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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】制御システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20240326BHJP
   G05B 19/4063 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B25J19/06
G05B19/4063 L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020013454
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021120165
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】藤原 颯馬
(72)【発明者】
【氏名】吉光 亮
(72)【発明者】
【氏名】片山 啓
(72)【発明者】
【氏名】水島 隼人
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-38565(JP,A)
【文献】特開2003-211380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 19/06
G05B 19/4063
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットに設けられた複数の制御対象と、前記複数の制御対象を分散制御する分散制御システムと、を有する制御システムであって、
前記制御システムを構成する複数の機能部の異常の有無を管理する異常管理部と、
前記複数の機能部のそれぞれを表示部に表示する表示制御部と、
前記複数の制御対象のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記制御対象の運転を管理する運転管理部と、
前記運転管理部に対して指令信号を送信して、前記ロボットの動作モードを制御する動作モード管理部と、
を備え、
前記表示制御部は、前記複数の機能部のうち、異常が発生していない前記機能部を第1態様で前記表示部に表示し、異常が発生している前記機能部を前記表示部に前記第1態様とは異なる第2態様で表示し、
前記機能部は、少なくとも、前記各制御対象、前記各運転管理部及び前記動作モード管理部である
制御システム。
【請求項2】
前記異常管理部は、前記複数の機能部の異常の有無を管理するとともに、前記異常のレベルを前記機能部ごとに管理し、
前記表示制御部は、異常が発生している前記機能部を前記第2態様で表示する場合において、前記機能部に発生している前記異常のレベルが判別可能に表示する、
請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記表示制御部は、異常が発生していない前記機能部を第1の色で表示し、異常が発生している前記機能部を前記第1の色とは異なる第2の色で表示する、
請求項1又は請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記表示制御部は、異常が発生している前記機能部を前記第1の色とは異なる第2の色で表示するにあたって、前記異常のレベルに応じて前記第2の色が異なるように表示する、
請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記運転管理部は、対応する前記制御対象の異常の有無を判定してその判定結果を示す情報を含む異常ステータスを前記異常管理部に出力する第1判定機能と、自身の異常の有無を判定してその判定結果を示す情報を含む異常ステータスを前記異常管理部に出力する第2判定機能と、を有し、
前記動作モード管理部は、前記第2判定機能を有し、
前記異常管理部は、前記異常ステータスに基づいて、前記複数の機能部の異常の有無を管理する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項6】
前記異常管理部に出力される前記異常ステータスのすべては、所定のデータ型に統一されている、
請求項5に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ロボットに設けられた複数の制御対象(例えば、モータやセンサ等)と、その制御対象を分散制御する分散制御システムとを有する制御システムが開示されている。上記制御システムは、ロボットの搭載機器が異常か否かを自己診断して、異常と判定されたときにその異常情報を前記異常が発生した日時を付して出力する異常検知装置を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-211380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記制御システムは、ハードウェア構成の自由度が高いがゆえに、その構成が複雑化する。