(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 11/70 20060101AFI20240326BHJP
B26D 1/08 20060101ALI20240326BHJP
B26D 5/06 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B41J11/70
B26D1/08
B26D5/06 Z
(21)【出願番号】P 2020002658
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】石田 徹吾
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-249788(JP,A)
【文献】特開2001-347484(JP,A)
【文献】特開平10-029192(JP,A)
【文献】特開2006-181673(JP,A)
【文献】特開2001-239494(JP,A)
【文献】国際公開第2006/114823(WO,A1)
【文献】特開2016-135517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00-11/70
B26D 1/08
B26D 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙を一部残して切断するパーシャルカットと、前記記録紙を完全に切断するフルカ
ットとを実行可能な印刷装置であって、
第1刃と、
前記第1刃を支持可能なプレートと、
前記第1刃を駆動する第1回転体と、を備え、
前記第1刃、及び、前記プレートの一方には、ガイド溝が設けられており、
前記第1刃、及び、前記プレートの他方には、前記ガイド溝と接続可能なガイド軸が設
けられており、
前記ガイド溝は、第1辺、及び、第2辺を有し、
前記第2辺は、前記第1辺から離れる方向に延びる所定の部分を備え、
前記第1回転体を第1回転方向に回転
すると、前記第1刃
は前記記録紙
を切断する切断
方向に進み、
かつ、前記ガイド軸は前記第1辺に沿って前記ガイド溝に対する位置を変え
、前記第1刃による前記パーシャルカットを実行し、
前記第1回転体を前記第1回転方向と異なる第2回転方向に回転
すると、前記第1刃
は
前記切断方向に対して傾いた方向に進み、
かつ、前記ガイド軸は前記第2辺に沿って前記
ガイド溝に対する位置を変え、前記第1刃による前記フルカットを実行する、印刷装置。
【請求項2】
前記第1刃は、前記記録紙を切断する領域である刃部と、前記刃部の間に設けられてお
り、前記記録紙に切り残しを形成する領域である切り欠き部と、を有するV字形状のカッ
ター刃である、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第1回転体を前記第2回転方向に回転すると、前記ガイド軸は前記第2辺の前記所
定の部分に沿って前記ガイド溝に対する位置を変え、前記第1刃は前記切断方向に対して
傾いた方向に進む、請求項
1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第1刃は切断端部を含む鍵状構造を有しており、
前記第1回転体を前記第2回転方向に回転すると、前記第1刃の前記切断端部により前
記記録紙を切断する、請求項
1から3のうちのいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記切断方向と交差する方向に延びる前記切断端部の幅は、前記記録紙の切り残しの幅
よりも大きい、請求項
4に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷後の記録紙を切断する可動刃を備え、可動刃のストロークを変更することで、記録紙の一部を残して切断するパーシャルカットと、記録紙を完全に切断するフルカットを実行するプリンターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の印刷装置では、スライド部材を可動刃に取り付けて可動刃のストロークを変更する。そのため、スライド部材の分、コストが増大する恐れがあり、また、スライド部材が摩耗することで故障のリスクを高める恐れもあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する一態様の印刷装置は、記録紙を一部残して切断するパーシャルカットと、前記記録紙を完全に切断するフルカットとを実行可能な印刷装置であって、第1刃と、前記第1刃を支持可能なプレートと、前記第1刃を駆動する第1回転体と、を備え、前記第1刃、及び、前記プレートの一方には、ガイド溝が設けられており、前記第1刃、及び、前記プレートの他方には、前記ガイド溝と接続可能なガイド軸が設けられており、前記ガイド溝は、第1辺、及び、第2辺を有し、前記第2辺は、前記第1辺から離れる方向に延びる所定の部分を備え、前記第1回転体を第1回転方向に回転し前記第1刃を前記記録紙に向けて進めると、前記ガイド軸は前記第1辺に沿って前記ガイド溝に対する位置を変え、前記第1刃による前記パーシャルカットを実行し、前記第1回転体を前記第1回転方向と異なる第2回転方向に回転し前記第1刃を前記記録紙に向けて進めると、前記ガイド軸は前記第2辺に沿って前記ガイド溝に対する位置を変え、前記第1刃による前記フルカットを実行する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
[1.第1実施形態]
[1-1.印刷装置の構成]
図1は、印刷装置100の全体構成を示す側断面図である。
印刷装置100は、例えばPOSシステムに適用可能である。POSシステムは、ショッピングセンターや、コンビニエンスストア、車内販売等の小売業や、レストランや、喫茶店、居酒屋等の飲食業等の業務で利用可能なシステムである。印刷装置100は、短冊状の伝票、レシート、クーポン、チケット等を印刷して単票として発行する。印刷装置100は、印刷用の記録紙として長尺状の紙またはシートを利用可能であり、本実施形態では、印刷装置100を、記録紙としてロール状の感熱紙Sに印刷するサーマルプリンターとした例を説明する。なお、印刷装置100は、サーマルプリンターに限られず、インクジェットプリンターなど印刷方式が異なる印刷装置であってもよい。また、記録紙を記録媒体、印刷媒体などと記載してもよい。
