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  • 特許-アーム動作安全確認方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】アーム動作安全確認方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/88 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
B66C23/88 H
B66C23/88 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019158832
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021038039
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】原田 悠佑
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-164293(JP,U)
【文献】特開2015-214409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
B66C 13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン車両のアームが安全領域で動作することを確認するアーム動作安全確認方法であって、
前記アームの所定の位置に、所定の長さの、作業員が手で触れることが可能な絶縁材質の紐状部材の一端を取り付け、
前記紐状部材の長さを、前記アームが進入禁止領域に入った場合に、当該紐状部材の前記一端とは反対側の一端(以下「他端」という)の所定の部分が地上から離れる長さに設定し、
前記紐状部材が前記アームから略鉛直方向に垂れ下がった状態で、前記アームを動かす際に、前記作業員が前記紐状部材を手で触れて、垂れ下がった前記紐状部材のたるみおよび撚れの少なくともいずれかを調整し、当該作業員が、前記紐状部材が地上に接する状況に基づいて、前記紐状部材の前記他端の所定の部分が地上から離れていない場合に、前記アームが安全に動作できていると判断し、前記紐状部材の前記他端の所定の部分が地上から離れた場合に、前記アームが安全に動作できていないと判断して前記アームの動作を中止する指示を前記クレーン車両の操縦士に出すことを特徴とするアーム動作安全確認方法。
【請求項2】
クレーン車両のアームが安全領域で動作することを確認するアーム動作安全確認方法であって、
前記アームの所定の位置に、所定の長さの、作業員が手で触れることが可能な絶縁材質の紐状部材の一端を取り付け、
前記紐状部材の長さを、前記アームが進入禁止領域に入った場合に、当該紐状部材の前記一端とは反対側の一端(以下「他端」という)の所定の部分が地上に接する長さに設定し、
前記紐状部材が前記アームから略鉛直方向に垂れ下がった状態で、前記アームを動かす際に、前記作業員が前記紐状部材を手で触れて、垂れ下がった前記紐状部材のたるみおよび撚れの少なくともいずれかを調整し、当該作業員が、前記紐状部材が地上に接する状況に基づいて、前記紐状部材の前記他端の所定の部分が地上に接していない場合に、前記アームが安全に動作できていると判断し、前記紐状部材の前記他端の所定の部分が地上に接した場合に、前記アームが安全に動作できていないと判断して前記アームの動作を中止する指示を前記クレーン車両の操縦士に出すことを特徴とするアーム動作安全確認方法。
【請求項3】
前記進入禁止領域は、充電部から活線近接距離の範囲における領域であることを特徴とする請求項1または2に記載のアーム動作安全確認方法。
【請求項4】
前記紐状部材の前記他端の所定の部分におもりを付けることを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載のアーム動作安全確認方法。
【請求項5】
前記紐状部材の長さを可変にする可変機構を備えたことを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載のアーム動作安全確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クレーン車両のアームが安全領域で動作することを確認するアーム動作安全確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、たとえば、NGR(Neutral Grounding Resistor)母線などの電線の充電部が近くにある場所において、停電処理をすることなく、クレーン車両を用いて作業する場合がある。その場合に、クレーン車両のアームが活線近接距離内に近づかないように留意しながら、当該作業をおこなう必要がある。
【0003】
関連する技術として、たとえば、クレーンおよび鉄塔および電線の位置情報を取得する位置情報取得手段と、取得した位置情報に基づいてクレーンおよび鉄塔および電線の特定箇所の位置情報を特定する位置情報特定手段と、鉄塔および電線とクレーンとの離隔距離が所定閾値以下または未満であると判定されたときに鉄塔および電線に近づく方向へのクレーンの動作を停止する停止手段と、位置情報取得手段を保持し滞空飛行可能な飛行手段と、を備えるクレーン停止システムに関する技術がある(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【0004】
