(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】造形装置、造形物の製造方法及び搬送装置
(51)【国際特許分類】
B29C 35/08 20060101AFI20240326BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240326BHJP
B29C 44/34 20060101ALI20240326BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240326BHJP
B41M 3/06 20060101ALI20240326BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
B29C35/08
B29C44/00 F
B29C44/34
B41J2/01 501
B41M3/06 C
B41M3/06 F
B29K105:04
(21)【出願番号】P 2020048589
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅一
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-129144(JP,A)
【文献】特開2018-030327(JP,A)
【文献】特開昭56-155786(JP,A)
【文献】特開平10-015972(JP,A)
【文献】特開2001-150812(JP,A)
【文献】特開2013-178353(JP,A)
【文献】特開2000-194256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 35/08
B29C 44/00
B29C 44/34
B41J 2/01
B41M 3/06
B29K 105/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の電磁波を照射されることにより膨張する成形シートが載せられる搬送ベルトを有し、前記成形シートを搬送する搬送部と、
前記成形シートの搬送方向に垂直な方向の両端部を前記搬送ベルトに押圧する、一対の押さえベルトと、
前記一対の押さえベルトにより前記搬送ベルトに押圧された状態の前記成形シートに、前記所定の電磁波を照射する照射部と、を備
え、
前記搬送ベルトは凸状に湾曲している、
造形装置。
【請求項2】
前記押さえベルトは、一対のプーリに巻き掛けられ、
前記プーリの前記押さえベルトを巻き掛けられる外周面の下端は、前記搬送ベルトの頂部と同じ高さ又は前記搬送ベルトの頂部よりも低い位置に、位置している、
請求項
1に記載の造形装置。
【請求項3】
前記照射部は、前記搬送ベルトの頂部の上方に配置される、
請求項
1又は
2に記載の造形装置。
【請求項4】
前記成形シートは、
基材と、
前記基材の一方の主面の上に積層され、加熱により膨張する熱膨張層と、
前記基材の他方の主面又は前記熱膨張層の上に積層され、前記所定の電磁波を吸収して前記所定の電磁波を熱に変換することにより前記熱膨張層を加熱する熱変換層と、を備える、
請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の造形装置。
【請求項5】
前記成形シートは、前記熱変換層を前記照射部の側に向けた状態で、前記搬送ベルトに載せられる、
請求項
4に記載の造形装置。
【請求項6】
所定の電磁波を照射されることにより膨張する成形シートを、搬送ベルトに載せて搬送する搬送工程と、
搬送されている前記成形シートの搬送方向に垂直な方向の両端部を、一対の押さえベルトにより前記搬送ベルトに押圧する押圧工程と、
前記搬送ベルトに押圧された状態の前記成形シートに、前記所定の電磁波を照射する照射工程と、を含
み、
前記搬送ベルトは凸状に湾曲している、
造形物の製造方法。
【請求項7】
所定の電磁波を照射する照射部と、
搬送ベルトを有し、前記搬送ベルトに載せられ、前記所定の電磁波を照射されることにより膨張する成形シートを、前記所定の電磁波が照射される領域に搬送する搬送部と、
前記所定の電磁波が照射される領域において、前記成形シートの搬送方向に垂直な方向の両端部を前記搬送ベルトに押圧する一対の押さえベルトと、を備
え、
前記搬送ベルトは凸状に湾曲している、
搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形装置、造形物の製造方法及び搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱により膨張する熱膨張材料を含有する熱膨張層を備え、光吸収性を有する材料により像を形成された媒体(熱膨張性シート)に、光を照射して、立体画像(造形物)を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、立体画像を形成する装置として、熱膨張材料を含有する熱膨張層を備える媒体に、光吸収性を有する材料を含有する現像剤による現像剤像を形成する現像手段と、現像剤像を形成された媒体に、現像剤が吸収する波長の光を照射する照射手段とを備える、画像形成装置を開示している。
【0005】
特許文献1の画像形成装置では、現像剤像を形成された媒体は、搬送ベルトに載せられた状態で光を照射される。ここで、現像剤像を形成された媒体は、単に搬送ベルトに載せられているに過ぎない。したがって、特許文献1の画像形成装置では、媒体の反り、撓み等により搬送ベルトと媒体との間に隙間が生じるため、立体画像を安定して形成することが困難である。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、造形物を安定して製造できる造形装置、造形物の製造方法及び搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る造形装置は、
