(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】アクチュエータ装置
(51)【国際特許分類】
E05B 77/36 20140101AFI20240326BHJP
E05B 85/02 20140101ALI20240326BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
E05B77/36
E05B85/02
B60J5/10 H
(21)【出願番号】P 2020103329
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片川 峰孝
(72)【発明者】
【氏名】土谷 陽平
(72)【発明者】
【氏名】張 晨鳴
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-66385(JP,A)
【文献】再公表特許第2007/074527(JP,A1)
【文献】特開2009-83657(JP,A)
【文献】特開2017-82429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられるアクチュエータ装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容されるモータと、
前記ハウジングに設けられ、該ハウジングから突出して前記モータの回転軸に対して
車両取付状態で下方から当接する軸当接突起と、
を備え
、
前記軸当接突起は、前記回転軸に当接する方向に曲げ弾性を有することを特徴とするアクチュエータ装置。
【請求項2】
前記軸当接突起は前記ハウジングと一体成形されていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記回転軸の先端を支持する一体成形の軸先端支持部を備え、
前記軸当接突起は、前記回転軸に対して前記モータの本体と前記軸先端支持部との間で当接することを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ装置。
【請求項4】
前記回転軸にはギアが設けられ、
前記軸当接突起は、前記回転軸に対して前記モータの本体と前記ギアとの間で当接することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のアクチュエータ装置。
【請求項5】
前記ハウジングは樹脂製であって、
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングよりも軟質の第2ハウジングと、
を備え、
前記軸当接突起は前記第2ハウジングと一体成形されていることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載のアクチュエータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両にはモータを含むアクチュエータ装置が設けられている。モータを含むアクチュエータ装置としては、例えばパワーウィンドウ装置(特許文献1)や、ドア開閉装置(特許文献2)があげられる。
【0003】
特許文献1および特許文献2に記載の装置ではモータの回転軸の回転を安定させるために、該回転軸に対して複数の転がり軸受や滑り軸受を付加的に設けている。このように、複数の軸受を付加的に設けることによりモータの回転が安定し、振動や騒音を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-225289号公報
【文献】特開平10-146016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、軸受は比較的高価な部品であり、軸受を付加的に設けることは部品点数が増加して組み立て工数アップやコストアップの要因となり得る。軸受は通常複数必要であり、しかもそれぞれが回転軸と同軸上となるように取付を高精度に行い、または軸受支持部を高精度に形成する必要がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、コストの抑制を図ることができ、しかも振動や騒音を抑制することのできるアクチュエータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるアクチュエータ装置は、ハウジングと、前記ハウジング内に収容されるモータと、前記ハウジングに設けられ、該ハウジングから突出して前記モータの回転軸に対して側方から当接する軸当接突起と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このようなアクチュエータ装置は、ハウジングと一体成形され、回転軸に対して側方から当接する軸当接突起を備えている。このような軸当接突起によれば、回転軸の振動や騒音を抑制することができる。また、軸当接突起は軸受と比較して廉価であるためコストを抑制することができる。
【0009】
