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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ポリエステル組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/199 20060101AFI20240326BHJP
   C08G 63/78 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
C08G63/199
C08G63/78
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019565588
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2019032366
(87)【国際公開番号】W WO2020045156
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2018159490
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大久保 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 陽一郎
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-133781(JP,A)
【文献】特開2015-042710(JP,A)
【文献】特開2015-147895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L67
C08G63
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体と、シクロヘキサンジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体とを含むジカルボン酸成分と、エチレングリコールとを重縮合した共重合ポリエステルであり、下記(I),(III)および(IV)を満足するポリエステル組成物。
(I)ポリエステル組成物に対して、フェノール残基を5.1~35mmol/kg含有する。
(III)融解熱量△Hmが、0.1~22J/gである。
(IV)固有粘度IVが、0.60~0.63である。
【請求項2】
下記(II)を満足することを特徴とする請求項1記載のポリエステル組成物。
(II)ろ過面積24.5φのフィルター目開き5μm焼結繊維フィルターに、水分含有量500ppm未満に乾燥したポリエステル組成物を、ポリエステル組成物温度240℃、吐出量10g/分で4時間流した際の、4時間後ろ過圧力と1時間後ろ過圧力の差をろ過圧力差△Pとしたとき、△Pが下記式(1)を満足する。
△P≦2.0MPa・・・(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期連続紡糸性に優れ、繰り返し重合時のポリマー吐出性に優れるポリエステル組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系繊維の一種であるポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維は、軽量性や耐薬品性に優れるものの、極性官能基を有さないため染色することが困難であるという欠点を有している。そのため、衣料用途には適さず、現状ではタイルカーペット、家庭用敷物、自動車用マットなどのインテリア用途や、ロープ、養生ネット、ろ過布、細幅テープ、組紐、椅子張りなどの資材用途などの限られた用途において利用されている。
【0003】
このような状況の中、ポリオレフィン系繊維の簡便な染色方法として、染色性の低いポリオレフィンに対して、染色可能なポリマーを複合化する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。具体的には、特許文献1ではシクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステル、特許文献2ではイソフタル酸とシクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステルを染色可能な非晶性ポリマーとして、ポリオレフィンへブレンドした可染性ポリオレフィン繊維が提案されている。
【0004】
さらに、特許文献3では、染色可能なポリマーとして、シクロヘキサンジカルボン酸を共重合した共重合ポリエステルを用いてなる可染性ポリオレフィン繊維が提案されている。本文献では、ポリオレフィンへブレンドした、共重合ポリエステルの分散径を特定範囲に制御することで、より高い発色性を示す可染性ポリオレフィン繊維が得られることが記載されている。
【0005】
上記特許文献1、2記載の方法では、染色可能なポリマーを非晶性にすることにより、発色性は向上するものの、鮮やかさや深みは未だ不十分であった。