印刷装置100は、感熱紙Sをロール状に巻いたロール紙Rを収容し、ロール紙Rから感熱紙Sを引き出して搬送し、感熱紙Sに所定の情報を印刷し、所定の長さに切断する。なお、ロール紙Rは、ラベルロール紙やライナーレスラベルロール紙などであってもよい。
図1には、感熱紙Sの紙幅方向を符号Xで示し、X方向と直交する方向を符号Yで示し、X方向及びY方向と直交する方向を符号Zで示す。また、感熱紙Sの搬送方向を符号Fで示す。
【0008】
図1に示すように、印刷装置100は、プリンター機構部150と、外装ケース200と、制御部300とを有する。なお、制御部300はプロセッサーと記載してもよい。
外装ケース200は、本体フレーム60を覆う本体ケース201と、カバーフレーム12を覆うカバーケース202と、を備える。
【0009】
プリンター機構部150は、本体フレーム60と、カバーフレーム12と、ロール紙ホルダー16と、カッター機構20と、紙排出口30と、印刷部70と、を備える。なお、印刷部70は、感熱紙Sを搬送する搬送部70Aとして機能してもよい。
【0010】
本体フレーム60は、Z方向上方に開口を有する略箱型をしている。カバーフレーム12は、本体フレーム60に、支軸68を中心として開閉可能に取り付けられる。つまり、カバーフレーム12を覆うカバーケース202は、本体フレーム60を覆う本体ケース201に対して、支軸68を中心として開閉可能に取り付けられる。カバーフレーム12には、凹部15が設けられてもよい。凹部15があることで、カバーフレーム12は閉じる際にロール紙Rと接触しない。
ロール紙ホルダー16は、カバーフレーム12に覆われる空間であり、ロール紙Rを収容可能である。また、紙排出口30は、感熱紙Sを排出する開口である。紙排出口30は、本体ケース201にカバーケース202を閉じたときにできる開口である。紙排出口30を形成する本体ケース201及びカバーケース202は、それぞれ端部に紙排出口30の一部を備える。なお、紙排出口30は、本体ケース201又はカバーケース202のいずれか一方に形成した開口であってもよい。また、紙排出口30は、紙排出機能の一つとして、感熱紙Sを手動で切断するためのマニュアルカッターを含んでもよい。
【0011】
印刷部70は、ロール紙ホルダー16から紙排出口30に延びる感熱紙Sの搬送経路Dに設けられる。印刷部70は、サーマルヘッド10とヘッド保持機構77とプラテン71とを有する。カバーフレーム12が開くと、サーマルヘッド10とヘッド保持機構77とは本体フレーム60側に、プラテン71はカバーフレーム12側に分離可能である。なお、印刷部70は、搬送経路Dを構成する構成部分であってもよい。
【0012】
サーマルヘッド10は、符号Xで示す紙幅方向に設けられた図示しない複数の発熱素子と、放熱板73とを有する。放熱板73のZ方向上方には、案内斜面部74が設けられる。案内斜面部74は、カバーフレーム12を閉じる際に、後述するプラテン71を所定の位置までガイドする。換言すると、プラテン71は、案内斜面部74上を滑動して所定の位置に到達する。なお、案内斜面部74は、放熱板73と一体であってもよく、別体であってもよい。
【0013】
ヘッド保持機構77は、ヘッド押圧板72とヘッド押圧板72に取り付けられる付勢部材75とを備え、本体フレーム60に取り付けられる。付勢部材75は、ヘッド押圧板72とサーマルヘッド10の放熱板73とに接続し、サーマルヘッド10をプラテン71に向けて付勢する。なお、圧縮コイルバネなどのバネ部材は、付勢部材75の一例である。
【0014】
プラテン71は、ゴム等の弾性部材により構成したローラーである。プラテン軸受79を介して、カバーフレーム12はプラテン71を回転可能に支持する。カバーフレーム12が閉じると、プラテン71は、サーマルヘッド10の案内斜面部74を滑動した後、サーマルヘッド10の発熱素子と対向して接続する。言い換えると、プラテン71とサーマルヘッド10とは互いに圧接する関係になる。
【0015】
サーマルヘッド10とプラテン71とは、感熱紙Sを挟持した状態で接続する。すなわち、サーマルヘッド10とプラテン71とは、感熱紙Sを圧接する。プラテン71が図示しない紙送りモーターの動力で回転することにより、感熱紙Sを紙排出口30へ向けて搬送する。印刷装置100は、感熱紙Sを搬送しながら、サーマルヘッド10の発熱素子を選択的に通電し、通電で発熱した発熱素子によって、感熱紙Sに所定の情報を印刷する。
【0016】
印刷部70により感熱紙Sを印刷した後、カッター機構20によって所定の長さに切断しレシート等の単票として発行する。なお、印刷済みの感熱紙Sを切断するときに、印刷画像から所定の余白を空けて切断してもよい。
【0017】
プリンター機構部150のZ方向下方には制御部300が設けられる。外装ケース200は、上述のプリンター機構部150とともに、制御部300を収納する。制御部300は、印刷装置100の動作を制御する。
【0018】
制御部300は、印刷装置100に接続した不図示のホストコンピューターからコマンドを取得して、印刷装置100の各部を制御する。例えば、制御部300は、ホストコンピューターから印刷を指示する印刷コマンドや、切断を指示するカットコマンドを取得した場合、印刷部70を動作制御して、感熱紙Sの搬送及び印刷を実行し、その後にカッター機構20により感熱紙Sを切断する。なお、制御部300は通信インターフェイスなどの通信部を有してもよく、通信部を介してコマンドを取得する構成であってもよい。
【0019】
[1-2.カッター機構の構成]
カッター機構20は、感熱紙Sの搬送方向において紙排出口30の上流に設けられており、サーマルヘッド10で印刷した後の感熱紙Sを、可動刃21と固定刃27とによって切断する。可動刃21は本体フレーム60側に取り付けられ、固定刃27はカバーフレーム12側に取り付けられる。なお、可動刃21及び固定刃27はそれぞれ、第1刃及び第2刃の一例である。また、可動刃21はカバーフレーム12側に取り付けられてもよく、固定刃27は本体フレーム60側に取り付けられてもよい。本実施形態では、可動刃21を本体フレーム60側に、固定刃27をカバーフレーム12側に取り付けた場合を例に説明する。
【0020】
