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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】車両用導光体及び車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/24 20180101AFI20240326BHJP
   F21S 41/147 20180101ALI20240326BHJP
   F21S 41/155 20180101ALI20240326BHJP
   F21S 45/47 20180101ALI20240326BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20240326BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20240326BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240326BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20240326BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240326BHJP
【FI】
F21S41/24
F21S41/147
F21S41/155
F21S45/47
F21V8/00 310
F21W102:155
F21Y115:10
F21Y115:15
F21Y115:30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019200078
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021072253
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 和則
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-112107(JP,A)
【文献】特開2014-241220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/24
F21S 41/147
F21S 41/155
F21S 45/47
F21V 8/00
F21W 102/155
F21Y 115/10
F21Y 115/15
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を入射する入射面と、
前記入射面から入射した前記光を車両搭載状態における前後方向の前方に向けて内面反射する第1反射面と、
前記前後方向の前方の端部にかけて車両搭載状態における上下方向の下方側に傾いた傾斜部を有する形状であり、前記第1反射面で反射された前記光を前記前後方向の前方に向けて内面反射する第2反射面と、
前記第1反射面及び前記第2反射面で内面反射された前記光を出射して、車両前方に配光パターンを照射する出射面と
を備え
前記第1反射面は、前記光源の光軸上であって前記光の出射方向とは反対側の位置に第1焦点を有し、前記出射面の焦点に一致及びほぼ一致する位置に第2焦点を有する楕円体面を基調とした形状である
車両用導光体。
【請求項2】
前記第2反射面は、前記前後方向の前方の端部に、前記配光パターンにカットオフラインを形成するための湾曲部を有し、
前記傾斜部は、前記湾曲部に対応する位置に配置される
請求項1に記載の車両用導光体。
【請求項3】
前記傾斜部は、前記前後方向の後方に向けて車両搭載状態における左右方向の寸法が小さくなるように形成される
請求項1又は請求項2に記載の車両用導光体。
【請求項4】
前記第2反射面は、前記配光パターンに斜めカットオフラインを形成するための段差部を有し、
前記段差部は、前記第2反射面の前記前後方向の前方の端部から、前記前後方向の後方に、高位側に傾いた状態で延びている
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両用導光体。
【請求項5】
前記傾斜部は、前記第2反射面のうち前記段差部により高さが低くなる低位側に配置される
請求項4に記載の車両用導光体。
【請求項6】
光源と、
前記光源からの光を導光して出射し、車両前方に配光パターンを照射する請求項1から請求項のいずれか一項に記載の車両用導光体と
を備える車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用導光体及び車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