また、関連する技術として、たとえば、可視光レーザを発する発光装置と、発光装置に対してクレーン船が通過する領域を挟んだ位置に配置され発光装置が発した可視光レーザを反射させる反射装置と、反射された可視光レーザを受ける受光装置と、通報装置とを備え、発光装置に対して可視光レーザを発光させる発光部と、受光装置が可視光レーザを受けたか否かを検出する検出部と、検出部が可視光レーザを受けていないことを検出した場合に可視光レーザが分断されていることを通報する通報部と、を備える通報システムに関する技術がある(たとえば、下記特許文献2を参照。)。
【0005】
また、関連する技術として、たとえば、空気より軽いガスを封入し少なくとも一部が絶縁材料から構成される袋体であるバルーン部と、該バルーン部を係留する絶縁性の係留用線材と、を備え、ブームを備えたクレーン車などの作業装置を用いて架空送電線付近で作業をおこなう際に、ブームや電線に絶縁カバーを取り付ける等の手段を講じることなく、ブームが送電線に過剰接近したり接触することを確実に防止する架空送電線保護装置に関する技術がある(たとえば、下記特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2018/134987号
【文献】特開2011-191841号公報
【文献】特開2008-263711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、クレーン車両の運転士および作業員(監視員)は、資材、運搬経路などクレーンによる作業に気を取られて、充電部に対する注意が散漫となり、クレーンのアームの先端に、NGR母線などの充電部が接近しすぎたり、接触してしまうことで、感電などする可能性があり、非常に危険である。また、クレーン車両による作業と同時に、充電部への配慮をおこなうことによって、作業がより慎重となってしまい、その分、作業効率が悪くなる可能性があるという問題点があった。
また、先行技術においても、クレーンの充電部への接触防止のための技術が存在するが、それらは、いずれも、大がかりな装置を用いる必要があり、それらの装置を準備するための手間や費用が多くかかってしまうという問題点があった。
【0008】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、簡易・安価な構成で、アームの充電部に対する接近、接触、感電の防止をすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかるアーム動作安全確認方法は、クレーン車両のアームが安全領域で動作することを確認するアーム動作安全確認方法であって、前記アームの所定の位置に、所定の長さの紐状部材の一端を取り付け、前記紐状部材が前記アームから略鉛直方向に垂れ下がった状態で、前記アームを動かす際に、前記紐状部材が地上に接する状況に基づいて、前記アームが安全に動作できる範囲を判断することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかるアーム動作安全確認方法は、上記発明において、前記紐状部材の前記一端とは反対側の一端(以下「他端」という)の所定の部分が地上から離れていない場合に、前記アームが安全に動作できていると判断することを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかるアーム動作安全確認方法は、上記発明において、前記紐状部材の他端の所定の部分が地上から離れた場合に、前記アームの動作を中止する指示を出すことを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかるアーム動作安全確認方法は、上記発明において、前記紐状部材の長さが、前記アームが進入禁止領域に入った場合に、前記紐状部材の他端の所定の部分が地上から離れる長さに設定されていることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかるアーム動作安全確認方法は、上記発明において、前記紐状部材の他端の所定の部分が地上に接していない場合に、前記アームが安全に動作できていると判断することを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかるアーム動作安全確認方法は、上記発明において、前記紐状部材の他端の所定の部分が地上に接した場合に、前記アームの動作を中止する指示を出すことを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかるアーム動作安全確認方法は、上記発明において、前記紐状部材の長さが、前記アームが進入禁止領域に入った場合に、前記紐状部材の他端の所定の部分が地上に接する長さに設定されていることを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかるアーム動作安全確認方法は、上記発明において、前記紐状部材が、絶縁ロープであることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかるアーム動作安全確認方法は、上記発明において、前記他端の所定の部分が、当該他端の先端であることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかるアーム動作安全確認方法は、上記発明において、前記進入禁止領域が、充電部から活線近接距離の範囲における領域であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