本体フレーム60側に設けられた第1カッターカバー24は、可動刃21と、可動刃21を駆動する駆動機構22とを収容する。一方、カバーフレーム12側に設けられた第2カッターカバー29は、固定刃27を収容する。固定刃27は、搬送経路Dを挟んで可動刃21と対向する位置に設けられる。なお、第1カッターカバー24及び第2カッターカバー29は必ずしも必要な構成ではない。本実施形態では、第1カッターカバー24を本体フレーム60側に設け、第2カッターカバー29をカバーフレーム12側に設けた場合を例に説明する。
【0021】
ロール紙Rをロール紙ホルダー16にセットする際、カバーフレーム12を開くと、カバーフレーム12とともに固定刃27は移動して可動刃21から離れる。この状態で、ロール紙Rをロール紙ホルダー16に投入する。そして、ロール紙Rから引き出した感熱紙Sを可動刃21と固定刃27との間に通し、カバーフレーム12を閉じる。そうすると、感熱紙Sは可動刃21と固定刃27との間に配置した状態となる。
【0022】
可動刃21は、駆動機構22の駆動を受けて、待機位置と切断位置との間を往復移動する。可動刃21は、待機位置から切断位置へ移動することで、感熱紙Sを切断する。そして、感熱紙Sの切断後に、可動刃21が切断位置から待機位置へ移動することで搬送経路Dを開放し、感熱紙Sを搬送可能な状態にする。
【0023】
図2は、駆動機構22の要部平面図である。なお、これ以降の図において、符号Xは左右方向を示し、符号Yは前後方向を示し、符号Zは上下方向を示す。ここで、符号Xの矢印が指す方向が左方向であり、符号Yの矢印が指す方向が前方であり、符号Zの矢印が指す方向が上方である。また、これ以降の図における左右方向は、印刷装置100、可動刃21及び固定刃27の幅方向を示す。
【0024】
駆動機構22は、図示しないモーターと、モーターの回転軸であるギア22aと、ギア22aに接続してギア22aの回転を伝達する輪列22bと、輪列22bに接続して回転する駆動歯車22cとを備える。モーターは、例えばステップモーターやDCモーターなどであり、制御部300の制御によりギア22aを駆動する。ギア22aは、モーターの駆動により右回り又は左回りに回転する。言い換えると、ギア22aは、時計回り又は反時計回りに回転する。モーターは、Z方向に沿って本体ケース201の中で垂直に立つように設置してあり、ギア22aと輪列22bとは接続している。なお、モーターは、垂直に立つ設置に限られず、他の設置状態であってもよい。また、ギア22aは、例えばウォームギアを含む。
【0025】
輪列22bは、ギア22aの回転を駆動歯車22cに伝達する複数の歯車である。輪列22bは、例えばギア22aの回転を減速して駆動歯車22cに伝達する減速輪列であってもよい。また、輪列22bは、複数の歯車に限られず、1つの歯車であってもよい。また、輪列22bは必ずしも必要ではなく、ギア22aと駆動歯車22cとが直接接続する構造であってもよい。本実施形態では、駆動歯車22cが輪列22bを介してギア22aと接続する構造を例に説明する。
【0026】
駆動歯車22cは、ギア22a及び輪列22bにより回転する歯車であり、可動刃21と対向する面にクランクピン22dが設けられている。クランクピン22dは、後述する可動刃21のスライド溝21eと接続し、可動刃21を駆動する。駆動歯車22cが回転することで、クランクピン22dがスライド溝21eに沿って移動する。そして、クランクピン22dに押された可動刃21は、待機位置と切断位置との間を往復移動する。なお、駆動歯車22cは、第1回転体の一例である。第1回転体は、歯車に限られず、カムなどであってもよい。本実施形態では、駆動歯車22cを例に説明する。
【0027】
図3Aは、可動刃21及び固定刃27の要部平面図である。
可動刃21は、例えば金属製の板状の部材からなり、固定刃27に向いたV刃先21cを有する。V刃先21cは、可動刃21において印刷装置100のY方向後方の端である。V刃先21cは、刃部の一例である。V刃先21cは、左の刃先21aと右の刃先21bとを組み合わせたV字形状のカッター刃であり、可動刃21の幅方向両端部が固定刃27に最も近く、幅方向中央部が固定刃27から最も遠い形状となっている。刃先21aと刃先21bとは可動刃21の幅方向の中央に隙間を空けて存在する。この隙間を切り欠き部21dとする。可動刃21において、V刃先21cは感熱紙Sを切断する領域であり、切り欠き部21dは感熱紙Sに切り残しを形成する領域である。なお、V刃先21cは、厳密な意味においてV字形状の刃である必要はなく、左の刃先21a、及び、右の刃先21bが所定の角度で切り欠き部21dを介して接続する構成であればよい。また、切り欠き部21dは可動刃21の幅方向の中央に限られず、中央からずれた位置に設けてもよい。そして、左の刃先21a及び右の刃先21bは、直線形状に限られず曲線形状などを一部備えてもよい。V刃先21cは、第1刃先の一例である。
【0028】
可動刃21は、鍵状構造21mを有してもよい。鍵状構造21mは、右の刃先21bのX方向左側の端部に設けられた鍵爪状の構造である。ただし、鍵状構造21mは、左の刃先21aのX方向右側の端部に設けられていてもよい。鍵状構造21mは、切り欠き部21dのY方向前方に延びた部分、X方向に沿って延びた部分、及び、Y方向後方に延びた部分で形成した可動刃21の形状である。言い換えると、鍵状構造21mは、所定の位置で曲がった切り欠き部21dで形成した可動刃21の形状である。あるいは、右の刃先21bで説明すると、鍵状構造21mは、X方向左側の端部からY方向前方に突出した突出部分を含む可動刃21の形状である。
鍵状構造21mには、切り欠き部21dのY方向後方に延びた部分からなる凹部によって端部が形成されている。この端部において、X方向に沿って延びた端部、すなわちY方向前方を向いた端部を切断端部21nとする。なお、鍵状構造21mは、左の刃先21aまたは右の刃先21bの端部に限られず、中央からずれた位置に設けてもよい。鍵状構造21mは、切り欠き部21dのY方向前方に延びた部分、X方向に沿って延びた部分だけで形成した構造であってもよい。この場合、鍵状構造21mの凹部は、X方向に沿って延びた部分で形成した凹みである。そして、鍵状構造21mの凹部におけるX方向に沿って延びた端部のうち、Y方向前方を向いた端部を切断端部21nとする。また、切断端部21nは、可動刃21の左の刃先21aや右の刃先21bと同様、刃先が形成されていてもよい。可動刃21は、鍵状構造21mを有さなくてもよい。例えば、可動刃21は、Y方向前方に延びた部分のみの切り欠き部21dを有してもよい。本実施形態では、鍵状構造21mを有する可動刃21を例に説明する。
