IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士ゼロックス株式会社の特許一覧

特許7459602電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
<>
  • 特許-電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置 図1
  • 特許-電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置 図2
  • 特許-電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/047 20060101AFI20240326BHJP
   G03G 5/05 20060101ALI20240326BHJP
   G03G 5/147 20060101ALI20240326BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240326BHJP
   G03G 21/18 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G03G5/047
G03G5/05 104B
G03G5/147
G03G5/147 504
G03G15/00 651
G03G21/18 114
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020055092
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021156973
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星崎 武敏
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕祐
(72)【発明者】
【氏名】松木 敬子
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-048792(JP,A)
【文献】特開2011-022425(JP,A)
【文献】特開2008-022766(JP,A)
【文献】特開2016-118628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00-5/16
G03G 15/00
G03G 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、
最表面層が、フッ素含有樹脂粒子を含有し、
前記最表面層の表面で測定されるフッ素原子濃度が、前記最表面層の表面から1μmの深さで測定されるフッ素原子濃度の1.5倍以上5.0倍以下であり、
前記最表面層の表面で測定される前記フッ素含有樹脂粒子の占有面積が0.33%以上1.1%以下である電子写真感光体。
【請求項2】
前記最表面層の表面で測定される前記フッ素含有樹脂粒子の占有面積が0.36%以上0.95%以下である請求項に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記感光層が、電荷発生層と、電荷輸送層と、を有し、
前記最表面層が前記電荷輸送層であり、
前記電荷輸送層の表面で測定される電荷輸送材料の濃度が、前記電荷輸送層の厚みの中央で測定される電荷輸送材料の濃度の0.4倍以上0.6倍以下である請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記電荷輸送層の表面で測定される電荷輸送材料の濃度が、前記電荷輸送層の厚みの中央で測定される電荷輸送材料の濃度の0.45倍以上0.56倍以下である請求項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
【請求項6】
前記電子写真感光体に接触してクリーニングするクリーニング部材を備え、
前記クリーニング部材の、前記電子写真感光体に対する接触圧が1.0g/mm以上4.0g/mm以下である、
請求項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項8】
前記電子写真感光体の表面にクリーニング部材を接触させてクリーニングするクリーニング手段を備え、
前記クリーニング部材の、前記電子写真感光体に対する接触圧が1.0g/mm以上4.0g/mm以下である、
請求項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「感光体の最表層にフッ素樹脂微粒子を含有し、当該感光体の最表面のフッ素原子量が電子写真装置内での繰り返し使用により増加し、飽和する感光体であって、最表面のフッ素原子飽和量が20~60atm%であることを特徴とする感光体。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-266036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、フッ素含有樹脂粒子を含有する電子写真感光体において、前記最表面層の表面で測定されるフッ素原子濃度が、前記最表面層の表面から1μmの深さで測定されるフッ素原子濃度の1.5倍未満又は5.0倍超過である場合と比較して、振動によって感光体及びその接触部材が擦れることに起因する、筋状の画像欠陥の発生及び残留電位を抑制できる電子写真感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち
<1>
導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、
最表面層が、フッ素含有樹脂粒子を含有し、
前記最表面層の表面で測定されるフッ素原子濃度が、前記最表面層の表面から1μmの深さで測定されるフッ素原子濃度の1.5倍以上5.0倍以下である電子写真感光体。
<2>
前記最表面層の表面で測定される前記フッ素含有樹脂粒子の占有面積が0.33%以上1.1%以下である前記<1>に記載の電子写真感光体。
<3>
前記最表面層の表面で測定される前記フッ素含有樹脂粒子の占有面積が0.36%以上0.95%以下である前記<2>に記載の電子写真感光体。
<4>
前記感光層が、電荷発生層と、電荷輸送層と、を有し、
前記最表面層が前記電荷輸送層であり、
前記電荷輸送層の表面で測定される電荷輸送材料の濃度が、前記電荷輸送層の厚みの中央で測定される電荷輸送材料の濃度の0.4倍以上0.6倍以下である前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
<5>
前記電荷輸送層の表面で測定される電荷輸送材料の濃度が、前記電荷輸送層の厚みの中央で測定される電荷輸送材料の濃度の0.45倍以上0.56倍以下である前記<4>に記載の電子写真感光体。
<6>
前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
<7>
前記電子写真感光体に接触してクリーニングするクリーニング部材を備え、
前記クリーニング部材の、前記電子写真感光体に対する接触圧が1.0g/mm以上4.0g/mm以下である、
前記<6>に記載のプロセスカートリッジ。
<8>
前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
<9>
前記電子写真感光体の表面にクリーニング部材を接触させてクリーニングするクリーニング手段を備え、
前記クリーニング部材の、前記電子写真感光体に対する接触圧が1.0g/mm以上4.0g/mm以下である、
前記<8>に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0006】
