(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】空気調和システム及び空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/79 20180101AFI20240326BHJP
F24F 6/00 20060101ALI20240326BHJP
F24F 110/20 20180101ALN20240326BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20240326BHJP
【FI】
F24F11/79
F24F6/00 E
F24F110:20
F24F110:10
(21)【出願番号】P 2020051983
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】清水 勇太
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-071808(JP,A)
【文献】特開2020-133931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/79
F24F 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機と、室内機と、前記室外機及び前記室内機を制御する制御装置とを有する空気調和機と、
室内空気を加湿する加湿器と
を具備し、
前記制御装置が前記室内機から放出される空気を前記加湿器に向けて送風したり、または前記加湿器に向けての送風を避けたりする制御をすることで、前記加湿器の加湿量が調整され
、
前記加湿器は、湿度センサを有し、
前記室内機は、温度センサを有し、
前記制御装置は、前記湿度センサの検出値と目標湿度との差が閾値より小さくても、前記温度センサの検出値と目標温度との差が閾値以上のとき、前記加湿器への送風を開始する
空気調和システム。
【請求項2】
請求項1に記載された空気調和システムであって、
前記制御装置は、室内の湿度を増加する場合に、前記室内機から放出される空気を前記加湿器に向けて送風する制御をする
空気調和システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載された空気調和システムであって、
前記加湿器は、気化式または加熱気化式の加湿器である
空気調和システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載された空気調和システムであって、
前記加湿器は、湿度センサを有し、
前記制御装置は、前記湿度センサの検出値と目標湿度との差が閾値以上のとき、前記加湿器への送風を開始する
空気調和システム。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1つに記載された空気調和システムであって、
前記制御装置は、前記室内機と前記加湿器との距離に応じて、前記室内機から放出される空気の風量を調整する
空気調和システム。
【請求項6】
請求項
1~5
のいずれか1つに記載された空気調和システムであって、
前記加湿器は、前記室内機の前記温度センサが検出した温度に基づいて、前記加湿量を調整する
空気調和システム。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1つに記載された空気調和システムであって、
前記室内機から放出される空気を前記加湿器に優先的に送風するモードが使用者に選択され得る
空気調和システム。
【請求項8】
室外機と、
温度センサを有する室内機と、前記室外機及び前記室内機とを制御する制御装置とを有する空気調和機であって、
室内空気を加湿し、湿度センサを有する加湿器に対し、
前記制御装置が前記室内機から放出される空気を前記加湿器に向けて送風したり、または前記加湿器に向けての送風を避けたりする制御をすることで、前記加湿器の加湿量が調整され、
前記制御装置は、前記湿度センサの検出値と目標湿度との差が閾値より小さくても、前記温度センサの検出値と目標温度との差が閾値以上のとき、前記加湿器への送風を開始する
空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和システム及び空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
