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特許7459549流量監視装置、輸液装置及び異常報知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】流量監視装置、輸液装置及び異常報知方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20240326BHJP
   A61M 39/28 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61M5/168 550
A61M5/168 510
A61M5/168 500
A61M5/168 514
A61M39/28
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020023744
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021126404
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】新谷 浩章
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-099615(JP,A)
【文献】特開2019-177131(JP,A)
【文献】国際公開第2014/118944(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/086459(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源と接続されない場合に電力を供給するための内部電源を有する輸液装置に用いられる流量監視装置であって、
点滴筒内を落下する液滴を検出する滴落センサ部と、
異常を報知する報知部と、
前記輸液装置の外部電源との接続の有無を判定する電源判定部、時間当たりの液滴数に基づいて流量異常の有無を判定する流量異常判定部、及び一定時間、液滴が検出されない場合に空液であると判定する空液判定部を含んで構成され、前記報知部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記電源判定部により外部電源と接続されていると判定され、かつ、前記流量異常判定部により流量異常があると判定される場合には、前記報知部を作動させ、前記電源判定部により外部電源と接続されていないと判定される場合には、流量異常の有無にかかわらず前記報知部を作動させず、前記空液判定部により空液であると判定される場合には、外部電源との接続の有無にかかわらず前記報知部を作動させる流量監視装置。
【請求項2】
前記点滴筒に接続されるチューブに設けられるクランプ部を更に備え、
前記制御部は、異常があると判定される場合に、前記クランプ部を作動させる請求項1に記載の流量監視装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流量監視装置と、
点滴筒の下流側に接続されるチューブを押圧して送液を行うポンプ部と、を備える輸液装置。
【請求項4】
外部電源と接続されない場合に電力を供給するための内部電源を有する輸液装置に用いられ、点滴筒内を落下する液滴を検出する滴落センサ部と、異常を報知する報知部と、前記報知部を制御する制御部と、を備える流量監視装置における異常報知方法であって、
外部電源との接続の有無を判定し、
単位時間当たりの液滴数に基づいて流量異常の有無を判定し、
一定時間、液滴が検出されない場合に空液であると判定し、
外部電源と接続されていると判定され、かつ、流量異常があると判定された場合には、前記報知部を作動させて異常を報知し、
外部電源と接続されていないと判定された場合には、流量異常の有無に関わらず前記報知部を作動させず、空液であると判定される場合には、外部電源との接続の有無にかかわらず前記報知部を作動させて異常を報知する流量監視装置の異常報知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液装置に用いられる流量監視装置、該流量監視装置を用いた輸液装置、及び、流量監視装置の異常報知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場において、患者に対して薬剤や栄養剤、血液等の液体を所定の速度及び量で正確に送液する必要がある場合に、ポンプを備えた輸液装置が用いられる。