【0006】
また、特許文献3記載の方法では、発色性が向上している点で優れているものの、長期に亘って連続して紡糸した際にパック圧が上昇し、紡糸の途中でパックを交換する必要があるため、生産性が不十分となる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2008-533315号公報
【文献】特表2001-522947号公報
【文献】国際公開WO2017/154665号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、発色性に優れ、かつ長期連続紡糸性に優れた可染性ポリオレフィン組成物を得ることができる、ポリオレフィンにブレンドするポリエステル組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記課題に向けて鋭意検討を重ねた結果、長期連続紡糸におけるパック圧の上昇が、ポリオレフィンにブレンドされたポリエステル組成物中に含まれる酸化劣化物に起因することを見出した。
【0010】
すなわち、同じ重縮合装置を用いて2回以上繰り返しポリエステル組成物を重縮合した際、重縮合装置の吐出口付近に付着したポリエステル組成物の酸化劣化物が吐出されたポリエステル組成物に混入し、長期連続紡糸におけるパック圧の上昇を引き起こす。
【0011】
そこで、さらなる検討を重ねた結果、ポリエステル組成物の重縮合開始時にフェノール系酸化防止剤を添加することにより、上記ポリエステル組成物の酸化劣化物を効率的に抑制できることを見出した。さらには、酸化劣化物を抑制することにより、ポリエステル組成物重縮合吐出時のガット吐出太細発生が解消され、吐出工程の安定化にも寄与することを見出した。
【0012】
すなわち、ポリオレフィンにブレンドするポリエステル組成物として、以下の条件を満たすポリエステル組成物を用いることにより、可染性ポリオレフィン組成物の紡糸時のパック圧上昇が著しく抑制され、上記目的が達成される。
【0013】
テレフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体と、シクロヘキサンジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体とを含むジカルボン酸成分と、エチレングリコールとを共重合した共重合ポリエステルを主成分とし、下記(I)を満足することを特徴とするポリエステル組成物。
(I)ポリエステル組成物に対して、フェノール残基を1~35mmol/kg含有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリエステル組成物をブレンドしたポリオレフィン組成物は、長期紡糸時パック圧上昇が抑制され、高い生産性で可染性ポリオレフィン繊維を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル組成物は、テレフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体、シクロヘキサンジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体、エチレングリコールを主たる原料とするポリエステル組成物である。
【0016】
本発明において、テレフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体としては、例えばテレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチルが挙げられ、これらのいずれか1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明において、シクロヘキサンジカルボン酸としては、例えば1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジエチルが挙げられ、これらのいずれか1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸は、耐熱性および機械的
特性の観点より好適に採用できる。
【0018】
本発明のポリエステル組成物は、フェノール残基を1mmol/kg以上、35mmol/kg以下含有している。フェノール残基を1mmol/kg以上含有することにより、同じ重縮合装置を用いて2回以上繰り返しポリエステル組成物を重縮合した際、重縮合装置の吐出口付近にポリエステル組成物の酸化劣化物が発生し難くなり、可染性ポリオレフィン繊維の長期連続紡糸時のパック圧上昇およびポリエステル組成物の重縮合吐出時の吐出太細発生を抑制することができる。フェノール残基は3mmol/kg以上であることがより好ましく、5mmol/kg以上であることが特に好ましい。また、フェノール残基を35mmol/kg以下とすることで、フェノール系酸化防止剤を過剰に添加した際に発生するゲル化物を抑制することができ、可染性ポリオレフィン繊維の長期連続紡糸時のパック圧上昇およびポリエステル組成物の重縮合吐出時の吐出太細発生を抑制することができる。フェノール残基は30mmol/kg以下であることがより好ましく、25mmol/kg以下であることが特に好ましい。なお、フェノール残基の測定は後述の実施例に記載する。
