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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ベルト駆動装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/02 20060101AFI20240326BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20240326BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20240326BHJP
   G03G 21/20 20060101ALI20240326BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20240326BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240326BHJP
   B65H 5/02 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B41J11/02
G03G21/16 147
G03G15/20 555
G03G15/20 505
G03G21/20
G03G21/14
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B65H5/02 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020021143
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021126779
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新田 晃平
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-192733(JP,A)
【文献】特開平09-034307(JP,A)
【文献】特開2008-143040(JP,A)
【文献】特開2011-190036(JP,A)
【文献】特開2019-136865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
G03G 13/00
G03G 21/16- 21/18
G03G 13/20
G03G 15/20
B65H 5/02
B65H 5/06
B65H 5/22
B65H 29/12- 29/24
B65H 29/32
B41J 2/01
B41J 2/165- 2/20
B41J 2/21- 2/215
B41J 11/00- 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトと、
前記ベルトを駆動するベルト駆動部と、
前記ベルトを加熱する加熱部と、
前記ベルトに対する前記加熱部の位置を変化させる位置可変部と、
前記ベルト駆動部による前記ベルトの駆動状態に応じて前記位置可変部を制御する制御部と、
を備え、
前記位置可変部は、前記加熱部を揺動可能に支持する第1の支持軸を有し、前記第1の支持軸を中心に前記加熱部を揺動させることにより、前記ベルトの加熱対象部に対する前記加熱部の加熱面の角度を変化させる
ベルト駆動装置。
【請求項2】
前記ベルトの駆動状態は、前記ベルト駆動部が前記ベルトを駆動している場合と前記ベルトを駆動していない場合とを含む
請求項1に記載のベルト駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ベルト駆動部が前記ベルトを駆動している場合には前記ベルトを駆動していない場合に比べて前記加熱部から前記ベルトへ伝えられる熱の量が少なくなるように、前記位置可変部を制御する
請求項2に記載のベルト駆動装置。
【請求項4】
前記ベルト駆動部の駆動状態は、前記ベルトの移動速度である
請求項1に記載のベルト駆動装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ベルトの移動速度が遅い場合には速い場合に比べて前記加熱部から前記ベルトへ伝えられる熱の量が少なくなるように、前記位置可変部を制御する
請求項4に記載のベルト駆動装置。
【請求項6】
前記加熱部は、非接触型のヒータによって構成されている
請求項1~5のいずれか一項に記載のベルト駆動装置。
【請求項7】
前記位置可変部は、前記ベルトの加熱対象部と前記加熱部の加熱面との間の離間距離を変化させる
請求項1~6のいずれか一項に記載のベルト駆動装置。
【請求項8】
前記位置可変部は、前記ベルトに対して前記加熱部を接近離間する方向に移動可能に支持する第2の支持軸を有し、前記第2の支持軸に沿って前記加熱部を移動させることにより、前記離間距離を変化させる
