(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】回生ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
B60L 7/14 20060101AFI20240326BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20240326BHJP
B60L 53/60 20190101ALI20240326BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20240326BHJP
B60L 53/53 20190101ALI20240326BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20240326BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20240326BHJP
B60L 50/53 20190101ALI20240326BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240326BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240326BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240326BHJP
【FI】
B60L7/14
B60L53/12
B60L53/60
B60L58/12
B60L53/53
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L50/53
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J7/34 D
H02J50/10
(21)【出願番号】P 2020003123
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】松木 孝憲
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-182865(JP,A)
【文献】特開2012-200043(JP,A)
【文献】特開2005-210843(JP,A)
【文献】特開2012-050299(JP,A)
【文献】特開2005-168085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 7/14
B60L 53/12
B60L 53/60
B60L 58/12
B60L 53/53
B60M 7/00
B60L 5/00
B60L 50/53
H02J 7/00
H02J 7/34
H02J 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を牽引するトーイングトラクタを敷地内におけるアンダーパスが存在する走行路に沿って走行させる電動モータが発電機として動作することで、前記トーイングトラクタの運動エネルギーを電気エネルギーとして回収して前記トーイングトラクタを制動させる回生ブレーキを利用する回生ブレーキシステムであって、
前記トーイングトラクタに搭載されたバッテリと、
前記トーイングトラクタが前記アンダーパスの坂道を走行している状態であるかどうかを検知する坂道検知センサと、
前記トーイングトラクタに搭載され、前記トーイングトラクタが前記アンダーパスの坂道を下っている状態であると検知されると、前記回生ブレーキにより前記電動モータから発生した電力を送電する車両側送電部と、
前記アンダーパスの坂道に設置され、前記車両側送電部から送電された電力を受電する走行路側受電部
を有する受電装置と、
前記走行路側受電部と接続されるように前記敷地内に設置され、前記車両側送電部から送電されて前記走行路側受電部により受電された電力のみを蓄える蓄電装置とを備え、
前記蓄電装置に蓄えられた電力は、前記
受電装置から前記トーイングトラクタに送電されず前記トーイングトラクタの前記バッテリに供給されない回生ブレーキシステム。
【請求項2】
前記走行路に設置されると共に前記蓄電装置と接続され、前記蓄電装置に蓄えられた電力を用いて前記バッテリを充電する充電場を更に更に備える請求項1記載の回生ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、液圧ブレーキ機構と回生ブレーキ機構とを備えた車両用ブレーキ装置が記載されている。特許文献1に記載の回生ブレーキ機構は、駆動輪を回転駆動させると共に、回転する駆動輪の運動エネルギーを基に回生電力の発電を行うモータと、バッテリに蓄電された電力をモータに供給すると共に、モータで発生した回生電力をバッテリが蓄電可能な電力に変換するインバータと、液圧ブレーキ機構による制動を制限し、モータを制御することで、回生ブレーキによって回収可能なエネルギーの損失を抑制するコントローラとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両がブレーキをかけながら長い下り坂を走行する際には、回生ブレーキによりモータから発生した電力(回生電力)をバッテリが受けきれなくなり、回生ブレーキを十分に効かせることができない場合がある。この場合には、回生ブレーキによるエネルギーは、電気エネルギーとして回収されずに、機械ブレーキにより熱に変換されて捨てられてしまう。
