(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】三次元形状計測装置、三次元形状計測方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/25 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
G01B11/25 H
(21)【出願番号】P 2020011895
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 心平
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴茂
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-081048(JP,A)
【文献】特開2016-011857(JP,A)
【文献】特開2019-120643(JP,A)
【文献】特開2003-172709(JP,A)
【文献】特開2008-216180(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0238237(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象に対して、前記計測対象に対する鉛直軸回りの角度が異なる複数の方向からパターン光を投影する投影手段と、
前記計測対象を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段によって撮影された画像に基づいて、前記計測対象の三次元形状を計測する計測手段と、を有する三次元形状計測装置であって、
前記撮影手段は、前記複数の方向からパターン光が投影された複数の画像であって、前記計測対象において傾斜を有する部位における前記パターン光の強度を含む反射の態様が異なる複数のパターン投影画像を取得し、
前記計測手段は、前記複数のパターン投影画像を構成する各画素における
輝度の各画像間の相違に基づき、各パターン投影画像間の前記計測対象における同一の箇所を示す画素の輝度が最も大きい前記パターン投影画像に投影された前記パターン光が照射された方向と対向するように前記傾斜の斜面が向いているものとして、前記
三次元形状を計測する、
ことを特徴とする、三次元形状計測装置。
【請求項2】
前記投影手段は、前記計測対象を中心とする一の円周上において、少なくとも前記計測対象を中心として対向する複数の異なる位置から、前記計測対象に対して前記パターン光を投影することによって、前記複数の方向からパターン光を投影する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の三次元形状計測装置。
【請求項3】
前記投影手段は、前記計測対象を中心とする円周方向に回動可能に配置されて、前記計測対象を中心とする一の円周上の複数の異なる位置から前記計測対象に対してパターン光を投影することによって、前記複数の方向からパターン光を投影する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の三次元形状計測装置。
【請求項4】
前記投影手段は、前記計測対象を中心として一の円周上の複数の異なる位置に、複数配置され、それぞれが前記計測対象にパターン光を投影することによって、前記複数の方向からパターン光を投影する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の三次元形状計測装置。
【請求項5】
前記計測対象に対して、鉛直方向から水平方向の間における複数の異なる角度から、それぞれ異なる波長の照明光を照射する照明手段をさらに有しており、
前記撮影手段は、前記照明光が照射された前記計測対象の照明光照射画像をさらに取得し、
前記計測手段は、前記照明光照射画像における前記照明光の強度又は波長のいずれかを含む反射の態様から前記傾斜の程度をさらに計測する、
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の三次元形状計測装置。
【請求項6】
前記撮影手段が取得した前記照明光照射画像、及び、前記複数のパターン投影画像から作成される特殊画像を表示する画像表示手段をさらに有しており、
前記特殊画像は、前記照明光照射画像から得られる前記傾斜の有無及び程度と、前記複数のパターン投影画像を構成する各画素の特徴量の差に基づいて得られる前記傾斜の方向が、異なる色及び/又は模様により識別可能に表示分けされた画像である、
ことを特徴とする、請求項5に記載の三次元形状計測装置。
【請求項7】
計測対象に対して、前記計測対象に対する鉛直軸回りの角度が異なる複数の方向からパターン光を投影する投影ステップと、
前記計測対象を撮影する撮影ステップと、
前記撮影ステップで撮影された画像に基づいて、前記計測対象の三次元形状を計測する計測ステップと、を有する三次元形状計測方法であって、
前記撮影ステップでは、前記複数の方向からパターン光が投影された複数の画像であって、前記計測対象において傾斜を有する部位における前記パターン光の強度を含む反射の態様が異なる複数のパターン投影画像を取得し、
前記計測ステップでは、前記複数のパターン投影画像を構成する各画素における
輝度の各画像間の相違に基づき、各パターン投影画像間の前記計測対象における同一の箇所を示す画素の輝度が最も大きい前記パターン投影画像に投影された前記パターン光が照射された方向と対向するように前記傾斜の斜面が向いているものとして、前記
