(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】半導体素子の製造方法、および、太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/225 20060101AFI20240326BHJP
H01L 31/18 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L21/225 Q
H01L21/225 R
H01L31/04 440
(21)【出願番号】P 2019566850
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2019046782
(87)【国際公開番号】W WO2020116340
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2018229583
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】弓場 智之
(72)【発明者】
【氏名】門田 祥次
(72)【発明者】
【氏名】守屋 豪
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-103379(JP,A)
【文献】特開2014-197578(JP,A)
【文献】国際公開第2006/117975(WO,A1)
【文献】特開2012-160697(JP,A)
【文献】特開昭62-198120(JP,A)
【文献】特開昭59-076475(JP,A)
【文献】特開平01-179455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/225
H01L 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に2水準以上の異なる不純物濃度で同じ型の不純物拡散層領域を形成する半導体素子の製造方法であって、うち、少なくとも1水準以上の不純物拡散層領域が、不純物拡散組成物(a)を半導体基板に塗布して部分的に不純物拡散組成物膜(b)を形成する工程とそれを加熱して不純物を半導体基板に拡散させて不純物拡散層領域(c)を形成する工程を含む方法により形成され、
不純物拡散組成物(a)が
(a-1)下記一般式(1)で示されるシラン化合物の重合
体
(a-2)不純物拡散成分
、および
(a-3)ケン化度が20モル%以上50モル%未満であるポリビニルアルコール
を含む半導体素子の製造方法。
【化1】
(一般式(1)中、R
1およびR
2は水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基、炭素数6~15のアリール基のいずれかを表し、複数のR
1およびR
2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。l
1は1~10000の整数を表す。)
【請求項2】
前記シラン化合物の重合体が、下記一般式(2)で示されるシラン化合物の重合体である請求項1記載の半導体素子の製造方法。
【化2】
(一般式(2)中、R
3は、炭素数6~15のアリール基を表し、複数のR
3はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。R
4は水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基、炭素数6~15のアリール基のいずれかを表し、複数のR
4はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。R
5およびR
6は水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基のいずれかを表し、複数のR
5およびR
6はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。n
1、m
1は1~9999の整数を表し、n
1+m
1は2~10000の整数であり、n
1:m
1=95:5~25:75である。)
【請求項3】
不純物拡散組成物膜(b)をマスクとして不純物拡散組成物膜(b)未形成部分に不純物を拡散させる工程を含む請求項1
または2記載の半導体素子の製造方法。
【請求項4】
不純物拡散組成物膜(b)未形成部分に不純物を拡散させる工程が、不純物拡散組成物膜(b)を加熱して不純物を前記半導体基板に拡散させて不純物拡散層領域(c)を形成した後である請求項
3記載の半導体素子の製造方法。
【請求項5】
不純物拡散組成物膜(b)未形成部分に不純物を拡散させる工程が、不純物拡散組成物膜(b)を加熱して不純物を前記半導体基板に拡散させる工程と同時に行われる請求項
3記載の半導体素子の製造方法。
【請求項6】
不純物拡散組成物膜(b)未形成部分に不純物を拡散させる工程が、不純物拡散成分を含むイオンを注入する工程である請求項
4または
5記載の半導体素子の製造方法。
【請求項7】
不純物拡散組成物膜(b)未形成部分に不純物を拡散させる工程が、不純物拡散成分を含む雰囲気中で加熱する工程である請求項
4または
5記載の半導体素子の製造方法。
【請求項8】
不純物拡散組成物膜(b)未形成部分に不純物を拡散させる工程が、不純物拡散組成物膜(b)が形成された半導体基板上に、不純物拡散組成物(d)を不純物拡散組成物膜(b)未形成部分に塗布して形成した不純物拡散組成物膜(e)を加熱する工程である請求項
4または
5記載の半導体素子の製造方法。
【請求項9】
半導体基板上に不純物拡散成分を含むイオンを注入する工程、不純物拡散成分を含む雰囲気中で加熱する工程、および、不純物拡散組成物(d)を全面塗布して形成した不純物拡散組成物膜(e)を加熱する工程からなる群から選ばれた少なくとも1つの工程を用いて不純物拡散層領域(f)を形成させた後、不純物拡散組成物(a)を塗布して部分的に不純物拡散組成物膜(b)を形成する工程とそれを加熱して不純物を半導体基板に拡散させて不純物拡散層領域(c)を形成する工程を含む請求項1
または2記載の半導体素子の製造方法。
【請求項10】
半導体基板上に不純物拡散組成物(d)を全面塗布して不純物拡散組成物膜(e)を形成し、その上に不純物拡散組成物(a)を塗布して部分的に不純物拡散組成物膜(b)を形成する工程と、それらを同時に加熱して不純物を半導体基板に拡散させて不純物拡散層領域(c)、(f)を同時に形成する工程を含む請求項1
または2記載の半導体素子の製造方法。
【請求項11】
不純物拡散組成物(d)が
(d-1)シラン化合物の重合体、および
(d-2)不純物拡散成分
を含む請求項
8~
10のいずれか記載の半導体素子の製造方法。
【請求項12】
(d-1)シラン化合物の重合体が、下記一般式(3)で示されるシラン化合物の重合体である請求項
11記載の半導体素子の製造方法。
【化3】
(一般式(3)中、R
7およびR
8は水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基、炭素数6~15のアリール基のいずれかを表し、複数のR
7およびR
8はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。l
2は1~10000の整数を表す。)
【請求項13】
(d-1)シラン化合物の重合体が、下記一般式(4)で示されるシラン化合物の重合体である請求項
11記載の半導体素子の製造方法。
【化4】
(一般式(4)中、R
9は、炭素数6~15のアリール基を表し、複数のR
9はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。R
10は水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基、炭素数6~15のアリール基のいずれかを表し、複数のR
10はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。R
11およびR
12は水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基のいずれかを表し、複数のR
11およびR
12はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。n
2、m
2は1~9999の整数を表し、n
2+m
2は2~10000の整数であり、n
2:m
2=95:5~25:75である。)
【請求項14】
不純物拡散組成物(d)が
(d-4)ポリビニルアルコール、およびポリエーテルオキシドからなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂
(d-5)不純物拡散成分、並びに
(d-6)溶媒
を含み、全溶媒中の25質量%以上が水である請求項
8~
10のいずれか記載の半導体素子の製造方法。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれか記載の半導体素子の製造方法を含む太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の製造方法、および、太陽電池の製造方法に関するものであり、特に高効率の半導体素子の製造方法、および、太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のpn接合を有する太陽電池の製造においては、例えばシリコン等のp型半導体基板に、n型不純物を拡散してn型拡散層を形成することにより、pn接合を形成する。
【0003】
近年、電極との接触抵抗を低くし、かつ、キャリアの再結合を抑制するために提案された選択エミッタ構造の太陽電池が開示されている(非特許文献1)。例えば、n型シリコン基板をベースとする選択エミッタ構造の太陽電池には、受光面側のp型拡散層において、電極直下に高濃度p型拡散層(p++層)を形成し、電極直下以外の受光面に低濃度から中濃度のp型拡散層(p+層)を形成する。選択エミッタ構造を形成するためには、複数回の拡散とマスキングによる部分エッチングとを組み合わせた複雑な工程が必要であることが知られている(特許文献1)。さらに、工程簡略化の目的で複数の不純物濃度の拡散剤をインクジェット法により基板に塗り分け、不純物を拡散する方法(特許文献2)、不純物拡散成分を含んだ塗液を用いて基板上に選択的にパターンを形成し、パターン付き基板をドーピングガス雰囲気下で熱処理をすることで複数の不純物濃度領域を形成する方法(特許文献3、4、5)、不純物拡散成分を含んだ塗液を用いて基板上に選択的にパターンを形成し、熱処理によるパターンからのアウトディフュージョン現象を活用することによって複数の不純物濃度領域を形成する方法(特許文献6、7)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-193350号公報
【文献】特開2004-221149号公報
【文献】特開2012-134571号公報
【文献】特開2015-50357号公報
【文献】特開2006-310368号公報
【文献】特開2017-22350号公報
【文献】特表2002-503390号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】E. Lee et. al.、“Exceeding 19% efficient 6 inch screen printed crystalline silicon solar cells with selective emitter”、Renewable Energy、Volume 42(June 2012)、p.95-99
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の方法では、選択エミッタ構造を形成するためにパターン形成及びエッチングのための工程が必要となり、工程数が多くなる傾向があった。また、特許文献2に記載のインクジェット法では、複数のヘッドを有する専用の装置が必要であり、各ヘッドからの噴射の制御も複雑となる。また、特許文献3~5に記載の拡散ペーストは、ペースト膜からの不純物のアウトディフュージョン抑制が不十分であるため、パターン形成部分以外の部分の不純物拡散濃度のバラツキが大きいという課題があった。さらに、特許文献6、7に記載の方法は、アウトディフュージョンの制御が難しく、やはり、パターン形成部分以外の部分の不純物拡散濃度のバラツキが大きいという課題があった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、選択エミッタ構造を有する太陽電池を、複雑な装置を必要とせず簡便な方法で製造することを可能にし、不純物濃度の面内の均一性に優れた半導体素子の製造方法、および、太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の半導体素子の製造方法は以下の構成を有する。すなわち、半導体基板上に2水準以上の異なる不純物濃度で同じ型の不純物拡散層領域を形成する半導体素子の製造方法であって、うち、少なくとも1水準以上の不純物拡散層領域が、不純物拡散組成物(a)を半導体基板に塗布して部分的に不純物拡散組成物膜(b)を形成する工程とそれを加熱して不純物を半導体基板に拡散させて不純物拡散層領域(c)を形成する工程を含む方法により形成され、不純物拡散組成物(a)が
