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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20240326BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20240326BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B53/04 B
A63B53/04 D
A63B102:32
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020022782
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021126328
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】荒牧 知孝
【審査官】上田 泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-195214(JP,A)
【文献】特開2005-342244(JP,A)
【文献】特開平11-114108(JP,A)
【文献】特開平08-299506(JP,A)
【文献】特許第5756305(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2006/0100031(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に中空部を有するゴルフクラブヘッドであって、
クラウン部、ソール部及びこれらの間を延びるバック側外郭部を備えるヘッド本体と、カバー部材とを含み、
前記ヘッド本体は、前記クラウン部に設けられたクラウン開口部と、前記ソール部に設けられたソール開口部と、少なくとも前記ソール開口部の周囲に形成された受け部とを備え、
前記受け部の外面は、ゴルフクラブヘッドの仕上り外面に対して前記中空部の側に位置し、
前記カバー部材は、クラウンカバーと、前記クラウンカバーから前記ソール部側に回り込むように形成されたソールカバーとを一体に含み、
前記クラウンカバーは、前記クラウン開口部を少なくとも塞いでおり、
前記ソールカバーは、前記ソール開口部を少なくとも塞ぐように、前記ソールカバーの周縁部が前記受け部の前記外面に重ねられており、
前記ヘッド本体の前記ソール部には、ヘッド外方に凸又は前記中空部側に凹となる形状変化部が形成されており、
前記形状変化部は、前記ソールカバーの前記周縁部が前記形状変化部と前記バック側外郭部との間に位置するように形成されており、
前記ソール部の外面は、前記形状変化部の前記バック側外郭部と反対の側の第1領域と、前記形状変化部よりも前記バック側外郭部の側の第2領域とを含み、
前記第1領域は、金属皮膜処理、非金属皮膜処理、陽極酸化処理、化成処理、又は、乾式めっきによる皮膜が形成された表面処理が施されており、かつ、最終の仕上げ面として研磨されておらず、
前記第2領域は、前記ソールカバーの少なくとも一部及び前記ヘッド本体の少なくとも一部がともに研磨された研磨領域を含む、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記形状変化部は、ヘッド外方に凸となっている、請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記形状変化部は、前記中空部側に凹んでいる、請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記形状変化部は、前記ソールカバーの前記周縁部に沿って延びる第1部分を含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記カバー部材は、繊維強化プラスチックで形成されている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記ソールカバーの前記周縁部は、前記受け部に接着剤で固着されている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記第1領域は、イオンプレーティングによる皮膜が形成されている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記研磨領域は、前記ソールカバーの前記周縁部の表面から前記形状変化部まで延在している、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッドを製造するためのゴルフクラブヘッドの製造方法であって、
