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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】運転者状態検出装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/08 20120101AFI20240326BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20240326BHJP
【FI】
B60W40/08
B60W50/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020065820
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021160628
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】桑原 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】青木 壮椰
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-191849(JP,A)
【文献】特開2019-069659(JP,A)
【文献】特開2016-161981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
B60T 7/12- 8/1769
B60T 8/32- 8/96
B62D 6/00- 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の異常を検出する運転者状態検出装置であって、
自車両前方の走行経路の近傍に存在する静止物を検出する静止物検出センサと、
運転者の運転操作及び/又は自車両の走行状態を検出する自車挙動センサと、
上記静止物検出センサによって検出された静止物の向こう側から、自車両の走行経路上に進出してくる仮想物体と、自車両が干渉するリスクを算出するためのリスク予測評価モデルを備えたリスク評価指標算出部と、
このリスク評価指標算出部により算出されたリスク評価指標と、所定の閾値を比較することにより、運転者が脳の高次機能を発揮しているか否かを判定し、脳の高次機能を発揮していない場合には、運転者に異常があると判定する異常判定部と、
この異常判定部により運転者に異常があると判定された場合には、警報装置により運転者に安全な場所に自車両を停車させるよう促し、又は、自動運転により自車両を安全な場所に停車させる電子制御ユニットと、
を有し、
上記リスク評価指標算出部は、上記自車挙動センサによって検出された運転者の運転操作及び/又は自車両の走行状態を、上記リスク予測評価モデルに適用することにより上記リスク評価指標を算出することを特徴とする運転者状態検出装置。
【請求項2】
上記リスク評価指標算出部は、自車両の走行状態として、少なくとも自車両の速度、自車両と上記静止物との間の車両の進行方向の距離、及び自車両と上記静止物との間の横方向距離を、上記リスク予測評価モデルに適用して、上記リスク評価指標を算出する請求項1記載の運転者状態検出装置。
【請求項3】
上記リスク予測評価モデルにより算出される上記リスク評価指標の値は、自車両と上記静止物との間の車両の進行方向の距離の2乗に反比例する請求項2記載の運転者状態検出装置。
【請求項4】
上記リスク予測評価モデルにより算出される上記リスク評価指標の値は、運転者が上記仮想物体を発見した後、所定の減速度で車両を減速させた場合に、上記仮想物体と自車両の干渉が発生する仮想的な干渉点において自車両がもつ運動エネルギーに比例する請求項3記載の運転者状態検出装置。
【請求項5】
上記リスク評価指標は、自車両の走行速度をV、自車両の質量をm、自車両と駐車車両の進行方向の距離をd long 、自車両と駐車車両の横方向距離をd lat 、歩行者と自車両の干渉が発生する仮想的な干渉点における自車両の車速をVc、歩行者と自車両の干渉が発生する場合に1の値をとり、干渉が発生しない場合に0の値をとる干渉発生フラグをFとするとき、下記数式(1)で表されるリスク予測評価モデルにより算出され、