【0029】
可動刃21は、X方向に沿って延び両端を円弧状にした直線状の溝であるスライド溝21eを有する。スライド溝21eは、駆動歯車22cのクランクピン22dと接続する。従って、スライド溝21eのY方向における幅は、クランクピン22dのY方向における幅よりも大きい。スライド溝21eは、クランクピン22dと直接的に接触してもよく、他の部材を介して間接的に接触してもよい。例えば、スライド溝21eにクランクピン22dのガイド部材を取り付けており、ガイド部材とクランクピン22dとが直接的に接触し、スライド溝21eとクランクピン22dとはガイド部材を介して間接的に接触する構造であってもよい。スライド溝21eのX方向における幅は、好ましくは駆動歯車22cの直径より大きい。また、スライド溝21eのX方向における中心は、好ましくは可動刃21においてX方向における中心を通るY方向に沿った線上にある。言い換えると、スライド溝21eの中心は、可動刃21の中心線上にあると好ましい。スライド溝21eは、両端が円弧状となった形状に限られず、例えば長方形などであってもよい。
【0030】
可動刃21は、ガイド軸21f,21gを有する。ガイド軸21f,21gは、好ましくは可動刃21のX方向における中心線上に位置する。ガイド軸21f,21gは、円柱形状をした金属製のピンであり、Z方向下方に突出し、後述するプレート21hのガイド溝21i,21lとそれぞれ接続する。可動刃21が待機位置と切断位置との間を往復移動することで、ガイド軸21f,21gはそれぞれガイド溝21i,21lに対する位置を変える。より具体的には、ガイド軸21f,21gはそれぞれガイド溝21i,21lに沿って移動する。なお、ガイド軸21f,21gは、円柱形状に限られず、四角柱や六角柱などの形状であってもよい。ガイド軸21f,21gは、一方が他方よりも大きい軸であってもよい。また、本実施形態では、ガイド軸は2つであるが、1つのガイド軸だけであってもよい。ガイド軸21f,21gは、金属製でなくてもよく、例えばプラスチックなどの樹脂製であってもよい。ガイド軸21f,21gは、それぞれ第1ガイド軸、第2ガイド軸と記載してもよい。
【0031】
可動刃21は、Z方向下方に設けられたプレート21hに置かれ、プレート21h上をスライド可能である。プレート21hは、例えば金属製の板状の部材からなり、可動刃21を支持する。プレート21hは、ガイド溝21i,21lを有する。ガイド溝21i,21lは、Y方向に沿って延びる溝であり、可動刃21のガイド軸21f,21gとそれぞれ接続する。従って、ガイド溝21i,21lのX方向における幅は、それぞれガイド軸21f,21gのX方向における幅より大きい。ガイド溝21iは、可動刃21のガイド軸21fのX方向右側に第1辺21j、X方向左側に第2辺21kを有する。第1辺21jと第2辺21kは、ガイド軸21fをガイドする辺であり、ガイド溝21iの側部である。第1辺21jは、Y方向に沿って延びている。また、第2辺21kは、第1辺21jと対向しY方向に沿って延びる部分をY方向前方に有し、第1辺21jから離れる方向に延びる部分をY方向後方に有している。第1辺21jと対向しY方向に沿って延びる部分を第1部分、第1辺21jから離れる方向に延びる部分を第2部分と記載してもよい。第1辺21jから離れる方向とは、Y方向を基準としてX方向に離れる方向であり、ガイド溝21iのX方向における幅を広げる方向である。換言すると、可動刃21の幅方向においてガイド溝21iを広げる方向である。第1部分のY方向に沿った長さは、第2部分のY方向に沿った長さより長くてもよく、逆に短くてもよい。あるいは、第1部分のY方向に沿った長さは、第2部分のY方向に沿った長さと同じであってもよい。また、第2辺21kは、第2部分のみを有してもよい。
ガイド溝21i,21lは、ガイド軸21f,21gに合わせて、一方を他方よりも大きく形成してもよい。また、本実施形態では、ガイド溝は2つであるが、1つのガイド溝だけであってもよい。ガイド溝21i,21lは、それぞれ第1ガイド溝、第2ガイド溝と記載してもよい。
【0032】
固定刃27は、例えば金属製の長板状の板状部材からなり、可動刃21に向いた刃先27bを有する。刃先27bは直線形状である。可動刃21は、固定刃27の上面27aを乗り上げて切断位置に進み、V刃先21cと刃先27bで感熱紙Sを挟むことにより、感熱紙Sを切断する。ここで、切り欠き部21dはV刃先21cが無いため感熱紙Sを切断しない。従って、切り欠き部21dは感熱紙Sに切り残しを形成する。なお、固定刃27は、直線形状に限られず曲線形状などを一部備えてもよい。また、可動刃21は固定刃27に乗り上げてZ方向上方に斜めに進んでもよい。あるいは、固定刃27が可動刃21に押されてZ方向下方に沈みこみ、可動刃21自体は真っ直ぐ進むようにしてもよい。
【0033】
図3Bは、可動刃21の要部側面図である。
可動刃21には、Z方向上方に駆動歯車22c、Z方向下方にプレート21hがそれぞれ設けられている。駆動歯車22cが回転することで、クランクピン22dがスライド溝21eを移動し、クランクピン22dの移動に応じて可動刃21のガイド軸21g,21fがガイド溝21i,21lのガイドを受けて移動する。駆動歯車22cの可動刃21と接する軸部には、可動刃21をZ方向下方に付勢する付勢部材を取り付けてもよい。この付勢部材により、可動刃21は姿勢を安定して移動できるようになる。なお、可動刃21、駆動歯車22c、及び、プレート21hのZ方向における位置関係は、上述の並びに限られず、例えば駆動歯車22cを可動刃21及びプレート21hのZ方向下方に設けてもよい。
【0034】
[1-3.カッター機構の動作]
