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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/40 20060101AFI20240326BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20240326BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01B7/40 307Z
H02G3/04
H01B7/40 307A
H01B7/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020046300
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021150058
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】水下 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】江端 大輔
(72)【発明者】
【氏名】深水 雄也
(72)【発明者】
【氏名】荒井 健太
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-085321(JP,A)
【文献】実開昭61-107110(JP,U)
【文献】特開昭62-256492(JP,A)
【文献】特開平02-129886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/40
H02G 3/04
H01B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面を有するベース部材と、
前記保持面側に配設された線状伝送部材と、
前記保持面側に配設された線状部材と、
を備え、
前記線状部材は、前記ベース部材とは反対側から前記線状伝送部材に対して複数箇所で交差し、
前記線状部材は、前記線状伝送部材の両側で、前記保持面に融着されており、
前記線状部材は、前記線状伝送部材の一側に配設される複数の一側経路部と、前記線状伝送部材の他側に配設される複数の他側経路部とを含み、
前記複数の一側経路部と前記複数の他側経路部とが、前記線状伝送部材の延在方向に沿って交互に設けられ、
前記複数の一側経路部のそれぞれの少なくとも一部と、前記複数の他側経路部のそれぞれの少なくとも一部が前記保持面に融着されており、
前記複数の一側経路部と前記複数の他側経路部とが前記線状伝送部材に沿って直線状に延びている、配線部材。
【請求項2】
請求項1に記載の配線部材であって、
前記線状部材の表面素材は、前記保持面に対する融着による前記線状部材の剥離強度が、前記保持面に対する融着による前記線状伝送部材の剥離強度よりも大きい性質を有する、配線部材。
【請求項3】
保持面を有するベース部材と、
前記保持面側に配設された線状伝送部材と、
前記保持面側に配設された線状部材と、
を備え、
前記線状部材は、前記ベース部材とは反対側から前記線状伝送部材に対して複数箇所で交差し、
前記線状部材は、前記線状伝送部材の両側で、前記保持面に融着されており、
前記線状部材は、電気又は光を伝送する線状の部材である、配線部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記線状部材は、前記線状伝送部材に対して斜めに交差している、配線部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記線状部材は、前記線状伝送部材よりも細い、配線部材。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記線状伝送部材は、前記保持面上で曲がる曲げ経路部を含み、
前記線状部材は、前記線状伝送部材の延在方向における前記曲げ経路部の両側の位置で前記線状伝送部材に対して交差している、配線部材。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記線状伝送部材を複数備え、
前記線状部材は、前記複数の線状伝送部材に交差した状態で前記保持面に融着されている、配線部材。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記線状部材を複数備え、
前記複数の線状部材が前記線状伝送部材に交差した状態で前記保持面に融着されている、配線部材。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記線状伝送部材は、第1線状伝送部材と第2線状伝送部材とを含み、