前記ヘッド本体と前記カバー部材とを準備する準備工程と、
前記ヘッド本体の前記受け部に、前記カバー部材の前記ソールカバーの前記周縁部を固着する固着工程と、
前記固着工程の後、前記第1領域を研磨することなく、前記ソールカバーの前記周縁部と前記ヘッド本体とが面一となるように研磨して前記研磨領域を得る研磨工程とを含む、
ゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記研磨工程は、前記ソールカバーの前記周縁部及び前記ヘッド本体をともに研磨する、請求項9に記載のゴルフクラブヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、内部に中空部が設けられたゴルフクラブヘッドが提案されている。前記ゴルフクラブヘッドは、開口部が設けられた金属材料からなるヘッド本体と、前記開口部を閉塞する繊維強化樹脂からなるカバー部材とを含む。前記カバー部材は、クラウン部からソール部へと回り込むように湾曲している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5756305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記カバー部材が前記ヘッド本体に固着された際、寸法誤差等により、前記カバー部材が、前記ソール部の仕上り面から外側にはみ出すことがある。前記カバー部材のはみ出した部分は、研磨され、その形状が整えられる。この際、前記カバー部材のはみ出した部分だけを研磨することは困難であることから、前記カバー部材の周辺(すなわち、ヘッド本体の表面の一部)も研磨される傾向がある。
【0005】
一方、近年では、前記ソール部の前記カバー部材に隣接した位置に、ヘッド外観を高めるための各種の表面処理等を施したい場合がある。このような場合、前記カバー部材を研磨する際に、表面処理された部分が研磨されてしまうという問題がある。このような課題に対して、例えば、表面処理された部分をマスキングテープにて覆って研磨されるのを防ぐことも考えられる。しかしながら、マスキングテープは、研磨具との接触により位置ずれや剥離しやすく、満足のゆく解決には至っていない。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、表面仕上げの精度を高めることができるゴルフクラブヘッド及びその製造方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内部に中空部を有するゴルフクラブヘッドであって、クラウン部、ソール部及びこれらの間を延びるバック側外郭部を備えるヘッド本体と、カバー部材とを含み、前記ヘッド本体は、前記クラウン部に設けられたクラウン開口部と、前記ソール部に設けられたソール開口部と、少なくとも前記ソール開口部の周囲に形成された受け部とを備え、前記受け部の外面は、ゴルフクラブヘッドの仕上り外面に対して前記中空部の側に位置し、前記カバー部材は、クラウンカバーと、前記クラウンカバーから前記ソール部側に回り込むように形成されたソールカバーとを一体に含み、前記クラウンカバーは、前記クラウン開口部を少なくとも塞いでおり、前記ソールカバーは、前記ソール開口部を少なくとも塞ぐように、前記ソールカバーの周縁部が前記受け部の前記外面に重ねられており、前記ヘッド本体の前記ソール部には、ヘッド外方に凸又は前記中空部側に凹となる形状変化部が形成されており、前記形状変化部は、前記ソールカバーの前記周縁部が前記形状変化部と前記バック側外郭部との間に位置するように形成されており、前記ソール部の外面は、前記形状変化部の前記バック側外郭部と反対の側の第1領域と、前記形状変化部よりも前記バック側外郭部の側の第2領域とを含み、前記第2領域は、前記ソールカバーの少なくとも一部及び前記ヘッド本体の少なくとも一部がともに研磨された研磨領域を含む、ゴルフクラブヘッドである。
【0008】
本発明の他の態様では、前記形状変化部は、ヘッド外方に凸となっていても良い。
【0009】
本発明の他の態様では、前記形状変化部は、前記中空部側に凹んでいても良い。
【0010】
本発明の他の態様では、前記形状変化部は、前記ソールカバーの前記周縁部に沿って延びる第1部分を含んでも良い。
【0011】
本発明の他の態様では、前記カバー部材は、繊維強化プラスチックで形成されていても良い。
【0012】