印刷装置100は、不図示のホストコンピューターから印刷コマンドやカットコマンドを取得して、感熱紙Sをプラテン71によって搬送し、印刷部70により印刷し、カッター機構20により感熱紙Sを切断する。本実施形態では、感熱紙Sの切断において、カッター機構20は、感熱紙Sを一部残して切断するパーシャルカットと、感熱紙Sを完全に切断するフルカットを実行可能である。そして、カッター機構20は、駆動歯車22cの回転方向に応じて、パーシャルカットとフルカットを切り替え可能である。例えば、駆動歯車22cを右回りに回転することで、カッター機構20の可動刃21は感熱紙Sのパーシャルカットを実行し、駆動歯車22cを左回りに回転することで、可動刃21は感熱紙Sのフルカットを実行する。以降では、パーシャルカット又はフルカットを行う場合のカッター機構20の動作について説明する。なお、駆動歯車22cの右回り、左回りは、それぞれ第1回転方向、第2回転方向の一例である。
【0035】
図4A~
図4Cは、可動刃21の移動遷移図である。
図4A~
図4Cでは、駆動歯車22cが第1回転方向に回転する場合を例に説明する。
図4Aは可動刃21が待機位置にあるときの要部平面図であり、
図4Bは可動刃21が切断位置にあるときの要部平面図であり、
図4Cは可動刃21が切断位置から待機位置に移動するときの要部平面図である。なお、
図4A~
図4Cにおいて、プレート21hは、ガイド溝21i,21lのみを図示し、外形形状の図示は省略する。
【0036】
図4Aにおいて、可動刃21は待機位置にある。クランクピン22dは、ガイド軸21f,21gとY方向に沿った線上で並び、Y方向前方に位置する。また、ガイド軸21f,21gは、それぞれガイド溝21i,21lのY方向前方にある。駆動歯車22cが第1回転方向に回転すると、クランクピン22dは第1回転方向に沿ってY方向後方へ移動する。この間において、クランクピン22dは、スライド溝21eを、X方向左に向かって移動してから、X方向右に向かって移動する。言い換えると、クランクピン22dは、X方向左に山なりに移動する。可動刃21は、スライド溝21eを移動するクランクピン22dに押されて、Y方向後方へ移動し切断位置に向かう。そして、ガイド軸21f,21gはそれぞれ、可動刃21の移動に応じてガイド溝21i,21lのY方向後方へ移動する。
【0037】
図4Bにおいて、可動刃21は感熱紙Sを切断する。クランクピン22dは第1回転方向に沿ってY方向後方へ移動し、可動刃21は切断位置に到達する。可動刃21は、切断位置に到達するまでに、クランクピン22dからX方向に移動する力を受ける。特にクランクピン22dがスライド溝21eをX方向右に向かって移動する間、可動刃21はスライド溝21eを介してクランクピン22dからX方向右に移動する力を受ける。言い換えると、少なくともクランクピン22dがスライド溝21eをX方向右に向かって移動する間、可動刃21はクランクピン22dからX方向右に押されつつ切断位置に向かう。
【0038】
可動刃21はクランクピン22dからX方向右に押されるため、可動刃21のガイド軸21fは、X方向右側にあるガイド溝21iの第1辺21jと接触する。そして、ガイド軸21fは、第1辺21jに沿ってガイド溝21iのY方向後方に移動する。なお、ガイド軸21fは、第1辺21jと直接的に接触してもよく、他の部材を介して間接的に接触してもよい。言い換えると、ガイド軸21fは、第1辺21jに沿って移動しさえすればよい。第1辺21jはY方向に沿って延びる辺であるため、可動刃21は第1辺21jのガイドを受けてY方向後方に進み、感熱紙Sを切断する。より具体的には、可動刃21は、V刃先21cにより感熱紙Sを切断し、切り欠き部21dは感熱紙Sに切り残しを形成する。可動刃21の感熱紙Sを切断する方向、すなわちY方向後方を切断方向とする。
【0039】
図4Cにおいて、可動刃21は待機位置へ戻る。クランクピン22dは第1回転方向に沿ってY方向後方からY方向前方へ移動する。この間において、クランクピン22dは、スライド溝21eを、X方向右に向かって移動してから、X方向左に向かって移動する。言い換えると、クランクピン22dは、X方向右に山なりに移動する。可動刃21は、スライド溝21eを移動するクランクピン22dに押されて、Y方向前方へ移動し待機位置に向かう。
【0040】
可動刃21は、待機位置に戻るまでに、クランクピン22dからX方向に移動する力を受ける。特にクランクピン22dがスライド溝21eをX方向右に向かって移動する間、可動刃21はスライド溝21eを介してクランクピン22dからX方向右に移動する力を受ける。言い換えると、少なくともクランクピン22dがスライド溝21eをX方向右に向かって移動する間、可動刃21はクランクピン22dからX方向右に押されつつ待機位置に向かう。可動刃21はクランクピン22dからX方向右に押されるため、可動刃21のガイド軸21fは、X方向右側にあるガイド溝21iの第1辺21jと接触する。そして、ガイド軸21fは、第1辺21jに沿ってガイド溝21iのY方向前方に移動する。第1辺21jはY方向に沿って延びる辺であるため、可動刃21は第1辺21jのガイドを受けてY方向前方に進み、切断した感熱紙Sから離れて待機位置に向かう。可動刃21により感熱紙Sを切断して離れるまでの間、可動刃21は、第1辺21jのガイドを受けるため、切断方向への移動と切断方向とは反対の方向への移動を行う。このように構成することで、可動刃21は、感熱紙Sを一部切り残して切断するパーシャルカットを行う。換言すると、駆動歯車22cを第1回転方向に回転することで、可動刃21はパーシャルカットを行う。
【0041】
図5A~
図5Cは、可動刃21の移動遷移図である。
図5A~
図5Cでは、駆動歯車22cが第2回転方向に回転する場合を例に説明する。
図5Aは可動刃21が待機位置にあるときの要部平面図であり、
図5Bは可動刃21が切断位置にあるときの要部平面図であり、
図5Cは可動刃21が切断位置から待機位置に移動するときの要部平面図である。なお、
図5A~
図5Cにおいて、プレート21hは、ガイド溝21i,21lのみを図示し、外形形状の図示は省略する。
【0042】
図5Aにおいて、可動刃21は待機位置にある。クランクピン22dは、ガイド軸21f,21gとY方向に沿った線上で並び、Y方向前方に位置する。また、ガイド軸21f,21gは、ガイド溝21i,21lのY方向前方にある。駆動歯車22cが第2回転方向に回転すると、クランクピン22dは第2回転方向に沿ってY方向後方へ移動する。この間において、クランクピン22dは、スライド溝21eを、X方向右に向かって移動してから、X方向左に向かって移動する。言い換えると、クランクピン22dは、X方向右に山なりに移動する。可動刃21は、スライド溝21eを移動するクランクピン22dに押されて、Y方向後方へ移動し切断位置に向かう。そして、ガイド軸21f,21gはそれぞれ、可動刃21の移動に応じてガイド溝21i,21lをY方向後方へ移動する。
