(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】産業用制御装置の出力モジュール
(51)【国際特許分類】
G05B 19/05 20060101AFI20240326BHJP
G05B 9/02 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G05B19/05 L
G05B9/02 A
(21)【出願番号】P 2019171670
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】前川 貴昭
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-328674(JP,A)
【文献】特開2018-102030(JP,A)
【文献】実開平04-108299(JP,U)
【文献】特開昭51-075926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/05
G05B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧が与えられる電源端子と外部の負荷に接続される出力端子との間を開閉する出力回路と、前記出力回路の動作を制御する制御部と、を備える産業用制御装置の出力モジュールであって、
前記出力回路は、前記電源端子および前記出力端子の間に直列接続され且つ互いに同様にオンオフされる複数のスイッチと、前記電源端子および前記出力端子の間の電圧を分圧した分圧電圧を出力する分圧回路と、を備え、
前記制御部は、前記複数のスイッチのオンオフを制御する開閉制御部と、前記分圧電圧に基づいて前記スイッチの短絡故障を診断する診断部と、を備え、
前記分圧回路は、電流が流れることでその端子間に電圧が生じる複数の電圧発生部が直列接続された構成であり、
前記複数の電圧発生部は、前記スイッチのそれぞれに並列接続されており、
前記診断部は、前記開閉制御部により複数の前記スイッチの全てがオフするように制御される期間における前記分圧電圧が複数の前記スイッチの全てが正常にオフしているときの前記分圧電圧の値に基づいて設定された正常電圧の範囲内である場合には前記スイッチに前記短絡故障が生じていないと診断し、前記分圧電圧が前記正常電圧の範囲外である場合には前記スイッチに前記短絡故障が生じていると診断
し、
さらに、前記分圧電圧の値を検出する電圧検出部を備え、
前記診断部は、前記電圧検出部により検出された前記分圧電圧の検出値が前記正常電圧の範囲の上限値を超える場合、その分圧電圧の出力ノードに接続される2つの前記スイッチのうち前記電源端子側の前記スイッチが前記短絡故障していると診断し、前記分圧電圧の検出値が前記正常電圧の範囲の下限値未満である場合、前記出力端子側の前記スイッチが前記短絡故障していると診断する産業用制御装置の出力モジュール。
【請求項2】
前記分圧回路は、前記開閉制御部により複数の前記スイッチの全てがオフするように制御される期間に前記電圧発生部を通じて流れる電流が、予め規定されたオフ電流以下となるように構成されている請求項1に記載の産業用制御装置の出力モジュール。
【請求項3】
前記分圧回路は、さらに、一方の端子が前記出力端子に接続される前記電圧発生部に対して前記出力端子側をアノードとして並列接続されたダイオードを備える請求項1または2に記載の産業用制御装置の出力モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源電圧が与えられる電源端子と外部の負荷に接続される出力端子との間を開閉する出力回路を備えた産業用制御装置の出力モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばプログラマブルロジックコントローラなどの産業用制御装置では、その産業用制御装置の動作全般を制御するCPUモジュールから与えられる指令に基づいて所定の出力制御を行う出力モジュールが設けられている(例えば特許文献1参照)。なお、本明細書では、プログラマブルロジックコントローラのことをPLCと省略することがある。
【0003】
上記出力制御としては、外部に接続される負荷に対する動力の供給の制御を挙げることができる。このような出力制御を行う出力モジュールは、電源電圧が与えられる電源端子と外部の負荷に接続される出力端子との間を開閉する出力回路を備えている。そして、その出力回路としては、出力制御の多重化を図るため、電源端子と出力端子の間に直列接続され且つ互いに同様にオンオフされる2つのスイッチ(例えばFETなど)を備えた構成が採用されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PLCの出力モジュールでは、機能安全の観点から、出力回路が負荷に対する動力を遮断するための能力、つまり出力回路をオフするための能力が適切に機能しているかどうかを定期的に検証するといった自己診断の機能が必要となる。そして、上記構成の出力モジュールでは、2つのスイッチが独立してオフできること、言い換えると、2つのスイッチのそれぞれに短絡故障が生じていないこと、を検証しなければならない。そこで、従来では、2つのスイッチのそれぞれを独立して順番にオフすることで上記した診断が行われていた。以下、このような診断の手法を従来技術と称する。
【0006】
従来技術では、2つのスイッチを独立して順番にオフする必要があることから、診断に要する時間(診断期間)が比較的長い時間となる。そして、このような診断期間には、2つのスイッチのいずれかがオフされることから、負荷に対する動力の供給が遮断されることになる。このようなことから、従来技術では、診断のために負荷に対する動力の供給が遮断される期間が比較的長い時間となる。このような診断を負荷に対する動力の供給を実行する通常時に行うことを想定した場合、負荷としては、診断のために動力が所定時間だけ遮断されたとしても、その動作に影響を及ぼさないような仕様のもの、具体的には、動力の遮断に対する応答性の低い(反応速度が遅い)ものを使用する必要が生じる。
【0007】
しかしながら、このような動力の遮断に対する応答性の低い負荷を用いると次のような別の問題が生じるおそれがある。すなわち、負荷(例えばソレノイドなど)により動作が制御される装置(例えばモータなど)を非常停止させる場合、出力モジュールから負荷に対する動力の供給が遮断されると、速やかに装置の動作が停止することが望ましい。しかし、動力の遮断に対する応答性の低い負荷では、出力モジュールからの動力の供給が遮断されても、装置の動作を停止させるまでに時間を要してしまい、非常停止の実施が遅れるおそれがある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、出力回路の診断に要する時間を短く抑えることができる産業用制御装置の出力モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の産業用制御装置の出力モジュールは、電源電圧が与えられる電源端子と外部の負荷に接続される出力端子との間を開閉する出力回路と、出力回路の動作を制御する制御部と、を備える。出力回路は、電源端子および出力端子の間に直列接続され且つ互いに同様にオンオフされる複数のスイッチと、電源端子および出力端子の間の電圧を分圧した分圧電圧を出力する分圧回路と、を備える。制御部は、複数のスイッチのオンオフを制御する開閉制御部と、分圧電圧に基づいてスイッチの短絡故障を診断する診断部と、を備える。