患者に輸液が行われる際には、輸液装置や輸液バッグを配置するために輸液スタンドが用いられる。輸液装置は、輸液スタンドの中程に固定して配置され、輸液バッグは、輸液スタンドの上方に吊り下げられ、点滴筒は、チューブを介して輸液装置と輸液バッグとの間に配置される。また、流量異常の監視のため、滴落センサが点滴筒に取り付けられる。
【0003】
滴下数制御方式の輸液装置では、点滴筒内を落下する液滴を滴落センサにより計測し、単位時間当たりの液滴数が所定の値となるようにポンプの送液量を制御する。輸液装置は、滴落センサにより計測された単位時間当たりの液滴数が、輸液装置に予め規定された液滴数を超える場合、又は、下回る場合に、送液量が異常状態であると判定して、流量異常の警報を発し、送液を停止させる機能を有する(特許文献1参照)。
このような輸液装置を使用した状態で患者が移動すると、輸液スタンドの揺れや衝撃により、実際には流量異常が生じていないにもかかわらず警報が発せられ、患者への送液が停止してしまう場合がある。そこで誤報知を低減するため、滴落センサ又は輸液装置本体に加速度センサを設けて移動状態を検出し、移動状態に応じた流量異常の閾値を用いる方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-52284号公報
【文献】特開2019-177131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載のように加速度センサを設けることで、誤報知を低減することが可能となる。しかしながら、加速度センサを動作させるための電力が必要となり、輸液装置の消費電力が上昇してしまう。その結果、輸液装置がバッテリ等の内部電源で駆動される場合に駆動時間が短縮されるという課題がある。また、加速度センサ分について輸液装置のコストの上昇に繋がる。
【0006】
従って、本発明は、簡易な構成で患者が移動する際の流量異常の誤報知の発生を低減できる流量監視装置、輸液装置及び異常報知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、外部電源と接続されない場合に電力を供給するための内部電源を有する輸液装置に用いられる流量監視装置であって、点滴筒内を落下する液滴を検出する滴落センサ部と、異常を報知する報知部と、前記輸液装置の外部電源との接続の有無を判定する電源判定部、及び単位時間当たりの液滴数に基づいて流量異常の有無を判定する流量異常判定部を含んで構成され、前記報知部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記輸液装置が外部電源と接続されていると判定され、かつ、流量異常があると判定される場合には、前記報知部を作動させ、外部電源と接続されていないと判定される場合には、流量異常の有無に関わらず前記報知部を作動させない流量監視装置に関する。
【0008】
また、前記制御部は、一定時間、液滴が検出されない場合に空液であると判定する空液判定部を更に含んで構成されており、前記制御部は、空液であると判定される場合には、外部電源との接続の有無に関わらず前記報知部を作動させることが好ましい。
【0009】
また、前記点滴筒に接続されるチューブに設けられるクランプ部を更に備え、前記制御部は、異常があると判定される場合に、前記クランプ部を作動させることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、前記流量監視装置と、点滴筒の下流側に接続されるチューブを押圧して送液を行うポンプ部と、を備える輸液装置に関する。
【0011】
また、本発明は、外部電源と接続されない場合に電力を供給するための内部電源を有する輸液装置に用いられ、点滴筒内を落下する液滴を検出する滴落センサ部と、異常を報知する報知部と、前記報知部を制御する制御部と、を備える流量監視装置における異常報知方法であって、外部電源との接続の有無を判定し、単位時間当たりの液滴数に基づいて流量異常の有無を判定し、外部電源と接続されていると判定され、かつ、流量異常があると判定された場合には、前記報知部を作動させて異常を報知し、外部電源と接続されていないと判定された場合には、流量異常の有無にかかわらず前記報知部を作動させない流量監視装置の異常報知方法に関する。
【0012】