【0043】
図5Bにおいて、可動刃21は感熱紙Sを切断する。クランクピン22dは第2回転方向に沿ってY方向後方へ移動し、可動刃21は切断位置に到達する。可動刃21は、切断位置に到達するまでに、クランクピン22dからX方向に移動する力を受ける。特にクランクピン22dがスライド溝21eをX方向左に向かって移動する間、可動刃21はスライド溝21eを介してクランクピン22dからX方向左に移動する力を受ける。言い換えると、少なくともクランクピン22dがスライド溝21eをX方向左に向かって移動する間、可動刃21はクランクピン22dからX方向左に押されつつ切断位置に向かう。
【0044】
可動刃21はクランクピン22dからX方向左に押されるため、可動刃21のガイド軸21fは、X方向左側にあるガイド溝21iの第2辺21kと接触する。そして、ガイド軸21fは、第2辺21kに沿ってガイド溝21iのY方向後方に移動する。なお、ガイド軸21fは、第2辺21kと直接的に接触してもよく、他の部材を介して間接的に接触してもよい。言い換えると、ガイド軸21fは、第2辺21kに沿って移動しさえすればよい。第2辺21kは第1部分と第2部分を含むため、可動刃21は、第2辺21kの第1部分のガイドを受けてY方向に沿って進んだ後、第2辺21kの第2部分のガイドを受けて第1辺21jから離れる方向、すなわち切断方向に対して傾いた方向に沿って進み、感熱紙Sを切断する。
【0045】
可動刃21は、切断方向に進むことで、V刃先21cにより感熱紙Sを切断し、切り欠き部21dにより感熱紙Sに切り残しを形成する。その後に、可動刃21は、切断方向に対して傾いた方向に進むことで、感熱紙Sの切り残しも切断する。なお、切り欠き部21dにより感熱紙Sに切り残しを形成せず、可動刃21のV刃先21cだけで切断してもよい。本実施形態では、切り欠き部21dで切り残しを形成した場合を例に説明する。また、可動刃21が切断方向に対して傾いた方向に進む一例として、ガイド軸21gが支点になりつつガイド軸21fが第2辺21kの第2部分に沿って移動することで、可動刃21が切断方向に対して傾く又は回転することも含む。
【0046】
可動刃21は、切断方向に対して傾いた方向に進むことで、V刃先21cの幅中央部により感熱紙Sの切り残しを切断してもよい。あるいは、可動刃21が切断方向に対して傾いた方向に進むときに、鍵状構造21mの切断端部21nに感熱紙Sの切り残しを引っ掛けておいて、可動刃21が切断位置から待機位置に移動するときに、切断端部21nで感熱紙Sの切り残しを引っ張ってちぎるように切断してもよい。この場合、切断端部21nのX方向における幅は、切り欠き部21dのX方向における幅よりも大きい方が好ましい。そうすることで、感熱紙Sの切り残しのX方向における幅に対して切断端部21nのX方向における幅が大きくなるので、感熱紙Sの切り残しを切断端部21nで引っ掛けやすくなり、感熱紙Sの切り残しをより確実に切断することが可能になる。
【0047】
図5Cにおいて、可動刃21は待機位置へ戻る。クランクピン22dは第2回転方向に沿ってY方向後方からY方向前方へ移動する。この間において、クランクピン22dは、スライド溝21eを、X方向左に向かって移動してから、X方向右に向かって移動する。言い換えると、クランクピン22dは、X方向左に山なりに移動する。可動刃21は、スライド溝21eを移動するクランクピン22dに押されて、Y方向前方へ移動し待機位置に向かう。
【0048】
可動刃21は、待機位置に戻るまでに、クランクピン22dからX方向に移動する力を受ける。特にクランクピン22dがスライド溝21eをX方向左に向かって移動する間、可動刃21はスライド溝21eを介してクランクピン22dからX方向左に移動する力を受ける。言い換えると、少なくともクランクピン22dがスライド溝21eをX方向左に向かって移動する間、可動刃21はクランクピン22dからX方向左に押されつつ待機位置に向かう。可動刃21はクランクピン22dからX方向左に押されるため、可動刃21のガイド軸21fは、X方向左側にあるガイド溝21iの第2辺21kと接触する。そして、ガイド軸21fは、第2辺21kに沿ってガイド溝21iのY方向前方に移動する。可動刃21により感熱紙Sを切断して離れるまでの間、可動刃21は、第2辺21kのガイドを受けるため、少なくとも切断方向に対して傾いた方向への移動と、切断方向に対して傾いた方向とは反対の方向への移動を行う。このように構成することで、可動刃21は、感熱紙Sを完全に切断するフルカットを行う。換言すると、駆動歯車22cを第2回転方向に回転することで、可動刃21はフルカットを行う。
【0049】
[2.第2実施形態]
[2-1.カッター機構の構成]
次に、第2実施形態のカッター機構120について説明する。なお、第1実施形態のカッター機構20と重複する説明は省略する。また、第1実施形態のカッター機構20と重複する構成部は同一の符号で説明する。
【0050】
図6は、可動刃21、固定刃27の要部平面図である。
カッター機構120は、可動刃121を有している。可動刃121は、第1実施形態と異なり、ガイド溝121i,121lを有する。ガイド溝121i,121lは、Y方向に沿って延びる溝であり、後述するプレート121hのガイド軸121f,121gとそれぞれ接続する。従って、ガイド溝121i,121lのX方向における幅は、それぞれガイド軸121f,121gのX方向における幅より大きい。ガイド溝121iは、プレート121hのガイド軸121fのX方向左側に第1辺121j及びX方向右側に第2辺121kを有する。第1辺121jと第2辺121kは、ガイド軸121fをガイドする辺であり、ガイド溝121iの側部である。第1辺121jは、Y方向に沿って延びている。また、第2辺121kは、第1辺121jと対向しY方向に沿って延びる部分をY方向後方に有し、第1辺121jから離れる方向に沿って延びる部分をY方向前方に有している。第1辺121jと対向しY方向に沿って延びる部分を第1部分、第1辺121jから離れる方向に沿って延びる部分を第2部分と記載してもよい。第1部分のY方向の長さは、第2部分のY方向の長さより長くてもよく、逆に短くてもよい。あるいは、第1部分のY方向の長さは、第2部分のY方向の長さと同じであってもよい。また、第2辺121kは、第2部分のみを有してもよい。
