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特許7459546三次元造形物の製造方法、および、三次元造形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】三次元造形物の製造方法、および、三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20240326BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20240326BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20240326BHJP
   B29C 64/227 20170101ALI20240326BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20240326BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20240326BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240326BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240326BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20240326BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240326BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/118
B29C64/209
B29C64/227
B29C64/245
B29C64/386
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/00
B33Y50/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020021404
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021126786
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 郷志
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-025761(JP,A)
【文献】特開2019-155724(JP,A)
【文献】特開2018-176597(JP,A)
【文献】特開2019-025759(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094791(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて三次元造形物を造形する三次元造形物の製造方法であって、
前記吐出部が前記造形材料を吐出しながら移動する経路を複数有し、互いに隣り合う前記経路である第1部分経路及び第2部分経路を含む経路データ、及び、各前記経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量データを有する造形データに従って、前記第1部分経路に対応する第1部分造形物、及び、前記第2部分経路に対応する第2部分造形物を造形する第1工程と、
前記第1部分造形物と前記第2部分造形物との間の隙間を表す第1隙間を測定する第2工程と、
前記第1隙間と、前記造形データから定まる前記第1隙間に対応する第2隙間と、の差異に基づいて、前記第1部分経路及び前記第2部分経路よりも後に前記吐出部が移動する前記経路である第3部分経路における前記吐出量を調整する調整処理を行う第3工程と、を備え
前記第3工程において、前記調整処理として、前記第1隙間が前記第2隙間よりも小さい場合、前記第3部分経路における前記吐出量を減少させる、三次元造形物の製造方法。
【請求項2】
吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて三次元造形物を造形する三次元造形物の製造方法であって、
前記吐出部が前記造形材料を吐出しながら移動する経路を複数有し、互いに隣り合う前記経路である第1部分経路及び第2部分経路を含む経路データ、及び、各前記経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量データを有する造形データに従って、前記第1部分経路に対応する第1部分造形物、及び、前記第2部分経路に対応する第2部分造形物を造形する第1工程と、
前記第1部分造形物と前記第2部分造形物との間の隙間を表す第1隙間を測定する第2工程と、
前記第1隙間と、前記造形データから定まる前記第1隙間に対応する第2隙間と、の差異に基づいて、前記第1部分経路及び前記第2部分経路よりも後に前記吐出部が移動する前記経路である第3部分経路における前記吐出量を調整する調整処理を行う第3工程と、を備え、
前記第3工程において、
前記第1隙間が、前記第2隙間と等しい場合、前記第1部分造形物と前記第2部分造形物との少なくともいずれか一方の第1高さを測定し、
前記第1高さが、前記造形データから定まる前記第1高さに対応する第2高さより高い場合、前記第3部分経路における前記吐出量を減少させ、
前記第1高さが前記第2高さより低い場合、前記第3部分経路における前記吐出量を増加させる、三次元造形物の製造方法。
【請求項3】
吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて三次元造形物を造形する三次元造形物の製造方法であって、
前記吐出部が前記造形材料を吐出しながら移動する経路を複数有し、互いに隣り合う前記経路である第1部分経路及び第2部分経路を含む経路データ、及び、各前記経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量データを有する造形データに従って、前記第1部分経路に対応する第1部分造形物、及び、前記第2部分経路に対応する第2部分造形物を造形する第1工程と、
前記第1部分造形物と前記第2部分造形物との間の隙間を表す第1隙間を測定する第2工程と、
前記第1隙間と、前記造形データから定まる前記第1隙間に対応する第2隙間と、の差異に基づいて、前記第1部分経路及び前記第2部分経路よりも後に前記吐出部が移動する前記経路である第3部分経路における前記吐出量を調整する調整処理を行う第3工程と、を備え、
前記第3部分経路に対応する第3部分造形物は、外殻形状として造形され、
前記第1部分造形物及び前記第2部分造形物は、前記外殻形状の内側部分である内部形状として造形される、三次元造形物の製造方法。
【請求項4】
吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて三次元造形物を造形する三次元造形物の製造方法であって、
前記吐出部が前記造形材料を吐出しながら移動する経路を複数有し、互いに隣り合う前記経路である第1部分経路及び第2部分経路を含む経路データ、及び、各前記経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量データを有する造形データに従って、前記第1部分経路に対応する第1部分造形物、及び、前記第2部分経路に対応する第2部分造形物を造形する第1工程と、
前記第1部分造形物と前記第2部分造形物との間の隙間を表す第1隙間を測定する第2工程と、
前記第1隙間と、前記造形データから定まる前記第1隙間に対応する第2隙間と、の差異に基づいて、前記第1部分経路及び前記第2部分経路よりも後に前記吐出部が移動する前記経路である第3部分経路における前記吐出量を調整する調整処理を行う第3工程と、を備え、
前記第3部分経路に対応する第3部分造形物は、前記ステージ上の造形領域に造形され、
前記第1部分造形物及び前記第2部分造形物は、前記造形領域と異なる領域に造形される、三次元造形物の製造方法。
【請求項5】
請求項に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第1工程に先立って、前記吐出部から前記造形材料を吐出することによって、前記造形領域に、前記三次元造形物の一部である層を造形し、
前記層を構成する前記造形材料が固化するまでの少なくとも一部の期間において、前記第1工程を実行する、三次元造形物の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第3工程において、前記調整処理として、前記第1隙間が前記第2隙間よりも大きい場合、前記第3部分経路における前記吐出量を増加させる、三次元造形物の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第3工程において、前記第3部分経路に対応する前記吐出量データを変更することによって、前記調整処理を行う、三次元造形物の製造方法。
【請求項8】
請求項に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第3工程において、前記吐出部から単位時間あたりに吐出される前記造形材料の量と、前記吐出部が前記ステージに対して相対的に移動する移動速度と、の少なくともいずれか一方を変更することによって、前記第3部分経路に対応する前記吐出量データを変更する、三次元造形物の製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第3工程において、前記吐出部における前記造形材料の吐出に関する設定値を変更することによって、前記調整処理を行う、三次元造形物の製造方法。
【請求項10】
請求項に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記吐出部は、材料を可塑化して前記造形材料を生成する可塑化部と、前記造形材料を吐出するノズルと、を備え、
前記可塑化部は、溝が形成された溝形成面を有するフラットスクリューを備え、
前記第3工程において、前記設定値として、前記フラットスクリューの回転数と、前記可塑化部の温度と、前記ノズルの温度と、の少なくともいずれか1つの値を変更する、三次元造形物の製造方法。
【請求項11】
ステージに向けて造形材料を吐出する吐出部と、
前記吐出部と前記ステージとの相対的な位置を変化させる移動機構と、
吐出された前記造形材料同士の間の隙間を測定する測定部と、
前記吐出部と前記移動機構と前記測定部とを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記吐出部が前記造形材料を吐出しながら移動する経路を複数有し、互いに隣り合う前記経路である第1部分経路及び第2部分経路を含む経路データ、及び、各前記経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量データを有する造形データに従って、前記吐出部と前記移動機構とを制御することによって、前記第1部分経路に対応する第1部分造形物、及び、前記第2部分経路に対応する第2部分造形物を造形し、
前記測定部を制御することによって、前記第1部分造形物と前記第2部分造形物との間の前記隙間を表す第1隙間を測定し、