前記線状部材は、前記第1線状伝送部材と交差した状態で前記保持面に融着される第1線状部材と、前記第2線状伝送部材と交差した状態で前記保持面に融着される第2線状部材とを含む、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シート材と、電線と、少なくとも一部が前記電線と前記シート材との間に介在し、溶着による前記シート材と前記電線との接合を仲立ちしている保持部と、を備える、ワイヤーハーネスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-3925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電線の外周囲の素材とシート材の表面素材とが融着し難い場合等において、さらに電線をシート材に容易に保持できるようにすることが要請されている。
【0005】
そこで、本開示は、線状伝送部材をベース部材に容易に保持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材は、保持面を有するベース部材と、前記保持面側に配設された線状伝送部材と、前記保持面側に配設された線状部材と、を備え、前記線状部材は、前記ベース部材とは反対側から前記線状伝送部材に対して複数箇所で交差し、前記線状部材は、前記線状伝送部材の両側で、前記保持面に融着されている、配線部材である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、線状伝送部材がベース部材に容易に保持される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態に係る配線部材を示す平面図である。
図2図2図1におけるII-II線断面図である。
図3図3は第1変形例に係る配線部材を示す平面図である。
図4図4は第2変形例に係る配線部材を示す平面図である。
図5図5は第3変形例に係る配線部材を示す平面図である。
図6図6は第4変形例に係る配線部材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の配線部材は、次の通りである。
【0011】
(1)保持面を有するベース部材と、前記保持面側に配設された線状伝送部材と、前記保持面側に配設された線状部材と、を備え、前記線状部材は、前記ベース部材とは反対側から前記線状伝送部材に対して複数箇所で交差し、前記線状部材は、前記線状伝送部材の両側で、前記保持面に融着されている、配線部材である。
【0012】
これにより、保持面に融着された線状部材によって、線状伝送部材がベース部材の保持面に対して保持される。このため、線状伝送部材がベース部材に容易に保持される。
【0013】
(2)(1)の配線部材であって、前記線状部材の表面素材は、前記保持面に対する融着による前記線状部材の剥離強度が、前記保持面に対する融着による前記線状伝送部材の剥離強度よりも大きい性質を有していてもよい。線状伝送部材が保持面に融着し難い場合においても、保持面に対して融着し易い線状部材によって、線状伝送部材が保持面に保持される。
【0014】
(3)(1)又は(2)の配線部材であって、前記線状部材は、電気又は光を伝送する線状の部材であってもよい。線状部材が、電気又は光を伝送する機能を実現しつつ、線状伝送部材を保持できる。
【0015】
(4)(1)から(3)のいずれか1つの配線部材であって、前記線状部材は、前記線状伝送部材の一側に配設される複数の一側経路部と、前記線状伝送部材の他側に配設される複数の他側経路部とを含み、前記複数の一側経路部と前記複数の他側経路部とが、前記線状伝送部材の延在方向に沿って交互に設けられ、前記複数の一側経路部のそれぞれの少なくとも一部と、前記複数の他側経路部のそれぞれの少なくとも一部が前記保持面に融着されていてもよい。線状部材が線状伝送部材の延在方向において複数箇所で線状部材を保持することができる。
【0016】
(5)(1)から(4)のいずれか1つの配線部材であって、前記線状部材は、前記線状伝送部材に対して斜めに交差していてもよい。線状部材は、保持面に対する融着箇所から線状部材に対して斜めに交差するように延びることができるため、線状部材の配置が容易に行われる。
【0017】
(6)(1)から(5)のいずれか1つの配線部材であって、前記線状部材は、前記線状伝送部材よりも細くてもよい。線状部材は、線状伝送部材よりも細いため、曲り易い。このため、線状伝送部材に対してなるべく近い位置で、線状部材を保持面に融着でき、線状伝送部材がしっかりと保持される。
【0018】
(7)(1)から(6)のいずれか1つの配線部材であって、前記線状伝送部材は、前記保持面上で曲がる曲げ経路部を含み、前記線状部材は、前記線状伝送部材の延在方向における前記曲げ経路部の両側の位置で前記線状伝送部材に対して交差していてもよい。線状部材は、曲げ経路部の前後の位置で線状部材によって保持されているため、線状伝送部材が位置ずれし難い。
【0019】
(8)(1)から(7)のいずれか1つの配線部材であって、前記線状伝送部材を複数備え、前記線状部材は、前記複数の線状伝送部材に交差した状態で前記保持面に融着されていてもよい。線状部材によって複数の線状伝送部材が保持される。
【0020】