上記異常判定部は、自車両が静止物から30m以内に接近した状態で、リスク評価指標の値が0よりも大きい場合に、運転者に異常があると判定する請求項1乃至4の何れか1項に記載の運転者状態検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者状態検出装置に関し、特に、運転者の異常を検出する運転者状態検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012-234291号公報(特許文献1)には、車両のドライバが意識低下状態にあるか否かを判定するドライバ状態判定装置が記載されている。このドライバ状態判定装置では、車両が車両の前方に位置する先行車に接近しているか否かを判定し、車両のドライバが無操作状態であるか否かを判定し、車両のドライバが過去所定時間内に運転操作をしたか否かを判定し、車両が先行車と接近していると判定され、ドライバが無操作状態であると判定され、かつ、ドライバが過去所定時間内に運転操作をしていないと判定された場合に、ドライバが意識低下状態であると判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-234291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のドライバ状態判定装置では、運転者が無操作状態にあることを異常判定の条件としているため、運転者が或る程度重篤な機能低下状態に陥らない限り、異常が判定されず、運転者の異常に起因する事故等の抑止効果も限定的なものとなってしまう。例えば、運転者が軽い脳卒中を患っている状態であっても、運転者は車両の操舵や、加減速等の最低限の運転操作を行うことが可能である。このため、軽い脳卒中等により、注意障害や、遂行機能障害のある運転者を、特許文献1記載のドライバ状態判定装置等の、従来の判定装置では、異常判定することが難しいという問題がある。
【0005】
本件発明者は、軽い脳卒中等により、運転者が注意障害や、遂行機能障害等の軽度の機能低下状態にある場合には、脳の高次機能を発揮した運転が難しくなるということを見出した。健常な運転者は、様々な脳の高次機能を発揮しながら運転を行っている。例えば、自車両前方の走行経路の近傍に、駐車車両等の静止物が存在する場合、健常な運転者は、その駐車車両の向こう側から、歩行者等の仮想物体が自車両の走行経路上に進出してくる可能性があると予測する。健常な運転者は、このような予測に基づいて、前方の駐車車両に近づくときは、車両の速度を低下させたり、駐車車両と自車両の間の横方向距離を大きく確保したりして、自車両の走行経路上に歩行者等が突然現れ、衝突してしまうリスクを未然に回避している。
【0006】
これに対し、軽い脳卒中等により軽度の機能低下状態に陥った運転者では、このような脳の高次機能を発揮した運転を行うことが難しくなる。このため、軽度の機能低下状態に陥った運転者が運転する車両は、事故に至ることはないとしても、事故に至るリスクが大きい走行をすることとなる。本件発明者は、運転者が、事故に至るリスクが大きい走行を行っているか否かに基づいて、運転者の異常を早期に発見できることを見出した。
【0007】
従って、本発明は、軽度の機能低下状態に陥っている運転者の異常を、早期に発見することができる運転者状態検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、運転者の異常を検出する運転者状態検出装置であって、自車両前方の走行経路の近傍に存在する静止物を検出する静止物検出センサと、運転者の運転操作及び/又は自車両の走行状態を検出する自車挙動センサと、静止物検出センサによって検出された静止物の向こう側から、自車両の走行経路上に進出してくる仮想物体と、自車両が干渉するリスクを算出するためのリスク予測評価モデルを備えたリスク評価指標算出部と、このリスク評価指標算出部により算出されたリスク評価指標と、所定の閾値を比較することにより、運転者が脳の高次機能を発揮しているか否かを判定し、脳の高次機能を発揮していない場合には、運転者に異常があると判定する異常判定部と、この異常判定部により運転者に異常があると判定された場合には、警報装置により運転者に安全な場所に自車両を停車させるよう促し、又は、自動運転により自車両を安全な場所に停車させる電子制御ユニットと、を有し、リスク評価指標算出部は、自車挙動センサによって検出された運転者の運転操作及び/又は自車両の走行状態を、リスク予測評価モデルに適用することによりリスク評価指標を算出することを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明においては、静止物検出センサが自車両前方の走行経路の近傍に存在する静止物を検出する。また、リスク評価指標算出部は、検出された静止物の向こう側から、走行経路上に進出してくる仮想物体と、自車両が干渉するリスクを算出するためのリスク予測評価モデルを備えており、これにより計算されたリスク評価指標と所定の閾値を比較することにより、異常判定部が運転者の異常の有無を判定する。また、リスク評価指標算出部においては、自車挙動センサによって検出された運転者の運転操作及び/又は自車両の走行状態が、リスク予測評価モデルに適用され、リスク評価指標が算出される。
【0010】
