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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】内服組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/451 20060101AFI20240326BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20240326BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240326BHJP
【FI】
A61K31/451
A61P1/12
A61K47/54
A61K47/12
A61K47/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019090591
(22)【出願日】2019-05-13
(65)【公開番号】P2020007295
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2018123096
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海老 敬行
(72)【発明者】
【氏名】山口 翼
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-511565(JP,A)
【文献】特開平10-236983(JP,A)
【文献】特開平04-159223(JP,A)
【文献】特開平09-030969(JP,A)
【文献】特開2004-359696(JP,A)
【文献】国際公開第2013/147135(WO,A1)
【文献】特表2004-518676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/451
A61K 47/54
A61K 47/12
A61K 47/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ロペラミド塩酸塩と、(B)リンゴ酸、フマル酸及びマレイン酸から選ばれる1種以上の有機酸とを配合してなり、(A)成分と(B)成分との複合体を含有し、(B)/(A)で表される(A)成分に対する(B)成分の配合モル比が、0.01~1である内服組成物。
【請求項2】
(A)成分と(B)成分の合計含有量が、内服組成物中0.015~0.82質量%である、請求項1記載の内服組成物。
【請求項3】
(B)/(A)で表される(A)成分に対する(B)成分の配合モル比が、0.01~0.1である請求項1又は2記載の内服組成物。
【請求項4】
(B)成分が、リンゴ酸である請求項1~3のいずれか1項記載の内服組成物。
【請求項5】
更に、(C)溶媒を含有する請求項1~4のいずれか1項記載の内服組成物。
【請求項6】
(C)成分が、エタノール及びプロピレングリコールから選ばれる1種又は2種である請求項5記載の内服組成物。
【請求項7】
硬カプセル剤又は軟カプセル剤である、請求項1~6のいずれか1項記載の内服組成物。
【請求項8】
(A)ロペラミド塩酸塩と、(B)リンゴ酸、フマル酸及びマレイン酸から選ばれる1種以上の有機酸と、(C)溶媒とを混合して、(A)成分及び(B)成分を(C)成分に溶解し、液状組成物を調製する溶解工程を有し、(A)成分と(B)成分との複合体が形成され、(B)/(A)で表される(A)成分に対する(B)成分の配合モル比が、0.01~1である、請求項1記載の内服組成物の製造方法。
【請求項9】
(C)成分が、エタノール及びプロピレングリコールから選ばれる1種又は2種である請求項記載の内服組成物の製造方法。
【請求項10】
(C)/(A)で表される(A)成分に対する(C)成分の配合質量比を10以上とする請求項又は記載の内服組成物の製造方法。
【請求項11】
更に、上記液状組成物を乾燥して、(C)成分を除去する乾燥工程を有する請求項10のいずれか1項記載の内服組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内服組成物に関し、更に詳述すれば、ロペラミド塩酸塩を配合した内服組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロペラミド塩酸塩は、内服医薬の有効成分(止瀉薬制分)として知られ、下痢止め薬に配合されている。
ロペラミド塩酸塩は、pHに依存して溶解度が変化し、特に腸液を想定したpH6.8の液中では溶解度が低いことが課題であった。pH6.8の液に対する溶解度が低いと、腸内からの吸収性も悪く、生体への利用効率が低い。
【0003】
ロペラミド塩酸塩の溶解性を向上する従来技術としては、薬物を含有する核粒子に水溶性高分子化合物等を含有するコート層を設けることにより溶解度を向上させる方法が知られているが(特許文献1)、製造工程が多く煩雑になりやすく、その効果は十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-37863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、腸内(pH6.8の液中)でのロペラミド塩酸塩の溶解度を向上させ、生物学的利用能に優れる内服組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ロペラミド塩酸塩及び特定の有機酸を組み合わせて配合することで、腸内(pH6.8の液中)でのロペラミド塩酸塩の溶解度(以下、(A)成分の溶解度と略す場合がある。)が向上することを見出し、本発明に到達した。