請求項7に記載のベルト駆動装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記ベルト駆動部が前記ベルトを駆動している場合には前記加熱部の加熱面が前記ベルトの方向を向き、前記ベルト駆動部が前記ベルトを駆動していない場合には前記加熱部の加熱面が前記ベルトの方向を向かないように、前記位置可変部を制御する
請求項1に記載のベルト駆動装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記ベルト駆動部が前記ベルトを駆動している場合には前記ベルトを駆動していない場合に比べて前記離間距離が短くなるように、前記位置可変部を制御する
請求項7または8に記載のベルト駆動装置。
【請求項11】
前記ベルトの温度を検出する温度検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記温度検出部の検出結果に基づいて前記位置可変部を制御する
請求項1~10のいずれか一項に記載のベルト駆動装置。
【請求項12】
記録媒体を搬送するベルトと、
前記ベルトを駆動するベルト駆動部と、
前記ベルトによって搬送される前記記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記ベルトを加熱する加熱部と、
前記ベルトに対する前記加熱部の位置を変化させる位置可変部と、
前記ベルト駆動部による前記ベルトの駆動状態に応じて前記位置可変部を制御する制御部と、
を備え、
前記位置可変部は、前記加熱部を揺動可能に支持する第1の支持軸を有し、前記第1の支持軸を中心に前記加熱部を揺動させることにより、前記ベルトの加熱対象部に対する前記加熱部の加熱面の角度を変化させる
画像形成装置。
【請求項13】
前記ベルトの表面には感熱型の地張り剤によって粘着層が形成され、
前記加熱部は前記ベルトの前記粘着層を加熱することにより、前記粘着層の粘着力を高める
請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記加熱部のオンオフ状態を制御するとともに、前記画像形成部による印刷ジョブの実行中に前記加熱部をオン状態とし、前記印刷ジョブの終了時に前記加熱部をオフ状態とする
請求項12または13に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記ベルト駆動部が前記ベルトを駆動している場合には前記ベルトを駆動していない場合に比べて前記加熱部から前記ベルトへ伝えられる熱の量が少なくなるように、前記位置可変部を制御する
請求項12~14のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト駆動装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタなどの記録装置に関して、たとえば特許文献1には、記録媒体を搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトに載って搬送される記録媒体に液体を付着させて記録を施す記録ヘッドと、搬送ベルトを加熱する加熱部とを備える記録装置に関する発明が記載されている。
【0003】
記録媒体の搬送などに用いられるベルトを加熱部によって常時加熱すると、たとえばベルトの駆動を停止した場合に、ベルトの一部に加熱部の熱が集中的に加えられるため、ベルトが過度に加熱されてしまう。また、印刷ジョブの終了時にベルトの駆動を停止し、併せて加熱部(ヒータ等)への給電を停止しても、加熱部の余熱によってベルトの一部が過度に加熱されるおそれがある。特許文献1に記載の発明では、加熱手段によって加熱されるベルトの部分を冷却手段によって冷却する構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-226755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明のように、加熱手段とは別に冷却手段を設けた場合は、冷却手段の追加によって装置の構成が複雑になるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、加熱手段とは別に冷却手段を設けなくても、ベルトの過熱を抑制することができるベルト駆動装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るベルト駆動装置は、ベルトと、ベルトを駆動するベルト駆動部と、ベルトを加熱する加熱部と、ベルトに対する加熱部の位置を変化させる位置可変部と、ベルト駆動部によるベルトの駆動状態に応じて位置可変部を制御する制御部とを備え、位置可変部は、加熱部を揺動可能に支持する第1の支持軸を有し、第1の支持軸を中心に加熱部を揺動させることにより、ベルトの加熱対象部に対する加熱部の加熱面の角度を変化させる。