このように構成された本発明によれば、運転者の運転操作及び/又は自車両の走行状態に基づいて、リスク予測評価モデルによりリスク評価指標を算出し、これと所定の閾値を比較することにより、運転者の異常の有無を判定する。このため、運転者が脳の高次機能を発揮しているか否かを判定することが可能となり、軽度の機能低下状態に陥っている運転者の異常を、早期に発見することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、リスク評価指標算出部は、自車両の走行状態として、少なくとも自車両の速度、自車両と静止物との間の車両の進行方向の距離、及び自車両と静止物との間の横方向距離を、リスク予測評価モデルに適用して、リスク評価指標を算出する。
【0012】
このように構成された本発明によれば、リスク評価指標算出部が、自車両の速度、静止物との間の進行方向の距離、及び静止物との間の横方向距離に基づいて、リスク予測評価モデルによりリスク評価指標を算出するので、少数のパラメータに基づいて、少ない計算量で有意なリスク評価指標を算出することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、リスク予測評価モデルにより算出されるリスク評価指標の値は、自車両と静止物との間の車両の進行方向の距離の2乗に反比例する。
【0014】
通常の運転者によって知覚されるリスクの度合いは、走行経路上の障害物等に接近するほど急激に増大することが知られている。上記のように構成された本発明によれば、リスク評価指標の値が、静止物との間の進行方向の距離の2乗に反比例するので、静止物との間の距離が近づくにつれて急激にリスク評価指標が増大し、運転者の感覚に即したリスク評価指標を得ることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、リスク予測評価モデルにより算出されるリスク評価指標の値は、運転者が仮想物体を発見した後、所定の減速度で車両を減速させた場合に、仮想物体と自車両の干渉が発生する仮想的な干渉点において自車両がもつ運動エネルギーに比例する。
【0016】
車両と仮想物体の干渉の結果は、仮想物体と車両が干渉した時点において、車両が持っている運動エネルギーが大きいほど深刻なものとなる。上記のように構成された本発明によれば、仮想物体と自車両の干渉が発生する仮想的な干渉点において自車両がもつ運動エネルギーに比例するようにリスク評価指標の値が算出されるので、仮想物体と自車両の干渉のリスクを適正に評価することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の運転者状態検出装置によれば、軽度の機能低下状態に陥っている運転者の異常を、早期に発見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態による運転者状態検出装置の全体構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態による運転者状態検出装置において、リスク評価指標の算出に使用されるリスク予測評価モデルを説明するための図である。
図3】本発明の実施形態による運転者状態検出装置において、リスク評価指標の算出に使用されるリスク予測評価モデルを説明するための図である。
図4】本発明の実施形態による運転者状態検出装置において、リスク評価指標の算出に使用されるリスク予測評価モデルを説明するための図である。
図5】リスク評価指標の値が所定の閾値以上となる領域の一例を、車速、進行方向距離、横方向距離をパラメータとして表した三次元グラフである。
図6】健常者及び軽度の機能低下状態にある患者が車両を運転し、駐車車両を追い越したときの横方向距離の一例を示すグラフである。
図7】健常者及び軽度の機能低下状態にある患者が車両を運転し、駐車車両を追い越したときの自車両の速度の一例を示すグラフである。
図8図6及び図7に示した走行について算出されたリスク評価指標の値の一例を示すグラフである。
図9】患者が運転する車両の走行によりリスク評価指標が最大になった時点における健常者及び患者が夫々運転している自車両の状態を示す表である。
図10】本発明の実施形態による運転者状態検出装置の作用を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による運転者状態検出装置を説明する。
図1は、本発明の実施形態による運転者状態検出装置の全体構成を示すブロック図である。図2乃至図4は、本発明の実施形態による運転者状態検出装置において、リスク評価指標の算出に使用されるリスク予測評価モデルを説明するための図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の実施形態による運転者状態検出装置1は、静止物検出センサである車外カメラ2及びレーダ4と、自車挙動センサである車速センサ6と、これらのセンサからの検出信号が入力される電子制御ユニット(ECU)10と、電子制御ユニット10からの指令信号に基づいて作動する警報装置12及び自動運転制御部14と、を有する。