【0007】
即ち、本発明は下記の内服組成物及びその製造方法を提供する。
1.(A)ロペラミド塩酸塩と、(B)リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸及びクエン酸から選ばれる1種以上の有機酸とを含有する内服組成物。
2.(A)ロペラミド塩酸塩と、(B)リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸及びクエン酸から選ばれる1種以上の有機酸とを配合してなり、(A)成分と(B)成分との複合体を含有する内服組成物。
3.(B)/(A)で表される(A)成分に対する(B)成分の配合モル比が、0.004~1である1又は2の内服組成物。
4.(B)成分が、リンゴ酸である1~3のいずれかの内服組成物。
5.更に、(C)溶媒を含有する1~4のいずれかの内服組成物。
6.(C)成分が、エタノール及びプロピレングリコールから選ばれる1種又は2種である5の内服組成物。
7.(A)ロペラミド塩酸塩と、(B)リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸及びクエン酸から選ばれる1種以上の有機酸と、(C)溶媒とを混合して、(A)成分及び(B)成分を(C)成分に溶解し、液状組成物を調製する溶解工程を有する内服組成物の製造方法。
8.(C)成分が、エタノール及びプロピレングリコールから選ばれる1種又は2種である7の内服組成物の製造方法。
9.(C)/(A)で表される(A)成分に対する(C)成分の配合質量比を10以上とする7又は8の内服組成物の製造方法。
10.更に、上記液状組成物を乾燥して、(C)成分を除去する乾燥工程を有する7~9のいずれかの内服組成物の製造方法。
11.(A)ロペラミド塩酸塩と、(B)リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸及びクエン酸から選ばれる1種以上の有機酸と、(C)溶媒とを混合して、(A)成分及び(B)成分を(C)成分に溶解し、液状組成物を調製する溶解工程を有する、(A)成分と(B)成分との複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、腸内(pH6.8の液中)でのロペラミド塩酸塩の溶解度を向上させ、ロペラミド塩酸塩の腸内からの吸収性に優れ、生物学的利用能に優れる内服組成物及び内服組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ロペラミド塩酸塩のFT-IRスペクトルである。
図2】リンゴ酸のFT-IRスペクトルである。
図3】実施例2に係る固形組成物のFT-IRスペクトルである。
図4】フマル酸のFT-IRスペクトルである。
図5】実施例5に係る液状組成物の溶媒留去後のFT-IRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[内服組成物]
本発明の内服組成物は、(A)ロペラミド塩酸塩と、(B)リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸及びクエン酸から選ばれる1種以上の有機酸とを含有するものである。また、内服組成物とは、経口で服用される組成物であり、後述する剤型の他、前記剤型の一部を構成する組成物(軟カプセル剤用内容液、硬カプセル剤用内容液等)も本発明の内服組成物に含む。
【0011】
(A)ロペラミド塩酸塩
(A)成分のロペラミド塩酸塩は、下痢止めの作用を有する有効成分である。
(A)成分の1回服用量は、0.07~1.5mg(0.000136~0.00292mmol)が好ましく、より好ましくは0.1~1.3mg(0.000195~0.00253mmol)、より一層好ましくは0.25~1.2mg(0.000487~0.00233mmol)である。(A)成分の1回服用量を下限以上とすることで、下痢抑制効果が向上する。また、(A)成分の1回服用量を上限以下とすることで、(A)成分由来の苦味が抑制されて服用性が向上する。
【0012】
(A)成分の含有量は、内服組成物中0.015~0.6質量%が好ましく、より好ましくは0.022~0.52質量%、より一層好ましくは0.056~0.48質量%である。(A)成分の含有量を下限以上とする理由、上限以下とする理由は、1回服用量と同じである。
【0013】
なお、本発明において、「1回服用量」とは、内服組成物の1回量に含まれる質量を意味し、「含有量」とは、基剤等の添加剤も含めた内服組成物全体の質量に対する割合を意味する(以下、同様)。なお、1回量は、特に限定されるものではないが、本発明の場合、通常100~500mg程度である。さらに、(A)成分及び後述する(B)成分の含有量、(A)成分及び(B)成分の合計量は、(A)成分と(B)成分との複合体形成の有無に関係なく、(A)成分と(B)成分との複合体が形成されていない状態に換算した場合の各成分それぞれの量をいう。
【0014】
(B)リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、クエン酸から選ばれる1種以上の有機酸
(B)成分であるリンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、クエン酸から選ばれる1種以上の有機酸は、pH6.8の液環境下での(A)成分の溶解度を向上させるために配合される成分である。これらの有機酸は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明では、これらの中でも、(A)成分の溶解度向上効果が高い点から、リンゴ酸が好ましい。