三次元形状を計測する、
ことを特徴とする、三次元形状計測方法。
【請求項8】
前記投影ステップでは、少なくとも前記計測対象を中心として対向する複数の異なる位置から、前記計測対象に対して前記パターン光を投影することによって、前記複数の方向からパターン光を投影する、
ことを特徴とする、請求項7に記載の三次元形状計測方法。
【請求項9】
前記計測対象に対して、鉛直方向から水平方向の間における複数の異なる角度から、それぞれ異なる波長の照明光を照射する照明ステップをさらに有しており、
前記撮影ステップでは、前記照明光が照射された前記計測対象の照明光照射画像をさらに取得し、
前記計測ステップでは、前記照明光照射画像における前記照明光の強度又は波長のいずれかを含む反射の態様から前記傾斜の程度をさらに計測する、
ことを特徴とする、請求項7又は8に記載の三次元形状計測方法。
【請求項10】
前記撮影ステップで取得した前記照明光照射画像、及び、前記複数のパターン投影画像から作成される特殊画像を表示する画像表示ステップをさらに有しており、
前記特殊画像は、前記照明光照射画像から得られる前記傾斜の有無及び程度と、前記複数のパターン投影画像を構成する各画素の特徴量の差に基づいて得られる前記傾斜の方向が、異なる色及び/又は模様により識別可能に表示分けされた画像である、
ことを特徴とする、請求項9に記載の三次元形状計測方法。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか一項に記載の各ステップを、三次元形状計測装置に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元形状の測定装置、三次元形状計測方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント基板に実装された部品のはんだ接合状態を検査する技術分野等において、いわゆる位相シフト法による三次元形状の計測方法が知られている。位相シフト法とは、パターン光を物体表面に投影した状態の画像を、位相を変えて複数取得(撮影)し、当該複数の画像におけるパターンの歪みを解析することにより物体表面の三次元形状を復元する手法の一つである。このような位相シフト法を用いてプリント基板を計測する場合、はんだのような鏡面性の高い部材に照射された光が正反射してしまい、計測精度に悪影響を及ぼすといった問題があった。
【0003】
これに対して、例えば特許文献1には、上記位相シフト法に、いわゆるカラーハイライト方式による鏡面物体の三次元形状計測を組み合わせた基板検査装置が開示されている。なお、カラーハイライト方式とは、複数の色(波長)の光を互いに異なる入射角で基板に照射し、はんだ表面にその法線方向に応じた色特徴(カメラから見て正反射方向にある光源の色)が現れるようにした状態で撮像を行うことにより、はんだ表面の三次元形状を二次元の色相情報として捉える方法である。これにより、プリント基板の鏡面部分にはカラーハイライトによる計測を行い、樹脂などの拡散物体には位相シフト法による計測を行うことにより、三次元形状計測の精度を高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の検査装置によっても、計測対象の表面の傾斜傾斜の「方向」については、判別が困難であるという問題がある。即ち、プリント基板の検査でいうと、はんだ表面の傾斜が、電極に対して積み上がっている(いわゆる濡れ上がっている)のか、或いは、電極に対して低くなっている(いわゆる不濡れの状態)のかが、精度良く判定することが困難となる。
【0006】
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、三次元形状計測において、計測対象に含まれる傾斜の方向を精度良く判別する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。
【0008】
本発明に係る三次元形状計測装置は、計測対象に対して、前記計測対象に対する鉛直軸回りの角度が異なる複数の方向からパターン光を投影する投影手段と、前記計測対象を撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって撮影された画像に基づいて、前記計測対象の三次元形状を計測する計測手段と、を有する三次元形状計測装置であって、前記撮影手段は、前記複数の方向からパターン光が投影された複数の画像であって、前記計測対象において傾斜を有する部位における前記パターン光の強度を含む反射の態様が異なる複数のパターン投影画像を取得し、前記計測手段は、前記複数のパターン投影画像を構成する各画素における所定の特徴量の各画像間の相違に基づいて、前記傾斜の方向を計測する、ことを
特徴とする。
【0009】
なお、ここでいう「計測」には、計算により測定することも含む(以下同じ)。また、「パターン」とは、例えば輝度の変化が周期性を示す縞模様であり、時間的に位相を変化させることが可能なものである。また、ここでいう「傾斜」は、水平面に対して直線で定義される傾きだけでなく、曲線によって定義される広義の意味合いの傾きを含む意味である。また、当該傾斜を含んでなる斜面も、平面だけでなく曲面を含む広義の意味合いの斜面を含む意味に解する。以下、本明細書中においては同様の意味に解する。
【0010】
