IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材料 図1
  • 特許-可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材料 図2
  • 特許-可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材料 図3
  • 特許-可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材料 図4
  • 特許-可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材料 図5
  • 特許-可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材料 図6
  • 特許-可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材料 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材料
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20240326BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20240326BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61M1/36 165
B01J20/26 H
B01J20/28 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020531669
(86)(22)【出願日】2020-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2020017183
(87)【国際公開番号】W WO2020218291
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2019084877
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 薫
(72)【発明者】
【氏名】中西 恵
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-345022(JP,A)
【文献】特開平05-131028(JP,A)
【文献】特開2004-358256(JP,A)
【文献】特表平08-502534(JP,A)
【文献】国際公開第2008/038785(WO,A1)
【文献】特開2006-288571(JP,A)
【文献】特開2009-178523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
B01J 20/26
B01J 20/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面多孔性の水不溶性高分子材料を含み、
示差走査熱量計により測定される融点の分布から求めた湿潤状態の前記水不溶性高分子材料の表面の細孔径分布曲線において、ピーク半径が1~80nmであり、
前記水不溶性高分子材料のpH7.4におけるゼータ電位が、-15~15mVであり、
前記水不溶性高分子材料の形状は、繊維、粒子又はフィルムである、可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材料。
【請求項2】
前記水不溶性高分子材料の形状は、繊維径が25~65μmの繊維又は粒子径が25~65μmの粒子である、請求項1記載の吸着材料。
【請求項3】
前記水不溶性高分子材料の中心を含む長手方向に垂直な断面において、非多孔部分の面積をA1とし、多孔部分の面積をA2とした場合に、以下の式(1)で求められる非多孔部分の面積の割合Bが10%以上90%以下である、請求項1又は2記載の吸着材料。
B=A1/(A1+A2)×100 ・・・式(1)
【請求項4】
前記ピーク半径は、1~30nmである、請求項1~3のいずれか一項記載の吸着材料。
【請求項5】
前記水不溶性高分子材料の細孔体積は、0.6~1.2cm/gである、請求項1~4のいずれか一項記載の吸着材料。
【請求項6】
前記水不溶性高分子材料の表面に、アミノ基を含むリガンドが結合している、請求項1~5のいずれか一項記載の吸着材料。
【請求項7】
前記水不溶性高分子材料は、ポリスチレン、ポリエチレン又はポリプロピレンを主成分として含む、請求項1~6のいずれか一項記載の吸着材料。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項記載の吸着材料を備える、吸着カラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材料に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor)は、血液内に存在するサイトカインの一種であり、細胞障害、抗ウイルス活性等の免疫上重要な役割を果たす物質である。この腫瘍壊死因子に対するレセプターである腫瘍壊死因子受容体は通常細胞膜中に存在し、腫瘍壊死因子受容体における細胞外領域がTumor Necrosis Factor-α convertaseにより酵素反応的に切断されると、可溶性腫瘍壊死因子受容体1(以下、sTNFR1)、可溶性腫瘍壊死因子受容体2(以下、sTNFR2)等の可溶性腫瘍壊死因子受容体が血液中や尿中に遊離することが知られている。
【0003】
可溶性腫瘍壊死因子受容体は、腫瘍壊死因子と結合しその活性を抑制することが知られている。また、可溶性腫瘍壊死因子受容体は、一般炎症、敗血症、急性呼吸窮迫症候群、C型肝炎、癌、白血病、心房細動、心不全、悪液質、自己免疫疾患等の病態で血液中に出現するバイオマーカーの一つとして知られており、その生理活性等について研究されている。
【0004】
例えば、非特許文献1では、可溶性腫瘍壊死因子受容体は、腫瘍壊死因子と結合して腫瘍壊死因子活性を抑制することから、血液中に遊離した可溶性腫瘍壊死因子受容体を除去することが可能であれば、腫瘍壊死因子由来の抗腫瘍活性、抗微生物活性を向上させることに繋がる可能性があると報告されている。
【0005】
特許文献1には、患者(例えば、癌患者)の血液等から、sTNFR1、sTNFR2及び可溶性インターロイキン2受容体(以下、sIL2R)を除去する方法及びシステムが開示されており、それらを吸着するために、sTNFR1、sTNFR2及びsIL2Rに対する抗体等を固定化した材料が開示されている。
【0006】
特許文献2には、水不溶性担体にlogP(Pはオクタノール-水系での分配係数)値が2.5以上の化合物(例えば、ヘキサデシルアミン等)を固定した可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材が開示されている。
【0007】
一方、特許文献3には、血液分散液から白血球及びサイトカインを吸着又は除去する水不溶性材料を内蔵することを特徴とする吸着器が開示されている。その材料は、孔径1μm以上100μm以下の孔の孔容積率が30%未満であり、親水性アミン残基が結合していること、そして、水不溶性材料の繊維径は、5μm以上20μm以下であることが好ましいとされている。
【0008】
特許文献4には、血液の濡れ性に優れ、且つ、血液又は血漿の処理時にキニンの上昇を起こさない血液処理用の吸着材として、排除限界分子量が50,000以上10,000,000以下である高分子からなる水不溶性担体表面に不要物質との結合性を有する官能基を有してなる吸着材であって、表面の総荷電量が-30μeq/g以上であることを特徴とする血液処理用の吸着材が開示されている。
【0009】
特許文献5には、血液中の顆粒球、単球及びサイトカインを吸着する吸着材が開示されている。その材料表面のゼータ電位は、-20mV以上10mV以下とすることが好ましく、吸着材が繊維形状の場合、実用上の観点からその繊維径は、4μm以上20μm以下であることが好ましいとされている。
【0010】
特許文献6には、リガンドに含まれるアミノ基およびアミド基の導入量を規定することで、サイトカイン及び活性化白血球-活性化血小板複合体を吸着する吸着材が開示されている。
【0011】
特許文献7には、材料表面の展開長さ比や粗さを規定することで活性化白血球-活性化血小板複合体を吸着する吸着材が開示されている。
【0012】
特許文献8には、繊維径と多孔性を最適化することで吸着カラムの圧力損失を抑制する吸着材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特表2008-511340号公報
【文献】特開2009-178523号公報
【文献】特開2007-202634号公報
【文献】特開平6-007430号公報
【文献】特開2006-312804号公報
【文献】国際公開第2018/047929号
【文献】国際公開第2018/225764号
【文献】国際公開第2020/026698号
【非特許文献】
【0014】
【文献】笠倉新平ら、サイトカイン・ケモカインの全て、日本医学館、2004年、第三版、p.279-298
【文献】TOSOH SEPARATION REPORT N0.113、p.1
【文献】吉田文武ら、化学工学と人工臓器、共立出版、1997年、第二版、p.187