【0010】
本発明に係る画像形成装置は、記録媒体を搬送するベルトと、ベルトを駆動するベルト駆動部と、ベルトによって搬送される記録媒体に画像を形成する画像形成部と、ベルトを加熱する加熱部と、ベルトに対する加熱部の位置を変化させる位置可変部と、ベルト駆動部によるベルトの駆動状態に応じて位置可変部を制御する制御部とを備え、位置可変部は、加熱部を揺動可能に支持する第1の支持軸を有し、第1の支持軸を中心に加熱部を揺動させることにより、ベルトの加熱対象部に対する加熱部の加熱面の角度を変化させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱手段とは別に冷却手段を設けなくても、ベルトの過熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置が備えるベルト駆動装置の構成を示す概略側面図(その1)である。
図3】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置が備えるベルト駆動装置の構成を示す概略側面図(その2)である。
図4】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の制御構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の制御方法を説明するフローチャートである。
図6】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の動作手順を示すタイミングチャートである。
図7】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置が備えるベルト駆動装置の構成を示す概略側面図(その1)である。
図8】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置が備えるベルト駆動装置の構成を示す概略側面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する構成要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
[第1実施形態]
<画像形成装置の概略構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図1に示すように、画像形成装置10は、記録媒体11にインクを吐出して画像を形成するインクジェット記録装置である。画像形成装置10は、ベルト駆動装置12と、画像形成部14とを備えている。
【0015】
(ベルト駆動装置)
ベルト駆動装置12は、ベルト20と、このベルト20を駆動するベルト駆動部23と、を備えている。ベルト駆動部23は、駆動ローラ21および従動ローラ22を用いて構成されている。ベルト20は、無端状のベルトであり、駆動ローラ21と従動ローラ22との間にループ状に掛け渡されている。ベルト20は、記録媒体11をY方向に搬送するものである。このため、記録媒体11の搬送方向はY方向となる。記録媒体11はベルト20の移動にしたがって搬送される。以降の説明では、Y方向を搬送方向Yとも記す。
【0016】
駆動ローラ21と従動ローラ22は、互いに平行に配置されている。駆動ローラ21は、図示しない搬送用モータの駆動によってA方向に回転駆動されるローラである。搬送用モータは、駆動ローラ21および従動ローラ22と共にベルト駆動部23を構成するものである。搬送用モータは、記録媒体11を搬送するための駆動源となる。ベルト20は、駆動ローラ21の回転にしたがって周回移動する。ベルト20は、従動ローラ22から駆動ローラ21へと向かう往路側ではy1方向に移動し、駆動ローラ21から従動ローラ22へと向かう復路側ではy2方向に移動する。従動ローラ22は、駆動ローラ21の回転にともなうベルト20の移動にしたがって回転するローラである。従動ローラ22の回転方向は、駆動ローラ21と回転方向Aと同じである。
【0017】
駆動ローラ21の軸にはロータリーエンコーダ25が取り付けられている。ロータリーエンコーダ25は、図示はしないが、駆動ローラ21に同心に取り付けられる円板と、この円板の外周近傍に固定的に設置される検出部とを備える。円板は駆動ローラ21と一体に回転する。円板の外周部には、円周方向に等間隔で多数のスリットが形成される。検出部は、回転する円板のスリットの通過を検出する。また、検出部は、スリットの通過を検出する毎にパルス信号を出力する。検出部が単位時間に出力するパルス信号の数は、ベルト20の移動速度にしたがって変化する。したがって、検出部が単位時間に出力するパルス信号の数を計数することにより、ベルト20の移動速度を正確かつリアルタイムに把握することができる。なお、本実施形態では、ベルト20の移動速度を把握するためにロータリーエンコーダ25を用いているが、これ以外のもの、たとえば、レーザードップラー測定器などを用いてもよい。
