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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】無線送信装置及び無線送信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/566 20230101AFI20240326BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20240326BHJP
   H04W 74/0808 20240101ALI20240326BHJP
   H04W 4/06 20090101ALI20240326BHJP
【FI】
H04W72/566
H04W84/12
H04W74/0808
H04W4/06
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019185504
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021061555
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 寿之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕和
【審査官】小林 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-098787(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0087288(US,A1)
【文献】特開2017-069873(JP,A)
【文献】特開2011-035600(JP,A)
【文献】国際公開第2011/089983(WO,A1)
【文献】Jing-Rong Hsieh (HTC) et al,IEEE 802.11-12/0246r5:Differentiate transmissions of probe responses,IEEE 802.11-12/0246r5,2012年05月15日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の装置から受信フレームを受信する受信部と、
前記受信部が前記他の装置からの受信フレームを受信しない場合に、ブロードキャストフレームを含むフレーム種別のいずれかに属する送信フレームを送信する送信部と、
前記他の装置からの受信フレームを受信した場合に、前記受信フレームの受信が終了してから前記送信フレームの前記フレーム種別に応じた待機期間が経過するまで前記送信フレームの送信を待機するよう制御する制御部と、を含み、
前記フレーム種別は、前記ブロードキャストフレームの他に、ユニキャストフレーム、および、受信確認応答フレームを含み、
前記ブロードキャストフレームに対する待機期間は、前記ユニキャストフレームに対する待機期間より小さく、前記受信確認応答フレームに対する待機期間より大きく、
前記ブロードキャストフレームに対する待機期間は、前記ブロードキャストフレームに対する、基本時間とランダム時間との和であり、
前記ブロードキャストフレームに対する基本時間とランダム時間の最大値との和は、IEEE802.11規格におけるDIFS(DCF Inter Frame Space)と前記ユニキャストフレームに対するランダムバックオフとの和より小さく、前記ブロードキャストフレームに対する待機期間は、IEEE802.11規格におけるSIFS(Short Inter Frame Space)より大きい、
無線送信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線送信装置において、
前記ユニキャストフレームに対する待機期間は、前記ユニキャストフレームに対する、基本時間とランダム時間との和である、
無線送信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の無線送信装置において、
前記ユニキャストフレームに対する基本時間およびランダム時間はそれぞれIEEE802.11規格におけるDIFS(DCF Inter Frame Space)およびランダムバックオフである、
無線送信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の無線送信装置において、
前記受信確認応答フレームに対する待機期間はIEEE802.11規格におけるSIFS(Short Inter Frame Space)である、
無線送信装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の無線送信装置において、
前記受信確認応答フレームは、IEEE802.11規格におけるACKフレームである、