なお、「パターン光の強度を含む反射の態様が異なる複数のパターン投影画像」とは、同一のパターンが同一の方向から照射されたパターンの位相が異なるだけの複数の画像を指すのでは無く、複数の異なる方向からパターン光が照射されたために、パターン光の反射の態様が異なっている複数の画像のことを示している。
【0011】
このような構成であると、計測対象に含まれる傾斜の方向を計測することが可能になるため、当該傾斜部分の三次元形状を精度良く計測することができる。なお、所定の特徴量としては、例えば各画素の輝度とすることができる。
【0012】
また、前記投影手段は、前記計測対象を中心とする一の円周上において、少なくとも前記計測対象を中心として対向する複数の異なる位置から、前記計測対象に対して前記パターン光を投影することによって、前記複数の方向からパターン光を投影するものであってもよい。このような構成であると、計測対象においてパターン光が照射されない影の部分が生じることを抑制することができる。
【0013】
また、前記投影手段は、前記計測対象を中心とする円周方向に回動可能に配置されて、前記計測対象を中心とする一の円周上の複数の異なる位置から前記計測対象に対してパターン光を投影することによって、前記複数の方向からパターン光を投影するものであってもよい。
【0014】
このような構成によると、円周上の所望の位置から前記計測対象にパターン光を照射させることができ、計測対象の所定の部位の向き及び形状に関わらず、最適な方向からパターン光を照射することができる。また、前記投影手段は、前記計測対象を中心として一の円周上の複数の異なる位置に、複数配置され、それぞれが前記計測対象にパターン光を投影することによって、前記複数の方向からパターン光を投影するものであってもよい。
【0015】
また、前記三次元形状計測装置は、前記計測対象に対して、鉛直方向から水平方向の間における複数の異なる角度から、それぞれ異なる波長の照明光を照射する照明手段をさらに有しており、前記撮影手段は、前記照明光が照射された前記計測対象の照明光照射画像をさらに取得し、前記計測手段は、前記照明光照射画像における前記照明光の強度又は波長のいずれかを含む反射の態様から、前記傾斜の程度をさらに計測するものであってもよい。
【0016】
このような構成であると、カラーハイライト方式による三次元形状計測を行うことが可能になり、計測対象に含まれる傾斜の程度を精度良く計測することができる。また、カラーハイライト方式による三次元形状計測と、位相シフト法と組み合わせることにより、計測の精度を向上させることができる。
【0017】
また、前記三次元形状計測装置は、前記撮影手段が取得した前記照明光照射画像、及び、前記複数のパターン投影画像から作成される特殊画像を表示する画像表示手段をさらに有しており、前記特殊画像は、前記照明光照射画像から得られる前記傾斜の有無及び程度
と、前記複数のパターン投影画像を構成する各画素の特徴量の差に基づいて得られる前記傾斜の方向が、異なる色及び/又は模様により識別可能に表示分けされた画像であってもよい。
【0018】
このような構成によると、ユーザーは二次元の画像を確認することによって、前記三次元計測装置が計測した前記計測対象の三次元形状を認識することが可能になる。また、前記画像を実際の計測対象と比較することにより、三次元計測装置の設定を調整することも可能になる。
【0019】
また、本発明に係る三次元形状の計測方法は、計測対象に対して、前記計測対象に対する鉛直軸回りの角度が異なる複数の方向からパターン光を投影する投影ステップと、前記計測対象を撮影する撮影ステップと、前記撮影ステップで撮影された画像に基づいて、前記計測対象の三次元形状を計測する計測ステップと、を有する三次元形状計測方法であって、前記撮影ステップでは、前記複数の方向からパターン光が投影された複数の画像であって、前記計測対象において傾斜を有する部位における前記パターン光の強度を含む反射の態様が異なる複数のパターン投影画像を取得し、前記計測ステップでは、前記複数のパターン投影画像を構成する各画素における所定の特徴量の各画像間の相違に基づいて、前記傾斜の方向を計測する。
【0020】
また、前記投影ステップでは、少なくとも前記計測対象を中心として対向する複数の異なる位置から、前記計測対象に対して前記パターン光を投影することによって、前記複数の方向からパターン光を投影するものであってもよい。
【0021】
また、前記三次元形状計測方法は、前記計測対象に対して、鉛直方向から水平方向の間における複数の異なる角度から、それぞれ異なる波長の照明光を照射する照明ステップをさらに有しており、前記撮影ステップでは、前記照明光が照射された前記計測対象の照明光照射画像をさらに取得し、前記計測ステップでは、前記照明光照射画像における前記照明光の強度又は波長のいずれかを含む反射の態様から前記傾斜の程度をさらに計測するものであってもよい。
【0022】
また、前記三次元形状計測方法は、前記撮影ステップで取得した前記照明光照射画像、及び、前記複数のパターン投影画像から作成される特殊画像を表示する画像表示ステップをさらに有しており、前記特殊画像は、前記照明光照射画像から得られる前記傾斜の有無及び程度と、前記複数のパターン投影画像を構成する各画素の特徴量の差に基づいて得られる前記傾斜の方向が、異なる色及び/又は模様により識別可能に表示分けされた画像であってもよい。
【0023】
また、本発明は、上記の方法を三次元形状計測装置に実行させるためのプログラム、そのようなプログラムを非一時的に記録したコンピュータ読取可能な記録媒体として捉えることもできる。
【0024】
