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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】被覆電線の処理方法と処理設備
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/30 20220101AFI20240326BHJP
   B09B 3/35 20220101ALI20240326BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20240326BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20240326BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20240326BHJP
   B09B 101/15 20220101ALN20240326BHJP
【FI】
B09B3/30
B09B3/35 ZAB
B09B3/40
C22B1/00 601
C22B7/00 E
B09B101:15
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020087567
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021181058
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 憲史
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/080509(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/011798(WO,A1)
【文献】特開2020-077625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線が被覆樹脂によって覆われている被覆電線の処理方法であって、該被覆電線をアルカリの共存下、非燃焼雰囲気下で低温加熱して上記被覆樹脂を脆化させる脆化工程と、該脆化工程の後に上記被覆電線を破砕する破砕工程と、破砕された被覆電線に含まれる金属類と樹脂類とを分別する第一分別工程と、分別された金属類をさらに金属線片と端子片とに分別する第二分別工程を有し、金属線の素線径が0.5mm以下の被覆電線について、該被覆電線を上記破砕工程において4~8mmの大きさに破砕し、上記第二分別工程において、目開き0.5~0.8mmの篩を用いて篩分けすることによって金属線片と端子片とに分別することを特徴とする被覆電線の処理方法。
【請求項2】
上記脆化工程の雰囲気が、過熱水蒸気雰囲気、窒素雰囲気、炭酸ガス雰囲気、これらの混合雰囲気、または大気下であり、上記低温加熱の温度が180℃~270℃である請求項1に記載する被覆電線の処理方法。
【請求項3】
被覆電線にアルカリ粉末を添加する手段と、アルカリ粉末の共存下で被覆電線を低温加熱して被覆樹脂を脆化する加熱炉と、加熱処理した被覆電線を破砕する破砕機と、破砕した被覆電線に含まれる金属類と樹脂類を分別する第一分別手段と、分別した金属類に含まれる金属線片と端子片とを分別する第二分別手段を有し、金属線の素線径が0.5mm以下の被覆電線について、該被覆電線を上破砕機において4~8mmの大きさに破砕し、上記第二分別手段において、目開き0.5~0.8mmの篩を用いて篩分けすることによって金属線片と端子片とに分別することを特徴とする被覆電線の処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆電線から金属線と被覆樹脂を分離し、さらに金属線片と端子片とを効率よく分別する処理方法と処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