【0018】
ベルト駆動装置12には、第1のベルトガイド15と、第2のベルトガイド16とが設けられている。第1のベルトガイド15および第2のベルトガイド16は、ベルト20が駆動ローラ21や従動ローラ22から逸脱することを抑制するためのガイドである。第1のベルトガイド15は駆動ローラ21の近傍に配置され、第2のベルトガイド16は従動ローラ22の近傍に配置されている。また、第1のベルトガイド15は、ベルト20の移動方向y1において駆動ローラ21の上流側に配置され、第2のベルトガイド16は、ベルト20の移動方向y2において従動ローラ22の上流側に配置されている。第1のベルトガイド15および第2のベルトガイド16は、たとえば、金属板などで構成されるもので、ベルト20の幅方向の両端部に側方から押し当てられる。第1のベルトガイド15は、従動ローラ22から駆動ローラ21へと向かう往路上でベルト20の両端部に接触することにより、ベルト20が駆動ローラ21から逸脱することを抑制する。第2のベルトガイド16は、駆動ローラ21から従動ローラ22へと向かう復路上でベルト20の両端部に接触することにより、ベルト20が従動ローラ22から逸脱することを抑制する。
【0019】
(加熱部)
ベルト駆動装置12には、加熱部の一例として、ヒータ17が設けられている。ヒータ17は、ベルト20の幅方向に長い長尺状のヒータである。図2に示すように、ヒータ17は、従動ローラ22に巻き掛けられたベルト20と対向するように、従動ローラ22の近傍に配置されている。ヒータ17は、非接触型のヒータである。非接触型のヒータとは、加熱対象部に対して非接触に配置されるヒータをいう。本実施形態では、従動ローラ22に巻かれるベルト20の一部を加熱対象部20aとし、この加熱対象部20aをヒータ17によって加熱する。このため、非接触型のヒータ17は、ベルト20の加熱対象部20aから所定の距離だけ離れた位置に配置されている。なお、ベルト20はベルト駆動装置12の駆動によって周回移動する。このため、周回移動するベルト20の加熱対象部20aをヒータ17によって加熱することにより、ヒータ17の熱をベルト20全体に伝えてベルト20の温度を上げることができる。
【0020】
一方、記録媒体11は、ベルト20の表面に載せて搬送される。このため、ベルト20の表面は、記録媒体11を搬送するための搬送面となる。ベルト20の表面には図示しない粘着層が形成されている。この粘着層は、感熱型の地張り剤によって形成されるもので、記録媒体11をベルト20に密着させるための層となる。ヒータ17は、ベルト20の粘着層を加熱することにより、粘着層の粘着力を高める。ヒータ17としては、たとえば赤外線ヒータを用いることができる。ヒータ17は加熱面17aを有している。ヒータ17が発生する熱は、ヒータ17が備える反射部材(図示せず)の反射面によって所定の方向Hに放出される。すなわち、ヒータ17は反射式のヒータである。ヒータ17の熱が放出される方向Hは、加熱面17aとほぼ垂直な方向である。
【0021】
(位置可変部)
ヒータ17は、図2に示すように、位置可変部18によって支持されている。位置可変部18は、ベルト20に対するヒータ17の位置を変化させるものである。位置可変部18は、ヒータ17を揺動可能に支持する支持軸19を有している。支持軸19は、第1の支持軸の一例として位置可変部18に設けられている。位置可変部18は、たとえば、モータなどの駆動源を有し、この駆動源の駆動力を、たとえば歯車伝達機構などの動力伝達機構を介して支持軸19に伝達することにより、ヒータ17の位置を変化させる。本実施形態では、支持軸19を中心にヒータ17が揺動することによってヒータ17の位置が変化する構成になっている。
【0022】
支持軸19は、ヒータ17の短手方向の一端部に配置されている。支持軸19を中心にヒータ17を揺動させると、ベルト20の加熱対象部20aに対するヒータ17の加熱面17aの角度が変化する。図2に示すように、支持軸19を中心にヒータ17をθ1方向に揺動させると、ヒータ17の加熱面17aがベルト20の加熱対象部20aと対向する向きに配置される。このようにヒータ17を揺動させた場合は、ヒータ17の加熱面17aがベルト20の方向を向いた状態となる。また、図3に示すように、支持軸19を中心にヒータ17をθ2方向に揺動させると、ヒータ17の加熱面17aがベルト20の加熱対象部20aと対向しない向きに配置される。このようにヒータ17を揺動させた場合は、ヒータ17の加熱面17aがベルト20の方向を向かないように配置される。
【0023】