また、前記異常報知方法は、一定時間、液滴が検出されない場合に空液であると判定し、空液であると判定された場合には、外部電源との接続の有無にかかわらず前記報知部を作動させて異常を報知することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電源情報により移動状態を推測し、静止状態であると推測される場合には、流量異常があれば報知し、移動状態であると推測される場合には、流量異常があっても報知しないことで、誤報知の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の流量監視装置及び輸液装置の使用状態を示す図である。
図2】本発明の流量監視装置及び輸液装置のブロック図である。
図3】本発明の変形例1に係る流量監視装置及び輸液装置のブロック図である。
図4】本発明の変形例2に係る流量監視装置及び輸液装置のブロック図である。
図5】本発明の流量監視装置における異常報知方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図1図5を参照して説明する。本発明の流量監視装置1及び輸液装置100は、患者の移動中における流量異常の誤報知を低減可能とする誤報知低減機能を有するものであり、必要に応じて管理者がこの誤報知低減機能を有効とするか無効とするかを設定可能に構成されている。
【0016】
<実施形態>
図1は、本発明の流量監視装置1及び輸液装置100が輸液スタンド1000に配置されて輸液セット200が取り付けられた状態を示す。流量監視装置1は、薬液や栄養剤等の液体を所定の速度及び量で正確に患者に投与する際に、薬液の投与状況を監視するためのものであり、輸液セット200と共に使用される。また、本実施形態の輸液装置100は、滴下数制御方式により送液量を制御するものである。
【0017】
本実施形態の流量監視装置1及び輸液装置100の構造を説明する前に、輸液セット200について説明する。
【0018】
輸液セット200は、点滴筒210と、輸液が収容された輸液バッグ220と、輸液バッグ220から点滴筒210まで延びる上流側チューブ231と、点滴筒210から穿刺針240まで延びる下流側チューブ232と、を備える。この輸液セット200においては、点滴筒210に流量監視装置1が取り付けられ、下流側チューブ232の途中に、装置本体部110が設けられる。
【0019】
点滴筒210は、例えばポリプロピレン等の透明性を有する部材で構成される。この点滴筒210によれば、点滴筒210の内部の上部で液滴が成長していき、液滴が所定の大きさになった時点で下方へ落下して点滴筒210の下部に溜まり、溜まった輸液が患者に投与される。
輸液バッグ220は、例えばポリエチレン等の透明性及び柔軟性を有する部材で構成される。輸液バッグ220には、例えば、生理食塩水やブドウ糖液、血液等の液体が収容される。
上流側チューブ231及び下流側チューブ232は、例えばポリ塩化ビニル等の透明性及び柔軟性を有する部材で構成される。
【0020】
次に流量監視装置1及び輸液装置100の構造について説明する。
輸液装置100は、流量監視装置1と、装置本体部110と、制御装置120と、ポンプ部130と、クランプ部140と、内部電源150と、を備え、流量監視装置1の構成の一部、制御装置120、ポンプ部130、クランプ部140及び内部電源150は、装置本体部110に設けられる。輸液装置100は、輸液スタンド1000が備える架台1100に固定して配置される。
【0021】
まず、輸液装置100が備える流量監視装置1について説明する。
図2のブロック図に示すように、流量監視装置1は、センサ側筐体10と、滴落センサ部20と、センサ側制御部30と、報知部40と、を備える。
【0022】
センサ側筐体10は、略直方体形状を有しており、中央部には点滴筒210を挟み込んで保持可能な保持部を有する。
【0023】
滴落センサ部20は、センサ側筐体10に設けられ、点滴筒210を挟むように対向して配置される投光素子及び受光素子(不図示)を備える。点滴筒210内を液滴が落下する際に、投光素子から投光された光が液滴により遮断されて受光素子の出力信号が変化することにより、液滴の落下が検出される。投光素子は、例えば、LEDのような発光素子で構成することができる。受光素子は、例えば、フォトダイオードで構成することができる。
【0024】
センサ側制御部30は、中央演算処理装置やRAM、ROM等からなるコンピュータ装置により構成され、電源判定部31と、流量異常判定部32と、空液判定部33と、を含んで構成される。センサ側制御部30は、滴落センサ部20及び報知部40を制御する。本実施形態では、装置本体部110に設けられる制御装置120がセンサ側制御部30を備えるように構成されるが、センサ側制御部30をセンサ側筐体10に設けるように構成してもよい。
