(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 27/02 20060101AFI20240326BHJP
F28F 1/40 20060101ALI20240326BHJP
F24H 9/00 20220101ALI20240326BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F28F27/02 B
F28F1/40 R
F24H9/00 A
F16L55/00 L
F16L55/00 M
(21)【出願番号】P 2020038132
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】幸 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】新井 皓也
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/135312(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/038380(WO,A1)
【文献】特開平11-153025(JP,A)
【文献】実公昭63-024380(JP,Y2)
【文献】特開2018-040530(JP,A)
【文献】実開昭62-036366(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/00 - 99/00
F28D 1/00 - 21/00
H05K 7/20
F24D 5/06 - 5/10
F24H 9/00
F16L 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒が流通する外管と、該外管の途中位置を外側から加熱又は冷却する熱源と、前記外管内を流通する熱媒と前記熱源との間で熱交換を行うことが可能な熱交換部とを有し、該熱交換部は、前記外管の内周面に密接した筒状の多孔質体と、該多孔質体の内側に形成される内側流路を開閉するバルブとを備え、前記多孔質体には、その一端から他端に連通し、前記熱媒が流通可能な連続気孔が形成されて
おり、
前記多孔質体の気孔率は60%以上90%以下であり、
前記外管内に熱媒を流通させたときの前記多孔質体の上流位置と下流位置との間の圧力損失は、前記多孔質体の上流側表面を封止して前記内側流路のみを開放したときをΔP1、前記バルブを閉じて前記多孔質体内を流通させた状態のときをΔP2とすると、その比(ΔP2/ΔP1)が1.5倍以上2倍以下であることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記バルブを開いて全開状態としたときの圧力損失をΔP3とすると、前記バルブを閉じて前記多孔質体内を流通させた状態のときの圧力損失ΔP2との比(ΔP2/ΔP3)が1.2倍以上15倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱交換機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に係り、流路を切り替えることによって熱交換の性能を変えることができる熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、土壌内に埋設された一又は複数の第1の熱交換手段と、建築物内に敷設された一又は複数の第2の熱交換手段と、第1の熱交換手段と第2の熱交換手段とを接続するパイプシステムと、パイプシステム内を循環する熱交換用液状媒体と、熱交換用液状媒体をパイプシステム内に循環させるためのポンプ手段と、パイプシステム内を循環する熱交換用液状媒体の循環経路を切り替えるためのバルブ切替手段と、各所の温度を検知する温度検知システムと、温度検知システムを構成する各温度センサからの温度データに基づいて、ポンプ手段及びバルブ切替手段を制御するための制御手段とを備えた土壌熱を利用した空調システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の空調システムにおいて、屋内の温度などに応じて循環経路を切り替える必要があるが、特定の熱交換部分に流体が流れないようにするときに急激なバルブの開閉を行うと、循環経路の管内にウォーターハンマー現象が発生し、装置の破損に繋がる場合が生じる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、効率的に熱交換を行うとともに、流路を切り替える際のウォーターハンマー現象の発生も抑制できる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱交換器は、熱媒が流通する外管と、該外管の途中位置を外側から加熱又は冷却する熱源と、前記外管内を流通する熱媒と前記熱源との間で熱交換を行うことが可能な熱交換部とを有し、該熱交換部は、前記外管の内周面に密接した筒状の多孔質体と、該多孔質体の内側に形成される内側流路を開閉するバルブとを備え、前記多孔質体には、その一端から他端に連通し、前記熱媒が流通可能な連続気孔が形成されている。