前記軸当接突起は前記ハウジングと一体成形されていていると、部品点数を一層抑制することができ、アクチュエータ装置の組み立てが容易となる。
【0010】
前記ハウジングは、前記回転軸の先端を支持する一体成形の軸先端支持部を備え、前記軸当接突起は、前記回転軸に対して前記モータの本体と前記軸先端支持部との間で当接してもよい。
【0011】
前記回転軸にはギアが設けられ、前記軸当接突起は、前記回転軸に対して前記モータの本体と前記ギアとの間で当接してもよい。
【0012】
前記軸当接突起は、前記回転軸に対して少なくとも一方の側方に当接してもよい。
【0013】
前記軸当接突起は、前記回転軸に当接する方向に曲げ弾性を有してもよい。
【0014】
前記ハウジングは樹脂製であって、第1ハウジングと、前記第1ハウジングよりも軟質の第2ハウジングと、を備え、前記軸当接突起は前記第2ハウジングと一体成形されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかるアクチュエータ装置は、ハウジングに設けられ、回転軸に対して側方から当接する軸当接突起を備えている。このような軸当接突起によれば、回転軸の振動や騒音を抑制することができる。軸当接突起は廉価であり、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明にかかるアクチュエータ装置の実施形態であるドア開閉装置を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、ラッチ、ラチェットおよびボディの一部を示す図である。
【
図4】
図4は、アクチュエータ部の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、カバーを取り外した状態のドア開閉装置を示す図である。
【
図9】
図9は、カバーおよびモータの一部拡大斜視図である。
【
図10】
図10は、ターミナル保持部材の一部分解斜視図である。
【
図11】
図11は、ドア開閉装置におけるカプラーおよびその周辺の拡大図である。
【
図12】
図12は、ターミナル保持部材を、モータを基準とした軸方向から見た図である。
【
図13】
図13は、仮組みされたモータおよびターミナル保持部材をケースに組み付ける様子を示す図である。
【
図14】
図14は、ドア開閉装置における軸当接突起の有無による騒音の比較実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかるアクチュエータ装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明にかかるアクチュエータ装置の実施形態であるドア開閉装置10を示す斜視図である。
図2は、ドア開閉装置10の分解斜視図である。ドア開閉装置10は、例えば車両のバックドアに設けられ、車両本体のストライカS(
図3参照)に対して係合および開放して、バックドアを開扉および閉扉するものである。なお、ドア開閉装置10の上下方向は車両への取付状態を基準とする。図面では適宜上下方向を矢印で示している。
【0019】
図1および
図2に示すように、ドア開閉装置10は噛合部12と、アクチュエータ部14とを備える。噛合部12はストライカSとの噛合および開放をする機構部である。アクチュエータ部14は噛合部12を駆動する機構部である。噛合部12とアクチュエータ部14とは接続板16を介して、ビスBによって固定される。アクチュエータ部14は出力レバー18を介して噛合部12を駆動する。
【0020】
噛合部12は、ボディ20と、左右一対のブラケット22と、ラッチレバー24と、ハーネス25と、オープンレバー26とを備える。
【0021】
ボディ20には、ストライカSが進入するストライカ進入溝20aが形成されている。ボディ20は、ストライカSと係合するラッチ30(
図3参照)と、該ラッチ30をハーフラッチ位置またはフルラッチ位置で保持するラチェット32(
図3参照)とを備える。ボディ20は一対のブラケット22を介してアクチュエータ部14およびバックドアに固定される。ボディ20にはラッチ30の回転位置を検出する複数のスイッチが設けられている。ハーネス25にはこれらのスイッチと接続される電線が含まれており、先端にはカプラー25aが設けられている。カプラー25aはBCMと接続される。カプラー25aは、後述するカプラー102に統合されていてもよい。
【0022】
ラッチレバー24は、ラッチ30とともにラッチ軸24aを軸として回転する。ラッチレバー24は先端に係合ピン24bを備えている。オープンレバー26はオープンレバー軸26aを軸として回転する。オープンレバー26は係合部26bと、アーム26cとを備える。出力レバー18の軸孔18aにはアクチュエータ部14の出力軸48が嵌り、出力レバー18は該出力軸48とともに回転する。出力レバー18は、噛合部12の側に突出するピン18bおよび押圧部18cを備える。出力レバー18が
図2における中立位置から時計方向に回転するとピン18bは係合ピン24bを押圧し、ラッチレバー24が回転する。出力レバー18が