また、上記構成及び処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、三次元形状計測において、計測対象に含まれる傾斜の方向を精度良く判別する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の適用例に係る三次元形状計測装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の適用例に係る三次元形状計測装置の三次元形状計測処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る基板検査装置のハードウェア構成を示す模式図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る情報処理装置の機能を説明するブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る照明装置の構成を説明する平面図である。
【
図6】
図6Aは、計測対象となる基板のはんだ付け部を説明する側面図である。
図6Bは、基板のはんだ付け部のカラーハイライト画像を説明する図である。
図6Cは、基板のはんだ付け部のカラーハイライト補正画像を説明する図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る基板検査装置の基板検査処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0028】
<適用例>
(適用例の構成)
本発明は例えば、
図1に示すような三次元形状測定装置に適用することができる。
図1は本適用例に係る三次元形状測定装置9の構成を示す模式図である。三次元形状測定装置9は、計測対象Oの三次元形状を測定する装置であり、
図1に示すように主な構成として投影手段としてのプロジェクタ91aおよび91b、撮影手段としてのカメラ92、測定手段としての情報処理装置93(例えばコンピュータ)、を有している。計測対象Oには、傾斜を有する立体的な部位OPが含まれる。
【0029】
プロジェクタ91aおよび91bは、計測対象に対してパターンを投影する手段である。ここで、パターンとは、例えば輝度の変化が周期性を示す縞模様であり、時間的に位相を変化させることが可能なものである。本適用例では、プロジェクタ91aから投影されるパターンをパターンa、プロジェクタ91bから投影されるパターンをパターンbとする。プロジェクタ91a、91bはそれぞれ計測対象Oに対して一定の傾斜角を有するように配置される。
【0030】
カメラ92は、パターンが投影された状態の計測対象Oを撮影し、デジタル画像を出力する手段である。なお、以下では、撮影手段によって撮影された画像を観測画像とも表記する。カメラ92は例えば、光学系とイメージセンサを有して構成される。
図1に示すように、カメラ92は計測対象Oの真上から計測対象Oを撮影するように配置される。なお、プロジェクタ91aとプロジェクタ91bは、カメラ92を中心に円周方向に沿って互いに対向する位置に配置される。
【0031】
情報処理装置93は、プロジェクタ91a、91b、カメラ92及び搬送機構の制御、カメラ92から取り込まれた画像に対する処理、三次元形状計測などの機能を有しており、本発明における計測手段に該当する。情報処理装置93は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性の記憶装置(例えば、ハードデ
ィスクドライブ、フラッシュメモリなど)、入力装置(例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなど)、表示装置(例えば、液晶ディスプレイなど)を備えるコンピュータにより構成することができる。
【0032】
以上の構成を有する三次元形状計測装置9において計測対象物Oの三次元形状の計測を行う際には、各プロジェクタから計測対象Oに投影するパターンの位相を変えながら、複
数枚の画像をカメラ92によって撮影し、撮影された画像を情報処理装置93が、例えば位相シフト法などによって処理することで、計測対象Oの三次元形状を計測する。
【0033】
(情報処理装置の機能)
続いて、情報処理装置93の三次元形状計測に関わる機能を説明する。情報処理装置93は、三次元形状計測に関わる機能モジュールとして、画像取得部931、高さデータ算出部932、特徴量抽出部933、特徴量比較部934、合成データ作成部935、三次元形状計測部936、を有している。
【0034】
画像取得部931はカメラ92から三次元形状測定に用いる複数の観測画像を取り込む機能であり、例えば、測定対象物Oに投影されるパターンの位相が4分の1πずつ異なる画像4枚を、プロジェクタ91aの投影パターン、プロジェクタ91bの投影パターンのそれぞれで取得する。本適用例では、プロジェクタ91aの投影パターンを、パターンaといい、これを撮影した観測画像を観測画像aという。また、プロジェクタ91bの投影パターンを、パターンbといい、これを撮影した観測画像を観測画像bという。
【0035】
高さデータ算出部932は取得された複数の観測画像に基づいて、測定対象物Oの高さデータを算出する機能である。例えば、取得した4枚の観測画像間における測定対象物Oの表面上の一点の位置を表す画素の二次元の位相差に基づいて、当該点の高さを、観測画像a、観測画像bのそれぞれで求める。本適用例では、観測画像aから算出される高さデータを高さデータa、観測画像bから算出される高さデータを高さデータbとして説明する。