(a-1)下記一般式(1)で示されるシラン化合物の重合体、および
(a-2)不純物拡散成分
を含む半導体素子の製造方法である。
【0009】
【0010】
(一般式(1)中、R1およびR2は水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基、炭素数6~15のアリール基のいずれかを表し、複数のR1およびR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。l1は1~10000の整数を表す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば選択エミッタ構造を有する太陽電池を、複雑な装置を必要とせず簡便な方法で製造することを可能にし、不純物濃度の面内の均一性に優れた半導体素子の製造方法、および、太陽電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の半導体素子の製造方法の一例を示す工程断面図である。
【
図2】本発明の半導体素子の製造方法の別の一例を示す工程断面図である。
【
図3】本発明の実施例で用いたスクリーン印刷パターンとシート抵抗値測定箇所を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、まず、本発明で用いられる不純物拡散組成物(a)、(d)について説明し、ついで、好適な半導体素子(選択エミッター構造)の製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は例示であって、本発明はこれらの形態には限られない。
<不純物拡散組成物(a)>
本発明で用いられる不純物拡散組成物(a)は、(a-1)下記一般式(1)で示されるシラン化合物の重合体を必須の成分として含む。
【0014】
【0015】
一般式(1)中、R1およびR2は水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基、炭素数6~15のアリール基のいずれかを表し、複数のR1およびR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。l1は1~10000の整数を表す。製膜後の膜の強靱性、および、塗膜厚の均一性の観点から好ましくは5~9000、より好ましくは10~8000である。
【0016】
一般式(1)のR1およびR2における炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基、炭素数6~15のアリール基はいずれも無置換体、置換体のどちらでもよく、不純物拡散組成物の特性に応じて選択できる。
【0017】
炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアシルオキシ基の置換体としては、炭化水素がアミノ基、メルカプト基、水酸基、グリシジル基、グリシジルオキシ基、イソシアネート基に置換された構造が好ましい。置換数は1~3が好ましく、1がより好ましい。
【0018】
炭素数2~10のアルケニル基の置換体としては、炭化水素がアミノ基、メルカプト基、水酸基、グリシジル基、グリシジルオキシ基、イソシアネート基、炭素数2~8のカルボニルオキシアルキル基に置換された構造が好ましい。置換数は1~3が好ましく、1がより好ましい。
【0019】
炭素数6~15のアリール基の置換体としては、芳香環に炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数2~5のアシルオキシ基、炭素数2~7のカルボニルオキシアルキル基、アミノ基、メルカプト基、水酸基、グリシジル基、グリシジルオキシ基、イソシアネート基が結合した構造、または、芳香環から炭素数1~3のアルキル基を介して炭素数2~5のアシルオキシ基、アミノ基、メルカプト基、水酸基、グリシジル基、グリシジルオキシ基、イソシアネート基が結合した構造が好ましい。置換数は1~3が好ましく、1がより好ましい。
【0020】
炭素数1~6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、トリフルオロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-グリシドキシプロピル基、3-アミノプロピル基、3-メルカプトプロピル基、3-イソシアネートプロピル基等が挙げられる。
【0021】
炭素数1~6のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられる。
【0022】
炭素数2~10のアルケニル基の具体例としては、ビニル基、3-アクリロキシプロピル基、3-メタクリロキシプロピル基等が挙げられる。
【0023】
炭素数2~6のアシルオキシ基の具体例としては、アセチルオキシ基等が挙げられる。
【0024】
炭素数6~15のアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、p-ヒドロキシフェニル基、p-スチリル基、p-メトキシフェニル基、1-(p-ヒドロキシフェニル)エチル基、2-(p-ヒドロキシフェニル)エチル基、4-ヒドロキシ-5-(p-ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0025】
不純物拡散組成物からのアウトディフュージョンを抑制しやすくするという観点から、R1、R2の少なくとも1つは炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基、炭素数6~15のアリール基のいずれかを表していることが好ましい。
【0026】
より好ましくは、R1は炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基、炭素数6~15のアリール基のいずれかを表し、かつ、R2は水酸基、炭素数1~6のアルコキシ基いずれかを表していることである。
【0027】
不純物拡散組成物からのアウトディフュージョンを抑制しやすくするという観点から、前記シラン化合物の重合体が、下記一般式(2)で示されるシラン化合物の重合体であることが好ましい。
【0028】
【0029】
一般式(2)中、R3は、炭素数6~15のアリール基を表し、複数のR3はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。R4は水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基、炭素数6~15のアリール基のいずれかを表し、複数のR4はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。R5およびR6は水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基のいずれかを表し、複数のR5およびR6はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。n1、m1は1~9999の整数を表し、n1+m1は2~10000の整数であり、n1:m1=95:5~25:75である。製膜後の膜の強靱性の観点から好ましい(n1+m1)の範囲は5~9000、より好ましくは10~8000である。
【0030】
一般式(2)のR3における炭素数6~15のアリール基は無置換体、置換体のどちらでもよく、不純物拡散組成物の特性に応じて選択できる。好ましい置換体の構造はR1、R2におけるものと同様のものが挙げられる。炭素数6~15のアリール基の具体例としては、R1、R2におけるものと同様のものが挙げられる。
【0031】
一般式(2)のR4における炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基、炭素数6~15のアリール基はいずれも無置換体、置換体のどちらでもよく、不純物拡散組成物の特性に応じて選択できる。好ましい置換体の構造はR1、R2におけるものと同様のものが挙げられる。これらの具体例としてはR1、R2におけるものと同様のものが挙げられる。
【0032】
一般式(2)のR5およびR6における炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基はいずれも無置換体、置換体のどちらでもよく、不純物拡散組成物の特性に応じて選択できる。好ましい置換体の構造はR1、R2におけるものと同様のものが挙げられる。これらの具体例としてはR1、R2におけるものと同様のものが挙げられる。
【0033】
一般式(1)で示されるシラン化合物の重合体の原料として用いることができるオルガノシランの具体例としてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシシランなどの4官能性シラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn-ブトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどの3官能性シラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジn-ブチルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシランなどの2官能性シランが挙げられる。なお、これらのオルガノシランは単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのオルガノシランの中でも、不純物拡散組成物からのアウトディフュージョンを抑制しやすくするという観点から3官能性シランが好ましく用いられる。
【0034】
一般式(2)で示されるシラン化合物のR3およびR4を有するユニットの原料として用いることができるオルガノシランの具体例としては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p-ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、p-トリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-メトキシフェニルトリメトキシシラン、1-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4-ヒドロキシ-5-(p-ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、1-ナフチルトリメトキシシラン、2-ナフチルトリメトキシシラン、1-ナフチルトリエトキシシラン、2-ナフチルトリエトキシシラン、アントラセントリメトキシシランが好ましく用いられる。このなかで、コストの点からナフタレン系、アントラセン系など多環のアリール基を有するものよりもフェニル系のように単環のアリール基を有するものがより好ましい。
【0035】
一般式(2)のR5およびR6を有するユニットの原料として用いることができるオルガノシランの具体例としては、一般式(1)で示されるシラン化合物の重合体の原料であるオルガノシランと同様のものが挙げられる。その中でも、不純物拡散組成物からのアウトディフュージョンを抑制しやすくするという観点から3官能性シランが好ましく用いられる。
【0036】
一般式(2)で表されるシラン化合物の重合体は、炭素数6~15のアリール基を含有するユニットがSi原子換算で25~95モル%であるポリシロキサンである。すなわち、n1:m1=95:5~25:75である。この範囲にあることで、不純物拡散成分のアウトディフージョン抑制、熱処理後に不純物拡散成分を除去した際の有機残渣低減の効果が向上する。また、この範囲にあることで、増粘剤等の熱分解成分が添加された不純物拡散組成物においても、シロキサンのリフロー効果により、熱分解により生成した空孔を埋めることが可能となり、空孔の少ない緻密な膜を形成することができる。従って、拡散時の雰囲気に影響されにくく、また他の不純物に対する高いマスク性が得られる。
【0037】
また、末端基は水素、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアシルオキシ基、炭素数2~10のアルケニル基のいずれかであることが好ましい。
【0038】
一般式(2)で表されるシラン化合物の重合体はそれぞれの構成成分を上記所定の比率で含有していればよく、ブロック共重合体でもランダム共重合体でもよい。
【0039】
アウトディフュージョン抑制、マスク性の更なる向上の観点から、炭素数6~15のアリール基を含有するユニットは、35モル%以上がより好ましく、40モル%以上がさらに好ましい。また、雰囲気や膜厚の影響なく、残渣を発生させないためには、アリール基を含有するユニットが80モル%以下であることが好ましい。すなわち、n1:m1=80:20~35:65であることがより好ましく、n1:m1=80:20~40:60であることがさらに好ましい。
