(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】三次元造形装置及び三次元造形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20240326BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240326BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20240326BHJP
B29C 64/35 20170101ALI20240326BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240326BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240326BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240326BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/106
B29C64/209
B29C64/35
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2019227278
(22)【出願日】2019-12-17
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】▲角▼谷 彰彦
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-113979(JP,A)
【文献】特開2019-171770(JP,A)
【文献】特開2019-162761(JP,A)
【文献】特開2019-217729(JP,A)
【文献】特開2020-114630(JP,A)
【文献】国際公開第2016/042810(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0086001(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108127922(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形材料で形成した層を積層することにより造形物を造形する三次元造形装置であって、
前記造形物である三次元造形物と品質管理用造形物とが造形される造形台と、
加熱手段を有し、可塑化された前記造形材料を噴射する噴射部と、
前記造形台と前記噴射部とを相対的に移動させる移動機構と、
前記品質管理用造形物を構成する前記層の造形状態を監視する監視部と、
前記噴射部、前記移動機構及び前記監視部を制御して
前記造形物を構成する前記層の形成を実行する制御部と、を備え、
前記監視部は、前記造形台に形成された前記品質管理用造形物を構成する前記層の温度を前記造形状態として監視し、
前記制御部は、
前記温度が所定の温度以下の場合に、前記三次元造形物を構成する前記層の形成を実行することを特徴とする三次元造形装置。
【請求項2】
造形材料で形成した層を積層することにより造形物を造形する三次元造形装置であって、
前記造形物である三次元造形物と品質管理用造形物とが造形される造形台と、
加熱手段を有し、可塑化された前記造形材料を噴射する噴射部と、
前記造形台と前記噴射部とを相対的に移動させる移動機構と、
前記品質管理用造形物を構成する前記層の造形状態を監視する監視部と、
前記噴射部、前記移動機構及び前記監視部を制御して
前記造形物を構成する前記層の形成を実行する制御部と、を備え、
前記監視部は、前記造形台に形成された前記品質管理用造形物を構成する前記層の表面の色調を前記造形状態として監視し、
前記制御部は、
前記表面の色調が所定の値よりも小さい場合には、前記三次元造形物を構成する前記層の形成を実行することを特徴とする三次元造形装置。
【請求項3】
造形材料で形成した層を積層することにより造形物を造形する三次元造形装置であって、
前記造形物である三次元造形物と品質管理用造形物とが造形される造形台と、
加熱手段を有し、可塑化された前記造形材料を噴射する噴射部と、
前記噴射部を清掃する清掃部と、
前記造形台と前記噴射部とを相対的に移動させる移動機構と、
前記品質管理用造形物を構成する前記層の造形状態を監視する監視部と、
前記噴射部、前記移動機構及び前記監視部を制御して、
前記造形物を構成する前記層の形成を実行する制御部と、を備え、
前記監視部は、前記造形台に形成された前記品質管理用造形物を構成する前記層の形状または表面の粗さを前記造形状態として監視し、
前記制御部は、前記形状が所定の範囲の形状となっていた場合または前記表面の粗さが所定の範囲となっていた場合には、前記三次元造形物を構成する前記層の形成を実行し、前記形状が所定の範囲の形状となっていない場合または前記表面の粗さが所定の範囲となっていない場合には、前記清掃部により前記噴射部を清掃させるように前記移動機構と前記噴射部とを制御することを特徴とする三次元造形装置。
【請求項4】
造形材料で形成した層を積層することにより造形物を造形する三次元造形装置であって、
前記造形物である三次元造形物と品質管理用造形物とが造形される造形台と、
加熱手段を有し、可塑化された前記造形材料を噴射する噴射部と、
前記造形台と前記噴射部とを相対的に移動させる移動機構と、