【0021】
車外カメラ2は、自車両前方の走行経路を撮影するように、車両に取り付けられたカメラである。この車外カメラ2によって撮影された画像は、順次電子制御ユニット10に送られ、そこで画像解析され、自車両前方の走行経路の近傍に存在する駐車車両等の静止物が検出される。従って、車外カメラ2は、自車両前方の走行経路の近傍に存在する静止物を検出する静止物検出センサとして機能する。また、画像解析により駐車車両等の静止物が検出された場合には、車外カメラ2によって取得された画像を解析することにより、自車両と静止物との間の横方向距離(車両の左右方向の距離)が計算される。
【0022】
レーダ4は、自車両の前方に向けてマイクロ波等の電磁波を射出すると共に、自車両前方に存在する物体により反射された電磁波を検出することにより、先行車両や、自車両前方の走行経路の近傍に存在する駐車車両等の静止物を検出するように構成されている。レーダ4の検出信号は、電子制御ユニット10に送られ、そこで、自車両から先行車両や、静止物までの距離、相対速度等を算出するように構成されている。また、レーダ4を、自車両前方の走行経路の近傍に存在する静止物を検出するセンサとして使用することもできる。この場合には、レーダ4は、静止物検出センサとしても機能する。静止物検出センサとしては、1又は複数の任意のセンサを使用することができる。また、本実施形態においては、電磁波を使用したレーダ4が使用されているが、これに代えて、又はこれと共に、超音波を使用した超音波センサを使用することもできる。
【0023】
車速センサ6は、自車両の走行速度を検出するように構成されている。従って、車速センサ6は、自車両の走行状態を検出する自車挙動センサとして機能する。車速センサ6として、任意のセンサを使用することができる。また、レーダ4の検出信号に基づいて自車両の走行状態を算出することもできる。この場合には、レーダ4は、自車挙動センサとしても機能する。自車挙動センサとしては、1又は複数の任意のセンサを使用することができる。
【0024】
電子制御ユニット10は、車両に搭載されたマイクロプロセッサ、メモリ、インターフェイス回路、これらを作動させるソフトウェア等(以上、図示せず)により構成されている。本実施形態の運転者状態検出装置1においては、電子制御ユニット10に備えられたマイクロプロセッサ、メモリ、インターフェイス回路、及びソフトウェアにより、リスク評価指標算出部10a、及び異常判定部10bの機能が実現される。
【0025】
リスク評価指標算出部10aは、車外カメラ2によって検出された駐車車両の向こう側から、自車両の走行経路上に進出してくる歩行者と自車両が干渉するリスクを算出するためのリスク予測評価モデルを備えている。また、リスク評価指標算出部10aは、車速センサ6によって検出された運転者の運転操作や、自車両の走行状態を、リスク予測評価モデルに適用することによりリスク評価指標を算出するように構成されている。異常判定部10bは、リスク評価指標算出部10aにより算出されたリスク評価指標と、所定の閾値を比較して運転者の異常の有無を判定するように構成されている。リスク評価指標算出部10a及び異常判定部10bによる処理の詳細については後述する。
【0026】
警報装置12は、電子制御ユニット10の異常判定部10bによって、運転者に異常があると判定された場合に、警報音声及び/又は表示により、運転者に異常が検出されたことを運転者に報知するように構成されている。例えば、異常が検出された旨のメッセージを音声で報知するスピーカ(図示せず)や、異常が検出された旨を表示するディスプレイ(図示せず)を、警報装置12として使用することができる。
【0027】
自動運転制御部14は、電子制御ユニット10の異常判定部10bによって、運転者に異常があると判定された場合に、自動運転により自車両を安全な場所に停車させるように構成されている。即ち、自動運転制御部14は、車両の操舵装置、エンジン制御装置、アクセル制御装置、ブレーキ制御装置等(以上、図示せず)に制御信号を送り、自車両を自動運転するように構成されている。なお、自動運転制御部14は、電子制御ユニット10に備えられたマイクロプロセッサ等(図示せず)により実現されても良く、或いは、電子制御ユニット10とは別の装置により実現されても良い。
【0028】
次に、図2乃至図4を参照して、電子制御ユニット10のリスク評価指標算出部10aに備えられているリスク予測評価モデルを説明する。
図2は、自車両前方の駐車車両の向こう側から、自車両の走行経路上に進出してくる歩行者と、自車両が干渉するリスクに寄与すると考えられるパラメータを示す図である。
【0029】