<1>に係る発明によれば、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、フッ素含有樹脂粒子を含有する電子写真感光体において、前記最表面層の表面で測定されるフッ素原子濃度が、前記最表面層の表面から1μmの深さで測定されるフッ素原子濃度の1.5倍未満又は5.0倍超過である場合と比較して、振動によって感光体及びその接触部材が擦れることに起因する、筋状の画像欠陥の発生及び残留電位を抑制できる電子写真感光体が得られる。
【0007】
<2>又は<3>に係る発明によれば、前記最表面層の表面で測定される前記フッ素含有樹脂粒子の占有面積が0.36%未満又は0.95%超過である場合と比較して、振動によって感光体及びその接触部材が擦れることに起因する、筋状の画像欠陥の発生及び残留電位を抑制できる電子写真感光体が得られる。
【0008】
<4>又は<5>に係る発明によれば、前記感光層が、電荷発生層と、電荷輸送層と、を有し、前記最表面層が前記電荷輸送層である電子写真感光体において、前記電荷輸送層の表面で測定される電荷輸送材料の濃度が、前記電荷輸送層の厚みの中央で測定される電荷輸送材料の濃度の0.45倍未満又は0.56倍超過である場合と比較して、振動によって感光体及びその接触部材が擦れることに起因する、筋状の画像欠陥の発生及び残留電位を抑制できる電子写真感光体が得られる。
【0009】
<6>又は<8>に係る発明によれば、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、フッ素含有樹脂粒子を含有し、前記最表面層の表面で測定されるフッ素原子濃度が、前記最表面層の表面から1μmの深さで測定されるフッ素原子濃度の1.5倍未満又は5.0倍超過である電子写真感光体を備えた場合と比較して、振動によって感光体及びその接触部材が擦れることに起因する、筋状の画像欠陥の発生及び残留電位を抑制できるプロセスカートリッジ又は画像形成装置が得られる。
【0010】
<7>又は<9>に係る発明によれば、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、フッ素含有樹脂粒子を含有し、前記最表面層の表面で測定されるフッ素原子濃度が、前記最表面層の表面から1μmの深さで測定されるフッ素原子濃度の1.5倍以上5.0倍以下である電子写真感光体と、前記電子写真感光体に接触してクリーニングするクリーニング部材と、を備えたプロセスカートリッジ又は画像形成装置において、前記クリーニング部材の、前記電子写真感光体に対する接触圧が1.0g/mm未満又は4.0g/mm超過である場合と比較して、振動によって感光体及びその接触部材が擦れることに起因する、筋状の画像欠陥の発生及び残留電位を抑制できるプロセスカートリッジ又は画像形成装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す模式断面図である。
図2】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図3】本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0013】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0014】
<電子写真感光体>
本実施形態に係る電子写真感光体(以下「感光体」ともいう)は、導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた感光層と、を有し、最表面層が、フッ素含有樹脂粒子を含有する。
かつ、前記最表面層の表面で測定されるフッ素原子濃度が、前記最表面層の表面から1μmの深さで測定されるフッ素原子濃度の1.5倍以上5.0倍以下である。
【0015】
本実施形態に係る感光体は、上記構成により、振動によって感光体及びその接触部材が擦れることに起因する、筋状の画像欠陥の発生及び残留電位が抑制される。その理由は、次の通り推測される。
【0016】
最表面層にフッ素含有樹脂粒子を含有する感光体は、プロセスカートリッジ又は画像形成装置に組み込まれた状態で輸送されると、輸送時の振動によって、感光体と感光体に接触する部材(クリーニング部材等)との擦れが生じ、感光体の擦れた部位が正極に摩擦帯電することがあった。そして、感光体の表面が正極に摩擦帯電した部位がある状態で、画像形成時に感光体を帯電させると、感光体の表面電位に筋状のムラが生じ、それに伴い筋状の画像欠陥が生じることがあった。さらに、感光体の感光層に電荷が残り、残留電位を生じることがあった。
一方、本実施形態に係る最表面層にフッ素含有樹脂粒子を含有する感光体は、最表面層の表面で測定されるフッ素原子濃度が、前記最表面層の表面から1μmの深さで測定されるフッ素原子濃度の1.5倍以上5.0倍以下である。つまり、最表面層の表面にフッ素含有樹脂粒子を多く含む。フッ素含有樹脂粒子は負極性が高いため、輸送時の振動によって、感光体と感光体に接触する部材との擦れが生じた場合であっても、摩擦によって生じる正電荷を打ち消しやすく、感光体の擦れた部位の正極への摩擦帯電が抑制される。そのため、画像形成時に感光体を帯電させても、感光体の表面電位に筋状のムラが生じにくく、残留電位も抑制される。
【0017】
よって、本実施形態に係る感光体は、振動によって感光体及びその接触部材が擦れることに起因する、筋状の画像欠陥の発生及び残留電位が抑制されると推測される。
【0018】
以下、本実施形態に係る感光体について詳細に説明する。
【0019】
以下、本実施形態に係る電子写真感光体について図面を参照して説明する。
図1に示す電子写真感光体7Aは、例えば、導電性基体4上に、下引層1と電荷発生層2と電荷輸送層3とが、この順序で積層された構造を有する感光体7Aが挙げられる。電荷発生層2及び電荷輸送層3が感光層5を構成している。
【0020】
なお、電子写真感光体7Aは、下引層1が設けられていない層構成であってもよい。
また、電子写真感光体7Aは、電荷発生層2と電荷輸送層3との機能が一体化した単層型感光層を有する感光体であってもよい。単層型感光層を有する感光体の場合、単層型感光層が最表面層を構成する。
また、電子写真感光体7Aは、電荷輸送層3上、又は単層型感光層上に、表面保護層を有する感光体であってもよい。表面保護層を有する感光体の場合、表面保護層が最表面層を構成する。
【0021】
以下、本実施形態に係る電子写真感光体の各層について詳細に説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0022】
(導電性基体)
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
【0023】
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
【0024】
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて導電性基体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
【0025】
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
【0026】
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
【0027】
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
【0028】
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
【0029】
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0030】
(下引層)
下引層は、例えば、無機粒子と結着樹脂とを含む層である。
【0031】