前記品質管理用造形物を構成する前記層の造形状態を監視する監視部と、
前記噴射部、前記移動機構及び前記監視部を制御して
前記造形物を構成する前記層の形成を実行する制御部と、を備え、
前記造形材料はフラットスクリューによって可塑化され、
前記監視部は、前記造形台に形成された前記品質管理用造形物を構成する前記層の表面の粗さを前記造形状態として監視し、
前記制御部は、前記表面の粗さが所定の範囲となっていた場合には前記層の形成を実行することを特徴とする三次元造形装置。
【請求項5】
造形材料で形成した層を積層することにより造形物を造形する三次元造形装置であって、
前記造形物である三次元造形物と品質管理用造形物とが造形される造形台と、
加熱手段を有し、可塑化された前記造形材料を噴射する噴射部と、
前記造形台と前記噴射部とを相対的に移動させる移動機構と、
前記品質管理用造形物を構成する前記層の造形状態を監視する監視部と、
前記噴射部、前記移動機構及び前記監視部を制御して
前記造形物を構成する前記層の形成を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記品質管理用造形物を構成する前記層の造形の際に、前記層を構成する品質管理用造形部の形成を実行するように前記造形台と前記噴射部とを相対的に移動させて、少なくとも一つの前記品質管理用造形部を形成し、前記少なくとも一つの前記品質管理用造形部が前記監視の結果として所望の状態となっていない場合は、前記少なくとも一つの前記品質管理用造形部と隣接しない新たな前記品質管理用造形部を形成するように前記造形台と前記噴射部とを制御し、前記監視部による監視結果に基づいて、前記三次元造形物を構成する前記層の形成を実行することを特徴とする三次元造形装置。
【請求項6】
造形材料で形成した層を積層することにより造形物を造形する三次元造形装置であって、
前記造形物である三次元造形物と品質管理用造形物とが造形される造形台と、
加熱手段を有し、可塑化された前記造形材料を噴射する噴射部と、
前記造形台と前記噴射部とを相対的に移動させる移動機構と、
前記品質管理用造形物を構成する前記層の造形状態を監視する監視部と、
前記噴射部、前記移動機構及び前記監視部を制御して
前記造形物を構成する前記層の形成を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記品質管理用造形物を構成する前記層の造形の際に、前記層を構成する品質管理用造形部の形成を実行するように前記造形台と前記噴射部とを相対的に移動させて、少なくとも一つの前記品質管理用造形部を形成し、前記少なくとも一つの前記品質管理用造形部が前記監視の結果として所望の状態である場合は、前記少なくとも一つの前記品質管理用造形部と隣接する新たな前記品質管理用造形部を複数形成して、前記層を完成するように前記造形台と前記噴射部とを制御し、前記監視部による監視結果に基づいて、前記三次元造形物を構成する前記層の形成を実行することを特徴とする三次元造形装置。
【請求項7】
造形材料で形成した層を積層することにより造形物を造形する三次元造形方法であって、
前記造形材料を噴射部から噴射して、前記造形物である三次元造形物と品質管理用造形物とを造形台に造形する造形工程と、
前記品質管理用造形物を構成する前記層の温度を造形状態として監視する監視工程と、を有し、
前記造形工程において、前記温度が所定の温度以下の場合に、前記三次元造形物を構成する前記層の形成を実行することを特徴とする三次元造形方法。
【請求項8】
造形材料で形成した層を積層することにより造形物を造形する三次元造形方法であって、
前記造形材料を噴射部から噴射して、前記造形物である三次元造形物と品質管理用造形物とを造形台に造形する造形工程と、
前記噴射部を清掃する清掃工程と、
前記品質管理用造形物を構成する前記層の形状または表面の粗さを造形状態として監視する監視工程と、を有し、
前記造形工程において、前記監視工程で監視される前記形状が所定の範囲の形状となっていた場合、または前記監視工程で監視される前記表面の粗さが所定の範囲となっていた場合には、前記三次元造形物を構成する前記層の形成を実行し、前記監視工程で監視される前記形状が所定の範囲の形状となっていない場合または前記監視工程で監視される前記表面の粗さが所定の範囲となっていない場合には、前記清掃工程を実行することを特徴とする三次元造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形装置及び三次元造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、層を積層することにより三次元造形物を造形する三次元造形装置が使用されている。このような三次元造形装置においては、高品質の三次元造形物を造形することが求められている。例えば、特許文献1には、造形する三次元造形物としての出力用造形物の造形に先立って評価用造形物を造形し、評価用造形物の測定結果に基づいて出力用造形物の3次元データを補正するデータ生成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるデータ生成装置のように、三次元造形物のデータを補正すると、データの補正に時間がかかり、三次元造形物の生産性が低下する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の三次元造形装置は、造形材料で形成した層を積層することにより造形物を造形する三次元造形装置であって、前記造形物である三次元造形物と品質管理用造形物とが造形される造形台と、加熱手段を有し、可塑化された前記造形材料を噴射する噴射部と、前記造形台と前記噴射部とを相対的に移動させる移動機構と、前記品質管理用造形物を構成する前記層の造形状態を監視する監視部と、前記噴射部、前記移動機構及び前記監視部を制御して前記層の形成を実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記監視部による監視結果に基づいて、前記三次元造形物を構成する前記層の形成を実行することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施例の三次元造形装置の構成を表す概略正面図。