光源からの光を車両用導光体の入射面に直接入射させ、車両用導光体の内面で全反射させた後に出射面から出射して、車両前方にカットオフラインを有する配光パターンを形成する、いわゆる直射型の車両用前照灯が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-302902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両用前照灯では、配光パターンのうちカットオフラインの近傍の明るさを確保し、遠方視認性を向上することが求められている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、遠方視認性を向上することが可能な車両用導光体及び車両用前照灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用導光体は、光源からの光を入射する入射面と、前記入射面から入射した前記光を車両搭載状態における前後方向の前方に向けて内面反射する第1反射面と、前記前後方向の前方の端部にかけて車両搭載状態における上下方向の下方側に傾いた傾斜部を有する形状であり、前記第1反射面で反射された前記光を前記前後方向の前方に向けて内面反射する第2反射面と、前記第1反射面及び前記第2反射面で内面反射された前記光を出射して、車両前方に配光パターンを照射する出射面とを備える。
【0007】
また、前記第2反射面は、前記前後方向の前方の端部に、前記配光パターンにカットオフラインを形成するための湾曲部を有し、前記傾斜部は、前記湾曲部に対応する位置に配置されてもよい。
【0008】
また、前記傾斜部は、前記前後方向の後方に向けて車両搭載状態における左右方向の寸法が小さくなるように形成されてもよい。
【0009】
また、前記第2反射面は、前記配光パターンに斜めカットオフラインを形成するための段差部を有し、前記段差部は、前記第2反射面の前記前後方向の前方の端部から、前記前後方向の後方に、高位側に傾いた状態で延びていてもよい。
【0010】
また、前記傾斜部は、前記第2反射面のうち前記段差部により高さが低くなる低位側に配置されてもよい。
【0011】
また、前記第1反射面は、前記光源の光軸上であって前記光の出射方向とは反対側の位置に第1焦点を有し、前記出射面の焦点に一致及びほぼ一致する位置に第2焦点を有する楕円体面を基調とした形状であってもよい。
【0012】
本発明に係る車両用前照灯は、光源と、前記光源からの光を導光して出射し、車両前方に配光パターンを照射する上記の車両用導光体とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、遠方視認性を向上することが可能な車両用導光体及び車両用前照灯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、車両用前照灯の一例を示す側面図である。
図2図2は、車両用導光体の一例を示す斜視図である。
図3図3は、車両用導光体の一例を示す断面図である。
図4図4は、第2反射面の一例を示す図である。
図5図5は、車両用導光体に入射する光の光路の一例を示す図である。
図6図6は、第2反射面の傾斜部で反射される光の光路の一例を示す図である。
図7図7は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される配光パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る車両用導光体及び車両用前照灯の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0016】
以下の説明において、前後、上下、左右の各方向は、車両用前照灯が車両に搭載された車両搭載状態における方向であって、運転席から車両の進行方向を見た場合における方向を示す。なお、本実施形態では、上下方向は鉛直方向に平行であり、左右方向は水平方向であるとする。
【0017】
図1は、車両用前照灯100の一例を示す側面図である。図1に示す車両用前照灯100は、後述する配光パターンP(図6参照)を車両前方に照射する。本実施形態では、配光パターンPとして、例えばロービームパターンを例に挙げて説明する。車両用前照灯100は、光源10と、車両用導光体20とを備えている。本実施形態では、左側通行の道路を走行する車両に搭載する車両用前照灯100の構成を例に挙げて説明する。
【0018】
[光源]
光源10は、本実施形態において、例えばLEDやOLED(有機EL)などの半導体型光源、レーザ光源等が用いられる。光源10は、光を出射する発光面11を有する。発光面11は、後述の車両用導光体20の入射面21に対向して配置される。光源10は、基板13に取り付けられる。基板13は、取付部材30に保持される。取付部材30は、光源10で発生した熱を放出する。