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献2では、吸着性能や選択性の観点で水不溶性担体は水不溶性多孔質担体であって、水不溶性多孔質担体の排除限界分子量を20000Da以上100000Da未満が好ましいとしているが、上限である100000Daは、次の方法で換算すると半径が0.5nm程度の細孔であり、可溶性腫瘍壊死因子受容体の半径は2nm程度と見積もれるため、可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材として適切ではないと考えられる。ここで、排除限界分子量100000Daの材料が有する細孔半径は、抗体と結合する材料表面に有する細孔径と排除限界分子量の関係から換算した(非特許文献2)。可溶性腫瘍壊死因子受容体の半径は、可溶性腫瘍壊死因子受容体が約20000Daであることから、その分子量とストークス半径の関係から換算した(非特許文献3)。
【0016】
また、特許文献2において、多孔構造を有する水不溶性担体は、表面多孔性よりも全多孔性が好ましいと記載されているが、全多孔性の場合は、材料の引っ張り強度が低下することによる材料自体の破断を誘発する懸念があるため、安全性の観点で品質管理が煩雑となる可能性がある。なお、担体に固定する化合物としては、n-ヘキサデシルアミン(CH(CH15NH;Σf=7.22)のみが実施例で示されており、ポリアミン誘導体については何ら開示されていない。また、材料表面近傍の電荷等については一切開示も示唆もない。
【0017】
特許文献3において、孔とは、血球が通過する流路を形成するために材料を貫通しているものであり、繊維と繊維との隙間等を含むものであると記載されている。つまり、材料表面に形成された細孔については言及していない。そして、その孔径としては1μm以上100μm以下の孔の孔容積率が30%未満であり、100μm以上の孔がより多く存在することが好ましいとされており、材料表面に形成されたナノオーダーの細孔については言及していない。なお、サイトカインの一つとして腫瘍壊死因子-αについて例示されているが、サイトカインや血球成分とは異なる可溶性腫瘍壊死因子受容体については一切開示も示唆もない。
【0018】
特許文献4では、血漿蛋白質や血漿中の様々な成分との結合性の観点で排除限界分子量を規定し、キニンの生成性制御の観点で表面の総荷電量を規定した材料設計がなされているが、可溶性腫瘍壊死因子受容体や該受容体と材料表面の状態の関係については一切開示も示唆もない。
【0019】
特許文献5には、サイトカインや血球成分とは異なる可溶性腫瘍壊死因子受容体や、該受容体と材料表面の状態の関係については一切開示も示唆もない。なお、実施例において、吸着材の繊維径が10μmから17μmになると、好中球や単球等の血球成分の吸着率が大きく低下することが開示されていることから、特許文献5に記載の吸着材を用いてサイトカインと血球成分を除去する場合には、吸着材の繊維径は数μm程度が適切と考えられる。
【0020】
特許文献6~8には、可溶性腫瘍壊死因子受容体や、該受容体と材料表面の状態の関係については一切開示も示唆もなく、可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着に適した材料設計もなされていない。
【0021】
そこで本発明は、可溶性腫瘍壊死因子受容体を高効率に吸着する材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着効率を向上させるためには、材料表面の状態を可溶性腫瘍壊死因子受容体の特性に合わせて設計することが重要と考え、鋭意検討を進めた結果、材料表面の状態の中でも材料表面の細孔のピーク半径とゼータ電位が重要であることを見出し、両者を適切な範囲に制御することで、可溶性腫瘍壊死因子受容体を効率的に吸着できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0023】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]を包含する。
[1] 表面多孔性の水不溶性高分子材料を含み、
示差走査熱量計により測定される融点の分布から求めた湿潤状態の上記水不溶性高分子材料の表面の細孔径分布曲線において、ピーク半径が1~80nmであり、
上記水不溶性高分子材料のpH7.4におけるゼータ電位が、-15~15mVであり、
上記水不溶性高分子材料の形状は、繊維、粒子又はフィルムである、可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材料。
[2] 上記水不溶性高分子材料の形状は、繊維径が25~65μmの繊維又は粒子径が25~65μmの粒子である、上記[1]記載の吸着材料。
[3] 上記水不溶性高分子材料の中心を含む長手方向に垂直な断面において、非多孔部分の面積をA1とし、多孔部分の面積をA2とした場合に、以下の式(1)で求められる非多孔部分の面積の割合Bが10%以上90%以下である、上記[1]又は[2]記載の吸着材料。
B=A1/(A1+A2)×100 ・・・式(1)
[4] 上記ピーク半径は、1~30nmである、上記[1]~[3]のいずれかに記載の吸着材料。
[5] 上記水不溶性高分子材料の細孔体積は、0.6~1.2cm/gである、上記[1]~[4]のいずれかに記載の吸着材料。
[6] 上記水不溶性高分子材料の表面に、アミノ基を含むリガンドが結合している、上記[1]~[5]のいずれかに記載の吸着材料。
[7] 上記水不溶性高分子材料は、ポリスチレン、ポリエチレン又はポリプロピレンを主成分として含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の吸着材料。
[8] 上記[1]~[7]のいずれかに記載の吸着材料を備える、吸着カラム。

【発明の効果】
【0024】
本発明の吸着材料は、可溶性腫瘍壊死因子受容体を高効率に除去することができるため、体外循環用の担体として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】細孔径分布曲線におけるピーク半径を説明するための図である。
図2】本発明の吸着材料の一例について、中心を含む長手方向に垂直に切断した断面図(繊維形状)である。
図3】本発明の吸着材料の一例について、中心を含む長手方向に垂直に切断した断面図(真球粒子形状)である。
図4】本発明の吸着材料の一例について、中心を含む長手方向に垂直に切断した断面図(楕円体粒子形状)である。
図5】本発明の吸着材料の一例について、中心を含む長手方向に垂直に切断した断面図(フィルム形状)である。
図6】本発明の吸着材料の一例について、中心を含む長手方向に垂直に切断した断面図(繊維形状又は粒子形状)での、多孔部分の面積A2と非多孔部分の面積A1を説明するための図である。
図7】本発明の吸着材料の一例について、中心を含む長手方向に垂直に切断した断面図(フィルム形状)での、多孔部分の面積A2と非多孔部分の面積A1を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0027】
本発明の可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材料は、表面多孔性の水不溶性高分子材料を含み、示差走査熱量計により測定される融点の分布から求めた上記水不溶性高分子材料の表面の細孔径分布曲線において、ピーク半径が1~80nmであり、上記水不溶性高分子材料のpH7.4におけるゼータ電位が、-15~15mVであり、上記水不溶性高分子材料の形状は、繊維、粒子又はフィルムであることを特徴としている。
【0028】
「可溶性腫瘍壊死因子受容体」とは、可溶化(soluble)されて、血液中や尿中に遊離される腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor)の受容体であり、可溶性腫瘍壊死因子受容体(sTNFR)としては、可溶性腫瘍壊死因子受容体1(sTNFR1)、可溶性腫瘍壊死因子受容体2(sTNFR2)の2種類を意味する。本発明の吸着材料は、sTNFR1、sTNFR2の両者を吸着する材料である。
【0029】
「吸着材料」とは、特定の物質を吸着することができ、容易に剥離しない性質をもつ材料のことを意味する。吸着の原理には特に制限はないが、例えば、静電相互作用、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力等の分子間力によって吸着する材料を意味する。
【0030】
「表面多孔性」とは、細孔が材料の表面に存在し、細孔が材料を貫通していない状態を意味する。表面多孔性の材料は、材料の全体に細孔を有する全多孔性の材料と比較して、物質移動が速く達成され、強度を保持できる点で優れていると考えられる。
【0031】
「水不溶性高分子材料」とは、水に不溶な高分子材料である。ここで、水に不溶とは、水不溶性高分子材料を水に入れる前後の乾燥重量変化が1重量%以下であることを意味する。この乾燥重量変化は水不溶性高分子材料を水不溶性高分子材料の乾燥重量の9倍量の37℃の水に1時間浸漬した後に当該水不溶性高分子材料をピンセット等で引き上げ、水不溶性高分子材料を50℃以下で恒量になるまで真空乾燥させた後に残った固形分の乾燥重量の、浸漬前の水不溶性高分子材料の乾燥重量に対する割合である。水への不溶化がされていない高分子材料は、実際に使用する場合に高分子材料からの溶出物が多くなる危険性があり、安全上好ましくない。
【0032】