【
図2】
図1の三次元造形装置のスクリューを表す概略斜視図。
【
図3】
図1の三次元造形装置のスクリューに造形材料が充填されている状態を表す概略平面図。
【
図4】
図1の三次元造形装置のバレルを表す概略平面図。
【
図5】造形する三次元造形物の一例を表す概略斜視図。
【
図6】
図5の三次元造形物の形成途中の状態を表す概略斜視図。
【
図7】好ましい状態の品質管理用造形物の一例を表す概略斜視図。
【
図8】表面の粗さが好ましくない状態の品質管理用造形物の一例を表す概略斜視図。
【
図9】形状が好ましくない状態の品質管理用造形物の一例を表す概略斜視図。
【
図10】
図1の三次元造形装置を用いた品質管理用造形物の造形方法の一例を説明するための図。
【
図11】
図1の三次元造形装置を用いた三次元造形方法の一例のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の三次元造形装置は、造形材料で形成した層を積層することにより造形物を造形する三次元造形装置であって、前記造形物である三次元造形物と品質管理用造形物とが造形される造形台と、加熱手段を有し、可塑化された前記造形材料を噴射する噴射部と、前記造形台と前記噴射部とを相対的に移動させる移動機構と、前記品質管理用造形物を構成する前記層の造形状態を監視する監視部と、前記噴射部、前記移動機構及び前記監視部を制御して前記層の形成を実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記監視部による監視結果に基づいて、前記三次元造形物を構成する前記層の形成を実行することを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、監視部による品質管理用造形物の監視結果に基づいて層の形成を実行する。このため、高品質の三次元造形物を造形することができる。また、三次元造形物のデータを補正することもない。このため、三次元造形物の生産性を低下させることなく高品質の三次元造形物を造形することができる。
【0009】
本発明の第2の態様の三次元造形装置は、前記第1の態様において、前記監視部は、前記造形台に形成された前記品質管理用造形物を構成する前記層の温度を前記造形状態として監視し、前記制御部は、前記温度が所定の温度以下の場合に、前記層の形成を実行することを特徴とする。
【0010】
可塑化された造形材料が固まる前に次の層が形成されると造形される三次元造形物が変形する場合があるが、本態様によれば、監視部による品質管理用造形物の温度が所定の温度になってから次の層の形成を実行する。このため、可塑化された造形材料が固まる前に次の層が形成されることで三次元造形物が変形することを抑制できる。
【0011】
本発明の第3の態様の三次元造形装置は、前記第1または第2の態様において、前記監視部は、前記造形台に形成された前記品質管理用造形物を構成する前記層の形状を前記造形状態として監視し、前記制御部は、前記形状が所定の範囲の形状となっていた場合には前記層の形成を実行することを特徴とする。
【0012】
品質管理用造形物の形状が所定の形状となっていないということは、造形される三次元造形物の形状も所望の形状となっていない可能性が高い。しかしながら、本態様によれば、監視部による品質管理用造形物の形状が所定の形状となっていない場合には次の層の形成を停止する。このため、所望の形状とならない可能性が高い三次元造形物の形成を続けるということを抑制できる。
【0013】
本発明の第4の態様の三次元造形装置は、前記第1から第3のいずれか1つの態様において、前記監視部は、前記造形台に形成された前記品質管理用造形物を構成する前記層の表面の粗さを前記造形状態として監視し、前記制御部は、前記表面の粗さが所定の範囲となっていた場合には前記層の形成を実行することを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、品質管理用造形物表面の粗さから簡単かつ正確に品質管理用造形物の形状が所定の形状となっているか否かを判断できる。
【0015】
本発明の第5の態様の三次元造形装置は、前記第1から第3のいずれか1つの態様において、前記監視部は、前記造形台に形成された前記品質管理用造形物を構成する前記層の表面の色調を前記造形状態として監視し、前記制御部は、前記表面の色調が所定の値よりも小さい場合には前記層の形成を実行することを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、層の表面の色調を監視し、層の表面の色調が所定の値よりも小さい場合には層の形成を実行する。このため、層の表面の色調から簡単かつ正確に品質管理用造形物の形状が所定の形状となっているか否かを判断できる。
【0017】