【0007】
この熱交換器において、多孔質体には熱媒が流通可能な連続気孔が形成されているので、多孔質体の内側流路をバルブによって閉じた状態とすると、熱媒は、多孔質体の連続気孔を経由して流れる。管の外側には熱源が設けられているので、多孔質体を流れる熱媒は、管の外側の熱源との間で熱交換し、熱源により加熱又は冷却される。この熱源との間で熱交換した熱媒は、多孔質体の下流に流れ、下流位置で管の外側環境との間で熱交換して放熱又は吸熱することにより利用される。
【0008】
一方、多孔質体の内側流路のバルブを開放した状態とすると、この内側流路は多孔質体に比べて流路抵抗が小さいので、多孔質体の上流から流れてくる熱媒は、その大部分が内側流路に流れて下流に導かれる。このとき、多孔質体内では熱媒の流れはほとんど発生せずに、気孔内に熱媒が滞留した状態となるか、流れるとしてもわずかな流量に留まる。したがって、管の外側の熱源からの熱は、多孔質体内を経由して内側流路に伝達される途中で、多孔質体及びその内部の熱媒を加熱又は冷却するためにエネルギーが消費され、かつ、多孔質体内では熱媒がほぼ滞留した状態であるため、熱の伝達が遮断され、内側流路の内面から熱媒に伝達される熱の量が少なくなる。また、多孔質体内に流れが生じるとしてもわずかであるから、多孔質体から下流への熱の移動も少ない。さらに、内側流路は、その内部を流れる熱媒に対する圧力損失が小さいので、比較的大きな流量で流れる。そして、その流量に対して、内側流路の内面から伝達される熱の量が少ないため、内側流路内の熱媒により運搬される熱の量も少なくなる。
【0009】
したがって、内側流路のバルブを開放した状態では、熱源との間の熱交換が抑制される。
このようにして、内側流路のバルブを開閉することにより、熱源との間の熱交換を切り替えることができ、このとき、熱媒自体は熱交換部の上流から下流に流れた状態であるため、管内圧の急激な圧力変化が生じにくく、ウォーターハンマー現象の発生も抑制される。
【0010】
この熱交換器において、前記多孔質体の気孔率は60%以上90%以下であるとよい。気孔率が60%未満では多孔質体の流路抵抗が大きくなるため、バルブを閉じたときに多孔質体内を流れる熱媒量が少なく、熱媒を送るポンプの負荷が大きくなる。気孔率が90%を超えると、多孔質体内を流通する熱媒が速やかに下流に流れてしまい、熱源との間の熱交換が十分になされないおそれがある。
【0011】
この熱交換器において、前記外管内に熱媒を流通させたときの前記多孔質体の上流位置と下流位置との間の圧力損失は、前記多孔質体の上流側表面を封止して前記内管の内側流路のみを開放したときをΔP1、前記バルブを閉じて前記多孔質体内を流通させた状態のときをΔP2とすると、その比(ΔP2/ΔP1)が1倍以上3倍以下であるとよい。
【0012】
これらの圧力損失の比(ΔP2/ΔP1)が3倍を超えていると、バルブを閉じたときの圧力変動が大きくなり過ぎて、ウォーターハンマー現象が生じるおそれがある。1倍未満では、バルブを開いたときに、内側流路だけでなく、多孔質体内にも多くの熱媒が流れ込むため、多孔質体での断熱効果が低減し、熱交換を切り替えた効果が少ない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、効率的に熱交換を行うとともに、流路を切り替える際のウォーターハンマー現象の発生も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態の熱交換器を用いた暖房システムの模式図である。
【
図2】
図1に示す熱交換器においてバルブを閉じた状態を示す拡大断面図である。
【
図3】
図2の熱交換器においてバルブを開いた状態を示す断面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態の熱交換器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
本実施形態の熱交換器1は、熱源2によって空気(熱媒)を加熱し、高温になった空気の熱を目的の部屋等において放散する暖房システム10に用いられる。
