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特許7459445走行経路生成システム及び車両運転支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】走行経路生成システム及び車両運転支援システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/072 20120101AFI20240326BHJP
   B60W 30/045 20120101ALI20240326BHJP
   B60W 30/12 20200101ALI20240326BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B60W40/072
B60W30/045
B60W30/12
G08G1/16 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020065817
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021160625
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英輝
(72)【発明者】
【氏名】辻 雄太
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-193189(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216125(WO,A1)
【文献】特開2019-32712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路生成システムであって、
車両の走行路に関する走行路情報を取得する走行路情報取得装置と、
前記走行路情報に基づいて、前記走行路において前記車両に走行させる目標走行経路を生成するよう構成された演算装置と、を有し、
前記演算装置は、
前記車両が旋回する場合に、前記走行路情報に基づき、前記車両が旋回する走行路に関する車線中心線の情報を取得し、
取得された前記車線中心線上に始点及び終点が位置する複数のクロソイド曲線を生成し、
生成された前記複数のクロソイド曲線のそれぞれについて、クロソイド曲線と前記車線中心線との差分を示す誤差を当該クロソイド曲線の全体にわたって積分した値である誤差積分値を算出し、
前記複数のクロソイド曲線の中で、算出された前記誤差積分値が最小となるクロソイド曲線を決定し、
決定された前記クロソイド曲線に基づき、前記車両が旋回するときに走行させる前記目標走行経路を生成し、
前記演算装置は、前記誤差積分値が最小となる2つ以上のクロソイド曲線が存在する場合には、前記2つ以上のクロソイド曲線のそれぞれについて、前記始点付近の所定範囲における前記誤差積分値を算出し、前記2つ以上のクロソイド曲線の中で、この算出された前記誤差積分値が最小となるクロソイド曲線を決定する、ことを特徴とする走行経路生成システム。
【請求項2】
走行経路生成システムであって、
車両の走行路に関する走行路情報を取得する走行路情報取得装置と、
前記走行路情報に基づいて、前記走行路において前記車両に走行させる目標走行経路を生成するよう構成された演算装置と、を有し、
前記演算装置は、
前記車両が旋回する場合に、前記走行路情報に基づき、前記車両が旋回する走行路に関する車線中心線の情報を取得し、
取得された前記車線中心線上に始点及び終点が位置する複数のクロソイド曲線を生成し、
生成された前記複数のクロソイド曲線のそれぞれについて、クロソイド曲線と前記車線中心線との差分を示す誤差を当該クロソイド曲線の全体にわたって積分した値である誤差積分値を算出し、
前記複数のクロソイド曲線の中で、算出された前記誤差積分値が最小となるクロソイド曲線を決定し、
決定された前記クロソイド曲線に基づき、前記車両が旋回するときに走行させる前記目標走行経路を生成し、
前記演算装置は、前記誤差積分値が最小となる2つ以上のクロソイド曲線が存在する場合には、前記2つ以上のクロソイド曲線の中で、前記車両が旋回するときの操舵角が最小となるクロソイド曲線を決定する、ことを特徴とする走行経路生成システム。
【請求項3】
前記演算装置により取得される前記車線中心線は、旋回前の直線の走行路の車線中心線である第1直線と、旋回後の直線の走行路の車線中心線である第2直線と、一端が前記第1直線に接続され且つ他端が前記第2直線に接続された、旋回すべき走行路の車線中心線に相当する円弧と、から形成され、
前記演算装置は、前記始点が前記車線中心線の前記第1直線上に位置し、且つ前記終点が前記車線中心線の前記第2直線上に位置する前記複数のクロソイド曲線を生成する、
請求項1又は2に記載の走行経路生成システム。
【請求項4】
前記演算装置は、前記車線中心線上に前記始点及び前記終点が位置するという条件下において、クロソイド曲線の始点からの曲線長及び曲率半径を変えることにより前記複数のクロソイド曲線を生成する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の走行経路生成システム。
【請求項5】
前記演算装置は、前記車両が交差点において左折又は右折する場合に、前記複数のクロソイド曲線の中で前記誤差積分値が最小となるクロソイド曲線を決定し、決定された前記クロソイド曲線に基づき前記目標走行経路を生成する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の走行経路生成システム。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の走行経路生成システムによって生成された目標走行経路に沿って車両が走行するように、前記車両を運転制御するよう構成された制御装置を有することを特徴とする車両運転支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行経路を生成する走行経路生成システム、及び走行経路に基づき車両の運転支援を行う車両運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自車両の周辺の状況や自車両の状態などに基づき、自車両に走行させるための目標走行経路を設定し、この目標走行経路に基づき車両の運転支援(具体的には運転アシスト制御や自動運転制御)を行う技術が開発されている。例えば、特許文献1及び2には、クロソイド曲線を利用して目標走行経路を設定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-194844号公報