前記第1隙間と、前記造形データから定まる前記第1隙間に対応する第2隙間と、の差異に基づいて、前記第1部分経路および前記第2部分経路よりも後に前記吐出部が移動する前記経路である第3部分経路における前記吐出量を調整する調整処理を行い、
前記調整処理として、前記第1隙間が前記第2隙間よりも小さい場合、前記第3部分経路における前記吐出量を減少させる、三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形物の製造方法、および、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形物の製造方法に関し、例えば、特許文献1には、樹脂材料をインラインスクリューで可塑化し、ノズルから可塑化した樹脂材料を吐出させて層を積層することで、三次元造形物を造形する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2015/129733号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載されているような三次元造形物の製造方法では、造形環境や可塑化状態の変化等によって、意図した吐出量の樹脂材料を吐出できない場合がある。意図した吐出量の樹脂材料を吐出できない場合、例えば、造形物中に空隙が発生し、造形物の造形精度に影響が及ぶ可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて三次元造形物を造形する三次元造形物の製造方法が提供される。この三次元造形物の製造方法は、吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて三次元造形物を造形する三次元造形物の製造方法であって、前記吐出部が前記造形材料を吐出しながら移動する経路を複数有し、互いに隣り合う前記経路である第1部分経路及び第2部分経路を含む経路データ、及び、各前記経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量データを有する造形データに従って、前記第1部分経路に対応する第1部分造形物、及び、前記第2部分経路に対応する第2部分造形物を造形する第1工程と、前記第1部分造形物と前記第2部分造形物との間の隙間を表す第1隙間を測定する第2工程と、前記第1隙間と、前記造形データから定まる前記第1隙間に対応する第2隙間と、の差異に基づいて、前記第1部分経路及び前記第2部分経路よりも後に前記吐出部が移動する前記経路である第3部分経路における前記吐出量を調整する調整処理を行う第3工程と、を備える。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、ステージに向けて造形材料を吐出する吐出部と、前記吐出部と前記ステージとの相対的な位置を変化させる移動機構と、吐出された前記造形材料同士の間の隙間を測定する測定部と、前記吐出部と前記移動機構と前記測定部とを制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記吐出部が前記造形材料を吐出しながら移動する経路を複数有し、互いに隣り合う前記経路である第1部分経路及び第2部分経路を含む経路データ、及び、各前記経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量データを有する造形データに従って、前記吐出部と前記移動機構とを制御することによって、前記第1部分経路に対応する第1部分造形物、及び、前記第2部分経路に対応する第2部分造形物を造形し、前記測定部を制御することによって、前記第1部分造形物と前記第2部分造形物との間の前記隙間を表す第1隙間を測定し、前記第1隙間と、前記造形データから定まる前記第1隙間に対応する第2隙間と、の差異に基づいて、前記第1部分経路及び前記第2部分経路よりも後に前記吐出部が移動する前記経路である第3部分経路における前記吐出量を調整する調整処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す図である。
図2】フラットスクリューの溝形成面側の構成を示す概略斜視図である。
図3】バレルのスクリュー対向面側の構成を示す上面図である。
図4】三次元造形物が造形される様子を模式的に示す概略図である。
図5】第1実施形態における三次元造形物の製造方法の一例を示す工程図である。
図6】第1実施形態において製造される三次元造形物の1つの層の平面形状の一例を示す図である。
図7】第1実施形態において製造される三次元造形物の一部の断面形状の一例を示す図である。
図8】第2実施形態における三次元造形物の製造方法の一例を示す工程図である。
図9】第3実施形態における三次元造形物の製造方法の一例を示す工程図である。
図10】第3実施形態において製造される三次元造形物の1つの層の平面形状の一例を示す図である。
図11】第4実施形態における三次元造形物の製造方法の一例を示す工程図である。
図12】三次元造形物及び補助造形物を造形する様子を示す図である。
図13】第4実施形態において製造される補助造形物の1つの層の平面形状の一例を示す図である。
図14】第5実施形態における三次元造形物の製造方法の一例を示す工程図である。
図15】第6実施形態における三次元造形物の製造方法の一例を示す工程図である。
図16】高さ判定工程の一例を示す工程図である。
図17】第6実施形態における三次元造形物の一部の断面形状の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、本実施形態における三次元造形装置100の概略構成を示す図である。図1には、互いに直交するX,Y,Z方向に沿った矢印が表されている。X,Y,Z方向は、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、Z軸に沿った方向であり、それぞれ、X軸、Y軸、Z軸に沿う一方側の方向と、その反対方向とを、両方含む。X軸およびY軸は、水平面に沿った軸であり、Z軸は、鉛直線に沿った軸である。他の図においても、X,Y,Z方向に沿った矢印が、適宜、表されている。図1におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を表している。以下の説明において、向きを特定する場合には、正の方向を「+」、負の方向を「-」として、方向表記に正負の符号を併用する。
【0009】
本実施形態における三次元造形装置100は、吐出部200と、ステージ300と、移動機構400と、制御部500とを、備えている。三次元造形装置100は、制御部500の制御下で、吐出部200からステージ300に向かって造形材料を吐出しつつ、移動機構400を駆動させて吐出部200とステージ300との相対的な位置を変化させることによって、ステージ300の造形面311上に所望の形状の三次元造形物を造形する。なお、造形材料のことを溶融材料と呼ぶこともある。吐出部200の詳細な構成については後述する。
【0010】
移動機構400は、吐出部200とステージ300との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、移動機構400は、吐出部200に対してステージ300を移動させることによって、吐出部200とステージ300との相対的な位置を変化させる。なお、ステージ300に対する吐出部200の相対的な位置の変化を、単に、吐出部200の移動と呼ぶこともある。本実施形態では、例えば、ステージ300を+X方向に移動させたことを、吐出部200を-X方向に移動させたと言い換えることもできる。
【0011】
本実施形態における移動機構400は、3つのモーターの駆動力によって、ステージ300をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。各モーターは、制御部500の制御下にて駆動する。なお、移動機構400は、ステージ300を移動させる構成ではなく、ステージ300を移動させずに吐出部200を移動させる構成であってもよい。また、移動機構400は、ステージ300と吐出部200との両方を移動させる構成であってもよい。
【0012】
制御部500は、1以上のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成されている。本実施形態では、制御部500は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、吐出部200と移動機構400との動作を制御して、三次元造形物を造形するための造形処理を実行する。動作には、吐出部200とステージ300との三次元の相対的な位置を変化させることが含まれる。なお、制御部500は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0013】
吐出部200は、材料の供給源である材料供給部20と、材料供給部20から供給された材料を溶融して造形材料にする可塑化部30と、造形材料を吐出するノズル61と、可塑化部30とノズル61とを連通させる供給流路62と、ノズル61から吐出する造形材料の流量を調節する吐出量調節機構70と、吐出された造形材料同士の間の隙間を測定する測定部80とを、備えている。
【0014】
材料供給部20には、ペレットや粉末等の状態の材料が収容されている。本実施形態では、ペレット状に形成された樹脂が材料として用いられる。本実施形態における材料供給部20は、ホッパーによって構成されている。材料供給部20の下方には、材料供給部20と可塑化部30との間を接続する供給路22が設けられている。材料供給部20は、供給路22を介して、可塑化部30に材料を供給する。なお、材料の詳細については後述する。
【0015】
可塑化部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、フラットスクリュー40と、バレル50とを備えている。可塑化部30は、材料供給部20から供給された固体状態の材料の少なくとも一部を溶融させて流動性を有するペースト状の造形材料を生成して、ノズル61に供給する。なお、「溶融」とは、熱可塑性を有する材料が融点以上の温度に加熱されて液状になることのみならず、熱可塑性を有する材料がガラス転移点以上の温度に加熱されることにより軟化し、流動性が発現する「可塑化」をも意味する。
【0016】
スクリューケース31は、フラットスクリュー40を収容するための筐体である。スクリューケース31の下面には、バレル50が固定されており、スクリューケース31とバレル50とによって囲まれた空間に、フラットスクリュー40が収容されている。フラットスクリュー40は、バレル50に対向する面に、溝45が形成された溝形成面42を有している。スクリューケース31の上面には、駆動モーター32が固定されている。駆動モーター32の回転軸は、フラットスクリュー40の上面41側に接続されている。駆動モーター32は、制御部500の制御下で駆動される。
【0017】
フラットスクリュー40は、中心軸RXに沿った方向の高さが直径よりも小さい略円柱形状を有している。フラットスクリュー40は、中心軸RXがZ方向に平行になるように、スクリューケース31内に配置されている。フラットスクリュー40は、中心軸RXに沿った方向における上面41とは反対側に、溝45が形成された溝形成面42を有している。なお、フラットスクリュー40の溝形成面42側の具体的な構成については後述する。フラットスクリュー40は、駆動モーター32が発生させるトルクによって、スクリューケース31内にて、中心軸RXを中心に回転する。駆動モーター32は、制御部500の制御下で駆動される。