【0015】
(B)成分の1回服用量は、0.00005~0.6mgが好ましく、より好ましくは0.0002~0.05mg、より一層好ましくは0.0005~0.03mgである。(B)成分の1回服用量を下限以上とすることで、腸液での溶解度が向上する。(B)成分の1回服用量を上限以下とすることで、腸液での溶解度が向上すると共に(B)由来の不快な酸味が抑制されて服用性が向上する。
【0016】
また、上記有機酸それぞれについての好適な1回服用量は、以下の通りである。
(B)成分がリンゴ酸である場合、その1回服用量は、0.00007~0.39mgが好ましく、より好ましくは0.00027~0.034mg、より一層好ましくは0.00067~0.016mgである。
(B)成分がフマル酸又はマレイン酸である場合、その1回服用量は、0.00006~0.34mgが好ましく、より好ましくは0.00023~0.029mg、より一層好ましくは0.00058~0.014mgである。
(B)成分がクエン酸である場合、その1回服用量は、0.0001~0.56mgが好ましく、より好ましくは0.00038~0.048mg、より一層好ましくは0.00096~0.023mgである。
【0017】
(B)成分の1回服用量は、0.0000005~0.0029mmol、好ましくは0.000002~0.00025mmol、より好ましくは0.000005~0.00012mmolである。
【0018】
(B)成分の含有量は、内服組成物中0.000013~0.23質量%が好ましく、より好ましくは0.000052~0.02質量%、より一層好ましくは0.00013~0.0092質量%である。(B)成分の含有量を下限以上とすることで、腸液での溶解度が向上する。(B)成分の含有量を上限以下とすることで、腸液での溶解度が向上すると共に(B)由来の不快な酸味が抑制されて服用性が向上する。
【0019】
また、上記有機酸それぞれについての好適な含有量は、以下の通りである。
(B)成分がリンゴ酸である場合、その含有量は、内服組成物中0.000015~0.16質量%が好ましく、より好ましくは0.000061~0.013質量%、より一層好ましくは0.00015~0.0064質量%である。
(B)成分がフマル酸又はマレイン酸である場合、その含有量は、内服組成物中0.000013~0.14質量%が好ましく、より好ましくは0.000052~0.012質量%、より一層好ましくは0.00013~0.0056質量%である。
(B)成分がクエン酸である場合、その含有量は、内服組成物中0.000022~0.23質量%が好ましく、より好ましくは0.000086~0.02質量%、より一層好ましくは0.00021~0.0092質量%である。
【0020】
(C)溶媒
(C)成分の溶媒は、(A)成分及び(B)成分を溶解可能な溶媒であり、本発明では、多価アルコール及び1価アルコールを使用することができる。なお、本発明において、「溶解可能な溶媒」とは、30℃で(A)成分又は(B)成分を1g溶解するための(C)成分の必要量が100g以下である溶媒を意味する。(C)成分を配合することで、(A)成分の溶解度がより向上する。なお、上記必要量の下限は、特に限定されるものではないが、通常1g以上である。
【0021】
多価アルコールとしては、プロピレングリコール、ソルビトール及びポリエチレングリコール等が挙げられる。1価アルコールとしては、エタノール、イソプロパノール、1-ブタノール及び1-ドデカノール等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を含有することができる。
これら成分の中でも、(A)成分の腸液での溶解度がより向上する点から、エタノール、イソプロパノール及びプロピレングリコールが好ましく、エタノール及びプロピレングリコールがより好ましく、エタノールがより一層好ましい。
【0022】
(C)成分を含有する場合、(C)成分の1回服用量は、10~200mgが好ましく、より好ましくは10~100mg、より一層好ましくは10~40mgである。(C)成分を含むことにより、腸液での溶解度をより向上させることができ、1回服用量を上限以下とすることで、(C)成分由来の不快味が抑制されて服用性が向上する。
【0023】
(C)成分を含有する場合、(C)成分の含有量は、内服組成物中3.5~50.0質量%が好ましく、3.8~49.2質量%がより好ましく、3.8~28.5質量%がより一層好ましい。(C)成分の含有量を下限以上とすることで、腸液での溶解度が向上し、上限以下とすることで、(C)成分由来の不快味が抑制されて服用性が向上する。
【0024】
[(A)成分及び(B)成分の配合モル比]
(B)/(A)で表される(A)成分に対する(B)成分の配合モル比は、0.004~1が好ましく、より好ましくは0.01~0.1、より一層好ましくは0.01~0.05である。
上記配合モル比を上記範囲とすることで、(A)成分の溶解度がより向上する。更に、上限以下とすることで、(A)成分の溶解度がより向上すると共に、(B)由来の不快味が抑制されて服用性が向上する。
【0025】
[(A)成分及び(B)成分の質量配合比]
(B)/(A)で表される(A)成分に対する(B)成分の配合質量比は、0.00007~0.39が好ましく、より好ましくは0.00027~0.034、より一層好ましくは0.00067~0.016である。上記配合質量比を下限以上とすることで、(A)成分の溶解度がより向上する。更に、上限以下とすることで、(B)由来の不快味が抑制されて服用性が向上する。
【0026】
また、上記有機酸それぞれについての好適な配合質量比は、以下の通りである。