ガイド溝121i,121lは、ガイド軸121f,121gに合わせて、一方を他方よりも大きく形成してもよい。また、本実施形態では、ガイド溝は2つであるが、1つのガイド溝だけであってもよい。ガイド溝121i,121lは、それぞれ第1ガイド溝、第2ガイド溝と記載してもよい。
【0051】
可動刃121は、Z方向下方に設けられたプレート121hに置かれ、プレート121h上をスライド可能である。プレート121hは、第1実施形態と異なり、ガイド軸121f,121gを有する。ガイド軸121f,121gは、好ましくはプレート121hのX方向における中心線上に位置する。ガイド軸121f,121gは、円柱形状をした金属製のピンであり、Z方向上方に突出し、可動刃121のガイド溝121i,121lとそれぞれ接続する。可動刃121が待機位置と切断位置との間を往復移動することで、ガイド軸121f,121gはそれぞれガイド溝121i,121lに対する位置を変える。より具体的には、ガイド溝121i,121lはそれぞれガイド軸121f,121gに接触しつつ移動する。なお、ガイド軸121f,121gは、円柱形状に限られず、四角柱や六角柱などの形状であってもよい。ガイド軸121f,121gは、一方が他方よりも大きい軸であってもよい。また、本実施形態では、ガイド軸は2つであるが、1つのガイド軸だけであってもよい。ガイド軸121f,121gは、金属製でなくてもよく、例えばプラスチックなどの樹脂製であってもよい。
【0052】
[2-2.カッター機構の動作]
第2実施形態のカッター機構120の動作について説明する。なお、第1実施形態のカッター機構20と重複する説明は省略する。また、第1実施形態のカッター機構20と重複する構成部は同一の符号で説明する。
【0053】
図7A及び
図7Bは、可動刃121が切断位置にあるときの要部平面図である。
図7Aでは、駆動歯車22cが第1回転方向に回転する場合を説明し、
図7Bは、駆動歯車22cが第2回転方向に回転する場合を説明する。なお、
図7A及び
図7Bにおいて、プレート121hは、ガイド軸121f,121gのみを図示し、外形形状の図示は省略する。
【0054】
図7Aにおいて、駆動歯車22cが第1回転方向に回転する場合、可動刃121はパーシャルカットを実行する。クランクピン22dは第1回転方向に沿ってY方向後方へ移動し、可動刃121は切断位置に到達する。可動刃121は、切断位置に到達するまでに、クランクピン22dからX方向に移動する力を受ける。特にクランクピン22dがスライド溝21eをX方向右に向かって移動する間、可動刃21はスライド溝21eを介してクランクピン22dからX方向右に移動する力を受ける。言い換えると、少なくともクランクピン22dがスライド溝21eをX方向右に向かって移動する間、可動刃121はクランクピン22dからX方向右に押されつつ切断位置に向かう。
【0055】
可動刃121はクランクピン22dからX方向右に押されるため、可動刃121のガイド溝121iの第1辺121jは、X方向右側にあるガイド軸121fと接触する。そして、第1辺121jは、ガイド軸121fと接触しつつ移動する。なお、第1辺121jは、ガイド軸121fと直接的に接触してもよく、他の部材を介して間接的に接触してもよい。第1辺121jはY方向に沿って延びる辺であるため、可動刃121は、第1辺121jを介してガイド軸121fのガイドを受けてY方向後方に進み、感熱紙Sを切断する。より具体的には、可動刃121は、V刃先21cにより感熱紙Sを切断し、切り欠き部21dは感熱紙Sに切り残しを形成する。可動刃121は、駆動歯車22cが第1回転方向に回転することで、パーシャルカットを行う。
【0056】
一方、
図7Bにおいて、駆動歯車22cが第2回転方向に回転する場合、可動刃121はフルカットを実行する。クランクピン22dは第2回転方向に沿ってY方向後方へ移動し、可動刃121は切断位置に到達する。可動刃121は、切断位置に到達するまでに、クランクピン22dからX方向に移動する力を受ける。特にクランクピン22dがスライド溝21eをX方向左に向かって移動する間、可動刃121はスライド溝21eを介してクランクピン22dからX方向左に移動する力を受ける。言い換えると、少なくともクランクピン22dがスライド溝21eをX方向左に向かって移動する間、可動刃121はクランクピン22dからX方向左に押されつつ切断位置に向かう。
【0057】
可動刃121はクランクピン22dからX方向左に押されるため、可動刃121のガイド溝121iの第2辺121kは、X方向左側にあるガイド軸121fと接触する。そして、第2辺121kは、ガイド軸121fと接触しつつ移動する。なお、第2辺121kは、ガイド軸121fと直接的に接触してもよく、他の部材を介して間接的に接触してもよい。第2辺121kは第1部分と第2部分を含むため、可動刃121は、第1部分を介してガイド軸121fのガイドを受けてY方向に沿って進んだ後、第2部分を介してガイド軸121fのガイドを受けて切断方向に対して傾いた方向に沿って進み、感熱紙Sを切断する。
【0058】
可動刃121は、切断方向に進むことで、V刃先21cにより感熱紙Sを切断し、切り欠き部21dにより感熱紙Sに切り残しを形成する。その後に、可動刃121は、切断方向に対して傾いた方向に進むことで、感熱紙Sの切り残しも切断する。なお、切り欠き部21dにより感熱紙Sに切り残しを形成せず、可動刃121のV刃先21cだけで切断してもよい。可動刃121は、駆動歯車22cが第2回転方向に回転することで、フルカットを行う。