無線送信装置。
【請求項6】
請求項4に記載の無線送信装置において、
前記ブロードキャストフレームに対する基本時間は、前記SIFSより大きく、前記DIFSより小さい、
無線送信装置。
【請求項7】
請求項1に記載の無線送信装置において、
前記ブロードキャストフレームに対する基本時間とランダム時間の最大値との和は、前記DIFSより小さく、前記SIFSより大きい、
無線送信装置。
【請求項8】
請求項1,6,7のいずれかに記載の無線送信装置において、
前記制御部は、前記ブロードキャストフレームの送信フレームが送信される場合に、その次に予定される送信フレームの前記フレーム種別がブロードキャストフレームであっても、前記予定される送信フレームの待機期間が、前記ユニキャストフレームに対する待機期間以上となるよう制御する、
無線送信装置。
【請求項9】
請求項8に記載の無線送信装置において、
前記制御部は、前記受信部が他の装置から前記DIFSより小さい待機時間とともにブロードキャストのフレームを受信した場合に、その次に予定される送信フレームの前記フレーム種別がブロードキャストフレームであっても、前記予定される送信フレームの待機時間が前記ユニキャストフレームに対する待機時間以上となるよう制御する、
無線送信装置。
【請求項10】
請求項8に記載の無線送信装置において、
前記制御部は、他の装置が前記ユニキャストフレームに対する待機期間以上前記ブロードキャストフレームの送信フレームの送信を待機するタイミングにあわせて、前記送信部によるブロードキャストフレームの送信フレームの送信において前記ユニキャストフレームに対する待機期間以上待機するよう制御する、
無線送信装置。
【請求項11】
他の装置から受信フレームを受信し、
前記他の装置からの受信フレームを受信しない場合に、送信フレームを送信し、
前記他の装置からの受信フレームを受信した場合に、前記受信フレームの受信が終了してから前記送信フレームのフレーム種別に応じた待機期間が経過するまで前記送信フレームの送信を待機するよう制御し、
前記フレーム種別は、ブロードキャストフレーム、ユニキャストフレーム、または、受信確認応答フレーム、であり、
前記ブロードキャストフレームに対する待機期間は、前記ユニキャストフレームに対する待機期間より小さく、前記受信確認応答フレームに対する待機期間より大きく、
前記ブロードキャストフレームに対する待機期間は、前記ブロードキャストフレームに対する、基本時間とランダム時間との和であり、
前記ブロードキャストフレームに対する基本時間とランダム時間の最大値との和は、IEEE802.11規格におけるDIFS(DCF Inter Frame Space)と前記ユニキャストフレームに対するランダムバックオフとの和より小さく、前記ブロードキャストフレームに対する待機期間は、IEEE802.11規格におけるSIFS(Short Inter Frame Space)より大きい、
無線送信方法。
【請求項12】
請求項11に記載の無線送信方法において、
前記ユニキャストフレームに対する待機期間は、前記ユニキャストフレームに対する、基本時間とランダム時間との和である、
無線送信方法。
【請求項13】
請求項12に記載の無線送信方法において、
前記ユニキャストフレームに対する基本時間およびランダム時間はそれぞれIEEE802.11規格におけるDIFS(DCF Inter Frame Space)およびランダムバックオフである、
無線送信方法。
【請求項14】
請求項13に記載の無線送信方法において、
前記受信確認応答フレームに対する待機期間はIEEE802.11規格におけるSIFS(Short Inter Frame Space)である、
無線送信方法。
【請求項15】
請求項11から14のいずれかに記載の無線送信方法において、
前記受信確認応答フレームは、IEEE802.11規格におけるACKフレームである、
無線送信方法。
【請求項16】
請求項14に記載の無線送信方法において、
前記ブロードキャストフレームに対する基本時間は、前記SIFSより大きく、前記DIFSより小さい、
無線送信方法。
【請求項17】
請求項14に記載の無線送信方法において、
前記ブロードキャストフレームに対する基本時間とランダム時間の最大値との和は、前記DIFSより小さく、前記SIFSより大きい、
無線送信方法。
【請求項18】
請求項16または17に記載の無線送信方法において、
記ブロードキャストフレームの送信フレームが送信される場合に、その次に予定される送信フレームの前記フレーム種別がブロードキャストフレームであっても、前記予定される送信フレームの待機期間が、前記ユニキャストフレームに対する待機期間以上となるよう前記送信フレームの送信を待機する、
無線送信方法。
【請求項19】
請求項18に記載の無線送信方法において、