図2に示すようにヒータ17を配置した場合は、ヒータ17の熱が放射される方向Hにベルト20の加熱対象部20aが存在するため、ヒータ17からベルト20へ伝えられる熱の量が多くなる。これに対して、図3に示すようにヒータ17を配置した場合は、ヒータ17の熱が放射される方向Hにベルト20の加熱対象部20aが存在しないため、ヒータ17からベルト20へ伝えられる熱の量が少なくなる。
【0024】
(画像形成部)
再び図1に戻って説明すると、画像形成部14は、複数のプリントユニットPU(PU1~PU6)を備えている。本実施形態では、一例として画像形成部14が6つのプリントユニットPU1~PU6を備えた構成となっている。各々のプリントユニットPU1~PU6は、ベルト20によって搬送される記録媒体11に対して、互いに異なる色のインクを吐出することにより、記録媒体11の記録面に画像を形成するものである。プリントユニットPU1~PU6は、それぞれキャリッジ26を有している。キャリッジ26は、図示しない複数の記録ヘッドを有し、各々の記録ヘッドのノズルからインクが吐出する構成となっている。6つのプリントユニットPU1~PU6は、駆動ローラ21と従動ローラ22との間に、ベルト20の長手方向に沿って配列されている。また、6つのプリントユニットPU1~PU6は、記録媒体11の搬送方向Yの上流側から下流側に向かって順に配置されている。
【0025】
画像形成の対象となる記録媒体11には、たとえば、ロール状に巻かれた状態またはZ字形に折り畳まれた状態の布帛、用紙などが用いられる。また、記録媒体には枚葉紙(カット紙)なども用いられる。「画像形成」という用語は、「印刷」と言い換えることができる。記録媒体11は、ベルト20によって搬送方向Yに搬送される。また、記録媒体11は、図示しない繰り出し部から繰り出されてベルト20の上流端に供給される。記録媒体11の搬送方向Yにおいて、ベルト20の上流端には第1の押圧ローラ13aが設けられ、ベルト20の下流端には第2の押圧ローラ13bが設けられている。第1の押圧ローラ13aおよび第2の押圧ローラ13bは、記録媒体11をベルト20の表面に押し付けるローラである。記録媒体11は、これらの押圧ローラ13a,14bによって押し付けられることでベルト20の表面に密着し、この状態でベルト20と共にY方向に搬送される。また、記録媒体11は、押圧ローラ13bを過ぎた位置でベルト20から分離し、図示しない巻き取り部に巻き取られる。
【0026】
<画像形成装置の制御構成>
図4は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の制御構成を示すブロック図である。
図4に示すように、画像形成装置10は、上述した画像形成部14、ヒータ17、位置可変部18、ベルト駆動部23の他に、制御部30、操作表示部32、温度検出部34、通信部36を備えている。図4に示す構成要素のうち、画像形成に係る構成要素以外の構成要素は、ベルト駆動装置12が備えるものであってもよい。画像形成に係る構成要素としては、画像形成部14が挙げられる。
【0027】
制御部30は、コンピュータのハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)41と、ROM(Read Only Memory)43と、RAM(Random Access Memory)45とを備えている。CPU41は、ROM43から所定のプログラムを読み出してRAM45に展開し、展開したプログラムにしたがって画像形成装置10の各部の動作を統括的に制御するものである。本実施形態に係るプログラムを記憶するコンピュータ読み取り可能な記録媒体はROM63に限らず、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)、CD-ROM、DVDディスクなどの可搬型記録媒体を適用することが可能である。
【0028】
操作表示部32は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどからなる表示部に、操作部としてのタッチセンサが重畳されたタッチパネルによって構成される。なお、本実施形態では、表示部と操作部とが一体に形成される例を挙げたが、これに限らず、たとえば、ボタンやキーなどからなる操作部と、LCDなどからなる表示部とが、別体で構成されてもよい。
【0029】
温度検出部34は、ベルト20の温度を検出するものである。温度検出部34は、非接触式の温度センサ、または、接触式の温度センサによって構成される。温度検出部34は、ヒータ17が発する熱の影響を受けないよう、ヒータ17から充分に離れた位置に配置するとよい。温度検出部34の検出結果は制御部30に通知される。制御部30は、温度検出部34の検出結果に基づいて位置可変部18を制御する。また、制御部30は、ヒータ17のオンオフ状態を制御する。ヒータ17のオンオフ状態は、ヒータ17に給電するか否かによって切り替えられる。具体的には、ヒータ17に給電するとヒータ17がオン状態になり、ヒータ17への給電を遮断するとヒータ17がオフ状態になる。