まず、自車両前方の駐車車両の向こう側から、自車両の走行経路上に進出してくる歩行者と、自車両が干渉するリスクに寄与すると考えられるパラメータを検討する。図2に示すように、このリスクに関係するパラメータとしては、自車両の速度V、自車両と駐車車両との間の車両の進行方向の距離dlong(前後距離)、自車両と駐車車両との間の横方向距離dlat(左右距離)、車両の質量mが挙げられる。なお、本実施形態においては、進行方向の距離dlongとして、自車両の中心点から駐車車両の中心点までの前後方向の距離を採用しているが、自車両の先端から駐車車両の後端までの距離等、種々の距離を距離dlongとして設定することができる。また、本実施形態においては、横方向距離dlatとして、自車両の中心点から駐車車両の中心点までの左右方向の距離を採用しているが、自車両の駐車車両側の端から、駐車車両の自車両側の端までの距離等、種々の距離を距離dlatとして設定することができる。
【0030】
まず、自車両と駐車車両の進行方向の距離dlongが長い状態では、駐車車両の向こう側から歩行者が進出してきたとしても、自車両を減速して自車両と歩行者の干渉を容易に回避することができる。従って、通常、距離dlongが長いほど自車両と歩行者が干渉するリスクは低く、距離dlongが近くなるにつれてリスクが上昇すると考えられる。しかしながら、自車両と駐車車両の進行方向の距離dlongが極めて短くなった状態では、駐車車両の向こう側から歩行者が進出してきたとしても、歩行者が自車両の走行経路上に到達する前に、自車両は駐車車両を通り過ぎてしまう。このため、進行方向の距離dlongが極めて短くなった状態では、自車両と歩行者が干渉するリスクは低くなる。
【0031】
また、自車両の速度Vが低い状態では、駐車車両の向こう側から進出してくる歩行者を認識した後、容易に自車両を停止させることができる。従って、自車両の速度Vが低いほど自車両と歩行者が干渉するリスクは低く、自車両の速度Vが高くなるにつれてリスクが上昇すると考えられる。
同様に、自車両の質量mが小さい場合には、歩行者を認識した後、自車両を停止させるために必要な距離が短くなる。このため、自車両の質量mは小さいほど自車両と歩行者が干渉するリスクは低く、自車両の質量mが大きくなるにつれてリスクが上昇すると考えられる。
【0032】
さらに、自車両と駐車車両の横方向距離dlatが長い状態では、駐車車両の向こう側から進出してくる歩行者を認識した後、歩行者が自車両の走行経路上に到達するまでの時間が長くなる。このため、自車両と駐車車両の横方向距離dlatが長い場合には、運転者は、歩行者が自車両の走行経路上に到達するまでに容易に自車両を停止させることができる。また、自車両と駐車車両の横方向距離dlatが長い場合には、自車両と駐車車両の進行方向の距離dlongが長い段階(駐車車両が遠い段階)で歩行者を認識することが可能になる。このため、距離dlatが長いほど自車両と歩行者が干渉するリスクは低く、距離dlatが短くなるにつれてリスクが上昇すると考えられる。
【0033】
以上のパラメータを考慮して、本実施形態の運転者状態検出装置1では、数式(1)に示すリスク予測評価モデルが使用されている。

数式(1)において、Rpedは、リスク予測評価モデルによって算出されるリスク評価指標を表している。数式(1)において、自車両の走行速度をV、自車両の質量をm、自車両と駐車車両の進行方向の距離をdlong、自車両と駐車車両の横方向距離をdlatとしている。また、数式(1)におけるVcは、運転者が歩行者を発見した後、所定の減速度で自車両を減速させた場合に、歩行者と自車両の干渉が発生する仮想的な干渉点における自車両の車速を表している。さらに、Fは干渉発生フラグを表し、歩行者と自車両の干渉が発生する場合に「1」となり、干渉が発生しない場合には「0」となる。
【0034】
次に、干渉点における速度Vc、及び干渉発生フラグFについて、図3及び図4を参照して詳細に説明する。
図3は、運転者が、駐車車両の向こう側から走行経路上に進出してくる歩行者を認識した瞬間の状態を模式的に示す図である。図4は、図3において歩行者を認識した運転者が、自車両を減速させ、減速した車両が、自車両と歩行者の干渉が発生する仮想的な干渉点まで走行した状態を模式的に示す図である。
【0035】
まず、図3に示す瞬間において、自車両Sの運転者Dは、駐車車両Pの向こう側から自車両Sの走行経路上に進出しようとしている歩行者Wが視界に入る。この瞬間における自車両Sの速度が数式(1)における車速Vであり、自車両Sと駐車車両Pの進行方向の距離がdlong、横方向距離がdlatである。図3に示す瞬間において、運転者Dはブレーキをかけて所定の減速度αで減速を開始し、その後、図4に示すように、歩行者Wと自車両Sの干渉が発生する仮想的な干渉点Cまで自車両Sが走行する。一方、歩行者Wは、図3に示す瞬間から所定の速度vで自車両Sの走行経路に向けて進出する。このように、自車両Sが干渉点Cまで走行した図4に示す時点における自車両Sの速度が、数式(1)における、干渉点Cにおける速度Vcである。
【0036】