他の装置が前記ユニキャストフレームに対する待機期間以上前記ブロードキャストフレームの送信フレームの送信を待機するタイミングにあわせて、前記ブロードキャストフレームの送信フレームの送信において前記ユニキャストフレームに対する待機期間以上待機するよう制御する、
無線送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線送信装置及び無線送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線LANは様々な場所で用いられている。無線LANの通信において、無線LANアクセスポイントを介してSSIDやARPなどを含むブロードキャストパケットが送信されている。ブロードキャストパケットは、すべての無線LANクライアントへ送信される。
【0003】
特許文献1には、複数のワイヤレスデバイスによって送信されるブロードキャストメッセージを用いて、複数のワイヤレスデバイス間の距離を計測することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2018-514752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは、無線LANのブロードキャストにおいてより広範なデータを送信することを検討している。無線LANにおいて、通常のユニキャストのフレームとブロードキャストのフレームとが同じ周波数帯によって送信される場合、ユニキャストとブロードキャストとの間で優先度のコントロールは困難であった。そのため、例えば緊急放送のような優先度の高いデータを安定的に送信することが難しかった。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであって、その目的は、無線LANのブロードキャストにより送信されるデータを、その優先度に応じて送信することを可能にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る無線送信装置は、他の装置から受信フレームを受信する受信部と、前記受信部が前記他の装置からの受信フレームを受信しない場合に、送信フレームを送信する送信部と、前記他の装置からの受信フレームを受信した場合に、前記受信フレームの受信が終了してから前記送信フレームのフレーム種別に応じた待機期間が経過するまで前記送信フレームの送信を待機するよう制御する制御部と、を含む。前記フレーム種別は、ブロードキャストフレーム、ユニキャストフレーム、または、受信確認応答フレーム、であり、前記ブロードキャストフレームに対する待機期間は、前記ユニキャストフレームに対する待機期間より小さく、前記受信確認応答フレームに対する待機期間より大きい。
【0008】
また、本発明に係る無線送信方法では、他の装置から受信フレームを受信し、前記他の装置からの受信フレームを受信しない場合に、送信フレームを送信し、前記他の装置からの受信フレームを受信した場合に、前記受信フレームの受信が終了してから前記送信フレームのフレーム種別に応じた待機期間が経過するまで前記送信フレームの送信を待機するよう制御する。前記フレーム種別は、ブロードキャストフレーム、ユニキャストフレーム、または、受信確認応答フレーム、であり、前記ブロードキャストフレームに対する待機期間は、前記ユニキャストフレームに対する待機期間より小さく、前記受信確認応答フレームに対する待機期間より大きい。
【0009】
本発明にかかる他の無線送信装置は、他の装置から受信フレームを受信する受信部と、前記受信部が前記他の装置からの受信フレームを受信しない場合に、送信フレームを送信する送信部と、前記他の装置からの受信フレームを受信した場合に、前記受信フレームの受信が終了してから前記送信フレームのフレーム種別に応じた待機期間が経過するまで前記送信フレームの送信を待機するよう制御する制御部と、を含む。前記フレーム種別は、ブロードキャストフレーム、ユニキャストフレーム、または、受信確認応答フレーム、であり、前記ブロードキャストフレームに対する待機期間は、前記ユニキャストフレームに対する待機期間より小さく、前記受信確認応答フレームに対する待機期間より大きい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無線LANのブロードキャストにより送信されるデータを優先度に応じて送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態にかかる無線通信システムの一例を示す図である。
図2】通信装置の構成を示すブロック図である。
図3】フレーム間の待機期間を説明する図である。
図4】ホストIF部の処理の一例を示すフロー図である。
図5】信号処理部および送信部の処理の一例を示すフロー図である。
図6】ある周波数帯で送受信されるフレーム群の一例を説明する図である。
図7】ある周波数帯で送受信されるフレーム群の比較例を説明する図である。