【0030】
通信部36は、図示しない通信ネットワークを介して外部装置(たとえば、パーソナルコンピュータなど)と通信可能に接続され、外部装置との間で各種のデータの送受信を行う。通信ネットワークは、たとえば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などである。制御部30は、通信部36を介して通信ネットワークに接続されることにより、外部装置と各種のデータをやり取りする。また、制御部30は、たとえば、外部装置から送信されたページ記述言語(PDL:Page Description Language)を受信し、PDLに含まれる画像データに基づいて、画像形成部14などの動作を制御することにより、用紙に画像を形成させる。
【0031】
<画像形成装置の制御方法>
続いて、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の制御方法について、図5のフローチャートを用いて説明する。このフローチャートに示す処理は、制御部30の制御下で行われる。
【0032】
まず、制御部30は、操作表示部32または外部装置から印刷ジョブを受け付けたか否かを繰り返し確認する(ステップS1)。そして、操作表示部32または外部装置から印刷ジョブを受け付けると、制御部30は、位置可変部18を駆動することにより、図2に示すようにヒータ17をθ1方向に揺動させる(ステップS2)。これにより、ヒータ17の加熱面17aはベルト20の方向を向いた状態になる。
【0033】
次に、制御部30は、ヒータ17をオン状態にする(ステップS3)。これにより、ヒータ17が熱を発するようになり、この熱がヒータ17の加熱面17aからベルト20の加熱対象部20aに向けて放射される。
【0034】
次に、制御部30は、画像形成部14およびベルト駆動部23を駆動することにより、印刷ジョブを実行する(ステップS4)。印刷ジョブを実行している期間は、ベルト駆動部23によってベルト20が駆動される。印刷ジョブの実行期間は、印刷ジョブを開始してから終了するまでの期間である。たとえば、一つの印刷ジョブで記録媒体11にNページ(Nは自然数)の画像を形成(印刷)する場合は、Nページ分の画像を記録媒体11に形成し終わるまでの期間が、印刷ジョブの実行期間となる。印刷ジョブの実行期間では、たとえば印刷媒体の種類に応じて、ベルト20を連続的に駆動する場合と、ベルト20を間欠的に駆動する場合とがある。具体的には、ロール状に巻かれた布帛などを搬送する場合は、ベルト20を連続的に駆動し、枚葉紙などを搬送する場合は、プリントユニットPUにおける記録ヘッドのスキャン動作に同期してベルト20を間欠的に駆動する。印刷ジョブの実行期間は、ベルト駆動部23がベルト20を連続的に駆動している期間または間欠的に駆動している期間に相当する。
【0035】
次に、制御部30は、印刷ジョブが終了したか否かを判断する(ステップS5)。そして、印刷ジョブが終了していない場合は、制御部30は、ステップS5でNOと判断して印刷ジョブの実行を継続する。これに対して、印刷ジョブが終了した場合は、制御部30は、ステップS5でYESと判断してステップS6の処理に進む。
【0036】
ステップS6においては、制御部30は、ヒータ17をオフ状態にするとともに、位置可変部18を駆動することにより、図3に示すようにヒータ17をθ2方向に揺動させる。これにより、ヒータ17の加熱面17aはベルト20と異なる方向を向いた状態になる。
【0037】
図6は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の動作手順を示すタイミングチャートである。
まず、ヒータ17は、印刷ジョブの実行期間Tの始点よりも前にオン状態となる。その理由は、ヒータ17がオン状態となってからヒータ17の発熱によりベルト20の温度が所定の温度に達するまでに所定の時間t1を要するためである。一方、位置可変部18は、ヒータ17がオン状態になるタイミングよりも所定の時間t2だけ前に駆動する。この段階の位置可変部18の駆動は図2に示すθ1方向にヒータ17を揺動させるための駆動である。このように位置可変部18の駆動タイミングを設定する理由は、位置可変部18を駆動してからヒータ17の加熱面17aがベルト20の加熱対象部20aの方向を向くまでに所定の時間t2を要するためである。なお、ヒータ17をオン状態とするタイミングは、位置可変部18の駆動タイミングよりも前に設定してもよい。いずれにしても、印刷ジョブの実行期間Tの始点では、ヒータ17がオン状態となってヒータ17の加熱面17aがベルト20の方向を向いた状態となる。
【0038】