室内の空気調和システムとして、空気調和機の室内機で熱交換された空気と、加湿器で生成された湿った空気とを室内に送風するシステムがある。空気調和機には、除湿機能が付随しているものの、一般的には暖房運転時の加湿機能が付随していなく、特に冬季において加湿機能を加湿器に委ねるのが実情である。
【0003】
このようなシステムの中、室内の温度、湿度を快適なものにする環境制御を行う場合に、空気調和機と加湿器との干渉を避ける技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、室内の環境制御をする場合、空気調和機と加湿器との干渉を避ける制御をしてしまうと、空気調和機、加湿器のそれぞれの機能が充分に生かされない場合がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、空気調和機と加湿器とを協働させることによって、室内環境をより快適なものにする空気調和システム及び空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る空気調和システムは、室外機と、室内機と、上記室外機及び上記室内機を制御する制御装置とを有する空気調和機と、室内空気を加湿する加湿器とを具備する。
上記制御装置は、上記室内機から放出される空気を上記加湿器に向けて送風したり、または上記加湿器に向けての送風を避けたりする制御をする。これにより、上記加湿器の加湿量が調整される。
【0008】
このような空気調和システムによれば、空気調和機と加湿器とが協働し、それぞれが互いに扶助し合って室内環境がより快適になる。
【0009】
上記の空気調和システムにおいては、上記制御装置は、室内の湿度を増加する場合に、上記室内機から放出される空気を上記加湿器に向けて送風する制御をしてもよい。
【0010】
このような空気調和システムによれば、室内の湿度を増加する場合に、室内機から放出される空気を加湿器に向けて送風する制御がなされるので、室内環境がより快適になる。
【0011】
上記の空気調和システムにおいては、上記加湿器は、気化式または加熱気化式の加湿器であってもよい。
【0012】
このような空気調和システムによれば、加湿器として、気化式または加熱気化式の加湿器が用いられることで室内機から放出される空気を加湿器に向けて送風する制御による効果が大きくなるので、他の方式と比べて室内環境がより快適になる。
【0013】
上記の空気調和システムにおいては、上記加湿器は、湿度センサを有し、上記制御装置は、上記湿度センサの検出値と目標湿度との差が閾値以上のとき、上記加湿器への送風を開始してもよい。
【0014】
このような空気調和システムによれば、湿度センサの検出値と目標湿度との差が閾値以上のとき、加湿器への送風が開始されるので、室内環境がより快適になる。
【0015】
上記の空気調和システムにおいては、上記加湿器は、湿度センサを有し、上記室内機は、温度センサを有し、上記制御装置は、上記湿度センサの検出値と目標湿度との差が閾値より小さくても、上記温度センサの検出値と目標温度との差が閾値以上のとき、上記加湿器への送風を開始してもよい。
【0016】
このような空気調和システムによれば、湿度センサの検出値と目標湿度との差が閾値より小さくても、温度センサの検出値と目標温度との差が閾値以上のとき、加湿器への送風が開始されるので、室内環境がより快適になる。
【0017】
上記の空気調和システムにおいては、上記制御装置は、上記室内機と上記加湿器との距離に応じて、上記室内機から放出される空気の風量を調整してもよい。
【0018】
このような空気調和システムによれば、室内機と加湿器との距離に応じて、室内機から放出される空気の風量を調整されるので、室内環境がより快適になる。
【0019】
上記の空気調和システムにおいては、上記加湿器は、上記室内機の上記温度センサが検出した温度に基づいて、上記加湿量を調整してもよい。
【0020】
このような空気調和システムによれば、加湿器は、室内機の温度センサが検出した温度に基づいて、加湿量を調整されるので、室内環境がより快適になる。
【0021】
上記の空気調和システムにおいては、上記室内機から放出される空気を上記加湿器に優先的に送風するモードが使用者に選択されてもよい。
【0022】
このような空気調和システムによれば、室内機から放出される空気を加湿器に優先的に送風するモードが使用者に選択され得るので、室内環境がより快適になる。