【0040】
一般式(1)、(2)で表されるシラン化合物の重合体は、例えば、オルガノシラン化合物を加水分解した後、該加水分解物を溶媒の存在下、あるいは無溶媒で縮合反応させることによって得ることができる。加水分解反応の各種条件、例えば酸濃度、反応温度、反応時間などは、反応スケール、反応容器の大きさ、形状などを考慮して適宜設定することができるが、例えば、溶媒中、オルガノシラン化合物に酸触媒および水を1~180分かけて添加した後、室温~110℃で1~180分反応させることが好ましい。このような条件で加水分解反応を行うことにより、急激な反応を抑制することができる。反応温度は、より好ましくは30~130℃である。
【0041】
加水分解反応は、酸触媒の存在下で行うことが好ましい。酸触媒としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などのハロゲン化水素系無機酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、ホウ酸、テトラフルオロホウ酸、クロム酸などのその他無機酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのスルホン酸、酢酸、クエン酸、蟻酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、ピルビン酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸などのカルボン酸を例示することができる。本発明において、酸触媒はドーピング性の観点からケイ素、水素、炭素、酸素、窒素、リン以外の原子を極力含まないことが好ましく、リン酸、ギ酸、酢酸、カルボン酸系の酸触媒を用いることが好ましい。
なかでもリン酸が好ましい。
【0042】
酸触媒の好ましい含有量は、加水分解反応時に使用される全オルガノシラン化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~5質量部である。酸触媒の量を上記範囲とすることで、加水分解反応が必要かつ十分に進行するよう容易に制御できる。
【0043】
オルガノシラン化合物の加水分解反応および該加水分解物の縮合反応に用いられる溶媒は、特に限定されず、樹脂組成物の安定性、塗れ性、揮発性などを考慮して適宜選択できる。また、溶媒を2種以上組み合わせてもよいし、無溶媒で反応を行ってもよい。溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、1-t-ブトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールt-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテルエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn-ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル類;メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンなどのケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;酢酸イソプロピル、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、n-プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、n-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、アセト酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、ブチルジグリコールアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、エチルジグリコールアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、トリアセチルグリセリンなどのアセテート類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、安息香酸エチル、ナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、N、N-ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレンなどを挙げることができる。
【0044】
本発明においては、溶解性、印刷性の点からジエチレングリコールメチルエチルエーテル(沸点176℃)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点156.4℃)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点145℃)、乳酸メチル(沸点145℃)、乳酸エチル(沸点155℃)、ジアセトンアルコール(沸点169℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点145℃)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(沸点174℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点188℃)、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(沸点229℃)、γ-ブチロラクトン(沸点204℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点217℃)、ブチルジグリコールアセテート(沸点246℃)、アセト酢酸エチル(沸点181℃)、N-メチル-2-ピロリドン(沸点204℃)、N、N-ジメチルイミダゾリジノン(沸点226℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点213℃)、1,3-ブチレングリコールジアセテート(沸点232℃)、ジイソブチルケトン(沸点168℃)、プロピレングリコールt-ブチルエーテル(沸点151℃)、プロピレングリコールn-ブチルエーテル(沸点170℃)を好ましく例示することができる。
【0045】
加水分解反応によって溶媒が生成する場合には、無溶媒で加水分解させることも可能である。反応終了後に、さらに溶媒を添加することにより、樹脂組成物として適切な濃度に調整することも好ましい。また、目的に応じて加水分解後に、生成アルコールなどを加熱および/または減圧下にて適量を留出、除去し、その後好適な溶媒を添加してもよい。
【0046】
加水分解反応時に使用する溶媒の量は、全オルガノシラン化合物100質量部に対して80質量部以上、500質量部以下が好ましい。溶媒の量を上記範囲とすることで、加水分解反応が必要かつ十分に進行するよう容易に制御できる。また、加水分解反応に用いる水は、イオン交換水が好ましい。水の量は任意に選択可能であるが、Si原子1モルに対して、1.0~4.0モルの範囲で用いることが好ましい。
【0047】
本発明で用いられる不純物拡散組成物(a)は半導体基板中に不純物拡散層を形成するための(a-2)不純物拡散成分を含む。n型の不純物拡散成分としては、15族の元素を含む化合物であることが好ましく、中でもリン化合物であることが好ましい。p型の不純物拡散成分としては、13属の元素を含む化合物であることが好ましく、中でもホウ素化合物であることが好ましい。
【0048】
本発明の半導体素子の製造方法において不純物拡散組成物(a)を用いた場合、不純物拡散層領域(c)の形成されていない領域にガス、コーティング等で異なる濃度の同型不純物の拡散層を熱拡散で形成する際、単に同じ熱履歴のみを加えるのと比較して不純物拡散層領域(c)の拡散がより進行する利点がある。推測ではあるが、これは、同型不純物に関しては、不純物拡散層領域(c)への追加供給が起こっているによるものであると考えられる。特にp型不純物において、この効果は顕著に認められる。結果、同じ拡散層の状態を得るための処理条件をより温和にできる利点がある。
【0049】
リン化合物としては、五酸化二リン、リン酸、ポリリン酸、リン酸メチル、リン酸ジメチル、リン酸トリメチル、リン酸エチル、リン酸ジエチル、リン酸トリエチル、リン酸プロピル、リン酸ジプロピル、リン酸トリプロピル、リン酸ブチル、リン酸ジブチル、リン酸トリブチル、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、リン酸トリフェニルなどのリン酸エステルや、亜リン酸メチル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸エチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸プロピル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸トリプロピル、亜リン酸ブチル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリフェニルなどの亜リン酸エステルなどが例示される。なかでもドーピング性の点から、リン酸、五酸化二リンまたはポリリン酸が好ましい。
【0050】
ホウ素化合物としては、ホウ酸、三酸化二ホウ素、メチルボロン酸、フェニルボロン酸、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリオクチル、ホウ酸トリフェニル等を挙げることができる。
【0051】
本発明で用いられる不純物拡散組成物(a)はシラン化合物の重合体以外にバインダー樹脂を含んでいても良い。好ましい具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリスルホン、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチン、澱粉、デキストリン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリレート、ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリブチラールなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
不純物拡散組成物(a)における(a-1)シラン化合物の重合体が一般式(2)で示されるシラン化合物の重合体である場合、特に好ましい樹脂として(a-3)ケン化度が20モル%以上50モル%未満であるポリビニルアルコールが挙げられる。ポリビニルアルコールは、(a-2)不純物拡散成分、特にp型の不純物拡散成分と錯体を形成し、塗布時に均一な被膜を形成するための成分である。ポリビニルアルコールのケン化度を20%以上とすることで、(a-2)不純物拡散成分との錯体安定性が高まり、拡散性と拡散均一性がさらに向上する。また、ポリビニルアルコールのケン化度を50%未満とすることで、有機溶媒に対する溶解性が向上しやすくなる。一般式(2)で示されるシラン化合物の重合体を含む不純物拡散組成物(a)は水への溶解性が低く、溶媒中での有機溶媒の比率が高いため、有機溶媒に対する溶解性が重要となる場合がある。そのような場合においても、ポリビニルアルコールのケン化度を20%以上50%未満とすることで、有機溶媒系において非常に安定な錯体を形成し、不純物の拡散均一性をさらに向上させ、拡散の進行をさらに促進させることを可能とする不純物拡散組成物を提供することができる。拡散の進行をさらに促進させることができる組成は、結果として同じ拡散層の状態を得るための処理条件をより温和にできる利点がある。
【0053】
ポリビニルアルコールの平均重合度は、溶解度と錯体安定性の点で150~1000が好ましい。本発明において、平均重合度およびケン化度は、いずれもJIS K 6726(1994)に従って測定した値である。ケン化度は当該JISに記載の方法のうち逆滴定法によって測定した値である。
【0054】