本発明の第6の態様の三次元造形装置は、前記第3から第5の態様において、前記噴射部を清掃する清掃部を備え、前記制御部は、前記監視部による前記品質管理用造形物を構成する前記層の形状又は表面の粗さが所定の範囲となっていない場合には、前記清掃部により前記噴射部を清掃させるように前記移動機構と前記噴射部とを制御することを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、品質管理用造形物の形状が所定の形状となっていない場合には清掃部により噴射部を清掃させる。噴射部を清掃することで噴射部からの造形材料の正常な噴射を回復することができる。
【0019】
本発明の第7の態様の三次元造形装置は、前記第1から第6のいずれか1つの態様において、前記制御部は、前記品質管理用造形物を構成する前記層の造形の際に、前記層を構成する品質管理用造形部の形成を実行するように前記造形台と前記噴射部とを相対的に移動させて、少なくとも一つの前記品質管理用造形部を形成し、前記少なくとも一つの前記品質管理用造形部が前記監視の結果として所望の状態となっていない場合は、前記少なくとも一つの前記品質管理用造形部)と隣接しない新たな前記品質管理用造形部を形成するように前記造形台と前記噴射部とを制御すること特徴とする。
【0020】
本態様によれば、所望の状態となっていない品質管理用造形部と隣接しないように新たな品質管理用造形部を監視部により監視させる。各品質管理用造形部が隣接して形成された部分を監視部により監視させると形状などの読み取り精度が低下するなど監視部による監視精度が低下する虞があるが、このような虞を抑制できる。
【0021】
本発明の第8の態様の三次元造形装置は、前記第1から第7のいずれか1つの態様において、前記制御部は、前記品質管理用造形物を構成する前記層の造形の際に、前記層を構成する品質管理用造形部の形成を実行するように前記造形台と前記噴射部とを相対的に移動させて、少なくとも一つの前記品質管理用造形部を形成し、前記少なくとも一つの前記品質管理用造形部が前記監視の結果として所望の状態である場合は、前記少なくとも一つの前記品質管理用造形部と隣接する新たな前記品質管理用造形部を複数形成して、前記層を完成するように前記造形台と前記噴射部とを制御すること特徴とする。
【0022】
本態様によれば、層を構成する品質管理用造形部の形成を層が完成するまで複数形成することで、新たな層における品質管理用造形部の形成領域を確保できる。積層によって品質管理用造形部の形成領域が小さくなってしまい監視ができなくなってしまう虞があるが、このような虞を抑制できる。
【0023】
本発明の第9の態様の三次元造形方法は、造形材料で形成した層を積層することにより造形物を造形する三次元造形方法であって、前記造形物である前記三次元造形物と品質管理用造形物とが造形される造形台と、加熱手段を有し、前記造形材料を噴射する噴射部と、前記造形台と前記噴射部とを相対的に移動させる移動機構と、前記品質管理用造形物の造形状態を監視する監視部と、を備える三次元造形装置によって、前記監視部による監視結果に基づいて、前記三次元造形物を構成する前記層の形成を実行することを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、監視部による品質管理用造形物の監視結果に基づいて層の形成を実行する。このため、高品質の三次元造形物を造形することができる。また、三次元造形物のデータを補正することもない。このため、三次元造形物の生産性を低下させることなく高品質の三次元造形物を造形することができる。
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。なお、以下の図はいずれも概略図であり、一部構成部材を省略または簡略化して表している。また、各図中のX軸方向は水平方向であり、Y軸方向は水平方向であるとともにX軸方向と直交する方向であり、Z軸方向は鉛直方向である。
【0026】
最初に、本発明の一実施例の三次元造形装置1の全体構成について
図1から
図4を参照して説明する。なお、本明細書における「三次元造形」とは、いわゆる立体造形物を形成することを示すものであって、例えば、平板状、例えば1層分の層で構成される形状のように、いわゆる二次元形状の形状であっても厚さを有する形状を形成することも含まれる。また、「支持する」とは、下側から支持する場合の他、横側から支持する場合や、場合によっては上側から支持する場合も含む意味である。
【0027】
図1で表されるように、本実施例の三次元造形装置1は、後述の
図5で表されるような三次元造形物Oを造形する造形材料としてのペレット19を収容するホッパー2を備えている。ホッパー2に収容されたペレット19は、供給管3を介して、略円柱状のフラットスクリューであるスクリュー4の円周面4aに供給される。本実施例の三次元造形装置1は、三次元造形物Oを造形する造形材料としてペレット19を使用し、フラットスクリューにより造形材料を可塑化しながら造形材料を噴射する構成であるが、本発明はこのような構成の三次元造形装置1に限定されない。例えば、樹脂製の線状の造形材料であるフィラメントや、金属粉末に樹脂材料を混ぜた金属フィラメントを溶融しながら連続的に噴射して三次元造形物Oを造形する構成などであってもよい。
【0028】
図2で表されるように、スクリュー4の底面である溝形成面18には、円周面4aから中央部Cpまで至る螺旋状の溝4bが形成されている。別の表現をすると、溝4bが形成されることに伴って形成されるリブ4dが溝形成面18を形成している。本実施例の三次元造形装置1は、このような構成となっているため、スクリュー4を