【文献】特開2018-79823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的には、車両を安全に走行させるために、車線内において幅方向の中央に位置する中心線(車線中心線)に沿って目標走行経路が設定される。ここで、車両を交差点などで旋回させる場合、基本的には交差点内には車線が明確に規定されていないので、次のように、目標走行経路を設定するための車線中心線が規定されると考えられる。すなわち、旋回前の直線の走行路の車線中心線に対応する直線と、旋回後の直線の走行路の車線中心線に対応する直線と、これらの直線に両端が接続され、交差点内に規定される旋回すべき走行路に対応する円弧とによって、車両を交差点で旋回させるときに目標走行経路を設定するための車線中心線が規定されると考えられる。この車線中心線により設定された目標走行経路によれば、車両を安全に旋回させることができる。しかしながら、車線中心線における直線と円弧の接続部において経路が不連続となるため、旋回時にスムーズな車両挙動を実現し難い。
【0005】
一方で、クロソイド曲線(例えば上記の特許文献1及び2参照)に沿って車両を旋回させると、スムーズな車両挙動を実現することができる。これは、クロソイド曲線は、一定の角速度でステアリングホイールを回すときに車両が描く軌跡となるからである。したがって、車両を交差点などで旋回させる場合には、クロソイド曲線に基づき目標走行経路を設定すればよいと考えられる。しかしながら、スムーズな車両挙動を優先して、上記したような車線中心線から比較的大きく逸脱したクロソイド曲線に基づき目標走行経路を設定すると、旋回時の安全性が確保されなくなる可能性がある。したがって、車線中心線を考慮した上で決定された適切なクロソイド曲線に基づき目標走行経路を設定することが望ましいと考えられる。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、車両が旋回する場合に、車線中心線及びクロソイド曲線に基づき、安全でスムーズな車両挙動を実現可能な目標走行経路を生成することができる走行経路生成システム、及び、この目標走行経路に基づき車両の運転支援を行うことができる車両運転支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、走行経路生成システムであって、車両の走行路に関する走行路情報を取得する走行路情報取得装置と、走行路情報に基づいて、走行路において車両に走行させる目標走行経路を生成するよう構成された演算装置と、を有し、演算装置は、車両が旋回する場合に、走行路情報に基づき、車両が旋回する走行路に関する車線中心線の情報を取得し、取得された車線中心線上に始点及び終点が位置する複数のクロソイド曲線を生成し、生成された複数のクロソイド曲線のそれぞれについて、クロソイド曲線と車線中心線との差分を示す誤差を当該クロソイド曲線の全体にわたって積分した値である誤差積分値を算出し、複数のクロソイド曲線の中で、算出された誤差積分値が最小となるクロソイド曲線を決定し、決定されたクロソイド曲線に基づき、車両が旋回するときに走行させる目標走行経路を生成し、演算装置は、誤差積分値が最小となる2つ以上のクロソイド曲線が存在する場合には、2つ以上のクロソイド曲線のそれぞれについて、始点付近の所定範囲における誤差積分値を算出し、2つ以上のクロソイド曲線の中で、この算出された誤差積分値が最小となるクロソイド曲線を決定する、ことを特徴とする。
【0008】
このように構成された本発明では、演算装置は、車両が旋回する走行路の車線中心線上に始点及び終点が位置する複数のクロソイド曲線を生成し、複数のクロソイド曲線のそれぞれについてクロソイド曲線と車線中心線との誤差積分値を算出し、誤差積分値が最小となるクロソイド曲線(車線中心線に最も近いクロソイド曲線に相当する)に基づき、車両が旋回するときに走行させる目標走行経路を生成する。このような目標走行経路に沿って車両を走行させると、当該目標走行経路にはクロソイド曲線が適用されているので、一定の角速度でのステアリング操作により車両を旋回させることができ、旋回時にスムーズな車両挙動を実現することが可能となる。また、車線中心線上に始点及び終点が位置し、車線中心線との誤差積分値が最小となるクロソイド曲線を目標走行経路に適用しているので、車線中心線からの車両の大きな逸脱を抑制することができ、旋回時の安全性を確保することができる。したがって、本発明によれば、車両が旋回するときに安全でスムーズな車両挙動を実現可能な目標走行経路を生成することができる。
また、本発明によれば、目標走行経路に沿って車両を走行させるときに正確な情報が必要となる旋回初期において、車線中心線により近いクロソイド曲線に応じた目標走行経路を適切に生成することができる。
他の観点では、本発明は、走行経路生成システムであって、車両の走行路に関する走行路情報を取得する走行路情報取得装置と、走行路情報に基づいて、走行路において車両に走行させる目標走行経路を生成するよう構成された演算装置と、を有し、演算装置は、車両が旋回する場合に、走行路情報に基づき、車両が旋回する走行路に関する車線中心線の情報を取得し、取得された車線中心線上に始点及び終点が位置する複数のクロソイド曲線を生成し、生成された複数のクロソイド曲線のそれぞれについて、クロソイド曲線と車線中心線との差分を示す誤差を当該クロソイド曲線の全体にわたって積分した値である誤差積分値を算出し、複数のクロソイド曲線の中で、算出された誤差積分値が最小となるクロソイド曲線を決定し、決定されたクロソイド曲線に基づき、車両が旋回するときに走行させる目標走行経路を生成し、演算装置は、誤差積分値が最小となる2つ以上のクロソイド曲線が存在する場合には、2つ以上のクロソイド曲線の中で、車両が旋回するときの操舵角が最小となるクロソイド曲線を決定する、ことを特徴とする。