【0018】
バレル50は、フラットスクリュー40の下方に配置されている。バレル50は、フラットスクリュー40の溝形成面42に対向するスクリュー対向面52を有している。バレル50には、フラットスクリュー40の中心軸RX上に、供給流路62に連通する連通孔56が設けられている。バレル50には、フラットスクリュー40の溝45に対向する位置にヒーター58が内蔵されている。ヒーター58の温度は、制御部500によって制御される。なお、バレル50のスクリュー対向面52側の具体的な構成については後述する。
【0019】
ノズル61は、バレル50の下面に固定されている。供給流路62は、可塑化部30とノズル61との間に設けられている。供給流路62は、可塑化部30とノズル61との間を連通し、可塑化部30からノズル61に造形材料を供給する。
【0020】
供給流路62は、第1供給口65と、交差孔66と、第2供給口67とを有している。第1供給口65および第2供給口67は、鉛直方向に延びている。交差孔66は、第1供給口65および第2供給口67と交差する水平方向に延びている。第1供給口65の上端は、バレル50の連通孔56に接続されており、第1供給口65の下端は、交差孔66に接続されている。第2供給口67の上端は、交差孔66に接続されており、第2供給口67の下端は、ノズル61に接続されている。交差孔66には、後述する吐出量調節機構70が収容されている。バレル50の連通孔56から第1供給口65に供給された造形材料は、交差孔66、第2供給口67、ノズル61の順に流れる。
【0021】
ノズル61には、ノズル流路68と、ノズル孔69とが設けられている。ノズル流路68は、ノズル61内に設けられた流路である。ノズル流路68は、第2供給口67に接続されている。ノズル孔69は、ノズル流路68の大気に連通する側の端部に設けられた流路断面が縮小された部分である。第2供給口67からノズル流路68に供給された造形材料は、ノズル孔69から吐出される。本実施形態では、ノズル孔69の開口形状は円形である。なお、ノズル孔69の開口形状は円形に限られず、例えば、四角形や、四角形以外の多角形であってもよい。
【0022】
本実施形態では、ノズル流路68の周囲には、ノズルヒーター75が設けられている。ノズルヒーター75は、制御部500に制御されることによって、ノズル61を加熱し、ノズル流路68内の造形材料を加熱する。制御部500は、ノズルヒーター75の出力を制御することによって、ノズル流路68内の造形材料の流動性を調整する。また、制御部500は、ノズルヒーター75の出力を制御してノズル流路68内の造形材料の流動性を調整することによって、例えば、ノズル孔69から吐出される造形材料の量を調整することができる。
【0023】
吐出量調節機構70は、供給流路62内に設けられており、ノズル61から吐出される造形材料の量を調節する。単位移動量あたりにノズル61から吐出される造形材料の量を、吐出量と呼ぶこともある。本実施形態における吐出量調節機構70は、バタフライバルブによって構成されている。吐出量調節機構70は、軸状部材である駆動軸71と、駆動軸71の回転に伴って回転する板状の弁体72とを備えている。駆動軸71は、駆動軸71の中心軸に沿った方向と、供給流路62における造形材料の流れ方向とが交差するように、交差孔66内に挿通されている。
【0024】
吐出量調節機構70は、供給流路62内を流れる造形材料の流量を調節する流量調節機構として機能する。具体的には、吐出量調節機構70は、弁体72の回転角を変化させて、供給流路62内を流れる造形材料の流量を調節する。供給流路62内を流れる造形材料の流量が調節されることによって、吐出量が調節される。吐出量調節機構70を制御して吐出量を増加させることを、吐出量調節機構70を開くと呼ぶこともある。また、吐出量調節機構を制御して吐出量を減少させることを、吐出量調節機構70を閉じると呼ぶこともある。弁体72の回転度合いを開度と呼ぶこともある。駆動軸71が回転することによって、弁体72の板状の面が供給流路62における造形材料の流れ方向と垂直となった場合、開度は0となり、可塑化部30とノズル61とが連通せず、ノズル61からの造形材料の吐出は停止される。この状態から弁体72が回転すると、開度は0より大きくなり、可塑化部30とノズル61とが連通し、造形材料の吐出が可能となる。なお、弁体72の板状の面が供給流路62における造形材料の流れ方向と平行となった場合、開度は100となる。このように、吐出量調節機構70は、ノズル61からの造形材料の吐出開始と吐出停止とをも、制御する。
【0025】
本実施形態の測定部80は、測定部80は、レーザー発振部とレーザー受光部とを備える。測定部80は、ステージ300に向けてレーザーを照射し、照射したレーザーを受光することによって、造形材料同士の間の隙間を測定する。測定部80は、制御部500によって制御される。測定部80による隙間の測定の詳細については、後述する。
【0026】
図2は、フラットスクリュー40の溝形成面42側の構成を示す概略斜視図である。図2には、フラットスクリュー40の中心軸RXの位置が一点鎖線で示されている。図1を参照して説明したように、溝形成面42には、溝45が設けられている。
【0027】
フラットスクリュー40の溝形成面42の中央部47は、溝45の一端が接続されている窪みとして構成されている。中央部47は、図1に示されているバレル50の連通孔56に対向する。中央部47は、中心軸RXと交差する。
【0028】
フラットスクリュー40の溝45は、いわゆるスクロール溝を構成する。溝45は、中央部47から、フラットスクリュー40の外周に向かって弧を描くように渦状に延びている。溝45は、インボリュート曲線状や、螺旋状に延びるように構成されてもよい。溝形成面42には、溝45の側壁部を構成し、各溝45に沿って延びている凸条部46が設けられている。溝45は、フラットスクリュー40の側面43に形成された材料導入口44まで連続している。この材料導入口44は、材料供給部20の供給路22を介して供給された材料を受け入れる部分である。
【0029】
図2には、3つの溝45と、3つの凸条部46と、を有するフラットスクリュー40の例が示されている。フラットスクリュー40に設けられる溝45や凸条部46の数は、3つには限定されない。フラットスクリュー40には、1つの溝45のみが設けられていてもよいし、2以上の複数の溝45が設けられていてもよい。また、溝45の数に合わせて任意の数の凸条部46が設けられてもよい。
【0030】
図2には、材料導入口44が3箇所に形成されているフラットスクリュー40の例が図示されている。フラットスクリュー40に設けられる材料導入口44の数は、3箇所に限定されない。フラットスクリュー40には、材料導入口44が1箇所にのみ設けられていてもよいし、2箇所以上の複数の箇所に設けられていてもよい。
【0031】
図3は、バレル50のスクリュー対向面52側の構成を示す上面図である。上述したとおり、スクリュー対向面52の中央には、ノズル61に連通する連通孔56が形成されている。スクリュー対向面52における連通孔56の周りには、複数の案内溝54が形成されている。それぞれの案内溝54は、一端が連通孔56に接続され、連通孔56からスクリュー対向面52の外周に向かって渦状に延びている。それぞれの案内溝54は、造形材料を連通孔56に導く機能を有している。なお、造形材料を効率良く連通孔56へと到達させるために、バレル50には案内溝54が形成されていると好ましいが、案内溝54が形成されていなくてもよい。
【0032】
図4は、三次元造形装置100において三次元造形物OAが造形される様子を模式的に示す概略図である。三次元造形装置100では、上述したように、可塑化部30は、回転しているフラットスクリュー40の溝45に供給された固体状態の材料を溶融させ、造形材料を生成する。制御部500は、吐出部200を移動させながら、吐出部200から造形面311に向かって造形材料を吐出させる。具体的には、制御部500は、造形面311とノズル61との距離を保持したまま、造形面311に沿った方向に、ノズル61を移動させながら、ノズル61から造形材料を吐出させる。ノズル61から吐出された造形材料は、ノズル61の移動方向に連続して堆積されていく。これによって、ノズル61の移動経路に沿って線状に延びる造形部位が造形される。
【0033】
制御部500は、上記のノズル61からの造形材料の吐出を繰り返して、層を形成する。制御部500は、1つの層を形成した後、ノズル61を、Z方向に移動させる。その後、先に形成された層の上に、さらに層を積み重ねることによって三次元造形物を造形していく。図4では、先に形成された4層分の層の上に、第5層が造形されている途中の様子が示されている。
【0034】
図5は、本実施形態における三次元造形物OAの製造方法の一例を示す工程図である。三次元造形装置100に設けられた操作パネルや、三次元造形装置100に接続されたコンピューターに対して、所定の開始操作がユーザーによって行われた場合に、制御部500によって造形処理が実行される。造形処理が実行されることによって、三次元造形装置100による三次元造形物OAの製造が開始される。制御部500は、造形処理において、後述する造形データに従って吐出部200と移動機構400とを適宜制御して、造形面311上に造形材料の層を積層することによって、三次元造形物OAを造形する。
【0035】
ステップS110にて、制御部500は、造形データを取得する。造形データは、経路データと吐出量データとを有するデータである。経路データとは、吐出部200が造形材料を吐出しながら移動する経路を複数有するデータである。経路とは、経路のことを意味する。吐出量データとは、各経路における造形材料の吐出量を表すデータである。なお、上述したように、吐出部200の移動とは、ステージ300に対する吐出部200の相対的な位置の変化を指す。従って、上記の経路は、吐出部200が造形材料を吐出している際の、ステージ300に対する吐出部200の相対的な位置の変化を表すものであればよい。
【0036】
造形データは、例えば、三次元造形装置100に接続されたコンピューターにインストールされたスライサーソフトによって作成される。スライサーソフトは、三次元CADソフトや三次元CGソフト等を用いて作成された三次元造形物OAの形状を表す形状データを読み込み、三次元造形物OAの形状を所定の厚みの層に分割して、層ごとの造形データを作成する。スライサーソフトに読み込まれる形状データには、STL形式やAMF形式等のデータが用いられる。スライサーソフトによって作成された造形データは、GコードやMコード等によって表されている。制御部500は、三次元造形装置100に接続されたコンピューターや、USBメモリー等の記録媒体から造形データを取得する。なお、制御部500は、例えば、自身で、形状データから層ごとの造形データを生成することによって、造形データを取得してもよい。
【0037】