【0059】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態に係る印刷装置100は、感熱紙Sを一部残して切断するパーシャルカットと、感熱紙Sを完全に切断するフルカットとを実行可能な印刷装置100であり、可動刃21,121と、可動刃21,121を支持可能なプレート21h,121hと、可動刃21,121を駆動する駆動歯車22cと、を備え、可動刃21,121、及び、プレート21h,121hの一方には、ガイド溝21i,121iが設けられており、可動刃21,121、及び、プレート21h,121hの他方には、ガイド溝21i,121iと接続可能なガイド軸21f,121fが設けられており、ガイド溝21i,121iは、第1辺21j,121j、及び、第2辺21k,121kを有し、第2辺21k,121kは、第1辺21j,121jから離れる方向に延びる所定の部分を備え、駆動歯車22cを第1回転方向に回転し可動刃21,121を感熱紙Sに向けて進めると、ガイド軸21f,121fは第1辺21j,121jに沿ってガイド溝21i,121iに対する位置を変え、可動刃21,121によるパーシャルカットを実行し、駆動歯車22cを第1回転方向と異なる第2回転方向に回転し可動刃21,121を感熱紙Sに向けて進めると、ガイド軸21f,121fは第2辺21k,121kに沿ってガイド溝21i,121iに対する位置を変え、可動刃21,121によるフルカットを実行する。
【0060】
実施形態に係る印刷装置100によれば、ガイド溝21i,121iが第1辺21j,121j、及び、第2辺21k,121kを有しており、第2辺21k,121kが第1辺21j,121jから離れる方向に延びる所定の部分を備えるため、駆動歯車22cの回転方向に応じて、可動刃21,121によるパーシャルカットとフルカットを切り替えることができる。従って、パーシャルカットとフルカットの切り替えのために、新たに部材を必要とせず、コストを抑えることができ、また、部材の摩耗による故障のリスクを抑えることもできる。
【0061】
実施形態に係る印刷装置100において、可動刃21,121は、感熱紙Sを切断する領域である刃先21a、刃先21bと、それらの間に設けられており、感熱紙Sに切り残しを形成する領域である切り欠き部21dとを有するV字形状のカッター刃である。
可動刃21,121はV字形状であることで、切断方向に進んだ時に、感熱紙Sを刃先21a、刃先21bで切断し、切り欠き部21dで切り残しを形成することができる。そのため、駆動歯車22cの回転方向に応じて、可動刃21,121によるパーシャルカットとフルカットを切り替えることができる。
【0062】
実施形態に係る印刷装置100において、駆動歯車22cを第1回転方向に回転すると、可動刃21,121は感熱紙Sを切断する切断方向に進み、パーシャルカットを実行し、駆動歯車22cを第2回転方向に回転すると、可動刃21,121は切断方向に対して傾いた方向に進み、フルカットを実行する。
可動刃21,121は、切断方向又は切断方向に対して傾いた方向のいずれかに進むことができる。そのため、駆動歯車22cの回転方向に応じて、可動刃21,121によるパーシャルカットとフルカットを実現することができる。
【0063】
実施形態に係る印刷装置100において、駆動歯車22cを第2回転方向に回転すると、ガイド軸21f,121fは第2辺21k,121kの所定の部分に沿ってガイド溝21i,121iに対する位置を変え、可動刃21,121は切断方向に対して傾いた方向に進む。
第2辺21k,121kに、第1辺21j,121jから離れる方向に延びる所定の部分があるため、駆動歯車22cが第2回転方向に回転したときに可動刃21,121を切断方向に対して傾いた方向に進めることができる。このように構成することで、可動刃21,121によるフルカットを実現できる。
【0064】
実施形態に係る印刷装置100において、可動刃21,121は切断端部21nを含む鍵状構造21mを有しており、駆動歯車22cを第2回転方向に回転すると、可動刃21,121の切断端部21nにより感熱紙Sを切断する。
感熱紙Sの切り残しを可動刃21,121の切断端部21nで引っ掛けて切断することができる。従って、可動刃21,121によるフルカットをより確実に実行することができる。
【0065】
印刷装置100において、切断方向と交差する方向に延びる切断端部21nの辺の幅は、感熱紙Sの切り残しの幅よりも大きい。
感熱紙Sの切り残しの幅に対して切断端部21nの幅が大きいので、感熱紙Sの切り残しを鍵状構造21mで引っ掛けやすくなり、感熱紙Sの切り残しをより確実に切断することができる。
【0066】
[3.他の実施形態]
なお、上述した各実施形態は、本発明の一態様を示すものに過ぎず、本発明の具体的態様及び本発明の適用範囲は上記実施形態に限られない。
【0067】
例えば、
図1に示した印刷装置100は、印刷部70が感熱紙Sを搬送する搬送部70Aとしても機能する構成として説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、搬送部70Aとして、感熱紙Sを搬送する搬送ローラー等を有する構成であってもよい。
【0068】
また、例えば、本発明を適用したカッター機構20、120により切断する媒体は、ロール状の感熱紙Sに限られず、ロール状に巻かれた普通紙や、その他のシートであってもよい。また、本発明を適用したカッター機構20,120、或いはこれを備える印刷装置100は、複合機やレジスター等の装置に組み込まれる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10…サーマルヘッド、12…カバーフレーム、15…凹部、16…ロール紙ホルダー、20…カッター機構、21…可動刃、21a…刃先、21b…刃先、21c…V刃先、21d…切り欠き部、21e…スライド溝、21f…ガイド軸、21g…ガイド軸、21h…プレート、21i…ガイド溝、21j…第1辺、21k…第2辺、21l…ガイド溝、21m…鍵状構造、21n…切断端部、22…駆動機構、22a…ギア、22b…輪列、22c…駆動歯車、22d…クランクピン、24…第1カッターカバー、27…固定刃、27a…上面、27b…刃先、29…第2カッターカバー、30…紙排出口、60…本体フレーム、68…支軸、70…印刷部、70A…搬送部、71…プラテン、72…ヘッド押圧板、73…放熱板、74…案内斜面部、75…付勢部材、77…ヘッド保持機構、79…プラテン軸受、100…印刷装置、120…カッター機構、121…可動刃、121f…ガイド軸、121g…ガイド軸、121h…プレート、121i…ガイド溝、121j…第1辺、121k…第2辺、121l…ガイド溝、150…プリンター機構部、200…外装ケース、201…本体ケース、202…カバーケース、300…制御部、D…搬送経路、F…搬送方向、R…ロール紙、S…感熱紙。