このように構成された本発明によれば、操舵角が最小となるクロソイド曲線を決定するので、車両を旋回させるための目標走行経路の曲率半径が大きくなる。その結果、旋回時に車両に発生する横加速度を小さくすることができる、つまり旋回時の車両挙動を改善することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、演算装置により取得される車線中心線は、旋回前の直線の走行路の車線中心線である第1直線と、旋回後の直線の走行路の車線中心線である第2直線と、一端が第1直線に接続され且つ他端が第2直線に接続された、旋回すべき走行路の車線中心線に相当する円弧と、から形成され、演算装置は、始点が車線中心線の第1直線上に位置し、且つ終点が車線中心線の第2直線上に位置する複数のクロソイド曲線を生成する。
このように構成された本発明によれば、車両が旋回するときの走行路の車線中心線に応じた適切なクロソイド曲線を生成することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、演算装置は、車線中心線上に始点及び終点が位置するという条件下において、クロソイド曲線の始点からの曲線長及び曲率半径を変えることにより複数のクロソイド曲線を生成する。
このように構成された本発明によれば、所望の条件を満たす複数のクロソイド曲線の候補を的確に生成することができる。
【0013】
本発明において、好適な例では、演算装置は、車両が交差点において左折又は右折する場合に、複数のクロソイド曲線の中で誤差積分値が最小となるクロソイド曲線を決定し、決定されたクロソイド曲線に基づき目標走行経路を生成するのがよい。
【0014】
他の観点では、本発明において、車両運転支援システムは、上述した走行経路生成システムによって生成された走行経路に沿って車両が走行するように、車両を運転制御するよう構成された制御装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の走行経路生成システムによれば、車両が旋回する場合に、車線中心線及びクロソイド曲線に基づき、安全でスムーズな車両挙動を実現可能な目標走行経路を生成することができ、また、本発明の車両運転支援システムによれば、このような目標走行経路に基づき車両の運転支援を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態による走行経路生成システムが適用された車両運転支援システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態による車線中心線の説明図である。
図3】本発明の実施形態による第1の例に係るクロソイド曲線の説明図である。
図4】本発明の実施形態による第2の例に係るクロソイド曲線の説明図である。
図5】本発明の実施形態による第3の例に係るクロソイド曲線の説明図である。
図6】本発明の実施形態においてSL座標系で表されたクロソイド曲線の説明図である。
図7】本発明の実施形態による目標走行経路生成及び運転支援に係るフローチャートである。
図8】本発明の実施形態の変形例1によるクロソイド曲線の決定方法の説明図である。
図9】本発明の実施形態の変形例2によるクロソイド曲線の決定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による走行経路生成システム及び車両運転支援システムについて説明する。
【0018】
[システム構成]
まず、図1を参照して、本発明の実施形態による走行経路生成システムが適用された車両運転支援システムの構成について説明する。図1は、本発明の実施形態による走行経路生成システムが適用された車両運転支援システムの概略構成を示すブロック図である。
【0019】
車両運転支援システム100は、走行路において車両1に走行させるための目標走行経路を設定する走行経路生成システムとしての機能を有すると共に、車両1をこの目標走行経路に沿って走行させるように運転支援制御(運転アシスト制御や自動運転制御)を行うように構成されている。図1に示すように、車両運転支援システム100は、演算装置及び制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)10と、複数のセンサ類と、複数の制御システムと、を有する。
【0020】
具体的には、複数のセンサ類には、カメラ21、レーダ22や、車両1の挙動や乗員による運転操作を検出するための車速センサ23、加速度センサ24、ヨーレートセンサ25、操舵角センサ26、アクセルセンサ27、ブレーキセンサ28が含まれている。さらに、複数のセンサ類には、車両1の位置を検出するための測位システム29、ナビゲーションシステム30が含まれている。複数の制御システムには、エンジン制御システム31、ブレーキ制御システム32、ステアリング制御システム33が含まれている。
【0021】
また、他のセンサ類として、車両1に対する周辺構造物の距離及び位置を測定する周辺ソナー、車両1の4箇所の角部における周辺構造物の接近を測定するコーナーレーダや、車両1の車室内を撮影するインナーカメラが含まれていてもよい。
【0022】
ECU10は、複数のセンサ類から受け取った信号に基づいて種々の演算を実行し、エンジン制御システム31、ブレーキ制御システム32、ステアリング制御システム33に対して、それぞれエンジンシステム、ブレーキシステム、ステアリングシステムを適宜に作動させるための制御信号を送信する。ECU10は、1つ以上のプロセッサ(典型的にはCPU)と、各種プログラムを記憶するメモリ(ROM、RAMなど)と、入出力装置などを備えたコンピュータにより構成される。なお、ECU10は、本発明における「演算装置」及び「制御装置」の一例に相当する。