図6は、本実施形態において製造される、三次元造形物OAの1つの層の平面形状の一例を示す図である。図6には、完成した1層分の層を、+Z方向から見た様子が示されている。図6には、1層分の層を造形するための各経路が破線によって示されている。また、図6では、各経路に沿って吐出された造形材料にハッチングが施されている。図6に示すように、本実施形態の経路データは、第1部分経路Rt1及び第2部分経路Rt2を含んでいる。第1部分経路Rt1及び第2部分経路Rt2は、互いに隣り合う経路である。なお、「隣り合う」状態とは、2つの互いに平行な経路が、他の経路によって隔てられていない状態を指す。
【0038】
図5に示したステップS120にて、制御部500は、三次元造形物OAの1層分を造形する。ステップS120では、制御部500は、造形データに従って吐出部200及び移動機構400を制御することによって、三次元造形物OAの1層分を造形する。ステップS120において製造される層は、第1部分経路Rt1に対応する第1部分造形物OA1、及び、第2部分経路Rt2に対応する第2部分造形物OA2を含む。すなわち、ステップS120において、第1部分造形物OA1及び第2部分造形物OA2も、造形データに従って造形される。また、ステップS120のように、造形データに従って第1部分造形物OA1及び第2部分造形物OA2を造形する工程を、第1工程と呼ぶこともある。
【0039】
ステップS130にて、制御部500は、全層が完成したか否かを判定する。ステップS130において全層が完成したと判定された場合、制御部500は、三次元造形物OAが完成したと判断し、三次元造形物OAの製造を終了する。
【0040】
ステップS130において、全層が完成していないと判断された場合、ステップS140にて、制御部500は、測定部80を制御して第1隙間Gp1を測定する。第1隙間Gp1とは、第1部分造形物OA1と第2部分造形物OA2との間の隙間を指す。ステップS140のように、第1隙間Gp1を測定する工程を、第2工程と呼ぶこともある。
【0041】
本実施形態では、第1隙間として、第1部分造形物OA1と第2部分造形物OA2との間隔が測定される。「間隔」とは、互いに隣り合う経路に従って吐出された造形材料の間の距離のことを指す。本実施形態では、測定部80は、ステップS140において、第1部分経路Rt1及び第2部分経路Rt2と交わる方向にレーザーを走査させる。測定部80は、照射したレーザーを受光するまでの時間に基づいて、第1部分造形物OA1と第2部分造形物OA2との間で、第1工程において造形材料が吐出されていない部分を検出し、その寸法を第1隙間Gp1として測定する。なお、第1部分造形物OA1と第2部分造形物OA2が互いに接触している部分では、第1部分造形物OA1と第2部分造形物OA2との間隔は0と測定される。
【0042】
第1隙間Gp1に対して、造形データから定まる隙間を、第2隙間Gp2と呼ぶ。第2隙間Gp2は、例えば、第1部分経路Rt1における吐出量から、第1部分造形物OA1の仮想的な形状が算出され、第2部分経路Rt2における吐出量から、第2部分造形物OA2の仮想的な形状が算出され、両者の間の隙間が算出されることによって、定められる。
【0043】
本実施形態では、第1部分造形物OA1の仮想的な形状と、第2部分造形物OA2の仮想的な形状との間隔が、第2隙間Gp2として算出される。図6には、第2部分造形物OA2の仮想的な形状が、一点鎖線によって示されている。図6では、第1部分造形物OA1の実際の形状と、仮想的な形状とは等しい。
【0044】
制御部500は、以下のステップS150からステップS180の工程を実行することによって、調整処理を行う。調整処理は、第1隙間Gp1と第2隙間Gp2との差異に基づいて、第3部分経路における吐出量を調整する処理である。第3部分経路とは、第1部分経路Rt1及び第2部分経路Rt2よりも後に吐出部200が移動する経路である。また、三次元造形物OAのうち、第3部分経路に対応する部分を、第3部分造形物と呼ぶこともある。本実施形態では、第3部分経路は、第1部分経路Rt1や第2部分経路Rt2に従って造形される層の、次の層を造形するための経路である。他の実施形態では、第3部分経路は、例えば、第1部分経路Rt1や第2部分経路Rt2に従って造形される層と、同じ層を造形するための経路であってもよい。また、第3部分経路は、例えば、三次元造形物OAの次に造形される、三次元造形物OAや別の三次元造形物を造形するための経路であってもよい。なお、ステップS150からステップS180のように、調整処理を行う工程を第3工程と呼ぶこともある。
【0045】
ステップS150にて、制御部500は、第1隙間Gp1が第2隙間Gp2よりも大きいか否かを判定する。ステップS150において、第1隙間Gp1が第2隙間Gp2よりも大きいと判定された場合、ステップS160にて、制御部500は、第1設定値変更処理を行う。第1設定値変更処理とは、吐出部200における造形材料の吐出に関する設定値を変更し、第3部分経路における吐出量を増加させる処理を指す。すなわち、制御部500は、ステップS150及びステップS160を実行することによって、調整処理として、第1隙間Gp1が第2隙間Gp2よりも大きい場合に第3部分経路における吐出量を増加させる処理を行う。
【0046】
本実施形態では、制御部500は、設定値として、フラットスクリュー40の回転数と、可塑化部30の温度と、ノズル61の温度と、の少なくともいずれか1つの値を変更する。ステップS160では、制御部500は、第1設置値変更処理として、例えば、フラットスクリュー40の回転数の増加と、可塑化部30の温度の上昇と、ノズル61の温度の上昇と、の少なくともいずれか1つを実行する。ステップS160において設定値が変更されることによって、設定値が変更された以降の工程において、吐出部200における造形材料の流動性が向上し、吐出部200から吐出される造形材料の吐出量が増加する。
【0047】
図6に示した例では、制御部500は、ステップS150において、第1隙間Gp1が第2隙間Gp2よりも大きいと判定する。その後、制御部500は、ステップS160において、第1設定値変更処理を実行し、第3部分経路における吐出量を増加させる。図6では、第2部分経路Rt2において吐出された実際の造形材料の量が、吐出量データによって表される吐出量よりも少ない。このように、造形時に実際に吐出された吐出量と吐出量データによって表される吐出量との間に差異がある場合、第1隙間Gp1と第2隙間Gp2との差異が生じる場合がある。実際に吐出される吐出量の変化は、例えば、造形環境や可塑化状態の変化によって生じる。
【0048】
ステップS150において、第1隙間Gp1が第2隙間Gp2よりも大きくないと判定された場合、ステップS170にて、制御部500は、第1隙間Gp1が第2隙間Gp2よりも小さいか否かを判定する。ステップS170において、第1隙間Gp1が第2隙間Gp2よりも小さいと判定された場合、ステップS180にて、制御部500は、第2設定値変更処理を行う。第2設定値変更処理とは、吐出部200における造形材料の吐出に関する設定値を変更し、第3部分経路における吐出量を減少させる処理を指す。すなわち、制御部500は、ステップS170及びステップS180を実行することによって、調整処理として、第1隙間Gp1が第2隙間Gp2よりも小さい場合に第3部分経路における吐出量を減少させる処理を行う。
【0049】
ステップS180では、制御部500は、第2設置値変更処理として、例えば、フラットスクリュー40の回転数の減少と、可塑化部30の温度の低下と、ノズル61の温度の低下と、の少なくともいずれか1つを実行する。ステップS180において設定値が変更されることによって、設定値が変更された以降の工程において、吐出部200における造形材料の流動性が低下し、吐出部200から吐出される造形材料の吐出量が減少する。
【0050】
ステップS170において、第1隙間Gp1が第2隙間Gp2よりも小さくないと判定された場合、制御部500は、ステップS120へと処理を戻し、次の層を造形する。この再度実行されるステップS120において、第3部分経路に対応する第3部分造形物が造形される。なお、ステップS170は、第1隙間Gp1が第2隙間Gp2よりも大きくないと判定された場合に実行される。従って、ステップS170において、第1隙間Gp1が第2隙間Gp2よりも小さくないと判定された場合、第1隙間Gp1と第2隙間Gp2とは等しい。
【0051】
ステップS160が実行された後や、ステップS180が実行された後にも、制御部500は、ステップS120へと処理を戻し、次の層を造形する。この場合も、再度実行されるステップS120において、第3部分経路に対応する第3部分造形物が造形される。ステップS160やステップS180において設定値が変更されていた場合、再度実行されるステップS120において、吐出部200は変更された設定値に基づいて制御される。例えば、図6に示した例では、第3部分経路における吐出量は、第1設定値変更処理が行われない場合と比べて増加する。
【0052】
以上で説明した本実施形態の三次元造形物OAの製造方法によれば、第3工程において、第1隙間Gp1と第2隙間Gp2との差異に基づいて、第3部分経路における吐出量を調整する。そのため、第3部分経路において、意図した吐出量の造形材料が吐出される可能性が向上し、三次元造形物OAの造形精度が向上する。
【0053】
また、本実施形態では、調整処理として、第1隙間Gp1が第2隙間Gp2よりも大きい場合、第3部分経路における吐出量を増加させる。これによって、第3部分経路において、実際に吐出される造形材料の吐出量が、意図した吐出量に対して不足する可能性が低減する。そのため、第3部分経路において、意図した吐出量の造形材料が吐出される可能性が向上し、三次元造形物OAの造形精度が向上する。
【0054】
また、本実施形態では、調整処理として、第1隙間Gp1が第2隙間Gp2よりも小さい場合、第3部分経路における吐出量を減少させる。これによって、第3部分経路において、実際に吐出される造形材料の吐出量が、意図した吐出量に対して過剰となる可能性が低減する。そのため、第3部分経路において、意図した吐出量の造形材料が吐出される可能性がより向上し、三次元造形物OAの造形精度がより向上する。
【0055】
また、本実施形態では、第3工程において、吐出部200における造形材料の吐出に関する設定値を変更することによって、調整処理を行う。そのため、設定値を変更することによって吐出部200における造形材料の流動性を調整し、第3部分経路における吐出量を調整できる。
【0056】
また、本実施形態では、第3工程において、設定値として、フラットスクリュー40の回転数と、可塑化部30の温度と、ノズル61の温度と、の少なくともいずれか1つの値を変更する。そのため、吐出部200がフラットスクリュー40を有する可塑化部30とノズル61とを備える場合に、簡易な制御によって、吐出部200における造形材料の流動性を調整し、第3部分経路における吐出量を調整できる。
【0057】
図7は、本実施形態において製造される、三次元造形物OAaの一部の断面形状の一例を示す図である。図7に示すように、第1隙間Gp1は、第1部分造形物OA1aと第2部分造形物OA2aとの間に形成された空間の断面積として測定されてもよい。この場合、例えば、測定部80は、第1部分造形物OA1aと第2部分造形物OA2aとの間の高さを測定し、第1部分造形物OA1aから第2部分造形物OA2aへの高さの変化を積算することによって、第1隙間Gp1を測定する。図7の例では、第1部分造形物OA1aと第2部分造形物OA2aとの間隔は0であるが、第1部分造形物OA1aと第2部分造形物OA2aの間に空間が形成されている。従って、第1隙間Gp1は0を超える値を有する。