所定の電磁波を照射されることにより膨張する成形シートが載せられる搬送ベルトを有し、前記成形シートを搬送する搬送部と、
前記成形シートの搬送方向に垂直な方向の両端部を前記搬送ベルトに押圧する、一対の押さえベルトと、
前記一対の押さえベルトにより前記搬送ベルトに押圧された状態の前記成形シートに、前記所定の電磁波を照射する照射部と、を備え、
前記搬送ベルトは凸状に湾曲している。
【0008】
本発明の第2の観点に係る造形物の製造方法は、
所定の電磁波を照射されることにより膨張する成形シートを、搬送ベルトに載せて搬送する搬送工程と、
搬送されている前記成形シートの搬送方向に垂直な方向の両端部を、一対の押さえベルトにより前記搬送ベルトに押圧する押圧工程と、
前記搬送ベルトに押圧された状態の前記成形シートに、前記所定の電磁波を照射する照射工程と、を含み、
前記搬送ベルトは凸状に湾曲している。
【0009】
本発明の第3の観点に係る搬送装置は、
所定の電磁波を照射する照射部と、
搬送ベルトを有し、前記搬送ベルトに載せられ、前記所定の電磁波を照射されることにより膨張する成形シートを、前記所定の電磁波が照射される領域に搬送する搬送部と、
前記所定の電磁波が照射される領域において、前記成形シートの搬送方向に垂直な方向の両端部を前記搬送ベルトに押圧する一対の押さえベルトと、を備え、
前記搬送ベルトは凸状に湾曲している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、成形シートを搬送ベルトに押圧するので、造形物を安定して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る成形シートの断面を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る造形物を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す造形物をA-A線で矢視した断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る造形装置の構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る造形装置を示す模式図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る搬送ベルトと押さえ部と成形シートとを示す側面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る搬送ベルトと押さえ部と成形シートとを示す上面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る押さえベルトによる成形シートの押圧を説明するための模式図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る照射部を示す模式図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る造形物の製造方法を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施形態に成形シートの基材と熱膨張層を示す模式図である。
【
図12】本発明の変形例に係る成形シートの断面を示す模式図である。
【
図13】本発明の変形例に係る造形物の断面を示す模式図である。
【
図14】本発明の変形例に係る成形シートの断面を示す模式図である。
【
図15】本発明の変形例に係る造形物の断面を示す模式図である。
【
図16】本発明の変形例に係る搬送路と搬送ベルトと押さえ部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る造形装置について、図面を参照して説明する。
【0013】
本実施形態の造形装置100は、成形シート10から造形物50を製造する。造形物50は、加飾シート、壁紙等として使用される。本明細書において、「造形物」は所定の面に凹凸を造型(形成)されているシートであり、凹凸は、幾何学形状、文字、模様、装飾等を構成する。ここで、「装飾」とは、視覚及び/又は触覚を通じて美感を想起させるものである。「造形(又は造型)」は、形のあるものを作り出すことを意味し、装飾を加える加飾、装飾を形成する造飾のような概念をも含む。また、本実施形態の造形物50は、所定の面に凹凸を有する立体物であるが、いわゆる3Dプリンタにより製造された立体物と区別するため、本実施形態の造形物50を2.5次元(2.5D)オブジェクト又は疑似三次元(Pseudo-3D)オブジェクトとも呼ぶ。本実施形態の造形物50を製造する技術は、2.5D印刷技術又はPseudo-3D印刷技術とも呼べる。
【0014】
(成形シート)
まず、
図1を参照して、成形シート10を説明する。成形シート10は、所定の電磁波(例えば、赤外光)を照射されることにより膨張する。成形シート10が膨張することによって、造形物50が形成される。成形シート10は、基材20と、基材20の第1主面22の上に積層された熱膨張層30と、後述する造形物50の凹凸52に対応するパターンで基材20の第2主面24の上に積層された熱変換層40とを備える。本実施形態では、熱膨張層30は第1主面22の全面に積層されている。
【0015】
成形シート10の基材20は、第1主面22と、第1主面22と反対側の第2主面24とを有する。基材20は熱膨張層30を支持する。基材20は、例えば、シート状に形成される。基材20を構成する材料は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等)等の熱可塑性樹脂である。基材20を構成する材料の種類と基材20の厚さは、造形物50の用途に応じて選択される。