【0023】
カメラ21は、車両1の周囲を撮影し、画像データを出力する。ECU10は、カメラ21から受信した画像データに基づいて、対象物(例えば、先行車両(前方車両)、後続車両(後方車両)、駐車車両、歩行者、走行路、区画線(車線境界線、白線、黄線)、交通信号、交通標識、停止線、交差点、障害物等)を特定する。なお、ECU10は、交通インフラや車々間通信等により、外部から対象物の情報を取得してもよい。これにより、対象物の種類、相対位置、移動方向等が特定される。
【0024】
レーダ22は、対象物(特に、先行車両、後続車両、駐車車両、歩行者、走行路上の落下物等)の位置及び速度を測定する。レーダ22として、例えばミリ波レーダを用いることができる。レーダ22は、車両1の進行方向に電波を送信し、対象物により送信波が反射されて生じた反射波を受信する。そして、レーダ22は、送信波と受信波に基づいて、車両1と対象物との間の距離(例えば、車間距離)や、車両1に対する対象物の相対速度を測定する。なお、本実施形態において、レーダ22に代えて、レーザレーダや超音波センサ等を用いて対象物との距離や相対速度を測定してもよい。また、複数のセンサ類を用いて、位置及び速度測定装置を構成してもよい。
【0025】
なお、カメラ21及びレーダ22は、本発明における「走行路情報取得装置」の一例に相当する。また、「走行路情報」は、例えば、走行路の形状(直線、カーブ、カーブ曲率)、走行路幅、車線数、車線幅、標識などに規定された走行路の規制情報(制限速度など)、交差点、横断歩道等に関する情報を含んでいる。ECU10は、このような走行路情報に加えて、障害物情報に基づき、車両1に走行させるための目標走行経路を設定する。この障害物情報は、車両1の走行路上の障害物(例えば先行車両や後続車両や駐車車両や歩行者などの車両1の走行において障害となり得る対象物)の有無や、障害物の移動方向、障害物の移動速度等に関する情報を含んでいる。
【0026】
車速センサ23は、車両1の絶対速度を検出する。加速度センサ24は、車両1の加速度を検出する。この加速度は、前後方向の加速度と、横方向の加速度(つまり横加速度)とを含む。なお、加速度には、速度が増加する方向の速度の変化率だけでなく、速度が減少する方向の速度の変化率(つまり減速度)も含むものとする。
【0027】
ヨーレートセンサ25は、車両1のヨーレートを検出する。操舵角センサ26は、車両1のステアリングホイールの回転角度(操舵角)を検出する。ECU10は、車速センサ23が検出した絶対速度、及び、操舵角センサ26が検出した操舵角に基づいて所定の演算を実行することにより、車両1のヨー角を取得することができる。アクセルセンサ27は、アクセルペダルの踏み込み量を検出する。ブレーキセンサ28は、ブレーキペダルの踏み込み量を検出する。
【0028】
測位システム29は、GPSシステム及び/又はジャイロシステムであり、車両1の位置(現在車両位置情報)を検出する。ナビゲーションシステム30は、内部に地図情報を格納しており、ECU10に地図情報を提供することができる。ECU10は、地図情報及び現在車両位置情報に基づいて、車両1の周囲(特に、進行方向)に存在する道路、交差点、交通信号、建造物等を特定する。地図情報は、ECU10内に格納されていてもよい。なお、ナビゲーションシステム30も、本発明における「走行路情報取得装置」の一例に相当する。
【0029】
エンジン制御システム31は、車両1のエンジンを制御する。エンジン制御システム31は、エンジン出力(駆動力)を調整可能な構成部であり、例えば、点火プラグや、燃料噴射弁や、スロットルバルブや、吸排気弁の開閉時期を変化させる可変動弁機構などを含む。ECU10は、車両1を加速又は減速させる必要がある場合に、エンジン制御システム31に対して、エンジン出力を変更するために制御信号を送信する。
【0030】
ブレーキ制御システム32は、車両1のブレーキ装置を制御する。ブレーキ制御システム32は、ブレーキ装置の制動力を調整可能な構成部であり、例えば液圧ポンプやバルブユニットなどを含む。ECU10は、車両1を減速させる必要がある場合に、ブレーキ制御システム32に対して、制動力を発生させるために制御信号を送信する。
【0031】
ステアリング制御システム33は、車両1のステアリング装置を制御する。ステアリング制御システム33は、車両1の操舵角を調整可能な構成部であり、例えば電動パワーステアリングシステムの電動モータなどを含む。ECU10は、車両1の進行方向を変更する必要がある場合に、ステアリング制御システム33に対して、操舵方向を変更するために制御信号を送信する。
【0032】
[目標走行経路の生成]
次に、本発明の実施形態において上述したECU10によって実行される目標走行経路の生成について説明する。ここでは、車両1が交差点で左折する場合に生成される目標走行経路について説明する。
【0033】
まず、図2を参照して、車両1が交差点で左折する場合に、目標走行経路を設定するために基準として用いられる車線中心線について説明する。基本的には、車線中心線は、走行路の車線内において幅方向の中央に位置する中心線である。他方で、交差点内には車線が明確に規定されていないので、車両1が交差点で左折する走行路については、図2に示すように交差点内に車線中心線が仮想的に規定される。
【0034】
図2において、直線L01(本発明における「第1直線」に相当する)は、左折前(つまり交差点への進入前)の直線の走行路の車線中心線を示し、直線L03(本発明における「第2直線」に相当する)は、左折後(つまり交差点からの脱出後)の直線の走行路の車線中心線を示している。車両1が交差点で左折する場合には、車線中心線L01の端点(終端)に一端が接続され、車線中心線L03の端点(始端)に他端が接続された円弧L02によって、交差点内に左折用の車線中心線が規定される。この車線中心線L02は、接続点P01において車線中心線L01と接続され、接続点P02において車線中心線L03と接続される。