被覆電線は、導電体である金属線が塩化ビニル樹脂などの絶縁性の被覆樹脂で覆われた形状を有しており、自動車の電装部分、家電製品、通信機器、コンピュータなど、各種電気機器の基本的な構成部材として幅広く用いられている。このような各種電気機器の廃棄に伴って多量の廃被覆電線が生じている。被覆電線には導電体の金属線として銅線などが用いられているので、廃被覆電線から銅線など金属線を回収して再資源化している。しかし、被覆電線では、金属線が被覆樹脂によって覆われているため、金属線を回収して再資源化するには、金属線と被覆樹脂を効率よく分離する必要がある。
【0003】
また、被覆電線にはコネクタ(ハウジング、端子)や保護具(コルゲートチューブ、グロメット)等が接続しており、被覆電線から金属線を回収する場合にはこれらの異材を取り除く必要がある。特に端子は真鍮(黄銅)等の金属で製造されており、金属線(銅線やアルミ線)と物理物性(比重など)の差が小さいため、一般的な物理選別方法によって端子を完全に取り除くのは難しい。
【0004】
被覆電線の処理方法として、以下の方法が従来から知られている。
(イ) 被覆電線を細かく剪断して銅線から被覆樹脂を剥離し、次いで、裁断した極細銅線と被覆樹脂を湿式比重分離して銅線を回収する方法(特許文献1)。
(ロ) 被覆樹脂を燃焼し、この燃焼残渣を機械的に除去して銅線を回収する方法(特許文献2)。
(ハ) 被覆電線を非酸化性雰囲気下で加熱処理して被覆樹脂を炭化し、この炭化物を分離して銅線を回収する方法(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-089358号公報
【文献】特開昭61-143529号公報
【文献】特許05134719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の処理方法は、被覆電線を細かく剪断し、剪断時の機械的な圧力によって金属線から被覆樹脂を剥離させた後に、金属線と被覆樹脂とを湿式比重分離している。この方法は、被覆電線を非常に細かく裁断する必要があり、破砕機の刃を痛めやすく、破砕時間が長くなるために処理効率に劣る。また、金属線の破砕片に被覆樹脂の破砕片が混在しやすく、しかも銅等の金属線片と真鍮製等の端子片の比重差が小さいため、破砕した金属類にこれらが混在し、回収した銅線の品位が低下するという問題がある。このため、回収銅線の品位を高めるには、予め真鍮製等の端子を人手で取り除く必要があり、破砕処理前の処理に手間がかかる。
【0007】
特許文献2の処理方法は、被覆樹脂を燃焼して除去するので、被覆樹脂をほぼ完全に取り除くことができるが、酸化性雰囲気で加熱するため、導電体の金属の一部が酸化し、金属品位が低下する問題があった。また、被覆樹脂に含まれる塩化ビニル樹脂の熱分解によって腐食性の塩化水素ガスが発生するため、処理装置や配管が腐食しやすく、排出ガスの処理が煩雑になる問題があった。加えて、有害なダイオキシン類が生成するおそれがあった。
【0008】
特許文献3の処理方法は、ダイオキシンの発生を抑制するために、被覆電線を油中ないし非酸素条件下で加熱して被覆樹脂を炭化する。被覆電線の金属線は酸化が防止される。しかし、被覆電線を油中で加熱すると、金属線表面に油が付着して金属品位を低下させる問題があり、また非酸素条件下での加熱では被覆樹脂の炭化が不十分になる問題がある。また、特許文献3の処理方法では、油中にアルカリ性物質を共存させておくことによって、生成する塩化水素などを除去して残留塩素濃度を低減し、加熱時間を短縮することが示されているが、このような油中加熱においても上記問題は解決されない。また、被覆電線を油中ないし非酸素条件下で加熱して被覆樹脂を炭化する場合は、工程が長くなり経済性を損なう場合が多い。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、従来の処理方法の上記問題を解決したものであり、被覆電線を非常に細かく剪断することによって金属線と被覆樹脂を分離するのではなく、また被覆樹脂を燃焼して除去するのではなく、従来の方法よりも効率よく短時間で金属線と被覆樹脂を分離し、しかも真鍮製等の端子片の混入が少なく回収銅線の品位が高い被覆電線の処理方法および処理設備を提供する。