【0025】
電源判定部31は、輸液装置100が外部電源と接続されているか否かを判定する。即ち、電源判定部31は、輸液装置100の電源ケーブル(不図示)がコンセントに挿されている状態で外部から電力が供給されていれば外部電源と接続されていると判定し、電源ケーブルがコンセントから抜かれた状態で内部電源150から電力が供給されていれば、外部電源と接続されていないと判定する。
患者が輸液装置100と共に移動する場合には、電源ケーブルはコンセントから抜かれるため、輸液装置100は内部電源150の電力で作動する。即ち、電源判定部31で判定された電源情報に基づいて、移動中であるか静止中であるか推測することが可能である。
【0026】
流量異常判定部32は、滴落センサ部20で計測される液滴数に基づいて流量異常の有無を判定する。具体的には、単位時間当たりの液滴数が所定の範囲外となる場合、つまり、単位時間当たりの液滴数が、予め設定された所定の下側閾値を下回る場合、又は予め設定された所定の上側閾値を上回る場合に、流量異常があると判定する。
【0027】
空液判定部33は、滴落センサ部20で一定時間、液滴が検出されない場合に空液であると判定する。つまり、空液判定部33は、輸液バッグ220内の液体が空になった場合や、上流側チューブ231又は下流側チューブ232がねじれにより閉塞した場合等において、点滴筒210内を液滴が全く滴下しない状態を検出する。
【0028】
報知部40は、輸液に異常がある場合に、異常状態を医療従事者(操作者)に報知するためのものであり、警報音を鳴らす警報器や異常状態を表示する表示部により構成される。また、報知部40の取り付け場所について、センサ側筐体10又は装置本体部110のどちらに取り付けてもよく、本実施形態では、報知部40を装置本体部110に取り付けた。
【0029】
次に、輸液装置100が備える装置本体部110、制御装置120、ポンプ部130、クランプ部140及び内部電源150について説明する。
【0030】
装置本体部110は、開閉可能な蓋体を有する筐体であり、この装置本体部110には、制御装置120、ポンプ部130、クランプ部140及び内部電源150が収容される。また、装置本体部110の一の面(前面)には、各種操作ボタンや、設定内容や流量を表示する表示部等が設けられ、本実施形態では、報知部40として表示部が用いられる。
【0031】
制御装置120は、中央演算処理装置やRAM、ROM等からなるコンピュータ装置により構成され、前述したように、電源判定部31、流量異常判定部32及び空液判定部33を含むセンサ側制御部30を備え、更に送液制御部121を備えている。制御装置120は、信号線SL(図1参照)を介して滴落センサ部20と接続され、滴落センサ部20で検出される滴落数の情報を取得する。送液制御部121は、滴落数の情報、電源判定部31、流量異常判定部32及び空液判定部33のそれぞれの判定結果に基づいて、ポンプ部130及びクランプ部140を制御する。また、制御装置120は、電源判定部31、流量異常判定部32及び空液判定部33の判定結果に基づいて、報知部40を作動させて異常を報知する。具体的な異常報知方法については、後に詳細に説明する。
【0032】
ポンプ部130は、下流側チューブ232を押圧して送液を行う。ポンプ部130としては、周知のフィンガーポンプ式のポンプを用いることができる。ポンプ部130は、流量監視装置1の滴落センサ部20で検出される単位時間当たりの液滴数が、設定された所定の値となるように、送液制御部121により制御される(滴下数制御方式)。
【0033】
クランプ部140は、電動式のクランプであり、下流側チューブ232のうちポンプ部130よりも上流側に設けられる。クランプ部140は、送液制御部121により制御されて、下流側チューブ232の開閉を行う。
【0034】
内部電源150は、外部電源と接続されない場合に輸液装置100を作動させるための電力を供給するバッテリである。輸液装置100は、外部電源と接続されない場合には、自動的に内部電源150から電力が供給されるように構成される。本実施形態では、内部電源150の一例として充電可能なリチウムイオン電池を用いた。尚、内部電源150として、非充電式の電池を用いる構成としてもよい。
【0035】
本実施形態では、図2に示すように、流量監視装置1が備える滴落センサ部20のみをセンサ側筐体10に設け、流量監視装置1が備える電源判定部31、流量異常判定部32、空液判定部33及び報知部40を装置本体部110に設ける構成とした。これにより、電源判定部31、流量異常判定部32、空液判定部33を備える制御部をセンサ側筐体10に設ける必要がなく、センサ側筐体10の構成を簡素化することができ、流量監視装置1を輸液装置100に組み込んで構成する場合に適している。