図1で表される駆動モーター6でZ軸方向に沿う方向を回転軸として回転させることにより、
図3で表されるように、ペレット19が円周面4aから中央部Cpまで送られる。なお、
図1では省略されているが、駆動モーター6の昇温を抑制するため、駆動モーター6の近傍において冷却水が循環している。
【0029】
図1で表されるように、スクリュー4の溝形成面18と対向する位置には、バレル5が所定の間隔を有して設けられている。間隔は、円周面から中央部に向かって小さくなるようにバレル5の中央部Cpの厚みが厚くなっていてもよい。そして、バレル5の上面である溝形成面18に対する対向面8の近傍には、加熱部7が設けられている。スクリュー4とバレル5とがこのような構成をしていることにより、スクリュー4を回転させることで、溝4bの位置に対応するとともにスクリュー4の溝形成面18とバレル5の対向面8との間に形成される空間部分20にペレット19は供給され、ペレット19は円周面4aから中央部Cpに移動する。なお、ペレット19が溝4bによる空間部分20を移動する際、ペレット19は、加熱部7の熱により溶融すなわち可塑化され、また、狭い空間部分20を移動することに伴う圧力で加圧される。こうして、ペレット19は、可塑化されることで連通孔5aを介してノズル10aに供給されてノズル10aから射出される。
【0030】
図4などで表されるように、平面視でバレル5の中央部Cpには、溶融したペレット19の移動経路である連通孔5aが形成されている。
図1で表されるように、連通孔5aは、造形材料を射出する噴射部10のノズル10aと繋がっている。連通孔5aには、不図示のフィルターが設けられている。なお、本実施例のバレル5には形成されていないが、バレル5の対向面8に連通孔5aに繋がる溝が形成されていてもよい。対向面8に連通孔5aに繋がる溝が形成されることで、造形材料が連通孔5aに向かって集まり易くなる場合がある。
【0031】
ここで、噴射部10は、可塑化され流体状態の造形材料をノズル10aから連続的に射出することが可能な構成になっている。なお、
図1で表されるように、噴射部10には、造形材料を所望の粘度にするためのヒーター9が設けられている。噴射部10から射出される造形材料は、線形の形状で射出される。そして、噴射部10から線状に造形材料を射出することで層を形成する。
【0032】
本実施例の三次元造形装置1は、ホッパー2、供給管3、スクリュー4、バレル5、駆動モーター6及び噴射部10などを有する射出ユニット27を備えている。なお、本実施例の三次元造形装置1は、造形材料を射出する射出ユニット27を1つ備える構成であるが、造形材料を射出する射出ユニット27を複数備える構成としてもよいし、支持材料を射出する射出ユニット27を備えていてもよい。ここで、支持材料とは、造形材料の層を支持するための支持材料の層を形成するための材料である。
【0033】
また、
図1で表されるように、本実施例の三次元造形装置1は、射出ユニット27から射出されることで形成される造形材料の層を載置するためのステージユニット22を備えている。ステージユニット22は、実際に造形材料の層が載置されるプレート11を備えている。また、ステージユニット22は、プレート11が載置され、第1駆動部15を駆動することによりY軸方向に沿って位置を変更可能な第1ステージ12を備えている。また、ステージユニット22は、第1ステージ12が載置され、第2駆動部16を駆動することによりX軸方向に沿って位置を変更可能な第2ステージ13を備えている。そして、ステージユニット22は、第3駆動部17を駆動することによりZ軸方向に沿って第2ステージ13の位置を変更可能な基体部14を備えている。
【0034】
また、
図1で表されるように、本実施例の三次元造形装置1は、射出ユニット27の各種駆動及びステージユニット22の各種駆動を制御する制御部23と、電気的に接続されている。制御部23の制御により、射出ユニット27及びステージユニット22の各構成部材は、駆動される。また、制御部23には、後述の
図6などで表されるような品質管理用造形物Qの温度を測定する温度センサー21と、該品質管理用造形物Qを撮像する撮像部24と、噴射部10の清掃部28が、電気的に接続されている。なお、品質管理用造形物Qは後述するように層を積層することにより造形され、層は品質管理用造形部から構成されている。
【0035】
次に、
図1の三次元造形装置1を用いて実行する三次元造形方法の一例について、
図5から
図10を参照しながら
図11のフローチャートを用いて説明する。
図11のフローチャートは、層を積層することにより三次元造形物Oを造形する三次元造形方法の一実施例であるが、ステップS110からステップS190は1層分の層を積層するステップを表しており、ステップS200によりステップS110からステップS190を繰り返すことで、層を積層することにより例えば
図5及び
図6で表されるような三次元造形物Oを造形する三次元造形方法である。
【0036】
図11で表されるように、本実施例の三次元造形方法では、最初に、三次元造形物Oの造形を開始してから清掃部28による噴射部10の清掃が規定回数を超えたか否かを判断する。清掃部28による噴射部10の清掃が規定回数を超えている場合、清掃部28による噴射部10の清掃だけでは噴射部10の回復が十分ではないと考えられる。このため、清掃部28による噴射部10での清掃以外のメンテナンス処理も含めた処理を行うため、本実施例の三次元造形方法を終了する。一方、清掃部28による噴射部10の清掃が規定回数を超えていない場合は、ステップS120に進む。