その後、印刷ジョブの実行期間Tが終点となると、これとほぼ同時に、ヒータ17がオフ状態になると共に、位置可変部18が駆動する。この段階の位置可変部18の駆動は図3に示すθ2方向にヒータ17を揺動させるための駆動である。なお、位置可変部18の駆動タイミングは、印刷ジョブの実行期間Tを終えてから所定の許容時間が経過した段階に設定してもよい。所定の許容時間は、ヒータ17の余熱によってベルト20の温度が許容上限温度を超えるまでに要する時間よりも短い時間に設定される。
【0039】
<第1実施形態の効果>
以上説明したように、本発明の第1実施形態においては、ベルト駆動部23によるベルト20の駆動状態に応じて位置可変部18を制御する構成を採用している。これにより、ベルト20に対するヒータ17の位置が、ベルト20の駆動状態に応じて変化する。このため、ヒータ17からベルト20へ伝えられる熱の量を多くしたり少なくしたりすることができる。したがって、たとえば印刷ジョブの終了にともなってベルト20の移動を停止した場合に、位置可変部18の駆動によってヒータ17の加熱面17aの角度を適宜変化させることにより、ヒータ17からベルト20へ伝えられる熱を少なくし、ベルト20の温度上昇を抑えることができる。よって、ヒータ17とは別に冷却手段を設けなくても、ベルト20の過熱を抑制することができる。また、冷却手段の追加によって装置の構成が複雑になったり、装置のコストが高くなったりすることを避けることができる。
【0040】
また、本発明の第1実施形態においては、ベルト20を駆動していない場合には、ヒータ17からベルト20へ伝えられる熱の量が少なくなるように、位置可変部18を制御する。これにより、ベルト20の温度上昇を抑制することができる。また、ベルト20を駆動している場合には、ヒータ17からベルト20へ伝えられる熱の量が多くなるように、位置可変部18を制御する。これにより、ベルト20に対して充分な熱を加えることができる。したがって、ベルト20の表面に形成された粘着層の粘着力を高めるのに必要な熱量を、ヒータ17からベルト20へ与えることができる。
【0041】
また、本発明の第1実施形態では、ベルト20の温度を温度検出部34によって検出し、この検出結果に基づいて位置可変部18を制御する構成を採用している。これにより、たとえばベルト20の温度が予め設定された閾値温度を超えた場合に、位置可変部18の駆動によってヒータ17の位置を図2に示す位置から図3に示す位置へと変化させることにより、ベルト20の過熱を抑制することができる。閾値温度は、前述した許容上限温度よりも低い温度に設定される。
【0042】
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
図7は、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置が備えるベルト駆動装置の構成を示す概略側面図である。本発明の第2実施形態においては、上述した第1実施形態と比較して、加熱部および位置可変部の構成が異なる。このため、本第2実施形態では、上述した第1実施形態と同様の構成部分に同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0043】
(加熱部)
ベルト駆動装置12には、加熱部の一例として、ヒータ170が設けられている。ヒータ170は、ベルト20の幅方向に長い円筒状のヒータである。ヒータ170は、従動ローラ22に巻き掛けられたベルト20と対向するように、従動ローラ22の下方に配置されている。ヒータ170は、非接触型のヒータであって、ベルト20の加熱対象部20aから所定の距離だけ離れた位置に配置されている。ヒータ170は、加熱面170aを有している。ヒータ170が発する熱は、加熱面170aから放射状に放出される。
【0044】
(位置可変部)
ヒータ170は位置可変部180によって支持されている。位置可変部180は、ベルト20に対するヒータ170の位置を変化させるものである。位置可変部180は、ヒータ170を昇降可能(上下移動)に支持する昇降軸190を有している。昇降軸190は、ベルト20に対してヒータ17を接近離間する方向に移動可能に支持する第2の支持軸の一例として位置可変部180に設けられている。位置可変部180は、たとえば、モータなどの駆動源を有し、この駆動源の駆動力を利用してヒータ170の位置を変化させる。本実施形態では、昇降軸190に沿ってヒータ170が昇降することによりヒータ170の位置が変化する構成になっている。
【0045】