水不溶性高分子材料の材質としては、水不溶性であって、高分子であれば、その化学構造や物理構造は特に限定されるものではなく、例えば、アリール基や水酸基等の炭素カチオンとの反応性を有する官能基を繰り返し構造中に含む高分子材料、例えば、ポリ(芳香族ビニル化合物)、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン若しくはポリビニルアルコール等の合成高分子又はセルロース、コラーゲン、キチン、キトサン若しくはデキストラン等の天然高分子が挙げられる。これらの高分子は、単独重合体若しくは共重合体、ブレンド、又は、アロイ化して用いてもよい。特に血液浄化用には、水酸基を有さない高分子材料である、ポリ(芳香族ビニル化合物)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリスルホン及びポリエーテルスルホンからなる群から選択される1種以上のポリマーを含むことが好ましく、ポリスチレン、ポリエチレン又はポリプロピレンを主成分として含むことがより好ましい。中でも単位重量あたりの芳香環の数が多く、フリーデルクラフツ反応等で各種官能基や反応性官能基を導入しやすいことから、ポリスチレンを主成分として含むことが特に好ましい。ここで、主成分とは、水不溶性高分子材料を構成する成分のうち最も含有量が多い成分を意味する。水不溶性高分子材料が海島型複合繊維形状の場合、例えば、海成分がポリスチレン又はポリスチレンとポリプロピレンとを混練したアロイであり、島成分がポリプロピレン又はポリエチレンのいずれか一種類以上を含むものが挙げられる。なお、これら水不溶性高分子材料は、一般に購入することができるか又は公知の方法で製造できる。
【0033】
また、水不溶性高分子材料は、表面処理をする前の水不溶性高分子材料だけでなく、水不溶性高分子材料に対して表面処理をしたもの、例えば、リガンドの導入反応等を施した後の水不溶性高分子材料も含む。
【0034】
「示差走査熱量計」とは、Differential Scanning Calorimetry(以下、DSCとも称する。)とも呼ばれ、近年、湿潤した状態のサンプルの細孔分布を測定する装置として用いられている。DSCから細孔を測定する原理は、ナノサイズの細孔に閉じ込められた氷の融点が、通常のバルク氷(融点:0℃)に比べて低下することから、この現象を利用して、DSC曲線の融点の分布から細孔径分布を示すことができる。具体的には、細孔径分布は、DSC曲線の融点の分布からIshikiriyamaらの方法(JOURNAL OF COLLOID AND INTERFACE SCIENCE、1995年、171巻、p.92-102)に従って算出することができる。なお、試料中に水溶性の不純物等が含まれる場合は、不純物による水の融点降下が生じてしまうため、細孔径分布解析は適用不可となることがあるので、水溶性の不純物がない状態で測定に供する必要がある。DSCの測定条件は以下の通りである。
【0035】
DSC装置 : TA Instruments 社製 DSC Q100
測定温度範囲 : 約-55℃~5℃
昇温速度 : 0.3℃/min
試料量 : 約6mg(DSC曲線は5mgに規格化して図示)
試料容器 : アルミニウム製密閉型試料容器
温度・熱量校正 : 純水(融点 0.0℃、融解熱量 79.7cal/g)
サンプルの前処理: 過剰な表面付着水(バルク水)を除去
【0036】
細孔径分布曲線におけるピーク半径とは、図1に示すように、上記に示すDSCにより測定した細孔径分布(横軸:細孔半径、縦軸:水不溶性高分子材料の湿潤重量1gあたりの細孔体積)をプロットした細孔径分布曲線において、水不溶性高分子材料の湿潤重量1gあたりの細孔体積が最大値を示す細孔の半径を意味する。
【0037】
sTNFRの吸着効率を向上させるには、水不溶性高分子材料の表面に形成された細孔径がsTNFRの大きさに対して適切に制御されていることが重要である。そこで、sTNFRが水不溶性高分子材料の細孔内に効率的に内包されれば吸着効率が向上するとの考えのもと検討を行った結果、適切な大きさの細孔を高い頻度で細孔の表面に形成させることで、sTNFRの吸着効率を向上させることができることを見出した。
【0038】
水不溶性高分子材料の表面の細孔のピーク半径は、sTNFRの吸着量と侵入のしやすさから、1nm以上である必要があり、sTNFRの選択的な吸着を達成する観点から80nm以下である必要がある。つまり、水不溶性高分子材料の表面の細孔のピーク半径は1~80nmである必要があり、好ましくは1~30nmであり、より好ましくは1~20nmであり、さらに好ましくは3~20nmである。
【0039】
水不溶性高分子材料の表面の細孔は、例えば、水不溶性高分子材料の表面を親水化し、膨潤させることによって、形成させることができる。例えば、水不溶性高分子材料の表面に酸性官能基又は塩基性官能基を含むリガンドを固定化することで表面を親水化し、膨潤させることによって、表面に細孔を形成することができる。ここで、水不溶性高分子材料の表面への上記リガンドの固定化反応に用いる溶媒としては、ニトロベンゼンが好適に使用される。さらに、水不溶性高分子材料の表面を親水化し、膨潤させた後に、その水不溶性高分子材料をアルコールに浸漬させることによっても、表面に細孔を形成させることができる。ここでいうアルコールとは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。また、アルコール浸漬時の温度によっても細孔の大きさを制御でき、吸着能を高めるという観点で、20~60℃が好ましく、30~50℃がより好ましい。また、アルコールに浸漬する時間によっても細孔の大きさを制御でき、吸着能を高めるという観点で、5~60分が好ましく、20~40分がより好ましい。なお、前述の特許文献6~8の実施例において、クロロアセトアミドメチル化編地作製時のメタノールの浸漬温度や浸漬時間の記載はない。
【0040】
水不溶性高分子材料の表面の細孔のピーク半径は、水不溶性高分子材料のポリマー種類や複数のポリマーのブレンド、又は、アロイ化の条件により制御することができる。例えば、ポリスチレンとポリプロピレンのアロイの比率を変えることで上記細孔のピーク半径を制御することができる。
【0041】
「ゼータ電位」とは、電気二重層中のすべり面と界面から充分に離れた部分との間の電位差のことを意味する。本願でいうゼータ電位とは、pH7.4、温度20±5℃の条件下で電気泳動方法を用いて測定した値を意味する。
【0042】
表面処理を行っていない、ポリスチレン、ポリエチレンやポリプロピレン等の水不溶性高分子材料は、ゼータ電位としてはマイナスの値を持ち、概ね-30mV程度である。ゼータ電位を-15mV以上に制御する方法の一つとしては、水不溶性高分子材料の表面に特定の官能基(例えば、酸性官能基又は塩基性官能基)を含むリガンドを固定化する方法が挙げられる。検討の結果、ゼータ電位を-15mV以上にすると、sTNFRと水不溶性高分子材料表面の静電相互作用が向上することを見出し、一方で、ゼータ電位を15mV以上にすると赤血球に悪影響を与える懸念があるため、ゼータ電位は、-15~15mVである必要があり、好ましくは-10~12mVであり、より好ましくは-4~10mVである。上記のピーク半径とゼータ電位の好ましい態様は任意に組み合わせることができる。
【0043】
水不溶性高分子材料の形状としては、繊維、粒子又はフィルムが好適に用いられる。吸着材料として使用することを考えると、比表面積が大きく、柔軟に変形可能で取り扱い性に優れる繊維形状、特に海島型複合繊維形状が好ましい。中でも、海成分がポリスチレンであり、島成分がポリプロピレンである、海島型複合繊維形状が好ましい。また使用する際の吸着材料の充填や液体の流路の均一性を考慮すると、繊維形状の中でも、織物、不織布や編地形状が好ましい。可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材料は、少なくとも一部に水不溶性高分子材料を含むものであればよく、水不溶性高分子材料単独であってもよいし、水不溶性高分子材料に適当な補強材を固定化したもの又は混合したものであってもよい。固定化又は混合の操作は、形状に加工する前に行ってもよいし、加工した後に行ってもよい。
【0044】
「繊維径」とは、水不溶性高分子材料を構成している織物、不織布又は編地を形成する繊維の小片サンプル10個をランダムに採取して、走査型電子顕微鏡を用いて写真をそれぞれ撮影し、各写真あたり10箇所(計100箇所)の繊維の直径を測定した値の平均値をいう。このときの観察倍率は繊維径が写真長辺の長さの30~80%の範囲となる倍率とする。また、複数繊維が束となっているマルチフィラメントの場合は、マルチフィラメントを構成する単糸の直径を繊維径とする。
【0045】
水不溶性高分子材料の形状が繊維である場合は、当該繊維の繊維径としては、止血に必要な血小板の吸着を抑制する観点からは、25μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましい。また、sTNFRの吸着のために繊維の比表面積を確保する観点からは、65μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。つまり、当該繊維の繊維径としては、25~65μmが好ましく、30~50μmがより好ましい。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。
【0046】
「粒子径」とは、水不溶性高分子材料を構成している粒子を形成するビーズ等の小片サンプル10個をランダムに採取して、走査型電子顕微鏡を用いて写真をそれぞれ撮影し、各写真あたり10箇所(計100箇所)の粒子の直径を測定した値の平均値をいう。このときの観察倍率は粒子径が写真長辺の長さの30~80%の範囲となる倍率とする。
【0047】
