(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ヒンジ機能付きキャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 41/34 20060101AFI20240326BHJP
B65D 5/74 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B65D41/34 110
B65D5/74 020A
(21)【出願番号】P 2020033250
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲野 祐輔
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05246125(US,A)
【文献】特開2002-002744(JP,A)
【文献】国際公開第2020/014077(WO,A1)
【文献】特開平07-291274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/34
B65D 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の注出口部に取り付けられるスパウトに装着されるヒンジ機能付きキャップであって、
キャップ本体と、該キャップ本体の下端に複数のブリッジを介して連結されたタンパーエビデントリングを有し、
前記ブリッジのうち1つが前記タンパーエビデントリングの周方向に幅広に形成された幅広ブリッジからなり、
前記幅広ブリッジの少なくとも一側に
隣接し、
かつ、前記タンパーエビデントリングの周方向において前記幅広ブリッジと重複しない位置に、前記タンパーエビデントリングが上下方向において幅狭となる幅狭部が形成され、
前記タンパーエビデントリングは、前記幅狭部が形成された側と反対の方向への回動を規制する構造が設けられ、
前記ブリッジおよび前記タンパーエビデントリングは、前記キャップ本体を前記タンパーエビデントリングに対して前記幅狭部が形成された側と反対の方向へ回転することで、前記幅狭部の近傍で前記タンパーエビデントリングが変形し、前記幅広ブリッジ以外のブリッジが切断され、
前記幅広ブリッジがヒンジとして機能することで前記キャップ本体が開閉自在となることを特徴とするヒンジ機能付きキャップ。
【請求項2】
前記幅狭部が前記タンパーエビデントリングの下端側に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のヒンジ機能付きキャップ。
【請求項3】
前記幅狭部が側方から見たとき、曲線状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のヒンジ機能付きキャップ。
【請求項4】
前記幅狭部が側方から見たとき、一端側の上方から他端側の下方に向かって傾斜した状態に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のヒンジ機能付きキャップ。
【請求項5】
前記キャップ本体の、前記幅広に形成されたブリッジと直径方向で反対側に、前記キャップ本体を前記スパウトに係止する係止部が設けられたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のヒンジ機能付きキャップ。
【請求項6】
前記タンパーエビデントリングの内周側が、前記スパウトに嵌着される形状であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のヒンジ機能付きキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトル、パウチ、液体用紙容器などの主に液体を収納する容器のスパウトに取り付けられるキャップに関し、特にタンパーエビデンス性を有するヒンジ機能付きキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品や非食品の液体内容物に使用される容器の口部には、容器を封止すると共に内容物を注出するための注出口となる、スパウトとキャップとからなる口栓が装着され、種々の形態のものが広い用途範囲にわたって使用されていた。
【0003】
この口栓は、容器の口栓取付け孔から突出するスパウトの注出筒にキャップをネジ部で螺着したり、開閉自在なヒンジで連結したりしたものであるが、キャップとしての本来の機能と共に、流通時などに異物を混入するなどのために不正に開栓されたことが分かる様に、開栓すると破壊されるなどして元の状態に戻らないようにしたタンパーエビデンス機能が設けられたものが知られている。例えば
図6に示す様に、口栓30のタンパーエビデンスバンド34とキャップ31が、キャップ31を開栓すると破断される複数の細いブリッジ32で連結され、キャップ31が開栓されるとブリッジ32が破断された態様32bとなり、不正に開封されたことが明確になるものである。
【0004】
特許文献1には、容器の口頸部に螺着される蓋であって、蓋本体の下部にブリッジ状の脆弱部を介して封印帯が設けられ、蓋本体を開栓方向に回転することで脆弱部が破断され、容器が開封されたことが分かるようにされた容器の蓋構造が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、タンパーエビデント機能付口栓が開示され、キャップ本体を螺脱回転方向に回転したときに、キャップ本体とタンパーエビデントバンドを接続する脆弱ブリッジが切断され、タンパーエビデントバンドが大きく開くことで不正に開封されたことが分かるとした口栓が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-341699号公報