(9)(1)から(8)のいずれか1つの配線部材であって、前記線状部材を複数備え、前記複数の線状部材が前記線状伝送部材に交差した状態で前記保持面に融着されていてもよい。複数の線状部材によって線状伝送部材がしっかりと保持される。
【0021】
(10)(1)から(9)のいずれか1つの配線部材であって、前記線状伝送部材は、第1線状伝送部材と第2線状伝送部材とを含み、前記線状部材は、前記第1線状伝送部材と交差した状態で前記保持面に融着される第1線状部材と、前記第2線状伝送部材と交差した状態で前記保持面に融着される第2線状部材とを含んでもよい。第1線状部材によって第1線状伝送部材が保持され、第2線状部材によって第2線状伝送部材が保持される。これにより、第1線状伝送部材及び第2線状伝送部材がしっかりと保持される。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0023】
[実施形態]
以下、実施形態に係る配線部材について説明する。図1は配線部材10を示す平面図であり、図2図1におけるII-II線断面図である。配線部材10は、ベース部材20と、線状伝送部材30と、線状部材40とを備える。
【0024】
ベース部材20は、保持面22を有している。この保持面22上に線状伝送部材30と線状部材40とが配設される。保持面22上において、線状伝送部材30は所定の経路を描くように保持される。つまり、ベース部材20は、線状伝送部材30を所定の経路に沿って保持する保持面22を有する部材である。ベース部材20は、線状伝送部材30を保持するための保持面22を有する部材であればよい。ベース部材20は、シート状に形成されていてもよいし、立体的な形状に形成されていてもよい。保持面22、平面であってもよいし、曲面であってもよいし、凹凸面であってもよいし、平面と他の曲面等が複合した面であってもよい。
【0025】
ここでは、ベース部材20は、偏平なフラット部分を有する部材、より具体的には、曲げ可能なシート部材20であるものとして説明する。
【0026】
シート部材20は、線状伝送部材30の配線経路に沿った形状に形成されてもよい。ここでは、シート部材20は、一方向に長い長方形状に形成されている。シート部材は曲っていてもよい。シート部材は、曲線状に曲る部分を有していてもよい。シート部材は、分岐部分を有していてもよい。
【0027】
シート部材20を構成する材料は特に限定されるものではないが、シート部材20は、PVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などの樹脂を含む材料によって形成されてもよい。シート部材20は、内部が一様に埋ったシート材であってもよいし、不織シート等であってもよい。シート部材20は、金属などの材料を含むこともあり得る。シート部材20は、好ましくは、厚み方向において容易に曲る柔軟性を有する。シート部材20は、単層であってもよいし、複数層積層されていてもよい。複数層積層されている場合、例えば、シート部材20は、樹脂層と樹脂層とが積層されていることが考えられる。より具体的には、例えば、シート部材20は、内部が一様に埋った樹脂シート材と不織シートとが積層されていることが考えられる。また例えば、シート部材20は、樹脂層と金属層とが積層されていることが考えられる。
【0028】
線状伝送部材30は、車両における部品間を通信可能に又は電力供給可能に接続する線状伝送部材であることが想定される。線状伝送部材30は、接続先となる部品の位置等に応じた配線経路に沿って延びるように、上記保持面22側に配設される。
【0029】
より具体的には、線状伝送部材30は、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。例えば、線状伝送部材30は、芯線と芯線の周囲の被覆とを有する一般電線であってもよいし、裸導線、シールド線、ツイスト線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。
【0030】
電気を伝送する線状伝送部材30としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材の一部等は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0031】
また、線状伝送部材30は、単一の線状物であってもよいし、複数の線状物の複合物(ツイスト線、複数の線状物を集合させてこれをシースで覆ったケーブル等)であってもよい。
【0032】
線状部材40は、上記保持面22側に配設される。線状部材40は、保持面22に融着された状態で、線状伝送部材30を保持面22上に保持する部材である。
【0033】
線状部材40は、保持面22に融着可能であればよい。換言すれば、線状部材40の表面素材が、シート部材20の保持面22に融着可能な材料であればよい。例えば、シート部材20の保持面22の材料と、線状部材40の表面素材とが、同じ樹脂材を含んでいてもよい。例えば、シート部材20の保持面22がPVCを含む材料によって形成されている場合、線状部材40の表面素材はPVCを含む材料であってもよい。
【0034】