水不溶性高分子材料の形状が粒子である場合は、当該粒子の粒子径としては、血小板の吸着を抑制する観点からは、25μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましい。また、sTNFRの吸着のために粒子の比表面積を確保する観点からは、65μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。つまり、当該粒子の粒子径としては、25~65μmが好ましく、30~50μmがより好ましい。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。また、圧力損失の増大を引き起こさない等の理由から、粒径分布は狭い方が好ましい。
【0048】
水不溶性高分子材料の中心を含む長手方向に垂直方向の断面(図2~7)において、非多孔部分の面積をA1とし、多孔部分の面積をA2とした場合に、下記式(1)に従って非多孔部分の面積の割合Bを求めることができる。その方法は、断面を四酸化ルテニウム染色凍結超薄切片法により前処理を行い、透過型電子顕微鏡EM-1400Plus(日本電子社製)により、加速電圧100kVの条件化で水不溶性高分子材料の中心を含む長手方向に垂直の断面を8000倍の倍率でランダムに観察し、断面画像を100点撮影する。撮影した断面画像において、非多孔部分の面積A1と多孔部分の面積A2との判別は、断面画像に存在する材料表面の細孔で判断することができる。非多孔部分の面積A1とは、10nm未満の細孔が存在する領域の面積及び細孔が存在しない領域の面積の和とし、多孔部分の面積A2とは、10nm以上の細孔が存在する領域の面積とする。なお、断面に2成分以上の水不溶性高分子材料が配置される場合の非多孔部分の面積A1と多孔部分の面積A2との境界は、断面に配置される各成分(例えば、海成分と島成分)の境界を用いることとする。その場合、10nm未満の細孔が存在する成分の面積及び細孔が存在しない成分の面積の和を非多孔部分の面積A1とし、10nm以上の細孔が存在する成分の面積を多孔部分の面積A2として算出する。面積の算出は、画像編集ソフト(Photoshop Elements.14.0 Adobe社製)を用いて算出することができる。
【0049】
図2は、水不溶性高分子材料が繊維形状の場合の中心を含む長手方向に垂直な断面を示した図の例である。中心は、長手方向に対して垂直方向の断面上の2本の中心線(7)が交わる点(4)とした。図3は真球の粒子形状、図4は楕円体の粒子形状、図5はフィルム形状につき、図2と同様に、中心を含む長手方向に垂直方向の断面を示した図の例である。なお、図3のように粒子が真球の場合、長手方向という概念はないため、中心を含む断面であればよい。得られた断面の画像解析の一例を図6又は図7に示す。細孔径10nm未満の非多孔部分(12)(細孔が存在しない領域を含む。)の面積の和をA1とし、細孔径10nm以上の多孔部分(11)の面積の和をA2として、以下の式(1)で示す非多孔部分の面積の割合Bを求めることができる。
B=A1/(A1+A2)×100 ・・・式(1)
【0050】
上記断面において、非多孔部分の面積の割合Bが小さすぎると、材料の強度が低下し吸着材料として形態を保持できない観点から、非多孔部分の面積の割合Bは10%以上であることが好ましく、一方で非多孔部分の面積の割合Bが大きすぎると吸着性能を発揮できない観点から90%以下であることが好ましい。つまり、非多孔部分の面積の割合Bは、10~90%であることが好ましく、20~80%がより好ましく、30~70%がさらに好ましい。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。
【0051】
「細孔体積」とは、DSCにより測定される融点の分布から求めた水不溶性高分子材料1g当たりの細孔体積を意味する。DSCによる細孔体積の測定方法は、上述の細孔を測定する方法と同様であり、DSC曲線の融点の分布からIshikiriyamaらの方法(JOURNAL OF COLLOID AND INTERFACE SCIENCE、1995年、171巻、p.92-102)に従って細孔体積を算出することができる。
【0052】
水不溶性高分子材料の細孔体積が小さすぎると吸着性能が十分に向上できないため、当該細孔体積は、0.06cm/g以上であることが好ましく、一方、上記細孔体積が大きすぎるとsTNFRの選択的な吸着特性が得られない観点から、1.2cm/g以下であることが好ましい。つまり、水不溶性高分子材料の細孔体積は、0.06~1.2cm/gが好ましく、0.3~1.2cm/gであることがより好ましい。さらに、水不溶性高分子材料の細孔体積を0.6~1.2cm/gとすることで、体外循環開始から2時間後の可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着率が80%以上となることが期待でき、この場合は通院で治療が可能な4時間以内に処置を終えることができるため、患者への負担軽減につながると考えられる。ここで、上記の水不溶性高分子材料の細孔体積と上記の水不溶性高分子材料の繊維径又は粒子径について、好ましい態様を任意に組み合わせることができる。
【0053】
上記の水不溶性高分子材料は、その表面にリガンドが結合していてもよい。本明細書において、「リガンド」とは、水不溶性高分子材料の表面に結合する化合物を意味し、酸性官能基又は塩基性官能基を含んでいればその化学構造は特に制限されるものではなく、例えば、酸性官能基(アニオン性官能基)であるスルホン酸基若しくはカルボキシル基を含む化合物又は塩基性官能基(カチオン性官能基)であるアミノ基を含む化合物が挙げられる。本実施形態において、リガンドとしては、塩基性官能基を含む化合物、特にアミノ基を含む化合物が好ましい。なお、上記官能基は、同一又は異なる官能基を複数組み合わせていてもよい。なお、リガンドは、上記酸性官能基又は塩基性官能基を有していれば、さらに中性官能基を有していてもよく、該中性官能基としては、例えば、メチル基若しくはエチル基等のアルキル基又はフェニル基、アルキル基で置換されたフェニル基(例えば、パラ(p)-メチルフェニル基、メタ(m)-メチルフェニル基、オルト(o)-メチルフェニル基、パラ(p)-エチルフェニル基、メタ(m)-エチルフェニル基又はオルト(o)-エチルフェニル基等)若しくはハロゲン原子で置換されたフェニル基(例えば、パラ(p)-フルオロフェニル基、メタ(m)-フルオロフェニル基、オルト(o)-フルオロフェニル基、パラ(p)-クロロフェニル基、メタ(m)-クロロフェニル基又はオルト(o)-クロロフェニル基等)等のアリ-ル基が、酸性官能基又は塩基性官能基を含む化合物に結合した化合物(例:パラ(p)-クロロフェニル基が結合したテトラエチレンペンタミン)は、リガンドに含まれる。その際、中性官能基とリガンドは、直接結合していても、スペーサーを介して結合していてもよい(当該結合に関与するスペーサーをスペーサー1とも称する。)。当該スペーサー1としては、例えば、尿素結合、アミド結合、ウレタン結合が挙げられる。
【0054】
「アミノ基」とは、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン若しくはドデシルアミン等の1級アミン由来のアミノ基、メチルヘキシルアミン、ジフェニルメチルアミン、ジメチルアミン等の2級アミン由来のアミノ基、アリルアミン等の不飽和アルキル鎖を持つアミン由来のアミノ基、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、フェニルジメチルアミン、ジメチルヘキシルアミン等の3級アミン由来のアミノ基、1-(3-アミノプロピル)イミダゾール、ピリジン-2-アミン、3-スルホアニリン等の芳香環を有するアミン由来のアミノ基又はトリス(2-アミノエチル)アミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、ポリエチレンイミン、N-メチル-2,2’-ジアミノジエチルアミン、N-アセチルエチレンジアミン、1,2-ビス(2-アミノエトキシエタン)等の、アルキル鎖、芳香族化合物、複素環式化合物や単素環式化合物等でアミノ基を2個以上結合させた化合物(以下、「ポリアミン」)由来のアミノ基が挙げられるが、ポリアミン由来のアミノ基であることが好ましく、特に、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン又はテトラエチレンペンタミン由来のアミノ基であることが好ましく、テトラエチレンペンタミン由来のアミノ基がより好ましい。また、アミノ基は、1級アミン又は2級アミン由来のアミノ基であることがより好ましい。また、logP(Pはオクタノール-水系での分配係数)値が2.5未満のアミノ基も好ましく、例えば、テトラエチレンペンタミンも好適に用いられる。
【0055】
水不溶性高分子材料と酸性官能基又は塩基性官能基を含むリガンドとは、直接結合してもよいし、上記水不溶性高分子材料と上記リガンドとの間に反応性官能基由来のスペーサーを介してもよい(当該結合に関与するスペーサーをスペーサー2とも称する)。当該スペーサー2としては、尿素結合、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合等の電気的に中性の化学結合を有しているものであればよく、アミド結合又は尿素結合を有しているものが好ましい。
【0056】
上記水不溶性高分子材料と上記リガンドとの結合を媒介する反応性官能基としては、例えば、ハロアセチル基、ハロアセトアミドメチル基若しくはハロゲン化アルキル基等の活性ハロゲン基、エポキサイド基、カルボキシル基、イソシアン酸基、チオイソシアン酸基又は酸無水物基が挙げられるが、適度な反応性を有する観点から、活性ハロゲン基が好ましく、ハロアセトアミドメチル基がより好ましい。反応性官能基を導入した水不溶性高分子材料の具体的な例としては、クロロアセトアミドメチル基を付加したポリスチレン、クロロアセトアミドメチル基を付加したポリスルホンが挙げられる。
【0057】