【0058】
また、図7に示すように、第1部分造形物OA1aと第2部分造形物OA2aとの間の第2隙間の大きさが0の場合であっても、上述の図5に示した製造方法を適用することができる。第2隙間の大きさが0の場合とは、例えば、第2隙間が生じない三次元造形物を造形する場合や、制御部500によって第2隙間が生じないと算出された場合を指す。図7には、第1部分造形物OA1aの仮想的な形状と、第2部分造形物OA2aの仮想的な形状とが、一点鎖線によって示されている。図7では、第2隙間の大きさが0であるため、第2隙間は図示されていない。図7では、第1隙間Gp1aは0を超える値を有するため、第1隙間Gp1aは第2隙間よりも大きい。従って、図5に示したステップS150において、制御部500は、第1隙間Gp1aが第2隙間よりも大きいと判定し、ステップS160において第1設定値変更処理を行う。これによって、第3部分経路における吐出量は、第1設定値変更処理が行われない場合と比較して増加する。
【0059】
なお、第1隙間は、例えば、第1部分造形物OA1aと第2部分造形物OA2aとの間に形成された空間の体積として測定されてもよい。この場合、制御部500は、第1部分造形物と第2部分造形物との間に形成された空間の断面積を、図7に示した例と同様に測定し、測定した断面積を第1部分経路や第2部分経路に沿った方向に積算することによって、第1隙間を測定することができる。
【0060】
ここで、上述した三次元造形装置100において用いられる三次元造形物OAの材料について説明する。三次元造形装置100では、例えば、熱可塑性を有する材料や、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料として三次元造形物を造形することができる。ここで、「主材料」とは、三次元造形物OAの形状を形作っている中心となる材料を意味し、三次元造形物OAにおいて50重量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した造形材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0061】
主材料として熱可塑性を有する材料を用いる場合には、可塑化部30において、当該材料が可塑化することによって、造形材料が生成される。
【0062】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、下記の熱可塑性樹脂材料を用いることができる。
<熱可塑性樹脂材料の例>
ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチック、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチック。
【0063】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、可塑化部30において、フラットスクリュー40の回転とヒーター58の加熱によって可塑化されて溶融した状態に転化される。熱可塑性を有する材料の溶融によって生成された造形材料は、ノズル61から吐出された後、温度の低下によって硬化する。
【0064】
熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル61から射出されることが望ましい。例えば、ABS樹脂を用いる場合、ノズル61からの吐出時には約200℃であることが望ましい。
【0065】
三次元造形装置100では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、以下の金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、下記の金属材料を粉末状にした粉末材料に、造形材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、材料MRとして可塑化部30に投入されることが望ましい。
<金属材料の例>
マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金。
<前記合金の例>
マルエージング鋼、ステンレス、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金。
【0066】
三次元造形装置100においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスなどが使用可能である。主材料として、上述したような金属材料やセラミック材料を用いる場合には、ステージ300上に吐出された造形材料は焼結によって硬化されてもよい。
【0067】
材料供給部20に材料MRとして投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上で例示したような熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、可塑化部30において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0068】
材料供給部20に材料MRとして投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のような溶剤を添加することもできる。溶剤は、下記の中から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<溶剤の例>
水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等。
【0069】
その他に、材料供給部20に材料MRとして投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のようなバインダーを添加することもできる。
<バインダーの例>
アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂あるいはその他の合成樹脂又はPLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)あるいはその他の熱可塑性樹脂。
【0070】
B.第2実施形態:
図8は、第2実施形態における三次元造形物OAの製造方法の一例を示す工程図である。第2実施形態の三次元造形装置100の構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、第2実施形態の三次元造形物OAの製造方法のうち、特に説明しない点については、第1実施形態と同様である。
【0071】
第2実施形態では、制御部500は、第1実施形態と異なり、第3工程において、吐出量データを変更することによって、調整処理を行う。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、図4及び図6に示した三次元造形物OAを造形する。
【0072】
図8に示したステップS210からステップS250の工程については、図5に示したステップS110からステップS150の工程と同様であるため、説明を省略する。本実施形態では、ステップS250と、以下のステップS260からステップS280と、において、第3部分経路に対応する吐出量データを変更することによって、調整処理を行う。
【0073】
ステップS250において、第1隙間Gp1が第2隙間Gp2よりも大きいと判定された場合、ステップS260にて、制御部500は、第1吐出量データ変更処理を行うことによって、調整処理を行う。ステップS260において、制御部500は、第1吐出量データ変更処理として、第3部分経路に対応する吐出量データを変更することによって、第3部分経路における吐出量を調整して、第3部分経路における吐出量を増加させる。図6に示した例では、制御部500は、ステップS260において、第1吐出量データ変更処理を実行し、第3部分経路における吐出量を増加させる。
【0074】
本実施形態では、制御部500は、吐出部200から単位時間あたりに吐出される造形材料の量と、吐出部200の移動速度と、の少なくともいずれか一方を変更することによって、吐出量データを変更する。これらのうちいずれか一方を変更することによって、吐出部200の単位移動量あたりに吐出される造形材料の量が変化する。ステップS260では、制御部500は、吐出部200から単位時間あたりに吐出される造形材料の量を増加させてもよいし、吐出部200の移動速度を減少させてもよいし、これらの両方を実行してもよい。
【0075】
ステップS270は、図4のステップS170と同様であるため、説明を省略する。
【0076】
ステップS270において、第1隙間Gp1が第2隙間Gp2よりも小さいと判定された場合、ステップS280にて、制御部500は、第2吐出量データ変更処理を行うことによって、調整処理を行う。ステップS280において、制御部500は、第2吐出量データ変更処理として、第3部分経路に対応する吐出量データを変更することによって、第3部分経路における吐出量を調整して、第3部分経路における吐出量を減少させる。ステップS280では、制御部500は、吐出部200から単位時間あたりに吐出される造形材料の量を減少させてもよいし、吐出部200の移動速度を向上させてもよいし、これらの両方を実行してもよい。
【0077】
以上で説明した第2実施形態の三次元造形物の製造方法によっても、第3部分経路において、意図した吐出量の造形材料を吐出できる可能性が向上し、造形物の造形制度が向上する。特に、本実施形態では、吐出量データを変更することによって、第3部分経路における吐出量を調整できる。
【0078】
また、本実施形態では、吐出部200から単位時間あたりに吐出される造形材料の量と、吐出部200の移動速度と、の少なくともいずれか一方を変更することによって、吐出量データを変更する。そのため、吐出部200から単位時間あたりに吐出される造形材料の量や、吐出部200の移動速度が変更されることによって、第3部分経路における吐出量が調整される。
【0079】
C.第3実施形態:
図9は、第3実施形態における三次元造形物OAcの製造方法の一例を示す工程図である。第3実施形態の三次元造形装置100の構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、第3実施形態の三次元造形物OAcの製造方法のうち、特に説明しない点については、第1実施形態と同様である。
【0080】
図10は、第3実施形態において製造される、三次元造形物OAcの1つの層の平面形状の一例を示す図である。図10には、三次元造形物OAcの1つの層において内部形状が完成した状態を、+Z方向から見た様子が示されている。図10には、1層分の層を造形するための各経路が破線によって示されている。また、図10では、各経路に沿って吐出された造形材料にハッチングが施されている。内部形状とは、三次元造形物OAcの外殻形状の内側部分のことを指す。外殻形状とは、三次元造形物OAcのうち、三次元造形物OAcの外殻を構成する部分を指す。外殻形状は、三次元造形物OAcの外観に影響を与える部分である。内部形状は、具体的には、三次元造形物OAcの外殻形状を造形するための経路に従って吐出される造形材料や、他の層に囲まれることによって、外部から視認できない部分として造形される。