線状部材40の表面素材が、シート部材20の保持面22に融着可能であればよい。このため、線状部材40の中心部は、金属であってもよいし、ガラスであってもよいし、シート部材20の保持面22に融着困難な樹脂であってもよい。このため、線状部材40は、線状伝送部材30と同様に、電気又は光等を伝送する線状の部材であってもよい。この場合、線状部材40は、車両における部品間を通信可能に又は電力供給可能に接続する線状伝送部材として用いられ得る。
【0035】
本実施形態では、線状伝送部材30が、電気を伝送するシールドケーブル30である場合を想定した説明がなされる。より具体的には、シールドケーブル30は、複数の電線32と、複数の電線を覆うシールド層35と、シールド層35を覆うシース36とを備える。電線32は、芯線33と、芯線33の周囲を覆う被覆34とを含む。複数(ここでは2つ)の電線32は、撚り合わされている。シールド層35は、導電性を有しており、撚り合わされた電線32を覆っている。シールド層35は、例えば、金属線が筒状に編まれた編組である。シース36は、絶縁層であり、シールド層35の周囲に溶融した樹脂が押出被覆されることにより形成される。シールド層35は省略されてもよい。かかるシールドケーブル30は、例えば、マイク接続用ケーブル、アンテナ用ケーブル、映像信号伝送用ケーブル、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)信号用ケーブル等として用いられてもよい。
【0036】
また、線状部材40が、電気を伝送する電線40である場合を想定した説明がなされる。より具体的には、電線40は、芯線41と、芯線41の周囲を覆う被覆43とを含む。
【0037】
シールドケーブル30は、保持面22上において一定経路に沿って配設される。ここでは、シールドケーブル30は、シート部材20の延在方向に沿って当該シート部材20の一端部から他端部に向うように配設される。ここでは、シールドケーブル30は、シート部材20の延在方向に沿って直線状に配設される。
【0038】
電線40は、保持面22上において、ベース部材20とは反対側からシールドケーブル30に対して複数箇所で交差するように配設されている。そして、シールドケーブル30の両側で、保持面22に対して融着されている。保持面22における電線40の融着箇所は、平面視においてシールドケーブル30から離れた位置であってもよいし、シールドケーブル30と接触する位置であってもよい。
【0039】
ここで、融着とは、例えば線状部材(電線)40とベース部材(シート部材)20の保持面22とのうち少なくとも一方に含まれる樹脂が融かされることによってくっついて固定されることをいう。かかる融着がなされるにあたり、樹脂は、例えば、熱によって融かされることも考えられるし、溶剤によって融かされることも考えられる。つまり、融着による融着固定部は、熱によって融着固定された状態であってもよいし、溶剤によって融着固定された状態であってもよい。
【0040】
熱による融着は、超音波融着、加熱加圧融着、熱風融着、高周波融着などによってなされ得る。例えば、超音波融着による融着部は、超音波融着部と称されてもよい。
【0041】
融着箇所において、線状部材(電線)40の表面のみが融けてもよいし、ベース部材(シート部材)20の保持面22のみが融けてもよいし、それらの両方の樹脂の両方が融けてもよい。
【0042】
電線40がシールドケーブル30を保持する経路の一例として、本実施形態では、電線40は、シールドケーブル30の一端側から他端側に向うように配設されている。電線40は、シールドケーブル30の一側に配設される複数の一側経路部46と、シールドケーブル30の他側に配設される複数の他側経路部47とを含む。複数の一側経路部46と、複数の他側経路部47とは、シールドケーブル30の延在方向に沿って交互に設けられている。複数の一側経路部46のそれぞれの少なくとも一部と、複数の他側経路部47のそれぞれの少なくとも一部とが、保持面22に融着されている。
【0043】
換言すれば、電線40は、シールドケーブル30に沿って繰返し波形を描きつつ当該シールドケーブル30に対して複数箇所で交差するように配設されている。そして、電線40が、シールドケーブル30に沿って、当該シールドケーブル30の一側及び他側で交互に保持面22に融着されている。
【0044】
シールドケーブル30及び電線40の両端部は、コネクタ50、52に接続されていてもよい。ここでは、シート部材20の一端部から離れた位置にコネクタ50が設けられ、シート部材20の他端部から離れた位置にコネクタ52が設けられる。コネクタ50、52はシート部材20に固定されていてもよい。シールドケーブル30の一端部(ここでは複数の電線32の一端部)及び電線40の一端部は、シート部材20の端部から延出して同じコネクタ50に接続されている。シールドケーブル30の他端部(ここでは複数の電線32の他端部)及び電線40の他端部は、シート部材20の端部から延出して同じコネクタ52に接続されている。このように、同じ配線経路に沿って複数の線状伝送部材が配設される場合、一部の電線40が他の一部のシールドケーブル30を保持する構成としてもよい。