【0010】
本発明は以下の構成からなる被覆電線の処理方法および処理設備である。
〔1〕金属線が被覆樹脂によって覆われている被覆電線の処理方法であって、該被覆電線をアルカリの共存下、非燃焼雰囲気下で低温加熱して上記被覆樹脂を脆化させる脆化工程と、該脆化工程の後に上記被覆電線を破砕する破砕工程と、破砕された被覆電線に含まれる金属類と樹脂類とを分別する第一分別工程と、分別された金属類をさらに金属線片と端子片とに分別する第二分別工程を有し、金属線の素線径が0.5mm以下の被覆電線について、該被覆電線を上記破砕工程において4~8mmの大きさに破砕し、上記第二分別工程において、目開き0.5~0.8mmの篩を用いて篩分けすることによって金属線片と端子片とに分別することを特徴とする被覆電線の処理方法。
〔2〕上記脆化工程の雰囲気が、過熱水蒸気雰囲気、窒素雰囲気、炭酸ガス雰囲気、これらの混合雰囲気、または大気下であり、上記低温加熱の温度が180℃~270℃である上記[1]に記載する被覆電線の処理方法。
〔3〕被覆電線にアルカリ粉末を添加する手段と、アルカリ粉末の共存下で被覆電線を低温加熱して被覆樹脂を脆化する加熱炉と、加熱処理した被覆電線を破砕する破砕機と、破砕した被覆電線に含まれる金属類と樹脂類を分別する第一分別手段と、分別した金属類に含まれる金属線片と端子片とを分別する第二分別手段を有し、金属線の素線径が0.5mm以下の被覆電線について、該被覆電線を上破砕機において4~8mmの大きさに破砕し、上記第二分別手段において、目開き0.5~0.8mmの篩を用いて篩分けすることによって金属線片と端子片とに分別することを特徴とする被覆電線の処理設備。
【0011】
〔具体的な説明〕
以下、本発明の処理方法を具体的に説明する。
本発明の処理方法は、金属線が被覆樹脂によって覆われている被覆電線の処理方法であって、該被覆電線をアルカリの共存下、非燃焼雰囲気下で低温加熱して上記被覆樹脂を脆化させる脆化工程と、該脆化工程の後に上記被覆電線を破砕する破砕工程と、破砕された被覆電線に含まれる金属類と樹脂類とを分別する第一分別工程と、分別された金属類をさらに金属線片と端子片とに分別する第二分別工程を有し、金属線の素線径が0.5mm以下の被覆電線について、該被覆電線を上記破砕工程において4~8mmの大きさに破砕し、上記第二分別工程において、目開き0.5~0.8mmの篩を用いて篩分けすることによって金属線片と端子片とに分別することを特徴とする被覆電線の処理方法である。

【0012】
〔被覆電線〕
一般に被覆電線は銅線などの金属線に塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂などの絶縁性樹脂が被覆して形成されており、コネクタ(ハウジング、端子)や保護具(コルゲートチューブ、グロメット)などが接続している。本発明の処理方法はこのような被覆電線について、金属線の素線径が約0.5mm以下のものに適用することができる。被覆電線は長いので粗破砕して処理しやすい大きさにすると良い。粗破砕機として、剪断式破砕機(一軸式破砕機、二軸式破砕機、カッターミル)などを用いることができる。ここで被覆電線および被覆電線に接続しているハウジング、コルゲートチューブ、グロメットなどが粗く粉砕される。
【0013】
〔脆化工程〕
本発明の処理方法は、アルカリを共存させて被覆電線を非燃焼雰囲気下で低温加熱することによって、被覆樹脂を脆化させる脆化工程を有する。アルカリを共存させて加熱することによって被覆樹脂を脆化させることができる。これは、アルカリによって被覆樹脂に含まれる可塑剤が分解して樹脂の脆化が促進されると考えられる。被覆樹脂を脆化させることによって、後段の破砕工程で被覆電線を微細に破砕しなくても被覆電線から被覆樹脂を容易に剥離することができる。