【0019】
[車両用導光体]
図2は、車両用導光体20の一例を示す斜視図である。図3は、車両用導光体20の一例を示す断面図である。なお、図2では、車両用導光体20のうち視線方向の裏側の構成が透けて見えるように記載している。また、図3は、光源10の光軸を通り発光面11に垂直な平面によって切断した断面を示している。
【0020】
図2及び図3に示す車両用導光体20は、光源10からの光を導光して車両搭載状態における前方に出射する。本実施形態に係る車両用導光体20は、例えば従来のプロジェクタ型の車両用前照灯におけるリフレクタ、シェード、投影レンズ等のそれぞれに対応する機能を集約させた構成である。車両用導光体20は、入射面21と、第1反射面22と、第2反射面23と、出射面26とを備える。
【0021】
[入射面]
入射面21は、光源10に対応して設けられる。入射面21は、例えば円錐台状に形成される。入射面21は、第1面21aと、第2面21bと、入射側反射面21cと、を有する。第1面21a及び第2面21bは、光源10からの光が入射する。第1面21aは、発光面11に対向する。第1面21aは、平面又は光源10側に突出する凸面である。第2面21bは、光源10の側方に配置され、光源10の発光面11及び第1面21aを囲うように円筒面状に配置される。入射側反射面21cは、第2面21bから入射した光を第1反射面22に向けて反射する。
【0022】
[第1反射面]
第1反射面22は、入射面21から入射した光を前方に向けて内面反射する。本実施形態において、第1反射面22は、入射面21から入射した光を所定の焦点位置Sに向けて反射する。焦点位置Sは、後述する出射面26の焦点に一致又はほぼ一致する位置に設定される。第1反射面22は、例えば光源10の光軸上であって光の出射方向とは反対側の位置に第1焦点F1を有し、焦点位置Sに一致及びほぼ一致する位置に第2焦点F2を有する楕円体面ELを基調とした形状である。なお、第1反射面22は、上記のような楕円体面ELを基調とした自由曲面に限定されず、例えば放物面を基調とした自由曲面等、他の曲面を基調とした形状であってもよい。第1反射面22は、車両搭載状態の上部側に配置される。
【0023】
[第2反射面]
第2反射面23は、平面を基調とした形状を有する。第2反射面23は、第1反射面22で反射された光の一部を前方(出射面26)に向けて内面反射する。第2反射面23は、車両搭載状態において水平面に沿って配置される。第2反射面23は、車両用導光体20のうち第1反射面22とは上下方向において反対側に配置される。つまり、本実施形態において、第2反射面23は、車両搭載状態の下部側に配置される。
【0024】
第2反射面23は、プリズム部23aと、端辺23bと、を有する。端辺23bは、第2反射面23の前方の端部に設けられる。端辺23bは、直線部23d及び湾曲部23eを有する。直線部23dは、左右方向の両端にそれぞれ設けられる。湾曲部23eは、左右方向の両側の直線部23dから中央にかけて後方に湾曲する部分である。
【0025】
図4は、第2反射面23の一例を示す図である。図4は、車両用導光体20の前方かつ内側から第2反射面23を見た状態を示している。図4に示すように、プリズム部23aは、例えば第2反射面23の前後方向及び左右方向に複数並んだ状態で配置される。プリズム部23aは、第2反射面23に到達した光を拡散する。
【0026】
本実施形態において、プリズム部23aは、第2反射面23の左右方向の全体に亘って設けられるが、これに限定されない。プリズム部23aは、第2反射面23の左右方向の一部に設けられてもよい。また、プリズム部23aは、第2反射面23のうち左右方向の両端かつ前後方向の前方側の領域には設けられない構成となっているが、これに限定されない。これらの各領域にもプリズム部23aが設けられてもよい。また、複数のプリズム部23aは、前後方向、左右方向、上下方向の形状及び寸法等が互いに異なってもよい。
【0027】
湾曲部23eは、左右方向の中央部が、後述する出射面26の焦点位置Sに一致又は略一致するように配置される。湾曲部23eにより、カットオフラインCL(図7参照)が形成される。湾曲部23eには、段差部24が設けられる。
【0028】
段差部24は、配光パターンPに斜めカットオフラインCLa(図7参照)を形成する。段差部24は、斜めカットオフラインCLaの傾きに応じて傾き方向が設定される。段差部24は、左右方向の右方から左方にかけて斜め上方に傾斜している。段差部24の右側よりも、段差部24の左側の方が上下方向の高さが高くなっている。
【0029】