【0045】
一側経路部46及び他側経路部47の延在方向全体がシート部材20に融着されていてもよいし、一側経路部46及び他側経路部47の延在方向の一部がシート部材20に融着されていてもよい。ここでは、一側経路部46が、シールドケーブル30に沿って直線状に延びており、一側経路部46の両端部又は端部が融着部28を介してシート部材20に融着されている。同様に、他側経路部47の両端部又は端部がシート部材20に融着されている。これにより、一側経路部46及び他側経路部47をスポット的な融着箇所で容易にシート部材20に融着できる。また、一側経路部46における融着箇所と他側経路部47における融着箇所とが、シールドケーブル30の延在方向に沿って同じパターンで繰返されるため、機械設備等による多数箇所の融着が容易に行われ得る。また、一側経路部46及び他側経路部47の両端がシート部材20に融着されているので、電線40のうち一側経路部46と他側経路部47とを結んで電線40に交差する部分の経路規制がより確実になされる。これにより、電線40によってシールドケーブル30がしっかりと保持される。
【0046】
線状部材の一例である電線40は、線状伝送部材の一例であるシールドケーブル30に対して斜めに交差している。ここでは、電線40がコネクタ50からコネクタ52に向う際に、一側経路部46からシールドケーブル30に対して交差して他側経路部47に至る部分を第1交差部48とする。また、逆に、他側経路部47からシールドケーブル30に対して交差して一側経路部46に至る部分を第2交差部49とする。第1交差部48は、一側経路部46と他側経路部47とに対して鈍角をなしている。第2交差部49も、一側経路部46と他側経路部47とに対して鈍角をなしている。第1交差部48及び第2交差部49は、一側経路部46及び他側経路部47に対して角度をなして連なっている必要は無い。第1交差部48及び第2交差部49は、一側経路部46及び他側経路部47に対してカーブを描きつつ連なっていてもよい。いずれにせよ、電線40を保持面22上に配設する際に、一側経路部46又は他側経路部47と、第1交差部48又は第2交差部49との間で、電線40を緩やかに曲げればよく、従って、電線40が保持面22上に容易に配設される。
【0047】
上記のように、線状伝送部材の一例であるシールドケーブル30を、他の線状部材である電線40によって保持する構成は、線状伝送部材の一例であるシールドケーブル30を保持面22に対して融着困難である場合に適用されてもよい。例えば、線状部材である電線40の表面素材(ここでは被覆43の材料)が、シールドケーブル30の表面素材(ここではシース36の材料)と保持面22の表面素材とに対する関係において、次の性質を有する場合である。この性質は、保持面22に対する融着による電線(線状部材)40の剥離強度が、保持面22に対する融着によるシールドケーブル(線状伝送部材)30の剥離強度よりも大きい場合である。剥離強度は、次のようにして評価されてもよい。例えば、シールドケーブル30及び電線40をシート部材20に対して同じ条件で融着する。例えば、同じ加圧力、加圧時間、振動条件で、シールドケーブル30及び電線40をシート部材20に対して超音波融着する。そして、シート部材20からシールドケーブル30及び電線40に対して、同じ種類の剥離試験(例えばJIS K6854で規定されたいずれかの試験に準じた試験)を実施して剥離強度を評価する。例えば、シート部材20に対してシールドケーブル30又は電線40を180゜折返して引張る180゜剥離試験、又は、シート部材20とシールドケーブル30又は電線40を融着面に対して互いに反対の垂直方向に引っ張るT型剥離試験等を実施する。シールドケーブル30及び電線40に対して同種の試験を実施することで、剥離強度の大小が評価される。
【0048】
かかる剥離強度の差異は、保持面22の構成材料と、電線40及びシールドケーブル30の表面材料の組合せによってもたらされうる。例えば、保持面22がPVCを含む材料によって形成されている場合において、電線40の被覆43がPVCを含む材料によって形成され、シールドケーブル30のシース36がPVCを含まない樹脂、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、フッ素樹脂等を含む材料によって形成されている場合が考えられる。なお、電線40によってシールドケーブル30を保持する構成は、シート部材20に対して融着容易な線状伝送部材を保持するための構成として適用されてもよい。
【0049】
線状部材の一例である電線40と、線状伝送部材の一例であるシールドケーブル30とは、同じ太さであってもよいし、異なる太さであってもよい。電線40とシールドケーブル30とが異なる太さである場合、いずれが太くてもよい。
【0050】