【0023】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る空気調和機は、室外機と、室内機と、上記室外機及び上記室内機とを制御する制御装置とを有する空気調和機である。上記加湿器が加湿量を増加するときに、上記制御装置は、上記室内機から放出される空気を上記加湿器に向けて送風する制御をする。
【0024】
このような空気調和機によれば、加湿器と協働することにより、それぞれが互いに扶助し合って室内環境がより快適になる。
【発明の効果】
【0025】
以上述べたように、本発明によれば、空気調和機と加湿器とを協働させることによって室内環境をより快適なものにする空気調和システム及び空気調和機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施形態の空気調和システムの一例を示す模式的上面図である。
【
図2】空気調和システムの一例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態の空気調和システムの運転動作の一例を示すフロー図である。
【
図4】本実施形態の空気調和システムの一例を示す模式的上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。
【0028】
図1は、本実施形態の空気調和システムの一例を示す模式的上面図である。
図1に示す空気調和システム1は、空気調和機10と、加湿器20と、遠隔操作機50とを具備する。
図1では、空気調和機10から放出される空気(実線)及び加湿器20から放出される空気(破線)の流れが模式的に矢印で表されている。空気調和システム1は、例えば、空気調和機10が暖房運転をしているときに加湿器20の存在によって加湿効果が機能する。従って、実施形態では空気調和機10が暖房運転をしている場合の例をあげる。
【0029】
空気調和機10の室内機11及び加湿器20は、部屋5の室内に設置され、室外機12は、部屋5の室外に設置される。空気調和機10は、主に室内の空気の温度を調整する。加湿器20は、主に空気の加湿量を調整して室内に加湿空気を送風する。ここで、加湿量とは、加湿器20から吹き出された空気に含まれる水分量、及び、加湿器20の加湿動作における送風量である。
【0030】
空気調和システム1において、空気調和機10と加湿器20とは、互いに情報を通信し合うことができる。例えば、空気調和機10の制御装置13が加湿器20の制御装置210に情報を送信すれば、加湿器20の制御装置210は、その情報を受信する。加湿器20の制御装置210が空気調和機10の制御装置13に情報を送信すれば、空気調和機10の制御装置13は、その情報を受信する。また、遠隔操作機50は、使用者の操作に基づいて空気調和機10及び加湿器20の運転動作を遠隔操作で制御する。
【0031】
図2は、空気調和システムの一例を示すブロック図である。
図2では、上側に空気調和機10が示され、下側に加湿器20が示されている。まず、空気調和機10から説明する。
【0032】
空気調和機10は、室内機11と室外機12とを有する。さらに、空気調和機10は、空気調和システム1を統合的に制御する制御装置13(主制御装置)を有する。制御装置13は、室内機11、室外機12、及び加湿器20の少なくともいずれかを制御する。制御装置13は、室内機11に設置されてもよく、室外機12に設置されてもよく、あるいは室内機11及び室外機12のそれぞれに分割されて設置されてもよい。
【0033】
室内機11は、室内の空気と冷媒との熱交換を行う室内熱交換器110と、室内機11から室内熱交換器110の冷媒と熱交換された空気を吹き出すための室内ファン111と、吹出方向を案内する風向板112と、室内の温度を測定する温度センサ113と、室内の湿度を測定する湿度センサ114と、加湿器20との距離を測定するための距離センサ115と、加湿器20の位置情報を受信する位置検出手段116とを有する。
【0034】
ここで、風向板112は、例えば、上下風向板と左右風向板とを有し、室内機11から放出される空気を上下、または左右に指向させる。また、湿度センサ114は、例えば、空気調和機10が除湿運転をしているときに主に使用される。湿度センサ114は、加湿器20の使用時に加湿器20の湿度センサと併用されてもよい。
【0035】