図1は、この暖房システム10を模式的に示したものであり、符号20が熱源2の熱によって空気が加熱される吸熱部(第1熱交換部)、符号40が第1熱交換部20において高温になった空気の熱を放散する放熱部(第2熱交換部)を示す。
【0016】
この熱交換器1は、空気が流通する外管3と、その外管3の途中位置を外側から加熱する熱源2と、外管3内を流通する熱媒と熱源2との間で熱交換を行う第1熱交換部(本発明の熱交換部に相当する)20とを有している。
第1熱交換部20は、外管3の内周面に密接した筒状の多孔質体21と、この多孔質体21の内周面に密接した内管22と、この内管22内の流路(内側流路)23を開閉するバルブ24とを備えている。
【0017】
多孔質体21は、熱伝導に優れる金属、例えばアルミニウム、銅等からなる粉末、繊維、あるいはこれらの混合物を焼結して形成されたものであり、金属骨格を有し、気孔率が60%以上90%以下の範囲内に設定されている。この場合、この多孔質体21内の気孔には、多孔質体21の一端から他端に連通する連続気孔が含まれており、多孔質体21の一端に熱媒を供給すると、その連続気孔を通って多孔質体21の他端から流出できるようになっている。なお、多孔質体21の比表面積(単位体積当たり)としては1000m2/m3以上15000m2/m3以下が好ましい。この気孔率が60%未満では、多孔質体21の流路抵抗が大きくなる(例えば3kPa)ため、バルブを閉じたときに多孔質体内を流れる熱媒量が少なく、熱媒を送るポンプの負荷が大きくなる。気孔率が90%を超えると、多孔質体21内を流通する熱媒が速やかに下流に流れてしまい、熱源2との間の熱交換が十分になされないおそれがある。
【0018】
このような多孔質体21として、例えば、多数の金属粉末の集合体を焼結したもの、多数の金属繊維の集合体を焼結したもの、これら金属繊維と金属粉末とを混合した状態で焼結したものを採用することができる。また、発泡剤を添加して焼結することにより、連続した金属骨格により形成される複数の気孔が連通した三次元網目状構造を有する発泡金属としてもよい。
【0019】
この多孔質体21は、外管3の内周面に密接状態に設けられる。図では、外管3の途中にフランジ31~34によって結合できるように比較的短尺な短管35が形成されており、その短管35内に多孔質体21が設けられている。この場合、短管35内で金属粉末や金属繊維を筒状に固めて集合体とし、短管35内で焼結することにより、短管35の内周面に金属粉末や金属繊維が結合した状態とされる。
【0020】
内管22は、多孔質体21の内周面に密接した状態で同軸上に設けられる。この場合も、内管22の外周面上に金属粉末や金属繊維を筒状に固めて集合体とし、内管22の外周面上で焼結することにより、内管22の外周面に金属粉末や金属繊維が結合した状態とされる。具体的には、短管35と内管22とを同軸上に配置し、その間に金属粉末や金属繊維を筒状に固めて充填し、これら短管35、内管22、金属粉末等を炉に入れて加熱することにより、多孔質体21の内周面と内管22の外周面とが結合し、多孔質体21の外周面と短管35の内周面とが結合した状態に形成される。
なお、外管3及び内管22は、多孔質体21と同じ種類の金属により形成してもよいし、アルミニウムと銅との組み合わせとするなど、接合可能であれば異なる種類の金属により形成してもよい。
【0021】
内管22は多孔質体21の長さよりも大きく、多孔質体21の一方の端部(下流側端部)から下流方向に突出しており、その突出端部に内管22の内側流路23を開閉するバルブ24が設けられている。バルブ24としては、図には弁体24aを90°回転させることにより流路を開閉するバタフライバルブを例示したが、ボールバルブ、仕切弁等、流路を開閉できるものであれば適用可能である。
一方、多孔質体21の他方の端部(上流側端部)においては、内管22の先端は、多孔質体21の端面と同一に配置される。
【0022】
ここで、内側流路23と多孔質体21との圧力損失比は、多孔質体21の上流側表面を封止して内管22の内側流路23のみを開放状態とすることにより熱媒が内管22の内側流路23だけを流通するときの圧力損失をΔP1とし、熱媒が多孔質体21内だけを流通するときの圧力損失(バルブ24を閉じた状態の圧力損失に等しい)をΔP2とすると、その比(ΔP2/ΔP1)は1倍以上3倍以下とされる。この内側流路23と多孔質体21との圧力損失比(ΔP2/ΔP1)が1倍未満では、バルブ24を開いたときに、内側流路23だけでなく、多孔質体21内にも多くの熱媒が流れ込むため、多孔質体21での断熱効果が低減し、熱交換を切り替えた効果が少ない。3倍を超えると、バルブ24を閉じたときの圧力変動が大きく、ウォーターハンマー現象が生じるおそれがある。この内側流路23と多孔質体21との圧力損失比(ΔP2/ΔP1)は1.5倍以上2倍以下がより好ましい。