【0005】
本発明の目的は、車両が下り坂を走行する際に回収される回生ブレーキによるエネルギーの回収効率を向上させることができる回生ブレーキシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、車両を走行路に沿って走行させる電動モータが発電機として動作することで、車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収して車両を制動させる回生ブレーキを利用する回生ブレーキシステムであって、車両に搭載されたバッテリと、車両に搭載され、車両が走行路の坂道を下るときに回生ブレーキにより電動モータから発生した電力を送電する車両側送電部と、坂道に設置され、車両側送電部から送電された電力を受電する走行路側受電部と、走行路側受電部と接続され、走行路側受電部により受電された電力を蓄える蓄電装置とを備える。
【0007】
このような回生ブレーキシステムにおいては、車両が坂道を下るときに、電動モータが発電機として動作することで車両に回生ブレーキがかかり、回生ブレーキにより電動モータから発生した電力が車両側送電部により送電される。そして、車両側送電部からの電力は、走行路側受電部により受電されて蓄電装置に蓄えられる。蓄電装置に蓄えられた電力は、他の車両に供給される。従って、回生ブレーキによるエネルギーのうち熱として捨てられる分のエネルギーは、電力として回収されて他の車両に利用されることになる。これにより、車両が下り坂を走行する際に回収される回生ブレーキによるエネルギーの回収効率が向上する。
【0008】
回生ブレーキシステムは、走行路に設置されると共に蓄電装置と接続され、蓄電装置に蓄えられた電力を送電する走行路側送電部と、車両に搭載され、走行路側送電部から送電された電力を受電する車両側受電部と、蓄電装置に蓄えられた電力を走行路側送電部及び車両側受電部を介してバッテリに供給する制御を行う電力供給制御部とを更に備えてもよい。このような構成では、蓄電装置に蓄えられた電力は、走行路側送電部及び車両側受電部を介して車両のバッテリに供給される。従って、回生ブレーキによるエネルギーの回収効率が確実に向上する。
【0009】
回生ブレーキシステムは、車両が坂道を上っている状態であるかどうかを検知する登坂検知部を更に備え、走行路側送電部は、坂道に設置されており、電力供給制御部は、登坂検知部により車両が坂道を上っている状態であると検知されると、蓄電装置に蓄えられた電力を走行路側送電部及び車両側受電部を介してバッテリに供給する制御を行ってもよい。このような構成では、車両が坂道を上っているときに、蓄電装置に蓄えられた電力が走行路側送電部及び車両側受電部を介して当該車両のバッテリに供給される。車両が上り坂を走行するときは、車両が平坦な走行路を走行するときに比べて、電動モータに大きな電力が必要となる。従って、車両が上り坂を走行する際に、蓄電装置に蓄えられた電力を当該車両のバッテリに供給することにより、回生ブレーキにより発生した電力を効率的に利用することができる。
【0010】
回生ブレーキシステムは、バッテリの充電量を検知する充電検知部を更に備え、電力供給制御部は、充電検知部により検知されたバッテリの充電量が規定値以下であるときに、蓄電装置に蓄えられた電力を走行路側送電部及び車両側受電部を介してバッテリに供給する制御を行ってもよい。このような構成では、車両のバッテリの充電量が規定値以下であるときに、蓄電装置に蓄えられた電力が走行路側送電部及び車両側受電部を介して当該車両のバッテリに供給される。このため、充電量が少ないバッテリに、蓄電装置に蓄えられた電力が供給されることになる。従って、回生ブレーキにより発生した電力を効率的に利用することができる。
【0011】
回生ブレーキシステムは、走行路に設置されると共に蓄電装置と接続され、蓄電装置に蓄えられた電力を用いてバッテリを充電する充電場を更に備えてもよい。このような構成では、蓄電装置に蓄えられた電力が充電場を介して車両のバッテリに供給されることで、バッテリが充電される。このような充電場を走行路に設置することにより、車両側受電部及び走行路側送電部が不要となるため、回生ブレーキシステムを簡素化することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両が下り坂を走行する際に回収される回生ブレーキによるエネルギーの回収効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る回生ブレーキシステムを示す概略構成図である。
【
図2】
図1に示された回生ブレーキシステムのブロック図である。