【0019】
なお、本発明のポリエステル組成物に含有されるフェノール残基は、ポリエステル組成物の重縮合反応時に添加するフェノール系酸化防止剤由来のものが大部分を占めている。フェノール系酸化防止剤由来を除くフェノール残基は極微量である。
【0020】
本発明におけるフェノール系酸化防止剤は、フェノール構造を有したラジカル連鎖反応禁止剤であり、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)プロピオネート)(例えば、BASF製Irganox1010)、2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレン(例えば、ADEKA製アデカスタブAO-330)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]-ウンデカン(例えば、住友化学製スミライザーGA-80、ADEKA製アデカスタブAO-80)、1,3,5-トリス[[4-(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(例えば、東京化成工業製THANOX1790、CYTEC製CYANOX1790)は、酸化分解抑制効果が高いため、好適に採用できる。なかでも、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)プロピオネート)(例えば、BASF製Irganox1010)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]-ウンデカン(例えば、住友化学製スミライザーGA-80、ADEKA製アデカスタブAO-80)は、ポリエステル組成物の重縮合温度においても飛散が少なく、特に好適に採用できる。
【0021】
本発明のポリエステル組成物は、ろ過圧力差ΔPを2.0MPa以下とすることで、可染性ポリオレフィン繊維の長期連続紡糸時のパック圧上昇を抑制することができる。ΔPは1.8MPa以下であることがより好ましく、1.6MPa以下であることが特に好ましい。ろ過圧力差ΔPは、水分含有量500ppm未満に乾燥したポリエステル組成物を、ポリエステル組成物温度240℃、吐出量10g/分で、ろ過面積24.5φのフィルター目開き5μm焼結繊維フィルターに4時間流した際の、4時間後ろ過圧力と1時間後ろ過圧力の差(4時間後ろ過圧力-1時間後ろ過圧力)である。
【0022】
ポリエステル組成物に含有されるフェノール残基を1~35mmol/kgに制御し、かつポリエステル組成物のろ過圧力差ΔP≦2.0MPaに制御する手法としては、ポリエステル組成物の重縮合反応開始前から吐出開始前までの間にフェノール系酸化防止剤をポリエステル組成物に分散させることが挙げられる。吐出開始前までにフェノール系酸化防止剤をポリエステル組成物に分散させる手法としては、後述するポリエステル組成物の製造方法に示す任意のプロセスにおいて、フェノール系酸化防止剤を添加する方法が挙げられる。その中でも、フェノール系酸化防止剤の分散性向上および酸化防止能の効率化の観点から、ポリエステル組成物低重合体の重縮合反応開始前に添加するのが好ましい。
【0023】
本発明のポリエステル組成物は、融解熱量(ΔHm)が0.1J/g以上、30J/g以下であることが好ましい。ΔHmを0.1J/g以上とすることで、ポリエステル組成物に結晶性が付与され、紡糸時に可染性ポリオレフィン組成物から剥がれ落ち難くなり、ホットローラーへのポリエステル組成物の堆積量を低減させることができる。ΔHmは1J/g以上であることがより好ましく、5J/g以上が特に好ましい。また、ΔHmを30J/g以下とすることで、ポリエステル組成物の屈折率が低下し、ポリオレフィンの屈折率に近づくため、可染性ポリオレフィン組成物を用いた繊維の発色性を向上させることができる。染料吸塵率が高くなり、発色性が良好となるため、29J/g以下であることがより好ましく、27J/g以下であることが特に好ましい。
【0024】
なお、ポリエステル組成物のΔHmは以下の方法で測定することができる。組成物ペレットを、130℃の真空乾燥機中で12時間真空乾燥させる。真空乾燥後のポリマー約5mgを秤量し、TAインスツルメント製示差走査熱量計(DSC)Q2000型を用いて、0℃から280℃まで昇温速度16℃/分で昇温後、280℃で5分間保持するプログラムでDSC測定を行う。昇温過程中に観測された融解ピークより融解熱量(ΔHm)を算出する。なお、融解ピークが複数観測された場合には、最も高温側の融解ピークトップを含む一続きの融解熱量の合計をΔHmとする。
【0025】
本発明のポリエステル組成物のΔHmを前記範囲にする手法としては、特に限定されないが、例えば、原料であるテレフタル酸100重量部に対してシクロヘキサンジカルボン酸の配合量を35重量部以上、90重量部以下に調整する方法が挙げられる。