【文献】特開2009-40442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし上記の各引用文献に開示されている様なタンパーエビデンス機能は、キャップがスパウトに螺着されるタイプの口栓には適用できるが、キャップをヒンジで開閉するヒンジキャップには適用が難しいという問題点があった。すなわちヒンジキャップはヒンジの部分でスパウトと連結されていなければならないため、キャップを螺解させながらタンパーエビデンス用のブリッジ等を切断することができないからである。
【0008】
そこで、ヒンジキャップ用のタンパーエビデンス機構としては、例えば
図7に示すような、キャップ41と台部44がヒンジ43で連結され、キャップ41と台部44の間でヒンジ43以外の部分を、弱め線で囲まれた切り取りテープ42が周回する形で設けられ、この切り取りテープ42の一端に設けたタブ45を摘んで引っ張るなどして弱め線に沿って切り離し除去することで、キャップ41がヒンジ43で回動して開閉可能とするものがある。しかしながらこの切り取りテープの機構は構造が複雑で製造に手間がかかり、コス
トもかかる、また口栓が小型であるとテープを切離しにくいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のヒンジ機能付きキャップは、容器の注出口部に取り付けられるスパウトに装着されるヒンジ機能付きキャップであって、
キャップ本体と、該キャップ本体の下端に複数のブリッジを介して連結されたタンパーエビデントリングを有し、
前記ブリッジのうち1つが前記タンパーエビデントリングの周方向に幅広に形成された幅広ブリッジからなり、
前記幅広ブリッジの少なくとも一側に隣接し、かつ、前記タンパーエビデントリングの周方向において前記幅広ブリッジと重複しない位置に、前記タンパーエビデントリングが上下方向において幅狭となる幅狭部が形成され、
前記タンパーエビデントリングは、前記幅狭部が形成された側と反対の方向への回動を規制する構造が設けられ、
前記ブリッジおよび前記タンパーエビデントリングは、前記キャップ本体を前記タンパーエビデントリングに対して前記幅狭部が形成された側と反対の方向へ回転することで、前記幅狭部の近傍で前記タンパーエビデントリングが変形し、前記幅広ブリッジ以外のブリッジが切断され、
前記幅広ブリッジがヒンジとして機能することで、前記キャップ本体が開閉自在となることを特徴とする。
【0010】
上記ヒンジ機能付きキャップにおいて、前記幅狭部が前記タンパーエビデントリングの下端側に形成された態様であっても良い。
【0011】
上記ヒンジ機能付きキャップにおいて、前記幅狭部が側方から見たとき、曲線状に形成された態様であっても良い。
【0012】
上記ヒンジ機能付きキャップにおいて、前記幅狭部が側方から見たとき、一端側の上方から他端側の下方に向かって傾斜した状態に形成された態様であっても良い。
【0013】
上記ヒンジ機能付きキャップにおいて、前記キャップ本体の、前記幅広に形成されたブリッジと直径方向で反対側に、前記キャップ本体を前記スパウトに係止する係止部が設けられても良い。
【0014】
上記ヒンジ機能付きキャップにおいて、前記タンパーエビデントリングの内周側が、前記スパウトに嵌着される形状であっても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、キャップ本体の下端に設けたブリッジのうちの一つが幅広に形成された幅広ブリッジからなり、タンパーエビデントリングが少なくともその一側で幅狭部を形成しているため、キャップ本体を回転したときに幅狭部でタンパーエビデントリングが変形する(ねじれる)ことで、そのねじれの力により幅広ブリッジ以外のブリッジを容易に切断することができ、残った幅広ブリッジをヒンジとして利用することでキャップ本体を開閉自在としたヒンジ機能付きキャップとすることができ、簡易な構造でタンパーエビデント性を有するヒンジ機能付きキャップを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のヒンジ機能付きキャップの一形態の略示側面図である。
【
図2】本発明のヒンジ機能付きキャップの一形態の略示断面図である。
【
図3】本発明のヒンジ機能付きキャップの別形態の略示側面図である。
【
図4】本発明のヒンジ機能付きキャップの幅狭部の一例を説明する図である。
【
図5】本発明のヒンジ機能付きキャップの幅狭部の形態例を示す図である。
【
図6】従来のタンパーエビデント性を有する螺合式キャップの構成例の略示説明図である。
【
図7】従来のタンパーエビデント性のヒンジ機能付きキャップの構成例の略示説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、以下において同等の部材等には同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0018】
図1は、本発明のヒンジ機能付きキャップの一形態の略示側面図である。ヒンジ機能付きキャップ1は、ボトル、液体紙容器などの容器の注出口部に溶着するなどして取り付けられるスパウトに装着され、開閉自在に容器の注出口を閉栓するものであり、プラスチック樹脂の一体成形などにより形成される。ヒンジ機能付きキャップ1は、キャップ本体11の下端にブリッジ12を介してタンパーエビデントリング(以下、「TEリング」と記す)14が連結されている。
【0019】
キャップ本体11は、容器の注出口を実質的に開閉自在に閉栓する部材であり、概略の形状は一端が閉鎖された円筒状である。TEリング14は環状の部材であり、TEリング14の円周方向に沿って複数配置されたブリッジ12により、キャップ本体11と連結されている。ブリッジ12はキャップ本体11およびTEリング14よりも肉薄の柱状に形成されている。前記のブリッジのうちの一つは周方向に幅広な幅広ブリッジ13となっている。そして幅広ブリッジ13の一側、