【0014】
アルカリ共存下の加熱処理によって、アルカリは被覆樹脂である塩化ビニル樹脂などの熱分解により発生した塩化水素(HCl)を捕捉し、排ガスに含まれる塩化水素の量を大幅に低減することができる。さらに、アルカリは樹脂が変質して生成するタールを物理的に吸着するため、タールによる配管閉塞や処理物の塊状化を抑制することができる。
【0015】
アルカリは、例えば、アルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、または炭酸塩、あるいは、これらの混合物を用いることができる。具体的には、水酸化カルシウム(消石灰)、酸化カルシウム(生石灰)、炭酸カルシウムなどを用いることができる。また、都市ゴミの焼却飛灰、産廃を焼却した煤塵、セメント工場の塩素バイパスダストを脱塩洗浄したものなどを利用することができ、また、これらの混合物を用いることができる。アルカリは粉末でも良く、懸濁液あるいは水溶液でも良い。アルカリの添加量は被覆電線の約1/5重量~約2/3重量であればよい。
【0016】
上記脆化工程は被覆樹脂を燃焼させずに脆化させる工程であり、そのため被覆電線を、アルカリの共存下で、非燃焼雰囲気下で低温加熱する。非燃焼雰囲気は過熱水蒸気雰囲気、窒素雰囲気、炭酸ガス雰囲気、これらの混合雰囲気が好ましい。これらの雰囲気は非酸化性雰囲気であるので金属線が酸化され難い。被覆樹脂が燃焼しなければ大気下での加熱でもよい。なお、被覆樹脂の脆化には過熱水蒸気が最も効果的であると共に過熱水蒸気は比熱が大きく温度管理が容易であるため好ましい。
【0017】
上記脆化工程での加熱温度は180℃以上~270℃以下が好ましく、200℃~250℃の温度がより好ましい。加熱温度が180℃未満では被覆樹脂の脆化が十分に進まない。一方、加熱温度が270℃を超えると、被覆樹脂の熱分解ガスの発生量が多くなるので排ガス処理が煩雑になり、また運転コストが増大するので好ましくない。該脆化工程の加熱は上記温度範囲の低温加熱であるので、塩化ビニル樹脂などは燃焼しない。また金属の酸化は殆ど進行しない。さらに、加熱温度が低いので運転コストを削減できる。熱源には工場の廃熱を利用することができる。
【0018】
加熱装置として、バッチ式の定置炉、あるいはロータリーキルンのような連続式の加熱炉などを用いることができる。加熱時間は、例えば、処理量(被覆電線量+アルカリ量)2kgについて50分~90分程度でよい。
【0019】
上記脆化工程で添加したアルカリ粉末の残留物は、次の破砕工程の前に被覆電線から分離しておくのが好ましい。粉末状のアルカリは篩分けによって被覆電線から容易に分離することができる。また、被覆電線の部品には鉄やケイ素鋼板などの磁着物が含まれる場合があり、これらは破砕機の刃を痛める原因となるので、次の破砕工程の前に磁力選別によって取り除くのが好ましい。
【0020】
〔破砕工程〕
本発明の処理方法は上記脆化工程後に被覆電線を破砕する破砕工程を有する。該破砕工程において、脆化した被覆樹脂は細かく砕けるので、金属線から容易に剥離することができる。上記脆化工程で加熱された被覆電線を室温まで冷却して破砕すれば、脆化した樹脂が冷却硬化するので、さらに破砕し易くなるので好ましい。
【0021】
このように、脆化した被覆樹脂は剥離しやすい状態になっているので、被覆電線を例えば4~8mm程度の大きさに破砕することによって、被覆樹脂を金属線から容易に剥離することができる。従来のナゲット処理のように被覆電線を細かく破砕する必要はない。ナゲット処理では、被覆電線を微細に破砕することによって被覆電線から被覆樹脂が剥離されるが、破砕時に端子片も微細となるため、金属線片と端子片の粒度差が小さくなり、篩分けによって両者を分離することが困難になる。
【0022】
一方、本発明の処理方法では、被覆電線を微細に破砕せずに、例えば4~8mm程度の大きさに破砕することによって、金属線片(素線径0.5mm以下)と端子片(数mm以上)の粒度差が大きくなり、後段の第二分別工程で篩分けによって金属線片と端子片を分別することが可能になる。