図2における中立位置から反時計方向に回転すると押圧部18cは係合部26bを押圧し、オープンレバー26が回転する。
【0023】
図3は、ラッチ30、ラチェット32およびボディ20の一部を示す図である。ラッチ30はストライカSが係合するストライカ係合溝30aと、ハーフラッチ係合部30bと、フルラッチ係合部30cと、カム30dとを備えており、ラッチ軸24aを軸として回転可能である。ラッチ30はスプリング30eによって反時計方向に付勢されている。ラッチ30の回動角度は、カム30dが図示しない複数のスイッチをオン・オフすることによりBCMに伝えられる。ラチェット32は、爪32aと、被押圧部32bとを備えており、ラチェット軸32cを軸として回転可能である。ラチェット32はスプリング32dによって時計方向に付勢されている。被押圧部32bは、出力レバー18の回転に基づきアーム26cによって押圧される。
【0024】
ストライカSがストライカ進入溝20aに入り込むと、ラッチ30は時計方向に回転し、爪32aがハーフラッチ係合部30bに係合してハーフラッチ状態となる。ハーフラッチ状態となったことを検出したBCMはアクチュエータ部14および出力レバー18(
図2に示す中立位置から時計方向の回転)を介してラッチ30を時計方向にさらに回転させる。そうすると、爪32aがフルラッチ係合部30cに係合してフルラッチ状態となり、バックドアは閉扉する。なお、
図3はフルラッチ状態を示している。
【0025】
バックドアを開扉する場合には、BCMはアクチュエータ部14および出力レバー18を
図2に示す中立位置から反時計方向に回転させる。そうすると、押圧部18c(
図2参照)が係合部26bを押圧してオープンレバー26が回転する。さらにオープンレバー26のアーム26cが被押圧部32bを押圧することにより、ラチェット32は
図3の反時計方向に回転する。これにより爪32aが移動して、フルラッチ係合部30cは係合状態から解放され、ラッチ30が反時計方向に回転してストライカSがストライカ係合溝30aから離脱可能となる。すなわち、バックドアが開扉する。
【0026】
図4は、アクチュエータ部14の分解斜視図である。アクチュエータ部14では、ケース(第1ハウジング)34およびカバー(第2ハウジング)36がハウジングを構成している。ケース34およびカバー36は樹脂材である。カバー36はケース34よりも軟質材が用いられる。ケース34は、例えばPBT(polybutyleneterephtalate)であり、カバー36は、例えばPOM(polyacetal)である。
【0027】
ケース34は、やや硬質のPBTで形成されることにより、次に述べるギア類(ウォームホイール42と、中継ギア44と、出力ギア46と、出力軸48等)を収納しており、これらを軸支する強度と、接続板16およびブラケット22を介して車両に取り付ける強度とを有している。カバー36もギア類の支持をしているが、ケース34と比較して強度的には補助的な支持である。カバー36はケース34よりも軟質のPOMで形成されることにより、振動や騒音を吸収することができる。
【0028】
ケース34とカバー36によって構成されるハウジングの内部には、モータ38と、ターミナル保持部材40と、ウォームホイール42と、中継ギア44と、出力ギア46と、出力軸48とが設けられている。ケース34とカバー36との間には防水シール50が設けられる。ケース34とカバー36とは複数のビスBによって締結される。なお、ウォームホイール42、中継ギア44、出力ギア46および出力軸48は、
図4においては視認されやすいようにカバー36とともに図示しているが、実際の組み立て時には、
図5のようにケース34に配置される。
【0029】
図5は、カバー36を取り外した状態のドア開閉装置10を示す図である。ウォームホイール42はモータ38のウォームギア38aによって駆動される。中継ギア44はウォームホイール42と同軸上にあり、該ウォームホイール42と一体的に回転する。出力ギア46は中継ギア44によって駆動される。出力軸48は出力ギア46とセレーション結合されており、該出力ギア46と一体的に回転する。出力軸48は、モータ38の回転がウォームホイール42、中継ギア44および出力ギア46で減速されて伝達される。上記のとおり、出力軸48は出力レバー18(
図2参照)を回転させる。出力ギア46には、歯が約180度に亘って形成されており、歯の形成されてない側には突起46aが設けられている。
【0030】
図6は、モータ38の斜視図である。モータ38は、本体52と、本体52の先端側から突出する回転軸54と、本体52の基端側に設けられる一対の電力入力端56とを備える。回転軸54にはウォームギア38aが設けられている。電力入力端56は基端側に突出する薄板ピンであり、本体52の基端側で中心点を挟んだ対称位置に一対設けられている。電力入力端56はモータ38の駆動用電力入力部である。モータ38は直流型であり電力入力端56が2つ設けられているが、交流型の場合には3つ設けられる。一対の電力入力端56に供給される電力の極性によりモータ38は正転または逆転する。