【0036】
特徴量抽出部933は取得された各観測画像から、当該観測画像の各画素が有する特徴量(例えば輝度値)を抽出する。本適用例では、観測画像aから抽出される特徴量データを特徴量データa、観測画像bから抽出される特徴量データを特徴量データbとして説明する。
【0037】
特徴量比較部934は、特徴量抽出部933によって抽出された特徴量データaと特徴量データbとを比較する。より具体的には、各観測画像において計測対象Oの同一の箇所を表す画素同士の特徴量の値を比較し、その値が大きい方の画素は観測画像aと観測画像bのいずれの画像の画素かを特定する。ここで、特徴量が輝度であった場合、より明るい、即ちより多くの光がカメラ92に入光した方の画像が特定されることになる。そして、計測対象Oにおいて傾斜を有する箇所がある場合には、当該傾斜に対向する方向からパターン光が照射されている側の画像の画素の方がより明るくなるため、ここから当該傾斜の向きを特定することが可能になる。特徴量比較部934はこのようにして傾斜の向きの特定に係るデータ(以下、傾斜方向データ)を生成する。
【0038】
合成データ作成部935は、高さデータa,b及び傾斜方向データから、三次元形状計測用の合成データを作成する。具体的には、高さデータa,bのプロファイルを所定の方法でつなげる、平均を取る、などの方法により合成して合成高さデータを生成し、これに対して傾斜方向データによる補正を行って、三次元形状のプロファイルデータを作成する。これにより、計測対象Oにおいて傾斜を有する箇所の向きが特定された三次元形状計測用のプロファイルデータを得る事ができる。
【0039】
三次元形状計測部936は、合成データ作成部935によって作成されたプロファイルデータに基づいて計測対象Oの三次元形状を計測する。
【0040】
(三次元形状計測処理の流れ)
次に、
図2を参照して、本適用例における三次元形状計測の手順について説明する。ま
ず、情報処理装置93はプロジェクタ91aを制御し、計測対象Oを中心とする円周上の第一の方向から、計測対象Oに対してパターンaを投影する(ステップS901)。次に、情報処理装置93は、カメラ92を制御して、第一の方向からパターンa光が照射されている状態の計測対象Oを撮影し、観測画像aを取得する(ステップS902)。
【0041】
次に、情報処理装置93はプロジェクタ91bを制御し、前記第一の方向と計測対象Oを挟んで対向する第二の方向から、計測対象Oに対してパターンbを投影する(ステップS903)。次に、情報処理装置93は、カメラ92を制御して、第二の方向からパターンbが投影されている状態の計測対象Oを撮影し、観測画像bを取得する(ステップS904)。
【0042】
次に、情報処理装置93は、取得した観測画像a,bから、高さデータa,bをそれぞれ算出し(ステップS905)、さらに各画像の画素が有する特徴量を抽出する(ステップS906)。情報処理装置93は、続けて、抽出した特徴量を比較してより大きな特徴量を有する画素を用いて傾斜方向データを作成する(ステップS907)。そして、得られた、高さデータa,b及び傾斜方向から、計測対象Oの三次元形状計測用の合成データを生成し(ステップS908)、当該合成データに基づいて傾斜部位OPを含む計測対象Oの三次元形状計測を行い(ステップS909)、一連の処理を終了する。なお、計測結果を図示しない表示装置に表示するようにしてもよい。また、特徴量の抽出は、必ずしも高さデータa,bを算出するための観測画像a,bから行う必要はなく、別途、特徴量抽出のための画像データを取得するようにしてもよい。
【0043】
以上のような、本適用例に係る三次元形状計測装置9の構成により、計測対象Oにおいて傾斜を有する部位OPがあった場合、傾斜の方向を特定した三次元形状プロファイルデータに基づいて、高精度な三次元形状の計測を行うことが可能になる。
【0044】
<実施形態1>
次に、本発明を実施するための形態の他の例である基板検査装置1について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0045】
(基板検査装置のハードウェア構成)
図3を参照して、本発明の実施形態に係る基板検査装置の全体構成について説明する。
図3は基板検査装置のハードウェア構成を示す模式図である。この基板検査装置1は、表面実装ラインにおける基板外観検査(例えば、リフロー後のはんだ接合状態の検査など)に利用される。
【0046】
基板検査装置1は、主な構成として、ステージ10、計測ユニット11、制御装置12、情報処理装置13、表示装置14を備える。計測ユニット11は、カメラ110、照明装置111、パターン投影装置(プロジェクタ)112を有している。
【0047】
ステージ10は、基板Kを保持し、検査対象となる部品KBやはんだKHをカメラ110の計測位置に位置合わせするための機構である。
図3に示すようにステージ10に平行にX軸とY軸をとり、ステージ10と垂直にZ軸をとった場合、ステージ10は少なくともX方向とY方向の2軸の並進が可能である。カメラ110は、光軸がZ軸と平行になるように配置されており、ステージ10上の基板Kを鉛直上方から撮像する。カメラ110で撮像された画像データは情報処理装置13に取り込まれる。
【0048】
照明装置111(111R,111G,111B)は、基板Kに対し異なる色(波長)
の照明光を照射する照明手段である。