線状部材の一例である電線40は、線状伝送部材の一例であるシールドケーブル30よりも細くてもよい。本実施形態において、電線40は、複数の電線32を含むシールドケーブル30よりも細い例が示されている。この場合、次のメリットがある。つまり、細い電線40は、太いシールドケーブル30よりも容易に曲ることができる。このため、融着箇所がシールドケーブル30の近くに設定された場合において、電線40はシールドケーブル30の直径に応じて柔軟に曲り、融着箇所に大きな剥離力を作用させ難い。よって、電線40の融着箇所をシールドケーブル30に対してなるべく近い位置に設定し、シールドケーブル30をしっかりと保持できる。なお、別途、電線等の線状伝送部材60が保持面22上に配設されていてもよい。この線状伝送部材60は保持面22に融着されていてもよい。
【0051】
このように構成された配線部材10によると、保持面22に融着された線状部材の一例である電線40によって、線状伝送部材の一例であるシールドケーブル30がベース部材20の保持面22に対して保持される。このため、当該シールドケーブル30がベース部材20に容易に保持される。
【0052】
例えば、シールドケーブル30の表面素材がベース部材20の保持面22に融着し難い場合、保持面22に対して融着し易い電線40によって、シールドケーブル30が保持面22に保持される。シールドケーブル30の表面素材がベース部材20の保持面22に融着し難い場合の一例は、電線40の被覆43の表面素材が、保持面22に対する融着による電線40の剥離強度が、保持面22に対する融着によるシールドケーブル30の剥離強度よりも大きい性質を有する場合である。
【0053】
また、線状部材が電気又は光を伝送する線状の部材、ここでは、電線40であるため、電線40が、電気又は光を伝送する機能を実現しつつ、シールドケーブル30の保持を行うことができる。これにより、シールドケーブル30及び電線40をまとめて薄い配線部材とすることができる。
【0054】
また、複数の一側経路部46と複数の他側経路部47とが、シールドケーブル30の延在方向に沿って交互に設けられている。複数の一側経路部46と複数の他側経路部47とを結ぶ複数の交差部48、49によって、シールドケーブル30が複数箇所で保持面22に押え付けられて保持される。
【0055】
また、電線40は、保持面22に対して融着された一側経路部46、他側経路部47に対して斜めに交差するように延びることができるため、電線40に対する配置が容易に行われる。
【0056】
また、電線40は、シールドケーブル30よりも細いため、曲り易い。このため、シールドケーブル30に対してなるべく近い位置で、電線40を保持面22に融着でき、シールドケーブル30をしっかりと保持できる。
【0057】
[変形例]
上記実施形態を前提とする変形例について説明する。なお、実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0058】
図3は第1変形例に係る配線部材110を示す平面図である。同図に示すように、線状伝送部材30に対応する線状伝送部材130は、保持面22に対応する保持面122上で曲る曲げ経路部132を含んでいてもよい。第1変形例では、ベース部材は上記実施形態と同様にシート部材120である。シート部材120は、L字状に曲る形状に形成されている。
【0059】
線状伝送部材130は、シート部材120の全体形状と同様にL字状に曲る経路に沿って、保持面122上に配設されている。線状伝送部材130の両端部部分は、シート部材120の両端側直線部分に沿って直線状に延びている。線状伝送部材130の端部は、シート部材120の端部から延出してコネクタ50、52に接続されている。線状伝送部材130の延在方向中間部は、シート部材120の曲り部分で曲っている。ここでは、線状伝送部材130のうち曲げ経路部132から延び出る部分が90゜の角度をなすように曲っている。曲げ経路部132は、線状伝送部材130のうち曲げ経路部132から延び出る部分が90゜を超え、180゜未満の角度をなすように曲っていてもよいし、90゜未満の角度をなすように曲っていてもよい。曲げ経路部132は、角をなして曲っていてもよいし、湾曲しつつ曲っていてもよい。
【0060】
線状部材40に対応する線状部材140は、線状伝送部材130の延在方向における、曲げ経路部132の両側の位置で線状伝送部材130に対して交差している。ここでは、線状伝送部材130のうち曲げ経路部132の外側に位置する直線状部分に対して、線状部材140が交差している。線状部材140が線状伝送部材130を保持する構成は、上記実施形態と同様構成である。曲げ経路部132に沿った部分において、線状部材140は、当該曲げ経路部132に沿っている。線状部材140は、曲げ経路部132に対して交差していてもよい。
【0061】
本第1変形例では、線状部材140によって、線状伝送部材130のうち曲げ経路部132から延び出る両側部分が、それらの延在方向に対して直交する方向において一定位置に保持される。このため、線状伝送部材130を全体として見ると、保持面122上において、異なる2方向に位置決めされることになり、線状伝送部材130が保持面122上で一定位置に保持される。
【0062】