【0016】
成形シート10の熱膨張層30は、基材20の第1主面22の上に積層される。熱膨張層30は、バインダ31と、バインダ31中に分散された熱膨張材料(膨張前の熱膨張材料)32aとを含む。バインダ31は、酢酸ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー等の任意の熱可塑性樹脂である。熱膨張材料32aは、所定の温度以上に加熱されることにより、加熱される熱量(具体的には、加熱温度、加熱時間等)に応じた大きさに膨張する。熱膨張材料32aは、例えば、80℃~120℃以上に加熱されることによって膨張する。熱膨張材料32aは、例えば、熱膨張性マイクロカプセルである。
【0017】
熱膨張性マイクロカプセルは、プロパン、ブタン、その他の低沸点物質から構成された発泡剤を、熱可塑性樹脂製の殻の内に包み込んだマイクロカプセルである。熱膨張性マイクロカプセルの殻は、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、これらの共重合体等の熱可塑性樹脂から形成される。熱膨張性マイクロカプセルは、所定の温度(膨張開始温度)以上に加熱されると、殻が軟化すると共に発泡剤が気化し、発泡剤が気化した圧力により、殻がバルーン状に膨張する。熱膨張性マイクロカプセルは、膨張前の粒径の5倍程度まで膨張する。膨張前の熱膨張性マイクロカプセルの平均粒径は、例えば、5μm~50μmである。
【0018】
成形シート10の熱膨張層30は、熱膨張材料32aの膨張により膨張され、基材20と反対側の面35に凹凸52を形成される。
【0019】
成形シート10の熱変換層40は、造形物50の凹凸52を形成するために設けられる。熱変換層40は、基材20の第2主面24の上に、凹凸52に対応したパターンで積層される。
【0020】
熱変換層40は、照射された所定の電磁波を熱に変換し、変換された熱を放出する。これにより、成形シート10の熱膨張層30(すなわち膨張前の熱膨張材料32a)は、所定の温度に加熱される。膨張前の熱膨張材料32aが加熱される温度は、後述する熱変換材料を含む熱変換層40の濃淡と、熱変換層40に照射される所定の電磁波の単位面積と単位時間当たりのエネルギー量とにより制御できる。熱変換層40は、成形シート10の他の部分に比べて速やかに、所定の電磁波を熱に変換するので、熱変換層40の近傍の領域(熱膨張層30)が選択的に加熱される。以下では、所定の電磁波を単に電磁波とも記載する。
【0021】
熱変換層40は、吸収した電磁波を熱に変換する熱変換材料から構成される。熱変換材料は、カーボンブラック、六ホウ化金属化合物、酸化タングステン系化合物等である。例えば、カーボンブラックは、可視光、赤外光等を吸収して熱に変換する。また、六ホウ化金属化合物と酸化タングステン系化合物は、近赤外光を吸収して熱に変換する。六ホウ化金属化合物と酸化タングステン系化合物の中では、近赤外光領域で吸収率が高く、かつ可視光領域の透過率が高いことから、六ホウ化ランタン(LaB6)とセシウム酸化タングステンが好ましい。なお、熱変換層40を構成する熱変換材料が基材20、熱膨張層30等に吸収されることにより、熱変換層40は明確な境界を有する層構造を有しない場合もある。本明細書では、理解を容易にするために、熱変換層40を明確な境界を有する層として図示している。
【0022】
(造形物)
次に、
図2、
図3を参照して、造形物50を説明する。造形物50は成形シート10から形成される。造形物50は、
図2に示すように、シート状の造形物であり、表面に凹凸52を有している。
【0023】
造形物50は、
図3に示すように、基材20と、基材20の第1主面22の上に積層され基材20と反対側に凹凸52を有する熱膨張層30と、基材20の第2主面24の上に凹凸52に対応したパターンで積層された熱変換層40とを備える。造形物50の基材20と熱変換層40の構成は、成形シート10の基材20と熱変換層40と同様であるので、ここでは、造形物50の熱膨張層30について説明する。
【0024】
造形物50の熱膨張層30は、
図3に示すように、バインダ31と、熱膨張材料(膨張前の熱膨張材料)32aと、膨張済みの熱膨張材料32bとを含んでいる。造形物50の熱膨張層30のバインダ31は、成形シート10の熱膨張層30のバインダ31と同様である。また、造形物50の熱膨張層30の熱膨張材料32aは、成形シート10の熱膨張層30の熱膨張材料32aと同様である。膨張済みの熱膨張材料32bは、熱膨張材料32aが所定の温度以上に加熱されて膨張した、熱膨張材料である。熱膨張層30の凹凸52は、膨張済みの熱膨張材料32bを含む凸部54と、膨張前の熱膨張材料32aを含む凹部56とから構成されている。
【0025】
(造形装置)
図4~
図9を参照して、造形装置100を説明する。造形装置100は、成形シート10に成形シート10を膨張させる所定の電磁波を照射することにより、成形シート10から造形物50を製造する。造形装置100は、
図4に示すように、成形シート10を搬送する搬送部120と、成形シート10を後述する搬送部120の搬送ベルト126に押圧する押さえ部130と、成形シート10に成形シート10を膨張させる所定の電磁波を照射する照射部140と、各部を制御する制御部150とを備える。
図5に示すように、搬送部120と押さえ部130と照射部140と制御部150は、筐体105の内に設けられている。筐体105は、成形シート10が搬入される搬入口105aと、製造された造形物50が搬出される搬出口105bとを有する。
なお、理解を容易にするため、本明細書では、