図3は照明装置111のXZ断面を模式的に示したものであり、実際には、同じ色の光を全方位(Z軸回りの全方向)から照明可能なように照明装置111は円環状又はドーム形状を呈している。プロジェクタ112a,bは、基板Kに対し所定のパターンをもつパターン光を投影するパターン投影手段である。プロジェクタ112は、照明装置111の中腹に設けられた開口を通してパターン光を投射する。本実施形態では、基板Kを挟んで対角の位置に2つのプロジェクタ112を配置しているが、これ以上のプロジェクタを設けてもよい。照明装置111とプロジェクタ112はいずれもカメラ110で基板Kを撮影するときに用いられる照明系であるが、照明装置111ははんだなどの鏡面物体の表面形状を計測する目的で用いられ、プロジェクタ112は部品などの拡散物体の表面形状を計測する目的で用いられる。
【0049】
制御装置12は、基板検査装置1の動作を制御する制御手段であり、ステージ10の移動制御、照明装置111の点灯及び調光制御、プロジェクタ112a,bの点灯制御やパターン変更、カメラ110の撮像制御などを担っている。
【0050】
情報処理装置13は、カメラ110から取り込まれた画像データを用いて、部品KBやはんだKHに関する各種の計測値を取得したり、部品KBのはんだ接合の状態を検査する機能を有する装置である。表示装置14は、情報処理装置13で得られた計測値や検査結果を表示する装置である。情報処理装置13は、例えば、CPU、RAM、不揮発性の記憶装置、入力装置を有する汎用のコンピュータにより構成することができる。なお、
図3では、制御装置12と情報処理装置13と表示装置14を別のブロックで示したが、これらは別体の装置で構成してもよいし、単一の装置で構成してもよい。
【0051】
(機能構成)
図4は、情報処理装置13が提供する検査処理に関わる機能モジュールの構成を示すブロック図である。これらの機能モジュールは、情報処理装置13のCPUが補助記憶装置に格納されたプログラムを読み込み実行することにより実現されるものである。ただし、全部又は一部の機能をASICやFPGAなどの回路で構成してもよい。
【0052】
画像取得部131は、カメラ110から画像データを取り込む機能モジュールである。はんだ形状計測部132は、二次元の画像データからはんだなどの鏡面物体部分の三次元形状を復元する機能モジュールであり、部品形状計測部133は、二次元の画像データから部品などの拡散物体部分の三次元形状を復元する機能モジュールである。各々の復元処理で用いる画像データ及び復元アルゴリズムについては後述する。
【0053】
検査部134は、はんだ形状計測部132と部品形状計測部133で得られた三次元形状データを基に、はんだKHや部品KBの形状に関わる各種指標を計測し、これらの計測値を用いてはんだ接合の状態を検査する機能モジュールである。検査プログラム記憶部135は、検査部134における検査の項目や条件などを定義した検査プログラムを格納する機能モジュールである。検査プログラムには、例えば、検査対象のランドの位置及びサイズ、部品のサイズ、計測する指標の種類、指標ごとの判定基準値(良品と不良品を判定するための閾値や値域)などが定義されている。出力処理部136は、検査部134で得られた計測値や検査結果、部品KBやはんだKHの三次元形状などを表示装置14などへ外部出力する機能モジュールである。
【0054】
以下、はんだKH(鏡面物体)の三次元形状の復元方法と、部品KB(拡散物体)の三次元形状の復元方法をそれぞれ説明した後、情報処理装置13の検査処理の流れについて説明する。
【0055】
(はんだの三次元形状計測)
はんだKHの三次元形状の計測には、いわゆるカラーハイライト方式で得られる画像を利用する。カラーハイライト方式とは、複数の色(即ち、波長)の光を互いに異なる入射角で基板に照射し、はんだ表面にその法線方向に応じた色特徴(即ち、カメラから見て正反射方向にある光源の色)が現れるようにした状態で撮影を行うことにより、はんだ表面の三次元形状を二次元の色相情報として捉える方法である。画像の中から、R、G、Bの光源色が現れている領域のみを抽出して、R、G、Bの各領域の形状、幅、順番に基づいて、はんだ三次元形状を復元することができる。なお、三次元形状の復元には公知の手法を用いることができるため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0056】
まず、
図5を参照して、カラーハイライト方式に用いる照明装置111の構成を説明する。
図5は、照明装置111の各光源111R、111G、111Bの配置関係を模式的に示す平面概略図である。照明装置111は、赤色光源111R、緑色光源111G、青色光源111Bの3つの円環状の光源を、カメラ110の光軸を中心として同心円状に配置した構造を有している。各光源111R、111G、111Bは、赤色光、緑色光、青色光の順に基板Kに対する入射角が大きくなるよう、仰角及び向きが調整されている。このような照明装置111は、例えば、ドーム形状の拡散板の外側にR、G、B各色のLEDを円環状に配列することで形成できる。
【0057】
照明装置111を点灯した状態で、基板Kをカメラ110で撮影をすると、鏡面物体であるはんだKHの部分に、その法線方向(傾斜角)に応じた色特徴が現れる。例えば、部品電極から離れるにつれてはんだKHの傾斜が緩やかになっていくような場合には、はんだKHの領域にB→G→Rという色相の変化が現れる。R、G、B各色の領域の形状、幅、現れる順番などは、はんだKHの表面形状に依存して変化する。
【0058】