【0031】
本体52の周面におけるもっとも基端側には径方向に窪んだ位置決係合凹部58が形成されている。位置決係合凹部58は基端側で開口している。より正確には、位置決係合凹部58は基端側でモータ38を基準とした軸方向に開口する。本体52の基端部で電力入力端56とその近傍を除く箇所には略楕円状の平坦部52aが形成されている。平坦部52aの中心には基端側にやや突出する円筒部52bが設けられている。円筒部52bの中心からは回転軸54の一部が露呈している。本体52の先端部における中心には、円筒部52bと同様に円筒部52c(
図5参照)が形成されている。円筒部52cは先端側にやや突出している。円筒部52cの中心からは回転軸54が突出している。図示を省略するが、本体52の周面には薄いラバーシートを貼り付けてもよい。
【0032】
図7は、ケース34の斜視図である。
図8は、ケース34の一部拡大斜視図である。
【0033】
図5,
図7および
図8に示すように、ケース34の一部には円筒面状に窪んだ部分と壁60とによって本体収納室62が形成されている。本体収納室62にはモータ38の本体52が収納される。本体収納室62は、モータ38の本体52における側面に対して周方向に延在して当接する複数の円弧状突起64を備える。複数の円弧状突起64はモータ38を基準として軸方向に配列されている。この例では、円弧状突起64は11本設けられている。
【0034】
本体収納室62および円弧状突起64は、カバー36(
図4参照)にも設けられている。ケース34およびカバー36の各本体収納室62は組み合わさって本体52の全体を収納する。ケース34およびカバー36の各円弧状突起64は、本体52における周面の広い範囲に当接し、該本体52が周方向に移動または振動することを防止する。また、各円弧状突起64によってケース34およびカバー36は剛性が向上し、モータ38または他の外力による振動および共振が防止される。図示を省略するが、本体52の周面にラバーシートが貼り付けてあると、円弧状突起64はラバーシートを介して弾性的にかつ適度に強く本体52を支持することができる。
【0035】
ケース34には一対の第1支持片(基端支持部)66が形成されている。第1支持片66は本体収納室62の底から立設するブロック68の一部となっている。ブロック68には凹部68aが形成されている。第1支持片66は凹部68aを挟んで本体収納室62の開口側(
図7、
図8における紙面の手前側)に突出している。第1支持片66にはモータ38を基準として先端側にわずかに突出する突起66aが設けられている。突起66aは三角断面であり、第1支持片66の延在方向に沿って延在している。各突起66aは、モータ38の基端側の平坦部52aに対して、回転軸54を挟んだ両側の対称位置に当接して支持する。平坦部52aは楕円形状であり、各突起66aはその長尺方向に沿って当接する。突起66aは本体52が基端側に移動しまたは振動することを防止する。また、突起66aは三角形状であり、その頂部が平坦部52aに当接することから接触面積が小さく、僅かに弾性圧縮が可能であって、本体52の支持に好適である。また、突起66aは、モータ38のケース34に対する装着方向に延在しており、モータ38の挿入がスムーズである。
【0036】
ケース34には一対の第2支持片70が形成されている。第2支持片70は本体収納室62の先端側に設けられている。第2支持片70は、それぞれ基端側を向く基端面70aと、互いに対向する対向面70bとを有している。
【0037】
各基端面70aは、モータ38の先端面に対して、回転軸54を挟んだ両側の対称位置に当接し支持する。基端面70aは本体52が先端側に移動しまたは振動することを防止する。また、上記のとおり本体52の基端側は突起66aによって支持されていることから、結局本体52は軸方向について両側が支持されていることになる。これにより、本体52が軸方向について安定する。
【0038】
対向面70bは、モータ38の円筒部52cの両側を支持する。一対の対向面70bは、それらの間の底部71aとともに円筒部52cの三方を支持する。一対の対向面70bおよび底部71aは、円筒部52cの周面に沿った円弧形状凹部としてもよい。対向面70bおよび底部71aは、円筒部52cに対して軽く接し、または微小な隙間が設けられている。なお、カバー36には底部71aと対向する箇所に支持突起71b(
図9参照)が形成されている。支持突起71bは底部71aとともに円筒部52cの両側を支持する。
【0039】
支持突起71bは回転軸54の軸と直交する方向に長い板形状である。支持突起71bの先端断面は三角形状となっており、円筒部52cに対する接触面積が小さく、僅かに弾性圧縮が可能であって、円筒部52cの支持に好適である。このようにして円筒部52cは四方を対向面70b、底部71aおよび支持突起71bによって支持され、本体52の先端部が安定する。
【0040】