段差部24は、第2反射面23の端辺23bのうち湾曲部23eから後方に、左右方向に傾いた状態で延びている。したがって、例えば図4に示すように、段差部24が延びる方向D2は、前後方向D1に対して、左右方向に傾いた状態となっている。この場合、段差部24は、後方に向けて、左右方向のうち当該段差部24により上下方向の高さが高くなる方に傾いた状態で延びている。本実施形態において、段差部24は、右側から左側に向けて上下方向の高さが高くなっている。したがって、段差部24は、後方に向けて左右方向の左側に傾いた状態で延びている。この場合、段差部24の段面は、左右方向の右方、前後方向の後方、かつ上下方向の上方を向いた状態となる。
【0030】
第2反射面23は、傾斜部25を有する。傾斜部25は、第2反射面23のうち、前方に向けて下方側に傾いた部分である。傾斜部25は、例えば平面状であるが、これに限定されず、曲面であってもよい。また、傾斜部25は、傾斜角度が段階的に異なるように形成されてもよい。傾斜部25は、第2反射面23の他の部分に比べて、傾斜部25からの反射光が垂直方向においてカットオフラインを形成する端辺23bに近い位置を通過するように形成されている。
【0031】
傾斜部25は、第2反射面23のうちプリズム部23aが設けられる領域に対して前方側に設けられる。傾斜部25は、左右方向について、湾曲部23eに対応する位置に配置される。傾斜部25は、段差部24によって左右方向に分割される。つまり、傾斜部25は、段差部24に対して右側の低位側傾斜部25aと、段差部24に対して左側の高位側傾斜部25bとを有する。傾斜部25は、低位側傾斜部25aと高位側傾斜部25bとの間で、例えば他の部分に対する傾斜角度を同一とすることができる。なお、傾斜部25は、低位側傾斜部25aと高位側傾斜部25bとの間で当該傾斜角度を異ならせてもよい。例えば、高位側傾斜部25bは、設けられなくてもよい。つまり、高位側傾斜部25bに相当する領域については、プリズム部23aが設けられる領域と同様、水平面に沿った状態であってもよい。この場合、傾斜部25は、第2反射面23のうち段差部24により高さが低くなる低位側、つまり、低位側傾斜部25aに相当する領域に配置される。
【0032】
複数のプリズム部23aのうち、例えば前方端部に配置されるプリズム部23aの一部には、切り欠き部23fが設けられる。切り欠き部23fは、第2反射面22に反射されて出射面26側に向かう光の一部が、プリズム部23aによって遮光されることを防止する。これにより、配光パターンPの斜めカットオフライン上に影が生じることを防止できる。また、この切り欠き部23fにより、当該切り欠き部23fの前方の傾斜部25(本実施形態では、低位側傾斜部25a)により多くの光を到達させることができる。
【0033】
傾斜部25は、後方に向けて、左右方向の寸法が小さくなるように形成される。本実施形態において、傾斜部25は、後方に向けて、左右方向の寸法が中心側に細くなるように形成される。本実施形態において、傾斜部25は、左右方向の右側、つまり低位側傾斜部25aの右側の辺が中央側に湾曲するように形成される。傾斜部25のうち高位側傾斜部25bの左側の辺は、前後方向に沿って形成される。
【0034】
[出射面]
出射面26は、第1反射面22及び第2反射面23で内面反射された光を出射して、車両前方に配光パターンP(図7)を照射する。出射面26は、焦点位置Sに一致又はほぼ一致する位置に焦点を有するように曲面状に形成される。
【0035】
[動作]
次に、上記のように構成された車両用前照灯100の動作を説明する。図5は、車両用導光体20に入射する光の光路の一例を示す図である。図6は、第2反射面23の傾斜部25で反射される光の光路の一例を示す図である。図7は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される配光パターンPの一例を示す図であり、右側通行の車両に対応するパターンを示している。図7において、V-V線がスクリーンの垂直線を示し、H-H線がスクリーンの左右の水平線を示す。また、ここでは、垂直線と水平線との交点が、水平方向の基準位置であるとする。
【0036】
車両用前照灯100の光源10を点灯させることにより、発光面11から光が放射される。この光Lは、入射面21の第1面21a及び第2面21bから車両用導光体20に入射する。第1面21aから入射した光Lは、第1反射面22側に向けて進行する。第2面21bから入射した光Lは、入射側反射面21cによって第1反射面22側に内部反射される。第1反射面22に到達した光Lは、第1反射面22において第2反射面23に向けて内面反射される。
【0037】
第1反射面22で内面反射された光Lのうち一部の光L1は、第2反射面23のプリズム部23aに到達する。なお、図5において、プリズム部23aの構成については模式的に示している。プリズム部23aに到達した光L1は、プリズム部23aによって拡散されるように内面反射され、出射面26に到達する。また、光Lの一部の光L2は、第2反射面23を超えて出射面26に到達する。
【0038】