図8】制御部の処理の一例を示すフロー図である。
図9】通信装置のハードウェア構成およびメモリに格納されるプログラムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の例を図面に基づいて説明する。本実施形態では、同一の周波数帯においてブロードキャストフレームとユニキャストフレームとを送受信する無線通信システムについて説明する。無線通信システムは、特に説明のない限り、IEEE802.11に準拠して送受信を行う。
【0013】
図1は、本発明の実施形態にかかる無線通信システムの一例を示す図である。無線通信システムは、複数の通信装置1と、1または複数の端末2と、複数のホスト3とを含む。ホスト3は、ブロードキャストで送信するための送信データを格納し、その送信データを通信装置1へ引き渡す。またホスト3は、ユニキャストで送信するための送信データを通信装置1へ引き渡してもよい。
【0014】
ユニキャストは通信装置1と端末2とが1対1で送受信することであり、そのデータを含み送信されるフレームをユニキャストフレームという。ブロードキャストは、通信装置1から複数の端末2へ同じデータを一度に送信することであり、そのデータを含み送信されるフレームをブロードキャストフレームと呼ぶ。また、ユニキャストフレームを受信した通信装置1および端末2はそのフレームを受信したことを示す応答(受信確認応答)をする。この応答の際に送信されるフレームをACKフレームと呼ぶ。以下では、通信装置1が送信するフレームを送信フレーム、通信装置1が受信するフレームを受信フレームと呼ぶ。送信フレームおよび受信フレームは、ユニキャストフレーム、ブロードキャストフレーム、ACKフレームのうちいずれかである。本実施形態では、フレームは、ある周波数帯において無線により送信または受信される一種の信号のことである。フレームは、そのフレームにより搬送されるデータに応じた期間、送信または受信される。
【0015】
通信装置1は、例えば無線LANアクセスポイントであり、IEEE802.11に準拠して無線によりユニキャストフレームおよびブロードキャストフレームを送信することができる無線送信装置の一形態である。以下では特に、無線を用いてブロードキャスト送信をする無線通信システムについて説明する。
【0016】
1または複数の端末2のそれぞれは無線LANクライアントを含む。端末2は例えばパーソナルコンピュータやスマートフォンであり、通信装置1とIEEE802.11に準拠して通信することができる。ここでは通信装置1は主にデータを送信し、端末2はデータを受信するが、端末2がデータを送信し通信装置1がデータを受信してもよい。
【0017】
図2は、通信装置1の構成を示すブロック図である。通信装置1は、ホストIF部11と、信号処理部12と、制御部13と、無線部14と、を含む。無線部14は、受信部15および送信部16を含み、受信部15および送信部16は、アンテナ19に接続されている。アンテナ19は、通信装置1に内蔵されていてもよいし、通信装置1の外部に接続されていてもよい。また、図9は通信装置1のハードウェア構成およびメモリ18に格納されるプログラムの一例を示すブロック図である。通信装置1は、受信部15および送信部16の他に、プロセッサ110、通信IF111、信号処理回路112およびメモリ18を有する。メモリ18には、取得モジュール51、待機モジュール52、生成モジュール53および制御モジュール54のプログラムが格納されている。通信IF111はイーサネット(登録商標)などの通信をするインターフェースであり、信号処理回路112はベースバンド信号を生成する回路である。
【0018】
ホストIF部11は、物理的にはイーサネットなどの通信IF111およびプロセッサ110を含む。プロセッサ110が取得モジュール51を実行することにより、ホストIF部11は、ホスト3から送信データを取得し、ホスト3へ受信データを引き渡す。送信データは無線送信するデータであり、受信データは無線により受信されたデータである。ホストIF部11は、ホスト3から取得した送信データをバッファメモリに格納する。ホストIF部11は、ホスト3からの送信データをバッファメモリに格納する前に、必要に応じて、ホスト3からの送信データの通信プロトコルを、無線LANの送信に適した通信プロトコルへ変換する。ホストIF部11は、バッファメモリに格納された送信データを、順に信号処理部12へ向けて出力する。
【0019】
無線部14に含まれる受信部15および送信部16は、いわゆる高周波回路により構成される。受信部15は、アンテナ19が受信した電波を復調し、復調信号を生成する。受信部15は生成された復調信号を信号処理部12へ入力する。
【0020】
送信部16は、信号処理部12から入力されたベースバンド信号を変調し、高周波信号を生成する。送信部16は、生成された高調波信号をアンテナ19へ出力し、アンテナ19に高調波信号に応じた電波を出力させる。