(B)成分がリンゴ酸である場合、上記配合質量比は、好ましくは0.00007~0.39、より好ましくは0.00027~0.034、より一層好ましくは0.00067~0.016である。
(B)成分がフマル酸又はマレイン酸である場合、上記配合質量比は、好ましくは0.00006~0.34、より好ましくは0.00023~0.029、より一層好ましくは0.00058~0.014である。
(B)成分がクエン酸である場合、上記配合質量比は、好ましくは0.0001~0.56、より好ましくは0.00038~0.048、より一層好ましくは0.00096~0.023である。
【0027】
[(A)成分及び(B)成分の合計含有量]
(A)成分と(B)成分の合計含有量は、後述する(A)成分と(B)成分との複合体を含む合計含有量として、内服組成物中0.015~0.82質量%が好ましく、より好ましくは0.022~0.54質量%、より一層好ましくは0.056~0.49質量%である。
【0028】
[(A)成分及び(C)成分の質量配合比]
(C)/(A)で表される(C)成分の(A)成分に対する配合質量比は、10以上が好ましく、10~100がより好ましく、10~40がより一層好ましい。上記配合質量比を下限以上とすることで、(A)成分の溶解度がより向上する。上記配合質量比を上限以下とすることで、(C)成分由来の不快味が抑制されて服用性が向上する。
【0029】
[複合体]
本発明は、上記(A)成分と、(B)成分とを配合してなり、(A)成分と(B)成分との複合体を含有する内服組成物を提供する。このような複合体が形成され、これを含有することにより、(A)成分の溶解度が顕著に向上し、腸液を想定したpH6.8の液での溶解性が高く、腸内からの吸収性に優れたものとなる。
【0030】
本発明の複合体は、(A)成分のヒドロキシ基又はカルボニル基と(B)成分のヒドロキシ基又はカルボニル基との水素結合によって形成されるものと考えられ、主たる複合体は(A)成分のヒドロキシ基と(B)成分のカルボキシ基に付随するヒドロキシ基との水素結合と考えられる。例えば、(A)ロペラミド塩酸塩と(B)リンゴ酸とを(C)エタノールに溶解させた場合には、主として以下のような構造の複合体が形成されることが推測される。
【0031】
【化1】
【0032】
上記複合体が形成されていることは、得られた組成物をFT-IR、例えば、Spectrum 100(PerkinElmer製)やFT/IR-4100(日本分光(株)製)によって、以下の条件で分析することにより確認することができる。
【0033】
[FT-IR測定条件]
測定方法:ATR法
スキャンレンジ:650~4,000cm-1
分解能:4cm-1
【0034】
図1に、ロペラミド塩酸塩のFT-IRスペクトル、図2に、リンゴ酸のFT-IRスペクトル、図3に、後述する実施例2の固形組成物に係る複合体(ロペラミド塩酸塩とリンゴ酸から構成される複合体)のFT-IRスペクトルをそれぞれ示す。
図1では、3,245cm-1付近にロペラミド塩酸塩のヒドロキシ基に由来するピークが確認でき、図2では、3,435cm-1付近にリンゴ酸のカルボキシ基に付随するヒドロキシ基に由来するピークが確認できる。これに対し、図3では、図1及び図2で確認された(A)成分及び(B)成分のヒドロキシ基に由来するピークは現れておらず、3,228cm-1付近に複合体特有の(A)成分のヒドロキシ基に由来するピークが現れていることが確認できる。
【0035】
図4に、フマル酸のFT-IRスペクトル、図5に、後述する実施例5の液状組成物に係る複合体(ロペラミド塩酸塩とフマル酸から構成される複合体)のFT-IRスペクトルをそれぞれ示す。図4では、3,082cm-1付近にフマル酸のカルボキシ基に付随するヒドロキシ基に由来するピークが確認できる一方で、図5では、(A)成分及び(B)成分のヒドロキシ基に由来するピークは現れておらず、3,233cm-1付近に複合体特有の(A)成分のヒドロキシ基に由来するピークが現れていることが確認できる。
【0036】
なお、図3では、(B)成分がリンゴ酸である場合の複合体について、図5では、(B)成分がフマル酸である場合の複合体について分析した結果をそれぞれ示したが、本発明の(B)成分は、リンゴ酸及びフマル酸以外の有機酸であっても、末端にカルボキシ基を有しリンゴ酸やフマル酸と類似する構造を有する有機酸(ジカルボン酸、トリカルボン酸)であれば、同様に(A)成分と水素結合を形成し、3,140~3,240cm-1に複合体特有の(A)成分のヒドロキシ基に由来するピークを確認することができる。
【0037】
本発明の複合体において、水素結合は、(A)成分のヒドロキシ基と(B)成分のカルボキシ基に付随するヒドロキシ基に限定されるものではなく、(A)成分が有する全てのヒドロキシ基又はカルボニル基と、(B)成分が有する全てのヒドロキシ基(カルボキシ基に付随するヒドロキシ基も含む)又はカルボニル基との間において起こり得るが、主たる複合体は(A)成分のヒドロキシ基と(B)成分のカルボキシ基に付随するヒドロキシ基との水素結合と考えられ、水素結合(複合体形成)は赤外吸収時の振動の鈍化により低波数側にシフトするため、本発明の複合体では、何れの(B)成分であっても3,140~3,240cm-1に複合体特有の(A)成分のヒドロキシ基に由来するピークが現れ、複合体を形成する前の(A)成分のヒドロキシ基に由来するピークは消失するか小さくなる。なお、複合体は溶媒と相互作用した溶媒和物((A)成分、(B)成分及び(C)成分の複合体)でも同様に形成される。なお、本発明の赤外吸収スペクトル(FT-IR)は、第十七改正日本薬局方の一般試験法、2.25赤外吸収スペクトル測定法、1.装置及び調整法の項に適合し、波数再現性は±5cm-1以内である。