この発明にかかるアーム動作安全確認方法によれば、簡易・安価な構成で、アームの充電部に対する接近、接触、感電の防止をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】この発明にかかる実施の形態1のアーム動作安全確認方法の概要の一例を示す説明図(その1)である。
図1B】この発明にかかる実施の形態1のアーム動作安全確認方法の概要の一例を示す説明図(その2)である。
図2A】この発明にかかる実施の形態2のアーム動作安全確認方法の概要の一例を示す説明図(その1)である。
図2B】この発明にかかる実施の形態2のアーム動作安全確認方法の概要の一例を示す説明図(その1)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるアーム動作安全確認方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1Aおよび図1Bは、この発明にかかる実施の形態1のアーム動作安全確認方法の概要の一例を示す説明図である。図1Aおよび図1Bにおいて、符号100は、クレーン車両である。符号101は、クレーン車両100のアームである。符号102は、紐状部材である。符号103は、監視員である。符号104は、旗である。符号105は、充電部である。また、符号106は、アーム101の進入禁止領域を示している。符号107は、進入禁止ラインを示している。符号108は、地上(地面)を示している。符号109は、クレーン車両100の運転士(操縦士)である。
【0023】
ここで、クレーン車両100は、運転士109の操縦によって、アーム101を動作させて、資材の運搬などの所定の作業をおこなう。作業中のアーム101の上方(作業中のアーム101よりも高い位置)には、充電部(たとえば、NGR母線)105がある。この充電部105から上下方向の所定の距離、たとえば、充電部105からの上下方向の活線近接距離x(具体的には、たとえば250cm以内)の範囲における領域を、アーム101の進入を禁止する進入禁止領域106としている。そして、進入禁止領域106の最下端を、進入禁止ライン107としている。
【0024】
アーム101の所定の位置(たとえば、アーム101の先端付近)に、所定の長さの紐状部材102の一端102aを取り付ける。そうすると、紐状部材102は、アーム101の当該所定の位置から地面108へ向かって略鉛直方向に垂れ下がる。この状態において、アーム101を動かす際に、紐状部材102が地上108に接する状況に基づいて、アーム101が安全に動作できる範囲を判断する。判断は、監視員103が直接、目視して判断してもよく、カメラや赤外線レーザなどの装置を用いて、ロープの先端が地面から離れたことを監視するようにしてもよい。
【0025】
紐状部材102は、たとえば、絶縁ロープなどであってもよい。紐状部材102を絶縁ロープにすることによって、紐状部材102が電線などへ接触してしまったとしても、感電事故などが発生することを防止することができる。したがって、紐状部材102を人手で触れても問題ない。それにより、垂れ下がった紐状部材102のたるみや撚れなどを容易に調整することができる。紐状部材102の材質は、たとえば、化学繊維や、あるいはビニール製などであってもよい。
【0026】
また、充電部105の高さに応じて、長さの異なる紐状部材102を複数用意して、それらを付け替えることによって対応することができる。また、紐状部材102は、長さを可変にできるようにしてもよい。具体的には、たとえばリール式の機構を備え、その長さを可変にすることができるようにしてもよい。これにより、紐状部材102の長さを充電部105の高さに応じて容易に調整することができる。また、紐状部材102の他端102b付近にはおもりを付けてもよい。おもりを付けることで、おもりの自重によって、紐状部材102のたるみや撚れなどを防止し、より適切な監視をすることができる。また、紐状部材102に目盛を付けたり、色を塗り分けることによって、紐状部材102の長さがわかるようにしてもよい。また、あらかじめ長めの紐状部材102を取り付けて、その他端102b付近にマーキングを施すことによって、そのマーキング位置と地面108とが接する状況を監視するようにしてもよい。また、紐状部材102は、絶縁ロープに代えて、絶縁性の棒状の部材を用いるようにしてもよい。
【0027】
紐状部材102の長さは、アーム101が進入禁止領域106に入った場合に、紐状部材102の他端(紐状部材102の一端102aとは反対側の一端)102bの所定の部分(たとえば、他端102bの先端)が地上108から離れる長さに設定されているようにしてもよい。
【0028】
図1Aにおいて、紐状部材102の他端102bの所定の部分(たとえば、他端102bの先端付近)が地上108から離れていない場合、すなわち、紐状部材102の先端付近が地上108に接している場合に、アーム101が安全に動作できていると判断する。すなわち、紐状部材102が地上108に接する状況を監視員103に見せることによって、アーム101が進入禁止領域106に近づいたことを、監視員103に容易にかつ直感的にわからせることができる。したがって、監視員103は、紐状部材102が地上108に接する状況を見て確認すればよい。これにより、監視員103は、アーム101の安全領域での動作を監視することができる。