ケース34には一対の第3支持片(軸先端支持部)72が一体成形されている。一対の第3支持片72は、それらの間の底部74aとともに回転軸54の先端部三方を支持する。一対の第3支持片72および底部74aは、回転軸54の周面に沿った円弧形状凹部としてもよい。第3支持片72および底部74aは、回転軸54に対して軽く接し、または微小な隙間が設けられている。なお、カバー36には底部74aと対向する箇所に支持面74b(
図9参照)が形成されている。支持面74bは底部74aとともに回転軸54の先端両側を支持する。このようにして回転軸54の先端は四方を第3支持片72、底部74aおよび支持面74bによって支持される。したがって回転軸54は安定して回転可能である。
【0041】
ケース34における本体収納室62の基端側端部にはブロック68に隣接して矩形の取付穴76が形成されている。取付穴76の両側には小突起76aが設けられている。ケース34の底面には、さらに取付穴78および取付穴80が設けられている。取付穴78は壁60の近傍に形成されている。取付穴80は、本体収納室62よりも基端側に形成されている。取付穴80は取付穴78を向く方向にやや長い長孔である。取付穴76,78,80はターミナル保持部材40を取り付けるための穴である。取付穴76,78,80は有底穴または貫通孔のいずれでもよい。ケース34には、後述するカプラー102が外部に突出するためのカプラー切欠82が形成されている。
【0042】
図9は、カバー36およびモータ38の一部拡大斜視図である。カバー36は軸当接突起84を備える。軸当接突起84はカバー36の底面から立設している。軸当接突起84はカバー36との一体成形の樹脂材であり、コストアップはほとんどない。軸当接突起84は小さい樹脂片であり、仮にカバー36と別体とした場合でも軸受などと比較して十分に低廉である。上記の通りカバー36は、ケース34よりも軟質であることから軸当接突起84は適度な弾性がある。
【0043】
軸当接突起84は、回転軸54に対して本体52と先端の第3支持片72との間で当接しており、さらに具体的には、回転軸54に対して本体52とウォームギア38aとの間で側方から当接している。このような軸当接突起84によれば回転軸54の回転を安定させ、特にラジアル方向についてのがたつきを防止して振動や騒音を低減させることができる。
【0044】
軸当接突起84はやや長尺形状であって回転軸に当接する方向に曲げ弾性を有し、弾性変形可能であり、回転軸54に対して弾性的に接触して該回転軸54の振動を抑制する。軸当接突起84が回転軸54に対して適度な弾性力を発生させるためには、カバー36の底面から回転軸54に対する当接部までの高さHが、回転軸54の直径Dに対して2倍以上、好ましくは3倍程度であるとよい。軸当接突起84が回転軸54に対して安定的に接触するためには幅Wを直径Dとほぼ等しく設定するとよく、具体的には直径Dに対して0.5倍~1.5倍程度にするとよい。上記の通りカバー36は、例えばPOMであって、弾力性と耐摩損性が高く、回転軸54を適度な弾性で押圧することができるとともに、耐久性が高い。
【0045】
軸当接突起84は鉛直方向(車両取付状態にて鉛直方向)について下方から回転軸54を支持しており(
図4参照)、回転軸54および本体52の重力を支えるように作用し、振動抑制効果が高まっている。ただし、軸当接突起84は、回転軸54に対して少なくとも一方の側方に当接していれば、振動や騒音を相応に抑制することができる。
【0046】
図10は、ターミナル保持部材40の一部分解斜視図である。
図10では、カプラーハウジング94の延在方向をX方向とし、その直交方向をY方向とし、X方向およびY方向に直交する方向をZ方向として説明する。X方向はモータ38の軸方向と一致する(
図4参照)。
【0047】
ターミナル保持部材40は、2本の電源ターミナル86,86と、2本のスイッチターミナル88,88と、スイッチ90とを保持する。
図10では、電源ターミナル86のうち1本をターミナル保持部材40から分離して示している。各電源ターミナル86および各スイッチターミナル88は金属板から構成される。各電源ターミナル86はモータ38と接続される。各スイッチターミナル88はスイッチ90と接続される。スイッチ90は、出力ギア46の突起46a(
図5参照)の位置を検出するものである。
【0048】
2本の電源ターミナル86は対称構造である。電源ターミナル86は一端に電力供給端86aが形成され、他端にカプラーピン86bが形成されている。電力供給端86aおよびカプラーピン86bはX方向に延在している。
【0049】
電力供給端86aはモータ38の電力入力端56とX方向に嵌合して接続される部分であり、モータ38に電力を供給する。なお、電力供給端86aと電力入力端56とはX方向に嵌合可能であればよく、電力供給端86aが凸形状で、電力入力端56が凹形状であってもよい。電力供給端86aは、電力入力端56が挿入可能なように金属板を丸めて形成されている。電力供給端86aはZ方向にやや膨らんでいる。
【0050】