そのため、ユーザにとって、制御システムの内部のどこで異常が発生しているのかが把握できない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ロボットに設けられた複数の制御対象と、その制御対象を分散制御する分散制御システムとを有する制御システムにおいて、制御システムの内部のどこで異常が発生しているのかを把握できることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、ロボットに設けられた複数の制御対象と、前記複数の制御対象を分散制御する分散制御システムと、を有する制御システムであって、前記制御システムを構成する複数の機能部の異常の有無を管理する異常管理部と、前記複数の機能部のそれぞれを表示部に表示する表示制御部と、を備え、前記表示制御部は、前記複数の機能部のうち、異常が発生していない前記機能部を第1態様で前記表示部に表示し、異常が発生している前記機能部を前記表示部に前記第1態様とは異なる第2態様で表示する、制御システムである。
【0007】
(2)上記(1)の制御システムであって、前記異常管理部は、前記複数の機能部の異常の有無を管理するとともに、前記異常のレベルを前記機能部ごとに管理し、前記表示制御部は、異常が発生している前記機能部を前記第2態様で表示する場合において、前記機能部に発生している前記異常のレベルが判別可能に表示してもよい。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)の制御システムであって、前記表示制御部は、異常が発生していない前記機能部を第1の色で表示し、異常が発生している前記機能部を前記第1の色とは異なる第2の色で表示してもよい。
【0009】
(4)上記(3)のいずれかの制御システムであって、前記表示制御部は、異常が発生している前記機能部を前記第1の色とは異なる第2の色で表示するにあたって、前記異常のレベルに応じて前記第2の色が異なるように表示してもよい。
【0010】
(5)上記(1)から上記(4)のいずれかの制御システムであって、前記複数の制御対象のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記制御対象の運転を管理する運転管理部と、前記運転管理部に対して指令信号を送信して、前記ロボットの動作モードを制御する動作モード管理部と、をさらに備え、前記機能部は、少なくとも、前記各制御対象、前記各運転管理部及び前記動作モード管理部であってもよい。
【0011】
(6)上記(5)の制御システムであって、前記運転管理部は、対応する前記制御対象の異常の有無を判定してその判定結果を示す情報を含む異常ステータスを前記異常管理部に出力する第1判定機能と、自身の異常の有無を判定してその判定結果を示す情報を含む異常ステータスを前記異常管理部に出力する第2判定機能と、を有し、前記動作モード管理部は、前記第2判定機能を有し、前記異常管理部は、前記異常ステータスに基づいて、前記複数の機能部の異常の有無を管理してもよい。
【0012】
(7)上記(6)の制御システムであって、前記異常管理部に出力される前記異常ステータスのすべては、所定のデータ型に統一されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、ロボットに設けられた複数の制御対象と、その制御対象を分散制御する分散制御システムとを有する制御システムにおいて、制御システムの内部のどこで異常が発生しているのか把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る制御システム1の概略構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る表示部13における表示画面の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る表示部13における表示画面の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る表示部13における表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態に係る制御システム1を、図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る制御システム1の概略構成の一例を示す図である。図1に示すように、例えば、制御システム1は、ロボットに設けられている。前記ロボットは、産業用ロボットであってもよいし、産業用ロボット以外のロボットであってもよい。例えば、前記ロボットは、水中を移動する水中移動ロボットであってもよい。また、前記ロボットは、土木工事や建築工事に使用されるロボットであってもよく、例えば、重運搬車両、ショベルカー、ブルドーザあるいはクレーン車であってもよい。また、前記ロボットは、無人航空機であってもよい。なお、前記ロボットは、有人であってもよいし、無人であってもよい。
【0017】
制御システム1は、前記ロボットの動作を制御するシステムである。制御システム1は、慣性計測装置2、モータ3及び分散制御システム4を備える。慣性計測装置2は、本発明の「制御対象」の一例である。上記モータ3は、本発明の「制御対象」の一例である。