【0010】
分圧回路は、電流が流れることでその端子間に電圧が生じる複数の電圧発生部が直列接続された構成である。複数の電圧発生部は、スイッチのそれぞれに並列接続されている。このような構成の分圧回路から出力される分圧電圧は、複数のスイッチのオンオフ状態に応じて変化する。具体的には、分圧電圧は、複数のスイッチのうち電源端子側に設けられたスイッチがオンするとともに他のスイッチがオフする期間には電源電圧に近い電圧となる。また、分圧電圧は、複数のスイッチのうち出力端子側に設けられたスイッチがオンするとともに他のスイッチがオフする期間には0Vに近い電圧となる。また、分圧電圧は、複数のスイッチの全てがオフする期間には電源電圧と0Vの間の電圧(中間電位)となる。
【0011】
そのため、複数のスイッチの全てに短絡故障が生じていない正常時には、開閉制御部により複数のスイッチの全てがオフするように制御される期間において分圧回路から出力される分圧電圧は上述した中間電位となる。これに対し、複数のスイッチの少なくとも1つに短絡故障が生じているときには、開閉制御部により複数のスイッチの全てがオフするように制御される期間において分圧回路から出力される分圧電圧は、短絡故障が生じているスイッチがオンしているときと同様の状態となることから、上述した中間電位とは異なる電圧(電源電圧に近い電圧または0Vに近い電圧)となる。
【0012】
このような点を踏まえ、診断部は、開閉制御部により複数のスイッチの全てがオフするように制御される期間における分圧電圧が、複数のスイッチの全てが正常にオフしているときの分圧電圧の値(中間電位)に基づいて設定された正常電圧の範囲内である場合にはスイッチに短絡故障が生じていないと診断する。また、診断部は、上記期間における分圧電圧が正常電圧の範囲外である場合にはスイッチに短絡故障が生じていると診断する。このような構成によれば、スイッチの短絡故障を診断する際、従来技術のように複数のスイッチを独立して順番にオフする必要はなく、複数のスイッチの全てを同じタイミングでオフすればよいことになる。したがって、上記構成によれば、出力回路の診断に要する時間を短く抑えることができる。
【0013】
上記構成によれば、従来技術に比べて出力回路の診断に要する時間が短く抑えられるため、スイッチの短絡故障の診断を負荷に対する動力(電源電圧)の供給を実行する通常時に行うことを想定した場合、従来技術に比べ、動力の遮断に対する応答性の高い(反応速度が速い)負荷を使用することが可能となる。そのため、上記構成によれば、負荷により動作が制御される装置を非常停止させる際、出力モジュールから負荷に対する動力の供給が遮断されると速やかに装置の動作を停止させることができるため、安全性を良好なものとすることができる。
【0014】
上記構成によれば、スイッチの短絡故障の診断を負荷に対する動力(電源電圧)の供給を停止する停止時に行うことを想定した場合にも、通常時と同様に診断を行うことができる。ただし、停止時、開閉制御部により複数のスイッチの全てがオフするように制御されていることから電源端子からスイッチを介して負荷に対して電流が供給されることはないものの、分圧回路の電圧発生部を介して負荷に対して電流が供給されることになる。電圧発生部を通じて流れる電流が、負荷が動作可能となるような大きさの電流になると、停止時にもかかわらず負荷が誤って動作するおそれがある。
【0015】
そこで、請求項2に記載の産業用制御装置の出力モジュールにおいて、分圧回路は、開閉制御部により複数のスイッチの全てがオフするように制御される期間に電圧発生部を通じて流れる電流が、予め規定されたオフ電流以下となるように構成されている。オフ電流は、負荷が動作可能となる電流の下限値未満の電流として規定すればよい。このような構成によれば、停止時、電圧発生部を通じて流れる電流の影響により負荷が誤って動作することはなく、負荷を非動作状態に確実に維持することができる。
【0016】
請求項3に記載の産業用制御装置の出力モジュールにおいて、分圧回路は、さらに、一方の端子が出力端子に接続される電圧発生部に対して出力端子側をアノードとして並列接続されたダイオードを備える。このような構成によれば、次のような効果が得られる。すなわち、上記構成の出力モジュールでは、出力端子が電源電圧などが供給される個所に短絡する、いわゆる天絡が生じると、スイッチのオンオフ状態にかかわらず負荷に対して動力が供給されたままとなり、そのような状態を出力モジュール側では解消することができなくなる。
【0017】
そのため、出力モジュールでは、このような天絡の発生については確実に検出して、その旨をCPUモジュールなどに伝達する必要がある。上記構成では、分圧回路に上述したようなダイオードが設けられていることから、出力端子が天絡すると、開閉制御部により複数のスイッチの全てがオフするように制御されたとしても、ダイオードが並列接続された電圧発生部に対応する分圧電圧が電源電圧などと同様の電圧となる。したがって、診断部は、このような分圧電圧に基づいて、出力端子の天絡についても検出することができる。
【0018】
請求項1に記載の産業用制御装置の出力モジュールは、さらに、分圧電圧の値を検出する電圧検出部を備える。この場合、診断部は、電圧検出部により検出された分圧電圧の検出値が正常電圧の範囲の上限値を超える場合、その分圧電圧の出力ノードに接続される2つのスイッチのうち電源端子側のスイッチが短絡故障していると診断し、分圧電圧の検出値が正常電圧の範囲の下限値未満である場合、出力端子側のスイッチが短絡故障していると診断する。このような構成によれば、複数のスイッチの短絡故障を検出するだけでなく、どのスイッチに短絡故障が生じているのかを精度良く特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係るPLCの構成を模式的に示す図
【
図2】第1実施形態に係る診断のために用いられる閾値を説明するための図
【
図3】第1実施形態に係る正常時における診断を説明するためのタイミングチャート
【
図4】第1実施形態に係る上流側短絡故障発生時における診断を説明するためのタイミングチャート
【
図5】第1実施形態に係る下流側短絡故障発生時における診断を説明するためのタイミングチャート
【
図6】比較例に係る出力モジュールの構成を模式的に示す図
【
図7】比較例に係る診断シーケンスを説明するためのタイミングチャート
【
図8】比較例に係る下流側のスイッチが短絡故障した状態の出力モジュールの構成を模式的に示す図
【
図9】比較例に係る下流側のスイッチが短絡故障する前後における診断電圧の変化を説明するためのタイミングチャート
【
図10】第1実施形態に係る下流側のスイッチが短絡故障した状態の出力モジュールの構成を模式的に示す図
【
図11】第1実施形態に係る下流側のスイッチが短絡故障する前後における診断電圧の変化を説明するためのタイミングチャート
【
図12】第2実施形態に係るPLCの構成を模式的に示す図