図1の例では左側で、TEリング14が上下方向において幅狭となる幅狭部15が形成されている。
【0020】
キャップ本体11を、幅広ブリッジ13に対して幅狭部15が設けられている側と反対の方向(開栓方向)、すなわちキャップ本体11が反時計回りとなる様に回転すると、TEリング14は、図示しないスパウトにキャップ本体11が嵌合等されていることでその方向への回動が規制されているために回動せず、ブリッジ12と幅広ブリッジ13には横方向に引っ張られて剪断するような力がかかる。このとき、幅狭部15はTEリング14の他の部分よりも剛性が低く、ブリッジも設けられていないため変形しやすく、幅広ブリッジ13に引っ張られる形で変形して幅狭部15のねじれ量が大きくなるため、比較的細いブリッジ12はより大きな剪断力がかかることで容易に切断される。一方、幅広ブリッジ13は幅広であるため剪断力に対する耐久性が強く、さらに幅狭部15が変形することで剪断力が緩和されるため剪断されずに残る。
【0021】
ブリッジ12が切断されたときにキャップ本体11の回転を止めることで、ヒンジ機能付きキャップ1は、切断されたブリッジ12bの部分ではキャップ本体11とTEリング14が分離され、幅広ブリッジ13の部分のみで繋がった態様となる。幅広ブリッジ13は、
図2にも示す様にTEリング14の上端に立設されたもので、幅広ではあるが厚みは比較的薄いため、厚み方向には変形しやすい。そのため、幅広ブリッジ13はヒンジとして機能させることができ、キャップ本体11を幅広ブリッジ13と直径方向の反対側から持ち上げて回動させることで、キャップ本体11を開けてスパウト17の注出口18を外部に開口させ、内容物を注出できる。
【0022】
また、キャップ本体11の幅広ブリッジ13と直径方向の反対側に、キャップ本体11をスパウト17に係止する係止部16を設けると、キャップ本体11を閉じた状態で容易にスパウト17に係止でき、キャップ本体11が閉じた状態を保持できるため好ましい。係止部16は公知の係止機構を適宜採用して適用すればよい。またTEリング14の回動
を規制するには、
図2に示した様に、TEリング14の内周面とスパウト17の外周面を凸部と凹部の嵌合部19とする、多角形状の嵌合部とする方法や、凸条と凹溝の組合せ、フラップ構造など、公知の構造を採用できる。ただし、幅広ブリッジ13および幅狭部15の近傍には設けない様にして、TEリング14の変形を妨げない様にすると好ましい。
【0023】
幅広ブリッジ13の周方向の幅は、ヒンジ機能付きキャップのサイズや材質に応じて適宜設定すればよく、特に限定するものではない。ただし、キャップ本体11を回転したときに切断されてしまう恐れがなく、ヒンジとして機能させたときにキャップ本体11の開閉がし難くならないような幅とすると好ましい。例えば0.8mm~5mmであると好ましい。
【0024】
ヒンジ機能付きキャップ1の製造方法としては特に限定されず、射出成形等の公知の方法を採用することができる。またヒンジ機能付きキャップ1を構成する材料としては、射出成形等の製造方法に適用できるものであれば特に限定するものではないが、例えばポリプロピレン系樹脂、特に、ポリプロピレン、ポリプロピレンとエチレン等の他のα-オレフィンとのランダム(又はブロック)共重合体、これらのブレンド物が挙げられる。また、スパウト17を構成する材料を例示するとすれば、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0025】
図3は、本発明のヒンジ機能付きキャップの別形態の略示側面図である。本実施形態では、TEリング14において幅広ブリッジ13の左右両側に幅狭部15が形成されている。本実施形態では、TEリング14の幅狭部15が幅広ブリッジ13の両側に形成されているため、キャップ本体11を回転する際にはどちらの方向に回転しても良い。すなわち、キャップ本体11を時計回り、反時計回りのどちらの方向に回転しても上述と同様の作用を生じ、幅広ブリッジ13以外のブリッジ12を切断して、残った幅広ブリッジ13をヒンジとしてキャップ本体11を開閉自在とすることができる。
【0026】
図4は、本発明のヒンジ機能付きキャップの幅狭部の一例を説明する図である。この例では、幅狭部はなだらかなS字状にカーブした曲線状に形成されている。この様な形状であると、キャップ本体11を回転したときに曲線状の部分が引き伸ばされやすいので幅狭部15が変形しやすく、ブリッジ12の切断がしやすい。
【0027】
幅狭部15の形状は、これ以外の形状を採用することもでき、例えば
図5に各種示す様に、TEリング14の中間部に設けたヒンジ機能付きキャップ4、一端の上方から他端の下方に向かって傾斜した状態に設けたヒンジ機能付きキャップ5などとすることもできる。また、これらの形状のいずれかを、
図3で説明したような幅広ブリッジ13の左右両側に幅狭部を形成する態様に適用したヒンジ機能付きキャップ6とすることもできる。
【0028】
以上説明したように、本発明のヒンジ機能付きキャップによれば、キャップ本体を左右何れかの方向に回転するだけでブリッジを切断すると共に、残った幅広ブリッジをヒンジとしてキャップ本体を開閉自在とすることができ、簡易な構造でタンパーエビデンス機能を実現できるヒンジ機能付きキャップを提供できる。
【符号の説明】
【0029】
1、2、3、4、5、6、7・・・ヒンジ機能付きキャップ
11・・・キャップ本体
12・・・ブリッジ
12b・・・切断された状態のブリッジ
13・・・幅広ブリッジ
14・・・タンパーエビデントリング(TEリング)
15・・・幅狭部
16・・・係止部
17・・・スパウト
18・・・注出口
19・・・嵌合部