反応性官能基は、予め、水不溶性高分子材料と適当な試薬を反応させることで水不溶性高分子材料に結合させることができる。例えば、水不溶性高分子材料がポリスチレンで、反応性官能基がクロロアセトアミドメチル基の場合は、ポリスチレンとN-メチロール-α-クロロアセトアミドを反応させることでクロロアセトアミドメチル基が結合したポリスチレンを得ることができる。クロロアセトアミドメチル基が結合したポリスチレンに対し、例えば、アミノ基を有するテトラエチレンペンタミンを反応させることで、テトラエチレンペンタミンがアセトアミドメチル基を介して結合したポリスチレンが得られる。この場合、アセトアミドメチル基はスペーサー2に相当し、テトラエチレンペンタミンは、リガンドに相当する。また、クロロアセトアミドメチル基が結合したポリスチレンに対し、例えば、アミノ基を有するテトラエチレンペンタミンを反応させ、さらにクロロフェニルイソシアネートを反応させることで、クロロフェニル基が尿素結合したテトラエチレンペンタミンが、アセトアミドメチル基を介して結合したポリスチレンが得られる。水不溶性高分子材料の材質、スペーサー(スペーサー1及びスペーサー2)、リガンドは、任意に組み合わせることができる。リガンドが結合した海成分の例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン又はテトラエチレンペンタミン由来のアミノ基を含む化合物がアセトアミドメチル基を介して結合したポリスチレンやエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン又はテトラエチレンペンタミン由来のアミノ基を含む化合物がアセトアミドメチル基を介して結合したポリスルホンやエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン又はテトラエチレンペンタミン由来のアミノ基を含む化合物がアセトアミドメチル基を介して結合したポリエーテルスルホンが挙げられる。
【0058】
酸性官能基又は塩基性官能基の含量に特に制限はないが、その含量が少なすぎると血液成分等の電荷を有するsTNFRに対する吸着性能を十分に向上させられず、一方で、その含量が多すぎると親水性が向上して水不溶性高分子材料の強度が低下すると考えられるため、水不溶性高分子材料の乾燥重量1g当たりの酸性官能基又は塩基性官能基の含量としては、例えば、0.5~5.0mmolである。
【0059】
上記酸性官能基又は塩基性官能基の含量は、塩酸又は水酸化ナトリウム水溶液を用いた酸塩基滴定法により測定できる。
【0060】
吸着対象となるsTNFRとの相互作用を向上する観点から酸性官能基又は塩基性官能基を含むリガンドが水不溶性高分子材料の表面(特に、海島型複合繊維形状の場合は表面の海成分)に結合していることが好ましい。
【0061】
本実施形態の可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材料は、例えば、体外循環用の吸着カラムの担体や血液製剤製造用のカラムの担体やsTNFRの分離、精製カラムの担体として用いることができる。上記吸着材料を体外循環用の吸着カラムの担体として適用できる患者としては、血液中にsTNFR1、sTNFR2が高濃度で遊離する疾患の患者があれば特に限定はないが、例えば、一般炎症、敗血症、急性呼吸窮迫症候群、C型肝炎、癌、白血病、心房細動、心不全、悪液質、自己免疫疾患等の患者に対して一般的に用いることができる。中でも、敗血症、急性呼吸窮迫症候群、癌等の患者が挙げられる。
【0062】
とりわけ、癌患者は放射線治療や抗癌剤の副作用により免疫が抑制されることから、免疫を抑制する可溶性腫瘍壊死因子受容体を癌患者から高効率に吸着する材料は、癌患者のQOLを改善することも期待できる。癌の中でも白血病、甲状腺癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、食道癌、胃がん、膵臓癌、乳がん、前立腺癌、子宮癌、子宮頸癌、膀胱癌、悪性脳腫瘍、咽頭癌、リンパ節癌等の治療に好適に用いることができる。
【0063】
また、上記吸着担体は、その高い親和性から可溶性腫瘍壊死因子受容体を保持することができるため、可溶性腫瘍壊死因子受容体を他の成分と分離させることができ、他の成分と分離後は、上記吸着担体を所定の溶液で流したり、浸漬させることで吸着担体に保持された可溶性腫瘍壊死因子受容体を吸着担体から脱離させることが可能である。吸着担体に可溶性腫瘍壊死因子受容体を吸着させる方法としては、例えば、上記の吸着材料を注射筒のような容器に充填したり、ミニカラムやマイクロチップに充填した材料を作成し、可溶性腫瘍壊死因子受容体を含む液体をそれらに通液させることや浸漬させることで実施することができる。吸着担体から可溶性腫瘍壊死因子受容体を脱離させる方法としては、例えば、吸着担体にイオン濃度、塩濃度を調整した溶液を通過させることで可能となる。これにより、純度の高い可溶性腫瘍壊死因子受容体を得ることができる。すなわち、可溶性腫瘍壊死因子受容体の精製用の材料としても使用することが可能である。なお、本吸着材料は、イオン、疎水性、分子量、孔径によって分離・精製する他の材料と併用して効果的に分離・精製することも可能である。
【0064】
また、本発明は、上記の吸着材料を用いた、可溶性腫瘍壊死因子受容体の除去方法を提供する。
【0065】
上記の吸着材料を体外循環用の吸着カラムの担体として使用する場合、可溶性腫瘍壊死因子受容体の除去方法の態様の一つとしては、吸着カラムを血液循環装置にセットした血液回路と接続し、患者の血液を循環させることで、患者の血液を浄化し、治療効果を得ることができる。その際、静脈血でも動脈血でも可能である。より具体的には、患者の血液を直接吸着カラムに通し、血液中に含まれる可溶性腫瘍壊死因子受容体を除去する方法(直接血液灌流療法)や、患者の血液を血漿分離器により分離して得られた血漿成分を吸着カラムに通し、血漿成分中に含まれる可溶性腫瘍壊死因子受容体を除去する方法(血漿灌流療法)が挙げられる。これらの方法で浄化した血液等は患者に戻すものである。なお、腎不全の患者では、人工腎臓と併用して吸着カラムを使用することもできる。肺の機能不全の患者では、人工呼吸器や体外式膜型人工肺と併用して使用することもできる。
【0066】
また、可溶性腫瘍壊死因子受容体の除去方法の別の態様としては、上記の吸着材料を用いて血液製剤製造中に産生される可溶性腫瘍壊死因子受容体を血液製剤から除去する方法が挙げられる。ここで、血液製剤とは、全血製剤、濃厚赤血球製剤、血小板製剤、アルブミン製剤、免疫グロブリン製剤、血液凝固因子製剤又は血液凝固因子関連製剤等の輸血に用いられる各種血液製剤のことである。具体的には、献血によって採取された血液から血液製剤を製造するいずれかの工程で、上記の吸着材料を充填した吸着カラムにチューブ、回路ないし血液製剤のバックを接続し、ポンプや振とう機を用いて、血液、血液製剤の中間製品、血液製剤等を吸着カラムに通液させることで、血液、血液製剤の中間製品、血液製剤等に含まれる可溶性腫瘍壊死因子受容体を除去する方法である。また、患者に血液製剤を投与する直前に、上記の吸着材料を充填した吸着カラムに血液製剤を通液させることでも、血液製剤中に含まれる可溶性腫瘍壊死因子受容体を除去することもできる。
【0067】
また。本発明は、上記の吸着材料を備える、吸着カラムを提供する。
【0068】
「吸着カラム」とは、少なくとも液体入口部、ケース部、液体出口部を有しており、ケース部には本発明の可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材料(以下、sTNFR吸着材料とも称する。)を備えるカラムを意味する。カラムとしては、例えば、ラジアルフロー型のカラムが挙げられる。
【0069】
本実施形態の吸着カラムは、液体を通過させることで当該液中からsTNFRを吸着することができることから、sTNFRを含んだ液体から目的とするsTNFRを精製又は除去する用途として用いることができ、例えば特定のsTNFRの分離等に用いることができる。
【0070】
吸着カラムの容器形状としては、sTNFRを含む液体(以下、液体)の入口部及び出口部、ケース部を有する容器で、当該ケース部内にsTNFR吸着材料を充填できる形状であればよい。一つの実施形態としては、sTNFR吸着材料をパイプに巻きつけ、円筒状にしたもの(以下、円筒)を内部に充填できる容器で、液体が円筒の外周より入り円筒の内側へと流れた後に当該液体が容器外に出る容器又は液体が円筒の内側より入り円筒の外側へと流れた後に当該液体が容器外に出る容器が挙げられる。製造効率や処理液のショートパス抑制の観点からは、側面に孔を持つパイプに対してsTNFR吸着材料が巻きつけられている構造が好ましく、具体的には、供給された液体を流出するために設けられた孔を長手方向の側面に備える中心パイプと、上記中心パイプの周りに充填され、上記液体に含まれる標的物質を吸着させるsTNFR吸着材料と、流入してきた上記液体が上記中心パイプの中を通るように上記中心パイプの上流端に連通され、上記液体が上記中心パイプを通過せずに上記sTNFR吸着材料と接触するのを防ぐように配置されたプレートと、上記中心パイプの下流端を封鎖し、上記sTNFR吸着材料を上記中心パイプの周りの空間に固定するように配置されたプレートと、を備えるラジアルフロー型の容器が挙げられ、また、容器の形状は、円柱状又は三角柱状、四角柱状、六角柱状若しくは八角柱状等の角柱状容器が挙げられるが、この構造に限定されるものではない。また別の実施形態としては、sTNFR吸着材料を円形に切り取ったものを充填可能な円筒状の空間を内部に有した容器で、液体導入口及び液体排出口を有した容器が考えられる。具体的には、供給された液体を流出するために設けられた液体導入口を備えるプレートと、供給された液体を排出するために設けられた液体排出口を備えるプレートと、sTNFR吸着材料を円形に切り取ったものが充填された円筒状のケース部を内部に有し、液体導入口及び液体排出口を有した容器が挙げられる。なお、この場合、sTNFR吸着材料の形は円形に限らず、吸着カラムの容器形状に合わせて楕円形、三角形や四角形等の多角形、台形等任意の形状に適宜変更することができる。