【0029】
図1Aにおいては、アーム101が、進入禁止ライン107に達していない。アーム101と、進入禁止ライン107との間の最小距離は「a」である。そして、紐状部材102が地面108に接している部分の長さ、すなわち、102bから102cまでの長さが「b」である。したがって、「a」≒「b」という関係が成り立っている。このように、紐状部材102の先端の一部が地面108に接している状態においては、監視員103は、クレーン車両100の運転士109に対して特別な指示をしなくてもよい。
【0030】
図1Bは、図1Aにおけるアーム101が、上記距離「a」だけ、上昇した状態を示している。図1Bにおいて、紐状部材102の他端102bの所定の部分(たとえば、他端102bの先端)が地上108から離れた場合(あるいは離れそうになった場合であってもよい)に、アーム101は、進入禁止ライン107に達している。そのとき、監視員103は、クレーン車両100の運転士109に対してアーム101の動作(具体的には、それ以上の上昇動作)を中止する指示を出す。具体的な指示としては、たとえば、手に持っている旗(たとえば赤旗)104を運転士109に気づかせるように振るとともに、『止まれー』などと声を発して、動作の中止を確実に運転士109に伝えるようにするとよい。このように、監視員103は、紐状部材102が地上108に接する状況を見て確認するだけで、アーム101の充電部105への接近を監視し、クレーン車両100の運転士109に対して適切な指示を出すことができる。
【0031】
(実施の形態2)
図2Aおよび図2Bは、この発明にかかる実施の形態2のアーム動作安全確認方法の概要の一例を示す説明図である。図2Aおよび図2Bにおいて、符号100は、クレーン車両である。符号101は、クレーン車両100のアームである。符号202は、紐状部材である。符号103は、監視員である。符号104は、旗である。符号205は、充電部である。また、符号206は、アーム101の進入禁止領域を示している。符号207は、進入禁止ラインを示している。符号108は、地上を示している。符号109は、クレーン車両100の運転士(操縦士)である。このように、図1Aおよび図1Bと同じ構成については、同じ符号を付している。
【0032】
作業中のアーム101の下方(作業中のアーム101よりも低い位置)には、充電部(たとえば、NGR母線)205がある。この充電部205から所定の距離、たとえば、充電部205から上下方向の活線近接距離xの範囲における領域を、アーム101の進入を禁止する進入禁止領域206としている。そして、進入禁止領域206の最上端を、進入禁止ライン207としている。
【0033】
アーム101の所定の位置(たとえば、アーム101の先端付近)に、所定の長さの紐状部材202の一端202aを取り付ける。そうすると、紐状部材202は、アーム101の所定の位置から地面108へ向かって略鉛直方向に垂れ下がる。この状態において、アーム101を動かす際に、紐状部材202が地上108に接する状況に基づいて、アーム101が安全に動作できる範囲を判断する。紐状部材202は、実施の形態1の紐状部材102と同様に、たとえば、絶縁ロープなどであってもよい。
【0034】
紐状部材202の長さは、アーム101が進入禁止領域206に入った場合に、紐状部材202の他端202bの所定の部分(たとえば、他端202bの先端)が地上108に接する長さに設定されているようにしてもよい。
【0035】
図2Aにおいて、紐状部材202の他端202bの所定の部分(たとえば、他端202bの先端)が地上108から離れている場合、すなわち、紐状部材202の先端付近が地上108に接していない場合に、アーム101が安全に動作できていると判断する。すなわち、紐状部材202が地上108に接する状況を監視員103に見せることによって、アーム101が進入禁止領域206に近づいたことを、監視員103に容易にかつ直感的にわからせることができる。したがって、監視員103は、紐状部材202が地上108に接する状況を見て確認するだけでよい。これにより、監視員103は、アーム101の安全領域での動作を監視することができる。
【0036】
図2Aにおいては、アーム101が、進入禁止ライン207に達していない。アーム101と、進入禁止ライン207との間の最小距離は「c」である。そして、紐状部材202が地面108から離れている距離が「d」である。このように、紐状部材102の先端が地面108から離れている状態においては、監視員103は、クレーン車両100の運転士109に対して特別な指示をしなくてもよい。
【0037】
図2Bは、図2Aにおけるアーム101が、上記距離「c」だけ、下降した状態を示している。図2Bにおいて、紐状部材202の他端202bの所定の部分(たとえば、他端202bの先端)が地上108に接した場合(あるいは接しそうになった場合であってもよい)に、充電部205の略真上に位置する部分にかかるアーム101は、進入禁止ライン207に達している。そのとき、監視員103は、たとえばクレーン車両100の運転士109に対してアーム101の動作(具体的には、それ以上の下降動作)を中止する指示を出す。具体的な指示としては、たとえば、実施の形態1と同様に、手に持っている旗(たとえば赤旗)104を運転士109に気づかせるように振るとともに、『止まれー』などと声を発して、動作の中止を確実に運転士109に伝えるようにするとよい。このように、監視員103は、紐状部材202が地上108に接する状況を見て確認するだけで、アーム101の充電部205への接近を監視し、クレーン車両100の運転士109に対して適切な指示を出すことができる。