【0036】
また、本実施形態の変形例1として、図3に示すように、流量監視装置1が備える滴落センサ部20、報知部40、及びこれらを制御し、電源判定部31、流量異常判定部32及び空液判定部33を有するセンサ側制御部70をセンサ側筐体10に設ける構成としてもよい。センサ側制御部70は、制御装置120と同様に、中央演算処理装置やRAM、ROM等からなるコンピュータ装置により構成される。また、センサ側制御部70と制御装置120とは、信号線SLを介して接続される。これにより、流量監視装置1と輸液装置100とを独立して構成することができる。
【0037】
また、本実施形態の変形例2として、図4に示すように、流量監視装置1が備える滴落センサ部20、報知部40、クランプ部140、及びこれらを制御し、電源判定部31、流量異常判定部32、空液判定部33を備えるセンサ側制御部70をセンサ側筐体10に設ける構成としてもよい。これにより、流量監視装置1と輸液装置100とを独立して構成することができ、輸液装置100の作動状態にかかわらず、流量監視装置1の構成だけで下流側チューブ232の開閉を制御することができる。
【0038】
次に、図5のフローチャートを参照して、本実施形態の流量監視装置1における流量の異常報知方法について説明する。
ここで、輸液装置100を移動させた場合の滴下数について簡単に説明する。
輸液スタンド1000に吊り下げた状態で点滴筒210を移動させると、揺れや衝撃により、点滴筒210内の液面の変動、液滴の跳ね返りや、不規則な滴落が一時的に発生する。そのため、滴落センサ部20による単位時間当たりの滴下数は、静止中の単位時間当たりの滴下数よりも増加する傾向にある。しかしながら、実際には、流量は増加していない場合がほとんどであるため、流量異常の報知があったとしても、誤報である場合が多い。
【0039】
流量監視装置1は、図1のように点滴筒210に取り付けられた状態にあり、輸液装置100は、輸液スタンド1000の架台1100に固定して配置された状態である。この状態で、輸液装置100のポンプ部130を作動させて送液を開始する(ステップS(以下、単にSと記す)1)。
【0040】
次に、流量監視装置1の滴落センサ部20により液滴数を計測し(S2)、予め管理者により設定された誤報知低減機能が有効となっているか否かを判定する(S3)。
【0041】
誤報知低減機能が有効となっている場合(S3でYES)には、電源判定部31により輸液装置100が外部電源と接続されているか否かの判定を行う(S4)。誤報知低減機能が無効となっている場合(S3でNO)には、電源判定部31による判定を行わずに、次に説明する外部電源と接続されていると判定された場合と同様に、流量異常判定部32により、流量異常の有無を判定する(S5)。
尚、誤報知低減機能が有効か否かの判定、及び電源判定部31による判定のタイミングは、送液開始(S1)から所定の時間が経過する毎に行う。例えば、前述のポンプ部130において、モータが所定の回数、回転する毎に行えばよい。
【0042】
外部電源と接続されていると判定された場合(S4でYES)には、点滴筒210が静止状態であると推測されるので、流量異常判定部32により、流量異常の有無を判定する(S5)。流量異常があると判定された場合(S5でYES)には、空液判定部33により空液であるか否かを判定する(S6)。空液でないと判定された場合(S6でNO)には、流量異常を報知し(S7)、安全のために送液を停止する(S8)。空液であると判定された場合(S6でYES)には、空液を報知し(S10)、安全のためにクランプ部140を作動させて送液を停止する(S8)。
【0043】
外部電源と接続されていないと判定された場合(S4でNO)には、点滴筒210が移動中であると推測されるので、流量異常の判定は行わずに、空液判定部33により空液であるか否かを判定する(S9)。空液でないと判定された場合(S9でNO)には、処理をS2に戻す。空液であると判定された場合(S9でYES)には、空液を報知し(S10)、安全のためにクランプ部140を作動させて送液を停止する(S8)。
【0044】
以上説明した本発明の流量監視装置1及び輸液装置100によれば、以下のような効果を奏する。
【0045】