【0035】
ECU10は、このような車線中心線L01、L02、L03の情報を、上記した走行路情報取得装置からの走行路情報に基づき取得する。1つの例では、車線中心線L01、L02、L03の情報は、ナビゲーションシステム30に記憶された地図情報に含まれており、ECU10は、ナビゲーションシステム30から車線中心線L01、L02、L03の情報を取得する。他の例では、ECU10は、カメラ21などによって取得された走行路情報、具体的には走行路の形状や走行路幅や車線幅などに基づき、車線中心線L01、L02、L03を算出する。この例では、ECU10は、車線中心線L01、L02、L03を算出するに当たって、ナビゲーションシステム30に記憶された地図情報を適宜用いてもよい。また、ECU10は、直線の車線中心線L01、L03をナビゲーションシステム30から取得し、円弧の車線中心線L02を算出してもよい。
【0036】
ここで、車両1を交差点で左折させる場合に、上記の車線中心線L01、L02、L03を繋げた車線中心線L0を目標走行経路として設定して、この目標走行経路に沿って車両1を走行させるように運転支援(自動運転や運転アシスト)を行うことが考えられる。こうして車線中心線L0により設定された目標走行経路によれば、車両1を安全に左折させることができる。しかしながら、車線中心線L0における直線L01、L03と円弧L02との接続点P01、P02において経路が不連続となるため、左折時にスムーズな車両挙動を実現し難い。
【0037】
したがって、本実施形態では、交差点での左折時にスムーズな車両挙動が実現されるように、クロソイド曲線(一定の角速度でステアリングホイールを回すときに車両1が描く軌跡に相当する)を利用して、車両1を交差点で左折させるときに適用する目標走行経路を設定する。ここで、スムーズな車両挙動を優先して、車線中心線L0から比較的大きく逸脱したクロソイド曲線に基づき目標走行経路を設定すると、左折時の安全性が確保されなくなる可能性がある。したがって、本実施形態では、上記の車線中心線L0を考慮した上で決定された適切なクロソイド曲線に基づき、目標走行経路を設定することとした。
【0038】
具体的には、本実施形態では、ECU10は、車線中心線L0上に始点及び終点が位置するクロソイド曲線に基づき目標走行経路を設定する。詳しくは、ECU10は、車線中心線L0の直線部分である車線中心線L01、L03上に始点及び終点がそれぞれ位置するクロソイド曲線を用いる。換言すると、ECU10は、車線中心線L0における車線中心線L01、L02の接続点P01よりも手前に始点が位置し、且つ車線中心線L0における車線中心線L02、L03の接続点P02よりも後ろに終点が位置するクロソイド曲線を用いる。
【0039】
また、本実施形態では、ECU10は、上記のような車線中心線L0上に始点及び終点が位置するという条件下において、クロソイド曲線の始点からの曲線長L及び曲率半径Rを様々に変えることで複数のクロソイド曲線を生成し、これら複数のクロソイド曲線の中で車線中心線L0に最も近いクロソイド曲線を決定し、このクロソイド曲線に基づき目標走行経路を設定する。詳しくは、ECU10は、複数のクロソイド曲線のそれぞれについて、クロソイド曲線と車線中心線L0との差分を示す誤差を当該クロソイド曲線の全体にわたって積分した値である誤差積分値を算出し、複数のクロソイド曲線の中で誤差積分値が最小となるクロソイド曲線を決定し、このクロソイド曲線に基づき目標走行経路を設定する。このような目標走行経路に基づき、車両1を交差点で左折させるように運転支援を行うと、安全でスムーズな車両挙動を実現可能となる。
【0040】
なお、クロソイド曲線は、一般的に、始点からの曲線長L、曲率半径R、及びクロソイドパラメータAに基づき、「RL=A2」という式で表される。この式より、始点からの曲線長L及び曲率半径Rを設定すると、クロソイドパラメータAが決まってクロソイド曲線が特定されることとなる。
【0041】
次に、図3乃至図5を参照して、車両1を交差点で左折させる目標走行経路を設定するためのクロソイド曲線の候補の具体例(第1の例~第3の例)について説明する。
【0042】
まず、図3に示すように、第1の例に係るクロソイド曲線L1は、その始点及び終点のそれぞれが車線中心線L0における接続点P01、P02に位置する。このクロソイド曲線L1の曲率半径R1は(クロソイドパラメータを「A1」とすると、曲率半径R1は「R1=A12/L」となる)、車線中心線L0の円弧部分(図2の車線中心線L02)の曲率半径R0よりもかなり小さくなる。そのため、このクロソイド曲線L1に応じた目標走行経路に基づき車両1を左折させると、車両挙動が大きくなる傾向にある。
【0043】
次いで、図4に示すように、第2の例に係るクロソイド曲線L2は、その始点P21及び終点P22のそれぞれが、車線中心線L0における接続点P01、P02からかなり離れた車線中心線L0上(詳しくは図2の車線中心線L01、L03上)の場所に位置する。このクロソイド曲線L2の曲率半径R2は(クロソイドパラメータを「A2」とすると、曲率半径R2は「R2=A22/L」となる)、車線中心線L0の円弧部分(図2の車線中心線L02)の曲率半径R0と同じになっている。また、クロソイド曲線L2は、車線中心線L0との誤差E2が比較的大きくなっている。このようなクロソイド曲線L2では、その始点P21が車線中心線L0の接続点P01よりもかなり手前に位置するので、当該クロソイド曲線L2に応じた目標走行経路に基づき車両1を左折させると、車両1の旋回の開始が早まり、車両1がコースアウトする可能性がある。
【0044】