【0021】
信号処理部12は、物理的にはプロセッサ110および信号処理回路112を含む。信号処理部12とホストIF部11とは、同じプロセッサ110により構成されてよい。信号処理部12は、プロセッサ110が生成モジュール53を実行することにより、ホストIF部11から入力された送信データに基づいて送信フレームのデータを生成する。信号処理部12の信号処理回路は、生成された送信フレームのデータをその送信フレームのベースバンド信号に変換し、ベースバンド信号を送信部16へ出力する。
【0022】
信号処理部12は、受信部15から入力された復調信号から受信フレームのデータを生成する。そして、受信フレームのデータに含まれる受信データをホストIF部11へ出力する。さらに信号処理部12は、プロセッサ110が待機モジュール52を実行することにより、受信フレームを監視する。より具体的には、信号処理部12は、他の通信装置1や端末2から受信フレームの信号が現在送信されているか否か、または現在は送信を待機している期間であるか否か、などを監視する。
【0023】
送信の待機についてより詳細に説明する。送信の待機は、プロセッサ110による待機モジュール52の実行により行われる、図3は、フレーム間の待機期間を説明する図である。図3に示されるフレームFp,Fcは、ある周波数帯において空間に電波として送信されるフレームを示している。通信装置1が送信するフレームFcは、その前のフレームFpの送信が終了してから待機期間Wが経過してから送信される。図3の例ではフレームFcはブロードキャストフレームとする。ブロードキャストフレームにおける待機期間WBは基本時間BSとランダム時間Rtとの和である。基本時間BSはブロードキャストの優先度に応じて定められる期間であり、ランダム時間Rtはフレームの送信ごとにランダムに変化する。ランダム時間Rtはある一定の範囲内でランダムに決定される期間である。
【0024】
フレームFpはブロードキャストフレームであってもよいし、ユニキャストフレームであってもよいし、ACKフレームであってもよい。待機期間Wの間に他の装置からの受信フレームを検知すると、信号処理部12は待機期間Wを終了し、そのフレームの送信の終了を待ち、ふたたび待機期間Wの待機をする。受信フレームは、受信部15により受信および復調される。フレームFpの送信の終了から次のフレームFcの送信までの待機期間Wを設け、待機期間Wを基本時間BSと装置ごとに異なるランダム時間Rtとの和とすることにより、複数の通信装置1や端末2が同時にフレームを送信することを防ぎ、通信上の問題が生じることを防いでいる。
【0025】
なお、仮にフレームFcがユニキャストフレームである場合には、信号処理部12は基本時間BSの代わりにIEEE802.11規格におけるDIFS(DCF Inter Frame Space)の間待機し、さらにランダム時間Rtの代わりにIEEE802.11規格におけるランダムバックオフRbの間待機する。この場合の待機期間WDはDIFSとランダムバックオフRbとの和である。DIFSおよびランダムバックオフRbは、それぞれ待機期間WBの基本時間BSおよびランダム時間Rtに対応する。DIFSはあらかじめ定められた期間であり、ランダムバックオフRbはランダムに決定される期間である。仮にフレームFcがACKフレームである場合には、信号処理部12は、ユニキャストフレームの待機期間WA待機する。待機期間WAはIEEE802.11規格におけるSIFS(Short Inter Frame Space)であり、あらかじめ定められた期間である。待機期間WAにはランダム時間Rtに相当する期間は存在しない。
【0026】
制御部13は、物理的にはプロセッサ110を含む。制御部13は、プロセッサ110が制御モジュール54を実行することにより、ユーザによるブロードキャストフレームの優先度の設定に基づいて、信号処理部12が用いる待機期間WBに関するパラメータを設定する。ホストIF部11、信号処理部12、制御部13は、同一の集積回路パッケージに収められてもよい、さらに無線部14が同一の集積回路パッケージに収められてもよい。またホストIF部11、信号処理部12、制御部13の一部の機能は、プロセッサによりソフトウェア的に実現されてよい。
【0027】
本実施形態では、ブロードキャストフレームに対する待機期間WBをユニキャストフレームに対する待機期間WDより短くすることにより、ブロードキャストフレームの優先度を向上させる。以下では送信の際の制御の詳細について説明する。
【0028】
図4は、ホストIF部11の処理の一例を示すフロー図であり、無線によりデータを送信する際の処理の一例を示す。図4は、取得モジュール51による処理を示す。はじめに、ホストIF部11は、ホスト3から、送信すべきデータ(送信データ)を取得し、取得した送信データの通信プロトコルが無線LANでの送信に適していない場合には、送信データを、送信に適した通信プロトコルへ変換する(ステップS101)。ホストIF部11は、取得された送信データの種別に基づいて、その送信データの緊急度を判定する(ステップS102)。例えば、送信データの種別が緊急放送であった場合には、ホストIF部11は緊急度が高いと判定する。