図5における造形装置100の長手右方向(紙面の右方向)を+X方向、上方向(紙面の上方向)を+Z方向、+X方向と+Z方向に垂直な方向(紙面の手前方向)を+Y方向として説明する。本明細書では、-Z方向が鉛直方向である。また、-Z側を下方と記載し+Z側を上方と記載する場合がある。
【0026】
(搬送部)
造形装置100の搬送部120は、筐体105の搬入口105aから搬入された成形シート10を、凸状に湾曲した搬送路Rに沿って搬送する。本実施形態では、凸状に湾曲した搬送路Rは、+Z方向へ突出して湾曲している。また、搬送部120は、成形シート10を搬送路Rに沿って+X側から-X方向へ搬送する。さらに、搬送部120は、製造された造形物50を搬送して、造形物50を筐体105の搬出口105bから搬出する。搬送部120は、ガイド部122と、従動ローラ124aと、駆動ローラ124bと、テンションローラ124cと、搬送ベルト126とを備える。搬送部120は、更に、搬入ローラ128aと搬出ローラ128bとを備える。
【0027】
搬送部120のガイド部122は、
図5、
図6に示すように、搬送ベルト126の往路部分を、凸状に湾曲した搬送路Rに沿って湾曲した状態に-Z側から支持する。
【0028】
搬送部120の従動ローラ124aは、
図5に示すように、搬送ベルト126を巻き掛けられる。従動ローラ124aは筐体105の搬入口105a側(+X側)に配置される。従動ローラ124aの回転軸は、成形シート10の搬送方向(-X方向)と搬送路Rの突出方向(+Z方向)とに直交する方向(Y方向)に配置され、従動ローラ124aは筐体105の側板に軸支される。
【0029】
搬送部120の駆動ローラ124bは、搬送ベルト126を巻き掛けられる。駆動ローラ124bは、筐体105の搬出口105b側(-X側)に配置される。駆動ローラ124bの回転軸は従動ローラ124aの回転軸と同様にY方向に配置され、駆動ローラ124bは筐体105の側板に軸支される。駆動ローラ124bは、図示しないモータの回転により、+Y方向から見て反時計回りに回転して、搬送ベルト126を走行させる。
【0030】
搬送部120のテンションローラ124cは、搬送ベルト126の復路部分を-Z側から押圧して、搬送ベルト126にテンションを掛ける。テンションローラ124cの回転軸は従動ローラ124aの回転軸と同様にY方向に配置され、テンションローラ124cは筐体105の側板に軸支される。
【0031】
搬送部120の搬送ベルト126は、無端ベルトであり、成形シート10と製造された造形物50とを搬送する。搬送ベルト126は、従動ローラ124aと駆動ローラ124bとに巻き掛けられる。搬送ベルト126の往路部分は、ガイド部122に支持されることにより、凸状に湾曲した搬送路Rに沿って凸状に湾曲している。搬送ベルト126は、駆動ローラ124bの回転により走行する。搬送ベルト126の往路部分は搬送路Rに沿って-X方向へ走行し、搬送ベルト126の復路部分は+X方向へ走行する。成形シート10は、
図5に示すように、筐体105の搬入口105aから搬送ベルト126に載せられて-X方向へ搬送される。成形シート10は、熱膨張層30を搬送ベルト126の搬送面126aに向けて、搬送ベルト126に載せられる。
【0032】
搬送部120の搬入ローラ128aは、従動ローラ124aと同様に、筐体105の側板に軸支される。搬入ローラ128aと搬送ベルト126は、
図5に示すように、筐体105の搬入口105aから挿入された成形シート10を挟み込み、成形シート10を筐体105内に搬入する。
【0033】
搬送部120の搬出ローラ128bは、駆動ローラ124bと同様に、筐体105の側板に軸支される。搬出ローラ128bと搬送ベルト126は、製造された造形物50を挟み込み、造形物50を筐体105の搬出口105bから搬出する。
【0034】
(押さえ部)
造形装置100の押さえ部130は、成形シート10を、搬送部120の搬送ベルト126に押圧する。押さえ部130は、
図7に示すように、一対の押さえベルト131、132を備える。一対の押さえベルト131、132は、成形シート10の搬送方向(-X方向)に垂直な方向(+Y方向と-Y方向)の両端部を搬送ベルト126に押圧する。具体的には、押さえベルト131、132のそれぞれは、成形シート10の搬送ベルト126の幅方向の端部(+Y方向の端部と-Y方向の端部)のそれぞれを搬送ベルト126に押圧する。押さえ部130は、更に、押さえベルト131を巻き掛けられる、第1プーリ133aと第2プーリ133bと、押さえベルト132を巻き掛けられる第3プーリ134aと第4プーリ134bと、4つのベンドプーリ136~139とを備える。
【0035】
まず、押さえベルト131と第1プーリ133aと第2プーリ133bについて説明する。押さえベルト131は、成形シート10の+Y方向の端部を搬送ベルト126に押圧する。第1プーリ133aと第2プーリ133bは一対のプーリである。第1プーリ133aと第2プーリ133bのそれぞれが、押さえベルト131を巻き掛けられる。
【0036】
第1プーリ133aは、
図6、
図7に示すように、凸状に湾曲した搬送ベルト126の往路部分の頂部Tよりも搬送路Rの上流側(+X側)で、搬送ベルト126の搬送面126aの+Y側の端部の上方(+Z側)に配置される。さらに、本実施形態では、
図6に示すように、第1プーリ133aの押さえベルト131を巻き掛けられる外周133cの下端B1が、搬送ベルト126の往路部分の頂部Tよりも低い位置(-Z側)に位置している。第1プーリ133aは、筐体105の側板に固定されている軸106を回転軸として、回転する。なお、以下では、搬送ベルト126の往路部分の頂部Tを搬送ベルト126の頂部Tとも記載する。
【0037】
第2プーリ133bは、
図6、