【0037】
ステップS120では、品質管理用造形物Qをプレート11に形成する。本実施例では、品質管理用造形物Qをプレート11に形成する際、
図6で表されるように、造形する三次元造形物Oの造形位置の近傍に品質管理用造形物Qを形成する。ただし、このような方法に限定されない。例えば、三次元造形物Oを造形するプレート11とは異なる場所に品質管理用造形物Qの造形場所を設けてもよい。品質管理用造形物Qとしては、造形する三次元造形物Oの形状などにより様々な形状のものを形成できる。
図7は、品質管理用造形物Qの形成例としての品質管理用造形部Qaであり、後述する品質管理用造形部Qr1及び品質管理用造形部Qr2に対応する。本実施例の三次元造形方法では、品質管理用造形部Qr1及び品質管理用造形部Qr2を、Y軸方向を長手方向とする直方体形状としている。なお、品質管理用造形物Qと三次元造形物Oとの形成位置が近い場合と遠い場合とで、ステップS120から後述のステップS190までの時間、すなわち、品質管理用造形物Qの層を形成してから三次元造形物Oの層を形成するまでの時間、を変更してもよい。
【0038】
次に、ステップS130では、ステップS120で形成された品質管理用造形物Qを監視する。具体的には、温度センサー21で品質管理用造形物Qの温度を監視するとともに、撮像部24で品質管理用造形物Qを撮像する。ここで、品質管理用造形物Qの監視時間、監視タイミングや撮像期間、撮像タイミングをユーザーが設定可能な構成としてもよい。例えば、三次元造形物Oの層を形成している時間は撮像を中止し、品質管理用造形部の造形を開始と同時に撮像を開始することで、画像処理の負荷が重くなるのを抑制できる。そして、ステップS140に進み、ステップS140で品質管理用造形物Qが所望の状態となっているか否かを制御部23で判断する。具体的には、品質管理用造形物Qの温度が十分に下がっているかどうかと、品質管理用造形物Qの形状に問題がないかを判断する。
【0039】
品質管理用造形物Qの温度が十分に下がっているかどうかを確認する理由としては、以下のとおりである。本実施例の三次元造形方法においては、品質管理用造形物Qと三次元造形物Oとを順に1層毎に形成する。すなわち、2層以上の層が積層されて構成される三次元造形物Oを形成する場合、ある層において品質管理用造形物Qの温度が十分に下がっていれば、それ以前に形成された三次元造形物Oの層である下層の層の温度も十分に下がっていることとなる。三次元造形物Oの下層の層の温度が十分に下がっていなければ上層の層を形成した場合に下層の層が変形する虞があるが、三次元造形物Oの下層の層の温度が十分に下がっていれば上層の層を形成した場合に下層の層が変形する虞を低減できる。本実施例では温度センサー21で品質管理用造形物Qの温度を監視するが、例えば、撮像部24で撮像された品質管理用造形物Qの色から品質管理用造形物Qの温度を監視することも可能である。
【0040】
品質管理用造形物Qの形状に問題がないかを確認する理由としては、
図5及び
図6で表されるように、三次元造形物Oの内部に設けられたピン25など、完成した後に外側から確認できない特徴的な内部形状を三次元造形物Oが有していた場合などにおいて、該内部形状が高精度に造形できていることの蓋然性を高めるためである。例えば、品質管理用造形物Qの造形データから形成される好ましい形状の品質管理用造形物Qが、
図7で表されるような品質管理用造形部Qaであったとする。そして、実際に造形された品質管理用造形物Qが
図8で表される品質管理用造形部Qbのように表面に凸凹26がある場合や、実際に造形された品質管理用造形物Qが
図9で表される品質管理用造形部Qcのように所望の大きさよりも大きく形成される場合などにおいては、完成した三次元造形物Oの内部形状に不備が生じる虞がある。表面に凸凹26がある場合は射出量不足である場合が多く、所望の大きさよりも大きく形成される場合は射出量過多である場合が多いためである。このため、品質管理用造形物Qを監視して可否判断をすることで、完成した三次元造形物Oを外側から見た場合だけでは内部形状に不備があるかわからないような形状の三次元造形物Oを形成する場合であっても、内部形状に不備がある三次元造形物Oを形成してしまうことを抑制できる。なお、本実施例の撮像部24は、定点で観測する構成であるがこのような構成に限定されない。
【0041】
なお、本実施例の三次元造形方法では、品質管理用造形物Qの監視を品質管理用造形物Qの温度と品質管理用造形物Qの形状との2つの観点から行っているが、いずれか1つであってもよく、また、別の観点から品質管理用造形物Qの監視を行ってもよい。そして、本実施例の三次元造形方法では、各層において先にステップS120で品質管理用造形物Qを形成してから後述のステップS190で三次元造形物Oを形成するが、監視の内容などに応じて、品質管理用造形物Qを形成する前に三次元造形物Oを形成してもよいし、品質管理用造形物Qと三次元造形物Oとを同時に形成してもよい。
【0042】
ステップS140で品質管理用造形物Qが所望の状態となっていると判断した場合はステップS170に進み、ステップS140で品質管理用造形物Qが所望の状態となっていないと判断した場合はステップS150に進む。ここで、ステップS150では清掃部28によって噴射部10を清掃し、その後、ステップS160に進んで品質管理用造形物Qの造形データを再生成し、ステップS110に戻る。