本発明の他の態様では、前記ソールカバーの前記周縁部は、前記受け部に接着剤で固着されていても良い。
【0013】
本発明の他の態様では、前記第1領域は、表面処理が施されていても良い。
【0014】
本発明の他の態様では、前記研磨領域が前記形状変化部まで延在していても良い。
【0015】
本発明の他の態様では、上記いずれかに記載のゴルフクラブヘッドを製造するためのゴルフクラブヘッドの製造方法であって、前記ヘッド本体と前記カバー部材とを準備する準備工程と、前記ヘッド本体の前記受け部に、前記カバー部材の前記ソールカバーの前記周縁部を固着する固着工程と、前記固着工程の後、前記ソールカバーの前記周縁部と前記ヘッド本体とが面一となるように研磨して前記研磨領域を得る研磨工程とを含む、ゴルフクラブヘッドの製造方法である。
【0016】
本発明の他の態様では、前記研磨工程は、前記ソールカバーの前記周縁部及び前記ヘッド本体をともに研磨しても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記の構成等を採用したことにより、表面仕上げの精度を高めることができるゴルフクラブヘッド及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態のゴルフクラブヘッドの斜視図である。
図2】本実施形態のゴルフクラブヘッドの平面図である。
図3】本実施形態のゴルフクラブヘッドのトウ側から見た側面図である。
図4】本実施形態のゴルフクラブヘッドの背面図である。
図5】本実施形態のゴルフクラブヘッドの底面図である。
図6】本実施形態のゴルフクラブヘッドの分解斜視図である。
図7】本実施形態のヘッド本体の背面図である。
図8】本実施形態のヘッド本体の平面図である。
図9】本実施形態のヘッド本体の底面図である。
図10】ヘッド本体をヘッド後方側から見た要部斜視図である。
図11図5のXI-XI線断面図である。
図12】本実施形態のゴルフクラブヘッドをヘッド後方かつ底面側から見た部分斜視図である。
図13】本実施形態のカバー部材の斜視図である。
図14】本実施形態のカバー部材の背面図である。
図15】本実施形態のカバー部材の側面図である。
図16】研磨工程を説明するための本実施形態のゴルフクラブヘッドの部分断面図である。
図17】他の実施形態のゴルフクラブヘッドをヘッド後方かつ底面側から見た部分斜視図である。
図18】研磨工程を説明するための図17のゴルフクラブヘッドの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
以下に詳述される実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容を理解するためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。また、以下の説明では、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略されている点が理解されなければならない。
【0020】
図1ないし6は、本実施形態のゴルフクラブヘッド(以下、単に、「ヘッド」ということがある。)1の斜視図、平面図、トウ側から見た側面図、背面図、底面図及び分解斜視図をそれぞれ示す。また、図1~6には、基準状態のヘッド1が示されている。
【0021】
[ヘッドの基準状態]
ヘッド1の基準状態とは、ヘッド1が、水平面HP(図3に示す)に対して、ヘッド1に定められたロフト角α(図3に示す)及びライ角(図示省略)に保たれた状態である。この基準状態では、図2に示されるように、ヘッド1のシャフト軸中心線CLが、任意の垂直面VP内に配される。特に言及しない場合、ヘッド1は、基準状態に置かれているものとする。
【0022】
[ヘッドの方向について]
本明細書において、基準状態のヘッド1について、3つの方向が関連付けられる。先ず、水平面HP及び垂直面VPに沿った方向xが、ヘッド1のトウ・ヒール方向とされる。また、垂直面VPと直交する方向yがヘッド前後方向とされる。ヘッド前後方向では、フェース部2側が前方とされ、その反対側が後方(バック側又は背面側とも呼ばれる)とされる。さらに、上記方向x及びyにともに直交する方向zが、ヘッド上下方向とされる。
【0023】
[ヘッドの基本構成]
図1ないし6において、本実施形態のヘッド1は、内部に中空部i(図6)を有し、例えば、ウッド型形状とされている。ウッド型のヘッドは、ドライバー(#1)の他、フェアウエイウッドを含む。他の実施形態では、ヘッド1は、中空部iを有するものであれば、例えば、ユーティリティー型として構成されても良い。