【0018】
慣性計測装置(IMU)2は、ロボットの位置、速度、姿勢および方位姿勢などを計測するものである。慣性計測装置2は、計測値Siを分散制御システム4に出力する。
【0019】
モータ3は、ロボットを移動させる駆動源である。なお、モータ3は、ロボットの移動方向を制御するアクチュエータを駆動するモータを含んでもよい。モータ3は、モータ3の状態を計測した計測値Smを分散制御システム4に出力する。ここで、モータ3は、モータの回転に応じたパルス信号を出力するエンコーダを有している。そして、計測値Smとは、例えば、前記エンコーダから出力されるパルス信号である。ただし、計測値Smは、エンコーダの出力に限定されず、モータ3の温度であってもよい。
【0020】
分散制御システム4は、ロボットに設けられた複数の制御対象(例えば、慣性計測装置2やモータ3)を分散制御する。分散制御システム4は、制御システム1を構成する各機能部に異常が発生した場合には、その異常に対処する処理(以下、「異常対処処理」という。)を実行する。例えば、上記異常の一例としては、モータ3の温度が上昇したなどのハードウェア的な異常やソフトウェアプロセスの処理負荷が大きく遅延が発生したなどのソフトウェア的な異常を想定する。例えば、本実施形態では、モータ3を停止することで異常に対処したとみなす。制御システム1を構成する各機能部とは、制御対象及び分散制御システム4を構成する複数の機能部のそれぞれである。機能部とは、1つの機能や動作を処理する単位を意味し、これは、ハードウェアまたはソフトウェアとして具現されてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで具現されてもよい。
【0021】
分散制御システム4は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)などのプロセッサ及び不揮発性又は揮発性の半導体メモリ(例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory))を備えてもよい。例えば、分散制御システム4は、MCUなどのマイクロコントローラであってもよい。
【0022】
以下において、分散制御システム4の各機能部について、説明する。
【0023】
分散制御システム4は、複数の運転管理部10(運転管理部10-1,10-1)、動作モード管理部11、異常管理部12、表示部13及び表示制御部14を備える。
【0024】
運転管理部10は、複数の制御対象のそれぞれに1対1で対応して設けられ、その対応する制御対象の運転を管理する。各運転管理部10は、対応する制御対象の計測値を受信し、その計測値に基づいて、当該制御対象の異常の有無を判定する第1判定機能を有する。そして、各運転管理部10は、制御対象の識別情報と、第1判定機能の判定結果(異常の有無)を示す情報とを含む異常ステータスを異常管理部12に出力する。異常ステータスは、計測値を取得した時間の情報を含んでもよい。例えば、異常ステータスは、時間(例えば、32ビット符号なし整数)及び異常の有無(bool型の8ビット符号なし整数(False:異常なし,True:異常あり))が含まれたデータであってもよい。運転管理部10は、自身の異常の有無を判定する第2判定機能(いわゆる自己診断機能)を有している。そして、運転管理部10は、当該運転管理部10の識別情報と、第2判定機能の判定結果(異常の有無)を示す情報とを含む異常ステータスを異常管理部12に出力する。ここで、すべての運転管理部10から異常管理部12に送信される異常ステータスは、すべて同一のデータ型である。
【0025】
運転管理部10-1は、慣性計測装置2に接続されている。運転管理部10-1は、慣性計測装置2にコマンドを送信することで、慣性計測装置2から計測値Siを受信する。ここで、慣性計測装置2と運転管理部10-1との通信が確立していれば、慣性計測装置2は、コマンドの受信によらず、計測値Siを運転管理部10-1に送信してもよい。このような場合には、運転管理部10-1は、コマンドを送信する必要はなく、慣性計測装置2から計測値Siを受信する。運転管理部10-1は、計測値Siに基づいて慣性計測装置2の異常の有無を定期的に判定し、その判定結果の情報と慣性計測装置2の識別情報とを含む異常ステータスを異常管理部12に出力する(第1判定機能)。例えば、運転管理部10-1は、慣性計測装置2の状態(計測エラーや温度上昇等)を定期的に監視し、慣性計測装置2に異常がないかをチェックする。さらに、運転管理部10-1は、自身(運転管理部10-1)における異常の有無を定期的に判定し、その判定結果の情報である異常有無情報と運転管理部10-1の識別情報とを含む異常ステータスを異常管理部12に出力する(第2判定機能)。
【0026】