昇降軸190に沿ってヒータ170を昇降させると、ベルト20の加熱対象部20aとヒータ170の加熱面170aとの間の離間距離Lが変化する。図7に示すように、昇降軸190に沿ってヒータ170を上方向Uに移動させると、ベルト20の加熱対象部20aとヒータ170の加熱面170aとの間の離間距離Lが短くなる。これにより、ヒータ170がベルト20に近づくため、ヒータ170からベルト20へ伝えられる熱の量が多くなる。これに対して、図8に示すように、昇降軸190に沿ってヒータ170を下方向Dに移動させると、ベルト20の加熱対象部20aとヒータ170の加熱面170aとの間の離間距離Lが長くなる。これにより、ヒータ170がベルト20から遠ざかるため、ヒータ170からベルト20へ伝えられる熱の量が少なくなる。
【0046】
本発明の第2実施形態に係るベルト駆動装置12とこれを備える画像形成装置10においては、上記図5に示すフローチャートのステップS2で制御部30が位置可変部180を駆動することにより、ヒータ170を上方向Uに移動させる。これにより、ベルト20の加熱対象部20aとヒータ170の加熱面170aとの間の離間距離Lが短くなり、この状態でヒータ170がオン状態となる(図5のステップS3を参照)。このため、ヒータ170の熱がベルト20に伝わりやすくなる。
【0047】
また、上記図5に示すフローチャートのステップS6で制御部30がヒータ170をオフ状態にするとともに、位置可変部180を駆動することにより、ヒータ170を下方向Dに移動させる。これにより、ベルト20の加熱対象部20aとヒータ170の加熱面170aとの間の離間距離Lが長くなる。このため、ヒータ170の熱がベルト20に伝わりにくくなる。
【0048】
<第2実施形態の効果>
本発明の第2実施形態においては、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0049】
[第3実施形態]
続いて、本発明の第3実施形態について説明する。本発明の第3実施形態においては、上記第1実施形態および第2実施形態と比較して、位置可変部18を制御する際に参照するベルト20の駆動状態が異なる。具体的には、上記第1実施形態および第2実施形態においては、ベルト駆動部23がベルト20を駆動している場合と駆動していない場合とに分けて位置可変部(18、180)を制御したが、本第3実施形態においては、ベルト20の移動速度に応じて位置可変部を制御する。以下、詳しく説明する。なお、位置可変部としては、上記第1実施形態で採用した位置可変部18でもよし、上記第2実施形態で採用した位置可変部180でもよい。本第3実施形態では、一例として、第1実施形態で採用した位置可変部18によってヒータ17の位置を変化させることとする。
【0050】
まず、制御部30は、ロータリーエンコーダ25等を用いてベルト20の移動速度を計測する。そして、制御部30は、計測したベルト20の移動速度が閾値速度よりも速い場合は図2に示すようにヒータ17の加熱面17aがベルト20の加熱対象部20aに対向するように位置可変部18を駆動する。また、制御部30は、計測したベルト20の移動速度が閾値速度よりも遅い場合は、閾値速度と移動速度との差分に応じた角度だけ図2の状態からヒータ17をθ1方向と反対方向に揺動するように位置可変部18を駆動する。これにより、ヒータ17からベルト20へ伝えられる熱の量をベルト20の移動速度に応じて調整することができる。また、ベルト20の移動速度が速い場合には、ベルト20に対して充分な熱を加えることができ、ベルト20の移動速度が遅い場合には、ベルト20の過熱を抑制することができる。
【0051】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0052】
たとえば、上記第1実施形態においては、ヒータ17の短手方向に一端部に支持軸19を配置しているが、本発明はこれに限らず、ヒータ17の短手方向の他端部または中間部に支持軸19を配置してもよい。
【0053】
また、上記第2実施形態においては、第2の支持軸に相当する昇降軸190を垂直方向(鉛直方向)に沿って配置しているが、本発明はこれに限らず、第2の支持軸を水平方向に沿って配置してもよいし、垂直方向および水平方向に対して所定の角度で斜めに傾けて配置してもよい。
【0054】
また、上記実施形態においては、画像形成装置の一例として、インクジェット記録装置を挙げたが、本発明はこれに限らず、ベルト駆動装置12によって記録媒体11を搬送するタイプの画像形成装置に広く適用することが可能である。
【0055】
また、本発明に係るベルト駆動装置とその制御方法ならびにプログラムは、上記実施形態で述べたとおり画像形成装置にも適用することができ、画像形成装置以外にも適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
10…画像形成装置、12…ベルト駆動装置、14…画像形成部、17,170…ヒータ(加熱部)、17a,170a…加熱面、18,180…位置可変部、20…ベルト、20a…加熱対象部、23…ベルト駆動部、30…制御部、34…温度検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8