本発明で用いられる不純物拡散組成物(a)は溶剤を含むことが好ましい。好ましい具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン等のケトン溶剤;ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチル-n-ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチル-n-ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル-n-ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-n-ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル-n-ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル-n-ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル等のエーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エチル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリエチレングリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のエステル溶剤;アセトニトリル、N-メチルピロリジノン、N-エチルピロリジノン、N-プロピルピロリジノン、N-ブチルピロリジノン、N-ヘキシルピロリジノン、N-シクロヘキシルピロリジノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、イソペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、イソボルニルシクロヘキサノール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコール溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノエーテル溶剤;α-テルピネン、α-テルピネオール、ミルセン、アロオシメン、リモネン、ジペンテン、α-ピネン、β-ピネン、ターピネオール、カルボン、オシメン、フェランドレン等のテルペン溶剤;イソボルニルシクロヘキサノール、イソボルニルフェノール、1-イソプロピル-4-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、p-メンテニルフェノール、及び水が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
ただし、不純物拡散組成物(a)における(a-1)シラン化合物の重合体が一般式(2)で示される構造である場合、シラン化合物の重合体の溶解性を考慮し、水の割合は全溶媒に対して20質量%以下であることが好ましい。
【0056】
特にスクリーン印刷法やスピンコート印刷法などを利用する場合の印刷性をより向上させる観点から、沸点が100℃以上の溶剤であることが好ましい。沸点が100℃以上であると、例えば、スクリーン印刷法で用いられる印刷版に不純物拡散組成物を印刷した際に、不純物拡散組成物が印刷版上で乾燥し固着することを抑制しやすくなる。
【0057】
沸点が100℃以上の溶剤の含有量は、溶剤の全量に対して20質量%以上であることが好ましい。沸点100℃以上の溶媒としては、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(沸点176℃)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点156.4℃)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点145℃)、乳酸メチル(沸点145℃)、乳酸エチル(沸点155℃)、ジアセトンアルコール(沸点169℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点145℃)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(沸点174℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点188℃)、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(沸点229℃)、γ-ブチロラクトン(沸点204℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点217℃)、ブチルジグリコールアセテート(沸点246℃)、アセト酢酸エチル(沸点181℃)、N-メチル-2-ピロリドン(沸点204℃)、N、N-ジメチルイミダゾリジノン(沸点226℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点213℃)、1,3-ブチレングリコールジアセテート(沸点232℃)、ジイソブチルケトン(沸点168℃)、プロピレングリコールt-ブチルエーテル(沸点151℃)、プロピレングリコールn-ブチルエーテル(沸点170℃)、アセチルアセトン(沸点140℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点171℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点245℃)を例示することができる。
【0058】
本発明で用いられる不純物拡散組成物(a)は、界面活性剤を含有しても良い。界面活性剤を含有することで、塗布ムラが改善し均一な塗布膜が得られる。界面活性剤としてはフッ素系界面活性剤や、シリコーン系界面活性剤が好ましく用いられる。
【0059】
フッ素系界面活性剤の具体的な例としては、1,1,2,2-テトラフロロオクチル(1,1,2,2-テトラフロロプロピル)エーテル、1,1,2,2-テトラフロロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2-テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3-ヘキサフロロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2-テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3-ヘキサフロロペンチル)エーテル、パーフロロドデシルスルホン酸ナトリウム、1,1,2,2,8,8,9,9,10,10-デカフロロドデカン、1,1,2,2,3,3-ヘキサフロロデカン、N-[3-(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]-N,N′-ジメチル-N-カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、パーフルオロアルキルスルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル-N-エチルスルホニルグリシン塩、リン酸ビス(N-パーフルオロオクチルスルホニル-N-エチルアミノエチル)、モノパーフルオロアルキルエチルリン酸エステルなどの末端、主鎖および側鎖の少なくとも何れかの部位にフルオロアルキルまたはフルオロアルキレン基を有する化合物からなるフッ素系界面活性剤を挙げることができる。また、市販品としては、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183、同F444、同F475、同F477(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、エフトップEF301、同303、同352(新秋田化成(株)製)、フロラードFC-430、同FC-431(住友スリーエム(株)製))、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、同SC-101、同SC-102、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC-106(旭硝子(株)製)、BM-1000、BM-1100(裕商(株)製)、NBX-15、FTX-218、DFX-218((株)ネオス製)などのフッ素系界面活性剤がある。
【0060】
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、SH28PA、SH7PA、SH21PA、SH30PA、ST94PA(いずれも東レ・ダウコーニング(株)製)、BYK067A,BYK310、BYK322、BYK331、BYK333,BYK355(ビックケミー・ジャパン(株)製)などが挙げられる。
【0061】
界面活性剤を含有する場合の含有量は、不純物拡散組成物中0.0001~1質量%とするのが好ましい。
【0062】
本発明で用いられる不純物拡散組成物(a)は、粘度調整のために増粘剤を含有することが好ましい。これにより、スクリーン印刷などの印刷法でより精密なパターンで塗布することができる。
【0063】
増粘剤としては、有機系では、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴム、ポリアクリル酸、各種アクリル系樹脂、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシド、シリコーンオイル、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム系多糖類、ジェランガム系多糖類、グァーガム系多糖類、カラギーナン系多糖類、ローカストビーンガム系多糖類、カルボキシビニルポリマー、水添ひまし油系、水添ひまし油系と脂肪酸アマイドワックス系、特殊脂肪酸系、酸化ポリエチレン系、酸化ポリエチレン系とアマイド系の混合物、脂肪酸系多価カルボン酸、リン酸エステル系界面活性剤、長鎖ポリアミノアマイドとリン酸の塩、特殊変性ポリアマイド系などが挙げられる。無機系では、ベントナイト、モンモリロン石、マグネシアンモンモリロン石、テツモンモリロン石、テツマグネシアンモンモリロン石、バイデライト、アルミンバイデライト、サポー石、アルミニアンサポー石、ラポナイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、有機ヘクトライト、微粒子酸化ケイ素、コロイダルアルミナ、炭酸カルシウムなどを例示できる。これらは複数種のものを組み合わせて使用しても良い。
【0064】
また、市販品のセルロース系増粘剤としては、1110、1120、1130、1140、1150、1160、1170、1180、1190、2200、2260、2280、2450(いずれもダイセルファインケム(株)製)などが挙げられる。
【0065】
市販品の多糖類系増粘剤としては、ViscarinPC209、ViscarinPC389、SeaKemXP8012(以上、エフエムシー・ケミカルズ(株)製)、CAM-H、GJ-182、SV-300、LS-20、LS-30、XGT、XGK-D、G-100、LG-10(いずれも三菱商事(株))などが挙げられる。
【0066】
市販品のアクリル系増粘剤としては、♯2434T、KC7000、KC1700P(以上、共栄社化学(株)製)、AC-10LHPK、AC-10SHP、845H、PW-120(以上、東亞合成(株)製)などが挙げられる。
【0067】
市販品の水添ひまし油系増粘剤としては、ディスパロン308、NAMLONT-206(以上、楠本化成(株)製)、T-20SF、T-75F(以上、伊藤製油(株)製)などが挙げられる。
【0068】
市販品の酸化ポリエチレン系増粘剤としては、D-10A、D-120、D-120-10、D-1100、DS-525、DS-313(以上、伊藤製油(株)製)、ディスパロン4200-20、同PF-911、同PF-930、同4401-25X、同NS-30、同NS-5010、同NS-5025、同NS-5810、同NS-5210、同NS-5310(以上、楠本化成(株)製)、フローノンSA-300、同SA-300H(以上、共栄社化学(株)製)などが挙げられる。
【0069】
市販品のアマイド系増粘剤としては、T-250F、T-550F、T-850F、T-1700、T-1800、T-2000(以上、伊藤製油(株)製)、ディスパロン6500、同6300、同6650、同6700、同3900EF(以上、楠本化成(株)製)、ターレン7200、同7500、同8200、同8300、同8700、同8900、同KY-2000、KU-700、同M-1020、同VA-780、同VA-750B、同2450、フローノンSD-700、同SDR-80、同EC-121(以上、共栄社化学(株)製)などが挙げられる。
【0070】
市販品のベントナイト系増粘剤としては、ベンゲル、ベンゲルHV、同HVP、同F、同FW、同ブライト11、同A、同W-100、同W-100U、同W-300U、同SH、マルチベン、エスベン、エスベンC、同E、同W、同P、同WX、オルガナイト、オルガナイトD(以上、(株)ホージュン製)などが挙げられる。
【0071】
市販品の微粒子酸化ケイ素系増粘剤としては、AEROSILR972、同R974、同NY50、同RY200S、同RY200、同RX50、同NAX50、同RX200、同RX300、同VPNKC130、同R805、同R104、同R711、同OX50、同50、同90G、同130、同200、同300、同380(以上、日本アエロジル(株)製)、WACKER HDK S13、同V15、同N20、同N20P、同T30、同T40、同H15、同H18、同H20、同H30(以上、旭化成(株)製)などが挙げられる。