【0024】
ヘッド1は、フェース部2、クラウン部3及びソール部4等を含み、これらの部材が内部に中空部iを画定するように配されている。中空部iには、例えば、必要に応じて発泡剤やゲル剤などが充填されても良い。
【0025】
[フェース部]
フェース部2は、ボールを打撃するための部分であって、ヘッド1の前側に形成されている。フェース部2の外面(前面)は、ボールと接触する打撃面2aを構成している。図示していないが、打撃面2aには、フェースラインと呼ばれるトウ・ヒール方向に延びる複数本の溝が設けられても良い。
【0026】
[クラウン部]
クラウン部3は、ヘッド上面を形成するように、フェース部2の上縁からヘッド後方に延びている。クラウン部3は、例えば、図2のヘッド平面視において、フェース部2及びホーゼル部6を除いた部分を形成している。図3に示されるように、クラウン部3は、例えば、ヘッド後方に向かって、徐々に水平面HPに近づくよう滑らかに傾斜している。また、クラウン部3のヒール側には、ホーゼル部6が設けられている。ホーゼル部6には、クラブシャフト(図示省略)を固定するためのシャフト差込孔6aが形成されている。このシャフト差込孔6aの中心線によって、ヘッド1のシャフト軸中心線CLが特定される。
【0027】
[ソール部]
ソール部4は、ヘッド底面を形成するように、フェース部2の下縁からヘッド後方に延びている。ソール部4は、例えば、図5のヘッド底面視において、ホーゼル部6を除いた部分を形成している。図3に示されるように、ソール部4のヘッド後方側は、例えば、徐々に上に向かって湾曲して、クラウン部3に接続されている。本実施形態では、図3から理解されるように、クラウン部3とソール部4とが、直接的に接続されている。
【0028】
本実施形態のヘッド1は、ヘッド本体10と、カバー部材20とを含んで構成されている。
【0029】
[ヘッド本体]
本実施形態のヘッド本体10は、ヘッド1の骨格部分を構成しており、金属材料で形成されている。金属材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、チタン合金やステンレス鋼等が望ましい。本実施形態のヘッド本体10は、チタン合金で形成されている。
【0030】
図7ないし9は、ヘッド本体10の背面図、平面図及び底面図をそれぞれ示す。図7ないし9に示されるように、ヘッド本体10は、フェース部2、クラウン部3、ソール部4及びバック側外郭部7を備える。
【0031】
[バック側外郭部]
図8に示されるように、バック側外郭部7は、クラウン部3とソール部4との間を、フェース部2のトウ側からヒール側へ延びている。本実施形態において、バック側外郭部7は、ヘッド平面視において、ホーゼル部6よりもヘッド後側のヘッド1の輪郭形状を画定する。ここで、ホーゼル部6よりもヘッド後側とは、図8に示されるように、ホーゼル部6の上端面において、最もヘッド後方側の位置6bよりもヘッド後側を意味する。理解しやすくするために、図8には、ホーゼル部6のヘッド後方側の位置6bを通ってトウ・ヒール方向に延びるホーゼル後方線6cと、このホーゼル後方線6cとヘッド輪郭線との交点P1及びP2とが示されている。本実施形態のバック側外郭部7は、ホーゼル後方線6cとヘッド輪郭線とのトウ側交点P1からヒール側交点P2までの区間である。
【0032】
また、バック側外郭部7は、互いに異なる向きに延びる2つのヘッド構成部材、すなわち、クラウン部3及びソール部4の接続部である。したがって、バック側外郭部7は、本来的に高い剛性を備える。本実施形態のバック側外郭部7は、図8の平面視において、ヘッド後方に膨らんだ円弧状の輪郭を有するように湾曲している。
【0033】
ヘッド本体10には、クラウン開口部11とソール開口部12とが形成されている。
【0034】
[クラウン開口部]
図8に示されるように、クラウン開口部11は、クラウン部3に形成された開口である。したがって、ヘッド本体10には、クラウン部3の一部が形成されている。クラウン開口部11の輪郭形状は、特に制限されるものではなく、種々の形状が採用されて良い。本実施形態のクラウン開口部11は、クラウン部3に1つだけ形成されており、その最もヘッド後方側がバック側外郭部7で開口している。
【0035】
クラウン開口部11は、クラウン部3の重量を削減し、重心設計に利用可能な余剰重量を生み出す。より大きな余剰重量を得るために、クラウン開口部11は、クラウン部3の表面積(便宜上、図8において、ホーゼル後方線6cとバック側外郭部7とで画定される面積とする。)の50%以上、より好ましくは60%以上とされるのが良い。
【0036】