【0038】
また、配合した(A)成分、(B)成分の全てが複合体化している必要はなく、複合体の形成に関与しない(A)成分、(B)成分を、それぞれ内服組成物の一部に含んでいてもよい。複合体が形成される場合の(A)~(C)成分の好適含有量、[(A)成分及び(B)成分の質量配合比]は、各成分の好適含有量と同様である。
【0039】
(B)/(A)で表される(A)成分に対する(B)成分の配合モル比は、複合体形成の点から、0.004~1が好ましく、より好ましくは0.01~0.1、より一層好ましくは0.01~0.05の範囲である。上記範囲とすることで、(A)成分の溶解度がより向上する。
【0040】
複合体を含有する場合、該複合体の含有量は、特に制限されるものではないが、(A)成分と(B)成分との合計量として、内服組成物中0.015~0.82質量%が好ましく、より好ましくは0.022~0.54質量%、より一層好ましくは0.056~0.49質量%である。上記複合体の含有量を上記範囲とすることで、(A)成分の溶解度がより向上する。
【0041】
[製造方法]
本発明の(A)成分と(B)成分とを含有する内服組成物を製造する方法としては、例えば、(A)ロペラミド塩酸塩と、(B)リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸及びクエン酸から選ばれる1種以上の有機酸とを混合する工程を含む製造方法が挙げられる。任意成分を配合する場合は、公知の手段で混合すればよく、例えば、(A)成分、(B)成分及び任意成分を混合する工程としてもよい。混合手段としては、公知の混合装置を用いる方法や、ポリ袋に入れて振り混ぜるといった方法が挙げられる。
【0042】
特に、本発明の(A)成分と(B)成分とを配合して、(A)成分と(B)成分との複合体、又はこれを含有する内服組成物を含有する内服組成物を製造する方法としては、例えば、(A)ロペラミド塩酸塩と、(B)リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸及びクエン酸から選ばれる1種以上の有機酸とを混合し、得られた混合物と(C)溶媒とを混合して、(A)成分及び(B)成分を溶解し、液状組成物を調製する溶解工程を有する製造方法を挙げることができる。また、(A)成分と(B)成分と(C)成分とを一括混合する溶解工程により、液状組成物を調製することもできる。
【0043】
上記の溶解工程で得られる液状組成物は、(C)成分に(A)成分及び(B)成分全て溶解していなくてもよいが、(A)成分と(B)成分との合計量に対し50質量%溶解していることが好ましく、80質量%以上溶解していることがより好ましく、100質量%溶解していることがより一層好ましい。
【0044】
本発明の液状組成物とは、常温(15~25℃、以下同様)で流動性を有する組成物であり、(A)成分と(B)成分との複合体(複合体を形成しない(A)成分、(B)成分を含む場合もある)、及び(C)成分が含有されている。
【0045】
更に、(C)成分を用いた場合は、(C)成分を除去する乾燥工程を有してもよい。具体的には、上記(A)成分と(B)成分との複合体、(A)成分と(B)成分との複合体を含有する内服組成物の製造方法の場合、上記溶解工程の後、得られた液状組成物から定法の乾燥手段を用いて(C)成分を除去することにより濃縮液状組成物や固形組成物とすることができる。乾燥手段としては、特に制限はなく、自然乾燥のほか、ホットプレート、オーブン、エバポレーター、スプレードライ及び真空凍結乾燥器等の乾燥装置を採用することができる。
【0046】
(C)成分を製造工程に用いて複合体が形成された後には、(C)成分を除去させても同様の(A)成分の溶解度が得られるため、(C)成分は内服組成物中に含まれていなくてもよい。また、(C)成分を除去する場合、全ての(C)成分を除去してもよいし、一部を残存させてもよい。(C)成分の残存割合としては、(C)成分を除去した内服組成物中、15質量%以下が好ましい。
【0047】
上記液状組成物や濃縮液状組成物、固形組成物は、そのままでも内服組成物として用いることができるが、更に、後述する任意成分(各種添加剤や既知の薬効成分等)を配合してもよく、服用性の観点から任意成分を含有することが好ましい。
【0048】
後述する任意成分を配合する場合は、定法の手段で混合すればよく、上記溶解工程と同時に混合しても、別途混合してもよい。なお、(C)成分については、複合体が形成された後に、更に配合してもよく、その場合は上述の好適範囲外となってもよい。
【0049】
[任意成分]
本発明の内服組成物では、上記各成分以外に、任意成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、以下の各種添加剤や既知の薬効成分を必要に応じて配合することができる。
【0050】
本発明の任意成分について、内服組成物の主基剤としては特に制限はないが、後述する液剤や軟カプセル剤用内容液では、例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリドを1回服用量として50~500mg配合することができ、錠剤では、結晶セルロースを1回服用量として200~800mg配合することができる。
【0051】