【
図13】第3実施形態に係るPLCの構成を模式的に示す図
【
図14】第4実施形態に係るPLCの構成を模式的に示す図
【
図15】第5実施形態に係るPLCの構成を模式的に示す図
【
図16】第5実施形態に係る診断のために用いられる閾値を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について
図1~
図11を参照して説明する。
【0021】
図1に示すように、産業用制御装置であるPLC1は、その動作全般を制御するCPUモジュール2、出力モジュール3、図示しない入力モジュールなどを備えている。PLC1は、例えば産業用のロボットなどに設けられたモータMの動作を制御する。CPUモジュール2および出力モジュール3を含めたPLC1を構成する各モジュールは、バス通信ラインを介して、それぞれの間で通信可能に構成されている。
【0022】
出力モジュール3は、CPUモジュール2から与えられる指令に基づいて負荷であるソレノイド4に対する動力、より具体的には電源電圧Vaの供給を制御する。ソレノイド4は、後述する出力端子P2とグランド(0V)との間に接続されたコイル4aと、コイル4aに通電されることで閉じられる接点4bと、を備えている。接点4bは、モータMに対する給電経路を開閉するように設けられている。
【0023】
出力モジュール3は、例えば+24Vの電源電圧Vaが与えられる電源端子P1、外部のソレノイド4に接続される出力端子P2、出力回路5および制御部6を備えるデジタル出力モジュールである。出力回路5は、電源端子P1と出力端子P2との間を開閉するものであり、2つのスイッチSWH、SWLおよび分圧回路7を備えている。スイッチSWH、SWLは、電源端子P1および出力端子P2の間に直列接続されている。本実施形態では、スイッチSWH、SWLは、例えばMOSFETなどの半導体スイッチング素子である。なお、スイッチSWH、SWLは、例えば機械式のリレーなどであってもよい。
【0024】
スイッチSWHは、制御部6から与えられる2値の制御信号SHに従ってオンオフされる。具体的には、スイッチSWHは、制御信号SHがハイレベルのときにオンされるとともにロウレベルのときにオフされる。スイッチSWLは、制御部6から与えられる制御信号SLに従ってオンオフされる。具体的には、スイッチSWLは、制御信号SLがハイレベルのときにオンされるとともにロウレベルのときにオフされる。この場合、制御信号SH、SLは同様の信号となっており、これによりスイッチSWH、SWLは、互いに同様にオンオフされる。
【0025】
分圧回路7は、電源端子P1および出力端子P2の間の電圧を分圧したアナログ電圧である分圧電圧を出力する。分圧回路7は、電流制限回路8および抵抗9が直列接続された構成となっている。電流制限回路8は、一定の電流を出力する定電流源であり、電源端子P1とスイッチSWH、SWLの相互接続ノードであるノードN1との間に接続されている。つまり、電流制限回路8は、スイッチSWHに並列接続されている。
【0026】
なお、ノードN1は、分圧回路7による分圧電圧の出力ノードでもある。以下の説明では、スイッチSWH、SWLのうち、ノードN1より電源端子P1側に設けられたスイッチSWHのことを上流側のスイッチSWHと称するとともに、ノードN1より出力端子P2側に設けられたスイッチSWLのことを下流側のスイッチSWLとも称する。
【0027】
抵抗9は、ノードN1と出力端子P2との間に接続されている。つまり、抵抗9は、スイッチSWLに並列接続されている。このように、電流制限回路8および抵抗9は、スイッチSWH、SWLのそれぞれに並列接続され且つ電流が流れることでその端子間に電圧が生じる複数の電圧発生部として機能する。分圧回路7のノードN1より出力される分圧電圧は、出力回路5の故障診断のためのリードバック信号として機能する診断電圧Vbとなり、制御部6に与えられる。
【0028】
制御部6は、出力回路5の動作を制御するものであり、マイクロコンピュータ11、12を備えている。なお、本明細書では、マイクロコンピュータのことをマイコンと省略することがある。この場合、2つのスイッチSWH、SWLのそれぞれに対応するように2つのマイコン11、12が設けられている。つまり、この場合、機能安全の観点から、2つのスイッチSWH、SWLは、2つのマイコン11、12により独立して制御されるようになっている。
【0029】
マイコン11は、開閉制御部13、電圧検出部14および診断部15を備えている。開閉制御部13および診断部15は、マイコン11のCPUがROMに格納されているコンピュータプログラムを実行してコンピュータプログラムに対応する処理を実行することにより実現されている、つまりソフトウェアにより実現されている。なお、開閉制御部13および診断部15は、ハードウェア、または、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現することもできる。
【0030】
開閉制御部13は、スイッチSWHのオンオフを制御するものであり、前述した制御信号SHを生成する。電圧検出部14は、診断電圧Vbの値を検出するものであり、例えばマイコン11に内蔵されるA/D変換器などにより構成されている。なお、電圧検出部14は、例えばマイコン11の外部に設けられるA/D変換器を用いて構成することもできる。診断部15は、診断電圧Vbに基づいてスイッチSWH、SWLの短絡故障を診断する。
【0031】
マイコン12は、開閉制御部16、電圧検出部17および診断部18を備えている。開閉制御部16および診断部18は、マイコン12のCPUがROMに格納されているコンピュータプログラムを実行してコンピュータプログラムに対応する処理を実行することにより実現されている、つまりソフトウェアにより実現されている。なお、開閉制御部16および診断部18は、ハードウェア、または、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現することもできる。
【0032】
開閉制御部16は、スイッチSWLのオンオフを制御するものであり、前述した制御信号SLを生成する。電圧検出部17は、診断電圧Vbの値を検出するものであり、例えばマイコン12に内蔵されるA/D変換器などにより構成されている。なお、電圧検出部17は、例えばマイコン12の外部に設けられるA/D変換器を用いて構成することもできる。診断部18は、診断電圧Vbに基づいてスイッチSWH、SWLの短絡故障を診断する。
【0033】
マイコン11が備える電圧検出部14および診断部15と、マイコン12が備える電圧検出部17および診断部18とは、同様の機能を有するものであるが、この場合、冗長性を持たせるために、同様の機能を有する各構成が2組設けられている。以下の説明では、電圧検出部14および診断部15を例に、これらの動作などを説明するが、電圧検出部17および診断部18についても同様の動作などを行うようになっている。
【0034】