位置検出手段116は、例えば、加湿器20が放出する赤外線信号を室内機11が取得する位置検出手段である。あるいは、位置検出手段116としては、室内機11に画像認識装置が設けられ、室内機11が加湿器20の外観、または加湿器20に付されたマーカ画像を取得することで加湿器20の位置を検出する手段であってよい。
【0036】
室外機12は、外気と冷媒との間で熱交換を行う室外熱交換器120と、室外熱交換器120に冷媒を供給する圧縮機121と、室外熱交換器120に外気を供給する室外ファン122と、冷凍サイクル内の温度や圧力、外気温などを測定する各種のセンサ123とを有する。
【0037】
制御装置13は、空気調和システム1の統合的な制御をする中央演算装置130と、中央演算装置が実行するプログラムなどが記憶されたメモリ131と、室内機11、室外機12、及び加湿器20との間で信号を送受信する送受信機132とを有する。制御装置13は、送受信機132を通じて、加湿器20の制御装置210と情報の送受信をすることができる。
【0038】
次に、加湿器20を説明する。
【0039】
加湿器20は、気化式、加熱気化式、超音波式、またはスチーム式の加湿器である。本実施形態では、加湿器20として、主に気化式の加湿器を例にあげる。
【0040】
加湿器20は、加湿器20の下方に設置された貯水トレイ201と、加湿器20の内部で加湿された空気を排出する排気口202と、貯水トレイ201に水を供給する給水口203と、貯水トレイ201に空気(外気)を送風する吸気口204とを有する。さらに、加湿器20は、貯水トレイ201内に設置された加湿フィルタ205を有する。
【0041】
また、加湿器20は、給気口204から空気を吸い込む送風ファン220と、送風ファン220を駆動するモータ221とを有する。送風ファン220が駆動すると、加湿器20の吸気口204から空気(外気)が貯水トレイ201に導入される。これにより、加湿フィルタ205に外気が接触する。また、加湿器20は、温度センサ230と、湿度センサ231と、制御装置210と、位置出力手段211とを有する。制御装置210は、制御装置13と同様に、中央演算装置、メモリ、送受信機を有する。
【0042】
加湿フィルタ205は、高い吸水性を有し、通気可能なシート材である。加湿フィルタ205は、貯水トレイ201内で、その一部が液体(例えば、水)に浸漬されている。吸気口204から送風された空気が加湿フィルタ205に接触すると、加湿フィルタ205に含まれる液体が気化され、加湿された空気として排気口202から外部に排出される。
【0043】
制御装置210は、温度センサ230及び湿度センサ231からの検出値によって、送風ファン220を駆動するモータ221の回転数を制御する。例えば、制御装置210は、湿度センサ231によって検出された湿度が設定された湿度よりも低ければ、モータ221の回転数を高い回転数で制御し、湿度センサ231によって検出された湿度が設定された湿度よりも高ければ、モータ221の回転数を低く制御する。
【0044】
位置出力手段211は、室内機11に向けて赤外線信号を出射する手段、または、加湿器20が自らの位置を示すマーカが該当する。
【0045】
但し、空気調和機10から加湿器20に局部的に温風が送風されると、吸気口204から室温よりも高温の温風が吸引される。このため、加湿器20の湿度センサ231が室内の実際の湿度(相対湿度)よりも室内の湿度を低めに認識することが起き得る。これにより、適正な湿度を持った空気が加湿器20から放出されない現象が起きる。
【0046】
このような現象を抑制するため、空気調和機10が加湿器20を避けて、室内に空気を送風するシステムが考えられる。しかし、加湿器20に空気調和機10によって温められた温風を当てることで加湿器20に吸引される空気の飽和水蒸気量を上昇させるほうが加湿器20による加湿量を増加させることができる。特に、冬季において、温かい室内環境を求める使用者にとって、充分な加湿量が得られないことは、適温、適湿度の環境が得られなくなることに繋がる。
【0047】
本実施形態の空気調和システム1では、制御装置13が室内機11から放出される空気を加湿器20に向けて送風したり、または加湿器20に向けての送風を避けたりする制御をすることで、使用者にとって適温、適湿度の環境が保たれるように、室温と、加湿器20の加湿量とが調整される。以下、フロー図を用いて、その制御を説明する。
【0048】
図3は、本実施形態の空気調和システムの運転動作の一例を示すフロー図である。
図3に示すフローは、制御装置13、210によって自動的に制御される。例えば、使用者は、自動運転モードとして、遠隔操作機5によって