【0026】
本発明のポリエステル組成物は、固有粘度(IV)が0.60以上、0.70以下であることが好ましい。IVを0.60以上とすることで、ポリエステル組成物の自由体積が減少し、ガラス転移温度が高まるため、可染性ポリオレフィン組成物の構成成分として、繊維を製造する際にはホットローラーへのポリエステル組成物の堆積量を減少させることができる。IVは0.61以上がより好ましく、0.62以上であることが特に好ましい。また、IVを0.70以下とすることで、非晶部の存在割合が高まるため、染料を吸収し易くなり、可染性ポリオレフィン組成物に用いた繊維の発色性を高めることができる。IVは0.69以下であることが好ましく、0.68以下であることが特に好ましい。
【0027】
次に本発明のポリエステル組成物の製造方法を以下に示す。
本発明のポリエステル組成物は通常、次の(1)~(3)のいずれかのプロセスで製造される。
すなわち、(1)テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸およびエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリエステル組成物を得るプロセス。(2)テレフタル酸ジメチル、シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルおよびエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によってポリエチレンテレフタレート低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリエステル組成物を得るプロセス。(3)テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によってポリエチレンテレフタレート低重合体を得る。続いて、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸およびエチレングリコールを添加し、エステル化反応によって低重合体を得、その後の重縮合反応によって高分子量ポリエステル組成物を得るプロセスである。
【0028】
(1)のプロセスの直接エステル化反応の際、ジエチレングリコールの副生を抑制するため反応温度を250℃以下、圧力を1.2×100,000Pa以上とするのが好ましい。さらに続く重縮合反応では、反応温度を290℃以下、圧力は減圧にすればするほど重合時間が短くなり好ましい。
【0029】
(2)および(3)のプロセスのエステル交換反応の際、反応温度を230℃以下、圧力を大気圧以上とするのが好ましい。エステル化反応に続く重縮合反応では、反応温度を290℃以下、圧力は減圧にすればするほど重合時間が短くなり好ましい。
【0030】
また、これら(2)および(3)の両プロセスにおいて、エステル化反応は無触媒でも反応は進行するが、エステル交換反応はマグネシウム、マンガン、カルシウム、コバルト、リチウム、チタン等の化合物を触媒として用いてもよい。また重縮合の際に用いられる触媒としては、チタン化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物などが用いられる。これら金属化合物は、水和物であってもよい。
【0031】
この場合に用いるマグネシウム化合物としては、具体的には、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0032】
マンガン化合物としては、具体的には、塩化マンガン、臭化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、マンガンアセチルアセトネート、酢酸マンガン等が挙げられる。
【0033】
カルシウム化合物としては、具体的には、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、カルシウムアルコキシド、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0034】
コバルト化合物としては、具体的には、塩化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト等が挙げられる。
【0035】
リチウム化合物としては、具体的には、酸化リチウム、水酸化リチウム、リチウムアルコキシド、酢酸リチウム、炭酸リチウム等が挙げられる。
【0036】
チタン化合物としては、チタン錯体、テトラ-i-プロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネートテトラマーなどのチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンアセチルアセトナートなどが挙げられる。中でも多価カルボン酸および/またはヒドロキシカルボン酸および/または多価アルコールをキレート剤とするチタン錯体であることが、ポリマーの熱安定性、色調および口金まわりの堆積物の少なさの観点から好ましい。チタン化合物のキレート剤としては、乳酸、クエン酸、マンニトール、トリペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0037】