次いで、図5に示すように、第3の例に係るクロソイド曲線L3は、その始点P31及び終点P32のそれぞれが、車線中心線L0における接続点P01、P02からある程度離れた車線中心線L0上(詳しくは図2の車線中心線L01、L03上)の場所に位置する。このクロソイド曲線L3の曲率半径R3は(クロソイドパラメータを「A3」とすると、曲率半径R3は「R3=A32/L」となる)、車線中心線L0の円弧部分(図2の車線中心線L02)の曲率半径R0とほぼ同じになっている。また、クロソイド曲線L3のクロソイドパラメータA3は、図4のクロソイド曲線L2のクロソイドパラメータA2とほぼ同じになっている。他方で、クロソイド曲線L3は、車線中心線L0との誤差E3が比較的小さくなっている。詳しくは、クロソイド曲線L3と車線中心線L0との誤差E3を当該クロソイド曲線L3の全体にわたって積分した誤差積分値S3(=ΣE3)は、図4のクロソイド曲線L2と車線中心線L0との誤差E2を当該クロソイド曲線L2の全体にわたって積分した誤差積分値S2(=ΣE2)よりも小さくなっている。特に、クロソイド曲線L3は、想定される複数のクロソイド曲線の中で誤差積分値S3が最小になるものとする。したがって、このようなクロソイド曲線L3に応じた目標走行経路に基づき車両1を左折させると、安全でスムーズな車両挙動を実現することができる。
【0045】
基本的には、ECU10は、クロソイド曲線上の複数の点と、これらクロソイド曲線上の複数の点に対応する車線中心線L0上の複数の点とのそれぞれの間の距離を誤差として算出し、算出された複数の誤差を積算することで誤差積分値を算出する。クロソイド曲線上の或る点を「Xn、Yn」と表記し、このクロソイド曲線上の点に対応する車線中心線L0上の点を「Xc、Yc」と表記すると、誤差は、「{(Xn-Xc)2+(Yn-Yc)21/2」で表される。なお、このように誤差積分値を算出する上でクロソイド曲線上及び車線中心線L0上に設定される複数の点は、例えば、横方向で見ると1cm刻みに規定され、縦方向で見ると0.5~1m刻みに規定される。
【0046】
ここで、複数のクロソイド曲線について車線中心線L0との誤差積分値を算出するに当たって、複数のクロソイド曲線を、車線中心線L0に沿った方向と車線中心線L0に直行する方向とで規定された座標系(以下では「SL座標系」と呼ぶ。)にて表してもよい。すなわち、ECU10は、一般的な横方向(x軸)及び縦方向(y軸)で規定される直交座標系(xy座標系)により表されたクロソイド曲線をSL座標系に変換して、車線中心線L0との誤差積分値を算出してもよい。なお、SL座標系において、「S」は、車線中心線L0に沿った距離を規定する「station」の座標軸を示し、「L」は、車線中心線L0からの垂直方向(横方向)の距離を規定する「lateral」の座標軸を示している。
【0047】
図6を参照して、SL座標系に変換されたクロソイド曲線から車線中心線L0との誤差積分値を算出する方法について説明する。図6は、横軸(S軸)に、車線中心線L0に沿った距離(経路長)を示し、縦軸(L軸)に、車線中心線L0からの垂直方向の距離(車線中心線L0からのオフセット量)を示している。なお、車線中心線L0は、横軸(S軸)そのものに対応する。
【0048】
図6(A)は、図4のクロソイド曲線L2をSL座標系に変換したクロソイド曲線L2’を示し、図6(B)は、図5のクロソイド曲線L3をSL座標系に変換したクロソイド曲線L3’を示している。このようにSL座標系で表されたクロソイド曲線L2’、L3’と車線中心線L0との誤差積分値S2、S3は、図においてハッチングされた領域、つまりクロソイド曲線L2’、L3’と横軸(S軸)とで囲まれた領域の面積となる。ECU10は、複数のクロソイド曲線をSL座標系に変換して、SL座標系に変換された複数のクロソイド曲線と車線中心線L0に対応する横軸(S軸)とで囲まれた領域の面積を、誤差積分値として算出することができる。これにより、複数のクロソイド曲線の中で誤差積分値が最小となるクロソイド曲線を容易に決定することができる。
【0049】
次に、図7を参照して、本発明の実施形態による目標走行経路生成及び運転支援に係るフローチャートについて説明する。このフローチャートに係る処理は、ECU10によって所定の周期(例えば、0.05~0.2秒毎)で繰り返し実行される。
【0050】
まず、ステップS1において、ECU10は、図1に示した複数のセンサ類(特にカメラ21、レーダ22、及びナビゲーションシステム30など)から各種種の情報を取得する。この場合、ECU10は、上述した走行路情報を少なくとも取得する。
【0051】
次いで、ステップS2において、ECU10は、ステップS1で取得された走行路情報に基づき、車両1の前方に交差点が存在するか否かを判定する。1つの例では、ECU10は、カメラ21によって撮影された車両1の前方の画像を解析することで、車両1の前方に交差点が存在するか否かを判定する。他の例では、ECU10は、ナビゲーションシステム30に記憶された車両1の周辺の地図情報を参照することで、車両1の前方に交差点が存在するか否かを判定する。この場合、ECU10は、測位システム29により検出された車両1の現在位置を用いて、車両1の現在位置周辺の地図情報をナビゲーションシステム30から取得する。若しくは、ECU10は、カメラ21によって撮影された車両1の前方の画像を解析した結果と、ナビゲーションシステム30から取得された地図情報とを照合して、車両1の現在位置を特定することで、つまり所謂マップマッチングを行うことで、車両1の現在位置周辺の地図情報をナビゲーションシステム30から取得する。
【0052】
ステップS2の結果、ECU10は、車両1の前方に交差点が存在する場合(ステップS2:Yes)、ステップS3に進み、車両1の前方に交差点が存在しない場合(ステップS2:No)、図7に示すフローチャートに係る処理を終了する。ステップS3において、ECU10は、車両1が交差点で左折又は右折するか否かを判定する。例えば、ECU10は、現時点において設定されている目標走行経路において交差点で左折又は右折する経路が含まれている場合や、車両1のドライバが交差点で左折又は右折するためのウィンカ操作を行った場合に、車両1が交差点で左折又は右折すると判定する。
【0053】
ステップS3の結果、ECU10は、車両1が交差点で左折又は右折する場合(ステップS3:Yes)、ステップS4に進み、車両1が交差点で左折及び右折を行わない場合(ステップS3:No)、つまり車両1が交差点で直進する場合、図7に示すフローチャートに係る処理を終了する。