図3に示す制御を選択できる。
【0049】
空気調和システム1の運転動作が開始されると、制御装置210は、加湿器20の湿度センサ231の検出値と目標湿度との差が閾値以上か否かを判断する(ステップS10)。ここで、加湿器20の湿度センサ231の検出値とは、室内における現在の実際の湿度(以下、「現在湿度」とする。)である。また、この判断した情報は、空気調和機10の制御装置13に送信される。
【0050】
目標湿度と現在湿度の差が閾値以上(例えば、10%RH)ならば(YES)、制御装置13は、運転動作を次のステップS20に進ませ、加湿器20への温風の送風を開始する次ステップに進んでいく。これは、目標湿度と現在湿度の差が閾値以上ならば、現在湿度が比較的低く室内が乾いた状態だからである。
【0051】
ここで、ステップS10における差とは、目標湿度から現在湿度を差し引いた「目標湿度-現在湿度(目標湿度≧現在湿度)」で定義される。例えば、目標湿度が50%RHのとき、現在湿度が20%RHならば、現在湿度が低く、室内が乾いた状態であるとする。
【0052】
一方、ステップS10において、制御装置210によって湿度センサ231の検出値と目標湿度との差が閾値より小さいと判断された場合(NO)、制御装置13は、運転動作をステップS11に移行させる。そして、ステップS11では、制御装置13が室内機11の温度センサ113の検出値と目標温度との差が閾値以上か否かを判断する(ステップS11)。
【0053】
ここで、室内機11の温度センサ113の検出値は、室内における現在の実際の温度(以下、「現在温度」とする。)である。また、この判断した情報は、空気調和機10の制御装置13に送信される。目標温度は、例えばユーザにより設定された目標となる室内温度であって、メモリ131に記憶される。制御装置13は、目標温度と現在温度の差に基づいて圧縮機121の回転数を制御する。
【0054】
ステップS11において、目標温度と現在温度の差が閾値以上(例えば、5℃以上)ならば(YES)、次のステップS20に進み、運転動作は、加湿器20への温風の送風を開始するステップに進む。すなわち、制御装置13は、湿度センサ231の検出値と目標湿度との差が閾値より小さいと判断されても、温度センサ113の検出値と目標温度との差が閾値以上ならば、運転動作を加湿器20への温風の送風を開始するステップに移行させる。
【0055】
ここで、ステップS11における差とは、目標温度から現在温度を差し引いた「目標温度-現在温度(目標温度≧現在温度)」で定義される。一例として、目標温度が26℃のとき、現在湿度が20℃ならば、現在温度が低く、特に冬季では室内がやや寒い状態であるとする。
【0056】
このように、制御装置13は、室内が目標湿度と現在湿度の差が閾値より小さい条件下にあると判断されても、現在温度が高くなるほど湿度(相対湿度)が下がることを想定し、高い室温の条件では室内の加湿が必要になると判断する。すなわち、制御装置13は、室内の温度上昇によって将来的に室内の湿度が低下すると予測し、事前に加湿量を増加する判断をする。
【0057】
このように、本実施形態では、現在の湿度が適湿度であったとしても、現在温度が目標温度に達していない場合に、加湿器20によって加湿量を増加させる運転動作が開始される。換言すれば、現在温度が目標温度に達しているときに、加湿器20に向けて温風を送風し続けると、かえって室内が高温・高湿の状態になってしまい、使用者に不快感を与える場合があるからである。
【0058】
一方、ステップS11において、温度センサ113の検出値と目標温度との差が閾値より小さい場合は(NO)、現在の室内の条件が適温、適湿度の条件下にあると制御装置13が判断し、空気調和システム1の運転動作が終了する。
【0059】
次に、運転動作がステップS20に移行すると、室内機11の位置検出手段と加湿器20の位置出力手段211とにより、室内機11と加湿器20との間の距離を検出する(ステップS20)。
【0060】
次に、室内機11の風向板112における、上下風向板及び左右風向板のそれぞれの角度が調整される(ステップS30)。これにより、室内機11から流出する空気の方向が調整される。すなわち、室内熱交換器110によって熱交換された空気が加湿器20に向かうように、上下風向板及び左右風向板のそれぞれの角度が調整される。
【0061】