(1)流量監視装置1を、点滴筒210内を落下する液滴を検出する滴落センサ部20と、異常を報知する報知部40と、輸液装置100の外部電源との接続の有無を判定する電源判定部31と流量異常の有無を判定する流量異常判定部32とを含んで構成され、報知部40を制御する制御部(センサ側制御部30)と、を備えるものとし、制御部(センサ側制御部30)に、輸液装置100が外部電源と接続されていると判定され、かつ、流量異常があると判定される場合には、報知部40を作動させ、外部電源と接続されていないと判定される場合には、流量異常の有無に関わらず報知部40を作動させないものとした。これにより電源情報に基づいて移動状態を推測し、静止状態であると推測される場合には、流量異常があれば報知し、移動状態であると推測される場合には、流量異常があっても報知しないことで、誤報知の発生を低減することができる。よって、医療従事者(操作者)が、誤報知により本来不要な輸液装置100の安全確認や送液の再開の作業を低減することができ、業務効率の改善に資する。また、誤報知が低減するので、患者に与えるストレスを低減することができる。また、移動状態を加速度センサ等の構成を設けることなく推測できるので、製造コストを低減できる。また、加速度センサを動作させるための電力が不要となり、輸液装置100を駆動させるための消費電力の上昇を抑制できるので、輸液装置100の内部電源150による駆動時間の短縮を抑制できる。
【0046】
(2)制御部(センサ側制御部30)を、一定時間、液滴が検出されない場合に空液であると判定する空液判定部を更に含んで構成し、制御部(センサ側制御部30)に、空液であると判定される場合には、外部電源との接続の有無にかかわらず報知部40を作動させた。これにより、移動中と推測されて流量異常に関する報知が行われない場合であっても、空液の報知は行われるので、医療従事者(操作者)が、空液の解消のために必要な措置をとることができる。
【0047】
(3)流量監視装置1を、下流側チューブ232に設けられるクランプ部140を更に備えるものとし、制御部(センサ側制御部50)に、異常があると判定した場合にクランプ部140を作動させた。これにより、流量監視装置1と輸液装置100を独立して構成する場合に、輸液装置100の作動状態にかかわらず、流量監視装置1の構成だけで下流側チューブ232の開閉を制御することができる。
【0048】
(4)輸液装置100を、流量監視装置1と、点滴筒210の下流側に接続されるチューブ232を押圧して送液を行うポンプ部130と、を含んで構成した。これにより、輸液装置100は、電源情報に基づいて移動状態を推測することにより誤報知の発生を低減すると共に、不要な送液の停止を低減することができる。
【0049】
以上、本発明の流量監視装置、輸液装置及び流量の異常報知方法の好ましい実施形態及び変形例につき説明したが、本発明は、上述の実施形態及び変形例に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0050】
例えば、上述の実施形態及び変形例では、ポンプ部としてフィンガーポンプ式のポンプを用いる例を示したがこれに限らない。例えば、ローラーが回転しながらチューブをしごいて送液するローラーポンプ式のポンプを用いてもよい。
更に、その他の実施形態として、ポンプ部(注液駆動部)が存在せず、輸液を落差のみで注液し、クランプ部の閉塞度合で注入速度を制御する輸液装置にも、本発明の流量監視装置を適用することで、異常か否かを検知できる。
また、上述の実施形態では、本発明の流量監視装置1を、滴下数制御方式の輸液装置に適用したが、これに限らない。例えば、本発明の流量監視装置を、ローラーポンプの回転数等により輸液の流量を制御する流量制御方式の輸液装置に適用してもよい。
また、上述の実施形態における異常報知方法の説明では、電源判定部による判定、流量異常判定部による判定及び空液判定部による判定を、この順で行った場合を示したが、これに限らず、それぞれの判定はどのような順番で行ってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 流量監視装置
10 センサ側筐体
20 滴落センサ部
30 センサ側制御部(制御部)
31 電源判定部
32 流量異常判定部
33 空液判定部
40 報知部
100 輸液装置
110 輸液ポンプ
120 制御装置
130 ポンプ部
140 クランプ部
200 輸液セット
210 点滴筒
220 輸液バッグ
231 上流側チューブ
232 下流側チューブ
240 穿刺針
1000 輸液スタンド
1100 架台
図1
図2
図3
図4
図5