運転管理部10-2は、モータ3に接続されている。運転管理部10-2は、モータ3にコマンドを送信することで、モータ3から計測値Smを受信する。ここで、モータ3と運転管理部10-2との通信が確立していれば、モータ3は、コマンドの受信によらず、計測値Smを運転管理部10-2に送信してもよい。このような場合には、運転管理部10-2は、コマンドを送信する必要はなく、モータ3から計測値Smを受信する。運転管理部10-2は、計測値Smに基づいてモータ3の異常の有無を定期的に判定し、その判定結果の情報とモータ3の識別情報とを含む異常ステータスを異常管理部12に出力する(第1判定機能)。運転管理部10-2は、自身(運転管理部10-2)における異常の有無を定期的に判定し、その判定結果の情報と運転管理部10-2の識別情報とを含む異常ステータスを異常管理部12に出力する(第2判定機能)。
また、運転管理部10-2は、動作モード管理部11からの指令に基づいてモータ3の駆動を制御する。例えば、運転管理部10-2は、動作モード管理部11から停止指令を受信した場合にはモータ3の駆動を停止させる。
【0027】
動作モード管理部11は、運転管理部10に対して指令信号を送信して、ロボットの動作モードを制御する。一例として、動作モードは、自律移動モードと緊急停止モードとを有する。動作モード管理部11は、ロボットの動作モードを、自律移動モード又は緊急停止モードに切り替える機能を有している。自律移動モードとは、ロボットを予め設定された経路に沿って自律移動させるモードである。緊急停止モードとは、ロボットの自律移動を停止して自律移動を禁止するモードである。動作モード管理部11は、切り替えた動作モードで動作させる指令信号(以下、「動作モード指令」という。)を運転管理部10-2に出力する。運転管理部10-2は、動作モード指令が自律移動モードを示すものである場合には経路追従制御を実行し、動作モード指令が緊急停止モードを示すものである場合にはモータ3の駆動を停止させて経路追従制御を禁止する。
【0028】
動作モード管理部11は、自身(動作モード管理部11)における異常の有無を定期的に判定し、その判定結果の情報と動作モード管理部11の識別情報とを含む異常ステータスを異常管理部12に出力する自己診断機能を有する。
【0029】
異常管理部12は、異常ステータス収集部20及び異常状態管理部21を備える。
【0030】
異常ステータス収集部20は、運転管理部10-1,10-2のそれぞれと接続されている。異常ステータス収集部20は、運転管理部10-1,10-2のそれぞれと同一の通信方式で通信する。この通信は、LAN通信でもよいし、シリアル通信であってもよい。さらに、異常ステータス収集部20に入力される異常ステータスのデータ型は、所定のデータ型でなければならない。本実施形態では、運転管理部10-1,10-2から異常ステータス収集部20に送信される各異常ステータスは、bool型であり、異常がある場合にはTrueであり、異常がない場合にはFalseとなるように、すべて統一されている。
【0031】
異常ステータス収集部20は、運転管理部10-1,10-2から送られてくる各異常ステータスを収集する。そして、異常ステータス収集部20は、収集した各異常ステータスを異常状態管理部21に送信する。なお、異常ステータス収集部20は、重複する異常ステータスを無視する等の処理を行って、必要最低限の異常ステータスのみを異常状態管理部へ送信してもよい。
【0032】
異常状態管理部21は、制御システム1を構成する複数の機能部の異常の有無を管理する。例えば、複数の機能部とは、慣性計測装置2、モータ3、運転管理部10-1、運転管理部10-2及び動作モード管理部11である。なお、複数の機能部は、異常管理部12及び表示制御部14をさらに有してもよい。
【0033】
例えば、異常状態管理部21は、例えばステートマシンである。異常状態管理部21は、異常ステータス収集部20から送られてくる異常ステータスに基づいて、制御システム1を構成する複数の機能部のそれぞれに異常が発生しているか否かを判定する異常判定処理を実行する。そして、異常状態管理部21は、異常判定処理において、いずれかの機能部に異常が発生していると判定した場合には、当該異常を対処するための動作モード(以下、「異常対処動作モード」という。)を示す情報を動作モード管理部11に出力する。ここで、異常対処動作モードは、例えば、緊急停止モードである。動作モード管理部11は、水中移動ロボットの動作モードを、異常状態管理部21から送られてきた緊急停止モードに制御する。
【0034】
また、異常状態管理部21は、異常判定処理において、異常ステータスに含まれる識別情報と異常の有無を示す情報とに基づいて異常が発生している機能部を特定し、その特定した機能部(以下、「異常機能部」という。)に異常が発生していることを示す情報(以下、「異常機能部情報」という。)を表示制御部14に出力する。
【0035】
表示部13は、情報を表示画面に表示する。例えば、表示部13は、表示制御部14の制御の下、各種情報を表示する。表示部13は、パーソナルコンピュータ用のモニタであってよいし、携帯情報端末の表示デバイスであってもよい。
【0036】