【0029】
そして送信データの緊急度が低い場合には(ステップS102のN)、取得された送信データをバッファに格納する(ステップS104)。一方、送信データの緊急度が高い場合には(ステップS102のY)、割込み信号および送信データを、信号処理部12へ出力する(ステップS103)。割込み信号により、信号処理部12に、送信データの送信を優先的に処理させることができる。
【0030】
またホストIF部11はバッファに送信データが格納されると、信号処理部12の処理状況に応じてバッファから送信データを取り出し、信号処理部12へ送信データを出力する(ステップS105)。図4ではステップS104の処理の後にステップS105の処理が行われているが、ステップS105の処理は、定期的に実行されてもよいし、信号処理部12の送信データの受け入れが可能になるごとに実行されてもよい。
【0031】
図5は、信号処理部12および送信部16の処理の一例を示すフロー図である。はじめに、信号処理部12は、生成モジュール53の実行により、入力される送信データに基づき、送信するフレームのデータを生成する(ステップS201)。送信データの入力は、ホストIF部11から割込み信号とともにされる入力、ホストIF部11からバッファ経由の入力、またこの通信装置1が受信したユニキャストフレームに対する受信確認応答(ACK)の3つがある。ACKについては信号処理部12が生成してよい。また信号処理部12は、送信フレームのデータの生成において、送信データをパケットデータに分割し、ヘッダ情報と誤り訂正符号を付加し、必要に応じてパケットデータ等を暗号化する。そして信号処理部12はパケットデータとヘッダ情報と誤り訂正符号とを含む送信フレームのデータを生成する。
【0032】
送信フレームのデータが生成されると、空間の電波状況を確認するために、信号処理部12は、データを含む電波を受信部15が受信し、その電波が復調された復調信号が出力されたか判定する(ステップS202)。なお、ステップS202以降の処理は、待機モジュール52の実行による処理である。復調信号が出力された場合には(ステップS202のY)、ブロードキャストフレームを高い優先度で送信するタイミングを同期させるための処理を実行する。より具体的には、信号処理部12は復調信号から受信フレームのデータを生成し、その受信フレームのフレーム種別に応じて(受信フレームがブロードキャストフレームである場合に)、フレーム数のカウントを開始する(ステップS203)。カウントが開始されると、フレーム数はフレームの受信またはフレームの送信ごとに増加する。
【0033】
復調信号が出力された場合には(ステップS202のY)、さらに、信号処理部12は受信フレームの受信の終了を待機する(ステップS204)。ここで、復調信号が出力されていない場合には(ステップS202のN)、信号処理部12はステップS203およびS204の処理をスキップする。
【0034】
そして、信号処理部12は送信フレームのデータがブロードキャストフレームであるか否かを判定する(ステップS205)。送信フレームのデータがブロードキャストフレームの場合には(ステップS205のY)、信号処理部12はカウントされたフレーム数に基づいて待機期間WBを決定する(ステップS206)。より具体的には、信号処理部12は、カウントされたフレーム数が所定の数(例えば2)の倍数である場合に、基本時間BSとしてSIFSより大きくDIFSより小さい値を選択し、ランダム時間Rtとの和を待機期間WBとして算出する。一方、カウントされたフレーム数が所定の数の倍数でない場合には、信号処理部12はこの送信フレームに対する待機期間Wとして、ユニキャストフレームと同様の待機期間WD、より具体的にはDIFSとランダムバックオフRbとの和からなる待機期間WDを算出する。そして、信号処理部12は、決定された待機期間、待機する(ステップS206)。
【0035】
また送信フレームがACKフレームである場合には(ステップS205のNかつステップS208のY)、信号処理部12はACKの待機期間WA(つまりSIFS)待機する。送信フレームがユニキャストフレームである場合には(ステップS205のNかつステップS208のN)、信号処理部12はユニキャストの待機期間WD、待機する(ステップS209)。
【0036】
ここで、ブロードキャストフレームの待機期間WBはACKフレームの待機期間WAより長く、ユニキャストフレームの待機期間WDより短い。つまり、以下の式を満たす
【0037】
SIFS<基本時間BS+ランダム時間Rt<DIFS+ランダムバックオフRb ・・・(1)
【0038】