【0081】
本実施形態では、第1部分造形物OA1c及び第2部分造形物OA2cは、三次元造形物OAcの内部形状として造形される。これに対して、第3部分造形物は、三次元造形物OAcの外殻形状として造形される。
【0082】
図9に示したステップS310は、図5に示したステップS110と同様であるため、説明を省略する。
【0083】
ステップS320にて、制御部500は、内部形状を造形する。本実施形態では、制御部500は、図10に示したように、吐出部200を、地点S1を始点として、地点G1へ向かって移動させることによって、内部形状を造形する。上述したように、三次元造形物OAcの内部形状には、第1部分造形物OA1c及び第2部分造形物OA2cが含まれる。なお、図10に示した例では、制御部500は、吐出部200を、地点S2を始点として、地点G2へ向かって移動させることによって、三次元造形物OAcの外殻形状を造形する。三次元造形物OAcの外殻形状を造形するための造形データには、第3部分経路Rt3が含まれる。
【0084】
ステップS330とステップS140、ステップS340とステップS150、ステップS350とステップS160、ステップS360とステップS170、及び、ステップS370とステップS180は、それぞれ同様であるため、説明を省略する。なお、図10に示した例では、ステップS340にて、制御部500は、第1隙間Gp1cが、第2隙間Gp2cよりも大きいと判定する。その後、ステップS350にて、制御部500は、調整処理として第1設定値変更処理を実行し、第3部分経路Rt3における吐出量を増加させる。
【0085】
ステップS380にて、制御部500は、外殻形状を造形する。このとき、上述したように、外殻形状として第3部分造形物が造形される。図10に示した例では、ステップS380において、第3部分経路Rt3における吐出量が、調整処理が行われない場合と比較して増加する。
【0086】
以上で説明した第3実施形態の三次元造形物OAcの製造方法によっても、第3部分経路Rt3において、意図した吐出量の造形材料を吐出できる可能性が向上し、三次元造形物OAcの造形制度が向上する。特に、本実施形態では、内部形状として造形された第1部分造形物OA1c及び第2部分造形物OA2cの間の隙間に基づいて、第3部分経路Rt3における吐出量が調整され、三次元造形物OAcの外殻形状として第3部分造形物が造形される。そのため、三次元造形物の外殻形状の造形精度がより向上する。
【0087】
なお、第3実施形態のように、第1部分造形物OA1c及び第2部分造形物OA2cを、三次元造形物OAcの内部形状として造形し、第3部分造形物を三次元造形物OAcの外殻形状として造形する場合、第1部分造形物OA1c及び第2部分造形物OA2cと、第3部分造形物とが、同じ層に含まれなくてもよい。従って、第3部分経路Rt3は、例えば、第1実施形態と同様に、第1部分経路Rt1や第2部分経路Rt2に従って造形される層の次の層を造形するための経路であってもよい。この場合、例えば、ある層の外部形状を造形した後に、その層の内部形状として第1部分造形物OA1c及び第2部分造形物OA2cを含む部分を造形した後、調整処理を行い、次の層の外殻形状として第3部分造形物を造形してもよい。この場合であっても、第1部分造形物OA1c及び第2部分造形物OA2cを含む層の次の層として造形される三次元造形物の外殻形状の造形精度が、より向上する。
【0088】
D.第4実施形態:
図11は、第4実施形態における三次元造形物OAdの製造方法の一例を示す工程図である。図12は、第4実施形態において、造形材料を積層して三次元造形物OAd及び補助造形物OBを造形する様子を示す図である。第4実施形態の三次元造形装置100の構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、第4実施形態の三次元造形物OAdの製造方法のうち、特に説明しない点については、第1実施形態と同様である。
【0089】
第4実施形態では、制御部500は、三次元造形処理において、図12に示すように、三次元造形物OAd及び補助造形物OBを造形する。制御部500は、三次元造形物OAdをステージ300上の造形領域Rcに造形し、補助造形物OBを造形領域Rcと異なる領域に造形する。造形領域とは、ステージ300上のうち、三次元造形物OAdが造形される領域のことを指す。図12には、三次元造形物OAdの5層目が完成し、補助造形物OBの5層目が造形されている途中の様子が示されている。
【0090】
図12に示すように、本実施形態では、補助造形物OBは、ステージ300上の、造形領域Rcと異なる領域に造形される。他の実施形態では、補助造形物OBは、造形領域Rcと異なる領域として、ステージ300と異なる領域に造形されてもよい。例えば、三次元造形装置100が、ステージ300と異なる他のステージを備える場合、補助造形物OBは他のステージ上に造形されてもよい。
【0091】
図13は、第4実施形態において製造される、補助造形物OBの1つの層の平面形状の一例を示す図である。図13には、完成した補助造形物OBの1つの層を、+Z方向から見た様子が示されている。図13には、補助造形物OBの1層分の層を造形するための各経路が破線によって示されている。また、図13では、各経路に沿って吐出された造形材料にハッチングが施されている。図13に示すように、補助造形物OBには、第1部分造形物OB1及び第2部分造形物OB2が含まれる。従って、補助造形物OBが造形される際には、第1工程が実行される。また、第1部分造形物OB1及び第2部分造形物OB2は、造形領域Rcと異なる領域に造形される。
【0092】
図11に示したステップS410は、図5に示したステップS110と同様であるため、説明を省略する。
【0093】
ステップS420にて、制御部500は、吐出部200から造形材料を吐出させて、造形領域Rcに、三次元造形物OAdの1層分を造形する。次に、ステップS430にて、制御部500は、三次元造形物OAdの全層が完成したか判定する。ステップS430において三次元造形物OAdの全層が完成していないと判定された場合、ステップS440にて、制御部500は、補助造形物OBの1層分を造形する。従って、ステップS420では、第1工程に先立って、三次元造形物OAdの一部である層が造形される。なお、ステップS430において三次元造形物OAdの全層が完成したと判定された場合、制御部500は、三次元造形物OAdの製造を終了する。
【0094】
ステップS440では、制御部500は、ステップS420で造形した層が固化するまでの少なくとも一部の期間において、補助造形物OBの1層分を造形する。なお、「固化」とは、吐出部200から吐出された造形材料が流動性を失うことを指す。本実施形態では、造形材料は、冷えることによって可塑性を失って固化する。
【0095】
図12に示した例では、三次元造形物OAdの5層目が固化している間に、制御部500が、補助造形物OBの5層目を造形している。これによって、例えば、制御部500は、三次元造形物OAdの5層目の上に後続の6層目を積層する場合、5層目が固化した後に、6層目を積層することができる。そのため、三次元造形物OAdの固化していない層の上に造形材料が吐出されることが抑制され、三次元造形物OAdの造形精度が高まる。さらに、三次元造形物OAdが固化するまでの間も、吐出部200から造形材料が吐出されるため、吐出部200内での造形材料の滞留が抑制される。
【0096】
本実施形態では、補助造形物OBは、造形中の三次元造形物OAdと略等しい高さを有する略四角柱形状に形成される。造形材料を積層して略柱状に形成された補助造形物OBのことを、プライムピラーと呼ぶこともある。なお、補助造形物OBは他の形状であってもよい。例えば、略円柱状のプライムピラーであってもよいし、略柱状でなくてもよい。
【0097】
ステップS450にて、制御部500は、補助造形物OBの一部として造形された、第1部分造形物OB1と第2部分造形物OB2との間の隙間を測定する。
【0098】
ステップS460とステップS150、ステップS470とステップS160、ステップS480とステップS170、及び、ステップS490とステップS180は、それぞれ同様であるため、説明を省略する。なお、図13に示した例では、ステップS460にて、制御部500は、第1隙間Gp1dが、第2隙間Gp2dよりも大きいと判定する。その後、ステップS470にて、制御部500は、第1設定値変更処理を実行することによって調整処理を行い、第3部分経路における吐出量を増加させる。
【0099】
ステップS480において、第1隙間Gp1dが第2隙間Gp2dよりも小さくないと判定された場合、制御部500は、ステップS420へと処理を戻し、三次元造形物OAdの次の層を造形する。ステップS470が実行された後や、ステップS490が実行された後にも、制御部500は、ステップS420へと処理を戻し、次の層を造形する。この再度実行されるステップS420において、第3部分経路に対応する第3部分造形物が、造形領域Rcに造形される。例えば、図13で造形された補助造形物OBの層が5層目であった場合、再度実行されるステップS420において、三次元造形物OAdの6層目として、第3部分造形物が造形される。ステップS460からステップS490において設定値変更処理が実行されていた場合、再度実行されるステップS420において、吐出部200は変更された設定値に基づいて制御される。図13に示した例では、第3部分経路における吐出量は、調整処理が行われない場合と比べて増加する。
【0100】
以上で説明した第4実施形態の三次元造形物OAdの製造方法によっても、第3部分経路において、意図した吐出量の造形材料を吐出できる可能性が向上し、三次元造形物OAdの造形制度が向上する。特に、本実施形態では、造形領域と異なる領域に造形された第1部分造形物OB1及び第2部分造形物OB2の間の隙間に基づいて、第3部分経路における吐出量が調整され、造形領域Rcに第3部分造形物が造形される。そのため、三次元造形物OAdの造形精度が、より向上する。
【0101】
また、本実施形態では、第1工程に先立って、造形領域Rcに三次元造形物OAdの少なくとも一部である層が造形され、層を構成する造形材料が固化するまでの少なくとも一部の期間において、第1工程が実行される。そのため、造形領域Rcの三次元造形物OAdの層を構成する造形材料を固化させている間に造形領域Rcと異なる領域に造形される、第1部分造形物OB1と第2部分造形物OB2との間の隙間に基づいて、第3部分経路における吐出量が調整され、造形領域Rcに第3部分造形物が造形される。そのため、三次元造形物OAdの造形精度が、より向上する。
【0102】
E.第5実施形態:
図14は、第5実施形態における三次元造形物の製造方法の一例を示す工程図である。第5実施形態の三次元造形装置100の構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、第5実施形態の三次元造形物の製造方法のうち、特に説明しない点については、第1実施形態と同様である。
【0103】
第5実施形態では、上述した第4実施形態の場合と同様に、第3部分造形物がステージ300の造形領域に造形され、かつ、第1部分造形物及び第2部分造形物が造形領域と異なる領域に造形される。一方で、第5実施形態では、制御部500は、第4実施形態と異なり、補助造形物OBを造形しない。