本実施形態では、診断部15は、開閉制御部13、16により2つのスイッチSWH、SWLの全てがオフするように制御される期間における診断電圧Vbが正常電圧の範囲内である場合にはスイッチSWH、SWLに短絡故障が生じていないと診断する。正常電圧は、2つのスイッチSWH、SWLの全てが正常にオフしているときの診断電圧Vb(分圧電圧)の値に基づいて予め設定されている。また、診断部15は、上記期間における診断電圧Vbが正常電圧の範囲外である場合にはスイッチSWH、SWLに短絡故障が生じていると診断する。
【0035】
この場合、スイッチSWHの短絡故障には、スイッチSWH自体の故障だけでなく、そのオンオフを制御するための制御信号SHの供給ラインがハイレベルに対応する電圧線などに短絡するような固着故障も含まれている。また、この場合、スイッチSWLの短絡故障には、スイッチSWL自体の故障だけでなく、そのオンオフを制御するための制御信号SLの供給ラインがハイレベルに対応する電圧線などに短絡するような固着故障も含まれている。
【0036】
続いて、診断部15によるスイッチSWH、SWLの故障診断の具体的な手法について説明する。上記構成では、「電源端子P1→電流制限回路8→抵抗9→出力端子P2→ソレノイド4のコイル4a」という経路で電流が流れる。本明細書では、このような電流、つまり電流制限回路8および抵抗9を通じて流れる電流をリーク電流ILと称することとする。リーク電流ILは、スイッチSWH、SWLの双方がオンされる期間およびスイッチSWH、SWLの双方がオフされる期間のいずれにおいても流れる。
【0037】
この場合、スイッチSWH、SWLの全てがオフされる期間におけるリーク電流ILの電流値がオフ電流以下となるように、電流制限回路8の電流値、抵抗9の抵抗値などが設定されている。オフ電流は、ソレノイド4が動作可能となる(ソレノイド4の接点4bが閉じる)電流の下限値(例えば1mA)未満の電流として予め規定されている。このようなリーク電流ILが流れるようになっている上記構成では、診断電圧Vbは、スイッチSWH、SWLのオンオフ状態に応じて次のように変化する。
【0038】
すなわち、上流側のスイッチSWHがオンされるとともに下流側のスイッチSWLがオフされる期間、診断電圧Vbは、下記(1)式に示すような電圧、つまり電源電圧Vaに近い電圧となる。
Vb≒Va …(1)
【0039】
また、上流側のスイッチSWHがオフされるとともに下流側のスイッチSWLがオンされる期間、診断電圧Vbは、下記(2)式に示すような電圧、つまり0Vに近い電圧となる。ただし、ソレノイド4のコイル4aの抵抗値は、抵抗9の抵抗値よりも十分に小さい値(例えば数mΩ)であることから0Vであるものとしている。
Vb≒0V …(2)
【0040】
さらに、スイッチSWH、SWLの双方がオフされる期間、診断電圧Vbは、下記(3)式に示すような電圧、つまり電源電圧Vaと0Vの間の電圧(中間電位)となる。ただし、抵抗9の抵抗値をR1とする。
Vb=IL×R1 …(3)
【0041】
このようなことから、スイッチSWH、SWLの双方に短絡故障が生じていない正常時には、開閉制御部13、16により2つのスイッチSWH、SWLの双方がオフするように制御される期間における診断電圧Vbは、上記(3)式に示すような中間電位となる。これに対し、スイッチSWHに短絡故障が生じているときには、開閉制御部13、16によりスイッチSWH、SWLの双方がオフするように制御される期間における診断電圧Vbは、短絡故障が生じているスイッチSWHがオンしているときと同様の状態となることから、上記(1)式に示すような電源電圧Vaに近い電圧となる。
【0042】
また、スイッチSWLに短絡故障が生じているときには、開閉制御部13、16によりスイッチSWH、SWLの双方がオフするように制御される期間における診断電圧Vbは、短絡故障が生じているスイッチSWLがオンしているときと同様の状態となることから、上記(2)式に示すような0Vに近い電圧となる。
【0043】
したがって、診断部15は、開閉制御部13、16によりスイッチSWH、SWLの双方がオフするように制御される期間における診断電圧Vbが、中間電位付近の電圧である場合、2つのスイッチSWH、SWLに短絡故障が生じていないと診断することができる。また、診断部15は、上記期間における診断電圧Vbが電源電圧Va付近の電圧である場合、上流側のスイッチSWHに短絡故障が生じていると診断することができる。さらに、診断部15は、上記期間における診断電圧Vbが0V付近の電圧である場合、下流側のスイッチSWLに短絡故障が生じていると診断することができる。
【0044】
そこで、本実施形態では、診断部15は、電圧検出部14により検出された診断電圧Vbの検出値が閾値V+を超える場合、診断電圧Vbの出力ノードであるノードN1に接続される2つのスイッチSWH、SWLのうち電源端子P1側(上流側)のスイッチSWHが短絡故障していると診断する。
図2に示すように、閾値V+は、中間電位(=IL×R1)より高く且つ電源電圧Vaより低い所定の電圧値に設定されている。
【0045】
また、診断部15は、電圧検出部14により検出された診断電圧Vbの検出値が閾値V-未満である場合、ノードN1に接続される2つのスイッチSWH、SWLのうち出力端子P2側(下流側)のスイッチSWLが短絡故障していると診断する。
図2に示すように、閾値V-は、中間電位より低く且つ0Vより高い所定の電圧値に設定されている。この場合、閾値V+から閾値V-の範囲が正常電圧の範囲に相当する。そして、閾値V+は、正常電圧の範囲の上限値であり、閾値V-は、正常電圧の範囲の下限値である。
【0046】
次に、本実施形態の診断部15によるスイッチSWH、SWLの故障診断の診断シーケンスについて、
図3~
図5のタイミングチャートを参照して説明する。なお、
図3~
図5では、制御信号SH、SLについて、ハイレベルを「H」と表すとともにロウレベルを「L」と表している。この場合、ソレノイド4に対する動力(電源電圧Va)の供給を実行する通常時にスイッチSWH、SWLの故障診断を行うことを想定している。
【0047】
すなわち、
図3~
図5に示すように、時刻t1以前および時刻t2以降の期間は、ソレノイド4に対する動力の供給を実行する通常動作期間であり、制御信号SH、SLがいずれもハイレベルとなっており、これによりスイッチSWH、SWLの双方がオンに制御されている。これに対し、時刻t1~t2の期間Taは、スイッチSWH、SWLの故障診断を行う診断期間であり、制御信号SH、SLがいずれもロウレベルとなっており、これによりスイッチSWH、SWLの双方がオフに制御されている。
【0048】
このように、本実施形態の診断シーケンスとしては、スイッチSWH、SWLの双方をオフに制御するという1つの手順(1ステップ)しか必要としない。また、この場合、診断期間は、電源電圧Vaの供給が遮断されてからソレノイド4の接点4bがオフされるまでに要する時間(ソレノイド4の反応時間)よりも十分に短い時間に設定されている。言い換えると、ソレノイド4としては、故障診断のために2つのスイッチSWH、SWLの双方がオフ制御されたとしても、その接点4bがオフしないような応答性のものが用いられている。
【0049】
[1]正常時における診断
スイッチSWH、SWLのいずれにも短絡故障が生じていない正常時、診断部15は、次のように診断を行う。
図3に示すように、正常時、期間Taの開始時点である時刻t1において、スイッチSWH、SWLのオフ制御が開始されることから、診断電圧Vbは電源電圧Vaから低下し始める。