添加剤としては、各種甘味剤(白糖、果糖ブドウ糖液糖、ハチミツ、エリスリトール、マルチトール、フルクトース、還元パラチノース、キシリトール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等)、安定化剤(エデト酸ナトリウム、水溶性高分子等)、可溶化剤(アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤等)、溶媒(精製水等)、防腐剤(パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等)、賦形剤(結晶セルロース、乳糖、マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポピドン等)、結合剤(澱粉、結晶セルロース等)、皮膜形成剤(ゼラチン、グリセリン、コハク化ゼラチン、ペクチン等)、基剤(中鎖脂肪酸トリグリセリド、ナタネ油等)、懸濁剤(室温で固体のサラシミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル等)、酸化防止剤、着香剤・香料、清涼化剤(メントール等)、着色剤、pH調整剤、緩衝剤等が挙げられる。
また、本発明では、上述した複合体を形成した後であれば、任意成分として多価アルコールを配合してもよい。任意成分として配合できる多価アルコールは、特に限定されるものではなく、(C)成分の説明において例示したものを使用してもよい。具体例としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール及びポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0052】
既知の薬効成分としては、タンニン酸ベルベリン、アクリノール、塩化ベルベリン、クレオソート、タンニン酸アルブミン、アズレンスルホン酸ナトリウム、アラントイン、アルジオキサ、イブプロフェン、アスピリン、アセトアミノフェン、ロキソプロフェンナトリウム水和物、カフェイン、生薬等が挙げられる。
【0053】
これらの任意成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で、目的に応じて適宜設定することができる。
【0054】
[剤型]
本発明の内服組成物が適用される剤型としては、特に限定されず、具体的には、散剤、顆粒剤、腸溶性顆粒剤、舐剤、ゼリー剤、錠剤、丸剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、トローチ剤、シロップ剤、ドリンク剤等が上げられるが、錠剤及び軟カプセル剤がより好ましく、例えば、以下に示す方法により、液剤、錠剤及び軟カプセル剤とすることができる。
【0055】
(1)軟カプセル剤
軟カプセル剤内容物の製造法としては、中鎖脂肪酸トリグリセリドにグリセリン脂肪酸エステルを加え、70~80℃で加温混合する(例えば、ホットスターラー。300~800rpm)。
これとは別に、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を15~80℃にて加温し30分以上混合(例えば、ホットスターラー。300~800rpm)した溶液と上記加温混合物とを混合し、更に残りの成分を加え均一に攪拌する。
なお、本内容物を充填するカプセル皮膜は特に限定されるものではなく、水溶性高分子、例えば、ゼラチン、コハク化ゼラチン、寒天、アルギン酸ナトリウム、プルラン、グルコマンナン、アラビアゴム、カラギーナン、ファーセレラン、ユーケマ藻類、ジェランガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等の公知の皮膜基剤を用いることができる。
また、軟カプセル剤の製法としては、例えば、従来のカプセル充填製造法であるロータリーダイ式自動ソフトカプセル製造機を用いて作製することができる。
【0056】
(2)錠剤
(A)成分と(B)成分と、(C)成分とを15~80℃にて加温し30分以上混合(例えば、ホットスターラー。300~800rpm)して液状組成物を調製する。次いで、上記液状組成物を結晶セルロース(任意成分)に含浸させて混合し(例えば、攪拌造粒)、粉末組成物を調製する。上記粉末組成物は、このまま錠剤成形用の混合粉体とすることもできるが、更に賦形剤等を混合してもよい。そして、上記混合粉体を打錠機にて打錠して錠剤とする。または、上記液状組成物を乾燥(例えば、スプレードライ)して(C)成分を除去して固形組成物を得、得られた固形組成物に賦形剤等を混合して錠剤成形用の混合粉体を調製した後、当該混合粉体を打錠機にて打錠して錠剤とすることもできる。錠剤の形状は、丸みを帯びたR錠もしくは2段R錠、スミ角平錠、スミ丸平錠が好ましく、錠剤天頂部のR(曲率半径、2段R錠の場合はR2が相当)は7mm以上が好ましい。液状組成物を任意成分に含浸させる場合、含浸させる任意成分の量は、液状組成物に対して、質量比で5~15倍量であることが望ましい。また、液状組成物を含浸させる任意成分としては、結晶セルロース、コーンスターチ、D-マンニトールが好ましい。
【0057】
(3)容器
一般的な錠剤又は軟カプセル剤の包装容器として、瓶容器又はPTP(プレススルーパッケージ)を用いる。PTPの基材及び蓋材の材質は特に限定されないが、例えば基材ではポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、蓋材ではアルミ箔若しくはセロファン及びこれらを組み合わせた多層フィルムが用いられる。
【実施例
【0058】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。実施例1、実施例7及び実施例11は参考例である。
【0059】
(1)内服組成物の調製
[実施例1]
表1に示す配合に基づいて、(A)成分、(B)成分、及び任意成分である中鎖脂肪酸トリグリセリド(当該成分は、(A),(B)成分を溶解しない)を、スターラーを用いて回転数800rpm、常温で1時間混合し、実施例1の内服組成物(軟カプセル剤用内容液)を得た。なお、表中の数値は、1回服用量あたりの各成分の含有量(mg)である(他の実施例、比較例も同様)。