【0072】
増粘剤は緻密膜形成や残渣低減の点から、90%熱分解温度が400℃以下であることが好ましい。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシド、各種アクリル酸エステル系樹脂が好ましく、中でも、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドまたはアクリル酸エステル系樹脂が好ましい。保存安定性の点から、アクリル酸エステル系樹脂が特に好ましい。ここで、90%熱分解温度とは、増粘剤の重量が熱分解により90%減少する温度である。90%熱分解温度は、熱重量測定装置(TGA)などを用いて測定することができる。
【0073】
アクリル酸エステル系樹脂としてはポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸プロピル、ポリアクリル酸ブチル、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリベンジルメタクリレート、ポリグリシジルメタクリレート等のポリアクリル酸エステルおよびこれらの共重合体が挙げられる。共重合体の場合、上記アクリル酸エステル成分が重合比率として60mol%以上であればよく、他の共重合成分としてポリアクリル酸、ポリスチレンなどのビニル重合可能な成分を共重合していても構わない。
【0074】
また、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドについてはこの2種の共重合体も好ましい。アクリル酸エステル系樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドいずれも重量平均分子量10万以上のものが増粘効果が高く、好ましい。
【0075】
これら増粘剤の含有量は、不純物拡散組成物中3質量%以上20質量%以下が好ましい。この範囲であることにより、十分な粘度調整効果が得られると同時に緻密な膜形成を行いやすくなる。
【0076】
スクリーン印刷性の点から本発明における不純物拡散組成物(a)は、チクソ性を付与するチクソ剤を含有することが好ましい。ここで、チクソ性を付与するとは、低せん断応力時の粘度(η1)と高せん断応力時の粘度(η2)の比(η1/η2)を大きくすることである。チクソ剤を含有することでスクリーン印刷のパターン精度を高めることができる。それは以下のような理由によると推測される。すなわち、チクソ剤を含有する不純物拡散組成物は、高せん断応力時には粘度が低いため、スクリーン印刷時にスクリーンの目詰まりが起こりにくく、低せん断応力時には粘度が高いため、印刷直後の滲みやパターン線幅の太りが起きにくくなると推測される。
【0077】
チクソ剤としては、具体的に、セルロース、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム系多糖類、ジェランガム系多糖類、グァーガム系多糖類、カラギーナン系多糖類、ローカストビーンガム系多糖類、カルボキシビニルポリマー、水添ひまし油系、水添ひまし油系と脂肪酸アマイドワックス系、特殊脂肪酸系、酸化ポリエチレン系、酸化ポリエチレン系とアマイド系の混合物、脂肪酸系多価カルボン酸、リン酸エステル系界面活性剤、長鎖ポリアミノアマイドとリン酸の塩、特殊変性ポリアマイド系、ベントナイト、モンモリロン石、マグネシアンモンモリロン石、テツモンモリロン石、テツマグネシアンモンモリロン石、バイデライト、アルミンバイデライト、サポー石、アルミニアンサポー石、ラポナイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、有機ヘクトライト、微粒子酸化ケイ素、コロイダルアルミナ、炭酸カルシウムなどを例示できる。チクソ剤は単独でも使用できるが、2種類以上のチクソ剤を組み合わせることも可能である。また、前記増粘剤と組み合わせて使用することがより好ましく、より高い効果を得ることができる。
【0078】
本発明における不純物拡散組成物の粘度に制限はなく、印刷法、膜厚に応じて適宜変更することができる。ここで例えば好ましい印刷形態の一つであるスクリーン印刷方式の場合、不純物拡散組成物の粘度は5,000mPa・s以上であることが好ましい。印刷パターンのにじみを抑制し良好なパターンを得ることができるからである。さらに好ましい粘度は10,000mPa・s以上である。上限は特ににないが保存安定性や取り扱い性の観点から100,000mPa・s以下が好ましい。ここで、粘度は、1,000mPa・s未満の場合は、JIS Z 8803(1991)「溶液粘度-測定方法」に基づきE型デジタル粘度計を用いて回転数20rpmで測定された値であり、1,000mPa・s以上の場合は、JIS Z 8803(1991)「溶液粘度-測定方法」に基づきB型デジタル粘度計を用いて回転数20rpmで測定された値である。チクソ性は、上記粘度測定方法で得られた異なる回転数における粘度の比から求めることができる。本発明においては、回転数20rpmでの粘度(η20)と回転数2rpmでの粘度(η2)の比(η2/η20)をチクソ性と定義する。スクリーン印刷で精度の良いパターン形成するためには、チクソ性が2以上であることが好ましく、3以上がさらに好ましい。
【0079】
本発明において、不純物拡散組成物(a)の固形分濃度に特に制限はないが、1質量%以上~90質量%以下が好ましい範囲である。本濃度範囲よりも低いと塗布膜厚が薄くなりすぎ所望のドーピング性、マスク性を得にくくなる場合があり、本濃度範囲よりも高いと保存安定性が低下する場合がある。
<不純物拡散組成物(d)>
本発明において、不純物拡散組成物(d)の第一の好適な態様は、不純物拡散組成物(d)が(d-1)シラン化合物の重合体、および(d-2)不純物拡散成分を含むことである。
【0080】
シラン化合物重合体(d-1)には、Si原子を含むモノマーの重縮合体、付加重合体、重付加体などが含まれる。
【0081】
不純物拡散組成物(d)の第一の好適な態様において、シラン化合物重合体(d-1)が、下記一般式(3)で示されるシラン化合物の重合体であることが好ましい。
【0082】
【0083】
一般式(3)中、R7およびR8は水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基、炭素数6~15のアリール基のいずれかを表し、複数のR7およびR8はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。l2は1~10000の整数を表す。製膜後の膜の強靱性の観点から好ましくは5~10000、より好ましくは10~10000である。
【0084】
一般式(3)のR7およびR8における炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基、炭素数6~15のアリール基はいずれも無置換体、置換体のどちらでもよく、不純物拡散組成物の特性に応じて選択できる。
【0085】
炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基、炭素数6~15のアリール基の具体例としては、R1、R2におけるものと同様のものが挙げられる。
【0086】
不純物拡散組成物からのアウトディフュージョンを抑制しやすくするという観点から、R7、R8の少なくとも1つは炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基、炭素数6~15のアリール基のいずれかを表していることが好ましい。
【0087】
より好ましくは、R7は炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基、炭素数6~15のアリール基のいずれかを表し、かつ、R8は水酸基、炭素数1~6のアルコキシ基いずれかを表していることである。
【0088】
不純物拡散組成物(d)の第一の好適な態様において、不純物拡散組成物からのアウトディフュージョンを抑制しやすくするという観点から、(d-1)シラン化合物の重合体が、下記一般式(4)で示されるシラン化合物の重合体であることが、さらに好ましい。
【0089】
【0090】
一般式(4)中、R9は、炭素数6~15のアリール基を表し、複数のR9はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。R10は水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基、炭素数6~15のアリール基のいずれかを表し、複数のR10はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。R11およびR12は水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基のいずれかを表し、複数のR5およびR6はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。n2、m2は1~9999の整数を表し、n2+m2は2~10000の整数であり、n2:m2=95:5~25:75である。
製膜後の膜の強靱性の観点から好ましい(n2+m2)の範囲は5~10000、より好ましくは10~10000である。
【0091】
一般式(4)のR9における炭素数6~15のアリール基は無置換体、置換体のどちらでもよく、不純物拡散組成物の特性に応じて選択できる。炭素数6~15のアリール基の具体例としては、R1、R2におけるものと同様のものが挙げられる。
【0092】
一般式(4)のR10における炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基、炭素数6~15のアリール基はいずれも無置換体、置換体のどちらでもよく、不純物拡散組成物の特性に応じて選択できる。これらの具体例としてはR1、R2におけるものと同様のものが挙げられる。
【0093】
一般式(4)のR11およびR12における炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~6のアシルオキシ基はいずれも無置換体、置換体のどちらでもよく、不純物拡散組成物の特性に応じて選択できる。これらの具体例としてはR1、R2におけるものと同様のものが挙げられる。
【0094】
一般式(3)で示されるシラン化合物の重合体の原料であるオルガノシランの具体例としては、一般式(1)で示されるシラン化合物の重合体の原料であるオルガノシランの具体例と同様のものが挙げられる。
【0095】
これらのオルガノシランの中でも、不純物拡散組成物からのアウトディフュージョンを抑制しやすくするという観点から3官能性シランが好ましく用いられる。
【0096】
一般式(4)で示されるシラン化合物のR9およびR10を有するユニットの原料として用いることができるオルガノシランの具体例としては、一般式(2)で示されるシラン化合物のR3およびR4を有するユニットの原料として用いることができるオルガノシランの具体例と同様のものが挙げられる。
【0097】
一般式(4)のR11およびR12を有するユニットの原料として用いることができるオルガノシランの具体例としては、一般式(1)で示されるシラン化合物の重合体の原料であるオルガノシランの具体例と同様のものが挙げられる。その中でも、不純物拡散組成物からのアウトディフュージョンを抑制しやすくするという観点から3官能性シランが好ましく用いられる。
【0098】
一般式(4)で表されるシラン化合物の重合体は、炭素数6~15のアリール基を含有するユニットがSi原子換算で25~95モル%であるポリシロキサンである。すなわち、n2:m2=95:5~25:75である。この範囲にあることで、不純物拡散成分のアウトディフージョン抑制、熱処理後に不純物拡散成分を除去した際の有機残渣低減の効果が向上する。また、この範囲にあることで、増粘剤等の熱分解成分が添加された不純物拡散組成物においても、シロキサンのリフロー効果により、熱分解により生成した空孔を埋めることが可能となり、空孔の少ない緻密な膜を形成することができる。従って、拡散時の雰囲気に影響されにくく、また他の不純物に対する高いマスク性が得られる。
【0099】
また、末端基は水素、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアシルオキシ基、炭素数2~10のアルケニル基のいずれかであることが好ましい。
【0100】
一般式(2)で表されるシラン化合物の重合体はそれぞれの構成成分を上記所定の比率で含有していればよく、ブロック共重合体でもランダム共重合体でもよい。
アウトディフージョン抑制、マスク性の更なる向上の観点から、炭素数6~15のアリール基を含有するユニットは、35モル%以上がより好ましく、40モル%以上がさらに好ましい。また、雰囲気や膜厚の影響なく、残渣を発生させないためには、アリール基を含有するユニットが80モル%以下であることが好ましい。すなわち、n2:m2=80:20~40:60であることが特に好ましい。