表示制御部14は、制御システム1を構成する複数の機能部のそれぞれを表示部13の表示画面に表示する。具体的には、表示制御部14は、制御システム1を構成する複数の機能部のそれぞれをブロック(以下、「機能ブロック」という。)で表し、その各機能ブロックを表示部13の表示画面に表示する。図2は、表示部13における表示画面の一例を示す図である。例えば、表示制御部14は、各機能の機能ブロックをGUI(GUI:Graphical User Interface/グラフィカルユーザーインタフェース)で表示する。
【0037】
表示制御部14は、制御システム1を構成する複数の機能部のうち、異常が発生していない機能部の機能ブロックを第1態様で表示部13に表示し、異常が発生している機能部の機能ブロックを第1態様とは異なる第2態様で表示部13に表示する。一例として、表示制御部14は、異常が発生していない機能部を第1の色(例えば、白又は緑)で表示し、異常が発生している機能部を第1の色とは異なる第2の色(例えば、黄色又は赤色)で表示する。これにより、ユーザは、表示部13の表示画面を確認することで、制御システム1の内部のどこで異常が発生しているのかを視覚的に確認できる。
【0038】
例えば、モータ3のみに異常が発生したとする。この場合には、運転管理部10-2は、計測値Smに基づいてモータ3に異常が発生していると判定し、その判定結果の情報とモータ3の識別情報とを含む異常ステータスを異常管理部12に出力する。異常管理部12は、複数の運転管理部10及び動作モード管理部11から送信されてくる異常ステータスの中から、運転管理部10-2からの異常ステータスに基づいて、モータ3に異常が発生していると判定する。異常管理部12は、モータ3に異常が発生していることを示す異常機能部情報を表示制御部14に出力する。表示制御部14は、慣性計測装置2、運転管理部10-1,10-2、動作モード管理部11、異常管理部12及び表示制御部14のそれぞれに対応する各機能ブロックを第1の色で塗りつぶし、モータ3に対応する機能ブロックを第2の色で塗りつぶす(図3)。これにより、ユーザは、表示部13の表示画面を確認することで、制御システム1の内部のどこで異常が発生しているのかを視覚的に確認できる。
【0039】
次に、本実施形態に係る分散制御システム4の異常対処処理の動作について説明する。
【0040】
分散制御システム4は、制御対象に異常が発生していない場合には、ロボットを自律移動モードに遷移させて、現在位置から目標地点へと移動させている。すなわち、分散制御システム4は、制御システム1の各機能部に異常が発生していない場合には、ロボットを現在位置から目標地点までの経路に沿って移動させる。各運転管理部10は、対応する制御対象に異常が発生しているか否かを判定し、その判定結果と、その対応する制御対象の識別情報とを含む異常ステータスを定期的に異常管理部12に送信している。また、各運転管理部10は、自身の異常の有無を判定し、判定結果と自身の識別情報とを含む異常ステータスを定期的に異常管理部12に送信している。動作モード管理部11は、自身の異常の有無を判定し、判定結果と自身の識別情報とを含む異常ステータスを定期的に異常管理部12に送信している。異常管理部12は、自身の異常の有無を判定している。
【0041】
異常管理部12は、各機能部から異常ステータスを取得し、その異常ステータスに基づいて、異常が発生している否かを判定する異常判定処理を実行する。異常管理部12は、異常判定処理の結果、異常が発生していると判定した場合には、異常が発生したことを示す異常有り情報と、異常時の動作モード(異常対処動作モード)である緊急停止モードと、を動作モード管理部11に通知する。さらに、異常管理部12は、異常が発生している機能部の情報である異常機能部情報を表示制御部14に出力する。表示制御部14は、異常機能部情報に基づいて、制御システム1を構成する複数の機能部のうち、異常が発生していない機能部の機能ブロックを第1態様で表示部13に表示し、異常が発生している機能部の機能ブロックを第1態様とは異なる第2態様で表示部13に表示する。なお、表示制御部14は、異常が発生している機能部の異常が解消された場合には、その機能部の機能ブロックを第1態様で表示部13に表示する。
【0042】
なお、動作モード管理部11は、異常管理部12から異常が発生したことを示す異常有り情報と、異常時の動作モード(異常対処動作モード)である緊急停止モードと、の通知を受け取ると、現在のロボットの動作モードを緊急停止モードに切り替える。ロボットの動作モードが緊急停止モードに切り替えられると、運転管理部10-2は、モータ3の駆動を停止させて経路追従制御を禁止する。
【0043】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0044】
(変形例1)ロボットが水中移動ロボットの場合には、動作モードは、自律移動モード及び緊急停止モードの他に、浮上モードを有してもよい。そして、異常状態管理部21は、異常対処動作モードとして、浮上モードを動作モード管理部11に通知してもよい。動作モード管理部11は、異常状態管理部21から異常有り情報と浮上モードとの通知を受け取ると、現在の水中移動ロボットの動作モードを浮上モードに切り替える。これにより、水中移動ロボットは、自律移動を停止して水中から水面に浮上する。
【0045】