【0054】
ステップS4において、ECU10は、車両1を交差点で左折又は右折させる目標走行経路を設定するための基準となる車線中心線L0を取得する。具体的には、ECU10は、左折前又は右折前(つまり交差点への進入前)の直線の走行路の車線中心線L01と、左折後又は右折後(つまり交差点からの脱出後)の直線の走行路の車線中心線L03と、これら直線の車線中心線L01、L03の端点に両端が接続された円弧により形成され、交差点内において旋回すべき走行路の車線中心線L02と、から構成される車線中心線L0を取得する(図2参照)。1つの例では、ECU10は、ナビゲーションシステム30から車線中心線L0の情報を取得する。他の例では、ECU10は、カメラ21などによって取得された走行路情報、具体的には走行路の形状や走行路幅や車線幅などに基づき、車線中心線L0を算出する。この場合、ECU10は、車線中心線L0を算出するに当たって、ナビゲーションシステム30に記憶された地図情報を適宜用いてもよい。
【0055】
次いで、ステップS5において、ECU10は、ステップS4で取得された車線中心線L0に基づき、車両1を交差点で左折又は右折させるための目標走行経路を設定する上で候補となる複数のクロソイド曲線を生成する。具体的には、ECU10は、車線中心線L0上に始点及び終点が位置する複数のクロソイド曲線を生成する。詳しくは、ECU10は、車線中心線L0において円弧L02の手前の直線L01上に始点が位置し、且つ車線中心線L0において円弧L02の後ろの直線L03上に終点が位置する複数のクロソイド曲線を生成する。また、ECU10は、上記のような車線中心線L0上に始点及び終点が位置するという条件下において、クロソイド曲線の始点からの曲線長L及び曲率半径Rを様々に変えることにより複数のクロソイド曲線を生成する。なお、これら曲線長L及び曲率半径Rを様々に変えると、クロソイド曲線における車線中心線L0上の始点及び終点の位置が様々に変化する。
【0056】
次いで、ステップS6において、ECU10は、ステップS5で生成された複数のクロソイド曲線のそれぞれについて、クロソイド曲線と車線中心線L0との差分を示す誤差を当該クロソイド曲線の全体にわたって積分した値である誤差積分値を算出する。具体的には、ECU10は、クロソイド曲線上の複数の点と、これらクロソイド曲線上の複数の点に対応する車線中心線L0上の複数の点とのそれぞれの間の距離を誤差として算出し、算出された複数の誤差を積算することで誤差積分値を算出する。なお、ECU10は、複数のクロソイド曲線をSL座標系に変換して、SL座標系に変換されたクロソイド曲線と車線中心線L0に対応する横軸(S軸)とで囲まれた領域の面積を、誤差積分値として算出してもよい(図6参照)。
【0057】
次いで、ステップS7において、ECU10は、ステップS5で生成された複数のクロソイド曲線の中で、ステップS6で算出された誤差積分値が最小となるクロソイド曲線を決定する。そして、ECU10は、ステップS8に進み、ステップS7で決定されたクロソイド曲線に対応する走行経路を、車両1を交差点で左折又は右折させるための目標走行経路として生成する。
【0058】
次いで、ステップS9において、ECU10は、ステップS8で生成された目標走行経路に沿って車両1が走行するように、車両1の速度制御及び操舵制御を含む運転制御を実行する。具体的には、ECU10は、エンジン制御システム31、ブレーキ制御システム32及びステアリング制御システム33のうちの少なくとも1以上に制御信号を送信して、エンジン制御、制動制御及び操舵制御の少なくとも1以上を実行する。
【0059】
[作用及び効果]
次に、本発明の実施形態による作用及び効果について説明する。
【0060】
本実施形態では、ECU10は、車両1が左折又は右折する走行路の車線中心線L0上に始点及び終点が位置する複数のクロソイド曲線を生成し、複数のクロソイド曲線のそれぞれについてクロソイド曲線と車線中心線L0との誤差積分値を算出し、誤差積分値が最小となるクロソイド曲線に基づき、車両1が左折又は右折するときに走行させる目標走行経路を生成する。このような目標走行経路に沿って車両1を走行させるように運転制御すると、当該目標走行経路にはクロソイド曲線が適用されているので、一定の角速度でのステアリング操作により車両1を左折又は右折させることができ、左折時又は右折時にスムーズな車両挙動を実現することが可能となる。また、車線中心線L0上に始点及び終点が位置し、車線中心線L0との誤差積分値が最小となるクロソイド曲線を目標走行経路に適用しているので、車線中心線L0からの車両1の大きな逸脱を抑制することができ、左折時又は右折時の安全性を確保することができる。したがって、本実施形態によれば、車両1が左折又は右折するときに安全でスムーズな車両挙動を実現可能な目標走行経路を生成することができる。
【0061】
また、本実施形態では、ECU10は、左折前又は右折前の直線の走行路に対応する車線中心線L01と、左折後又は右折後の直線の走行路に対応する車線中心線L03と、両端が車線中心線L01、L03のそれぞれに接続された円弧により形成され、旋回すべき走行路に対応する車線中心線L02と、から成る車線中心線L0を用いて、始点が直線の車線中心線L01上に位置し且つ終点が直線の車線中心線L03上に位置する複数のクロソイド曲線を生成する。これにより、車両が旋回するときの走行路の車線中心線L0に応じた適切なクロソイド曲線を生成することができる。
【0062】
また、本実施形態では、ECU10は、車線中心線L0上に始点及び終点が位置するという条件下において、クロソイド曲線の始点からの曲線長L及び曲率半径Rを様々に変えることにより複数のクロソイド曲線を生成する。これにより、所望の条件を満たす複数のクロソイド曲線の候補を的確に生成することができる。
【0063】
[変形例]
以下では、上述した実施形態の変形例について説明する。
【0064】
(変形例1)