線状伝送部材130は、2箇所で曲っており、線状伝送部材130の延在方向において、それぞれの曲げ部分の両外側延長部分が線状部材140によって保持されていてもよい。
【0063】
図4は第2変形例に係る配線部材210を示す平面図である。同図に示すように、配線部材210は、複数の線状伝送部材230を備えていてもよい。線状伝送部材230は、上記実施形態で説明した線状伝送部材30と同様構成であってもよい。
【0064】
線状部材40に対応する線状部材240は、複数の線状伝送部材230に交差した状態で、保持面22に融着されていてもよい。
【0065】
本例では、複数(ここでは2本)の線状伝送部材230が並列状態で配設されている。複数の線状伝送部材230は接触していてもよいし、離れていてもよい。線状部材240は、複数の線状伝送部材230の並列方向両外側で、シート部材20における保持面22に融着されている。線状部材240は、複数の線状伝送部材230の並列方向外側の融着箇所間で、複数の線状伝送部材230に交差して、当該複数の線状伝送部材230を保持面22に対して押付けて保持している。
【0066】
本例によると、1本の線状部材240が複数の線状伝送部材230を保持することができる。なお、線状部材240は、複数の線状伝送部材230の間において、保持面22に融着されていてもよい。この場合において、複数の線状伝送部材の間において、線状部材が線状伝送部材の延在方向に沿って配置されて保持面に融着されていてもよい。また、線状部材のうち複数の線状伝送部材の一側と他側とを結ぶ複数箇所において、複数の線状伝送部材230の間で保持面22に融着される部分とされない部分とが混在していてもよい。
【0067】
図5は第3変形例に係る配線部材310を示す平面図である。同図に示すように、配線部材310は、複数の線状部材340を備えていてもよい。線状部材340は、上記実施形態で説明した線状部材40と同様構成であってもよい。
【0068】
複数の線状部材340は、線状伝送部材30に交差した状態で保持面22に融着されている。本例では、複数(ここでは5本)の線状部材340は、並列状態で、線状伝送部材30の両側で繰返し波形を描くように配設され、線状伝送部材30の一側及び他側で交互に保持面22に融着されている。複数の線状部材340は、接触していてもよいし、離れていてもよい。
【0069】
複数の線状部材340の一方の端部又は両端は、上記実施形態と同様に、シート部材20の端部等で、線状伝送部材30の接続先となるコネクタに接続されていてもよい。
【0070】
この例によると、複数の線状部材340によって、線状伝送部材30がしっかりと保持される。
【0071】
図6は第4変形例に係る配線部材410を示す平面図である。同図に示すように、配線部材410における線状伝送部材は、第1線状伝送部材430Aと、第2線状伝送部材430Bとを含んでもよい。線状伝送部材430A、430Bは、上記実施形態で説明した線状伝送部材30と同様構成であってもよい。
【0072】
また、配線部材410における線状部材は、第1線状部材440Aと、第2線状部材440Bとを含んでもよい。線状部材440A、440Bは、上記実施形態で説明した線状部材40と同様構成であってもよい。第1線状部材440Aは、第1線状伝送部材430Aと交差した状態で保持面22に融着されて、当該第1線状伝送部材430Aを保持する。第2線状部材440Bは、第2線状伝送部材430Bと交差した状態で保持面22に融着されて、当該第2線状伝送部材430Bを保持する。
【0073】
換言すれば、本配線部材410では、複数の線状伝送部材430A、430Bが、別々の線状部材440A、440Bによって保持面22上に保持されている。
【0074】
本例によると、第1線状伝送部材430A及び第2線状伝送部材430Bが別々の線状部材440A、440Bによってしっかりと保持される。
【0075】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。例えば、配線部材において、実施形態で説明した保持構成と、図4又は図5で説明した保持構成とが混在していてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 配線部材
20 シート部材(ベース部材)
22 保持面
28 融着部
30 シールドケーブル(線状伝送部材)
32 電線
33 芯線
34 被覆
35 シールド層
36 シース
40 電線(線状部材)
41 芯線
43 被覆
46 一側経路部
47 他側経路部
48 第1交差部
49 第2交差部
50 コネクタ
52 コネクタ
60 線状伝送部材
110 配線部材
120 シート部材
122 保持面
130 線状伝送部材
132 曲げ経路部
140 線状部材
210 配線部材
230 線状伝送部材
240 線状部材
310 配線部材
340 線状部材
410 配線部材
430A 第1線状伝送部材
430B 第2線状伝送部材
440A 第1線状部材
440B 第2線状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6