ランダム時間RtやランダムバックオフRbが存在するため、常にこの式が成立する場合には、基本時間BSとランダム時間Rtの最大値との和が、DIFSとランダムバックオフRbの最小値との和より小さくなる。もちろん、基本時間BSとランダム時間Rtの期待値との和は、DIFSとランダムバックオフRbの期待値との和より小さい。
【0039】
さらに、SIFS<基本時間BS<DIFSであってよい。ランダム時間Rtの値の範囲(最小値および最大値)および確率分布は、とランダムバックオフRbと同じであってよい。
【0040】
そして、待機している間に受信部15が電波を受信し、復調信号を出力した場合には(ステップS211)、ステップS203以降の処理を繰り返す。一方、受信部15からその復調信号を受信しない場合には(ステップS211のN)、信号処理部12は送信部16にベースバンド信号を出力し送信フレームを送信させる(ステップS212)。より具体的には、信号処理部12は送信フレームのデータからベースバンド信号を生成し、ベースバンド信号を送信部16に入力する。送信部16は入力されたベースバンド信号を変調し電波として送信する。そして、ブロードキャストフレームを、ユニキャストフレームより短い待機期間WBで送信した場合は、フレーム数のカウントを開始する(ステップS213)。
【0041】
なお、ホストIF部11から割込み信号が入力された場合には、信号処理部12は処理の途中でもステップS201に戻る。ただし、ステップS212で送信をしている場合は、信号処理部12はその送信の終了後にステップS201に戻ってもよい。なお、割込み信号に関する処理は実行されなくてもよい。図4におけるステップS102の分岐が存在せず、優先度にかかわらずステップS104が実行されてもよい。
【0042】
次に、本実施形態にかかる通信装置1の動作の具体例および効果について説明する。図6は、ある周波数帯で送受信されるフレーム群の一例を説明する図である。図6において、時間軸より上に記載されている帯は、ある周波数帯に出力されているフレームと、そのフレームに関する待機期間Wとを示している。時間軸より下には、ユニキャストフレームの装置別の送信または待機の状態、通信装置1によるブロードキャストフレームの送信または待機の状態、ACKフレームの送信または待機の状態が順に記載されている。装置aからcがユニキャストフレームを送信する装置である。通信装置1は2回に1回待機期間WBとなり、ほかは待機期間WDとなる。
【0043】
図6の例において、はじめに装置aからフレームDax_a1が送信され、その送信が終了すると、装置aからcおよび通信装置1は待機期間Wに入る。ここではブロードキャストフレームにおける待機期間WBの方が装置aからcのそれぞれの待機期間WDより短い。そのため、通信装置1からフレームDbc1が送信され、装置aからcはフレームDbc1の終了を待機する。待機期間WBのブロードキャストフレームの次のブロードキャストフレームでは通信装置1は他の装置aからcと同様に待機期間WD(つまりDIFSとランダムバックオフRbの和)待機するため、装置bの待機期間WDがはじめに終了し装置bからフレームDax_b1が送信される。
【0044】
フレームDax_b1の終了後は、前回のブロードキャストフレームの送信終了から2つ目のフレームとなるため、通信装置1は待機期間WBで待機し、通信装置1はブロードキャストフレームDbc2を送信する。その後、通信装置1は待機期間WDで待機し、装置aがフレームDax_a2を送信する。またその次には、待機期間WBで待機する通信装置1に優先して、フレームDax_a2を受信した装置がACKフレームACK_aを送信する。その次は通信装置1は待機期間WDで待機し装置cがフレームDax_c1を送信し、そしてそれに対するACKフレームが送信される。その後装置bについてフレームDax_a2の送信と、それに対するACKフレームACK_bの送信が行われる。そして通信装置1は待機期間WDを経過してフレームDbc3を送信する。
【0045】
図7は、ある周波数帯で送受信されるフレーム群の比較例を説明する図である。図7の例では、ブロードキャストフレームにおいても常に待機期間WDにより送信される。そのため、ユニキャストフレームを送信しようとする装置が多いと、送信されるブロードキャストフレームの量が減少してしまう。
【0046】
図6,7の例からわかるように、ブロードキャストフレームは、待機期間WBで待機する場合はユニキャストフレームより優先される。これにより、より確実にブロードキャストフレームを送信することが可能になる。
【0047】
また図6からわかるように、信号処理部12は、待機期間WBのブロードキャストフレームが送信される場合に、その次に予定されるフレームがブロードキャストフレームであっても、その予定されるフレームは、待機期間WD以上待機するよう制御している。より具体的には、信号処理部12は複数回に1回ごとにブロードキャストフレームの送信を待機期間WBで待機し、それ以外では待機期間WDで待機するよう制御している。これにより、送信予定のブロードキャストフレームが非常に多い場合であっても、ユニキャストフレームの送信が可能になる。