【0043】
ステップS170では、品質管理用造形物Qの次の層を形成することに備えて、品質管理用造形物Qを形成するための空き領域Sを形成するためのデータを生成する。そして、ステップS180で、ステップS170で生成したデータに基づいて空き領域Sを形成する。
【0044】
ここで、
図10を用いて空き領域Sの形成について説明する。
図10において、品質管理用造形物Q1からQ6は、
図6で表されるように、品質管理用造形物Qの全体像を表している。一方、品質管理用造形部Qr1及びQr2は、
図7から
図9で表されるように、品質管理用造形物QにおいてステップS130で監視がなされる部分を表している。
【0045】
品質管理用造形物Q1は、1層目の層R1から3層目の層R3まで積層された状態を表している。別の表現をすると、ステップS110から後述のステップS190までのステップがステップS200により3回繰り返され、4回目のステップS120が実行されようとしている状態を表している。品質管理用造形物Q1では、層R3上のすべての領域が空き領域Sとなっている。また、1層目の層R1から3層目の層R3までの積層は所望の状態で積層されている。
【0046】
品質管理用造形物Q2は、層R3上の空き領域Sに、4層目の層R4における品質管理用造形部Qr1を形成した状態を表している。しかしながら、ステップS140で品質管理用造形部Qr1が所望の状態となっていないと判断されたとする。すると、ステップS150及びステップS160を介して次のステップS120で、品質管理用造形物Q3で表されるように、層R3上の空き領域Sにおける品質管理用造形部Qr1に間隔をあけて隣に品質管理用造形部Qr2を形成する。
【0047】
ここで、ステップS140で品質管理用造形部Qr2が所望の状態となっていると判断されたとする。すると、ステップS170及びステップS180と進み、品質管理用造形物Q4で表されるように、品質管理用造形部Qr2に隣接させて造形材料を噴射させて層R4上に空き領域Sを造形する。
【0048】
その後、品質管理用造形物Q5で表されるように、5層目の層R5に関してのステップS120により、層R4上の空き領域Sに品質管理用造形部Qr1を形成する。ここで、ステップS140で品質管理用造形部Qr1が所望の状態となっていると判断されたとする。すると、ステップS170及びステップS180と進み、品質管理用造形物Q6で表されるように、品質管理用造形部Qr1に隣接させて造形材料を噴射させて層R5上に空き領域Sを造形する。そして、このような処理を繰り返していく。
【0049】
ステップS180で空き領域Sを形成した後、ステップS190で、三次元造形物Oを形成する。本実施例では、品質管理用造形物Qにおける空き領域Sを形成した層と同じ積層数の層の三次元造形物Oを形成する。すなわち、品質管理用造形物Qと三次元造形物Oとを1層ずつ交互に形成する。しかしながら、このような例に限定されない。例えば、品質管理用造形物Qのうちの1層分の層を形成し該層を監視して問題がないことを確認した後に、三次元造形物Oの複数層分の層を形成し、これらの動作を繰り返してもよい。さらには、品質管理用造形物Qをプレート11の空き領域に順次個別に形成するなどしてもよく、品質管理用造形物Qは
図10で表されるような積層構造となっていなくてもよい。
【0050】
そして、ステップS200に進み、次の層の三次元造形物O及び品質管理用造形物Qの造形データがあるか否かを制御部23で判断する。ステップS200で、次の層があると判断した場合はステップS110に戻り、次の層がないと判断した場合は本実施例の三次元造形方法を終了する。
【0051】
ここで、一旦まとめると、本実施例の三次元造形装置1は、層を積層することにより三次元造形物Oを造形する三次元造形装置であって、三次元造形物O及び品質管理用造形物Qが造形される造形台としてのプレート11と、三次元造形物O及び品質管理用造形物Qの造形材料である固形のペレット19を加熱して可塑化させた状態で噴射する噴射部10と、プレート11と噴射部10とを相対的に移動させる移動機構としてのステージユニット22と、品質管理用造形物Qの造形状態を監視する監視部としての温度センサー21及び撮像部24と、を備えている。そして、制御部23の制御に基づいて、温度センサー21及び撮像部24による監視結果に基づいて層の形成を実行する三次元造形方法を実行することができる。
【0052】
このように、本実施例の三次元造形装置1は、温度センサー21及び撮像部24による品質管理用造形物Qの監視結果に基づいて層の形成を実行する。このため、高品質の三次元造形物Oを造形することができる。また、三次元造形物Oの造形データを補正することもない。このため、三次元造形物Oの生産性を低下させることなく高品質の三次元造形物Oを造形することができる。
【0053】
ここで、監視部としての温度センサー21は、プレート11に形成された品質管理用造形物Qの温度を品質管理用造形物Qの造形状態として監視する。そして、制御部23は、ステップS140を実行することで、温度センサー21による品質管理用造形物Qの温度が所定の温度になってから、三次元造形物Oの層の形成を実行する。可塑化された造形材料が固まる前に次の層が形成されると造形される三次元造形物Oが変形する場合があるが、本実施例の三次元造形装置1は、温度センサー21による品質管理用造形物Qの温度が所定の温度になってから次の層の形成を実行することができる。このため、可塑化された造形材料が固まる前に次の層が形成されることで三次元造形物Oが変形することを抑制できる。また、監視部として接触式温度計、赤外線サーモグラフィ、放射温度計などを用いることができる。