【
図3】
図2に示された回生制御部により実行される回生制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図4】
図2に示されたコントローラにより実行される制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る回生ブレーキシステムを示す概略構成図である。
【
図6】
図5に示された回生ブレーキシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図中、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係る回生ブレーキシステムを示す概略構成図である。
図2は、
図1に示された回生ブレーキシステムのブロック図である。
図1及び
図2において、本実施形態の回生ブレーキシステム1は、例えば空港や工場等の敷地内におけるアンダーパス2が存在する走行路Aにおいて適用される。ここでは、例えば複数台のトーイングトラクタ等の産業車両3が走行路Aに沿って走行している。産業車両3は、例えばバッテリ車またはハイブリッド車である。
【0016】
回生ブレーキシステム1は、産業車両3がアンダーパス2における長い下り坂を走行する際に、産業車両3の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収して産業車両3を制動させる回生ブレーキを利用するシステムである。
【0017】
回生ブレーキシステム1は、産業車両3に搭載された走行ユニット4と、アンダーパス2の坂道2aに設置された複数の送受電装置5と、敷地内に設置された蓄電装置6とを具備している。
【0018】
走行ユニット4は、バッテリ7と、電動モータ8と、モータドライバ9と、送電器10と、受電器11と、アクセルセンサ12と、坂道検知センサ14と、ECU15(Electronic Control Unit)とを備えている。
【0019】
バッテリ7は、産業車両3の走行に使用される電力(電気)を蓄える蓄電器である。つまり、バッテリ7は、電動モータ8に供給される電力を蓄える。
【0020】
電動モータ8は、バッテリ7に蓄えられた電力により産業車両3を走行させる交流モータである。電動モータ8は、産業車両3の駆動輪3aを回転駆動させる。また、電動モータ8は、発電機としても機能する。具体的には、産業車両3が減速したとき、或いは産業車両3が下り坂を走行するときには、駆動輪3aの回転によって電動モータ8が発電機として動作する。電動モータ8が発電機として動作すると、駆動輪3aに回生ブレーキがかかり、電動モータ8から電力が発生する。
【0021】
モータドライバ9は、電動モータ8を駆動すると共に、回生ブレーキにより電動モータ8から発生した電力の供給先を切り換える。モータドライバ9は、電動モータ8により駆動輪3aを回転させるときは、バッテリ7に蓄えられた直流電力を交流電力に変換して電動モータ8に供給する。モータドライバ9は、電動モータ8が発電機として動作するときは、電動モータ8から発生した交流電力を直流電力に変換してバッテリ7に供給するか、或いは電動モータ8から発生した交流電力を送電器10に供給する。また、モータドライバ9は、送電器10による送電動作と受電器11による受電動作との切り換えを行う。
【0022】
送電器10は、産業車両3がアンダーパス2の坂道2aを下るときに回生ブレーキにより電動モータ8から発生した電力を送電する車両側送電部である。送電器10は、例えば送電コイルを有する電磁誘導式の送電器である。送電器10は、回生ブレーキにより電動モータ8から発生した電力を非接触で送電する。
【0023】
受電器11は、送受電装置5の送電器21(後述)から送電された電力を受電する車両側受電部である。受電器11は、例えば受電コイルを有する電磁誘導式の受電器である。受電器11は、送電器からの電力を非接触で受電する。
【0024】
アクセルセンサ12は、アクセルの操作量を検出するセンサである。坂道検知センサ14は、産業車両3がアンダーパス2の坂道2aを走行している状態であるかどうかを検知するセンサである。坂道検知センサ14としては、例えばカメラ、傾斜センサ、車速センサ及び加速度センサ等が使用される。坂道検知センサ14は、産業車両3が坂道2aを上っている状態であるかどうかを検知する登坂検知部を構成している。なお、産業車両3が坂道2aを走行している状態であるかどうかを検知する手法としては、例えばSLAM等の自己位置推定技術を用いて産業車両3の現在位置を推定してもよい。
【0025】
ECU15は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。ECU15は、アクセルセンサ12及び坂道検知センサ14等の検出値を取得し、所定の処理を行い、電動モータ8及びモータドライバ9を制御する。ECU15は、電圧検知部13と、駆動制御部16と、回生制御部17と、充電制御部18と、車両情報送信部19とを有している。
【0026】