図7に示すように、搬送ベルト126の往路部分の頂部Tよりも搬送路Rの下流側(-X側)で、搬送ベルト126の搬送面126aの+Y側の端部の上方(+Z側)に配置される。第2プーリ133bの押さえベルト131を巻き掛けられる外周133dの下端B2は、
図6に示すように、搬送ベルト126の頂部Tよりも低い位置(-Z側)に位置している。第2プーリ133bは、筐体105の側板に固定されている軸107を回転軸として、回転する。
【0038】
押さえベルト131は、無端ベルトであり、第1プーリ133aと第2プーリ133bに巻き掛けられる。本実施形態では、第1プーリ133aと第2プーリ133bのそれぞれが、搬送ベルト126の頂部Tを挟んで+X側と-X側のそれぞれに配置されている。さらに、第1プーリ133aの外周133cの下端B1と第2プーリ133bの外周133dの下端B2が搬送ベルト126の頂部Tよりも-Z側に位置している。したがって、押さえベルト131の往路部分が、
図8に示すように、搬送部120(搬送ベルト126)により搬送されている成形シート10の+Y側の端部を搬送ベルト126に押圧できる。
【0039】
押さえベルト131の往路部分は、搬送ベルト126に搬送されている成形シート10を押圧しているので、搬送ベルト126の走行に伴い-X方向へ走行する。また、押さえベルト131の復路部分は+X方向へ走行する。
【0040】
次に、押さえベルト132と第3プーリ134aと第4プーリ134bについて説明する。押さえベルト132は、成形シート10の-Y方向の端部を搬送ベルト126に押圧する。第3プーリ134aと第4プーリ134bは一対のプーリである。第3プーリ134aと第4プーリ134bのそれぞれが、押さえベルト132を巻き掛けられる。
【0041】
第3プーリ134aは、
図7に示すように、搬送ベルト126の搬送面126aの-Y側の端部の上方(+Z側)に配置されることを除き、第1プーリ133aと同様に配置される。また、第4プーリ134bは、搬送ベルト126の搬送面126aの-Y側の端部の上方(+Z側)に配置されることを除き、第2プーリ133bと同様に配置される。
【0042】
押さえベルト132の構成は、第3プーリ134aと第4プーリ134bに巻き掛けられ、搬送されている成形シート10の-Y側の端部を搬送ベルト126に押圧することを除き、押さえベルト131の構成と同様である。押さえベルト132は、搬送されている成形シート10の-Y側の端部を搬送ベルト126に押圧する。
【0043】
本実施形態では、一対の押さえベルト131、132のそれぞれが、成形シート10の+Y側の端部と-Y側の端部を搬送ベルト126に押圧するので、造形装置100は、成形シート10を搬送ベルト126(搬送面126a)に密着させることができる。したがって、造形装置100は、造形物50を安定して製造できる。
【0044】
2つのベンドプーリ136、137は、押さえベルト131の復路部分を押圧して、押さえベルト131の復路部分の走行方向を変える。これにより、押さえベルト131の復路部分は、
図5、
図6に示すように、照射部140の下(-Z側)を通過する。
【0045】
ベンドプーリ136は、
図6、
図7に示すように、搬送ベルト126の頂部Tよりも搬送路Rの上流側(+X側)の照射部140と第1プーリ133aとの間で、搬送面126aの+Y側の端部の上方(+Z側)に配置される。ベンドプーリ136の搬送ベルト126を押圧する外周の下端は、照射部140の下端よりも低い位置(-Z側)に位置している。ベンドプーリ136は、筐体105の側板に固定されている軸108を回転軸として、回転する。
【0046】
また、ベンドプーリ137は搬送ベルト126の頂部Tよりも搬送路Rの下流側(-X側)の照射部140と第2プーリ133bとの間で、搬送面126aの+Y側の端部の上方(+Z側)に配置される。ベンドプーリ137の搬送ベルト126を押圧する外周の下端も、照射部140の下端よりも低い位置(-Z側)に位置している。ベンドプーリ137は、筐体105の側板に固定されている軸109を回転軸として、回転する。
【0047】
2つのベンドプーリ138、139は、押さえベルト132の復路部分を押圧して、押さえベルト132の復路部分の走行方向を変える。これにより、押さえベルト132の復路部分は、照射部140の下(-Z側)を通過する。
【0048】
ベンドプーリ138は、搬送ベルト126の頂部Tよりも搬送路Rの上流側(+X側)の照射部140と第3プーリ134aとの間で、搬送面126aの-Y側の端部の上方(+Z側)に配置される。ベンドプーリ138のその他の構成は、ベンドプーリ136の構成と同様である。ベンドプーリ139は、搬送ベルト126の頂部Tよりも搬送路Rの下流側(-X側)の照射部140と第4プーリ134bとの間で、搬送面126aの-Y側の端部の上方(+Z側)に配置される。ベンドプーリ139のその他の構成は、ベンドプーリ137の構成と同様である。
【0049】
(照射部)
造形装置100の照射部140は、成形シート10(熱変換層40)に所定の電磁波を照射して熱変換層40に熱を放出させ、熱膨張層30(膨張前の熱膨張材料32a)を所定の温度以上に加熱する。本実施形態では、熱変換層40が造形物50の凹凸52に対応したパターンで基材20の第2主面24に積層されているので、成形シート10の熱膨張層30の凸部54に対応する部分が所定の温度以上に加熱され、膨張済みの熱膨張材料32bが形成される。膨張済みの熱膨張材料32bが形成されることにより、熱膨張層30が膨張して、凸部54(すなわち凹凸52)が熱膨張層30に形成される。
【0050】
本実施形態では、照射部140は、凸状に湾曲した搬送路Rの凸側に配置される。照射部140は、押さえ部130(押さえベルト131、132)により搬送ベルト126に押圧された状態の成形シート10に、成形シート10を膨張させる電磁波を照射する。具体的には、照射部140は、