【0104】
図14のステップS510は、図5のステップS110と同様であるため、説明を省略する。
【0105】
ステップS520にて、制御部500は、第1部分造形物及び第2部分造形物を含む調整用の層を造形する。このとき、第1工程が実行される。なお、調整用の層は、第4工程における補助造形物OBと同様に、ステージ300上の造形領域と異なる領域に造形されてもよいし、ステージ300と異なる領域に造形されてもよい。
【0106】
ステップS540とステップS150、ステップS550とステップS160、ステップS560とステップS170、及び、ステップS570とステップS180は、それぞれ同様であるため、説明を省略する。
【0107】
ステップS550又はステップS570が実行された後、若しくは、ステップS560において第1隙間が第2隙間よりも小さいと判定された場合、ステップS580にて、制御部500は、三次元造形物の一部として、造形領域に第3部分造形物を造形する。
【0108】
以上で説明した第5実施形態の三次元造形物の製造方法によっても、第3部分経路において、意図した吐出量の造形材料を吐出できる可能性が向上し、三次元造形物の造形制度が向上する。特に、本実施形態では、造形領域と異なる領域に造形された第1部分造形物及び第2部分造形物の間の隙間に基づいて、第3部分経路における吐出量が調整され、造形領域に第3部分造形物が造形される。そのため、三次元造形物の造形精度が、より向上する。
【0109】
F.第6実施形態:
図15は、第6実施形態における三次元造形物OAeの製造方法の一例を示す工程図である。図16は、第6実施形態の造形処理に含まれる高さ判定工程の一例を示す工程図である。図17は、第6実施形態における三次元造形物OAeの一部の断面形状の一例を示す図である。第6実施形態の三次元造形装置100の構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、第6実施形態の三次元造形物OAeの製造方法のうち、特に説明しない点については、第1実施形態と同様である。第6実施形態の三次元造形物OAeの製造方法は、第1実施形態と異なり、第3工程において、後述する高さ判定処理を行う。
【0110】
図15に示したステップS610からステップS680は、図5に示したステップS110からステップS180と同様であるため、説明を省略する。
【0111】
ステップS670において、図17に示した第1隙間Gp1eが第2隙間Gp2eよりも小さくないと判定された場合、制御部500は、ステップS700にて、第3工程として、高さ判定工程を実行する。なお、ステップS670は、ステップS650において第1隙間Gp1eが第2隙間Gp2eよりも大きくないと判定された場合に実行される。従って、第1隙間Gp1eが第2隙間と等しい場合に、ステップS700が実行される。図17に示した例では、第1隙間Gp1eは第2隙間Gp2eと等しい。
【0112】
図15に示したステップS700の高さ判定工程では、図16に示した高さ判定処理が実行される。図16に示した高さ判定処理では、まず、ステップS702にて、制御部500は、測定部80を制御して、図17に示した第1高さh1を測定する。第1高さh1とは、第1部分造形物OA1eと第2部分造形物OA2eとの少なくともいずれか一方の高さを表す。造形物の高さとは、三次元造形物OAeの層の積層方向における、第1部分造形物OA1eや第2部分造形物OA2eの寸法を表す。本実施形態では、第1高さh1として、第2部分造形物OA2eの高さを測定する。
【0113】
本実施形態の測定部80は、第1実施形態と同様に、レーザー発振部とレーザー受光部とを備える。測定部80は、ステップS702において、第1部分造形物OA1や第2部分造形物OA2に向かってレーザーを照射し、照射したレーザーを受光するまでの時間に基づいて第1部分造形物OA1や第2部分造形物OA2の高さを測定し、測定した高さから第1部分造形物OA1及び第2部分造形物OA2を含む層に先立って造形された層の高さを差し引くことによって、第1高さを測定する。なお、測定部80は、先立って造形された層の高さも、先立って造形された層に照射したレーザーを受光するまでの時間に基づいて測定できる。
【0114】
第1高さh1に対して、造形データから定まる第1高さh1に対応する高さを、第2高さh2と呼ぶ。第2高さh2は、例えば、第1部分経路Rt1や第2部分経路Rt2における吐出量から、第1部分造形物OA1eの仮想的な形状や、第2部分造形物OA2eの仮想的な形状が算出されることによって、定められる。
【0115】
ステップS704にて、制御部500は、第1高さh1が第2高さh2よりも高いか否かを判定する。
【0116】
ステップS704において、第1高さh1が第2高さh2よりも高いと判定された場合、ステップS706にて、制御部500は、第3設定値変更処理を行う。本実施形態では、制御部500は、ステップS706において、第3設定値変更処理として、図15に示したステップS680と同様に、吐出部200の吐出に関する設定値を変更する。すなわち、制御部500は、ステップS706において、設定値を変更することによって、第3部分経路における吐出量を調整して、第3部分経路における吐出量を減少させる。
【0117】
ステップS704において、第1高さh1が第2高さh2よりも高くないと判定された場合、ステップS708にて、制御部500は、第1高さh1が第2高さh2よりも低いか否かを判定する。図16に示した例では、ステップS708において、制御部500は、第1高さh1が第2高さh2よりも低いと判定する。
【0118】
ステップS708において、第1高さh1が第2高さh2よりも低いと判定された場合、ステップS710にて、制御部500は、第4設定値変更処理を行う。ステップS710において、制御部500は、第4設定値変更処理として、図15に示したステップS660と同様に、設定値を変更する。すなわち、制御部500は、ステップS710において、設定値を変更することによって、第3部分経路における吐出量を調整して、第3部分経路における吐出量を増加させる。図17に示した例では、ステップS710において、制御部500は、第4設定値変更を実行し、第3部分経路における吐出量を増加させる。
【0119】
なお、ステップS708は、第1高さh1が第2高さh2よりも高くないと判定された場合に実行される。従って、ステップS708において、第1高さh1が第2高さh2よりも低くないと判定された場合、第1隙間高さh1と第2高さh2とは等しい。
【0120】
図15に示したステップS700の高さ判定工程が実行された後、制御部500は、ステップS660が実行された場合や、ステップS680が実行された場合と同様に、ステップS620へと処理を戻し、次の層を造形する。この再度実行されるステップS620において、第3部分経路に対応する第3部分造形物が造形される。ステップS700の高さ判定工程において、設定値が変更されていた場合、再度実行されるステップS620において、吐出部200は変更された設定値に基づいて制御される。図17に示した例では、第3部分経路における吐出量は、高さ判定工程において設定値が変更されなかった場合と比べて増加する。
【0121】
以上で説明した第5実施形態の三次元造形物OAeの製造方法によっても、第3部分経路において、意図した吐出量の造形材料を吐出できる可能性が向上し、三次元造形物OAeの造形制度が向上する。特に、本実施形態では、第1部分造形物OA1e及び第2部分造形物OA2eの間の隙間だけでなく、第1部分造形物OA1eや第2部分造形物OA2eの高さに基づいても、第3部分経路における吐出量が調整される。そのため、第3部分経路において、意図した吐出量の造形材料を吐出できる可能性がより向上し、三次元造形物OAeの造形精度がより高まる。
【0122】
G.他の実施形態:
(G-1)上記実施形態において、制御部500は、第3工程において、調整処理として、第1隙間が第2隙間よりも大きい場合、第3部分経路における吐出量を増加させ、第1隙間が第2隙間よりも小さい場合、第3部分経路における吐出量を減少させている。これに対して、制御部500は、調整処理として、上記の吐出量の増加と吐出量の減少とのうち、いずれか一方のみを実行してもよい。
【0123】
(G-2)上記実施形態において、制御部500は、吐出量データを変更する場合、吐出部200から単位時間あたりに吐出される造形材料の量と、吐出部200がステージ300に対して相対的に移動する移動速度と、の少なくともいずれか一方を変更している。これに対して、例えば、吐出量データが各経路における吐出量そのものを規定するデータである場合、制御部500は、吐出量データに含まれる吐出量そのものを変更することによって、吐出量データを変更してもよい。
【0124】
(G-3)上記実施形態において、制御部500は、設定値として、フラットスクリューの40の回転数と、可塑化部30の温度と、ノズル61の温度と、の少なくともいずれか1つを制御する値を変更している。これに対して、制御部500は、設定値として、他の値を変更してもよい。例えば、上記実施形態のように、吐出部200が吐出量調節機構70を有している場合、制御部500は、吐出量調節機構70の開度を制御する値を変更してもよい。また、制御部500は、例えば、フラットスクリュー40の回転数や、可塑化部30の温度や、ノズル61の温度を制御する値を変更してもよい。この場合、制御部500は、設定値の変更として、駆動モーター32の出力や、ヒーター58の出力や、ノズルヒーター75の出力を変更してもよい。
【0125】
(G-4)上記実施形態において、制御部500は、第2工程において、測定部80を制御することによって測定される第1部分造形物と第2部分造形物との間の隙間を、第1隙間として測定している。これに対して、例えば、制御部500は、第1隙間を、測定部80によって測定される複数の隙間を統計処理することによって測定してもよい。また、制御部500は、例えば、第1工程において、複数の第1部分造形物及び第2部分造形物を造形し、第2工程において、測定部80によって測定される複数の第1部分造形物及び第2部分造形物の間の隙間の和を、第1隙間としてもよい。この場合、制御部500は、例えば、造形データから定まる複数の隙間の和を第2隙間とし、第3工程において、第1隙間と第2隙間とを比較してもよい。
【0126】
(G-5)上記実施形態において、制御部500は、三次元造形物の1層分を造形するごとに、第2工程を実行し、第1隙間を測定している。これに対して、制御部500は、例えば、三次元造形物の2層分や3層分以上を造形するごとに第2工程を実行してもよいし、三次元造形物の1層分を造形している途中で、第2工程を実行してもよい。
【0127】
(G-6)上記の第3実施形態から第6実施形態では、制御部500は、第3工程において、吐出部200における造形材料の吐出に関する設定値を変更することによって、調整処理を行っている。これに対して、制御部500は、第3実施形態から第6実施形態において、第2実施形態と同様に、第3部分経路に対応する吐出量データを変更することによって、調整処理を行ってもよい。
【0128】