【0071】
吸着カラムの容器としては、ガラス製、プラスチック・樹脂製、ステンレス製等のものが挙げられ、容器のサイズは使用目的に応じて適宜選択され、吸着カラムの容器の大きさ等に特に制限はないが、臨床現場や測定場所での操作性・廃棄の容易さを考慮すると、材質としてはプラスチック・樹脂製が好ましく、大きさは手に握りやすい大きさが好ましく、全体の吸着カラムの高さは1cm以上30cm以下、外径は1cm以上10cm以下、内容積は200cm以下であることが好ましい。なお、後述する実施例においては、測定の簡便さから、充填体積0.94cm(内径1cm×高さ1.2cm、外径2cm)の吸着カラムを使用しているが、この限りではない。
【0072】
sTNFR吸着材料は、吸着カラム内に積層されて充填されていることが好ましい。ここで、積層とは、sTNFR吸着材料を2枚以上密着させて重ねることを意味し、積層されて充填する方法としては、例えば、アキシャルフローカラムのようにシート形態に加工したsTNFR吸着材料を複数枚重ねていく方法や、ラジアルフローカラムのように孔を持つパイプにシート形態に加工したsTNFR吸着材料を巻きつけていく方法が挙げられる。
【実施例
【0073】
以下、本発明の可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材料について、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0074】
(繊維Aの作製)
海成分としてポリスチレン、島成分としてポリプロピレンを用いて別々に溶融計量し、1つの吐出孔当たり256の島成分用分配孔が穿設された海島複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させて、海島複合流とし、溶融吐出した。島比率を50重量%に制御し、水不溶性高分子材料の表面から最外島成分までの距離を2μmに調整し、繊維径20μmである海島型複合繊維A(以下、繊維A)を採取した。
【0075】
(繊維Bの作製)
海成分としてポリスチレン、島成分としてポリプロピレンを用いて別々に溶融計量し、1つの吐出孔当たり256の島成分用分配孔が穿設された海島複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させて、海島複合流とし、溶融吐出した。島比率を50重量%に制御し、水不溶性高分子材料の表面から最外島成分までの距離を2μmに調整し、繊維径30μmである海島型複合繊維B(以下、繊維B)を採取した。
【0076】
(繊維Cの作製)
海成分としてポリスチレン、島成分としてポリプロピレンを用いて別々に溶融計量し、1つの吐出孔当たり256の島成分用分配孔が穿設された海島複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させて、海島複合流とし、溶融吐出した。島比率を50重量%に制御し、海島型複合繊維の表面から最外島成分までの距離を2μmに調整し、繊維径60μmである海島型複合繊維C(以下、繊維C)を採取した。
【0077】
(繊維Dの作製)
海成分としてポリスチレン、島成分としてポリプロピレンを用いて別々に溶融計量し、1つの吐出孔当たり256の島成分用分配孔が穿設された海島複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させて、海島複合流とし、溶融吐出した。島比率を50重量%に制御し、海島型複合繊維の表面から最外島成分までの距離を2μmに調整し、繊維径70μmである海島型複合繊維D(以下、繊維D)を採取した。
【0078】
(不織布Eの作製)
特開2006-312804号公報の明細書に記載の方法に従い、36島の海島複合繊維であって、島が更に芯鞘複合である繊維を、以下の成分を用いて、紡糸速度800m/分、延伸倍率3倍の製糸条件で得た。
島の芯成分;ポリプロピレン
島の鞘成分;ポリスチレン90重量%、ポリプロピレン10重量%の割合で混練
海成分;エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とし、共重合成分として5-ナトリウムスルホイソフタル酸3重量%含む共重合ポリエステル
複合比率(重量比);芯:鞘:海=44:44:12
【0079】
上記の36島の海島複合繊維を85重量%と、骨材として直径20μmのポリプロピレンを15重量%の割合で均一に混和し、それらをシート状に加工した。そのシートを、ニードルパンチすることによって不織布を得た。次に、この不織布を90℃の水酸化ナトリウム水溶液で処理することで、芯鞘繊維の直径が5μmで、嵩密度が0.05g/cm(総目付250g/m)の不織布E(以下、不織布E)を採取した。
【0080】
(編地A~Dの作製)
繊維A~Dを用いて、筒編み機(機種名:丸編み機 MR-1、丸善産業株式会社)の度目調整目盛りを調整し、目付けが0.0039g/cm、嵩密度が0.22g/cmの筒編み編地A~D(以下、編地A~D)をそれぞれ作製した。
【0081】
(クロロアセトアミドメチル化編地の作製)
N-メチロール-α-クロロアセトアミド(以下、NMCA)23gをニトロベンゼン310gと98重量%硫酸310gの混合溶液に添加、NMCAが溶解するまで10℃で攪拌して、NMCA溶液とした。次に、ニトロベンゼン20g、98重量%硫酸20gにパラホルムアルデヒド(以下、PFA)2gを添加し、PFAが溶解するまで20℃で攪拌し、PFA溶液とした。PFA溶液42gを5℃に冷却し、NMCA溶液643gに混合、5分間攪拌し、編地Aを10g添加して2時間含浸した。含浸後の編地Aを10℃以下のニトロベンゼン500mL中に浸して反応を停止させた後、当該編地に付着しているニトロベンゼンを40℃に加温したメタノールで30分間浸漬し、クロロアセトアミドメチル化編地Aを作製した。編地Aを編地B~Dに変更した以外はクロロアセトアミドメチル化編地Aの作製方法と同様の手法により、クロロアセトアミドメチル化編地B~Dをそれぞれ作製した。
【0082】
(クロロアセトアミドメチル化不織布の作製)
ニトロベンゼン600mLと98重量%硫酸390mLの混合溶液にPFA3gを20℃で溶解した後、0℃に冷却し、75.9gのN-メチロール-α-クロロアセトアミドを加えて、5℃以下で溶解させた。この混合液に5gの不織布Eを浸し、室温で2時間静置した。その後、不織布を取り出し、該不織布を大過剰の10℃以下のメタノール中に浸漬した。不織布をメタノールで浸漬した後、水洗し、乾燥して、クロロアセトアミドメチル化不織布Eを作製した。
【0083】
(テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地の作製)
テトラエチレンペンタミン(以下、TEPA)の濃度が5mM、トリエチルアミンの濃度が473mMとなるようにそれぞれを500mLのジメチルスルホキシド(以下、DMSO)に溶解した液に、10gの上記クロロアセトアミドメチル化編地Bを浸して40℃で3時間反応させた。該編地をDMSOで3回洗浄した後、パラクロロフェニルイソシアネートの濃度が20mMになるように500mLのDMSOに溶解した液に浸して、30℃で1時間反応させた。その後、反応液から編地を取り出し、反応液と同量のDMSOに浸漬し洗浄、次にメタノールで洗浄、次に水に浸漬し洗浄して、テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地(以下、吸着材料1)を得た。
【0084】
(テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地の作製)
TEPAの濃度が10mM、トリエチルアミンの濃度が473mMとなるようにそれぞれを500mLのDMSOに溶解した液に、10gの上記クロロアセトアミドメチル化編地Bを浸して40℃で3時間反応させた。該編地をDMSOで3回洗浄した後、パラクロロフェニルイソシアネートの濃度が20mMになるように500mLのDMSOに溶解した液に浸して、30℃で1時間反応させた。その後、反応液から編地を取り出し、反応液と同量のDMSOに浸漬し洗浄、次にメタノールで洗浄、次に水に浸漬し洗浄して、テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地(以下、吸着材料2)を得た。
【0085】
(テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地の作製)
TEPAの濃度が20mM、トリエチルアミンの濃度が473mMとなるようにそれぞれを500mLのDMSOに溶解した液に、10gの上記クロロアセトアミドメチル化編地Bを浸して40℃で3時間反応させた。該編地をDMSOで3回洗浄した後、パラクロロフェニルイソシアネートの濃度が20mMになるように500mLのDMSOに溶解した液に浸して、30℃で1時間反応させた。その後、反応液から編地を取り出し、反応液と同量のDMSOに浸漬し洗浄、次にメタノールで洗浄、次に水に浸漬し洗浄して、テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地(以下、吸着材料3)を得た。
【0086】
(テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地の作製)