図5、
図6に示すように、搬送ベルト126の頂部Tの上方(+Z側)に配置される。また、照射部140は、搬送ベルト126の搬送面126aに向けて、電磁波を照射する。そして、成形シート10が、
図6に示すように、押さえ部130により搬送ベルト126に押圧された状態で、搬送部120によって搬送路Rに沿って搬送されて、電磁波が照射される領域Sを通過する。これにより、照射部140からの電磁波が、押さえ部130により搬送ベルト126に押圧された状態の成形シート10に、照射される。
【0051】
本実施形態では、成形シート10は、押さえベルト131、132により押圧されて、搬送ベルト126(搬送面126a)に密着している。そして、成形シート10を膨張させる電磁波が、搬送ベルト126に密着している成形シート10に照射される。したがって、造形装置100は造形物50を安定して製造できる。
【0052】
照射部140は、
図9に示すように、カバー142と、ランプ144と、反射板146と、ファン148とを備える。カバー142は、ランプ144と反射板146とファン148とを収納する。ランプ144は、例えば、直管状のハロゲンランプから構成される。ランプ144は、成形シート10(熱変換層40)に、所定の電磁波として、近赤外領域(波長750nm~1400nm)、可視光領域(波長380nm~750nm)、中赤外領域(波長1400nm~4000nm)等の電磁波を照射する。反射板146は、ランプ144から照射された電磁波を成形シート10に向けて反射する反射板である。ファン148は、カバー142内に空気を送り込み、ランプ144と反射板146とを冷却する。
【0053】
(制御部)
造形装置100の制御部150は、搬送部120と照射部140とを制御する。制御部150は、
図4に示すように、各種の処理を実行するCPU(Central Processing Unit)152と、プログラムとデータとを記憶しているROM(Read Only Memory)154と、データを記憶するRAM(Random Access Memory)156と、各部の間の信号を入出力する入出力インタフェース158とを備える。制御部150の機能は、CPU152が、ROM154に記憶されたプログラムを実行することによって、実現される。入出力インタフェース158は、CPU152と、搬送部120と照射部140との間の信号を入出力する。
【0054】
(造形物の製造方法)
図10、
図11を参照して、造形物50の製造方法を説明する。本実施形態では、造形装置100を用いて、シート状(例えば、A4用紙サイズ)の成形シート10から造形物50を製造する。
【0055】
図10は、造形物50の製造方法を示すフローチャートである。造形物50の製造方法は、所定の電磁波を照射されることにより膨張する成形シート10を準備する準備工程(ステップS10)と、成形シート10を搬送ベルト126に載せて搬送する搬送工程(ステップS20)と、搬送されている成形シート10の搬送方向(-X方向)に垂直な方向の両端部(+Y方向の端部と-Y方向の端部)を、一対の押さえベルト131、132により搬送ベルト126に押圧する押圧工程(ステップS30)と、搬送ベルト126に押圧された状態の成形シート10に、所定の電磁波を照射する照射工程(ステップS40)と、を含む。
【0056】
準備工程(ステップS10)では、成形シート10を準備する。まず、基材20の第1主面22にバインダ31と熱膨張材料32aとを混合した塗布液をスクリーン印刷し、印刷された塗布液を乾燥させることにより、
図11に示すように、基材20の第1主面22の上に熱膨張層30を積層する。次に、印刷装置によって、基材20の第2主面24の上に、熱変換材料を含むインクを凹凸52に応じた濃淡パターンで印刷する。印刷装置は、例えば、インクジェットプリンタである。以上により、成形シート10を製造できる。
【0057】
図10に戻り、搬送工程(ステップS20)では、成形シート10を造形装置100の搬入口105aから挿入し、成形シート10を、搬送部120の搬送ベルト126に載せて、搬送部120により凸状に湾曲した搬送路Rに沿って搬送する。熱膨張層30を高効率で加熱する観点から、熱変換層40と照射部140との距離がより短いことが好ましく、成形シート10は、熱変換層40を照射部140側に向けた状態で搬送ベルト126に載せられることが好ましい。すわなち、成形シート10は、熱膨張層30を搬送ベルト126の搬送面126aに向けた状態で搬送ベルト126に載せられることが好ましい。
【0058】
押圧工程(ステップS30)では、搬送部120により搬送されている成形シート10の搬送方向(-X方向)に垂直な方向の両端部(+Y方向の端部と-Y方向の端部)を、一対の押さえベルト131、132により搬送ベルト126に押圧する。本実施形態では、押さえベルト131、132が成形シート10を搬送ベルト126に押圧するので、成形シート10を搬送ベルト126に密着させることができる。
【0059】
照射工程(ステップS40)では、搬送部120により搬送され、押さえベルト131、132により搬送ベルト126に押圧された状態の成形シート10に、照射部140から成形シート10を膨張させる電磁波を照射する。これにより、成形シート10の熱膨張層30が膨張して凹凸52が形成され、造形物50が製造される。成形シート10が搬送ベルト126に密着しているので、造形物50を安定して製造できる。
以上により、造形物50を製造できる。製造された造形物50は、搬送部120により造形装置100の搬出口105bから搬出される。
【0060】