【0054】
また、監視部としての撮像部24は、プレート11又は、先に形成された品質管理用造形物Qを構成する層上に形成された品質管理用造形物Qの形状を造形状態として監視する。そして、制御部23は、ステップS140を実行することで、撮像部24による品質管理用造形物Qの形状が好ましい所定の形状となっていた場合には三次元造形物Oの層の形成を実行し、撮像部24による品質管理用造形物Qの形状が好ましい所定の形状となっていない場合には三次元造形物Oの層の形成を停止することができる。品質管理用造形物Qの形状が所定の形状となっていないということは、造形される三次元造形物Oの形状も所望の形状となっていない可能性が高い。しかしながら、本実施例の三次元造形装置1は、撮像部24による品質管理用造形物Qの形状が所定の形状となっていない場合には次の層の形成を停止することができる。例えば、プレート11又は、先に形成された品質管理用造形物Qを構成する層上に、ノズル10aから1回の走査で吐出されて形成された線状の品質管理用造形部が、造形物で指定されている線幅の範囲から外れた場合停止する。このため、所望の形状とならない可能性が高い三次元造形物Oの形成を続けるということを抑制できる。また、監視部として非接触のレーザー顕微鏡、レーザー測長システムや、触針式プロファイラーなどを用いることができる。
【0055】
また、監視部は、品質管理用造形物Qの造形状態として、品質管理用造形物Qの表面の粗さを撮像することができる。このため、本実施例の三次元造形装置1は、品質管理用造形物Qの表面の粗さから簡単かつ正確に品質管理用造形物Qの形状が所定の形状となっているか否かを判断できる。例えば、プレート11や先に形成された品質管理用造形物Qを構成する層上に、ノズル10aから1回の走査で吐出されて形成された線状の品質管理用造形部が、面粗度Ra5μからRa50μmの範囲から外れた場合停止する。また、監視部としては、触針式プロファイラー、原子間力顕微鏡などを用いることができる。
【0056】
また、監視部は、品質管理用造形物Qの造形状態として、品質管理用造形物Qの色調を測定することができる。このため、本実施例の三次元造形装置1は、品質管理用造形物Qの色調から簡単かつ正確に品質管理用造形物Qの造形状態が所定の色調となっているか否かを判断できる。例えば、プレート11や先に形成された品質管理用造形物Qを構成する層上に、ノズル10aから1回の走査で吐出されて形成された線状の品質管理用造形部が、正常な射出状態で射出した線状の品質管理用造形部の表面の色彩値を基準にした場合、色差ΔEの値が1.0より大きい場合停止する。監視部としては、分光測色計、色彩色差計、色彩輝度計などを用いることができる。
【0057】
また、本実施例の三次元造形装置1は、噴射部10を清掃する清掃部28を備えている。そして、制御部23は、撮像部24による品質管理用造形物Qの形状が、例えば
図8の品質管理用造形部Qbや
図9の品質管理用造形部Qcのように、好ましい所定の形状となっていない場合には、清掃部28により噴射部10を清掃させるように清掃部28を制御することができる。本実施例の三次元造形装置は、品質管理用造形物Qの形状が好ましい所定の形状となっていない場合には清掃部28により噴射部10を清掃させるので、噴射部10を清掃することで噴射部10からの造形材料の正常な噴射を回復することができる。
【0058】
ここで、本実施例の制御部23は、プレート11と噴射部10とを相対的に複数回往復移動させることで積層される層の各々の形成を実行することができる。別の表現をすると、本実施例の三次元造形装置1は、制御部23の制御により、複数パスで各々の層を形成する。本実施例の三次元造形装置1は、このような構成となっていることで、高コストとなりがちな噴射部10の数を減らしつつ高精度に三次元造形物Oを造形することができる。
【0059】
また、
図10で表されるように、本実施例の三次元造形装置1は、制御部23の制御により、品質管理用造形物Qの造形の際にZ軸方向に沿う積層方向から見て往復移動の方向であるY軸方向と交差するX軸方向に隣接しないように形成された部分(例えば、品質管理用造形部Qr1に隣接しないように形成された品質管理用造形部Qr2)を温度センサー21及び撮像部24により監視させる。各パスが隣接して形成された部分を温度センサー21及び撮像部24により監視させると形状などの読み取り精度が低下するなど温度センサー21及び撮像部24による監視精度が低下する虞があるが、本実施例の三次元造形装置1は、このような虞を抑制できる。
【0060】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…三次元造形装置、2…ホッパー、3…供給管、4…スクリュー、4a…円周面、
4b…溝、4d…リブ、5…バレル、5a…連通孔、6…駆動モーター、7…加熱部、
8…対向面、9…ヒーター、10…噴射部、10a…ノズル、
11…プレート(造形台)、12…第1ステージ、13…第2ステージ、14…基体部、
15…第1駆動部、16…第2駆動部、17…第3駆動部、18…溝形成面、
19…ペレット(造形材料)、20…空間部分、21…温度センサー(監視部)、
22…ステージユニット(移動機構)、23…制御部、24…撮像部(監視部)、
25…ピン、26…凸凹、27…射出ユニット、28…清掃部、O…三次元造形物、
Q…品質管理用造形物