道中心決定手段
101s :軌道中心決定ステップ
102 :座標系決定手段
102s :座標系決定ステップ
103 :位置決定手段
103s :位置決定ステップ
104 :距離決定手段
104s :距離決定ステップ
301 :軌道中心
401 :計測対象位置
401a :点座標
401b :点座標
420 :点座標
421 :所定距離
422 :所定距離
1001 :レールモデル
1001a :レール
1002 :トロリ線モデル
1002a :トロリ線モデル
1002a1 :トロリ線モデル
1003 :吊架線モデル
10011 :レール上面
10011a :レール上面
10011b :レール上面