[ソール開口部]
図7及び図9に示されるように、ソール開口部12は、ソール部4に形成された開口である。したがって、ヘッド本体10には、このソール開口部12を除いたソール部4の一部が形成されている。ソール開口部12の輪郭形状は、特に制限されるものではなく、種々の形状が採用されても良い。本実施形態のソール開口部12は、ソール部4に1つだけ形成されており、その最もヘッド後方側がバック側外郭部7で開口している。本実施形態のソール開口部12は、クラウン開口部11よりも小さく形成されているが、このような態様に限定されるものではない。
【0037】
図10には、ヘッド本体10をヘッド後方側から見た要部斜視図が示されている。図10に示されるように、本実施形態では、クラウン開口部11と、ソール開口部12とがバック側外郭部7で連続している。他の態様では、ソール開口部12は、クラウン開口部11とは分離したものとして形成されても良い。また、本実施形態では、クラウン開口部11とソール開口部12とが、バック側外郭部7の最もヘッド後方の位置で連通しているが、他の位置でこれらの開口11,12が連続するように構成されても良い。
【0038】
[形状変化部]
図11は、図5のXI-XI線断面図であり、図12は、ヘッド1をヘッド後方かつ底面側から見た部分斜視図である。図11及び図12に示されるように、ヘッド本体10のソール部4には、形状変化部13が形成されている。本実施形態の形状変化部13は、ヘッド外方(図11において下方)に凸となる凸部として形成されている。形状変化部13は、中空部i側に凹む凹部であっても良い。形状変化部13の詳細については後述する。
【0039】
[カバー部材]
図6及び図13ないし15には、カバー部材20が示されている。カバー部材20は、例えば、ヘッド本体よりも比重が小さい材料で構成されているのが望ましい。特に制限されるものではないが、カバー部材20は、例えば、比重が2.0以下の低比重材料が望ましい。このような低比重材料としては、例えば、繊維強化プラスチック(CFRP等)のような非金属材料の他、アルミニウム合金やマグネシウム合金等の低比重金属材料が望ましい。本実施形態のカバー部材20は、CFRPで形成された板状の部材として形成されている。
【0040】
カバー部材20が、比重が小さい材料から形成されることで、本実施形態のヘッド1は、クラウン部3が軽量化され、ひいては、低いヘッド重心が得られる。また、軽量化されたクラウン部3は、ヘッド1の重心設計のために利用可能な余剰重量を創出し、ヘッド1の重心設計の自由度を向上させる。
【0041】
本実施形態のカバー部材20は、クラウンカバー21と、クラウンカバー21からソール部4の側に回り込むように形成されたソールカバー22とを一体に含んで構成される。クラウンカバー21は、クラウン開口部11を少なくとも塞ぐよう、所定の大きさないし形状を有する。ソールカバー22は、ソール部4の側に回り込んで、ソール開口部12を少なくとも塞ぐよう、所定の形状及び大きさを有する。
【0042】
図2に示されるように、本実施形態のクラウンカバー21の周縁部21aは、クラウン開口部11から僅かにはみ出すように形成されている。クラウンカバー21の周縁部21aは、ヘッド本体10のクラウン部3の外面に重ねられ、例えば、接着剤を用いて固着される。
【0043】
図6に示されるように、クラウンカバー21の形態に対応すべく、ヘッド本体10のクラウン部3は、クラウンカバー21の周縁部21aを支持するための第1の受け部31を備えても良い。第1の受け部31は、クラウン開口部11の周囲の少なくとも一部に形成されている。第1の受け部31は、例えば、ヘッド本体10のヘッド1の仕上がり外面に対して中空部i側に凹んだ凹部として形成されても良い。凹部として形成された第1の受け部31は、その上にクラウンカバー21の周縁部21aが重ねられたときに、クラウンカバー21の外面とヘッド本体10の外面との間の段差を減少させ又は無くすことができ、これらの境界を面一な連続表面に近づけるのに役立つ。
【0044】
同様に、図5に示されるように、本実施形態のソールカバー22の周縁部22aは、ソール開口部12からはみ出すように形成されている。ソールカバー22の周縁部22aは、ヘッド本体10のソール部4の外面に重ねられ、例えば、接着剤等を用いて固着される。
【0045】
図10に示されるように、ヘッド本体10は、さらに、少なくともソール開口部12の周囲に形成された第2の受け部32を備えている。第2の受け部32は、ヘッド1の仕上り外面に対して中空部i側に位置している。好ましい態様では、第2の受け部32は、例えば、ヘッド本体10のソール部4の仕上がり外面から中空部i側に凹んだ凹部として形成され、その中にソールカバー22の周縁部22aが収められる。