従って、速度Vcは、図3の瞬間における自車両Sの速度V、及び横方向距離dlatの関数となる。また、数式(1)の分子は、干渉点Cにおける速度Vcの2乗に、自車両Sの質量m及び1/2を乗じた値であるため、図4に示す時点における自車両Sのもつ運動エネルギーを表している。このため、数式(1)に示すリスク予測評価モデルにより算出されるリスク評価指標Rpedの値は、干渉点Cにおいて自車両Sがもっている運動エネルギーに比例する。また、数式(1)の分母は、進行方向距離dlongの2乗で計算されるため、リスク評価指標Rpedの値は自車両Sと駐車車両Pとの間の車両の進行方向の距離dlongの2乗に反比例する。
【0037】
一方、図3に示す瞬間における自車両Sの速度が低い場合には、図3に示す瞬間から所定の減速度αで減速を開始することにより、仮想的な干渉点Cに到達する前に自車両Sは停止することができるため、歩行者Wと自車両Sの干渉は発生しない。また、自車両Sの速度Vに対して、横方向距離dlatが長い場合には、自車両Sが干渉点Cに到達した時点では、歩行者Wはまだ干渉点Cに到達しないため、この場合も歩行者Wと自車両Sの干渉は発生しない。このように、歩行者Wと自車両Sの干渉が発生し得ない場合には干渉発生フラグFが「0」に設定されるため、数式(1)の分子はゼロとなり、数式(1)によって計算されるリスク評価指標Rpedもゼロとなる。
【0038】
健常な運転者は、脳の高次機能を発揮した運転を行うことにより、数式(1)に示すリスク予測評価モデルによって算出されるリスク評価指標Rpedの値が、常に所定の閾値以下となるように運転を行っているものと考えられる。これに対し、軽度の脳卒中等により機能低下状態に陥っている運転者は、脳の高次機能を発揮した運転を行うことが困難であるため、運転中にリスク評価指標Rpedの値が所定の閾値よりも大きくなる場合がある。なお、駐車車両の向こう側に常に歩行者が存在することはなく、また、歩行者が存在したとしても、歩行者は通常、自車両を認識して走行経路上に進出してくることはない。このため、リスク評価指標Rpedの値が閾値以上となったとしても、実際に歩行者と自車両の干渉が発生することは極めて希である。
【0039】
図5は、リスク評価指標Rpedの値が所定の閾値以上となる領域の一例を、車速V、進行方向距離dlong、横方向距離dlatをパラメータとして表した三次元グラフである。図5において、縦軸が車速V、横軸が横方向距離dlat、奥行き方向の軸が進行方向距離dlongを夫々表しており、グラフの曲面の上側が、リスク評価指標Rpedの値が所定の閾値以上となる領域になる。
【0040】
図5に示すように、車速Vが極めて低い領域では、リスク評価指標Rpedの値が所定の閾値以上となることはなく、車速Vが高くなるにつれてリスク評価指標Rpedが閾値以上となる領域が広くなる。また、横方向距離dlatは、距離が短いほどリスク評価指標Rpedが閾値以上となる領域が広くなり、所定の値以上ではリスク評価指標Rpedが閾値以上となることはない。さらに、進行方向距離dlongは、距離が長いほどリスク評価指標Rpedが閾値以上となる領域が狭くなるが、また、距離が短い領域でも閾値以上となる領域が狭くなっている。これは、歩行者が干渉点Cに到達する前に、自車両が干渉点Cを通り過ぎてしまうためである。
【0041】
次に、図6乃至図9を参照して、実際の走行において算出されたリスク評価指標Rpedの一例を説明する。
図6は、健常者及び軽度の機能低下状態にある患者が車両を運転し、駐車車両を追い越したときの横方向距離の一例を示すグラフである。図7は、健常者及び軽度の機能低下状態にある患者が車両を運転し、駐車車両を追い越したときの自車両の速度の一例を示すグラフである。図8は、図6及び図7に示した走行について算出されたリスク評価指標Rpedの値の一例を示すグラフである。
【0042】
図6において、横軸は自車両と駐車車両の進行方向距離dlongを示しており、進行方向距離dlong=0[m]が、自車両が干渉点Cに到達した時点に相当する。また、図6の縦軸は自車両と駐車車両の横方向距離dlatを示している。図6に示すように、実線で示す健常者1、及び破線で示す健常者2は、駐車車両に近づくと、自車両と駐車車両の間の横方向距離dlatを長く取り、駐車車両から離れた位置で駐車車両を追い越している。これに対し、図6に一点鎖線で示す軽度の機能低下状態にある患者では、全体に自車両と駐車車両の横方向距離dlatが短く、駐車車両の近くを通り過ぎている。また、患者では、駐車車両に近づく際、横方向距離dlatにふらつきがみられる。
【0043】
図7は、図6に示した走行における自車両の速度V[km/h]を縦軸に示しており、横軸は自車両と駐車車両の進行方向距離dlongを示している。図7に示すように、実線で示す健常者1、及び破線で示す健常者2は、比較的速い車速Vで駐車車両を追い越している。これに対し、一点鎖線で示す患者では、健常者1、健常者2に比べ、低い速度で駐車車両を追い越している。
【0044】