【0023】
具体的には、被覆電線を約8mm以下に破砕することによって、脆化した被覆樹脂が金属線から容易に剥離する。また、約4mm以上に破砕することによって次工程の分別処理において、破砕粒度の差が大きな金属線片と端子片とを容易に分別することができる。この破砕処理によって、被覆電線に取り付けられているコネクタ(ハウジング、端子)や保護具(コルゲートチューブ、グロメット)も破砕されて分離される。
【0024】
破砕方法は、剪断破砕、衝撃破砕、またはその両方を行うと良い。破砕機として、剪断式破砕機(一軸式破砕機、二軸式破砕機、カッターミル)、衝撃式破砕機(ハンマークラッシャ、ボールミル、ロッドミル)などを用いることができる。
【0025】
脆化工程と破砕工程を同時に行っても良い。例えば、炉内に破砕媒体を有する加熱炉を用い、非燃焼雰囲気下で、180℃~270℃に低温加熱し、機械的な衝撃を加えながら加熱することによって、被覆樹脂の脆化と破砕が同時に進むので、短時間に低コストで処理を行うことができる。
【0026】
具体的には、例えば、ロータリーキルンのような加熱炉の炉内にボールやロッド等の破砕媒体を入れて加熱処理すれば良い。破砕媒体の材質はセラミック、鉄やSUS等の金属を用いればよい。このような破砕媒体は被覆電線への熱伝導を促すので、効率よく被覆樹脂の脆化を進めることができる。また、ロータリーキルンのレトルト内にリフターや攪拌羽根を設ければ、破砕媒体がより流動して破砕が促進するのでさらに好ましい。なお、被覆電線がロータリーキルンのレトルトと共に回転され、自重による落下を繰り返して破砕されるときは、落下による衝撃が加わるので炉内に破砕媒体を入れなくても破砕処理することができる。
【0027】
〔第一分別工程〕
本発明の処理方法は上記破砕工程の後に、破砕された被覆電線に含まれている金属類と樹脂類を分別する第一分別工程を有する。上記破砕工程において、被覆電線は概ね各材料に単体分離されるので、物理選別によって金属類(金属線片や端子片)と樹脂類(被覆樹脂やゴムなど)とに分離することができる。
【0028】
これらの金属類と樹脂類は比重差が大きいので、物理選別方法として、例えば比重選別によって金属類と樹脂類に分離することができる。比重選別機としては、乾式比重選別機(風力選別機、エアテーブルなど)や湿式比重選別機(薄流選別装置、浮沈選別装置など)を用いることができる。該比重選別は事前に振動篩などによって粒度を揃えることにより、選別精度を向上することができる。また、物理選別を複数段に設けることで選別精度を高めることができる。例えば、風力選別機で粗選別した後にエアテーブルで選別することによって、選別精度を高めることができる。
【0029】
〔第二分別工程〕
本発明の処理方法は上記第一分別工程の後に、金属類に含まれる金属線片と端子片を分別する第二分別工程を有する。第一分別工程で分別した金属類を、目開き約0.5~0.8mm程度の篩を用いて金属線片と端子片とに分別することができる。通常、金属線片は線径が0.5mm以下であり、被覆樹脂が剥離した金属線片は目開き約0.5~0.8mmの篩を通過する。一方、端子片は上記破砕工程において主に4mm以上に破砕されるので、目開き約0.5~0.8mmの篩を通過せずに篩上に残る。この粒度差を利用して金属線片と端子片とを分別することができる。
【0030】
篩の目開きが0.5mm未満であると、金属線片が篩上に残留し、金属線の収率が低下する。一方、篩の目開きが0.8mmより大きいと、端子片の一部が篩下に移行するので、金属線の品位が低下する。篩分けの手段は、例えば円型振動篩や振動スクリーンを用いることができる。篩目の形状は限定されない。角孔でもよく、長孔でもよく、他の形状でもよい。なお、細長い金属線に対しては長孔の篩が適しており、効率よく篩分けでき、目詰まりが少ないので好ましい。例えば、幅0.8mm×長さ10mmの長孔の篩が好適である。
【0031】