次に、制御装置13は、室内ファン111の回転数を決定する(ステップS40)。室内ファン111の回転数は、加湿器20から吹き出された空気の流れに影響を及ぼさない程度の回転数に調整される。つまり、室内機11から放出される空気の風量は、室内機11と加湿器20との距離に応じた適切な風量に調整される。
【0062】
例えば、室内機11と加湿器20との距離が近い場合、仮に大風量の空気が加湿器20送風されると、加湿器20から吹き出された空気の流れが室内機11からの強風よって悪影響を及ぼされる可能性がある。制御装置13は、このような影響を回避するため、室内機11と加湿器20との距離に応じた適切な風量を調節する。
【0063】
なお、室内機11と加湿器20との距離と、加湿器20から吹き出された空気の流れに影響を及ぼさない程度の室内ファン111の回転数との関係式は、予め、実験、シミュレーション等によって求められ、メモリ131に格納されている。
【0064】
次に、室外機12の圧縮機121の回転数が決定される(ステップS50)。例えば、暖房時には室内熱交換器110が凝縮機として機能する。このため、圧縮機121の回転数は、室内熱交換器110の温度(凝縮温度)が加湿器20を使用しないときに比べて+α(℃)高くなるように設定される(例えば、α:2℃)。
【0065】
なお、圧縮機121の回転数は、制御装置13によって目標温度と現在温度の差に基づいて制御されている。そのため、本ステップで圧縮機121の回転数を変更すると、室内温度が目標温度とは異なる温度に向けて空気調和機10が制御される場合がある。しかし、室内熱交換器110の温度を一時的に高く設定しても、その温風は、加湿器20に局部的に向けられ、加湿器20の貯水トレイ201に貯水された液体の気化に消費されるため、急激な室温上昇は起きにくくなる。
【0066】
また、室内温度が目標温度に到達していても室内湿度が目標湿度に到達していない場合は体感温度(PMW等)が低くなり肌寒さを感じるおそれがある。このため、室内湿度が低い場合は凝縮温度及び室温を高めにシフトして肌寒さを解消するとともに加湿量を上昇させる。
【0067】
このように本ステップによる圧縮機121の回転数の変更が快適性に及ぼす影響は低いと考えられるが、使用者の好みを優先させるのであれば、室内温度を目標温度に到達させるよりも室内湿度を目標湿度に到達させることを優先する湿度優先モードを備え、空気調和機10が湿度優先モードで運転している場合にのみ本ステップを処理するようにしても良い。この場合、使用者が通常運転を行う通常モードと当該湿度優先モードを適宜選択可能にする。
【0068】
次に、室内機11から送風された空気が加湿器20に到達したときの温度を加湿器到達温度とした場合、加湿器到達温度が加湿器20の周辺温度(温度センサ230によって現在検出されている温度)よりも高いか否かが判断される(ステップS60)。また、この判断した情報は、空気調和機10の制御装置13に送信される。加湿器到達温度は、室内機から吹き出される空気の温度に対して補正を行うことで算出される。加湿器到達温度を予測する補正は加湿器までの距離、室内ファン111の回転数、室内温度を入力とする(補正式は事前に試験等で求める)。
【0069】
例えば、ステップS60において、加湿器到達温度が加湿器20の周辺温度よりも高いと判断された場合は(YES)、加湿器20の周辺温度を高めることよって加湿器20の温度を上昇させることができる。このため、制御装置13は、運転動作を加湿器20への温風の送風が開始されるステップ70以降の運転動作に進める。
【0070】
一方、加湿器到達温度が加湿器20の周辺温度以下と判断された場合は(NO)、ステップS61における判断がなされる。
【0071】
ステップS61においては、室内機11の温度センサ113が検出した温度が加湿器20の温度センサ230が検出した温度よりも高いか否かが判断される。
【0072】
例えば、室内機11の温度センサ113が検出した温度が加湿器20の温度センサ230が検出した温度よりも高い場合は(YES)、加湿器到達温度が加湿器20の周辺温度以下であったとしても、運転動作がステップS70以降における加湿器20への温風の送風が開始されるステップに進められる。これは、室内の空気が循環することによって加湿器20の周辺温度を高めることができるためである。
【0073】
一方、室内機11の温度センサ113が検出した温度が加湿器20の温度センサ230が検出した温度以下である場合は(NO)、運転動作が終了する。
【0074】