電力供給端86aからX方向にX部材86cが延在している。X部材86cの端部は屈曲してY方向に延在するY部材86dとつながっている。Y部材86dの他端はZ方向に延在するZ部材86eとつながっている。Y部材86dとZ部材86eとは同一面を形成する。Z部材86eの他端は屈曲してカプラーピン86bとつながっている。カプラーピン86bには、逆棘87が形成されている。
【0051】
スイッチターミナル88は一端にスイッチ端88aが形成され、他端にカプラーピン88bが形成されている。スイッチ端88aはスイッチ90と接続される。スイッチ端88aとカプラーピン88bとの間は複数の屈曲部を介してつながっている。カプラーピン88bには逆棘87が形成されている。
【0052】
ターミナル保持部材40は、ベースプレート92と、該ベースプレート92からX方向について一方に突出するカプラーハウジング94と、該ベースプレート92の両端からX方向について他方に突出する2本のモータ接続部96と、モータ接続部96のうち一方の先端面96aaから延在する円弧状アーム(周面支持部)98と、モータ接続部96のうち他方の先端からさらにスイッチ90の箇所まで延出する延出部100とを有する。ターミナル保持部材40は樹脂材である。延出部100の先端にはスイッチ90を保持するスイッチ保持部100aが設けられている。
【0053】
2つのモータ接続部96は対称構造である。モータ接続部96は先端に電力供給端86aを囲うボックス96aを備える。ボックス96aの内部には電力供給端86aにおけるZ方向膨らんだ部分に当接する上下一対の支持面96bが形成されている。モータ接続部96におけるベースプレート92と一体になった部分にはY部材86dおよびZ部材86eに当接する支持面96cが形成されている。電源ターミナル86は、カプラーピン86bがベースプレート92のピン孔92aに挿入されるようにX方向に差し込み、逆棘87が所定の係合部に係合することによって固定される。スイッチターミナル88も同様に、カプラーピン88bがピン孔92aに挿入されるようにX方向に差し込んで固定される。
【0054】
ターミナル保持部材40では、ベースプレート92における電源ターミナル86およびスイッチターミナル88の挿入側には特段の障害物がなく、これらのターミナル86,88を挿入しやすい。より具体的には、後述するように円弧状アーム98は一対のモータ接続部96のうち一方(
図12の右側)から、本体52の周面に沿って略90度延在しており、他方(
図12の左側)にまでは延在していない。したがって、他方のモータ接続部96および延出部100に沿って配置されるスイッチターミナル88をターミナル保持部材40に対して組み付けやすい。ベースプレート92は、カプラー切欠82(
図8参照)に設けられた凹部82a(
図8参照)に嵌り込んで固定される。
【0055】
図11は、ドア開閉装置10におけるカプラー102およびその周辺の拡大図である。
図11に示すように、カプラーハウジング94はケース34のカプラー切欠82から突出している。カプラーピン86b,88bはベースプレート92から突出してカプラーハウジング94の内部に配置されている。カプラーハウジング94およびカプラーピン86b,88bはカプラー102を構成している。カプラー102は図示しないハーネスを介してBCMと接続される。
【0056】
図10に戻り、電源ターミナル86は電力供給端86aの一部が支持面96bによって支持され、Y部材86dおよびZ部材86eが支持面96cによって支持されて安定する。また、電力供給端86aにモータ38の電力入力端56(
図4参照)をX方向に沿って挿入する際に、電源ターミナル86は支持面96b,96cによって支持されていることから安定した挿入が可能となる。スイッチターミナル88は延出部100に沿って設けられている。
【0057】
円弧状アーム98は、モータ38の本体52の周面に対して周方向に沿って当接し支持する。円弧状アーム98は、本体52の周面に対して略90度に亘って当接するような円弧板である。円弧状アーム98の厚みは円弧状突起64(
図8参照)の厚みと同程度である。円弧状アーム98は、先端にモータ係合突起106および取付突起108を備える。
【0058】
モータ係合突起106は、円弧状アーム98の先端から
図10の上方(Z方向の一方)に突出している。モータ係合突起106は、モータ38の位置決係合凹部58(
図4参照)に嵌合する部分であり該位置決係合凹部58に合わせた略矩形断面を有する。取付突起108は、円弧状アーム98の先端から
図10の下方(Z方向の他方)に突出している。つまり、モータ係合突起106と取付突起108とはZ方向に沿って直線上に配置されている。モータ係合突起106と位置決係合凹部58とは、モータ38の周方向について隙間がゼロまたはほぼゼロに設定されている。
【0059】
ターミナル保持部材40には、ベースプレート92における
図10の下端から小プレート110(
図12、
図4も参照)がX方向に突出して設けられている。小プレート110の下面からは取付突起112が突出して設けられている。スイッチ保持部100aにおける
図10の下面からは取付突起114(
図12、