図6を参照して、本実施形態に係る照明装置111を点灯した状態で、カメラ110で基板を撮影した際に取得できるはんだ部分の画像について説明する。
図6Aは、基板K上の部品KBの電極部分とこれに接合されるはんだ部分(以下、はんだ付け部という)を側面から見た図である。
図6Aに示すように、当該事例のはんだKHは部品KBから延びる電極に対して充分に馴染んでおらず、接触面積が少なくなっている(即ち、不濡れの状態になっている)。
【0059】
図6Bは、照明装置111を点灯してカメラ110で撮影した場合のはんだ付け部の画像(以下、カラーハイライト画像という)である。
図6Bには、R、G、Bの各色の領域が示されている。
図6Bに示す画像からは、はんだと電極の接合部に傾斜(によって定義される斜面)が存在することが推測できるが、この斜面がどちらを向いているのか(即ち、濡れあがっているのか、不濡れの状態なのか)までは判別することができない。なお、部品KB本体や電極の表面では拡散反射が支配的となるため、R、G、Bのような光源色ではなく、白色光で照明したときと同じ物体自体の色が現れる。
【0060】
(部品の三次元形状計測)
一方、拡散物体である部品KBの三次元形状の計測には、位相シフト法を利用する。位相シフト法とは、パターン光を物体表面に投影したときのパターンの歪みを解析することにより物体表面の三次元形状を復元する手法の一つである。具体的には、プロジェクタ112a,bを用いて、所定のパターン(例えば、輝度が正弦波状に変化する縞状パターン)を基板に投影した状態でカメラ110で撮影を行う。そうすると基板Kの表面には、その凹凸に応じたパターンの歪みが現れる。この処理を、パターン光の輝度変化の位相を変化させながら複数回繰り返すことで、輝度特徴の異なる複数枚の画像(以下、パターン解析画像という)が得られる。各画像の同一画素の輝度は縞状パターンの変化と同一の周期で変化するはずであるから、各画素の輝度の変化に対して正弦波を当てはめることで、各画素の位相が分かる。そして、所定の基準位置(テーブル表面、基板表面など)の位相に
対する位相差を求めることで、その基準位置からの距離(即ち、高さ)を算出することができる。なお、プロジェクタ112aで投影したパターンをパターンa、プロジェクタ112bで投影したパターンをパターンbといい、それぞれのパターンを撮影した画像を観測画像a,観測画像bという。
【0061】
ここで、本実施形態においては、情報処理装置13は、観測画像aと観測画像bとを取得しており、プロジェクタ112a,bは、基板Kを挟んで対角の位置に設けられているため、観測画像aと観測画像bとは、正反対の方向からパターンが投影されたものとなる。このことから、適用例の場合と同様に、観測画像aと観測画像bから特徴量データを抽出して、比較を行うことで、はんだ付け部などの傾斜を有する部位の傾斜の方向を特定する、傾斜方向特定データを求めることができる。なお、傾斜方向特定データは適用例と同様の方法で生成可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0062】
そして、傾斜方向特定データによって、上述のカラーハイライト画像から得られるプロファイルデータを補正することにより、はんだKHと電極の接合部の斜面の方向を判別することが可能になる。
【0063】
図6Cは、このようにして作成された合成データに基づいて作成された特殊画像(以下、カラーハイライト補正画像という)の例を示している。カラーハイライト補正画像では、基本となる方向(より多くの面が向いている方向)の傾斜を、元のカラーハイライト画像と同じ赤色(R)、緑色(G)、青色(B)で表示し、基本となる方向とは反対向きの傾斜については、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)で表現されている。なお、ここでの色の選択は全くの任意であり、これら6色に限られるわけではないが、異なる色系統でありながらも類似する色を使用することによって、傾斜の程度が同一であることと、傾斜の向きが違うことを直感的に把握することができる。
【0064】
このようなカラーハイライト補正画像は、例えば表示装置14で表示可能にしておけば、ユーザーはカラーハイライト補正画像を見て、はんだ付け部の状態を容易に把握することが可能になる。
【0065】
(検査処理の流れ)
次に、
図7を用いて、基板検査装置1で行われる検査処理の流れを説明する。
図7は、検査処理の流れを示すフローチャートである。
【0066】
まず、制御装置12が検査プログラムに従ってステージ10を制御し、検査対象の部品KBおよびはんだKHを計測位置(カメラ110の視野)に移動させる(ステップS101)。そして、制御装置12が照明装置111を点灯し(ステップS102)、赤色光、緑色光、青色光を照射した状態でカメラ110による撮影処理を実行する(ステップS103)。得られた画像データ(カラーハイライト画像)は、画像取得部131により情報処理装置13に取り込まれる。
【0067】
次に、制御装置12がプロジェクタ112aからパターン光を投影し(ステップS104)、カメラ110で撮像を行う(ステップS105)。さらに、プロジェクタ112bからパターン光を投影し(ステップS106)、カメラ110で撮像を行う(ステップS107)。位相シフト法を利用する場合、パターン光の位相を変えながらステップS104からS107の処理が複数回実行される。得られた複数枚の画像データは、画像取得部131により情報処理装置13に取り込まれる。なお、本実施形態では、照明装置111での撮影を先に実行したが、プロジェクタ112での撮影を先に実行しても構わない。また、カメラ110の視野外に他の検査対象が存在する場合には、ステップS101~S107の処理を繰り返し実行してもよい。