【0101】
一般式(3)、(4)で表されるシラン化合物の重合体は、例えば、オルガノシラン化合物を加水分解した後、該加水分解物を溶媒の存在下、あるいは無溶媒で縮合反応させることによって得ることができる。具体的な方法は一般式(1)、(2)で表されるシラン化合物の重合体と同様である。
【0102】
不純物拡散組成物(d)の第一の好適な態様に含まれる(d-2)不純物拡散成分の具体例については不純物拡散組成物(a)に含まれる不純物拡散成分と同様のものである。
【0103】
さらに、不純物拡散組成物(d)における(d-1)シラン化合物の重合体が一般式(4)で示される構造である場合は、(d-3)ケン化度が20モル%以上50モル%未満であるポリビニルアルコールを含んでいても良い。(d-3)の具体的な例は(a-3)と同様である。
【0104】
不純物拡散組成物(d)の第一の好適な態様は溶剤、界面活性剤、増粘剤、チクソ剤を含んで良い。具体的な例は不純物拡散組成物(a)に含まれる溶剤、界面活性剤、増粘剤、チクソ剤と同様である。
【0105】
本発明において、不純物拡散組成物(d)の第二の好適な態様は、不純物拡散組成物(d)が、(d-4)ポリビニルアルコール、およびポリエーテルオキシドからなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂、(d-5)不純物拡散成分、並びに(d-6)水を全溶媒中の25質量%以上含むことである。
【0106】
不純物拡散組成物(d)の第二の好適な態様において、(d-4)ポリビニルアルコール、およびポリエチレンオキサイドからなる群から選ばれた少なくとも1つの樹脂は(d-5)不純物拡散成分と錯体を形成し、塗布時に均一な被膜を形成するための成分である。(d-5)不純物拡散成分との錯体の形成性および形成した錯体の安定性の面から、(d-4)ポリビニルアルコール、およびポリエチレンオキサイドからなる群から選ばれた少なくとも1つの樹脂は、ポリビニルアルコールであることがより好ましい。
【0107】
溶解度と錯体安定性の点でポリビニルアルコールの平均重合度としては、150~1000が好ましい。さらに、ポリビニルアルコールのけん化度としては、水への溶解度と錯体安定性の点で70~95モル%が好ましい。本発明において、前記平均重合度およびけん化度は、いずれもJIS K 6726(1994)に従って測定した値であり、けん化度は逆滴定法によって測定した値である。
【0108】
錯体安定性の点で不純物拡散組成物中に含まれる樹脂(d-4)は、不純物拡散組成物中に含まれる全ての樹脂中の80質量%以上、好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上であることが好ましい。
【0109】
また、熱拡散、不純物拡散組成物除去後の基板上の有機残渣抑制の点で、樹脂(d-4)の量は、不純物拡散組成物全体の0.1~20質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。
【0110】
不純物拡散組成物(d)の第二の好適な態様において、(d-5)不純物拡散成分の具体例については不純物拡散組成物(a)に含まれる不純物拡散成分と同様のものである。
【0111】
また、溶剤、界面活性剤、増粘剤、チクソ剤の具体的な例は不純物拡散組成物(a)に含まれる溶剤、界面活性剤、増粘剤、チクソ剤と同様である。
【0112】
<半導体素子(選択エミッタ-)の製造方法>
本発明の半導体素子の製造方法は、半導体基板上に2水準以上の異なる不純物濃度で同じ型の不純物拡散層領域を形成する半導体素子の製造方法であって、うち、少なくとも1水準以上の不純物拡散層領域が、不純物拡散組成物(a)を半導体基板に塗布して部分的に不純物拡散組成物膜(b)を形成する工程とそれを加熱して不純物を半導体基板に拡散させて不純物拡散層領域(c)を形成する工程を含む方法により形成され、不純物拡散組成物(a)が(a-1)前記一般式(1)で示されるシラン化合物の重合体、および(a-2)不純物拡散成分を含む。ここでいう、異なる不純物濃度とは不純物濃度差で1×1017/cm3以上であり、不純物拡散層領域を形成した部分の基板表面のシート抵抗値の差が10Ω/□以上であることを指す。
【0113】
本発明の半導体素子の製造方法の第一の好適な態様は、不純物拡散組成物膜(b)をマスクとして不純物拡散組成物膜(b)未形成部分に不純物を拡散させる工程を含むことが好ましい。
【0114】
以下、本発明の半導体素子の製造方法の第一の好適な態様を、図面を用いて説明する。なお、いずれも一例であり、本発明の半導体素子の製造方法はこれらに限られるものではない。
【0115】
まず、
図1(i)に示すように、半導体基板1の上に不純物拡散組成物(a)を部分的に塗布し、不純物拡散組成物膜(b)のパターン4を形成する。
【0116】
半導体基板としては、例えば不純物濃度が1015~1016atoms/cm3であるn型単結晶シリコン、多結晶シリコン、およびゲルマニウム、炭素などのような他の元素が混合されている結晶シリコン基板が挙げられる。p型結晶シリコンやシリコン以外の半導体を用いることも可能である。半導体基板は、厚さが50~300μm、外形が一辺100~250mmの概略四角形であることが好ましい。また、スライスダメージや自然酸化膜を除去するために、フッ酸溶液やアルカリ溶液などで表面をエッチングしておくことが好ましい。
【0117】
不純物拡散組成物(a)の塗布方法としては、例えばスピンコート法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、スリット塗布法、スプレー塗布法、凸版印刷法、凹版印刷法などが挙げられる。
【0118】
これらの方法で不純物拡散組成物(a)を塗布後、不純物拡散組成物(a)が塗布された半導体基板をホットプレート、オーブンなどで、50~260℃の範囲で30秒~30分間乾燥し、不純物拡散組成物膜(b)のパターンを形成することが好ましい。
【0119】
シラン化合物の重合体の硬化を進行させ、かつ、不純物の昇華等の揮発を抑えることで拡散後の不純物濃度の面内の均一性を向上させる観点より、より好ましい乾燥温度は180~260℃の温度である。また、同様の観点より、乾燥時の酸素濃度は15~25%であることが好ましい。
【0120】
乾燥後の不純物拡散組成物膜(b)の膜厚は、不純物の拡散性の観点から100nm以上が好ましく、エッチング後の残渣の観点から3μm以下が好ましい。
【0121】
次に、
図1(ii)に示すように、不純物を加熱して半導体基板に拡散させ、不純物拡散層領域(c)を形成する。不純物の拡散方法は、公知の熱拡散方法が利用でき、例えば、電気加熱、赤外加熱、レーザー加熱、マイクロ波加熱などの方法を用いることができる。
【0122】
熱拡散の時間および温度は、不純物拡散濃度、拡散深さなど所望の拡散特性が得られるように適宜設定することができる。例えば、800℃以上1200℃以下で1~120分間加熱拡散することで、表面不純物濃度が1019~1021の拡散層を形成できる。
【0123】
ただし、拡散温度が高いほど、シリコン基板の欠陥密度が高くなって、ライフタイムが短くなり、太陽電池の光変換効率が低下する傾向にあるので、同じ拡散層の状態を形成するために、より温和な条件で拡散を進行させることが好ましい。
【0124】
拡散雰囲気は、特に限定されず、大気中で行ってもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガスを用いて雰囲気中の酸素量等を適宜コントロールしてもよい。拡散時間短縮の観点から雰囲気中の酸素濃度を3%以下にすることが好ましい。また、必要に応じて拡散前に200℃~850℃の範囲で焼成し、不純物拡散組成物膜(b)中の有機物の分解除去を行ってもよい。
【0125】
次に、上述のとおり、不純物拡散組成物膜(b)をマスクとして不純物拡散組成物膜(b)未形成部分に不純物を拡散させる工程を含むことが好ましい。具体的には、例えば、
図1(iv-1)~
図1(iv-3)に示すように、不純物拡散組成物膜(b)のパターンをマスクとしてパターン未形成部分に不純物拡散層領域(c)と同じ型の導電性で、かつ、不純物濃度の異なる不純物拡散層領域(f)を形成する。
【0126】
本発明の半導体素子の製造方法の第一の好適な態様において、不純物拡散組成物膜(b)未形成部分に不純物を拡散させる工程(不純物拡散層領域(f)を形成する工程)は、不純物拡散組成物膜(b)を加熱して不純物を前記半導体基板に拡散させて不純物拡散層領域(c)を形成した後に行うことができる。
【0127】
不純物拡散組成物膜(b)未形成部分に不純物を拡散させる方法の具体例としては、不純物拡散組成物膜(b)のパターン付き半導体基板1に不純物拡散成分を含むイオンを注入後(
図1(iii-1))アニーリング(iv-1)する方法、不純物拡散組成物膜(b)のパターン付き半導体基板1を不純物拡散成分を含む雰囲気中で加熱する(iv-2)方法、不純物拡散組成物膜(b)のパターン付き半導体基板1に不純物拡散組成物(d)を不純物拡散組成物膜(b)未形成部分に塗布し、不純物拡散組成物膜(e)を形成させた後(
図1(iii-3))、電気加熱、赤外加熱、レーザー加熱、マイクロ波加熱を行う(iv-3)方法等が挙げられる。
【0128】
本発明の半導体組成の製造方法の第一の好適な態様において、不純物拡散組成物膜(b)未形成部分に不純物を拡散させる工程が、不純物拡散成分を含むイオンを注入する工程であることが第一のより好適な態様である。
【0129】
イオンを注入する工程において、ホウ素の注入は、例えば、1~40keVのエネルギーで、0.5~5e15 1/cm2の間のドーズ量、好ましくは、3~10keVのエネルギーで、1.5~3e151/cm2の間のドーズ量で行う。ホウ素が注入された不純物拡散層領域(f)の抵抗は、回復後に30~300オームスクウェア(ohm/square、Ω/□)、好ましくは60~100オームスクウェアである。
【0130】
リンの注入は、例えば、1~40keVのエネルギーで、0.5~5e15 1/cm2の間のドーズ量、好ましくは、10keVのエネルギーで、2.5~4e151/cm2の間のドーズ量で行う。燐が注入された不純物拡散層領域(f)の抵抗は、回復後に10~300オームスクウェア(ohm/square、Ω/□)、好ましくは30~120オームスクウェアである。
【0131】
回復(注入されたドーパントの活性化)は、不純物拡散組成物膜(b)のパターン付き半導体基板を不活性雰囲気(N2、Ar)において、高温(800-1100℃)でアニーリングすることにより行うことができる。
【0132】
イオン注入のエネルギー、ドーズ量、回復時の温度条件設定により、不純物拡散層領域(f)の不純物濃度を不純物拡散層領域(c)の不純物濃度よりも高く設定することも、低く設定することも可能となる。
【0133】
本発明の半導体素子の製造方法の第一の好適な態様において、不純物拡散組成物膜(b)未形成部分に不純物を拡散させる工程(不純物拡散層領域(f)を形成する工程)は、不純物拡散組成物膜(b)を加熱して不純物を前記半導体基板に拡散させる工程と同時に行われてもよい。
【0134】
例えば、
図1(i)に示すように、半導体基板1の上に不純物拡散組成物(a)を部分的に塗布し、不純物拡散組成物膜(b)のパターンを形成した後、
図1(ii)の拡散工程を行わずに、
図1(iii-1)のイオン注入を行い、
図1(iv-1)のアニーリングで不純物拡散層領域(f)、不純物拡散層領域(c)を同時に形成しても良い。また、後述のとおり、第二のより好適な態様、第三のより好適な態様においても、不純物拡散層領域(f)、不純物拡散層領域(c)を同時に形成することができる。
【0135】
本発明の半導体素子の製造方法の第一の好適な態様において、不純物拡散組成物膜(b)未形成部分に不純物を拡散させる工程が、不純物拡散成分を含む雰囲気中で加熱する工程であることが第二のより好適な態様である。
【0136】
不純物拡散成分を含む雰囲気中で加熱する場合は、例えばp型の場合は臭化ホウ素(BBr3)、n型の場合はオキシ塩化リン(POCl3)をバブリングして、N2で流すことによって不純物拡散成分を含む雰囲気とした中で不純物拡散組成物膜(b)のパターン付き半導体基板を加熱し、不純物拡散層領域(f)を形成することができる。ガス圧、加熱条件設定により、不純物拡散層領域(f)の不純物濃度を不純物拡散層領域(c)の不純物濃度よりも高く設定することも、低く設定することも可能となる。
【0137】
このとき、他の成分の混入を避けるため、不純物拡散組成物膜(b)のパターンを形成した後の
図1(ii)の拡散工程による不純物拡散層領域(c)形成と、
図1(iv-2)の加熱による不純物拡散層領域(f)の形成は同一バッチの拡散装置で連続して行われることが好ましい。
【0138】
また、
図1(i)に示すように、半導体基板1の上に不純物拡散組成物(a)を部分的に塗布し、不純物拡散組成物膜(b)のパターンを形成した後、
図1(ii)の拡散工程を行わずに、
図1(iv-2)の加熱で不純物拡散層領域(f)、不純物拡散層領域(c)を同時に形成しても良い。