電圧検知部13は、バッテリ7の電圧値を検知する。電圧検知部13は、バッテリ7の充電量を検知する充電検知部を構成している。
【0027】
駆動制御部16は、アクセルセンサ12によりアクセルの操作(アクセルON)が検出されると、アクセルの操作量に応じて駆動輪3aを回転させるように、モータドライバ9を通じて電動モータ8を制御する。
【0028】
回生制御部17は、アクセルセンサ12によりアクセルの操作の解除(アクセルOFF)が検出されると、回生ブレーキにより電動モータ8から発生した電力(回生電力)を供給するようにモータドライバ9を制御する。
【0029】
図3は、回生制御部17により実行される回生制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
図3において、回生制御部17は、まずアクセルセンサ12の検出値を取得する(手順S101)。そして、回生制御部17は、アクセルセンサ12の検出値に基づいて、アクセルの操作が解除されたかどうか、つまりアクセルOFFであるかどうかを判断する(手順S102)。回生制御部17は、アクセルの操作が解除されていないと判断したときは、上記の手順S101を再度実行する。
【0030】
回生制御部17は、アクセルの操作が解除されたと判断したときは、坂道検知センサ14の検出値を取得する(手順S103)。そして、回生制御部17は、坂道検知センサ14の検出値に基づいて、産業車両3がアンダーパス2の坂道2aを下っている状態であるかどうか、つまり産業車両3が下り坂を走行している状態であるかどうかを判断する(手順S104)。
【0031】
回生制御部17は、産業車両3が坂道2aを下っている状態であると判断したときは、電圧検知部13により検知されたバッテリ7の電圧値を取得する(手順S105)。そして、回生制御部17は、取得したバッテリ7の電圧値に基づいて、バッテリ7がフル充電された状態であるかどうかを判断する(手順S106)。
【0032】
回生制御部17は、バッテリ7がフル充電された状態でないと判断したときは、回生ブレーキにより電動モータ8から発生した回生電力をバッテリ7に充電するようにモータドライバ9を制御する(手順S107)。そして、回生制御部17は、上記の手順S101を再度実行する。
【0033】
回生制御部17は、バッテリ7がフル充電された状態であると判断したときは、回生ブレーキにより電動モータ8から発生した回生電力を送電器10により送電するようにモータドライバ9を制御する(手順S108)。そして、回生制御部17は、上記の手順S101を再度実行する。
【0034】
また、回生制御部17は、手順S104において産業車両3が坂道2aを下っている状態でないと判断したときは、回生ブレーキにより電動モータ8から発生した回生電力をバッテリ7に充電するようにモータドライバ9を制御する(手順S107)。そして、回生制御部17は、上記の手順S101を再度実行する。
【0035】
図2に戻り、充電制御部18は、坂道検知センサ14により産業車両3がアンダーパス2の坂道2aを上っている状態であると検出されると、受電器11により受電された電力がバッテリ7に充電可能となるようにモータドライバ9を制御する。
【0036】
車両情報送信部19は、電圧検知部13により検知されたバッテリ7の電圧値及び坂道検知センサ14の検出値を取得し、これらを車両情報として送受電装置5のコントローラ23(後述)に無線等で送信する。
【0037】
送受電装置5は、受電器20と、送電器21と、切換部22と、コントローラ23とを有している。
【0038】
受電器20は、産業車両3の走行ユニット4の送電器10から送電された電力を受電する走行路側受電部である。受電器20は、例えば受電コイルを有する電磁誘導式の受電器である。受電器20は、送電器10からの電力を非接触で受電する。
【0039】
送電器21は、蓄電装置6に蓄えられた電力を送電する走行路側送電部である。送電器21は、例えば送電コイルを有する電磁誘導式の送電器である。送電器21は、蓄電装置6に蓄えられた電力を非接触で送電する。
【0040】
切換部22は、受電器20による受電動作と送電器21による送電動作との切り換えを行う。
【0041】
コントローラ23は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。コントローラ23は、走行ユニット4の車両情報送信部19から送信された車両情報を無線等により受信して取得し、所定の処理を行い、切換部22を制御する。
【0042】
図4は、コントローラ23により実行される制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
図4において、コントローラ23は、まず車両情報送信部19からの車両情報を取得する(手順S111)。そして、コントローラ23は、車両情報に基づいて、産業車両3がアンダーパス2の坂道2aを上っている状態であるかどうか、つまり産業車両3が上り坂を走行している状態であるかどうかを判断する(手順S112)。
【0043】