【0050】
その後、診断電圧Vbは、前述した中間電位(=IL×R1)まで低下し、期間Taのほとんどを通じて中間電位に維持される。診断部15は、このような期間Taにおける診断電圧Vbの検出値に基づいてスイッチSWH、SWLの故障診断を行う。この場合、期間Taにおける診断電圧Vbは閾値V+と閾値V-の間の電圧であることから、診断部15は、スイッチSWH、SWLに短絡故障が生じていないと診断する。
【0051】
[2]上流側短絡故障発生時における診断
上流側のスイッチSWHに短絡故障が生じている上流側短絡故障時、診断部15は、次のように診断を行う。
図4に示すように、上流側短絡故障時、期間Taの開始時点である時刻t1において、スイッチSWH、SWLのオフ制御が開始されるものの、スイッチSWHが短絡故障しているため、診断電圧Vbは電源電圧Vaに維持される。
【0052】
つまり、この場合、診断電圧Vbは、期間Ta中も電源電圧Vaに維持されたままとなる。診断部15は、このような期間Taにおける診断電圧Vbの検出値に基づいてスイッチSWH、SWLの故障診断を行う。この場合、期間Taにおける診断電圧Vbが閾値V+より高い電源電圧Vaであることから、診断部15は、スイッチSWHに短絡故障が生じていると診断する。
【0053】
[3]下流側短絡故障発生時における診断
下流側のスイッチSWLに短絡故障が生じている下流側短絡故障時、診断部15は、次のように診断を行う。
図5に示すように、下流側短絡故障時、期間Taの開始時点である時刻t1において、スイッチSWH、SWLのオフ制御が開始されることから、診断電圧Vbは電源電圧Vaから低下し始める。
【0054】
この場合、スイッチSWLが短絡故障しているため、診断電圧Vbは、0Vまで低下し、期間Taのほとんどを通じて0Vに維持される。診断部15は、このような期間Taにおける診断電圧Vbの検出値に基づいてスイッチSWH、SWLの故障診断を行う。この場合、期間Taにおける診断電圧Vbが閾値V-未満の0Vであることから、診断部15は、スイッチSWLに短絡故障が生じていると診断する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の構成によれば、スイッチSWH、SWLの短絡故障を診断する際、従来技術のように複数のスイッチを独立して順番にオフする必要はなく、スイッチSWH、SWLの全てを同じタイミングでオフすればよいことになる。したがって、本実施形態によれば、従来技術に比べ、出力回路5のスイッチSWH、SWLの診断に要する時間を短く抑えることができる。
【0056】
このような本実施形態により得られる効果について、従来技術に相当する構成である比較例と比較しつつ詳細に説明する。なお、比較例において、本実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
図6に示すように、比較例の出力モジュール21は、出力回路22およびマイコン23、24を備えている。出力回路22は、電源端子P1と出力端子P2の間に直列接続された2つのスイッチSWH、SWLを備えている。
【0057】
スイッチSWH、SWLのオンオフは、それぞれマイコン23、24から出力される制御信号SH、SLにより制御される。スイッチSWHとスイッチSWLの相互接続ノードであるノードN21の電圧は、診断電圧Vb1としてマイコン23に与えられている。スイッチSWLの下流側端子の電圧は、診断電圧Vb2としてマイコン24に与えられている。マイコン23は、診断電圧Vb1に基づいてスイッチSWHの短絡故障を診断する。また、マイコン24は、診断電圧Vb2に基づいてスイッチSWLの短絡故障を診断する。
【0058】
このような構成の比較例では、スイッチSWH、SWLのそれぞれに短絡故障が生じているか否かを診断する際、スイッチSWH、SWLのそれぞれを独立して順番にオフ制御する必要がある。そのため、
図7に示すように、比較例では、通常時における診断シーケンスとしては、時刻t1~t2の期間においてスイッチSWHをオフに制御するという手順と、時刻t2~t3の期間においてスイッチSWLをオフに制御するという手順との2つの手順(2ステップ)が必要となる。
【0059】
そのため、比較例における診断期間である時刻t1~t3の期間Tbは、本実施形態における診断期間である期間Taの概ね2倍程度の期間といった比較的長い期間となる。このような診断期間Tbには、2つのスイッチSWH、SWLのいずれかがオフされることから、出力端子P2の電圧が0Vとなる、つまりソレノイド4に対する動力(電源電圧Va)の供給が遮断される。
【0060】
比較例では、このような比較的長い期間だけ電源電圧Vaの供給が停止されたとしても、接点4bのオン状態を維持できるような反応速度の遅いソレノイド4を用いなければならない。そうすると、非常停止に要する時間がむやみに長期化するなどの別の問題が生じる。これに対し、本実施形態では、通常時における診断シーケンスとしては1ステップしか必要ではないため、ソレノイド4に対する動力の供給が遮断される期間は、比較例における同期間の概ね1/2となる。
【0061】
このように、本実施形態によれば、比較例に比べてスイッチSWH、SWLの診断に要する時間が短く抑えられる。そのため、本実施形態によれば、スイッチSWH、SWLの短絡故障の診断を通常時に行うことを想定した場合、比較例に比べ、動力の遮断に対する応答性の高い(反応速度が速い)ソレノイド4を使用することが可能となる。したがって、本実施形態によれば、ソレノイド4により動作が制御される装置であるモータMを非常停止させる際、出力モジュール3からソレノイド4に対する動力の供給が遮断されると速やかにモータMの動作を停止させることができるため、安全性を良好なものとすることができる。
【0062】
また、一般に、PLCの出力モジュールは、複数の負荷に対して動力を供給する構成となっている。このような構成において、負荷に接続される各出力端子同士、つまり各チャンネル同士での短絡故障が生じる可能性があり、各チャンネルに対応する出力回路の診断が同時に行われると、このようなチャンネル間の短絡故障を検出することが困難となる。そこで、チャンネル毎に出力回路の診断のタイミングをずらす必要が生じる。
【0063】
ただし、PLCの機能安全の規格要求では、診断に要する時間が規定されており、その規定された時間内に診断を終える必要がある。本実施形態によれば、上述したように診断に要する時間を比較例に比べて1/2程度に抑えることができることから、規定された時間内に、比較例の2倍程度の数のチャンネルに対応する出力回路の診断を行うことができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、スイッチSWH、SWLの短絡故障の診断をソレノイド4に対する動力(電源電圧Va)の供給を停止する停止時に行うことを想定した場合にも、通常時と同様に診断を行うことができるという点において比較例よりも優れている。以下、この理由について説明する。すなわち、比較例では、停止時には、
図8に示すように、上流側のスイッチSWHに短絡故障が生じておらず且つ下流側のスイッチSWLが短絡故障している場合、その短絡故障を検出することができない。