TEPAの濃度が30mM、トリエチルアミンの濃度が473mMとなるようにそれぞれを500mLのDMSOに溶解した液に、10gの上記クロロアセトアミドメチル化編地Bを浸して40℃で3時間反応させた。該編地をDMSOで3回洗浄した後、パラクロロフェニルイソシアネートの濃度が20mMになるように500mLのDMSOに溶解した液に浸して、30℃で1時間反応させた。その後、反応液から編地を取り出し、反応液と同量のDMSOに浸漬し洗浄、次にメタノールで洗浄、次に水に浸漬し洗浄して、テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地(以下、吸着材料4)を得た。
【0087】
(テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地の作製)
TEPAの濃度が40mM、トリエチルアミンの濃度が473mMとなるようにそれぞれを500mLのDMSOに溶解した液に、10gの上記クロロアセトアミドメチル化編地Bを浸して40℃で3時間反応させた。該編地をDMSOで3回洗浄した後、パラクロロフェニルイソシアネートの濃度が20mMになるように500mLのDMSOに溶解した液に浸して、30℃で1時間反応させた。その後、反応液から編地を取り出し、反応液と同量のDMSOに浸漬し洗浄、次にメタノールで洗浄、次に水に浸漬し洗浄して、テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地(以下、吸着材料5)を得た。
【0088】
(テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地の作製)
TEPAの濃度が30mM、トリエチルアミンの濃度が473mMとなるようにそれぞれを500mLのDMSOに溶解した液に、10gの上記クロロアセトアミドメチル化編地Cを浸して40℃で3時間反応させた。該編地をDMSOで3回洗浄した後、パラクロロフェニルイソシアネートの濃度が20mMになるように500mLのDMSOに溶解した液に浸して、30℃で1時間反応させた。その後、反応液から編地を取り出し、反応液と同量のDMSOに浸漬し洗浄、次にメタノールで洗浄、次に水に浸漬し洗浄して、テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地(以下、吸着材料6)を得た。
【0089】
(テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地の作製)
TEPAの濃度が2.5mM、トリエチルアミンの濃度が473mMとなるようにそれぞれを500mLのDMSOに溶解した液に、10gの上記クロロアセトアミドメチル化編地Bを浸して40℃で3時間反応させた。該編地をDMSOで3回洗浄した後、パラクロロフェニルイソシアネートの濃度が20mMになるように500mLのDMSOに溶解した液に浸して、30℃で1時間反応させた。その後、反応液から編地を取り出し、反応液と同量のDMSOに浸漬し洗浄、次にメタノールで洗浄、次に水に浸漬し洗浄して、テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地(以下、吸着材料7)を得た。
【0090】
(テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地の作製)
TEPAの濃度が50mM、トリエチルアミンの濃度が473mMとなるようにそれぞれを500mLのDMSOに溶解した液に、10gの上記クロロアセトアミドメチル化編地Bを浸して40℃で3時間反応させた。該編地をDMSOで3回洗浄した後、パラクロロフェニルイソシアネートの濃度が20mMになるように500mLのDMSOに溶解した液に浸して、30℃で1時間反応させた。その後、反応液から編地を取り出し、反応液と同量のDMSOに浸漬し洗浄、次にメタノールで洗浄、次に水に浸漬し洗浄して、テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地(以下、吸着材料8)を得た。
【0091】
(テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地の作製)
TEPAの濃度が30mM、トリエチルアミンの濃度が473mMとなるようにそれぞれを500mLのDMSOに溶解した液に、10gの上記クロロアセトアミドメチル化編地Aを浸して40℃で3時間反応させた。該編地をDMSOで3回洗浄した後、パラクロロフェニルイソシアネートの濃度が20mMになるように500mLのDMSOに溶解した液に浸して、30℃で1時間反応させた。その後、反応液から編地を取り出し、反応液と同量のDMSOに浸漬し洗浄、次にメタノールで洗浄、次に水に浸漬し洗浄して、テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地(以下、吸着材料9)を得た。
【0092】
(テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地の作製)
TEPAの濃度が30mM、トリエチルアミンの濃度が473mMとなるようにそれぞれを500mLのDMSOに溶解した液に、10gの上記クロロアセトアミドメチル化編地Dを浸して40℃で3時間反応させた。該編地をDMSOで3回洗浄した後、パラクロロフェニルイソシアネートの濃度が20mMになるように500mLのDMSOに溶解した液に浸して、30℃で1時間反応させた。その後、反応液から編地を取り出し、反応液と同量のDMSOに浸漬し洗浄、次にメタノールで洗浄、次に水に浸漬し洗浄して、テトラエチレンペンタミン-パラクロロフェニル化編地(以下、吸着材料10)を得た。
【0093】
(ヘキサデシル基をリガンドとする粒子の取り出し)
ヘキサデシル基をリガンドとするセルロース粒子を吸着体とする吸着型血液浄化器「リクセル」(登録商標;株式会社カネカ社製)を解体して、カラム内部に充填されている粒子(以下、吸着材料11)を取り出した。
【0094】
(ジメチルオクチルアンモニウム化不織布の作製)
N,N-ジメチルオクチルアミン50gとヨウ化カリウム8gを360mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶かした溶液に、クロロアセトアミドメチル化不織布Eを5g浸し、85℃のバス中で3時間加熱した。該不織布をイソプロパノールで洗浄後、1mol/Lの食塩水に浸漬した後、水洗して、ジメチルオクチルアンモニウム化不織布(以下、吸着材料12)を得た。
【0095】
(吸着材料1のピーク半径の算出)
水に含浸された吸着材料1を約6mg、DSC測定の直前に取り出し、過剰な表面付着水を除去してから、吸着材料1をアルミニウム製密封型試料容器に封入した。次に、DSC Q100(TA Instruments社製)を用い、湿潤状態のまま-55℃に急冷し、5℃まで0.3℃/分で昇温させて示差走査熱量を測定し、ピークトップ温度を融点として、DSC曲線を得た。なお、温度、熱量校正は純水を用いた。得られたDSC曲線から、Ishikiriyamaらの方法(JOURNAL OF COLLOID AND INTERFACE SCIENCE、1995年、171巻、p.92-102)に従い、細孔径分布曲線を作成した。細孔径分布曲線とは、横軸は細孔半径、縦軸は湿潤した吸着材料1gあたりの細孔体積をプロットしたものである。ここで、ピーク半径とは、上記細孔径分布曲線において、凍結乾燥した吸着材料1gあたりの細孔体積が最大値をとる細孔半径を意味する。吸着材料1のピーク半径を表1に示す。
【0096】
(吸着材料1のゼータ電位の測定)
水に含浸させた吸着材料1をゼータ電位の測定直前に取り出し、過剰な表面付着水を除去した。ゼータ電位の測定は、固体表面分析用ゼータ電位測定装置SurPASSTM(アントンパール社製)を用いて測定した。ゼータ電位の値は、pH7.4、温度20±5℃条件化での測定した値を採用した。吸着材料1のゼータ電位を表1に示す。
【0097】
(吸着材料1の繊維径の測定)
吸着材料1を凍結包埋し、ミクロトームにより断面を作製した。得られた観察面に導電処理を行い、観察試料とした。次に電界放射型走査電子顕微鏡S-5500(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて観察試料の断面をランダムに観察し、断面画像を100点撮影した。得られた断面画像中の繊維断面に対して直径を算出した。この操作を断面画像100点全てに行い、得られた各直径の平均値を吸着材料1の繊維径とした。結果を表1に示す。
【0098】
(吸着材料1の非多孔部分の面積の割合Bの算出)
吸着材料1を四酸化ルテニウム染色凍結超薄切片法により前処理を行い、透過型電子顕微鏡EM-1400Plus(日本電子社製)により、加速電圧100kVの条件化で吸着材料1の中心を含む長手方向に垂直の断面を8000倍の倍率でランダムに観察し、断面画像を100点撮影した。撮影した断面画像において、非多孔部分の面積をA1とし、多孔部分の面積をA2とした場合に、式(1)で求められる非多孔部分の面積の割合Bを求めた。非多孔部分と多孔部分の判別は、断面画像に存在する材料表面の細孔で判断した。非多孔部分の面積とは、10nm未満の細孔が存在する領域の面積及び細孔が存在しない領域の面積の和とし、多孔部分の面積とは10nm以上細孔が存在する領域の面積とした。面積の算出は、画像編集ソフト(Photoshop Elements.14.0 Adobe社製)を用いて算出した。吸着材料1の非多孔部分の面積の割合Bを表1に示す。
B=A1/(A1+A2)×100 ・・・式(1)
【0099】
(吸着材料1の細孔体積の算出)