【0046】
[第1領域、第2領域(研磨領域)]
図5に示されるように、ヘッド1のソール部4の外面には、第1領域A1と、第2領域A2とが形成されている。
【0047】
第1領域A1は、形状変化部13のバック側外郭部7と反対の側(本実施形態では、フェース部2の側)の領域である。本実施形態において、第1領域A1の仕上げ面(外部から視認される最終の仕上げ面)は、仕上げ処理として、研磨面とはされていない。本明細書において、「研磨」とは、固体表面を、それよりも硬度の高い研磨材を用いて連続的又は断続的にこすり、平滑とするための作業を意味する。
【0048】
本実施形態の第1領域A1は、例えば、表面処理が施されている。表面処理は、特に限定されるものではないが、例えば、金属皮膜処理、非金属皮膜処理、陽極酸化処理、化成処理等が用いられても良い。とりわけ、PVDやCVDといった物理気相法による乾式めっきが好適である。本実施形態の第1領域A1は、密着性に優れ硬質膜の生成が可能なイオンプレーティングによる皮膜15が施されている。このようなイオンプレーティングによる表面処理は、地面に接触する機会が多いソール部4の耐外傷性を高める点で望ましい。なお、第1領域A1は、このような表面処理の前処理として、研磨されても良い。この前処理の研磨は、表面処理によって外部からは視認されなくなる。なお、表面処理に代えて、又は、表面処理の上に、転写シールなどが配されても良い。
【0049】
一方、第2領域A2は、形状変化部13よりもバック側外郭部7の側(本実施形態では、ヘッド後方側)の領域である。この第2領域は、ソールカバー22の少なくとも一部及びヘッド本体10の少なくとも一部がともに研磨された研磨領域を含む。したがって、第2領域A2は、第1領域A1とは、異なる表面性状を備える。研磨領域は、そのままでも良いし、塗装が施されても良い。
【0050】
[形状変化部の位置]
図11に示されるように、本実施形態の形状変化部13は、ソールカバー22の周縁部22aが形状変化部13とバック側外郭部7との間に位置するように、形成されている。換言すると、第1領域A1と第2領域A2との間に、形状変化部13が配置される。この結果、ソールカバー22の周縁部22aを研磨する際、形状変化部13の存在により、第1領域A1が研磨され難く、第2領域A2のみを研磨し易くなる。とりわけ、第1領域A1の外観を不必要な研磨によって損ねずに、ソールカバー22の周縁部22aの外面をヘッド本体10の外面と連続するように面一に仕上げることができる。以上のように、本実施形態のヘッド1は、研磨による表面仕上げの精度を向上させることができる。
【0051】
好ましい態様では、図5及び図12に示されるように、形状変化部13は、ソールカバー22の周縁部22aに沿って延びる第1部分13aを含む。第1部分13aは、ソールカバー22の周縁部22aのバック側外郭部7に沿って延びるエッジ22bと対向しており、かつ、これと実質的に平行に延びている。
【0052】
好ましい態様では、研磨領域は、例えば、ソールカバー22の周縁部22aの表面から形状変化部13まで延在していることが望ましい。研磨領域と第1領域A1とは、視覚的に異なった表面性状を備えることから、これらの両領域の境界を形状変化部13と一致させることで、前記境界を目立たなくする。これは、ヘッド1の優れた外観を提供するのに役立つ。
【0053】
[ヘッドの製造方法]
次に、上述のヘッド1の製造方法が説明される。
本実施形態のヘッド1の製造方法は、準備工程、固着工程及び研磨工程を含む。
【0054】
準備工程では、上述のヘッド本体10とカバー部材20とがそれぞれ準備(製造)される。ヘッド本体10は、例えば、鋳造により各部を一体成形して製造される。また、カバー部材20は、例えば、繊維を未硬化樹脂に含浸させた繊維・樹脂複合材を所定形状に成型し、この成型体を、金型等を用いて硬化させることにより製造される。
【0055】
固着工程では、準備工程で得られたヘッド本体10とカバー部材20とが固着される。本実施形態では、両部材が接着剤にて固着される。また、固着工程では、カバー部材20のソールカバー22の周縁部22aがヘッド本体10の第2の受け部32に固着される。同様に、カバー部材20のクラウンカバー21の周縁部21aが、ヘッド本体10の第1の受け部31に固着される。
【0056】