アルミニウム化合物としては、カルボン酸アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムキレート化合物、塩基性アルミニウム化合物などが挙げられ、具体的には酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、塩基性酢酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0038】
スズ化合物としてはモノブチルスズオキシド、酢酸スズ、オクチル酸スズやスズアルコキシドなどが挙げられる。
【0039】
アンチモン化合物としてはアンチモンアルコキシド、アンチモングリコラートや三酸化アンチモンが挙げられる。
【0040】
ゲルマニウム化合物としては、ゲルマニウムアルコキシドや酸化ゲルマニウム等が挙げられる。
【0041】
本発明のポリエステル組成物は、安定剤としてリン化合物が添加されていることが好ましい。具体的にはリン酸、リン酸トリメチル、ジエチルホスホノ酢酸エチル等が好ましく、3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン(PEP-36:旭電化社製)や亜りん酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)(IRGAFOS168:BASF社製)などの3価リン化合物が色調や耐熱性改善の面からより好ましい。
【0042】
さらに酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、可塑剤もしくは消泡剤又はその他の添加剤等を必要に応じて配合してもよい。
【0043】
本発明のポリエステル組成物はバッチ重合、半連続重合で生産することができる。
【0044】
本発明のポリエステル組成物をブレンドしてなる可染性ポリオレフィン組成物は、ポリオレフィンが海成分、ポリエステル組成物が島成分である海島構造からなるポリマーアロイ組成物である。
【0045】
ポリオレフィン中に、本発明のポリエステル組成物を染色可能なポリマーとして島に配置することで、ポリオレフィンに発色性を付与することができる。また、染色可能なポリマーを芯鞘複合繊維の芯に配置した場合や、海島複合繊維の島に配置した場合と異なり、ポリマーアロイ組成物では、島成分の染色可能なポリマーが表面に露出するため、より高い発色性を発現し得ることができ、さらには、島成分へ透過した光による発色効率が向上し、鮮やかで深みのある発色を実現することができる。
【0046】
上記のポリマーアロイ組成物とは、島成分が不連続に分散して存在することである。ここで、島成分が不連続とは、例えばポリマーアロイ組成物からなる繊維の場合、繊維軸方向に島成分が適度な長さを有しており、繊維軸に対して垂直な断面、すなわち繊維横断面における海島構造の形状が異なる状態である。島成分が不連続に分散して存在する場合、島成分は紡錘形であるため、島成分へ透過した光による発色効率が向上し、鮮明性が向上し、深みのある発色が得られる。以上より、本発明のポリエステル組成物をブレンドしたポリマーアロイ組成物からなる繊維は、1つの島が繊維軸方向に連続かつ同一形状に形成される芯鞘複合繊維や、複数の島が繊維軸方向に連続かつ同一形状に形成される海島複合繊維とは本質的に異なる。かかるポリマーアロイ組成物は、例えば、ポリオレフィンと、本発明のポリエステル組成物および相溶化剤を溶融混練することで得ることができる。
【実施例
【0047】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
用いた原料は以下のとおりである。
1.テレフタル酸ジメチル:SKケミカル社製
2.テレフタル酸:三井化学社製高純度テレフタル酸。
3.1,4-シクロヘキサンジカルボン酸:新日本理化株式会社製。
4.エチレングリコール:三菱化学社製
5.IRGANOX1010:BASF社製
6.アデカスタブPEP-8:ADEKA社製
7.スミライザーTP-D:住友化学社製
なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
【0048】
A.フェノール残基の含有量
ポリエステル組成物0.01gを、10%塩酸メタノール4mLにて80℃で分解した。冷却後、塩酸メタノールを1mL加え、析出物をろ過した。ろ液を高速液体クロマトグラフィ(島津製作所社製LC-20A)にて測定し、下記実施例および比較例のポリエステル組成物に含まれるフェノール残基の含有量を算出した。
【0049】