【0048】
図6の例では1つの通信装置1がブロードキャストフレームを送信していたが、複数の通信装置1がブロードキャストフレームを送信しても構わない。この場合、図5におけるステップS203の処理により、複数の通信装置1が待機期間WDより短い待機期間WBでブロードキャストフレームを送信しようとするタイミングは同じになる。つまり、信号処理部12は、他の装置がブロードキャストフレームの送信を待機期間WD以上待機しているとき、通信装置1も同様にブロードキャストフレームの送信を待機期間WD以上待機するように制御している。これにより、ある通信装置1が待機期間WBでブロードキャストフレームを送信し、その次に別の装置が待機期間WBでブロードキャストフレームを送信することはない。つまり、ブロードキャストフレームの優先度を高めたことに起因する、ユニキャストフレームが送信できなくなる現象の発生を防ぐことができる。
【0049】
図5のステップS203,S206,S213の処理とは異なる方法で上記現象の発生を防いでもよい。例えば、ブロードキャストフレームの送信において、以下の式を満たしてもよい。
【0050】
SIFS<基本時間BS<DIFS ・・・(2)
基本時間BS+(ランダム時間Rtの最大値)>DIFS+(ランダムバックオフRbの最小値) ・・・(3)
【0051】
この条件を満たす場合には、ランダム時間RtやランダムバックオフRbの値によっては、ブロードキャストフレームが送信を待機している状態であっても、ユニキャストフレームが送信されるケースが生じる。これにより、ユニキャストフレームが送信できなくなる現象を防ぐことができる。また、統計的にはブロードキャストフレームの送信が優先される。なお、基本時間BSと(ランダム時間Rtの期待値)との和はDIFSと(ランダムバックオフRbの期待値)との和より小さいとする。なお、上記現象の発生が懸念されない使用方法を想定する場合には、単にステップS203,S206,S213を行わなくてもよい。
【0052】
以下では、優先度の設定に関する処理について説明する。図8は制御部13の処理の一例を示すフロー図である。図8は、取得モジュール51による処理を示す。制御部13は、ユーザから、ウェブインターフェースまたはコマンド形式のインターフェースを介してブロードキャストフレームの優先度設定を取得する(ステップS301)。そして、制御部13は、取得された優先度設定に基づいて、ブロードキャストフレームにおける待機期間WBのパラメータを設定する(ステップS302)。例えば、優先度設定においてブロードキャストフレームの優先度が高いとされた場合には、制御部13は、これまでに説明された待機期間WBの条件(数式(1)、または、(2)および(3)等)を満たすように、基本時間BSをDIFSより小さくするなどする。一方、優先度が低いとされた場合には、ブロードキャストフレームが待機期間WDで送信されるように、基本時間BSにDIFSと同じ値が設定されるなどしてよい。なお、基本時間BSだけでなく、ランダム時間Rtや、待機期間WBでブロードキャストフレームを送信する頻度などのパラメータも変更されてよい。
【0053】
ユーザから優先度設定を取得する代わりに、制御部13は、バッファ(キューであってよい)に溜まっている送信データの量が増えるほど優先度が上がるようにパラメータを設定してもよい。より具体的には、制御部13は、バッファに溜まっている送信データが閾値より多い場合には、待機期間WBの条件を満たすようにパラメータが設定され、送信データが閾値より少ない場合にはブロードキャストフレームが待機期間WD待機するようパラメータを設定してよい。また、制御部13は、送信データが多いほどブロードキャストフレームの比率が高くなるように設定してもよい。より具体的には、制御部13は、送信データが多いほど待機期間WBで送信する頻度が多くなるようパラメータを変更してもよいし、数式(2)または(3)において、基本時間BSの値を小さくし、ブロードキャストフレームが送信される確率を高くしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 通信装置、2 端末、3 ホスト、11 ホストIF部、12 信号処理部、13 制御部、14 無線部、15 受信部、16 送信部、18 メモリ、19 アンテナ、51 取得モジュール、52 待機モジュール、53 生成モジュール、54 制御モジュール、110 プロセッサ、111 通信IF、112 信号処理回路、Fc,Fp フレーム、W,WA,WB,WD 待機期間、BS 基本時間、Rt ランダム時間、Rb ランダムバックオフ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9