【0065】
なぜなら、
図9に示すように、比較例では、停止時、スイッチSWLに短絡故障が生じていないとき(時刻ta以前の期間)と、スイッチSWLに短絡故障が生じているとき(時刻ta以降の期間)と、のいずれにおいても、診断電圧Vb1、Vb2は0Vとなる。つまり、比較例では、停止時、スイッチSWLに短絡故障が生じているか否かに応じて診断電圧Vb1、Vb2が変化しないため、その短絡故障を検出することができない。
【0066】
なお、比較例でも、停止時、上流側のスイッチSWHだけをオンするように制御すれば、スイッチSWLの短絡故障を検出することができるが、そうすると、スイッチSWHをオンしている期間、ソレノイド4に対して電源電圧Vaが供給されることになり、停止時であるにもかかわらず、誤ってソレノイド4の接点4bがオンする可能性が生じるという別の問題が生じてしまう。
【0067】
これに対し、本実施形態によれば、診断電圧Vbは、停止時も、通常時と同様に、スイッチSWH、SWLのオンオフ状態に応じて変化する電圧となる。すなわち、本実施形態では、
図10に示すように、上流側のスイッチSWHに短絡故障が生じておらず且つ下流側のスイッチSWLが短絡故障している場合、停止時に、その短絡故障を検出することができる。
【0068】
なぜなら、
図11に示すように、本実施形態では、停止時、診断電圧Vbは、スイッチSWLに短絡故障が生じていないとき(時刻ta以前の期間)には電源電圧Vaに近い電圧となり、スイッチSWLに短絡故障が生じているとき(時刻ta以降の期間)には0Vに近い電圧となる。つまり、本実施形態では、停止時、スイッチSWLに短絡故障が生じているか否かに応じて診断電圧Vbが変化するため、その短絡故障を検出することができる。
【0069】
ただし、本実施形態では、停止時、開閉制御部13、16によりスイッチSWH、SWLの双方がオフするように制御されていることから電源端子P1からスイッチSWH、SWLを介してソレノイド4に対して電流が供給されることはないものの、分圧回路7の電流制限回路8および抵抗9を介してソレノイド4に対して電流(リーク電流IL)が供給されることになる。このようなリーク電流ILが、ソレノイド4が動作可能となるような(接点4bがオンするような)大きさの電流になると、停止時にもかかわらずソレノイド4、ひいてはモータMが誤って動作するおそれがある。
【0070】
そこで、本実施形態の分圧回路7は、開閉制御部13、16によりのスイッチSWH、SWLの双方がオフするように制御される期間に流れるリーク電流ILが、ソレノイド4が動作可能となる電流の下限値未満の電流値として予め規定されたオフ電流以下となるように構成されている。このような構成によれば、停止時、分圧回路7を設けたことにより流れるリーク電流ILの影響によりソレノイド4が誤って動作することはなく、ソレノイド4、ひいてはモータMを非動作状態に確実に維持することができる。
【0071】
また、本実施形態では、診断部15は、診断電圧Vbの値を検出する電圧検出部14により検出された診断電圧Vbの検出値が正常電圧の範囲の上限値に相当する閾値V+を超える場合、上流側のスイッチSWHが短絡故障していると診断し、診断電圧Vbの検出値が正常電圧の範囲の下限値に相当する閾値V-未満である場合、下流側のスイッチSWLが短絡故障していると診断する。このような構成によれば、2つのスイッチSWH、SWLの短絡故障を検出するだけでなく、それらスイッチのうちいずれに短絡故障が生じているのかを精度良く特定することができる。
【0072】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について
図12を参照して説明する。
図12に示すように、本実施形態のPLC31の出力モジュール32が備える出力回路33は、第1実施形態の出力回路5に対し、分圧回路7に代えて分圧回路34を備えている点などが異なる。分圧回路34は、分圧回路7が備える構成に加え、ダイオード35を備えている。ダイオード34は、一方の端子が出力端子P2に接続される電圧発生部に相当する抵抗9に対して出力端子P2側をアノードとして並列接続されている。
【0073】
以上説明した本実施形態の構成によれば、次のような効果が得られる。すなわち、PLC31の出力モジュール32では、出力端子P2が電源電圧Va(例えば+24V)などが供給される個所に短絡する、いわゆる天絡が生じると、スイッチSWH、SWLのオンオフ状態にかかわらずソレノイド4に対して動力が供給されたままとなり、そのような状態を出力モジュール32側では解消することができなくなる。
【0074】
そのため、出力モジュール32では、このような天絡の発生については確実に検出して、その旨をCPUモジュール2などに伝達する必要がある。本実施形態の構成では、分圧回路34に上述したようなダイオード35が設けられていることから、出力端子P2が天絡すると、開閉制御部13、16によりスイッチSWH、SWLの双方がオフするように制御されたとしても、ダイオード35が並列接続された抵抗9に対応する分圧電圧である診断電圧Vbが電源電圧Vaなどと同様の電圧となる。したがって、診断部15は、このような診断電圧Vbに基づいて、出力端子P2の天絡についても検出することができる。
【0075】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について
図13を参照して説明する。
図13に示すように、本実施形態のPLC41の出力モジュール42が備える制御部43は、第1実施形態の制御部6に対し、比較器44、45が追加されている点、マイコン11、12に代えてマイコン46、47を備えている点などが異なる。
【0076】
比較器44、45は、例えばウインドウコンパレータにより構成されている。比較器44、45には、いずれも診断電圧Vbが入力されている。比較器44、45は、診断電圧Vbが前述した正常電圧の範囲内であるか否かに応じてレベルが反転する信号を出力する。比較器44と比較器45は、同様の機能を有するものであるが、この場合、冗長性を持たせるために、同様の機能を有する構成が2組設けられている。
【0077】
マイコン46は、マイコン11に対し、電圧検出部14が省かれている点、診断部15に代えて診断部48を備えている点などが異なる。この場合、診断部48は、比較器44の出力信号に基づいてスイッチSWH、SWLの短絡故障を診断する。マイコン47は、マイコン12に対し、電圧検出部17が省かれている点、診断部18に代えて診断部49を備えている点などが異なる。この場合、診断部49は、比較器45の出力信号に基づいてスイッチSWH、SWLの短絡故障を診断する。
【0078】
以上説明した本実施形態の構成によれば、診断部48、49は、診断電圧Vbが正常電圧の範囲内であるか否かに応じてレベルが反転する比較器44、45の出力信号に基づいてスイッチSWH、SWLの短絡故障を診断する。そのため、上記構成によれば、スイッチSWH、SWLのうち少なくともいずれか一方が短絡故障しているか、または、スイッチSWH、SWLの双方に短絡故障が生じていないか、を判断することはできるものの、第1実施形態のように故障個所の特定はすることはできない。しかし、上記構成によれば、マイコン46、47は、診断電圧Vbの値を検出する電圧検出部を備える必要がないことから、A/D変換器内蔵のものを用いる必要がなくなるため、設計の自由度が高まるとともに製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0079】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について