また、高速液体クロマトグラフィの標準溶液は、IRGANOX1010、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチルおよび3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸をそれぞれクロロホルム/アセトニトリル溶媒に溶解させることで調製し、検量線を作成した。
【0050】
なお、測定条件は以下の通りである。
カラム恒温槽 :50℃
溶 離 液 :A.0.1vol%ギ酸水溶液、B.アセトニトリル
プログラム :0.0分→10.0分 B25%→100%
10.0分→20分 B100%
流 量 :0.8mL/分
サンプル注入量:20μl
検 出 波 長:260~280nm 。
【0051】
B.固有粘度(IV)
得られたポリエステル組成物を、o-クロロフェノール溶媒に溶解し、0.5g/dL、0.2g/dL、0.1g/dLの濃度の溶液を調整した。その後、得られた濃度Cの溶液の25℃における相対粘度(ηr)を、ウベローデ粘度計により測定し、(ηr-1)/CをCに対してプロットした。得られた結果を濃度0に外挿することにより、固有粘度を求めた。
【0052】
C.融解熱量(ΔHm)
ポリエステル組成物を130℃の真空乾燥機中で12時間真空乾燥させ、真空乾燥後のポリマー約5mgを秤量し、TAインスツルメント製示差走査熱量計(DSC)Q2000型を用いて、0℃から280℃まで昇温速度16℃/分で昇温後、280℃で5分間保持してDSC測定を行った。昇温過程中に観測された融解ピークより融解熱量(ΔHm)を算出した。測定は1試料につき3回行い、その平均値を融解熱量とした。なお、融解ピークが複数観測された場合には、最も高温側の融解ピークトップを含む一続きの融解熱量の合計をΔHmとした。
【0053】
D.吐出時ガット太細発生頻度(回/10分)
重縮合により、所定の固有粘度(IV)までポリエステル組成物を高分子量化した後、孔径18mm×21mmの吐出口金より400g/分にて吐出し、吐出太細の発生回数を測定した。
【0054】
E.ろ過圧力差ΔP
富士フィルター製フジメルトスピニングテスター(MST-C400)を用いてろ過圧力差ΔPを測定した。水分含有量500ppm未満に乾燥したポリエステル組成物を、ポリエステル組成物温度240℃で、ろ過面積24.5φのフィルター目開き5μm焼結繊維フィルターに、吐出量10g/分で4時間流した際の、4時間後ろ過圧力と1時間後ろ過圧力の差(4時間後ろ過圧力-1時間後ろ過圧力)をろ過圧力差ΔPとした。
【0055】
F.長期連続紡糸性
ポリエステル組成物を含む可染ポリオレフィン組成物の紡糸時パック圧上昇傾向について、S、A、Bの3段階で評価した。評価は、Sが最も良く、A、Bの順に悪くなることを示す。SとAを合格とした。
【0056】
G.溶融粘度比
水分含有量500ppm未満に乾燥させたポリエステル組成物を、窒素雰囲気下、290℃で、キャピログラフ1B((株)東洋精機製作所社製)を用いてJIS7199:1999に準じて測定した。キャピラリーダイは内経1mm、長さ40mmを用いた。
【0057】
予熱時間4分におけるせん断速度243.2sec-1での溶融粘度(4分後溶融粘度)と予熱時間20分におけるせん断速度243.2sec-1での溶融粘度(20分後溶融粘度)を求め、下記式(3)にて算出した。
溶融粘度比=(20分後溶融粘度/4分後溶融粘度) ・・・(3) 。
【0058】
H.繊度
温度20℃、湿度65%RHの環境下において、INTEC製電動検尺機を用いて、実施例によって得られた繊維100mをかせ取りした。得られたかせの重量を測定し、下記式(4)を用いて繊度(dtex)を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を繊度とした。
繊度(dtex)=繊維100mの重量(g)×100 ・・・(4) 。
【0059】
I.伸度
伸度は、実施例および比較例によって得られた繊維を試料とし、JIS L1013:2010(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.5.1に準じて算出した。温度20℃、湿度65%RHの環境下において、オリエンテック社製テンシロンUTM-III-100型を用いて、初期試料長20cm、引張速度20cm/分の条件で引張試験を行った。最大荷重を示す点の伸び(L1)と初期試料長(L0)を用いて下記式(5)によって伸度(%)を算出した。なお、測定は1試料につき10回行い、その平均値を強度および伸度とした。
伸度(%)={(L1-L0)/L0}×100 ・・・(5) 。
【0060】
J.ホットローラーへの組成物堆積量(mg/kg-繊維)
実施例または比較例において、未延伸糸を延伸後、第1および第2ホットローラーに付着した組成物を剃刀にて剥離、回収し、重量を測定した。
【0061】
K.ホットローラーへの組成物堆積量の判定
上記Jにて測定した組成物堆積量をホットローラー連続稼動期間の指標として、S、A、Bの3段階で評価した。評価は、Sが最も良く、A、Bの順に悪くなることを示す。ホットローラーへの組成物堆積量がSとAを合格とした。
S;「45mg未満/kg-繊維」