【0139】
また、
図1(i)に示すように、半導体基板1の上に不純物拡散組成物(a)を部分的に塗布し、不純物拡散組成物膜(b)のパターンを形成した後、
図1(ii)の拡散工程を行わずに、
図1(iv-2)の加熱炉に投入し、まずは不活性ガスのみで加熱して不純物拡散層領域(c)を形成し、そのまま炉内に不純物拡散成分を含むガスを追加導入して、不活性ガスのみの加熱条件とは異なる条件で加熱することにより不純物拡散層領域(c)とは不純物濃度の異なる不純物拡散層領域(f)を1バッチで形成しても良い。
【0140】
本発明の半導体素子の製造方法の第一の好適な態様において、不純物拡散組成物膜(b)未形成部分に不純物を拡散させる工程が、不純物拡散組成物膜(b)が形成された半導体基板上に、不純物拡散組成物(d)を不純物拡散組成物膜(b)未形成部分に塗布して形成した不純物拡散組成物膜(e)を加熱する工程であることが第三のより好適な態様である。
【0141】
不純物拡散組成物(d)の塗布方法としては、例えばスピンコート法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、スリット塗布法、スプレー塗布法、凸版印刷法、凹版印刷法などが挙げられる。
【0142】
不純物拡散組成物膜(e)を加熱する工程としては、例えば、電気加熱、赤外加熱、レーザー加熱、マイクロ波加熱などが挙げられる。
【0143】
特に、不純物拡散組成物膜(b)のパターンを覆うように塗布することで、不純物拡散組成物膜(b)と不純物拡散組成物膜(e)との境界面においても不純物拡散が良好に行われるため、好ましいといえる。境界面での良好な不純物拡散のため最も好ましいのは不純物拡散組成物(d)を不純物拡散組成物膜(b)のパターンを覆うように基板に全面塗布することである。
【0144】
これらの方法で不純物拡散組成物(d)を塗布後、不純物拡散組成物(d)が塗布された半導体基板1をホットプレート、オーブンなどで、50~200℃の範囲で30秒~30分間乾燥し、不純物拡散組成物膜(e)を形成することが好ましい。
【0145】
次に、
図1(iv-3)に示すように、不純物を半導体基板1に拡散させ、不純物拡散層領域(f)を形成する。不純物の拡散方法は、公知の熱拡散方法が利用でき、例えば、電気加熱、赤外加熱、レーザー加熱、マイクロ波加熱などの方法を用いることができる。
【0146】
熱拡散の時間および温度は、不純物拡散濃度、拡散深さなど所望の拡散特性が得られるように適宜設定することができる。例えば、800℃以上1200℃以下で1~120分間加熱拡散することで、表面不純物濃度が1019~1021の拡散層を形成できる。
【0147】
ただし、拡散温度が高いほど、シリコン基板の欠陥密度が高くなって、ライフタイムが短くなり、太陽電池の光変換効率が低下する傾向にあるので、同じ拡散層の状態を形成するために、より温和な条件で拡散を進行させることが好ましい。
【0148】
拡散雰囲気は、特に限定されず、大気中で行ってもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガスを用いて雰囲気中の酸素量等を適宜コントロールしてもよい。拡散時間短縮の観点から雰囲気中の酸素濃度を3%以下にすることが好ましい。また、必要に応じて拡散前に200℃~850℃の範囲で焼成し、不純物拡散組成物膜(e)中の有機物の分解除去を行ってもよい。
【0149】
このとき、不純物拡散組成物(d)の不純物濃度や、不純物拡散組成物膜(e)の膜厚を調整することにより、不純物拡散層領域(f)の不純物濃度を不純物拡散層領域(c)の不純物濃度よりも高く設定することも、低く設定することも可能となる。
【0150】
また、
図1(i)に示すように、半導体基板1の上に不純物拡散組成物(a)を部分的に塗布し、不純物拡散組成物膜(b)のパターンを形成した後、
図1(ii)の拡散工程を行わずに、
図1(iii-3)の不純物拡散組成物膜(e)の形成を行い、
図1(iv-3)の加熱で不純物拡散層領域(f)、不純物拡散層領域(c)を同時に形成しても良い。
【0151】
本発明の半導体素子の製造方法の第一の好適な態様における第一~第三のより好適な態様のうち、不純物拡散層領域(c)、(f)の不純物拡散濃度均一性の向上の点で、第三のより好適な態様が、さらに好ましい。
【0152】
次に、
図1(v)に示すように、公知のエッチング法により、半導体基板1の表面に形成された不純物拡散組成物膜(b)、(e)を除去することができる。エッチングに用いる材料としては、特に限定されないが、例えばエッチング成分としてフッ化水素、アンモニウム、リン酸、硫酸、硝酸のうち少なくとも1種類を含み、それ以外の成分として水や有機溶剤などを含むものが好ましい。以上の工程により、半導体基板に同じ型で不純物拡散濃度の異なる2水準の不純物拡散層を形成することができる。
【0153】
本発明の半導体素子の製造方法の第二の好適な態様は、半導体基板上に不純物拡散成分を含むイオンを注入する工程、不純物拡散成分を含む雰囲気中で加熱する工程、および、不純物拡散組成物(d)を全面塗布して形成した不純物拡散組成物膜(e)を加熱する工程から選ばれた少なくとも1つの工程を用いて不純物拡散層領域(f)を形成させた後、不純物拡散組成物(a)を塗布して部分的に不純物拡散組成物膜(b)を形成する工程とそれを加熱して不純物を半導体基板に拡散させて不純物拡散層領域(c)を形成する工程を含む。
【0154】
以下、本発明の半導体素子の製造方法の第二の好適な態様を、図面を用いて説明する。なお、いずれも一例であり、本発明の半導体素子の製造方法はこれらに限られるものではない。
【0155】
まず、
図2(ii-1)~
図2(ii-3)に示すように、半導体基板1の上に不純物拡散層領域(f)を形成する。
【0156】
不純物拡散層領域(f)を形成する方法の具体例としては、半導体基板1に不純物拡散成分を含むイオンを注入後(
図1(i-1))アニーリング(ii-1)する方法、半導体基板1を不純物拡散成分を含む雰囲気中で加熱する(ii-2)方法、不純物拡散組成物(d)を半導体基板1に全面塗布し、不純物拡散組成物膜(e)を形成させた後(
図2(i-3))、電気加熱、赤外加熱、レーザー加熱、マイクロ波加熱を行う(ii-3)方法等が挙げられる。
【0157】
それぞれの詳細については、先に述べた方法と同様の方法で行うことができる。
【0158】
次に、
図2(iii)に示すように、半導体基板1の上に不純物拡散組成物(a)を部分的に塗布し、不純物拡散組成物膜(b)のパターンを形成する。
【0159】
パターン形成の詳細ついては、先に述べた方法と同様の方法で行うことができる。
【0160】
次に、
図2(iv)に示すように、不純物を半導体基板1に拡散させ、不純物拡散層領域(c)を形成する。
【0161】
不純物拡散の詳細ついては、先に述べた方法と同様の方法で行うことができる。
【0162】
本発明の半導体素子の製造方法の第三の好適な態様は、半導体基板上に不純物拡散組成物(d)を全面塗布して不純物拡散組成物膜(e)を形成し、その上に不純物拡散組成物(a)を塗布して部分的に不純物拡散組成物膜(b)を形成する工程と、それらを同時に加熱して不純物を半導体基板に拡散させて不純物拡散層領域(c)、(f)を同時に形成する工程を含む。
【0163】
以下、本発明の半導体素子の製造方法の第三の好適な態様を、図面を用いて説明する。なお、いずれも一例であり、本発明の半導体素子の製造方法はこれらに限られるものではない。
【0164】
例えば、
図2(i-3)に示すように、半導体基板1の上に不純物拡散組成物(d)を全面塗布し、不純物拡散組成物膜(e)を形成させた後、
図2(ii-3)の拡散工程を行わずに、
図2(iii)の不純物拡散組成物膜(b)のパターン形成を行い、
図2(iv)の加熱で不純物拡散層領域(f)、不純物拡散層領域(c)を同時に形成することができる。
【0165】
本発明の半導体素子の製造方法の第二の好適な態様、および第三の好適な態様においては、例えば、最後に、
図2(v)に示すように、公知のエッチング法により、半導体基板1の表面に形成された不純物拡散組成物膜(b)、(e)を除去することができる。詳細ついては、先に述べた方法と同様の方法で行うことができる。
【0166】
本発明の半導体素子の製造方法は、太陽電池などの光起電力素子や、半導体表面に不純物拡散領域をパターン形成する半導体デバイス、例えば、トランジスターアレイやダイオードアレイ、フォトダイオードアレイ、トランスデューサーなどにも展開することができる。
【0167】
本発明の太陽電池の製造方法は、本発明の半導体素子の製造方法を含む。
【0168】
本発明の半導体素子の製造方法により得られた半導体素子から、本発明の太陽電池の製造方法により太陽電池を得る方法の一例は以下のとおりである。
【0169】
本発明の太陽電池の製造方法としては、本発明の半導体素子の製造方法により得られた半導体素子の上に表面再結合を抑制し光反射を防止するためのパッシベーション膜を設けることが好ましい。例えば、n型拡散層のパッシベーション膜としては700℃以上の高温酸素雰囲気での熱処理で得られるSiO2と、この膜を保護するために、シリコン窒化膜を設けてもよい。またSiNx膜だけ形成してもよい。この場合、SiH4とNH3との混合ガスを原料とするプラズマCVD法により形成することができる。このとき、水素が結晶中に拡散し、ケイ素原子の結合に寄与しない軌道、即ちダングリングボンドと水素とが結合し、欠陥を不活性化(水素パッシベーション)する。より具体的には、混合ガス流量比NH3/SiH4が0.05~1.0、反応室の圧力が13.3~266.6Pa(0.1~2Torr)、成膜時の温度が300℃~550℃、プラズマの放電のための周波数が100kHz以上の条件下で形成される。
【0170】
ついで受光面の反射防止膜上に、受光面電極用金属ペーストと、n型拡散層のパッシベーション膜上に金属ペーストをスクリーン印刷法で印刷し、乾燥させ、受光面電極を形成する。受光面電極用金属ペーストは、金属粒子とガラス粒子とを必須成分とし、必要に応じて樹脂バインダ、その他の添加剤等を含む。このとき使用する金属ペーストはp型拡散層に適したもの、n型拡散層に適したものをそれぞれ適用することが好ましい。金属粒子についてはAg、Alが好ましく用いられる。
【0171】
ついで電極を熱処理(焼成)して、太陽電池素子を完成させる。600℃~900℃の範囲で数秒~数分間熱処理(焼成)すると、受光面側では電極用金属ペーストに含まれるガラス粒子によって絶縁膜である反射防止膜が溶融し、更にシリコン表面も一部溶融して、ペースト中の金属粒子(例えば銀粒子)が半導体基板と接触部を形成し凝固する。これにより、形成した受光面電極と半導体基板とが導通される。これはファイヤースルーと称されている。
【0172】
受光面電極は、一般に、バスバー電極、及び該バスバー電極と交差しているフィンガ電極で構成される。このような受光面電極は、上述の金属ペーストのスクリーン印刷、又は電極材料のメッキ、高真空中における電子ビーム加熱による電極材料の蒸着等の手段により形成することができる。バスバー電極及びフィンガ電極は、公知の方法により形成することができる。
【0173】
実施例
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定され
るものではない。なお、用いた化合物のうち、略語を使用しているものについて、以下に示す。以下の実施例1-8、14は参考例1-8、14と読み替える。
【0174】
KBM-13:メチルトリメトキシシラン(信越化学(株)製)
KBM-103:フェニルトリメトキシシラン(信越化学(株)製)
GBL:γ-ブチロラクトン
BYK-333:シリコーン系界面活性剤(ビックケミ-(株)製)
SH30PA:シリコーン系界面活性剤(東レダウコーニング(株)製)
<評価方法>
シート抵抗値(表面抵抗値)均一性(不純物拡散濃度均一性)
実施例1~14、比較例1~4で不純物拡散組成物の除去まで行った半導体基板について、
図3に示した箇所(A~D、E~M)で表面抵抗値を四探針式表面抵抗測定装置RT-70V (ナプソン(株)製)を用いて測定を行った。
【0175】
A~Dについての平均値、最大値、最小値をA1、B1、C1、E~Mについての平均値、最大値、最小値をA2、B2、C2とし、ばらつき(B1-C1)/A1×100、(B2-C2)/A2×100の値がどちらも20%以内であれば合格、20%を超えているようなら不合格とした。
【0176】
配合例1
<シリカ化合物の重合体溶液の合成>
2000mLの三口フラスコにKBM-13を164.93g、KBM-103を204.07g、GBLを363.03g仕込み、40℃で攪拌しながら水130.76gにギ酸1.215gを溶かしたギ酸水溶液を30分かけて添加した。滴下終了後、40℃で1時間撹拌した後、70℃に昇温し、30分撹拌した。その後、オイルバスを115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから1時間加熱攪拌した(内温は100~110℃)。得られた溶液を氷浴にて冷却し、シリカ化合物の重合体を得た。重合溶液の固形分濃度は39.8質量%であった。