【0023】
また、バルブ24を開いた状態(全開状態)のときの圧力損失をΔP3、バルブ24を閉じた状態(全閉状態)のときの圧力損失をΔP2とすると、その比(ΔP2/ΔP3)が1.2倍以上15倍以下とするのが好ましい。バルブ24を開閉したときの圧力損失の比(ΔP2/ΔP3)が15倍を超えていると、熱交換器1全体システムの圧力変動が大きくなり過ぎて、設計が煩雑になる。1.2倍未満では、バルブ24を開いたときに、内側流路23だけでなく、多孔質体21内にも多くの熱媒が流れ込むため、多孔質体21での断熱効果が低減し、熱交換を切り替えた効果が少なくなる。このバルブ24の開閉による圧力損失比(ΔP2/ΔP3)は、3倍以上10倍以下がより好ましい。
【0024】
また、必ずしも限定されるものではないが、内管22の内側流路23の横断面積をA1mm2とし、多孔質体21の横断面積をA2mm2としたときに、これらの横断面積比(A2/A1)は3倍以上12倍以下であるとよい。この横断面積比(A2/A1)が3倍未満では、バルブ24を閉じたときと開いたときとの流量差が大きくなり、12倍を超えると全体流量が少なくなり、熱交換効率が低減する。
なお、第1熱交換部20において、熱源2及び外管3は断熱材で覆った状態とするのが好ましい。
【0025】
一方、第2熱交換部40は、この実施形態では暖房を必要とする部屋内に設置されており、外管3の外周面に複数のフィン41が一体に形成され、熱の放散が促進されるようになっている。
【0026】
このように構成された暖房システム10において、第1熱交換部20の外側に配置された熱源2を発熱状態とし、第1熱交換部20における内管22のバルブ24を閉じた状態としておき、第1熱交換部20の上流から熱媒(空気)を流通させると、第1熱交換部20において、熱媒は、内管22内には流入せずに、内管22と外管3との間の多孔質体21内を流通する。この多孔質体21は、前述したように連続気孔を有しているため、多孔質体21内を熱媒が流通し、多孔質体21の他端から下流に向けて流出する。この多孔質体21は、その外周面が外管3の内周面に密接しており、その外管3の外側に熱源2が発熱状態で設けられているため、その熱源の熱が外管3の壁を通って多孔質体21に速やかに伝達され、多孔質体21内の金属骨格を経由して内管22に伝達するまでの間に多孔質体21の気孔内を流通する熱媒に伝達して熱媒を加熱する。多孔質体21の比表面積が大きいので、多孔質体21の金属骨格から効率的に熱媒に熱伝達され、多孔質体21内で高温となった熱媒が多孔質体21の下流に流され、第2熱交換部40でフィン41に熱が伝わることでフィン41から放熱され、第2熱交換部40周辺の環境を暖房する。
【0027】
一方、第1熱交換部20における内管22のバルブ24を開放した状態とすると、第1熱交換部20の上流から供給される熱媒は、内管22内に比べて多孔質体21の圧力損失が大きいため、熱媒は内管22内に優先的に流れ込む。したがって、熱媒の大部分が内管22の内側流路23を流通して下流に流れ、多孔質体21内の気孔には空気がわずかしか流通しないか、ほとんど流通することなく滞留した状態となる。このため、多孔質体21が断熱体として機能し、熱源から内管22内への熱の伝達が抑制される。したがって、内管22の内側流路23を流通した熱媒は、温度変化することなく下流へと導かれる。
【0028】
このように、内管22のバルブ24を閉じた状態では、多孔質体21を流通する熱媒に熱源の熱が伝わって、加熱された熱媒が下流に流れ、一方、内管22のバルブ24を開いた状態では、内管22の内側流路23を流通する熱媒に熱が伝わらずに、第1熱交換部20の上流での温度をほぼ維持した状態で下流に流れる。したがって、この内管22のバルブ24を開閉することにより、熱源2の熱を熱媒に伝えたり、遮断したりすることができる。
【0029】
また、内管22のバルブ24の開度を調整することにより、熱媒を多孔質体21及び内管22のいずれにも流通させ、第1熱交換部20を経由した熱媒の温度を適宜に制御することも可能である。すなわち、多孔質体21と内管22との圧力損失には、大きな差が設けられているが、内管22のバルブ24の開度を適切に調整することにより、熱媒の一部を多孔質体21に流通するとともに、残りを内管22内に流通させることができる。多孔質体21内では熱源2の熱を受けて高温となった熱媒が下流にながれ、内管22内では、その上流の熱媒の温度をほぼ維持した状態で下流に流れる。そして、この第1熱交換部20の下流位置で両者が合流して、これらの混合流体となって流れる。この混合流体の温度は、多孔質体21内を通過した熱媒の温度と流量、内管22の内側流路23を通過した熱媒の温度と流量の組み合わせによって設定される。