A;「45mg以上/kg-繊維、55mg未満/kg-繊維」
B;「55mg以上/kg-繊維」 。
【0062】
L.染色後の繊維色調(L*値)
実施例または比較例によって得られた繊維を試料とし、英光産業製丸編機NCR-BL(釜径3インチ半(8.9cm)、27ゲージ)を用いて筒編み約2gを作製した後、炭酸ナトリウム1.5g/L、明成化学工業製界面活性剤グランアップUS-20 0.5g/Lを含む水溶液中、80℃で20分間精練後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。精練後の筒編みを135℃で1分間乾熱セットし、乾熱セット後の筒編みに対して、分散染料として日本化薬製Kayalon Polyester Blue UT-YAを1.3重量%加え、pHを5.0に調整した染色液中、浴比1:100、130℃で45分間染色後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。染色後の筒編みを、水酸化ナトリウム2g/L、亜ジチオン酸ナトリウム2g/L、明成化学工業製界面活性剤グランアップUS-20 0.5g/Lを含む水溶液中、浴比1:100、80℃で20分間還元洗浄後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。還元洗浄後の筒編みを135℃で1分間乾熱セットし、仕上げセットを行った。仕上げセット後の筒編みを試料とし、ミノルタ製分光測色計CM-3700d型を用いてD65光源、視野角度10°、光学条件をSCE(正反射光除去法)としてL*値を測定した。なお、測定は1試料につき3回行い、その平均値をL*値とした。
【0063】
M.発色性
上記Lで測定したL*値を発色性の指標として、S、A、Bの3段階で評価した。L*値は数値が小さいほど、発色性に優れる。評価は、Sが最も良く、A、Bの順に悪くなることを示す。L*値がSとAを合格とした。
S;「30未満」
A;「30以上35未満」
B;「35以上」 。
【0064】
N.均染性
上記Lで作製した仕上げセット後の筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によってS、A、Bの3段階で評価した。評価は、Sが最も良く、A、Bの順に悪くなることを示す。SとAを合格とした。
S;「非常に均一に染色されており、全く染め斑が認められない」
A;「ほぼ均一に染色されており、ほとんど染め斑が認められない」
B;「ほとんど均一に染色されておらず、うっすらと染め斑が認められる」 。
【0065】
O.品位
上記Lで作製した仕上げセット後の筒編みについて、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によって、S、A、Bの3段階で評価した。評価は、Sが最も良く、A、Bの順に悪くなることを示す。SとAを合格とした。
S;「鮮やかで深みのある発色が十分であり、品位に極めて優れる」
A;「鮮やかで深みのある発色が概ね十分であり、品位に優れる」
B;「鮮やかで深みのある発色がほとんどなく、品位に劣る」 。
【0066】
[実施例1]
(エステル交換反応)
得られるポリマーに対してマグネシウム原子換算で600ppm相当の酢酸マグネシウムとテレフタル酸ジメチル100kgとエチレングリコール56kgを、150℃、窒素雰囲気下で溶融後、攪拌しながら230℃まで3時間かけて昇温し、メタノールを留出させ、エステル交換反応をおこない、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートを得た。
【0067】
(エステル化反応1回目)
続いて、温度250℃、圧力1.2×100,000Paに保持されたエステル化反応槽に、テレフタル酸31kg、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸57kgおよびエチレングリコール38kgのスラリーを4時間かけて順次供給し、水を留出させ、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行い、得られたエステル化反応生成物101.5kgを重縮合槽に移送した。
【0068】
(重縮合1回目)
移送後、エステル化反応生成物に、得られるポリマーに対してアンチモン原子換算で300ppm相当の三酸化アンチモン、リン原子換算で40ppm相当のリン酸をエチレングリコール溶液として添加し、フェノール系酸化防止剤としてIRGANOX1010を150g添加した。その後、30rpmで撹拌しながら反応系を減圧して反応を開始した。反応器内を250℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を110Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクに到達した後、反応系を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ、30分間吐出前滞留を実施した。吐出前滞留実施後、ストランド状に吐出して冷却し、直ちにカッティングした。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は2時間00分であった。