図14を参照して説明する。
図14に示すように、本実施形態のPLC51の出力モジュール52が備える制御部53は、第1実施形態の制御部6に対し、マイコンの数が2つから1つに減少している点などが異なる。この場合、スイッチSWH、SWLは、いずれも制御部53から与えられる2値の制御信号SHLに従ってオンオフされる。具体的には、スイッチSWH、SWLは、制御信号SHLがハイレベルのときにオンされるとともにロウレベルのときにオフされる。
【0080】
制御部53が備えるマイコン54は、開閉制御部55、電圧検出部56および診断部57を備えている。開閉制御部55は、スイッチSWH、SWLのオンオフを制御するものであり、前述した制御信号SHLを生成する。電圧検出部56は、電圧検出部14などと同様、診断電圧Vbの値を検出する。診断部57は、診断部15などと同様、診断電圧Vbに基づいてスイッチSWH、SWLの短絡故障を診断する。
【0081】
以上説明した本実施形態の構成によれば、スイッチSWH、SWLのオンオフを制御するマイコンの数が2つから1つに減少した分だけ冗長性が低下するものの、第1実施形態などと同様の故障診断を行うことが可能となるため、第1実施形態などと同様の効果が得られる。また、上記構成によれば、スイッチSWH、SWLのオンオフを制御するマイコンの数および制御信号の数が減少した分だけ、出力モジュール52の構成を簡素化することができる。
【0082】
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について
図15および
図16を参照して説明する。
図15に示すように、本実施形態のPLC61の出力モジュール62は、第1実施形態の出力モジュール3に対し、出力回路5に代えて出力回路63を備えている点、制御部6に代えて制御部64を備えている点などが異なる。
【0083】
出力回路63は、出力回路5に対し、スイッチSWMが追加されている点、分圧回路7に代えて分圧回路65を備えている点などが異なる。この場合、スイッチSWH、SWM、SWLは、電源端子P1および出力端子P2の間に、この順で直列接続されている。スイッチSWMは、制御部64から与えられる制御信号SMに従ってオンオフされる。具体的には、スイッチSWMは、制御信号SMがハイレベルのときにオンされるとともにロウレベルのときにオフされる。この場合、制御信号SMは、制御信号SH、SLと同様の信号となっており、これによりスイッチSWH、SWM、SWLは、互いに同様にオンオフされる。
【0084】
分圧回路65は、分圧回路7と同様、電源端子P1および出力端子P2の間の電圧を分圧したアナログ電圧である分圧電圧を出力する。分圧回路65は、3つの抵抗66、67、68が直列接続された構成となっている。抵抗66は、電源端子P1とスイッチSWH、SWMの相互接続ノードであるノードN61との間に接続されている。つまり、抵抗66は、スイッチSWHに並列接続されている。なお、ノードN61は、分圧回路65による分圧電圧の出力ノードでもある。
【0085】
抵抗67は、ノードN61とスイッチSWM、SWLの相互接続ノードであるノードN62との間に接続されている。つまり、抵抗67は、スイッチSWMに並列接続されている。なお、ノードN62は、分圧回路65による分圧電圧の出力ノードでもある。抵抗68は、ノードN62と出力端子P2との間に接続されている。つまり、抵抗68は、スイッチSWLに並列接続されている。
【0086】
このように、抵抗66~68は、スイッチSWH、SWM、SWLのそれぞれに並列接続され且つ電流が流れることでその端子間に電圧が生じる複数の電圧発生部として機能する。なお、抵抗66~68のうち少なくとも1つを電流制限回路8と同様の電流制限回路に置き換えることも可能である。分圧回路65のノードN61、N62より出力される分圧電圧は、出力回路63の故障診断のためのリードバック信号として機能する診断電圧Vba、Vbbとなり、制御部64に与えられる。
【0087】
分圧回路65は、ダイオード69、70を備えている。ダイオード69は、抵抗67に対してノードN62側をアノードとして並列接続されている。ダイオード70は、一方の端子が出力端子P2に接続される電圧発生部に相当する抵抗68に対して出力端子P2側をアノードとして並列接続されている。
【0088】
制御部64は、1つまたは複数のマイコンにより構成されている。制御部64は、開閉制御部71、電圧検出部72および診断部73を備えている。開閉制御部71および診断部73は、マイコンのCPUがROMに格納されているコンピュータプログラムを実行してコンピュータプログラムに対応する処理を実行することにより実現されている、つまりソフトウェアにより実現されている。なお、開閉制御部71および診断部73は、ハードウェア、または、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現することもできる。
【0089】
開閉制御部71は、スイッチSWH、SWM、SWLのオンオフを制御するものであり、前述した制御信号SH、SM、SLを生成する。電圧検出部72は、診断電圧Vba、Vbbの値を検出するものであり、例えばマイコンに内蔵されるA/D変換器などにより構成されている。診断部73は、診断電圧Vba、Vbbに基づいてスイッチSWH、SWM、SWLの短絡故障を診断する。
【0090】
本実施形態では、診断部73は、開閉制御部71により3つのスイッチSWH、SWM、SWLの全てがオフするように制御される期間における診断電圧Vbaが正常電圧の範囲内である場合にはスイッチSWH、SWM、SWLに短絡故障が生じていないと診断する。この場合の正常電圧は、3つのスイッチSWH、SWM、SWLの全てが正常にオフしているときの診断電圧Vbaの値に基づいて予め設定されている。また、診断部73は、上記期間における診断電圧Vbaが正常電圧の範囲外である場合にはスイッチSWH、SWM、SWLに短絡故障が生じていると診断する。
【0091】
また、診断部73は、開閉制御部71により3つのスイッチSWH、SWM、SWLの全てがオフするように制御される期間における診断電圧Vbbが正常電圧の範囲内である場合にはスイッチSWH、SWM、SWLに短絡故障が生じていないと診断する。この場合の正常電圧は、3つのスイッチSWH、SWM、SWLの全てが正常にオフしているときの診断電圧Vbbの値に基づいて予め設定されている。また、診断部73は、上記期間における診断電圧Vbbが正常電圧の範囲外である場合にはスイッチSWH、SWM、SWLに短絡故障が生じていると診断する。
【0092】