(変形例2)上記異常ステータスは、異常のレベル(重篤度)に応じて異常の種類を示す情報を有してもよい。そして、異常状態管理部21は、異常判定処理にて異常が発生していると判定した場合において、その異常機能部情報に、異常のレベルを含めて表示制御部14に出力してもよい。そして、表示制御部14は、異常が発生している機能部の機能ブロックを第2態様で表示する場合において、その機能部に発生している異常のレベルが判別可能に表示してもよい。一例として、表示制御部14は、異常が発生している機能部の機能ブロックを第1の色とは異なる第2の色で表示するにあたって、異常のレベルに応じて第2の色が異なるように表示してもよい。例えば、表示制御部14は、異常が発生していない(正常な状態の)機能部の機能ブロックを緑色で表示し、異常が発生している機能部のうち、異常のレベルが警告状態のレベルである機能部の機能ブロックを黄色で表示し、異常が発生している機能部のうち、異常のレベルがエラーやFatalの状態のレベルである機能部の機能ブロックを赤色で表示してもよい。
例えば、異常のレベルは、運転管理部10の処理負荷が増大して遅延が発生した場合などのソフトウェアの異常が発生した場合には警告状態としモータ3がそもそも動いていないなどのハードウェアの異常が発生した場合にはエラーやFatalの状態となる。
【0046】
(変形例3)分散制御システム4は、1つのハードウェアで動作してもよいし、別々のハードウェアで動作してもよい。別ハードウェアで動作させるときはNTP(Network Time Protocol)やPTP(Precision Time Protocol)を使って時刻を同期しておくことが望ましい。さらに、運転管理部10と動作モード管理部11とが別々のハードウェアで動作してもよい。異常管理部12、運転管理部10及び動作モード管理部11のそれぞれが別々のハードウェアで動作してもよい。それぞれ別ハードウェアで動作させるときはNTPやPTPを使ってすべてのハードウェアにおいて時刻を同期しておくことが望ましい。
【0047】
(変形例4)異常管理部12は、取得した異常ステータスのログを保存してもよい。
【0048】
(変形例5)異常ステータスは、異常の種類(ASCII文字列)及び異常の概要(ASCII文字列)を全て、又は少なくとも1つ以上を異常の有無及び識別情報に加えて更に有してもよい。
【0049】
(変形例6)表示制御部14は、機能ブロック間の接続関係や情報(例えば、異常ステータスを構成する識別情報及び異常の有無)のやり取りをGUI上で視覚的にわかるように表示してもよい。
【0050】
(変形例7)表示制御部14は、GUIの背景の色を変更するのみならず、文字の色、文字のフォント及び文字の大きさの少なくともいずれかを変更してもよい。また、表示制御部14は、異常状態のレベルに応じて作業者に異常を知らせるための音を出力してもよい。
【0051】
(変形例8)表示制御部14は、上位の機能部に異常が起きた場合には、その機能部の下位の機能部を全てエラーとして表示部13に表示してもよい(図4)。図4では、動作モード管理部11に異常が起きた場合の例を示す。
【0052】
(変形例9)異常から復帰する場合には、異常管理部12は、リアルタイムに異常ステータスと異常が発生した機能部の識別情報を取得する。その際、表示制御部14におけるGUIは、異常から復帰する過程をリアルタイムで表示部13に表示してもよい。
【0053】
以上、説明したように、表示制御部14は、複数の機能部のうち、異常が発生していない機能部の機能ブロックを第1態様で表示部13に表示し、異常が発生している機能部を第1態様とは異なる第2態様で表示部13に表示する。
【0054】
このような構成によれば、制御システム1の内部のどこで異常が発生しているのかを分かりやすくすることができる。
【0055】
さらに、本実施形態に係る分散制御システム4は、分散制御システム4の一部を変更するだけで、異常対処処理を追加、変更又は削除可能である。例えば、慣性計測装置2から慣性航法装置に変更したとする。この場合には、運転管理部10-1を慣性航法装置の運転管理部10に変更するだけで、異常ステータスや異常管理部12には変更の必要がない。
【0056】
なお、上述した分散制御システム4の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、上記コンピュータは、CPU、GPUなどのプロセッサ及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えてもよい。そして、上記分散制御システム4の全部または一部の機能をコンピュータで実現するためのプログラムを上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムを上記プロセッサに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。ここで、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 制御システム
4 分散制御システム
10 運転管理部
11 動作モード管理部
12 異常管理部
13 表示部
14 表示制御部
図1
図2
図3
図4