水に含浸させた吸着材料1を約6mg、DSC測定の直前に取り出し、過剰な表面付着水を除去してから、吸着材料1をアルミニウム製密封型試料容器に封入した。次に、DSC Q100(TA Instruments社製)を用い、湿潤状態のまま-55℃に急冷し、5℃まで0.3℃/分で昇温させて示差走査熱量を測定し、ピークトップ温度を融点として、DSC曲線を得た。なお、温度、熱量校正は純水を用いた。得られたDSC曲線から、Ishikiriyamaらの方法(JOURNAL OF COLLOID AND INTERFACE SCIENCE、1995年、171巻、p.92-102)に従い、吸着材料1の細孔体積を算出した。結果を表1に示す。
【0100】
(吸着材料2~12のピーク半径の算出)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料2~12のピーク半径をそれぞれ算出した。結果を表1又は表2に示す。
【0101】
(吸着材料2~12のゼータ電位の測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料2~12のゼータ電位をそれぞれ算出した。結果を表1又は表2に示す。
【0102】
(吸着材料2~10及び吸着材料12の繊維径の測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料2~10及び吸着材料12の繊維径を算出した。結果を表1又は表2に示す。
【0103】
(吸着材料11の粒子径の測定)
吸着材料11を凍結包埋し、ミクロトームにより断面を作製した。得られた観察面に導電処理を行い、観察試料とした。次に電界放射型走査電子顕微鏡S-5500(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて観察試料の断面をランダムに観察し、断面画像を100点撮影した。得られた断面画像中の繊維断面に対して最小内包円を作成し、最小内包円の直径を算出した。この操作を断面画像100点全てに行い、得られた各直径の平均値を吸着材料11の粒子径とした。結果を表2に示す。
【0104】
(吸着材料2~12の非多孔部分の面積の割合Bの算出)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料2~12の非多孔部分の面積の割合Bを算出した。結果を表1又は表2に示す。
【0105】
(吸着材料2~12の細孔体積の算出)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料2~12の細孔体積を算出した。結果を表1又は表2に示す。
【0106】
(実施例1)
1.可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着能の評価:
可溶性腫瘍壊死因子受容体を含む液体に可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材料を所定時間含浸後に取り出し、含浸前後の液体中の可溶性腫瘍壊死因子受容体濃度の差分から可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着率を測定した。以下に測定方法を示す。なお、可能性腫瘍壊死因子受容体として可溶性腫瘍壊死因子受容体1(sTNFR1)を用いた。
【0107】
吸着材料1を直径6mmの円板状に切り抜いた後、これを8枚ずつポリプロピレン製の容器に入れた。この容器に、可溶性腫瘍壊死因子受容体1(Recombinant Human TNFRI/TNFRSF1A、636-R1、R&D Systems(登録商標),Inc.)の濃度が10000pg/mLなるように調製した牛胎児血清(Fetal Bovine Serum、以下、FBS)を、0.055cmの吸着材料1に対して1mLとなるように添加し、37℃のインキュベータ内で2時間転倒混和した後、酵素結合免疫吸着(ELISA:Quantikine(登録商標) ELISA Human TNF RI/TNFRSF1A Immunoassay、DRT100、R&D Systems(登録商標),Inc.)法にてFBS中のsTNFR1濃度を測定した。転倒混和前及び転倒混和後のsTNFR1濃度から以下の式2によりsTNFR1の吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0108】
吸着材料1のsTNFR1の吸着率(%)={転倒混和前のsTNFR1濃度(pg/mL)-転倒混和後のsTNFR1濃度(pg/mL)}/転倒混和前のsTNFR1濃度(pg/mL)×100 ・・・式2
【0109】
2.血小板の吸着能の評価:
吸着材料1を充填したミニカラムに健常ヒトボランティア血液を通液し、通液前後の血液中の血小板数の差分から血小板吸着率を測定した。以下に測定方法を示す。
【0110】
上下に液体の出入口のある円筒状カラム(内径1cm×高さ1.2cm、内容積0.94cm、外径2cm、ポリカーボネート製)に、直径1cmの円板状に切り抜いた吸着材料1を積層して充填することで、吸着材料1を充填したカラムを作製した。LPSを70EU/mLになるよう添加した健常ヒトボランティア血液(採血時に血液1mLあたり0.13mgメチル酸ナファモスタットを添加)を37℃、30分間、65rpmの条件で湯浴内で振とうし、血液を、ポンプを用いて当該カラムに流量0.63mL/minで通液し、カラム入口及び出口でそれぞれ血液のサンプル採取を行った。カラム入口のサンプルとして、湯浴に浸漬している血液(カラム通液前の血液)を採取した。カラム出口のサンプルとして、カラム内に血液が流入した時点を0分とした時、3.5分から6.5分経過後の血液(カラム通液後の血液)を採取した。多項目自動血球分析装置XT-1800i(Sysmex社製)を用いて、採取した血液中に含まれる血小板数をそれぞれ測定した。続いて、以下の式3により血小板吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0111】
血小板吸着率(%)=(カラム通液前の血小板数-カラム通液後の血小板数)/カラム通液前血小板数×100 ・・・式3
【0112】
(実施例2)
吸着材料2を用いて、実施例1と同様の測定を行うことでsTNFR1の吸着率、血小板吸着率を測定した。結果を表1に示す。
【0113】
(実施例3)
吸着材料3を用いて、実施例1と同様の測定を行うことでsTNFR1の吸着率、血小板吸着率を測定した。結果を表1に示す。
【0114】
(実施例4)
吸着材料4を用いて、実施例1と同様の測定を行うことでsTNFR1の吸着率、血小板吸着率を測定した。結果を表1に示す。
【0115】
(実施例5)
吸着材料5を用いて、実施例1と同様の測定を行うことでsTNFR1の吸着率、血小板吸着率を測定した。結果を表1に示す。
【0116】
(実施例6)
吸着材料6を用いて、実施例1と同様の測定を行うことでsTNFR1の吸着率、血小板吸着率を測定した。結果を表1に示す。
【0117】
(比較例1)
吸着材料7を用いて、実施例1と同様の測定を行うことでsTNFR1の吸着率、血小板吸着率を測定した。結果を表2に示す。
【0118】
(比較例2)
吸着材料8を用いて、実施例1と同様の測定を行うことでsTNFR1の吸着率、血小板吸着率を測定した。結果を表2に示す。
【0119】
(比較例3)
吸着材料9を用いて、実施例1と同様の測定を行うことでsTNFR1の吸着率、血小板吸着率を測定した。結果を表2に示す。
【0120】
(比較例4)
吸着材料10を用いて、実施例1と同様の測定を行うことでsTNFR1の吸着率、血小板吸着率を測定した。結果を表2に示す。
【0121】
(比較例5)
吸着材料11を用いて、実施例1と同様の測定を行うことでsTNFR1の吸着率、血小板吸着率を測定した。結果を表2に示す。
【0122】
(比較例6)
吸着材料12を用いて、実施例1と同様の測定を行うことでsTNFR1の吸着率、血小板吸着率を測定した。結果を表2に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
表1中、「ピーク半径」は、示差走査熱量計により測定される融点の分布から算出されたピーク半径を示し、「ゼータ電位」は、pH7.4におけるゼータ電位を示し、「非多孔部分の面積の割合B」は、不溶性高分子材料の中心を含む長手方向に垂直な断面において、非多孔部分の面積をA1とし、多孔部分の面積をA2とした場合に、式(1)で求められる非多孔部分の面積の割合を示し、「細孔体積」は、示差走査熱量計により測定される融点の分布から算出された細孔体積を示し、「sTNFR1吸着率」は、可溶性腫瘍壊死因子受容体1(sTNFR1)の吸着率を示す。
【0125】
【表2】
【0126】
表2中の各項目は、表1と同様の項目を示す。
【0127】
表1及び表2の結果から、本発明の吸着材料は、可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着性能に優れていることが明らかになった。また、生体の止血機能に有用である血小板の吸着も適切に抑制されていることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の吸着材料は、可溶性腫瘍壊死因子受容体を高効率に吸着できるため、医療分野における生体成分処理、特に血液成分処理用途に利用できる。
【符号の説明】
【0129】
1:細孔体積の最大値
2:ピーク半径
3:繊維形状の水不溶性高分子材料
4:中心
5:長手方向に垂直を示す記号
6:中心を含む長手方向に垂直な断面
7:長手方向に対して垂直方向の断面上の中心線
8:真球粒子形状の水不溶性高分子材料
9:楕円体粒子形状の水不溶性高分子材料
10:フィルム形状の水不溶性高分子材料
11:多孔部分
12:非多孔部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7