以上のように、造形装置100では、押さえ部130の押さえベルト131、132が、成形シート10の搬送方向(-X方向)に垂直な方向の両端部(+Y方向の端部と-Y方向の端部)を搬送ベルト126に押圧して、成形シート10を搬送ベルト126に密着させることができる。成形シート10が搬送ベルト126に密着しているので、造形装置100は造形物50を安定して製造できる。
【0061】
本実施形態の造形物50の製造方法では、搬送方向に垂直な方向の両端部を搬送ベルト126に押圧された状態の成形シート10に、成形シート10を膨張させる電磁波を照射する。搬送ベルト126に押圧された成形シート10は搬送ベルト126に密着しているので、本実施形態の造形物50の製造方法は造形物50を安定して製造できる。
【0062】
(変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0063】
例えば、造形物50はロール状の成形シート10からロール状に製造されてもよい。
【0064】
基材20を構成する材料は、熱可塑性樹脂に限らず、紙、布等であってもよい。基材20を構成する熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂とポリエステル系樹脂に限らず、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)系樹脂、ポリイミド系樹脂等であってもよい。
【0065】
実施形態の熱変換層40は基材20の第2主面24の上に積層されているが、熱変換層40は、
図12に示すように、熱膨張層30の上に積層されてもよい。造形装置100を用いて、
図13に示す、熱変換層40を熱膨張層30の上に積層された造形物50Aが、熱変換層40を熱膨張層30の上に積層された成形シート10Aから製造される。この場合、成形シート10Aは、搬送ベルト126に、熱変換層40を照射部140側に向けた状態で載せられることが好ましい。すなわち、成形シート10Aは、搬送ベルト126に、基材20の第2主面24を搬送ベルト126の搬送面126aに向けた状態で載せられることが好ましい。
【0066】
また、熱変換層40は、基材20の第2主面24の上に設けられた剥離層60の上に積層されてもよい。例えば、成形シート10Bは、
図14に示すように、基材20の第2主面24の上に設けられた剥離層60と、剥離層60の上に積層された熱変換層40とを備える。
図15に示す造形物50Bが、成形シート10Bから照射装置100を用いて製造される。造形物50Bは、基材20の第2主面24の上に設けられた剥離層60と、剥離層60の上に積層された熱変換層40とを備えている。この場合、成形シート10Bは、搬送部120により、熱変換層40を照射部110側に向けた状態で搬送されることが好ましい。すなわち、成形シート10Bは、搬送部120により、熱膨張層30を搬送ベルト126の搬送面126aに向けた状態で搬送されることが好ましい。なお、造形物50Bから剥離層60を剥離することにより、造形物50Bから熱変換層40を容易に除去できる。
【0067】
成形シート10、10A、10Bと、成形シート10、10A、10Bから製造される造形物50、50A、50Bは、各層の間に他の任意の材料による層を形成されてもよい。例えば、基材20と熱膨張層30との間に、基材20と熱膨張層30とをより密着させる密着層が形成されてもよい。密着層は、例えば、表面改質剤から構成される。
【0068】
また、造形物50、50A、50Bは、カラー画像を印刷されてもよい。例えば、造形物50は、熱膨張層30の上に、シアンとマゼンタとイエローとブラックの4色のインクから構成され、カラー画像を表すカラーインク層を積層されてもよい。
【0069】
実施形態の造形装置100は、所定の電磁波が照射されている領域Sに成形シート10を搬送している。したがって、実施形態の造形装置100は、所定の電磁波を照射する照射部140と、搬送ベルト126を有し、搬送ベルト126に載せられ所定の電磁波を照射されることにより膨張する成形シート10を、所定の電磁波が照射される領域Sに搬送する搬送部120と、所定の電磁波が照射される領域Sにおいて、成形シート10の搬送方向に垂直な方向の両端部を搬送ベルト126に押圧する一対の押さえベルト131、132とを備える搬送装置、とも表される。
【0070】
実施形態では、第1プーリ133aの外周133cの下端B1と第2プーリ133bの外周133dの下端B2は搬送ベルト126の頂部Tよりも低い位置(-Z側)に位置しているが、第1プーリ133aの外周133cの下端B1と第2プーリ133bの外周133dの下端B2は、搬送ベルト126の頂部Tと同じ高さ(+Z方向における同じ位置)に位置してもよい。これにより、押さえベルト131は、成形シート10の厚さと押さえベルト131の厚さの和の分だけ、成形シート10の+Y側の端部を搬送ベルト126に押圧できる。また、第3プーリ134aの押さえベルト132を巻き掛けられる外周の下端と第4プーリ134bの押さえベルト132を巻き掛けられる外周の下端も、搬送ベルト126の頂部Tと同じ高さに位置してもよい。これにより、押さえベルト132は、成形シート10の厚さと押さえベルト132の厚さの和の分だけ、成形シート10の-Y側の端部を搬送ベルト126に押圧できる。
【0071】
実施形態の搬送路Rは凸状に湾曲しているが、造形装置100の搬送路Rは凸状に湾曲しているとは限られない。例えば、搬送路Rは、
図16に示すように平坦であってもよい。この場合、搬送ベルト126の往路部分は搬送方向(-X方向)に対して平行に延びる。また、第1プーリ133aの押さえベルト131を巻き掛けられる外周133cの下端B1は、搬送ベルト126の往路部分の搬送面126aと同じ高さ又は搬送ベルト126の往路部分の搬送面126aよりも低い位置に、位置していればよい。第2プーリ133bの押さえベルト131を巻き掛けられる外周133dの下端B2も、第1プーリ133aの外周133cの下端B1と同様に、搬送ベルト126の往路部分の搬送面126aと同じ高さ又は前記搬送ベルトの頂部よりも低い位置に位置していればよい。