コントローラ23は、産業車両3が坂道2aを上っている状態であると判断したときは、車両情報に基づいて、産業車両3のバッテリ7の充電量が予め決められた規定値以下であるかどうかを判断する(手順S113)。
【0044】
コントローラ23は、バッテリ7の充電量が規定値以下であると判断したときは、蓄電装置6に蓄えられた電力を送電器21により送電するように切換部22を制御する(手順S114)。そして、コントローラ23は、上記の手順S111を再度実行する。
【0045】
コントローラ23は、手順S112で産業車両3が坂道2aを上っている状態でないと判断したとき、または手順S113でバッテリ7の充電量が規定値以下でないと判断したときは、受電器20により受電された電力を蓄電装置6に供給するように切換部22を制御する(手順S115)。そして、コントローラ23は、上記の手順S111を再度実行する。
【0046】
図2に戻り、蓄電装置6は、複数の送受電装置5の切換部22と接続されている。蓄電装置6は、送受電装置5の受電器20により受電された電力を蓄える。
【0047】
以上において、モータドライバ9、回生制御部17、充電制御部18、車両情報送信部19、切換部22及びコントローラ23は、蓄電装置6に蓄えられた電力を送電器21及び受電器11を介してバッテリ7に供給する制御を行う電力供給制御部を構成している。
【0048】
以上のような回生ブレーキシステム1において、産業車両3がアンダーパス2の坂道2aを下るときは、アクセルの操作を解除することで、駆動輪3aの回転によって電動モータ8が発電機として動作する。このため、産業車両3に回生ブレーキがかかり、回生ブレーキにより電動モータ8から発生した回生電力がモータドライバ9を介してバッテリ7に充電される。
【0049】
このとき、バッテリ7がフル充電された状態になると、バッテリ7が回生電力を受けきれなくなる。このため、回生電力は、坂道2aに設置された送受電装置5を介して蓄電装置6に供給される。具体的には、回生電力は、モータドライバ9を介して送電器10に送られ、送電器10から送電される。そして、送電器10からの回生電力は、送受電装置5の受電器20で受電され、切換部22を介して蓄電装置6に蓄えられる。
【0050】
蓄電装置6に蓄えられた電力は、アンダーパス2の坂道2aを上る他の産業車両3に送受電装置5を介して供給される。具体的には、蓄電装置6に蓄えられた電力は、送受電装置5において切換部22を介して送電器21に送られ、送電器21から送電される。そして、送電器21からの電力は、他の産業車両3の受電器11で受電され、モータドライバ9を介してバッテリ7に充電される。
【0051】
以上のように本実施形態にあっては、産業車両3が坂道2aを下るときに、電動モータ8が発電機として動作することで産業車両3に回生ブレーキがかかり、回生ブレーキにより電動モータ8から発生した電力が送電器10により送電される。そして、送電器10からの電力は、送受電装置5の受電器20により受電されて蓄電装置6に蓄えられる。蓄電装置6に蓄えられた電力は、他の産業車両3に供給される。従って、回生ブレーキによるエネルギーのうち熱として捨てられる分のエネルギーは、電力として回収されて他の産業車両3に利用されることになる。これにより、産業車両3が下り坂を走行する際に回収される回生ブレーキによるエネルギーの回収効率が向上する。その結果、産業車両3の稼働時間を向上させることができる。また、産業車両3のバッテリ7を充電するための電力コストを抑えることができる。
【0052】
また、本実施形態では、蓄電装置6に蓄えられた電力は、送受電装置5の送電器21及び産業車両3の受電器11を介してバッテリ7に供給される。従って、回生ブレーキによるエネルギーの回収効率が確実に向上する。
【0053】
また、本実施形態では、産業車両3が坂道2aを上っているときに、蓄電装置6に蓄えられた電力が送電器21及び受電器11を介してバッテリ7に供給される。産業車両3が上り坂を走行するときは、産業車両3が平坦な走行路を走行するときに比べて、電動モータ8に大きな電力が必要となる。従って、産業車両3が上り坂を走行する際に、蓄電装置6に蓄えられた電力を当該産業車両3のバッテリ7に供給することにより、回生ブレーキにより発生した電力を効率的に利用することができる。
【0054】
また、本実施形態では、バッテリ7の充電量が規定値以下であるときに、蓄電装置6に蓄えられた電力が送電器21及び受電器11を介してバッテリ7に充電される。このため、充電量が少ないバッテリ7に、蓄電装置6に蓄えられた電力が供給されることになる。従って、回生ブレーキにより発生した電力をより効率的に利用することができる。
【0055】
図5は、本発明の第2実施形態に係る回生ブレーキシステムを示す概略構成図である。
図6は、
図5に示された回生ブレーキシステムのブロック図である。
図5及び
図6において、本実施形態の回生ブレーキシステム1Aは、産業車両3に搭載された走行ユニット4Aと、アンダーパス2の坂道2aに設置された複数の受電装置30と、上記の蓄電装置6と、充電スタンド31とを具備している。
【0056】