また、光Lのうち一部の光L3は、第2反射面23の傾斜部25に到達する。傾斜部25に到達した光L3は、傾斜部25によって内面反射され、出射面26に到達する。図6に示すように、本実施形態では、傾斜部25が後方から前方にかけて下方に傾いている。このため、光L3は、傾斜部25での内面反射により、当該傾斜部25が設けられない場合(符号L3aで表示)に比べて、より下方側、つまり、より焦点位置Sに近づくように反射されて出射面26に到達する。
【0039】
出射面26から出射された光L1~光L3は、図7に示すように、カットオフラインCLを有する配光パターンPとして車両前方に照射される。なお、図7では、カットオフラインCLのうち斜めカットオフラインCLaが右側に向けて下方に傾くように形成された状態を例に挙げて説明しているが、これに限定されず、斜めカットオフラインが左側に向けて下方に傾く場合においても同様の説明が可能である。
【0040】
本実施形態では、傾斜部25が後方から前方にかけて下方に傾いている。このため、傾斜部25で反射される光L3は、垂直方向においてカットオフラインCLを形成する端辺23bに近い位置を通過することとなるため、出射面26から出射される場合に、よりカットオフラインCLに近い位置に照射することができる。このため、傾斜部25が設けられない場合に比べて、遠方視認性が向上することになる。
【0041】
一方、第2反射面23の段差部24に到達する光Lは、段差部24によって反射されるが、出射面26には到達しない。このため、配光パターンPとしては、段差部24において反射される光が欠損した状態の投影像が形成される。ここで、段差部24が湾曲部23eから後方に前後方向に沿って延びる場合、段差部24を挟んで左右側に設けられた第2反射面23からの反射光が出射面26から照射される。つまり、出射面26側から見た場合に、第2反射面23の左右方向の中央部に段差部24が暗部として見えてしまう。このため、出射面26からの光Lによる配光パターンPに欠損が発生する。具体的には、段差部24の前方端部の形状が斜めカットオフラインCLaを形成することから、図7に示すように、斜めカットオフラインCLaを含む領域に欠損部(影)Pbとして見えてしまう。これに対して、本実施形態において、段差部24は、湾曲部23eから後方かつ高位側に傾いた状態で延びている。この構成では、出射面26側から見た場合に段差部24が見えにくい位置に配置されるため、第2反射面23の左右方向の中央部には段差部24が暗部として見えにくくなる。このため、出射面26からの光Lによる配光パターンPにおいても欠損が抑制される。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る車両用導光体20は、光源10からの光を入射する入射面21と、入射面21から入射した光を車両搭載状態における前後方向の前方に向けて内面反射する第1反射面22と、前後方向の前方の端辺23bにかけて車両搭載状態における上下方向の下方側に傾いた傾斜部25を有する形状であり、第1反射面22で反射された光を前後方向の前方に向けて内面反射する第2反射面23と、第1反射面22及び第2反射面23で内面反射された光を出射して、車両前方に配光パターンを照射する出射面26とを備える。
【0043】
この構成によれば、傾斜部25に到達した光は、傾斜部25での内面反射によって、当該傾斜部25が設けられない場合に比べ、より下方に、つまり、より焦点位置Sに近づくように反射されて出射面26に到達する。したがって、この光が出射面26から出射される場合に、よりカットオフラインCLに近い位置に照射することができる。このため、傾斜部25が設けられない場合に比べて、遠方視認性を向上することができる。
【0044】
本実施形態に係る車両用導光体20において、第2反射面23は、前後方向の前方の端辺23bに、配光パターンPにカットオフラインCLを形成するための湾曲部23eを有し、傾斜部25は、湾曲部23eに対応する位置に配置される。これにより、カットオフラインCLに近い位置に、より多くの光を照射することができる。
【0045】
本実施形態に係る車両用導光体20において、傾斜部25は、前後方向の後方に向けて車両搭載状態における左右方向の寸法が小さくなるように形成される。これにより、カットオフラインCLに近い位置に照射する光の量を調整することができる。
【0046】
本実施形態に係る車両用導光体20において、第2反射面23は、配光パターンに斜めカットオフラインCLaを形成するための段差部24を有し、段差部24は、第2反射面23の前後方向の前方の端辺23bから、前後方向の後方に、高位側に傾いた状態で延びている。この構成では、出射面26側から見た場合に段差部24が見えにくい位置に配置されるため、第2反射面23の左右方向の中央部には段差部24が暗部として見えにくくなる。このため、出射面26からの光Lによる配光パターンPにおいても欠損が抑制される。