【0060】
[実施例2]
表1に示す配合に基づいて、(A)成分と(B)成分と、(C)成分としてエタノール40mgとを、スターラーを用いて回転数800rpm、常温で1時間混合し、液状組成物を得た。
上記で得た液状組成物について、スプレードライヤ(ヤマト科学(株)製、ADL311S-A)、有機溶媒回収装置(ヤマト科学(株)製、GAS410)を用いて(C)成分(エタノール)を留去し、固形組成物を得、当該固形組成物と中鎖脂肪酸トリグリセリド(任意成分)とを混合することで、実施例2の内服組成物(軟カプセル剤用内容液)を得た。なお、エタノールは留去したため、表中には記載していない。
【0061】
[実施例3~13、15、16]
表1又は表2に示す配合に基づいて、(A)成分と(B)成分と、(C)成分とをスターラーを用いて回転数800rpm、常温で1時間混合し、液状組成物を得た。次いで、当該液状組成物と中鎖脂肪酸トリグリセリド(任意成分)とを混合することで、実施例3~13、15、16の内服組成物(軟カプセル剤用内容液)を得た。
【0062】
[実施例14]
表2に示す配合に基づいて、(A)成分と(B)成分と、(C)成分とを常温で30分、スターラーを用いて回転数800rpm、常温で1時間混合して、液状組成物を得た。結晶セルロース(任意成分)を攪拌造粒機((株)パウレック製、FM-VG-25)に投入し、500rpmで攪拌しながら上記液状組成物を添加混合し錠剤成形用混合粉体を得た。この混合粉体をロータリー式打錠機((株)菊水製作所製、リブラ3L)にて、盤回転速度15rpm、打錠圧10kNにて打錠し、内服組成物14(錠剤)を得た。錠剤の形状は、丸みを帯びたR錠であり、錠剤の直径は9mmφ、錠剤天頂部のRは7mmであった。
【0063】
[比較例1]
表3に示す配合に基づいて、(B)成分を含まないこと以外は、実施例1と同様の方法で内服組成物(軟カプセル剤用内容液)を得た。
【0064】
[比較例2]
表3に示す配合に基づいて、(B)成分を含まないこと以外は、実施例3と同様の方法で内服組成物(軟カプセル剤用内容液)を得た。
【0065】
[比較例3]
表3に示す配合に基づいて、(B)成分の代わりに、非イオン性界面活性剤であるポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸エステル)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で内服組成物(軟カプセル剤用内容液)を得た。
【0066】
[比較例4]
表3に示す配合に基づいて、(B)成分の代わりに、水溶性高分子化合物であるヒドロキシプロピルセルロースを用いた以外は、実施例3と同様の方法で内服組成物(軟カプセル剤用内容液)を得た。
【0067】
(2)評価方法
a.溶解性の評価
各内服組成物を、以下の条件で撹拌した後、(A)成分を以下の条件でHPLCにて定量し、溶解度を以下の式で算出して評価した。
【0068】
[試験条件]
試料投入量:ロペラミド量として2.0mgとなるように調製した組成物
試験液:日局溶出第2液(pH6.8),50mL
振盪機:分液ロート用強力振盪機ストロングシェーカーSR-2DS(タイテック(株)製)
振盪条件:200rpm,1時間
試料採取量:5mL
[ロペラミド塩酸塩の定量(HPLC)]
試験機:LC-2010CHT((株)島津製作所)
移動相:メタノール/過塩素酸ナトリウム溶液(200→10,000)混液(3:1)
カラム:SCX
カラム温度:40℃
注入量:50μL
[(A)成分の溶出率]
(溶出した(A)成分の量)/(試験前の内服組成物中の(A)成分の量)×100
【0069】
[判定]
原薬の溶解度を100%(ロペラミド量として2.0mgに相当する原薬)とした際の相対値を下記判定基準に基づき評価した。溶解度110%以上(A以上)を合格とした。
<判定基準>
S: 150%以上
AAA:140%以上150%未満
AA: 125%以上140%未満
A: 110%以上125%未満
B: 110%未満
【0070】
b.複合体形成の確認
各内服組成物をFT-IRによって以下の条件で分析し、下記判定基準に基づき複合体形成の有無を確認した。なお、実施例5に係る液状組成物は、スプレードライヤ(ヤマト科学(株)製、ADL311S-A)、有機溶媒回収装置(ヤマト科学(株)製、GAS410)を用いて(C)成分(エタノール)を留去して分析に供した。
【0071】
[FT-IR測定]
装置1:Spectrum 100(PerkinElmer製)
測定方法:ATR法
スキャンレンジ:650~4,000cm-1
分解能:4cm-1

装置2:FT/IR-4100(日本分光(株)製)
測定方法:ATR法
スキャンレンジ:650~4,000cm-1
分解能:4cm-1
*装置2は、実施例5でのみ使用した。
【0072】
<複合体形成の判定基準>
○:複合体形成あり。3,140~3,240cm-1に複合体特有の中程度(ピークトップが65~95%T透過率)のピークの検出あり。
×:複合体形成なし。3,140~3,240cm-1に複合体特有のピークの検出なし。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
(3)処方例
以下、本発明の内服組成物(軟カプセル剤、錠剤)の処方例を示す。各成分の質量は、1カプセルあたり、または1錠あたりの質量である。
【0077】
処方例1:軟カプセル剤1
(A)ロペラミド塩酸塩 0.5mg
(B)リンゴ酸 0.00131mg