【0038】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態のアーム動作安全確認方法は、クレーン車両100のアーム101が安全領域で動作することを確認するアーム動作安全確認方法であって、アーム101の所定の位置に、所定の長さの紐状部材102の一端102aを取り付け、紐状部材102がアーム101から略鉛直方向に垂れ下がった状態で、アーム101を動かす際に、紐状部材102が地上108に接する状況に基づいて、アーム101が安全に動作できる範囲を判断するので、アーム101から紐状部材102を垂らすという単純な構成によって、アーム101の安全領域での動作を監視することができる。
【0039】
また、この発明にかかる実施の形態のアーム動作安全確認方法は、紐状部材102の他端102bの所定の部分が地上108から離れていない場合に、アーム101が安全に動作できていると判断するので、監視員103は、紐状部材102が地上108に接する状況を見て確認するだけで、アーム101の安全領域での動作を監視することができる。
【0040】
また、この発明にかかる実施の形態のアーム動作安全確認方法は、紐状部材102の他端102bの所定の部分が地上108から離れた場合に、アーム101の動作を中止する指示を出すので、監視員103は、紐状部材102が地上108に接する状況を見て確認するだけで、アーム101の充電部への接近を監視し、適切な指示を出すことができる。
【0041】
また、この発明にかかる実施の形態のアーム動作安全確認方法は、紐状部材102の長さが、アーム101が進入禁止領域106に入った場合に、紐状部材102の他端102bの所定の部分が地上108から離れる長さに設定されているので、監視員103は、紐状部材102の他端102bの所定の部分と地上108の状況を見て確認するだけでよい。
【0042】
また、この発明にかかる実施の形態のアーム動作安全確認方法は、紐状部材202の他端202bの所定の部分が地上108に接していない場合に、アーム101が安全に動作できていると判断するので、監視員103は、紐状部材202が地上108に接する状況を見て確認するだけで、アーム101の安全領域での動作を監視することができる。
【0043】
また、この発明にかかる実施の形態のアーム動作安全確認方法は、紐状部材202の他端202bの所定の部分が地上108に接した場合に、アーム101の動作を中止する指示を出すので、監視員103は、紐状部材202が地上108に接する状況を見て確認するだけで、アーム101の充電部への接近を監視し、適切な指示を出すことができる。
【0044】
また、この発明にかかる実施の形態のアーム動作安全確認方法は、紐状部材202の長さが、アーム101が進入禁止領域206に入った場合に、紐状部材202の他端202bの所定の部分が地上108に接する長さに設定されているので、監視員103は、紐状部材202の他端202bの所定の部分と地上108の状況を見て確認するだけでよい。
【0045】
また、この発明にかかる実施の形態のアーム動作安全確認方法は、紐状部材102、202が、絶縁ロープであるので、紐状部材102、202の電線などへの接触によって、感電事故が発生することなどを防止することができる。
【0046】
また、この発明にかかる実施の形態のアーム動作安全確認方法は、他端102b、202bの所定の部分が、他端102b、202bの先端であるので、先端が地面108に接しているか、離れているかによって、見誤ることなく、より正確にアーム101の充電部への接近状況を確認することができる。
【0047】
また、この発明にかかる実施の形態のアーム動作安全確認方法は、進入禁止領域106、206が、充電部105、205から活線近接距離xの範囲における領域であるので、アーム101による接触、感電事故を確実に防止することができる。
【0048】
このように、この発明にかかる実施の形態のアーム動作安全確認方法は、紐状部材102、202を、アーム101から垂らすという簡易・安価な構成で、アーム101の充電部105、205に対する接近、接触、感電の防止をすることができる。また、市街地などにおいても活用することができる。大がかりな装置が不要なため、事前の準備なども不要であり、また、クレーン作業の邪魔にならない。また、この発明にかかる実施の形態のアーム動作安全確認方法の応用例として、施設の所定の位置に紐状部材102、202の先端を固定して、紐状部材102、202の張り具合を確認することで、横方向の充電部105、205の接近を監視するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、クレーン車両のアームが安全領域で動作することを確認するアーム動作安全確認方法に有用であり、特に、アームの充電部に対する接近、接触、感電の防止をするアーム動作安全確認方法に適している。
【符号の説明】
【0050】
100 クレーン車両
101 アーム
102 紐状部材(絶縁ロープ)
103 監視員
104 旗
105、205 充電部(NGR母線)
106、206 進入禁止領域
107、207 進入禁止ライン
108 地上(地面)
109 運転士
図1A
図1B
図2A
図2B