【0072】
実施形態の照射部140は搬送ベルト126の頂部Tの上(+Z側)に配置されているが、照射部140は搬送路Rに沿うテンションを掛けられている状態の成形シート10に電磁波を照射できる位置に配置されていればよい。
【0073】
造形装置100の制御部150は、CPU152を備えており、CPU152の機能により各処理を実行する。本発明に係る造形装置において、制御部は、CPUの代わりに、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、制御回路等の専用ハードウェアを備えてもよい。この場合、処理のそれぞれを、個別のハードウェアにより実行してもよい。また、処理のそれぞれをまとめて、単一のハードウェアにより実行してもよい。処理の一部を専用ハードウェアにより実行し、処理の他の一部をソフトウェア又はファームウェアにより実行してもよい。
【0074】
なお、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えた造形装置として提供できることはもとより、プログラムの適用により、造形装置を制御するコンピュータに、実施形態の造形装置100による各機能構成を実現させることもできる。すなわち、実施形態の造形装置100による各機能構成を実現させるためのプログラムを、既存の情報処理装置等を制御するCPU等が実行できるように適用することができる。
【0075】
また、このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して適用できる。さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0077】
(付記1)
所定の電磁波を照射されることにより膨張する成形シートが載せられる搬送ベルトを有し、前記成形シートを搬送する搬送部と、
前記成形シートの搬送方向に垂直な方向の両端部を前記搬送ベルトに押圧する、一対の押さえベルトと、
前記一対の押さえベルトにより前記搬送ベルトに押圧された状態の前記成形シートに、前記所定の電磁波を照射する照射部と、を備える、
造形装置。
【0078】
(付記2)
前記搬送ベルトは凸状に湾曲している、
付記1に記載の造形装置。
【0079】
(付記3)
前記押さえベルトは、一対のプーリに巻き掛けられ、
前記プーリの前記押さえベルトを巻き掛けられる外周面の下端は、前記搬送ベルトの頂部と同じ高さ又は前記搬送ベルトの頂部よりも低い位置に、位置している、
付記2に記載の造形装置。
【0080】
(付記4)
前記照射部は、前記搬送ベルトの頂部の上方に配置される、
付記2又は3に記載の造形装置。
【0081】
(付記5)
前記成形シートは、
基材と、
前記基材の一方の主面の上に積層され、加熱により膨張する熱膨張層と、
前記基材の他方の主面又は前記熱膨張層の上に積層され、前記所定の電磁波を吸収して前記所定の電磁波を熱に変換することにより前記熱膨張層を加熱する熱変換層と、を備える、
付記1乃至4のいずれか1つに記載の造形装置。
【0082】
(付記6)
前記成形シートは、前記熱変換層を前記照射部の側に向けた状態で、前記搬送ベルトに載せられる、
付記5に記載の造形装置。
【0083】
(付記7)
所定の電磁波を照射されることにより膨張する成形シートを、搬送ベルトに載せて搬送する搬送工程と、
搬送されている前記成形シートの搬送方向に垂直な方向の両端部を、一対の押さえベルトにより前記搬送ベルトに押圧する押圧工程と、
前記搬送ベルトに押圧された状態の前記成形シートに、前記所定の電磁波を照射する照射工程と、を含む、
造形物の製造方法。
【0084】
(付記8)
所定の電磁波を照射する照射部と、
搬送ベルトを有し、前記搬送ベルトに載せられ、前記所定の電磁波を照射されることにより膨張する成形シートを、前記所定の電磁波が照射される領域に搬送する搬送部と、
前記所定の電磁波が照射される領域において、前記成形シートの搬送方向に垂直な方向の両端部を前記搬送ベルトに押圧する一対の押さえベルトと、を備える、
搬送装置。
【符号の説明】
【0085】
10,10A,10B・・・成形シート、20・・・基材、22・・・第1主面、24・・・第2主面、30・・・熱膨張層、31・・・バインダ、32a・・・熱膨張材料(膨張前の熱膨張材料)、32b・・・膨張済みの熱膨張材料、35・・・熱膨張層の基材と反対側の面、40・・・熱変換層、50,50A,50B・・・造形物、52・・・凹凸、54・・・凸部、56・・・凹部、60・・・剥離層、100・・・造形装置、105・・・筐体、105a・・・搬入口、105b・・・搬出口、106,107,108,109・・・軸、120・・・搬送部、122・・・ガイド部、124a・・・従動ローラ、124b・・・駆動ローラ、124c・・・テンションローラ、126・・・搬送ベルト、126a・・・搬送面、128a・・・搬入ローラ、128b・・・搬出ローラ、130・・・押さえ部、131,132・・・押さえベルト、133a・・・第1プーリ、133b・・・第2プーリ、133c・・・第1プーリの搬送ベルトを巻き掛けられる外周、133d・・・第2プーリの搬送ベルトを巻き掛けられる外周、134a・・・第3プーリ、134b・・・第4プーリ、136,137,138,139・・・ベンドプーリ、140・・・照射部、142・・・カバー、144・・・ランプ、146・・・反射板、148・・・ファン、150・・・制御部、152・・・CPU、154・・・ROM、156・・・RAM、158・・・入出力インタフェース、162・・・ローラ、R・・・搬送路、B1,B2・・・下端、S・・・電磁波が照射される領域、T・・・頂部