そして、バルブ24の開度を調整することにより、多孔質体21と内管22との圧力損失の差を制御して、多孔質体21と内管22との流量比を調整し、多孔質体21の下流における熱媒の温度を任意に設定することができる。
【0030】
このようにして、バルブ24の開度を調整することにより、第2熱交換部40周辺の温度を適切に制御することができ、この場合、バルブ24を開閉するだけで温度調整可能であるとともに、熱媒の圧力の急激な変動を伴わないので、ウォーターハンマー現象の発生も防止できる。
【0031】
なお、本発明は上記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、
図1~
図3に示す例では、内管を1本設けているが、
図4に示す熱交換器11のように複数本の内管22を設けてもよい。この場合、前述した内側流路23と多孔質体21との圧力損失比(ΔP2/ΔP1)における内側流路23の圧力損失ΔP1は、複数本の内管22全部の内側流路22を流通させるときの圧力損失であり、バルブ24を開閉したときの圧力損失の比(ΔP2/ΔP3)は、複数本の内管22全部の内側流路22を開閉したときの圧力損失比である。また、横断面積比(A2/A1)における内側流路23の横断面積A1mm
2は、複数本の内管22全部の内側流路22の合計の横断面積である。
また、この
図4に示す熱交換器11においては、複数本の内管22のそれぞれにバルブ24が設けられているので、各バルブ24の開度を同じとするのではなく、全開、全閉、中間開度など、個々のバルブ24ごとに開閉を調整しながら、最適温度に設定することが可能である。
また、多孔質体21を焼結により形成する際に、外管3の内周面と内管22の外周面とに結合させるようにしたが、外管3と内管22との間に密接状態に充填されれば、必ずしも結合していなくてもよい。
【実施例】
【0032】
アルミニウム又はアルミニウム合金からなる内径15mm~30mm、厚さ1mmの外管と、同じくアルミニウム又はアルミニウム合金からなる内径8mm、外径10mmの内管との間にアルミニウムの粉末と繊維との混合体を充填して焼結することにより多孔質体を形成した。内管の長さは150mmとし、多孔質体は、表1に示す長さ(50mm、100mm、150mm、300mm)、気孔率(60%~95%)とした。
熱媒としては空気を使用し、多孔質体の上流と下流との圧力差について、バルブを開放した状態と閉じた状態とでそれぞれ測定した。
【0033】
また、多孔質体の長さの中間位置で外管の外周面に長さ30mmの範囲で熱源(ヒータ)を密接させ、常温(25℃)の空気を流通させた。熱源及び外管の周囲は断熱材で覆った状態とした。
【0034】
そして、多孔質体を封じて内側流路内だけを流通させたときの多孔質体の上流位置の圧力と下流位置の圧力とをそれぞれ測定して、その差圧ΔP1(圧力損失)を求め、また、バルブを閉じた状態で多孔質体内だけを流通させたときの多孔質体の上流位置の圧力と下流位置の圧力とをそれぞれ測定して、その差圧(圧力損失)ΔP2を求め、これら差圧の比(ΔP2/ΔP1)を算出した。
また、多孔質体を封じることなく、バルブを開いた状態で、多孔質体の上流位置の圧力と下流位置の圧力とをそれぞれ測定して、その差圧(圧力損失)ΔP3も求めた。
【0035】
また、バルブを閉じた状態で熱源と外管との間の温度を熱電対により測定して、熱電対が60℃を記録するように熱媒を調整し、バルブを切り替えて開いた状態としてから、5分経過後の熱電対の温度を測定し、その熱変化(K)を求めた。
なお、比較のため、外管と内管との間に多孔質体を設けないものも作製した。
これらの結果を表1に示す。
【0036】
【0037】
この表1に示す結果から明らかなように、外管と内管との間に多孔質体を設けたNo.1~9は、多孔質体と内管の内側流路とで流路を切り替えることにより、所定の熱変化が得られることがわかる。この場合、No.1~8のように、多孔質体の気孔率が60%以上90%以下で、多孔質体と内側流路との圧力損失比(ΔP2/ΔP1)が1倍以上3倍以下であると、熱変化ΔTが大きく、十分に熱交換されている。
これに対して、多孔質体を設けなかったNo.10は、圧力損失比(ΔP2/ΔP1)及び熱変化ΔTが小さく、十分な熱交換が得られていない。
【符号の説明】
【0038】
1,11 熱交換器
2 熱源
3 外管
20 第1熱交換部
21 多孔質体
22 内管
23 内側流路
24 バルブ
40 第2熱交換部
41 フィン