図8は、図6及び図7に示した走行に対して計算されたリスク評価指標Rpedの値を縦軸に示し、横軸は自車両と駐車車両の進行方向距離dlongを示している。即ち、図6及び図7に示した進行方向距離dlong、横方向距離dlat、車速Vを数式(1)に示すリスク予測評価モデルに適用して算出されたリスク評価指標Rpedの値を示している(ただし、質量mは所定の定数)。図8に示すように、実線で示す健常者1、及び破線で示す健常者2では、進行方向距離dlongが長い(駐車車両から遠い)段階で僅かにリスク評価指標Rpedが値を有するものの、駐車車両から30m以内に接近すると、リスク評価指標Rpedの値は常に0になっている。これは、駐車車両から十分な横方向距離dlatを確保した上で駐車車両を追い越しているためである。
【0045】
これに対し、図8に一点鎖線で示す患者では、駐車車両に近づくにつれてリスク評価指標Rpedが急上昇しており、進行方向距離dlong約16mにおいてピークに達し、事故に至るリスクが増大している。なお、進行方向距離dlong約10m以下の領域においてリスク評価指標Rpedがゼロになっているのは、自車両と駐車車両との距離が近く、最早歩行者が自車両の走行経路まで到達することがなく干渉が発生しない(干渉発生フラグF=0)ためである。
【0046】
図9は、患者が運転する車両の走行によりリスク評価指標Rpedが最大になった時点における健常者1、2、及び患者が夫々運転している自車両の状態を示す表である。
図9に示すように、患者が運転する車両は、駐車車両に対し進行方向距離dlong=16m、横方向距離dlat=2.5mの地点を、速度21km/hで通過している。この時点において、リスク予測評価モデルを使用して算出されたリスク評価指標Rpedは21225に達している。これに対し、健常者1は駐車車両に対し進行方向距離dlong=16mの地点を、横方向距離dlat=6.5m、速度32km/hで通過しており、リスク評価指標Rpedは0である。また、健常者2は駐車車両に対し進行方向距離dlong=16mの地点を、横方向距離dlat=5.5m、速度44km/hで通過しており、リスク評価指標Rpedは0である。
【0047】
このように、軽度の機能低下状態に陥った患者では、脳の高次機能を発揮した運転ができず、駐車車両を追い越す際にリスク評価指標Rpedが増大する。換言すれば、数式(1)に示すリスク予測評価モデルを使用してリスク評価指標Rpedを算出することにより、運転者が脳の高次機能を発揮した運転をしているか否かを判定することができ、軽い脳卒中等による軽度の機能低下状態を早期に発見することが可能になる。
【0048】
次に、図1及び図10を参照して、本発明の実施形態による運転者状態検出装置1の作用を説明する。
図10は、本発明の実施形態による運転者状態検出装置の作用を示すフローチャートである。図10に示すフローチャートは、本実施形態の運転者状態検出装置1を搭載した車両の走行中、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0049】
まず、図10のステップS1においては、車外カメラ2及びレーダ4(図1)から、検出信号が電子制御ユニット10に入力される。さらに、ステップS1において、電子制御ユニット10は、車外カメラ2から入力された画像の解析、及びレーダ4からの入力信号に基づいて、自車両前方の走行経路の近傍(道路の路肩等)に存在する駐車車両等の静止物を検出する。なお、走行経路の近傍とは、歩行者等が側方から自車両の走行経路上に進出してくる可能性がある所定の範囲を意味する。
【0050】
次に、ステップS2においては、自車両前方の走行経路の近傍に駐車車両等の静止物が検出されたか否かが判断される。駐車車両等の静止物が検出された場合にはステップS3に進み、検出されていない場合には、図10に示すフローチャートの1回の処理を終了する。
【0051】
ステップS3においては、電子制御ユニット10に入力された各センサからの入力信号に基づいて、自車両の速度V、自車両から駐車車両までの進行方向距離dlong、自車両と駐車車両の間の横方向距離dlatを取得、又は算出する。なお、自車両の速度Vは、自車両の走行状態を直接検出する車速センサ6によって取得することもできるが、例えば、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量等の、運転者の運転操作を検出するセンサの検出値等を使用して算出することもできる。同様に、進行方向距離dlong、横方向距離dlatについても、車外カメラ2によって取得された画像の他、運転者の運転操作を検出するセンサの検出値等を使用して算出することもできる。従って、運転者の運転操作を検出するセンサや、自車両の走行状態を検出するセンサは、自車両の挙動(速度V、進行方向距離dlong、横方向距離dlat等)を検出する自車挙動センサとして機能させることができる。
【0052】