次に、ステップS70において、制御装置13から室内機11に対して室内ファン111の回転数と、室外機12に対して圧縮機121の回転数が出力される。これにより、室内機11からは、所定の温度の温風が加湿器20に向かう送風が行われる(ステップS80)。この状態を
図4に示す。
【0075】
これにより、加湿器20の吸気口202からは、室内機11から加湿器20に向けて送風しない場合と比較して温度の高い空気が吸入されるため、加湿器20は、効率よく湿った空気を放出することができる。この後、所定の時間、加湿器20への送風が継続されて、運転動作が終了する。
【0076】
なお、ステップS30~ステップS50の順序は、
図3に例示した順序に限らず、順不同で適宜入れ替えてもよい。
【0077】
このように、本実施形態では、制御装置13が室内の湿度を増加する場合に、室内機11から放出される空気を加湿器20に意図的に向けて送風する制御をする。
【0078】
このような空気調和システム1によれば、空気調和機10と加湿器20とのが互いにそれぞれの機能を扶助し合い、それぞれの機能が充分に生かされることなる。例えば、加湿器20にとっては、気化に要される温風が空気調和機10から得られ、充分な加湿量を生み出すことができる。一方、空気調和機10にとっては、暖房運転時、自らが放出する温風が加湿器20に利用されることにより、室内が適切な湿度(相対湿度)で維持されたまま室内を適切な温度にすることができる。これにより、使用者にとっては、室内環境がより快適になる。
【0079】
また、本実施形態では気化式の加湿器20を例にあげたが、加湿器20が加熱気化式であっても空気調和機10に予め温められた空気が液体の気化用ガスとして利用されるので、加湿器20は充分な加湿量を生み出すとともに加湿器20の空気を加熱するための消費電力が低減する。また、加湿器20が超音波式の場合は、温風が当てられることにより、加湿器から放出されたミストがより蒸発しやすくなり、加湿器の床にミストが落ちにくくなる。加湿器20がスチーム式の場合は、温風が当てられることにより、加湿器周辺に停留する高温多湿な空気が拡散されやすくなる。
【0080】
(変形例1)
【0081】
空気調和システム1の運転動作では、空気調和機10の温度センサ113が検出した温度に基づいて、加湿器20の加湿量が調整されもよい。
【0082】
例えば、加湿器20の制御装置210は、加湿器20を動作させる前に、室内機11の温度センサ113が検出した温度を送受信機132を通じて受信する。そして、制御装置210は、室内機11の温度センサ113が検出した温度を基準に、湿度が目的湿度となるようにモータ221を制御し、送風ファン200の回転数を調整する。あるいは、空気調和機10の制御装置13が送受信機132を通じてモータ221を制御し、送風ファン200の回転数を調整してもよい。
【0083】
このような運転動作であれば、加湿器20に室内機11から送られた温風が送風されても、加湿器20の温度センサ230は、実際の室温を認識する。これにより、加湿器20の温度センサ230が実際の室温よりも室温を高いと誤認する現象が回避される。これにより、加湿器20は、実際の室温に見合った適正な湿度を持った空気を放出することができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、本発明は、空気調和機10と加湿器20とが一体となった空気調和システム1に限らず、市販されている複種の加湿器20に適応できる空気調和機10であってもよい。例えば、加湿器20が加湿量を増加するときに、制御装置13は、室内機11から放出される空気を加湿器20に向けて送風する制御をする。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0085】
1…空気調和システム
5…部屋
10…空気調和機
11…室内機
12…室外機
13…制御装置
20…加湿器
50…遠隔操作機
110…室内熱交換器
111…室内ファン
112…風向板
113…温度センサ
114…湿度センサ
115…距離センサ
116…位置検出手段
120…室外熱交換器
121…圧縮機
122…室外ファン
123…センサ
130…中央演算装置
131…メモリ
132…送受信機
201…貯水トレイ
202…排気口
203…給水口
204…吸気口
205…加湿フィルタ
210…制御装置
211…位置出力手段
220…送風ファン
221…モータ
230…温度センサ
231…湿度センサ