(G-7)上記実施形態では、測定部80は、レーザー発信部とレーザー受光部とを備え、レーザーを用いて造形材料同士の間の隙間や、造形材料の高さを測定している。これに対して、測定部80は、レーザー発信部とレーザー受光部とを備える測定器でなくてもよい。例えば、カメラと制御部500とによって、測定部80の機能が実現されてもよい。この場合、制御部500は、CCDカメラやCMOSカメラ等によって取得された画像データを解析することによって、隙間や高さを測定することができる。また、制御部500は、例えば、カメラによって取得された複数の画像データを用いることによって、隙間や高さの測定精度を高めてもよい。他にも、例えば、赤外線受光部を備える温度センサーと制御部500とによって、測定部80の機能が実現されてもよい。この場合、制御部500は、温度センサーによって測定された温度分布を解析することによって、隙間や高さを測定することができる。また、隙間を測定する測定器と、第1部分造形物や第2部分造形物の高さを測定する測定器とが、それぞれ別体で設けられていてもよい。
【0129】
H.他の形態:
本開示は、上述の各実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態によって実現することができる。例えば、本開示は以下の形態として実現可能である。以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する上記の各実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中において必須であると説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0130】
(1)本開示の第1の形態によれば、吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて三次元造形物を造形する三次元造形物の製造方法が提供される。この三次元造形物の製造方法は、吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて三次元造形物を造形する三次元造形物の製造方法であって、前記吐出部が前記造形材料を吐出しながら移動する経路を複数有し、互いに隣り合う前記経路である第1部分経路及び第2部分経路を含む経路データ、及び、各前記経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量データを有する造形データに従って、前記第1部分経路に対応する第1部分造形物、及び、前記第2部分経路に対応する第2部分造形物を造形する第1工程と、前記第1部分造形物と前記第2部分造形物との間の隙間を表す第1隙間を測定する第2工程と、前記第1隙間と、前記造形データから定まる前記第1隙間に対応する第2隙間と、の差異に基づいて、前記第1部分経路及び前記第2部分経路よりも後に前記吐出部が移動する前記経路である第3部分経路における前記吐出量を調整する調整処理を行う第3工程と、を備える。
このような形態によれば、第3部分経路において、意図した吐出量の造形材料が吐出される可能性が向上し、三次元造形物の造形精度が向上する。
【0131】
(2)上記形態の三次元造形物の製造方法において、前記第3工程において、前記調整処理として、前記第1隙間が前記第2隙間よりも大きい場合、前記第3部分経路における前記吐出量を増加させてもよい。このような形態によれば、第3部分経路において、実際に吐出される造形材料の吐出量が、意図した吐出量に対して不足する可能性が低減する。そのため、第3部分経路において、意図した吐出量の造形材料が吐出される可能性が向上し、三次元造形物の造形精度が向上する。
【0132】
(3)上記形態の三次元造形物の製造方法において、前記第3工程において、前記調整処理として、前記第1隙間が前記第2隙間よりも小さい場合、前記第3部分経路における前記吐出量を減少させてもよい。このような形態によれば、第3部分経路において、実際に吐出される造形材料の吐出量が、意図した吐出量に対して過剰となる可能性が低減する。そのため、第3部分経路において、意図した吐出量の造形材料が吐出される可能性がより向上し、三次元造形物の造形精度がより向上する。
【0133】
(4)上記形態の三次元造形物の製造方法において、前記第3工程において、前記第1隙間が、前記第2隙間と等しい場合、前記第1部分造形物と前記第2部分造形物との少なくともいずれか一方の第1高さを測定し、前記第1高さが、前記造形データから定まる前記第1高さに対応する第2高さより高い場合、前記第3部分経路における前記吐出量を減少させ、前記第1高さが前記第2高さより低い場合、前記第3部分経路における前記吐出量を増加させてもよい。このような形態によれば、第1部分造形物及び第2部分造形物の間の隙間だけでなく、第1部分造形物や第2部分造形物の高さに基づいても、第3部分経路における吐出量が調整される。そのため、第3部分経路において、意図した吐出量の造形材料を吐出できる可能性がより向上し、三次元造形物の造形精度がより高まる。
【0134】
(5)上記形態の三次元造形物の製造方法において、前記第3工程において、前記第3部分経路に対応する前記吐出量データを変更することによって、前記調整処理を行ってもよい。このような形態によれば、吐出量データを変更することによって、第3部分経路における吐出量を調整できる。
【0135】
(6)上記形態の三次元造形物の製造方法において、前記第3工程において、前記吐出部から単位時間あたりに吐出される前記造形材料の量と、前記吐出部が前記ステージに対して相対的に移動する移動速度と、の少なくともいずれか一方を変更することによって、前記第3部分経路に対応する前記吐出量データを変更してもよい。このような形態によれば、吐出量データの変更として、吐出部から単位時間あたりに吐出される造形材料の量や、吐出部の移動速度を変更することによって、第3部分経路における吐出量を調整できる。
【0136】
(7)上記形態の三次元造形物の製造方法において、前記第3工程において、前記吐出部における前記造形材料の吐出に関する設定値を変更することによって、前記調整処理を行ってもよい。このような形態によれば、設定値を変更することによって吐出部における造形材料の流動性を調整し、第3部分経路における吐出量を調整できる。
【0137】
(8)上記形態の三次元造形物の製造方法において、前記吐出部は、材料を可塑化して前記造形材料を生成する可塑化部と、前記造形材料を吐出するノズルと、を備え、前記可塑化部は、溝が形成された溝形成面を有するフラットスクリューを備え、前記第3工程において、前記設定値として、前記フラットスクリューの回転数と、前記可塑化部の温度と、前記ノズルの温度と、の少なくともいずれか1つの値を変更してもよい。このような形態によれば、吐出部がフラットスクリューを有する可塑化部とノズルとを備える場合に、簡易な制御によって、吐出部における造形材料の流動性を調整し、第3部分経路における吐出量を調整できる。
【0138】
(9)上記形態の三次元造形物の製造方法において、前記第3部分経路に対応する第3部分造形物は、外殻形状として造形され、前記第1部分造形物及び前記第2部分造形物は、前記外殻形状の内側部分である内部形状として造形されてもよい。このような形態によれば、内部形状として造形された第1部分造形物及び第2部分造形物の間の隙間に基づいて、第3部分経路における吐出量が調整され、三次元造形物の外殻形状として第3部分造形物が造形される。そのため、三次元造形物の外殻形状の造形精度がより向上する。
【0139】
(10)上記形態の三次元造形物の製造方法において、前記第3部分造形物は、前記ステージ上の造形領域に造形され、前記第1部分造形物及び前記第2部分造形物は、前記造形領域と異なる領域に造形されてもよい。このような形態によれば、造形領域と異なる領域に造形された第1部分造形物及び第2部分造形物の間の隙間に基づいて、第3部分経路における吐出量が調整され、造形領域に第3部分造形物が造形される。そのため、三次元造形物の造形精度が、より向上する。
【0140】
(11)上記形態の三次元造形物の製造方法において、前記第1工程に先立って、前記吐出部から前記造形材料を吐出することによって、前記造形領域に、前記三次元造形物の一部である層を造形し、前記層を構成する前記造形材料が固化するまでの少なくとも一部の期間において、前記第1工程を実行してもよい。このような形態によれば、造形領域の三次元造形物の層を構成する造形材料を固化させている間に造形領域と異なる領域に造形される、第1部分造形物と第2部分造形物との間の隙間に基づいて、第3部分経路における吐出量が調整され、造形領域に第3部分造形物が造形される。そのため、三次元造形物の造形精度が、より向上する。
【0141】
(12)本開示の第2の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、ステージに向けて造形材料を吐出する吐出部と、前記吐出部と前記ステージとの相対的な位置を変化させる移動機構と、吐出された前記造形材料同士の間の隙間を測定する測定部と、前記吐出部と前記移動機構と前記測定部とを制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記吐出部が前記造形材料を吐出しながら移動する経路を複数有し、互いに隣り合う前記経路である第1部分経路及び第2部分経路を含む経路データ、及び、各前記経路における前記造形材料の吐出量を表す吐出量データを有する造形データに従って、前記吐出部と前記移動機構とを制御することによって、前記第1部分経路に対応する第1部分造形物、及び、前記第2部分経路に対応する第2部分造形物を造形し、前記測定部を制御することによって、前記第1部分造形物と前記第2部分造形物との間の前記隙間を表す第1隙間を測定し、前記第1隙間と、前記造形データから定まる前記第1隙間に対応する第2隙間と、の差異に基づいて、前記第1部分経路及び前記第2部分経路よりも後に前記吐出部が移動する前記経路である第3部分経路における前記吐出量を調整する調整処理を行う。
このような形態によれば、第3部分経路において、意図した吐出量の造形材料が吐出される可能性が向上し、三次元造形物の造形精度が向上する。
【0142】
本開示は、上述した三次元造形物の製造方法や、三次元造形装置に限らず、種々の態様で実現可能である。例えば、三次元造形装置の制御方法、三次元造形物を造形するためのコンピュータープログラム、コンピュータープログラムを記録した一時的でない有形な記録媒体等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0143】
20…材料供給部、22…供給路、30…可塑化部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…フラットスクリュー、41…上面、42…溝形成面、43…側面、44…材料導入口、45…溝、46…凸条部、47…中央部、50…バレル、52…スクリュー対向面、54…案内溝、56…連通孔、58…ヒーター、61…ノズル、62…供給流路、65…第1供給口、66…交差孔、67…第2供給口、68…ノズル流路、69…ノズル孔、70…吐出量調節機構、71…駆動軸、72…弁体、75…ノズルヒーター、80…測定部、100…三次元造形装置、200…吐出部、300…ステージ、311…造形面、400…移動機構、500…制御部
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