本発明の処理方法は、アルカリ共存下での低温加熱によって、被覆樹脂を燃焼させずに脆化させるので、排ガスが殆ど発生しないか排ガス量が大幅に少ないので、後段の排ガス処理が容易になる。具体的には、本発明の処理方法では、加熱処理による樹脂の揮発を10%以下に抑制することができる。また、本発明の処理方法は被覆樹脂を効率よく剥離することができ、例えば被覆樹脂の80%以上を剥離することができる。
【0032】
〔装置構成〕
上記処理方法を実施する処理設備は、被覆電線にアルカリ粉末を添加する手段と、アルカリ粉末の共存下で被覆電線を低温加熱して被覆樹脂を脆化する加熱炉と、加熱処理した被覆電線を破砕する破砕機と、破砕した被覆電線に含まれる金属類と樹脂類を分別する手段と、分別した金属類に含まれる金属線片と端子片とを分別する手段を有する。
【0033】
本発明の処理設備の一例を図2に示す。
図示する処理設備は、被覆電線10を粗破砕する粗破砕機(二軸破砕機)11が設けられている。該粗破砕機11の次には加熱炉(ロータリーキルン)12が設けられており、該粗破砕機11と加熱炉12の間にアルカリ粉末の投入手段13が設けられている。粗破砕された被覆電線10に投入手段13によってアルカリ粉末が添加された後に、加熱炉12に導入され、脆化工程の加熱処理が行われる。加熱炉12の次には振動篩14が設けられており、加熱処理して脆化した被覆電線10は加熱炉12から排出されて振動篩14に導入され、アルカリ粉末の残留物が篩下に落下される。さらに、振動篩14の次には磁力選別機15が設けられており、振動篩14に残った被覆電線10は磁力選別機15に導入され、鉄製部品などの磁着物が選別除去される。
【0034】
磁力選別機15の次には破砕機(カッターミル)16が設けられており、磁力選別機15から排出された被覆電線10は破砕機16に導かれて破砕工程が行われ、被覆電線が破砕されると共に脆化した被覆樹脂が剥離される。破砕機16の次には風力選別機17が設けられており、破砕機16から排出された被覆電線の破砕物は風力選別機17に導入される。該風力選別機17によって第一分別工程が行われ、破砕された被覆電線に含まれる金属類と樹脂類とが比重差によって選別され、軽産物の樹脂類と重産物の金属類に分別される。風力選別機17の次にはエアテーブル18が設けられており、風力選別機17から排出された金属類に残留している樹脂類がエアテーブル18によってさらに分別される。
【0035】
エアテーブル18の次には振動スクリーン19が設けられている。振動スクリーン19の篩目は例えば約0.5~0.8mm程度であり、この振動スクリーン19によって第二分別工程が行われ、エアテーブル18から排出された金属類に含まれる金属線片と端子片とが振動スクリーン19の篩目に応じて分別される。
【発明の効果】
【0036】
本発明の処理方法は、アルカリ共存下の加熱処理によって被覆樹脂を脆化して効率よく金属線から剥離することができる。また、被覆樹脂を燃焼させないので腐食性の塩化水素ガスやダイオキシン類の発生を抑制することができ、発生するガス量が少なく、排ガス処理が容易であり、燃料コストを低減することができる。
【0037】
本発明の処理方法は非燃焼雰囲気での低温加熱であるので、金属線である銅線などを酸化せずに回収することができ、回収金属の品位を高めることができる。また、被覆樹脂を燃焼せずに回収することができ、回収した被覆樹脂は燃料代替等に有効活用することができる。
【0038】
本発明の処理方法は、例えば、金属線の素線径が0.5mm以下の被覆電線を端子が接続した状態で処理することができ、脆化した被覆電線を破砕工程において約4~8mmの大きさに破砕し、第二分別工程において、篩目が約0.5~0.8mm程度の篩を用いて金属線片と端子片とに容易に分別することができる。このため、真鍮製等の端子片が銅線の金属線片に混入し難く、高品位の金属線片(銅線)を回収することができる。
【0039】