図4も参照)が突出して設けられている。
【0060】
取付突起108,112,114はターミナル保持部材40をケース34に取り付けるための部材である。取付突起108は、ケース34の取付穴76(
図7参照)に嵌合する。取付突起108は取付穴76に合わせて断面が略矩形となっている。取付突起112は、ケース34の取付穴80(
図7参照)に嵌合する。取付突起114は、ケース34の取付穴78(
図7参照)に嵌合する。取付突起112,114の側面には、取付穴78,80に対する嵌合を強固にするための筋条112a,114a(
図12参照)が設けられている。取付突起108,112,114は取付穴76,78,80に挿入され易いように先細り形状となっている。なお、ターミナル保持部材40とケース34との固定のためには、取付突起108,112,114に相当する突起をケース34に設け、取付穴76,78,80に相当する穴をターミナル保持部材40に設けてもよい。
【0061】
このように構成されるターミナル保持部材40には、ドア開閉装置10の組み立て時に、まずモータ38が固定される。すなわち
図4に示すように、モータ38とターミナル保持部材40とをモータ38を基準とした軸方向(つまり、回転軸54の延在方向、またはX方向)に相対的に接近させ、一対の電力入力端56を一対の電力供給端86aに嵌合させる。このとき、位置決係合凹部58はモータ38を基準とした軸方向に開口していることから、モータ係合突起106は位置決係合凹部58に挿入されて嵌合する。このようにして、モータ38とターミナル保持部材40とは、
図12のようにアセンブリ状態として仮固定される。
【0062】
図12は、ターミナル保持部材40を、モータ38を基準とした軸方向から見た図である。
図12ではモータ38およびその構成要素のいくつかを仮想線で示している。仮固定されたモータ38とターミナル保持部材40とは3か所で固定されている。すなわち、一対の電力入力端56と一対の電力供給端86aとの嵌合による固定部と、モータ係合突起106と位置決係合凹部58との嵌合による固定部である。この3か所の固定部により、モータ38はターミナル保持部材40に対して回転や捻じれなどの変位がなく安定して保持される。また、本体52は周面の一部が円弧状アーム98によって支持されることからモータ38は一層安定する。
【0063】
モータ38の本体52の周面には回り止めのためのいわゆるDカット面が形成されていないが、その分だけ本体52は小型化されている。本体52にはDカット面が形成されていないが、モータ係合突起106と位置決係合凹部58との嵌合により位置決めおよび回り止めの作用が得られる。
【0064】
さらに、位置決係合凹部58は、軸方向視で一対の電力入力端56を結ぶ直線と直交して、かつ中心点(つまり回転軸54の位置)を通る直線上に配置されている。また換言すれば、モータ係合突起106は、軸方向視で一対の電力供給端86aを結ぶ直線と直交して、かつ中心点を通る直線上に配置されている。このような配置により、モータ38はバランスよくターミナル保持部材40に固定される。
【0065】
なお、電力入力端56および電力供給端86aは電力の通電手段であり機械的に必ずしも高強度ではないが、ターミナル保持部材40とモータ38とをケース34に組み付けるまでの仮組み立て状態ではモータ38の自重以外には大きな外力は作用せず、しかも比較的早期にケース34に組付けられることから強度上の懸念がない。さらに、本体52は円弧状アーム98で支持されていることから電力入力端56および電力供給端86aには過大な力がかかることがない。
【0066】
図13は、仮組みされたモータ38およびターミナル保持部材40をケース34に組み付ける様子を示す図である。
図13に示すように、仮組みされたモータ38およびターミナル保持部材40をそのままケース34の所定位置に降ろすと、取付突起108,112,114が取付穴76,78,80に嵌り込んでターミナル保持部材40がケースに固定される。
【0067】
これにより、カプラーハウジング94はカプラー切欠82に嵌り込む。本体52は本体収納室62に収納される。本体52の周面の略半分はケース34における円弧状突起64によって支持され周方向に安定する。また、円弧状アーム98の外周面は本体収納室62の内周面に当接することから、本体52の周面における基端側の略90度範囲は、本体収納室62に対して安定する。本体52の基端面である平坦部52a(
図5参照)は第1支持片66の突起66aによって支持され、先端面は第2支持片70の基端面70a(
図5参照)によって支持されて軸方向に安定する。
【0068】
このように、仮組みされたモータ38およびターミナル保持部材40をそのままケース34の所定位置に降ろすだけで、モータ38およびターミナル保持部材40の各部分が正規の位置に配置されるため、ドア開閉装置10は容易な組み立てが可能である。
【0069】