<p型不純物拡散組成物の調製>
上記で合成したシリカ化合物の重合体4.39gとほう酸1.47gとGBLを12.55g、BYK-333を溶液全体に対して300ppmになるように添加し、均一になるように十分撹拌し、p型不純物拡散組成物Aを得た。
【0177】
配合例2
<シリカ化合物の重合体溶液の合成>
500mLの三口フラスコに3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを112.47g、ジエチレングリコールモノメチルエーテルを130.47g仕込み、加熱により40℃まで昇温した。そして、濃硫酸0.24gと水を42.83gとの混合溶液を滴下添加した。滴下添加を完成した後40℃で1時間撹拌し続けた。そして、70℃まで昇温し、且つ1時間20分間撹拌した。そして、100℃まで昇温し、且つ1時間撹拌した。その後、油浴温度を120℃まで昇温し、撹拌した。120℃で1時間攪拌後、40℃以下まで冷却しシリカ化合物の重合体溶液を得た。
<p型不純物拡散組成物の調製>
500mLの三口フラスコに3-メトキシ-3-メチルブタノールを58.55g、ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール(株)製:重合度300、ケン化度85%)を4.22g順次添加した。加熱により80℃まで昇温し、そして、水を36.00g滴下添加した。滴下添加を完成した後ポリビニルアルコールを完全に溶解するまで80℃で撹拌し続けた。そして、三酸化ホウ素を0.73g添加し、且つ80℃で1時間撹拌し続けた。そして、40℃以下まで冷却し、上記で合成されたシリカ化合物の重合体溶液を20g滴下添加した。持続的に1時間撹拌し、p型不純物拡散組成物Bを得た。
【0178】
配合例3
<p型不純物拡散組成物の調製>
300mLの三口フラスコに水を73.74g、プロピレングリコールモノメチルエーテルを113.4g、ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール(株)製:重合度300、ケン化度85%)を9.3g順次添加した。加熱により80℃まで昇温し、ポリビニルアルコールを完全に溶解するまで80℃で撹拌し続けた。そして、三酸化ニホウ素を1.793g添加し、且つ80℃で1時間撹拌し続けた。そして、40℃以下まで冷却し、SH30PAを0.01g加えてさらに1時間攪拌し、p型不純物拡散組成物Cを得た。
【0179】
配合例4
<不純物拡散成分含有粒子の合成>
B2O3、SiO2、Al2O3及びCaOの組成モル比が、それぞれ40mol%、45mol%、5mol%及び10mol%となるように、B2O3、SiO2、Al2O3及び及びCaSO4(全て、(株)高純度化学研究所製)を秤量した。メノウ乳鉢で混合後、白金るつぼに入れ、ガラス溶融炉にて1500℃、2時間保持した。その後、急冷してガラス塊を得た。これをメノウ乳鉢で粉砕後、遊星型ボールミルにて粉砕し、粒子形状が球状で、平均粒径が0.35μm、軟化点が約800℃のガラス粒子を得た。
<p型不純物拡散組成物の調製>
上記ガラス粒子を10g、エチルセルロースを6g及びテルピネオールを84g混合してペースト化し、p型不純物拡散組成物Dを得た。
【0180】
配合例5
<p型不純物拡散組成物の調製>
濃度40%のトリメトキシシランのGBL溶液を4.39gとほう酸1.47gとGBLを12.55g、BYK-333を溶液全体に対して300ppmになるように添加し、均一になるように十分撹拌し、p型不純物拡散組成物Eを得た。
【0181】
配合例6
<シリカ化合物の重合体溶液の合成>
2000mLの三口フラスコにKBM-13(メチルトリメトキシシラン)を183.25g、KBM-103(フェニルトリメトキシシラン)を266.75g、GBLを403.36g仕込み、40℃で攪拌しながら水145.29gにギ酸0.45gを溶かしたギ酸水溶液を30分かけて添加した。滴下終了後、40℃で1時間撹拌した後、70℃に昇温し、30分撹拌した。その後、オイルバスを115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから1時間加熱攪拌した(内温は100~110℃)。得られた溶液を氷浴にて冷却しシリカ化合物の重合体溶液を得た。
<p型不純物拡散組成物の調製>
上記で合成したシリカ化合物の重合体13.42gと、ホウ酸1.31gと、ケン化度が49%のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール(株)製)(以下ポリビニルアルコール(49)と表す)11.63gと、微粒子酸化ケイ素であるアエロジルVPNKC130(日本アエロジル(株)製)3.9gと、GBL24.64gと、テルピネオール35.1gと、水10gを混合し、均一になるように十分撹拌し、p型不純物拡散組成物Fを得た。
【0182】
配合例7
ポリビニルアルコールのケン化度を70%としたこと以外は、配合例6と同様にしてp型不純物拡散組成物Gを得た。
【0183】
実施例1
基板として、一辺156mmのn型単結晶シリコンからなる半導体基板を用意し、スライスダメージや自然酸化物を除去するために、両表面をアルカリエッチングした。この際、半導体基板の両面には典型的な幅が40~100μm、深さ3~4μm程度の無数の凹凸が形成され、これを塗布基板(シート抵抗値:200Ω/□)とした。
【0184】
ここに、p型不純物拡散組成物Aをスクリーン印刷で印刷した。印刷パターンは4cm×4cmの正方形が
図3のような配置となるように位置合わせを行った(スクリーン印刷機(マイクロテック(株)TM-750型)、スクリーンマスク(SUS(株)製、400メッシュ、線径23μm))。
【0185】
p型不純物拡散組成物をスクリーン印刷後、空気中にて基板を140℃のホットプレートで5分間、さらに230℃のオーブンで30分間加熱することで、厚さ約1.5μmのパターンを形成した。
【0186】
次に、このパターン付き基板を拡散炉((株)光洋サーモシステムズ製)に配置し、窒素19L/min、酸素0.6L/minの雰囲気下、950℃で30分間維持して不純物拡散層を形成した。そのまま、炉内の温度を920℃に下げ、窒素19L/min、酸素0.06L/min、臭化ホウ素(BBr3)を窒素0.06L/minでバブリングして流すことによって炉内を不純物拡散成分を含む雰囲気とし、パターン未形成部分の不純物拡散を行った。拡散終了後に基板を5%フッ酸溶液に5分浸漬し、水洗して不純物拡散膜の除去を行い、シート抵抗値の測定を行った。
【0187】
実施例2
塗布基板は、実施例1と同じものを用いた。
【0188】
ここに、p型拡散層形成組成物Aを用いて、実施例1と同様の方法で、厚さ約1.5μmのパターンを形成した。
【0189】
次に、このパターン付き基板をイオン注入装置に配置し、10keVのエネルギーで、2e151/cm2の間のドーズ量でイオン注入を行った。その後、パターン付き基板を拡散炉に配置し、窒素19L/min、酸素0.6L/minの雰囲気下、950℃で30分間維持して不純物拡散層を形成した。拡散終了後に基板を5%フッ酸溶液に5分浸漬し、水洗して不純物拡散膜の除去を行い、シート抵抗値の測定を行った。
【0190】
実施例3
塗布基板は、実施例1と同じものを用いた。
【0191】
ここに、p型拡散層形成組成物Aを用いて、実施例1と同様の方法で、厚さ約1.5μmのパターンを形成した。
【0192】
次に、このパターン付き基板を拡散炉((株)光洋サーモシステムズ製)に配置し、窒素19L/min、酸素0.06L/min、臭化ホウ素(BBr3)を窒素0.06L/minでバブリングして流すことによって炉内を不純物拡散成分を含む雰囲気とし、950℃で30分、パターン形成部分とパターン未形成部分の不純物拡散を同時に行った。拡散終了後に基板を5%フッ酸溶液に5分浸漬し、水洗して不純物拡散膜の除去を行い、シート抵抗値の測定を行った。
【0193】
実施例4
塗布基板は、実施例1と同じものを用いた。
【0194】
ここに、p型拡散層形成組成物Aを用いて、実施例1と同様の方法で、厚さ約1.5μmのパターンを形成した。
【0195】
この基板にp型不純物拡散組成物Bをスピンコートにて、膜厚が500nmになるよう回転数を調製して全面塗布し、空気中にて基板を140℃のホットプレートで5分間加熱した。
【0196】
このパターン付き基板を拡散炉((株)光洋サーモシステムズ製)に配置し、窒素19L/min、酸素0.6L/minの雰囲気下、950℃で30分、パターン形成部分とパターン未形成部分の不純物拡散を同時に行った。拡散終了後に基板を5%フッ酸溶液に5分浸漬し、水洗して不純物拡散膜の除去を行い、シート抵抗値の測定を行った。
【0197】
実施例5
p型不純物拡散組成物Bをp型不純物拡散組成物Cに変更した以外は実施例4と同様にシート抵抗値の測定まで行った。
【0198】
実施例6
塗布基板は、実施例1と同じものを用いた。
【0199】
この基板を拡散炉((株)光洋サーモシステムズ製)に配置し、窒素19L/min、酸素0.06L/min、臭化ホウ素(BBr3)を窒素0.06L/minでバブリングして流すことによって炉内を不純物拡散成分を含む雰囲気とし、920℃で30分、基板全面に不純物拡散を行った。
【0200】
ついで、この基板上にp型拡散層形成組成物Aを用いて、実施例1と同様の方法で、厚さ約1.5μmのパターンを形成した。
【0201】
次に、このパターン付き基板を拡散炉((株)光洋サーモシステムズ製)に配置し、窒素19L/min、酸素0.6L/minの雰囲気下、950℃で30分間維持して不純物拡散層を形成した。拡散終了後に基板を5%フッ酸溶液に5分浸漬し、水洗して不純物拡散膜の除去を行い、シート抵抗値の測定を行った
実施例7
塗布基板は、実施例1と同じものを用いた。
【0202】
この基板をイオン注入装置に配置し、10keVのエネルギーで、2e15 1/cm2の間のドーズ量でイオン注入を行った。その後、基板を拡散炉に配置し、窒素雰囲気下で920℃で30分間維持して不純物拡散層を形成した。
【0203】
ついで、この基板上にp型拡散層形成組成物Aを用いて、実施例1と同様の方法で、厚さ約1.5μmのパターンを形成した。
【0204】
次に、このパターン付き基板を拡散炉((株)光洋サーモシステムズ製)に配置し、拡散炉((株)光洋サーモシステムズ製)に配置し、窒素19L/min、酸素0.6L/minの雰囲気下、950℃で30分間維持して不純物拡散層を形成した。拡散終了後に基板を5%フッ酸溶液に5分浸漬し、水洗して不純物拡散膜の除去を行い、シート抵抗値の測定を行った。
【0205】
実施例8
塗布基板は、実施例1と同じものを用いた。
【0206】
この基板にp型不純物拡散組成物Bをスピンコートにて、膜厚が500nmになるよう回転数を調製して全面塗布し、空気中にて基板を140℃のホットプレートで5分間加熱した。
【0207】
ついで、この基板上にp型拡散層形成組成物Aを用いて、実施例1と同様の方法で、厚さ約1.5μmのパターンを形成した。
【0208】
次に、このパターン付き基板を拡散炉((株)光洋サーモシステムズ製)に配置し、窒素19L/min、酸素0.6L/minの雰囲気下、950℃で30分間維持して不純物拡散層を形成した。拡散終了後に基板を5%フッ酸溶液に5分浸漬し、水洗して不純物拡散膜の除去を行い、シート抵抗値の測定を行った。
【0209】
実施例9
p型不純物拡散組成物Aをp型不純物拡散組成物Fに変更した以外は実施例1と同様にシート抵抗値の測定まで行った。
【0210】
実施例10
p型不純物拡散組成物Aをp型不純物拡散組成物Fに変更した以外は実施例2と同様にシート抵抗値の測定まで行った。
【0211】
実施例11
p型不純物拡散組成物Aをp型不純物拡散組成物Fに変更した以外は実施例3と同様にシート抵抗値の測定まで行った。
【0212】
実施例12
p型不純物拡散組成物Aをp型不純物拡散組成物Fに変更した以外は実施例4と同様にシート抵抗値の測定まで行った。
【0213】
実施例13
p型不純物拡散組成物Aをp型不純物拡散組成物Fに変更した以外は実施例5と同様にシート抵抗値の測定まで行った。
【0214】
実施例14
p型不純物拡散組成物Aをp型不純物拡散組成物Gに変更した以外は実施例1と同様にシート抵抗値の測定まで行った。
【0215】
比較例1
p型不純物拡散組成物Aをp型不純物拡散組成物Dに変更した以外は実施例1と同様にシート抵抗値の測定まで行った。
【0216】
比較例2
p型不純物拡散組成物Aをp型不純物拡散組成物Eに変更した以外は実施例1と同様にシート抵抗値の測定まで行った。
【0217】
比較例3
臭化ホウ素(BBr3)を停止して炉内を不純物拡散成分を含む雰囲気としない以外は実施例1と同様にシート抵抗値の測定まで行った。
【0218】
比較例4
p型拡散層形成組成物Aのパターンが形成された基板にp型不純物拡散組成物Bを塗布しない以外は実施例4と同様にシート抵抗値の測定まで行った。
【0219】
評価結果を表1に示す。
【0220】
【符号の説明】
【0221】
1 半導体基板
2 イオン注入
3 不純物拡散成分含有ガス
4 不純物拡散組成物膜(b)のパターン