【0047】
本実施形態に係る車両用導光体20において、傾斜部25は、第2反射面23のうち段差部24により高さが低くなる低位側(低位側傾斜部25a)に配置することができる。この場合、斜めカットオフラインCLaにより配光パターンPがせり上がる側、つまり自車線側において、カットオフラインCLに近い位置により多くの光を照射することができる。このため、自車線側の遠方視認性を向上することができる。
【0048】
本実施形態に係る車両用導光体20において、第1反射面22は、光源10の光軸AX上であって光の出射方向とは反対側の位置に第1焦点F1を有し、焦点位置Sに一致及びほぼ一致する位置に第2焦点F2を有する楕円体面ELを基調とした形状である。この構成では、光源10から放射されて第1反射面22に向かう光を逆方向に追跡すると、第1焦点F1の位置で仮想焦点を結ぶことになる。このため、光源10から放射される光は、あたかも第1焦点F1で放射された光であるかのような光路で第1反射面22に向かう。これにより、第1反射面22の構成について、従来培ってきた設計技術を適用することができるため、効率的に設計を行うことができる。
【0049】
本実施形態に係る車両用前照灯100は、光源10と、光源10からの光を導光して出射し、車両前方に配光パターンPを照射する上記の車両用導光体20とを備える。この構成によれば、遠方視認性の向上を図ることができる車両用前照灯100を提供できる。
【0050】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、傾斜部25が、湾曲部23eに対応する位置に配置される構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。傾斜部25は、湾曲部23eに対応する位置とは異なる位置に配置してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、傾斜部25が、後方に向けて左右方向の寸法が小さくなるように形成される構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。傾斜部25は、後方に向けて左右方向の寸法が等しい構成であってもよいし、後方に向けて左右方向の寸法が大きくなる構成であってもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、第2反射面23が段差部24を有し、段差部24が第2反射面23の前方の端辺23bから後方に、高位側に傾いた状態で延びている構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。段差部24が第2反射面23の前方の端辺23bから後方に、前後方向に沿って延びている構成であってもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、第1反射面22が、光源10の光軸AX上であって光の出射方向とは反対側の位置に第1焦点F1を有し、焦点位置Sに一致及びほぼ一致する位置に第2焦点F2を有する楕円体面ELを基調とした形状である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されず、他の形状であってもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、車両用前照灯100において、光源10が車両用導光体20の下部に配置され、車両用導光体20が斜め上方に向けて光を導光する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、車両用前照灯は、光源が車両用導光体の上部に配置され、車両用導光体20が斜め下方に向けて光を導光する構成であってもよい。つまり、上記実施形態の構成に対して上下方向を反転させた構成であってもよい。また、車両用前照灯は、上記構成に対して前後方向を中心軸として軸回りに傾けた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
AX…光軸、CL…カットオフライン、CLa…斜めカットオフライン、EL…楕円体面、F1…第1焦点、F2…第2焦点、L,L1,L2,L3…光、P…配光パターン、S…焦点位置、10…光源、11…発光面、13…基板、20…車両用導光体、21…入射面、21a…第1面、21b…第2面、21c…入射側反射面、22…第1反射面、23…第2反射面、23a…プリズム部、23b,23c…端辺、23d…直線部、23e…湾曲部、23f…切り欠き部、24…段差部、25…傾斜部、25a…低位側傾斜部、25b…高位側傾斜部、26…出射面、30…取付部材、100…車両用前照灯
図1
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図7