ウォームホイール42および出力ギア46等は、モータ38およびターミナル保持部材40に前後してケース34に組み付ける。さらにその後、カバー36をケース34に組み付ける。カバー36をケース34に組み付けることにより、本体52は周面の略半分はカバー36における円弧状突起64によって支持され周方向に安定する。つまり、本体52の周面はケース34およびカバー36におけるそれぞれの円弧状突起64によってほぼ全周が支持されて安定する。
【0070】
また、本体52の先端部の円筒部52c(
図5参照)は第2支持片70の対向面70b、底部71a(
図7参照)および支持突起71b(
図9参照)により四方が支持されて安定する。回転軸54の先端部は第3支持片72、底部74a(
図7参照)および支持面74b(
図9参照)により四方が支持されて安定する。回転軸54は本体52とウォームギア38aとの間で側方から当接する軸当接突起84によって支持されて一層安定する。さらにこの後、噛合部12等を組み付けることによってドア開閉装置10組み立て工程が終了する。
【0071】
図14は、ドア開閉装置10における軸当接突起84の有無による騒音の比較実験の結果を示すグラフである。このグラフで実線L1は軸当接突起84が設けられている場合の実験結果であり、破線L2は軸当接突起84が設けられていない場合の実験結果である。このグラフで縦軸は騒音(dB)であり、横軸は開閉動作の種別を示す。すなわち、縦軸M1はアクチュエータ部14および出力レバー18の中立位置からドア開閉装置10におけるフルラッチ方向への移行時であり、縦軸M2はアクチュエータ部14および出力レバー18のドア開閉装置10におけるフルラッチ状態から中立位置への移行時である。実験では、ドア開閉装置10を車両に取り付けた状態として、模擬負荷を加えて動作させ、動作中の騒音を計測した。
図14に示すように、中立位置からフルラッチへの移行時、およびフルラッチから中立位置の移行時の両方で明確な騒音低下効果が認められた。特には、アクチュエータ部14および出力レバー18のドア開閉装置10におけるフルラッチ状態から中立位置への移行時においては、ラッチレバー24を押圧しない(無負荷)状態であるため、回転軸54の振動が大きくなる傾向にあるため、軸当接突起84による振動抑制効果がより高まっている。
【0072】
このようなドア開閉装置10では、カバー36と一体成形され、該カバー36の底面から突出して回転軸54に対して側方から当接する軸当接突起84を備えている。このような軸当接突起84によれば、回転軸54の振動や騒音を抑制することができる。また、付加的な別途の軸受等を設ける必要がないため組み立てが容易であり、部品点数の増加がないためコストを抑制することができる。
【0073】
モータ38はバックドアの開閉に必要とされる高出力型であって周方向の反力が大きく、しかも本体52は回り止めのDカット面が設けられていないため、そのままでは周方向にずれやすい。しかしながら、本体52は位置決係合凹部58にモータ係合突起106が係合していることから周方向に位置決めされて安定する。また、モータ係合突起106と取付突起108(
図12参照)とは直線上に配置されているため実質的に1つの部材であり、本体52に加わる周方向の力はモータ係合突起106および取付突起108を介してケース34によって直接的に支持され安定度が高い。
【0074】
さらに、本体52は周面および円筒部52cがケース34およびカバー36の一部によって支持されていることから周方向について一層安定する。さらにまた、モータ38は、本体52および回転軸54がそれぞれ複数個所で支持されていることから、振動が抑制され騒音が低減する。
【0075】
なお、軸当接突起84はカバー36と別体に形成されて該カバー36に取り付けるようにしてもよい。仮に、軸当接突起84がカバー36と別体構成であっても、該軸当接突起84は少なくとも1つあれば相応の効果が得られるため、部品点数の増加およびコストアップを抑制することができる。また、軸当接突起84は回転軸54に対して適度な弾性力を付与するように設ければ足りるため高精度に取り付ける必要はなく、組み立てが容易である。ドア開閉装置10では、設計条件によっては回転軸54を支持する軸受を設けてもよい。軸受を設けるとモータ38の回転を一層安定させることができる。
【0076】
軸当接突起84は複数設けられていてもよい。複数の軸当接突起84はカバー36とケース34とに分かれて設けられていてもよい。複数の軸当接突起84は、回転軸54の軸方向に沿って配置されていてもよい。本発明にかかるアクチュエータ装置は上記のドア開閉装置10に限らず、モータ38のようなアクチュエータを備える他の装置にも適用可能である。
【0077】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0078】
10 ドア開閉装置
12 噛合部
14 アクチュエータ部
34 ケース(第1ハウジング)
36 カバー(第2ハウジング)
38 モータ
38a ウォームギア(ギア)
40 ターミナル保持部材
52 本体
56 電力入力端
58 位置決係合凹部
62 本体収納室
64 円弧状突起
66 第1支持片
70 第2支持片
72 第3支持片(軸先端支持部)
74a 底部
74b 支持面