【0068】
以降は、情報処理装置13で行われる処理となる。部品形状計測部133は、ステップS105、ステップS107で得られた観測画像a,bから、位相シフト法により、部品KBの三次元形状を復元する(ステップS108)。復元された三次元形状のデータは、例えば、各画素の高さ(Z位置)を画素値で表現した画像データ(高さマップと呼ぶ)の形式で保存される。
【0069】
はんだ形状計測部132は、ステップS103で得られたカラーハイライト画像から、はんだKH(及び部品KBの電極)の三次元形状を復元する(ステップS109)。さらに、はんだ形状計測部132は、パターン光を撮影した観測画像a,bから輝度値を抽出して、傾斜方向特定データを生成する(ステップS110)。復元された三次元形状のデータは、例えば、はんだKH領域内の各画素の高さ(Z位置)を画素値で表現した高さマップの形式で保存される。
【0070】
そして、これらの高さマップ及び傾斜方向特定データを合成することで、鏡面物体であるはんだKHと拡散物体である部品KBの両方の高さ情報を表す全体の高さマップを得ることができる。ここで、全体の高さマップには斜面の方向を特定されたことによる補正がかかっている。
【0071】
そして、検査部134が、全体の高さマップと検査プログラムの閾値とによって、基板Kの検査を実施する(ステップS111)。検査が終了すると、表示装置14は、検査の結果、及びステップS108で作成した合成データを視覚的に表現したカラーハイライト合成画像を表示し(ステップS112)、一連の処理を終了する。
【0072】
以上述べた本実施形態の基板検査装置によれば、鏡面物体であるはんだの三次元形状と、拡散物体である部品電極とを、それぞれに適した方法で復元するので、はんだと部品電極の両方について精度の高い三次元形状データを得ることができる。また、はんだの三次元形状の復元にあたっては、複数方向からパターンを投影したことによって得られた傾斜方向特定データによる補正を行うことで、傾斜を有する場所の当該傾斜面の向きを特定して三次元形状を復元するため、はんだの斜面の形状を精度よく復元できる。
【0073】
<その他>
上記実施形態は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明はその技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記の実施形態1においてはカラーハイライト画像に基づいて鏡面物体の三次元形状を、パターン投影画像に基づいて拡散物体の三次元形状をそれぞれ計測するようにしていたが、必ずしもこのようにする必要はなく、各画像に基づいて計測対象全体の形状を計測するためのプロファイルデータ2つを作成したうえで、これらのデータを合成するようにしてもよい。また、実施形態1においては、プロジェクタは固定されていたが、プロジェクタを鉛直軸回りに回転可能に構成するようにしてもよい。また、このような場合には、プロジェクタの数を一つとすることができる。
【0074】
また、上記実施形態では、カラーハイライト補正画像は傾斜の程度と方向を、色分けによって識別可能にするものであったが、色に限らず例えばハッチング等の模様の違いにより、これらを識別可能に表示する画像としてもよく、さらに色の違いと模様の違いとを組み合わせた画像としてもよい。
【0075】
<付記>
本発明の一の態様は、計測対象(O)に対して、前記計測対象に対する鉛直軸回りの角度が異なる複数の方向からパターン光を投影する投影手段(91a,91b)と、前記計
測対象を撮影する撮影手段(92)と、前記撮影手段によって撮影された画像に基づいて、前記計測対象の三次元形状を計測する計測手段(93)と、を有する三次元形状計測装置であって、
前記撮影手段は、前記複数の方向からパターン光が投影された複数の画像であって、前記計測対象において傾斜を有する部位における前記パターン光の強度を含む反射の態様が異なる複数のパターン投影画像を取得し、
前記計測手段は、前記複数のパターン投影画像を構成する各画素における所定の特徴量の各画像間の相違に基づいて、前記傾斜の方向を計測する、ことを特徴とする、三次元形状計測装置である。
【0076】
また、本発明の他の一の態様は、計測対象に対して、前記計測対象に対する鉛直軸回りの角度が異なる複数の方向からパターン光を投影する投影ステップ(S901,S903)と、前記計測対象を撮影する撮影ステップ(S902,S904)と、前記撮影手段によって撮影された画像に基づいて、前記計測対象の三次元形状を計測する計測ステップ(S909)と、を有する三次元形状計測方法であって、前記撮影ステップでは、前記複数の方向からパターン光が投影された複数の画像であって、前記計測対象において傾斜を有する部位における前記パターン光の強度を含む反射の態様が異なる複数のパターン投影画像を取得し、前記計測ステップでは、前記複数のパターン投影画像を構成する各画素における所定の特徴量の各画像間の相違に基づいて、前記傾斜の方向を計測する、ことを特徴とする三次元形状の計測方法である。
【符号の説明】
【0077】
1・・・基板検査装置
9・・・三次元形状計測装置
10・・・ステージ
11・・・検査ユニット
110、92・・・カメラ
111、91・・・照明装置
12・・・制御装置
13、93・・・情報処理装置
14・・・表示装置
K・・・基板
O・・・計測対象物