本発明の処理方法において、破砕工程の破砕物の粒度および第二分別工程の篩目の大きさは、被覆電線の金属線の素線径に応じて設定すればよい。例えば、金属線の素線径が1Dmmであるとき、破砕工程において被覆電線を例えば約20Dmm~25Dmmの大きさに破砕し、第二分別工程において篩目が約2Dmm~3Dmmの篩を用いることによって、金属線片と端子片とに分別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の処理方法の概略工程図。
図2】本発明の処理方法を実施する処理設備の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
〔実施例1〕
被覆電線(銅線に塩化ビニル樹脂が被覆されている)を図2に示す処理設備を用いて処理した。最初に該被覆電線を二軸破砕機11に入れて約5cm以下に粗破砕し、粗破砕した被覆電線に消石灰[Ca(OH)]を加えて加熱炉12に入れ、過熱水蒸気雰囲気下で、150℃~300℃に60分間加熱した(脆化工程)。一部の試料は消石灰を加えずに加熱した。次いで、加熱炉12から取り出して室温まで冷却した後に、振動篩14に導いてアルカリ粉末の残留分を分離し、さらに磁力選別機15に入れて鉄等の磁着物を取り除いた。その後、カッターミル16に入れて4~8mm程度に破砕した(破砕工程)。この結果を表1に示した。表中の樹脂揮発率(X)は次式[1]による値である。樹脂剥離率(Y)は次式[2]による値である。
X%=[(C-D)/C]×100%・・・[1]
(Cは加熱前の被覆電線の重量、Dは加熱後の被覆電線の重量)
Y%=(1-M/L)×100%・・・[2]
(Mは破砕処理後の回収物中の未剥離樹脂の重量、Lは破砕処理前の被覆樹脂の重量)
【0042】
表1の試料No.1~3(以下、試料番号はNo.を省略)に示すように、消石灰を加えた被覆電線を180℃~250℃に加熱処理したものは、樹脂剥離率は91%~98%であり、被覆樹脂の大部分を剥離することができ、また樹脂の揮発率は10%以下であって、熱分解ガスの発生が少ない。一方、消石灰を加えずに加熱処理した試料6、および加熱温度が150℃の試料4は樹脂の除去率が小さく、加熱温度が300℃の試料5は樹脂の揮発率が大きい。
【0043】
【表1】
【0044】
〔実施例2〕
実施例1の試料2について、磁着物を取り除いたものをカッターミル16に入れて2~20mmの大きさに破砕した(破砕工程)。この破砕物を風力選別機17に入れて樹脂類と金属類に分別し、さらにエアテーブル18に入れて残留樹脂類と金属類に分別した。該エアテーブル18で回収された金属類を振動スクリーン19に入れて、上記金属類に含まれる銅線片と端子片に分別した。破砕粒度(破砕機のスクリーン目開き)による樹脂剥離率(Y)の結果を表2に示す。振動スクリーンの篩目と回収された銅線片の不純物量の結果を表3に示す。
【0045】
表2および表3に示すように、脆化した被覆電線を約4~8mm程度の破砕粒度にすることによって、樹脂の剥離率(Y)を97%以上に高めることができ、かつ、亜鉛やスズなどの不純物が少ない銅線片を回収することができる。一方で、破砕粒度2mmの場合、樹脂の剥離率は99%と非常に高いが、回収された銅線片に亜鉛やスズなどの端子片由来の不純物が多く混入してしまう。破砕粒度が10mm以上の場合、樹脂の剥離率が低下してしまう。また、表3に示すように、振動スクリーンの篩目を0.5~0.8mmの範囲に設定することによって、端子片の混入を抑制することが出来るので、亜鉛やスズなどの不純物が少ない銅線片を回収することができる。なお、振動スクリーンの篩目が0.3mm程度になると、素線径0.3~0.5mmの銅線がスクリーンを通過できずに端子片と共に篩上に残るので、銅線を分別して回収できなくなる。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【符号の説明】
【0048】
10-被覆電線、11-粗破砕機、12-加熱炉、13-投入手段、14-振動篩、15-磁力選別機、16-破砕機、17-風力選別機、18-エアテーブル、19-振動スクリーン。
図1
図2