次に、ステップS4においては、数式(1)に示すリスク予測評価モデルに基づいて、電子制御ユニット10に備えられたリスク評価指標算出部10a(図1)により、リスク評価指標Rpedが算出される。即ち、リスク評価指標算出部10aは、車外カメラ2によって検出された駐車車両等の向こう側から、自車両の走行経路上に進出してくる歩行者等と、自車両が干渉するリスクを算出する。即ち、ステップS3において求められた自車両の走行状態である自車両の速度V、進行方向距離dlong、及び横方向距離dlatが、数式(1)に示すリスク予測評価モデルに適用され、リスク評価指標Rpedが算出される。なお、自車両の質量mとして、リスク評価指標算出部10aに予め記憶されている所定の値が計算に使用される。
【0053】
さらに、ステップS5においては、電子制御ユニット10に備えられた異常判定部10b(図1)により、ステップS4において算出されたリスク評価指標Rpedと所定の閾値が比較される。ステップS5において、リスク評価指標Rpedが所定の閾値未満である場合には、ステップS6において運転者は正常(健常者)であると判断され、図10に示すフローチャートの1回の処理を終了する。一方、ステップS5において、リスク評価指標Rpedが所定の閾値以上である場合には、ステップS7において運転者は異常(軽度の機能低下状態)であると判断され、ステップS8に進む。
【0054】
ステップS8においては、運転者の支援が実行される。具体的には、電子制御ユニット10から警報装置12(図1)に制御信号が送られ、スピーカ(図示せず)から、運転者に安全な場所に自車両を停車させるよう促す音声が出力される。また、これと同時に、運転者が軽度の機能低下状態に陥っている虞があるため、安全な場所に自車両を停車させるよう促すメッセージがディスプレイ(図示せず)に表示される。また、リスク評価指標Rpedが所定の閾値以上となる走行が繰り返されている場合には、電子制御ユニット10は自動運転制御部14(図1)に信号を送り、自動運転により自車両を安全な場所に停車させる。また、スピーカからの音声及びディスプレイの表示により、運転者が軽度の機能低下状態に陥っている虞があるため、自車両が自動運転に切り替えられた旨が報知される。
【0055】
本発明の実施形態の運転者状態検出装置1によれば、自車両の走行状態である(速度V、進行方向距離dlong、横方向距離dlat等)に基づいて、リスク評価指標算出部10aにより、リスク予測評価モデル(数式(1))を使用してリスク評価指標Rpedが算出される(図10のステップS4)。さらに、異常判定部10bにおいて、リスク評価指標Rpedと所定の閾値を比較することにより(図10のステップS5)、運転者の異常の有無が判定される。このため、運転者が脳の高次機能を発揮しているか否かを判定することが可能となり、軽度の機能低下状態に陥っている運転者の異常を、早期に発見することができる。
【0056】
また、本実施形態の運転者状態検出装置1によれば、リスク評価指標算出部10aが、自車両の速度V、駐車車両等の静止物との間の進行方向の距離dlong、及び駐車車両等の静止物との間の横方向距離dlatに基づいて(図2)、リスク予測評価モデル(数式(1))によりリスク評価指標Rpedを算出する。このため、少数のパラメータに基づいて、少ない計算量で有意なリスク評価指標Rpedを算出することができる。
【0057】
さらに、本実施形態の運転者状態検出装置1によれば、リスク評価指標Rpedの値が、静止物との間の進行方向の距離の2乗に反比例するので(数式(1)の分母)、駐車車両等の静止物との間の距離が近づくにつれて急激にリスク評価指標Rpedが増大する。このため、通常の運転者によって知覚されるリスクの度合いに即したリスク評価指標Rpedを得ることができる。
【0058】
また、本実施形態の運転者状態検出装置1によれば、歩行者等の仮想物体と自車両の干渉が発生する仮想的な干渉点C(図4)において自車両がもつ運動エネルギーに比例するようにリスク評価指標Rpedの値が算出されるので(数式(1)の分子)、歩行者等と自車両の干渉のリスクを適正に評価することができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、リスク予測評価モデルとして、数式(1)に示したものが使用されているが、運転者による脳の高次機能が発揮されているか否かを判定することができる任意のリスク予測評価モデルを使用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 運転者状態検出装置
2 車外カメラ(静止物検出センサ)
4 レーダ
6 車速センサ(自車挙動センサ)
10 電子制御ユニット
10a リスク評価指標算出部
10b 異常判定部
12 警報装置
14 自動運転制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10