研磨工程では、ソールカバー22の周縁部22aとヘッド本体10とが面一になるように研磨される。図16には、研磨工程の一例が示されている。この非限定的な実施形態では、研磨具50として、研磨ベルト52を有するベルトサンダーが用いられている。研磨ベルト52の表面には砥粒が固着されている。また、研磨ベルト52は、連続的に所定の向きに移動可能に構成されている。
【0057】
図16の例では、研磨ベルト52は、例えば、紙面と直交する向きに移動する状態で、ヘッド1に接触している。研磨ベルト52をソールカバー22の周縁部22a及びその周辺のヘッド本体10の外表面に接触させることにより、これらがともに研磨される。具体的には、ソールカバー22の周縁部22a及びヘッド本体10の各々の外表面が、互いに面一となるように研磨される。これにより、研磨領域が形成される。
【0058】
この実施形態では、形状変化部13が、ソール部4の外面において、凸で形成されている。したがって、研磨具50が、形状変化部13側に過度に移動した場合、研磨ベルト52の側縁52aが形状変化部13と接触し、さらなる形状変化部13の側への移動に対して抵抗を与える。これは、研磨作業者へ注意を促し、第1領域A1が研磨具50によって研磨されることを効果的に防止する。このような観点より、形状変化部13が凸で形成される場合、その突出高さは、例えば、0.5mm以上、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは2.0mm以上とされる。
【0059】
[形状変化部の他の形態]
図17は、形状変化部13の他の形態を説明するために、ヘッド1をヘッド後方かつ底面側から見た部分斜視図である。図18は、図17のB-B断面図であり、研磨工程を示している。図17及び図18に示されるように、形状変化部13は、中空部i側に凹む凹部として、凹溝状に形成されている。この形状変化部13も、第1部分13aを含んでいる。第1部分13aは、ソールカバー22の周縁部22aのバック側外郭部7に沿って延びるエッジ22bと対向し、かつ、これと実質的に平行に延びている。
【0060】
このような形態でも、図18に示されるように、研磨工程において、研磨ベルト52をソールカバー22の周縁部22a及びその周辺のヘッド本体10の外表面に接触させることにより、これらがともに研磨され、研磨領域が形成される。
【0061】
また、この形態では、凹溝状の形状変化部13が、第2領域A2と第1領域A1との間に形成されているため、研磨具50が、形状変化部13側に過度に移動した場合でも、第1領域A1が研磨されることが防止される。すなわち、研磨ベルト52の側縁52aが凹溝状の形状変化部13の上で空転し、第1領域A1との接触が防止される。このような観点より、形状変化部13が凹で形成される場合、その深さ及び溝幅は、例えば、0.5mm以上、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは2.0mm以上とされる。なお、この形態では、形状変化部13が、幅の比較的小さな凹溝状で形成されたものを示したが、凹部は、フェース部2側に広範囲に広がるような凹みであっても良い。
【0062】
また、いずれの形態においても、研磨工程に先立ち、予備的に、第1領域A1がマスキングテープ等で被覆されても良い。
【0063】
さらに、図17及び図18の実施形態において、第1領域A1が、第2領域A2よりも凸で形成されても良い。このような態様によれば、ヘッド1の表面仕上げの精度をさらに高めることができる。
【0064】
以上、本発明の好適な実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な開示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、種々変更して実施することができる。また、本明細書において開示された実施形態は、それぞれ単独で実施可能である他、それぞれの特徴点を相互に含むように組み合わされて実施されても良い。さらに、本発明にはその均等物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1 ヘッド
2 フェース部
3 クラウン部
4 ソール部
7 バック側外郭部
10 ヘッド本体
11 クラウン開口部
12 ソール開口部
13 形状変化部
20 カバー部材
21 クラウンカバー
21a クラウンカバーの周縁部
22 ソールカバー
22a ソールカバーの周縁部
31 第1の受け部
32 第2の受け部
A1 第1領域
A2 第2領域
i 中空部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図16
図17
図18