【0069】
(エステル化反応2回目)
続いて、エステル化反応1回目で使用し、温度250℃、圧力1.2×100,000Paに保持された、エステル化反応物が残留しているエステル化反応槽に、テレフタル酸31kg、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸57kgおよびエチレングリコール38kgのスラリーを再び4時間かけて順次供給し、水を留出させ、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行い、得られたエステル化反応生成物101.5kgを重縮合槽に移送した。
【0070】
(重縮合2回目)
移送後、エステル化反応生成物に、得られるポリマーに対してアンチモン原子換算で300ppm相当の三酸化アンチモン、リン原子換算で40ppm相当のリン酸をエチレングリコール溶液として添加し、フェノール系酸化防止剤としてIRGANOX1010を150g添加した。その後、30rpmで撹拌しながら反応系を減圧して反応を開始した。反応器内を250℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を110Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクに到達した後、反応系を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ、30分間吐出前滞留を実施した。吐出前滞留実施後、ストランド状に吐出して冷却し、直ちにカッティングしてポリエステル組成物のペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は2時間00分であった。ポリマー物性を表1にまとめた。
【0071】
(可染性ポリオレフィン組成物の紡糸)
続いて、ポリプロピレン(PP)(日本ポリプロ製ノバテックMA2)を87.5重量%、ポリエステル組成物を10重量%、相溶化剤としてアミン変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(JSR製ダイナロン8660P)を2重量%用い、酸化防止剤として、フェノール系化合物である1,3,5-トリス[[4-(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(CYTEC製CYANOX1790)を0.05重量部添加して、二軸エクストルーダーを用いて混練温度230℃で混練を行った。二軸エクストルーダーより吐出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーにて5mm長程度にカットして、ペレットを得た。得られたペレットを95℃で12時間真空乾燥した後、エクストルーダー型溶融紡糸機へ供給して溶融させ、紡糸温度250℃、吐出量31.5g/分で紡糸口金(吐出孔径0.18mm、吐出孔長0.23mm、孔数36、丸孔)から吐出させて紡出糸条を得た。この紡出糸条を風温20℃、風速25m/分の冷却風で冷却し、給油装置で油剤を付与して収束させ、3000m/分で回転する第1ゴデットローラーで引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、ワインダーで巻き取って105dtex-36fの未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を第1ホットローラー温度90℃、第2ホットローラー温度130℃、延伸倍率2.1倍、延伸速度500m/分の条件で延伸し、50dtex-36fの可染ポリオレフィン繊維を得た。
【0072】
得られた可染ポリオレフィン繊維の繊維特性、布帛特性および延伸時に第1および第2ホットローラーに付着、堆積した組成物堆積量を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
[実施例2~15]、[比較例1~4]
ポリエステル組成物の原料および固有粘度IVを表1、表2のように変更した以外は、実施例1と同様にして可染性ポリオレフィン繊維を得た。得られた可染ポリオレフィン繊維の繊維特性、布帛特性および延伸時に第1および第2ホットローラーに付着、堆積した組成物堆積量を表1、表2に示す。
【0076】
表1、2の結果より、本発明のポリエステル組成物はΔPが低く、長期連続紡糸性に優れることがわかる。また、フェノール系ではない酸化防止剤を用いても、長期連続紡糸性の改善効果が小さいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のポリエステル組成物を含む可染性ポリオレフィン組成物は、長期連続紡糸性に優れ、かつ鮮やかで深みのある発色性が付与されたものであり、繊維および繊維構造体として好適に用いることができる。