走行ユニット4Aは、バッテリ7と、電動モータ8と、モータドライバ9と、送電器10と、アクセルセンサ12と、坂道検知センサ14と、ECU15Aとを備えている。走行ユニット4Aは、上記の第1実施形態における受電器11を備えていない。
【0057】
ECU15Aは、電圧検知部13と、駆動制御部16と、回生制御部17とを有している。ECU15Aは、上記の第1実施形態における充電制御部18及び車両情報送信部19を有していない。
【0058】
受電装置30は、蓄電装置6と接続されている。受電装置30は、受電器20を有している。受電装置30は、上記の第1実施形態における送電器21及び切換部22を有していない。従って、産業車両3において回生ブレーキにより発生した回生電力は、受電装置30を介して蓄電装置6に供給される。しかし、蓄電装置6に蓄えられた電力は、受電装置30を介して産業車両3のバッテリ7に供給されることはない。なお、受電装置30は、コントローラを有してもよい。
【0059】
充電スタンド31は、産業車両3が走行する走行路Aに設置されている充電場である。充電スタンド31は、蓄電装置6と接続されている。充電スタンド31は、蓄電装置6に蓄えられた電力を用いて産業車両3のバッテリ7を充電する充電器32と、この充電器32によるバッテリ7の充電の指示を行うための充電ボタン33を有している。
【0060】
充電スタンド31において産業車両3のバッテリ7の充電を行うときは、バッテリ7と充電器32とをバッテリケーブルで接続した状態で、充電ボタン33をON操作する。すると、蓄電装置6に蓄えられた電力が充電器32を介してバッテリ7に供給されることで、バッテリ7が充電される。
【0061】
このように本実施形態においては、蓄電装置6に蓄えられた電力が充電スタンド31を介して産業車両3のバッテリ7に供給されることで、バッテリ7が充電される。このような充電スタンド31を設置することにより、上記の第1実施形態における受電器11及び送電器21が不要となるため、回生ブレーキシステム1Aを簡素化することができる。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記の第1実施形態では、回生ブレーキシステム1は、受電器20、送電器21、切換部22及びコントローラ23を有する送受電装置5を備えているが、特にそのような形態には限られない。回生ブレーキシステム1は、受電コイルを有する受電装置と、受電装置用のコントローラと、送電コイルを有する送電装置と、送電装置用のコントローラとを備えていてもよい。
【0063】
また、上記の第1実施形態では、産業車両3が上り坂を走行するときに、蓄電装置6に蓄えられた電力が当該産業車両3のバッテリ7に供給されているが、特にそのような形態には限られず、産業車両3が平坦な走行路を走行するときにも、蓄電装置6に蓄えられた電力を当該産業車両3に供給してもよい。この場合には、平坦な走行路に送受電装置5が設置されることになる。
【0064】
また、上記実施形態では、産業車両3の送電器10は、回生ブレーキにより発生した電力を非接触で送電し、送受電装置5の受電器20は、送電器10からの電力を非接触で受電しているが、送電器10及び受電器20としては、特にそのような非接触式には限られず、接触式であってもよい。接触式の送電器10は、例えば産業車両3の下部に取り付けられた金属ローラである。接触式の受電器20は、例えば走行路Aに設置され、金属ローラと接触する金属レールである。
【0065】
また、上記実施形態では、産業車両3がアンダーパス2の坂道2aを走行している状態であるかどうかを検知する坂道検知センサ14は、産業車両3に搭載されているが、特にそのような形態には限られず、坂道検知センサ14が坂道2aに設置されていてもよい。この場合に使用される坂道検知センサとしては、例えば接触センサや赤外線センサ等が挙げられる。
【0066】
また、上記実施形態は、産業車両3が下り坂を走行する際に、産業車両3の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収して回生ブレーキを利用するシステムであるが、本発明は、そのような産業車両3の他にも、例えばトラック等の車両が下り坂を走行する際に、車両の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収して回生ブレーキを利用する場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1,1A…回生ブレーキシステム、2a…坂道、3…産業車両(車両)、6…蓄電装置、7…バッテリ、8…電動モータ、9…モータドライバ(電力供給制御部)、10…送電器(車両側送電部)、11…受電器(車両側受電部)、13…電圧検知部(充電検知部)、14…坂道検知センサ(登坂検知部)、17…回生制御部(電力供給制御部)、18…充電制御部(電力供給制御部)、19…車両情報送信部(電力供給制御部)、20…受電器(走行路側受電部)、21…送電器(走行路側送電部)、22…切換部(電力供給制御部)、23…コントローラ(電力供給制御部)、31…充電スタンド(充電場)、A…走行路。