(C)エタノール 40mg
・中鎖脂肪酸トリグリセリド 160mg
・グリセリン脂肪酸エステル 17mg
・l-メントール 4mg
・コハク化ゼラチン 60mg
・濃グリセリン 20mg
・精製水 50mg
【0078】
処方例2:軟カプセル剤2
(A)ロペラミド塩酸塩 0.1mg
(B)リンゴ酸 0.000262mg
(C)エタノール 1mg
・中鎖脂肪酸トリグリセリド 160mg
・グリセリン脂肪酸エステル 17mg
・l-メントール 4mg
・コハク化ゼラチン 60mg
・濃グリセリン 20mg
・精製水 50mg
【0079】
処方例3:軟カプセル剤3
(A)ロペラミド塩酸塩 0.05mg
(B)リンゴ酸 0.00131mg
(C)エタノール 0.5mg
・中鎖脂肪酸トリグリセリド 160mg
・グリセリン脂肪酸エステル 17mg
・l-メントール 4mg
・コハク化ゼラチン 60mg
・濃グリセリン 20mg
・精製水 50mg
【0080】
処方例4:軟カプセル剤4
(A)ロペラミド塩酸塩 0.5mg
(B)リンゴ酸 0.00131mg
(C)エタノール 80mg
・中鎖脂肪酸トリグリセリド 160mg
・グリセリン脂肪酸エステル 17mg
・l-メントール 4mg
・コハク化ゼラチン 60mg
・濃グリセリン 20mg
・精製水 50mg
【0081】
処方例1~4の軟カプセル剤は、以下の方法により製造した。
(A)成分、(B)成分及び(C)成分を、スターラーを用いて回転数800rpm、常温で30分間混合して、液状組成物Aを得た。別に中鎖脂肪酸トリグリセリド、及びグリセリン脂肪酸エステルを、スターラーを用いて回転数800rpm、加温(60~70℃)、30分間混合して、液状組成物Bを得た。次いで、得られた液状組成物A、液状組成物B、及びl-メントールを、スターラーを用いて回転数800rpm、常温で30分間混合して、軟カプセル剤用内容液を得た。
これとは別に、コハク化ゼラチン、濃グリセリン及び精製水を加温(60~70℃)し、スターラーを用いて回転数800rpmで混合しながらアスピレーター(アルバック機工(株)製、MDA-015)にて減圧・脱泡し、30分間混合して皮膜液を得た。
上記で得た軟カプセル剤用内容液及び皮膜液を用いて、ロータリーダイ式ソフトカプセル充填機により軟カプセル剤を製造した。
【0082】
処方例5:錠剤1
(A)ロペラミド塩酸塩 0.5mg
(B)リンゴ酸 0.00131mg
(C)エタノール 40mg
・結晶セルロース 400mg
・軽質無水ケイ酸 40mg
・カルボキシメチルセルロース 40mg
・トウモロコシデンプン 40mg
・ステアリン酸マグネシウム 1mg
【0083】
処方例5の錠剤1は、以下の方法により製造した。
(A)成分、(B)成分及び(C)成分を、スターラーを用いて回転数800rpm、常温で30分混合して、液状組成物を得た。結晶セルロースを攪拌造粒機((株)パウレック製、FM-VG-25)に投入し、500rpmで攪拌しながら上記液状組成物を添加混合し粉末組成物を得た。更に、軽質無水ケイ酸、カルボキシメチルセルロース、トウモロコシデンプン、ステアリン酸マグネシウムを添加混合し(500rpm)、錠剤成形用の混合粉体を得た。この混合粉体を、ロータリー式打錠機((株)菊水製作所製、リブラ3L)にて、盤回転速度15rpm、打錠圧10kNにて打錠し、錠剤1を得た。錠剤の形状は、丸みを帯びたR錠であり、錠剤の直径は9mmφ、錠剤天頂部のRは7mmであった。
【0084】
上記例で使用した原料を下記に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。
ロペラミド塩酸塩:商品名「ロペラミド塩酸塩」(シオノケミカル(株))、分子量:513.5、1mg当たりのモル数:0.001947mmol
リンゴ酸:商品名「DL-リンゴ酸」(富士フイルム和光純薬(株))、ジカルボン酸、分子量:134.09、1mg当たりのモル数:0.007458mmol
クエン酸:商品名「無水クエン酸100M」(小松屋(株))、トリカルボン酸、分子量:192.12、1mg当たりのモル数:0.005205mmol
フマル酸:商品名「フマル酸」(米山薬品工業(株))、ジカルボン酸、分子量:116.07、1mg当たりのモル数:0.008615mmol
マレイン酸:商品名「マレイン酸」(富士フイルム和光純薬(株))、ジカルボン酸、分子量:116.07、1mg当たりのモル数:0.008615mmol
エタノール:商品名「発酵アルコール95度」(日本アルコール販売(株))
プロピレングリコール:商品名「プロピレングリコール」((株)ADEKA)
中鎖脂肪酸トリグリセリド:商品名「ココナードMT」(花王(株))
グリセリン脂肪酸エステル:商品名「エマックスBW-36」(理研ビタミン(株))
ポリソルベート80:商品名「NIKKOL TO-10MV」(日光ケミカルズ(株))
ヒドロキシプロピルセルロース:商品名「HPC-M」(日本曹達(株))
l-メントール:商品名「薄荷脳」(長岡実業(株))
軽質無水ケイ酸:商品名「サイリシア350」(富士シリシア化学(株))
トウモロコシデンプン:商品名「トウモロコシデンプン」(松谷化学工業(株))
結晶セルロース:商品名「セオラスUF-702」(旭化成ケミカルズ(株))
コハク化ゼラチン:コハク化ゼラチンT18H((株)ニッピ)
濃グリセリン:日局濃グリセリン(日油(株))
精製水:日本薬局方精製水(健栄製薬(株))
カルボキシメチルセルロース:商品名「カルメロースNS-300」(ニチリン化学工業(株)製)
ステアリン酸マグネシウム:商品名「ステアリン酸マグネシウム(軽質)」(DSP五協フード&ケミカル(株))
図1
図2
図3
図4
図5