変形例1は、複数のクロソイド曲線のそれぞれについて車線中心線L0との誤差積分値を算出したときに、誤差積分値が最小となる2つ以上のクロソイド曲線が存在する場合に、目標走行経路に適用するクロソイド曲線を決定する方法に関する。変形例1では、ECU10は、誤差積分値が最小となる2つ以上のクロソイド曲線のそれぞれについて、クロソイド曲線の始点付近の所定範囲における誤差積分値を算出し、2つ以上のクロソイド曲線の中で、この算出された誤差積分値が最小となるクロソイド曲線を決定する。
【0065】
図8は、本発明の実施形態の変形例1に係る、目標走行経路に適用するクロソイド曲線の決定方法の説明図である。図8(A)及び(B)は、横軸に、車線中心線L0に沿った距離を示し、縦軸に、車線中心線L0からの垂直方向の距離を示している。また、図8(A)及び(B)は、それぞれ、SL座標系に変換されたクロソイド曲線L4、L5を示している。これらクロソイド曲線L4、L5は、それぞれの誤差積分値S4、S5が同じ値であり、この2つの誤差積分値S4、S5は、複数のクロソイド曲線から得られた誤差積分値の中で最小であるものとする。
【0066】
この場合、変形例1においては、ECU10は、クロソイド曲線L4、L5のそれぞれについて、始点付近の所定範囲(クロソイド曲線の始点から車線中心線L0に沿った距離が「D1」以下の領域)における誤差積分値S4a、S5aを算出する。図8に示す例では、誤差積分値S5aが誤差積分値S4aよりも小さいため、ECU10は、誤差積分値S5aに対応するクロソイド曲線L5を、目標走行経路に適用するものとして決定する。このような変形例1によれば、目標走行経路に沿って車両1を走行させるときに正確な情報が必要となる旋回初期において、車線中心線L0により近いクロソイド曲線に応じた目標走行経路を適切に生成することができる。
【0067】
(変形例2)
変形例2も、変形例1と同様に、誤差積分値が最小となる2つ以上のクロソイド曲線が存在する場合に、目標走行経路に適用するクロソイド曲線を決定する方法に関する。変形例2では、ECU10は、誤差積分値が最小となる2つ以上のクロソイド曲線の中で、車両1が旋回するときの操舵角が最小となるクロソイド曲線を決定する。
【0068】
図9は、本発明の実施形態の変形例2に係る、目標走行経路に適用するクロソイド曲線の決定方法の説明図である。図9(A)及び(B)は、横軸に、車線中心線L0に沿った距離を示し、縦軸に、車線中心線L0からの垂直方向の距離を示している。また、図9(A)及び(B)は、それぞれ、SL座標系に変換されたクロソイド曲線L6、L7を示している。これらクロソイド曲線L6、L7は、それぞれの誤差積分値S6、S7が同じ値であり、この2つの誤差積分値S6、S7は、複数のクロソイド曲線から得られた誤差積分値の中で最小であるものとする。
【0069】
この場合、変形例2においては、ECU10は、2つのクロソイド曲線L6、L7のうちで、車両1が旋回するときの操舵角が小さいほうのクロソイド曲線を決定する。例えば、車両1が左旋回する場合には、車線中心線L0(横軸(S軸)そのもの)に対して左方向にシフトするクロソイド曲線L6よりも、車線中心線L0に対して右方向にシフトするクロソイド曲線L7のほうが、車両1が左旋回するときの操舵角が小さくなる。この場合には、ECU10は、クロソイド曲線L7を目標走行経路に適用するものとして決定する。これに対して、車両1が右旋回する場合には、車線中心線L0に対して右方向にシフトするクロソイド曲線L7よりも、車線中心線L0に対して左方向にシフトするクロソイド曲線L6のほうが、車両1が右旋回するときの操舵角が小さくなる。この場合には、ECU10は、クロソイド曲線L6を目標走行経路に適用するものとして決定する。このような変形例2によれば、車両1を旋回させるための目標走行経路の曲率半径が大きくなり、旋回時に車両1に発生する横加速度を小さくすることができる、つまり旋回時の車両挙動を改善することができる。
【0070】
なお、誤差積分値が最小となる2つ以上のクロソイド曲線に関して、SL座標系に変換したクロソイド曲線が同じ方向にシフトしている場合には、車線中心線L0からのオフセット量(シフト量)が最小となるクロソイド曲線を、車両1が旋回するときの操舵角が最小となるクロソイド曲線として決定することができる。
【0071】
(変形例3)
上記した実施形態では、車両1が交差点で左折又は右折するときに本発明を適用する例を示したが、本発明の適用はこれに限定はされない。本発明は、走行路上において交差点以外の場所で旋回する場合にも適用可能である。例えば、本発明は、走行路上の店舗などを利用するために車両1が右折又は左折して進入する場合にも適用可能である。
【0072】
(変形例4)
上記した実施形態では、「RL=A2」という式で表されたクロソイド曲線に基づき目標走行経路を生成する例を示したが、他の例では、3次関数などの式で近似されたクロソイド曲線に基づき目標走行経路を生成してもよい。また、更に他の例では、クロソイド以外の所定の緩和曲線に基づき目標走行経路を生成してもよい。例えば、この緩和曲線としては、3次曲線や、5次曲線や、種々のスプライン曲線などを用いることができる。
【0073】
(変形例5)
上記した実施形態では、エンジンを駆動源とする車両1に本発明を適用する例を示したが(図1参照)、本発明は、電気モータを駆動源とする車両(電気自動車やハイブリッド車)にも適用可能である。加えて、上述した実施形態では、ブレーキ装置(ブレーキ制御システム32)により制動力を車両1に付与していたが、他の例では、電気モータの回生により制動力を車両に付与してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 車両
10 ECU
21 カメラ
22 レーダ
30 ナビゲーションシステム
31 エンジン制御システム
32 ブレーキ制御システム
33 ステアリング制御システム
100 車両運転支援システム(走行経路生成システム)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9