本実施形態においても、第1実施形態などで説明したものと同様のリーク電流ILが流れる。そのため、診断電圧Vba、Vbbは、診断電圧Vbと同様、スイッチSWH、SWM、SWLのオンオフ状態に応じて変化する。すなわち、スイッチSWHがオンされるとともにスイッチSWM、SWLがオフされる期間、診断電圧Vbaは、電源電圧Vaに近い電圧となる。また、スイッチSWLがオンされるとともにスイッチSWH、SWMがオフされる期間、診断電圧Vbaは、0Vに近い電圧となる。さらに、スイッチSWH、SWM、SWLの全てがオフされる期間、診断電圧Vbaは、電源電圧Vaと0Vの間の電圧(中間電位)となる。
【0093】
スイッチSWHがオンされるとともにスイッチSWM、SWLがオフされる期間、診断電圧Vbbは、電源電圧Vaに近い電圧となる。また、スイッチSWLがオンされるとともにスイッチSWH、SWMがオフされる期間、診断電圧Vbbは、0Vに近い電圧となる。さらに、スイッチSWH、SWM、SWLの全てがオフされる期間、診断電圧Vbbは、電源電圧Vaと0Vの間の電圧(中間電位)となる。なお、診断電圧Vbbの中間電位は、診断電圧Vbaの中間電位よりも低い電圧となっている。
【0094】
このようなことから、診断部73は、開閉制御部71によりスイッチSWH、SWM、SWLの全てがオフするように制御される期間における診断電圧Vba、Vbbが、中間電位付近の電圧である場合、3つのスイッチSWH、SWM、SWLに短絡故障が生じていないと診断することができる。診断部73は、上記期間における診断電圧Vbaが電源電圧Va付近の電圧である場合、スイッチSWHに短絡故障が生じていると診断することができる。
【0095】
診断部73は、上記期間における診断電圧Vbaが0V付近の電圧である場合、スイッチSWMまたはSWLに短絡故障が生じていると診断することができる。診断部73は、上記期間における診断電圧Vbbが電源電圧Va付近の電圧である場合、スイッチSWHまたはSWMに短絡故障が生じていると診断することができる。診断部73は、上記期間における診断電圧Vbbが0V付近の電圧である場合、スイッチSWLに短絡故障が生じていると診断することができる。
【0096】
そこで、本実施形態では、診断部73は、電圧検出部72により検出された診断電圧Vbaの検出値が閾値V+aを超える場合、診断電圧Vbaの出力ノードであるノードN61に接続される2つのスイッチSWH、SWMのうち電源端子P1側(上流側)のスイッチSWHが短絡故障していると診断する。
図16に示すように、閾値V+aは、中間電位より高く且つ電源電圧Vaより低い所定の電圧値に設定されている。
【0097】
診断部73は、電圧検出部72により検出された診断電圧Vbaの検出値が閾値V-a未満である場合、ノードN61に接続される2つのスイッチSWH、SWMのうち出力端子P2側(下流側)のスイッチSWMまたはスイッチSWLが短絡故障していると診断する。
図16に示すように、閾値V-aは、中間電位より低く且つ0Vより高い所定の電圧値に設定されている。この場合、閾値V+aから閾値V-aの範囲が正常電圧の範囲に相当する。そして、閾値V+aは、正常電圧の範囲の上限値であり、閾値V-aは、正常電圧の範囲の下限値である。
【0098】
また、診断部73は、電圧検出部72により検出された診断電圧Vbbの検出値が閾値V+bを超える場合、診断電圧Vbbの出力ノードであるノードN62に接続される2つのスイッチSWM、SWLのうち電源端子P1側(上流側)のスイッチSWMまたはスイッチSWHが短絡故障していると診断する。
図16に示すように、閾値V+bは、中間電位より高く且つ電源電圧Vaより低い所定の電圧値に設定されている。
【0099】
診断部73は、電圧検出部72により検出された診断電圧Vbbの検出値が閾値V-b未満である場合、ノードN62に接続される2つのスイッチSWM、SWLのうち出力端子P2側(下流側)のスイッチSWLが短絡故障していると診断する。
図16に示すように、閾値V-bは、中間電位より低く且つ0Vより高い所定の電圧値に設定されている。この場合、閾値V+bから閾値V-bの範囲が正常電圧の範囲に相当する。そして、閾値V+bは、正常電圧の範囲の上限値であり、閾値V-bは、正常電圧の範囲の下限値である。
【0100】
以上説明した本実施形態の構成によれば、第1実施形態の構成に対し、電源端子P1と出力端子P2との間を開閉するスイッチの数が2つから3つに増えているものの、このようなスイッチの増加に合わせる形で分圧回路65も電圧発生部として機能する3つの抵抗66~68が直列接続された構成となっている。したがって、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の診断手法を採用することが可能となり、その結果、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0101】
本実施形態の診断部73は、分圧回路65から出力されるスイッチSWH、SWM、SWLのオンオフ状態に応じて変化する2つの診断電圧Vba、Vbbの検出値に基づいてスイッチSWH、SWM、SWLの故障診断を行う。そのため、診断部73は、スイッチSWH、SWM、SWLのうち少なくとも1つが短絡故障しているか否かを検出することができるだけでなく、どのスイッチが短絡故障しているのかを特定することもできる。
【0102】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記各実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
【0103】
分圧回路7において、電流制限回路8と抵抗9の配置は入れ替えることができる。つまり、電源端子P1側(上流側)に抵抗9を設け、出力端子P2側(下流側)に電流制限回路8を設けてもよい。
【0104】
また、電流制限回路8を、抵抗に置き換えることも可能である。ただし、この場合、電源電圧Vaが変動すると、その変動に応じて、リーク電流ILの大きさ、ひいては診断電圧Vbの電圧値も変動してしまい、閾値V+、V-との比較で行われる故障診断の精度が低下するおそれがある。これに対し、第1実施形態などのように電流制限回路8が設けられている場合、電源電圧Vaが変動したとしても、リーク電流ILの大きさは電流制限回路8(の定電流源)により定まる一定の電流値となり、それにより診断電圧Vbの電圧値も変動することはなく、その結果、故障診断の精度を良好に維持することができる。
【0105】
本発明は、PLC1の出力モジュール3などに限らず、電源電圧が与えられる電源端子と外部の負荷に接続される出力端子との間を開閉する出力回路を備えた産業用制御装置の出力モジュール全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0106】
1、31、41、51、61…PLC、3、32、42、52、62…出力モジュール、4…ソレノイド、5、33、63…出力回路、6、43、53、64…制御部、7、34、65…分圧回路、8…電流制限回路、9、66~68…抵抗、13、16、55、71…開閉制御部、14、17、56、72…電圧検出部、15、18、48、49、57、73…診断部、35、69、70…ダイオード、N1、N61、N62…ノード、P1…電源端子、P2…出力端子、SWH、SWL、SWM…スイッチ。