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)10Ωcm以上1011Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
【0032】
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
【0033】
無機粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0034】
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0035】
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0036】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
【0039】
表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0040】
ここで、下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
【0041】
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物;2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)-1,3,4オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
【0042】
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
【0043】
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着させる方法としては、例えば、乾式法、又は、湿式法が挙げられる。
【0044】
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
【0045】
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
【0046】
なお、電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
【0047】
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
【0048】
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
【0049】
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が好適である。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0050】
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
【0051】
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0052】
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0053】
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0054】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0055】
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0056】
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/(4n)(nは上層の屈折率)から1/2までに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子等を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0057】
下引層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
【0058】
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
【0059】
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
【0060】
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0061】
下引層の膜厚は、例えば、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上50μm以下の範囲内に設定される。
【0062】
(中間層)
図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0063】
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
【0064】
中間層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0065】
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
【0066】
(電荷発生層)
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂とを含む層である。また、電荷発生層は、電荷発生材料の蒸着層であってもよい。電荷発生材料の蒸着層は、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro-Luminescence)イメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合に好適である。
【0067】
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
【0068】
これらの中でも、近赤外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、金属フタロシアニン顔料、又は無金属フタロシアニン顔料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、特開平5-263007号公報、特開平5-279591号公報等に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン;特開平5-98181号公報等に開示されたクロロガリウムフタロシアニン;特開平5-140472号公報、特開平5-140473号公報等に開示されたジクロロスズフタロシアニン;特開平4-189873号公報等に開示されたチタニルフタロシアニンがより好ましい。
【0069】
一方、近紫外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;チオインジゴ系顔料;ポルフィラジン化合物;酸化亜鉛;三方晶系セレン;特開2004-78147号公報、特開2005-181992号公報に開示されたビスアゾ顔料等が好ましい。
【0070】
450nm以上780nm以下に発光の中心波長があるLED,有機ELイメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合にも、上記電荷発生材料を用いてもよいが、解像度の観点より、感光層を20μm以下の薄膜で用いるときには、感光層中の電界強度が高くなり、基体からの電荷注入による帯電低下、いわゆる黒点と呼ばれる画像欠陥を生じやすくなる。これは、三方晶系セレン、フタロシアニン顔料等のp-型半導体で暗電流を生じやすい電荷発生材料を用いたときに顕著となる。
【0071】
これに対し、電荷発生材料として、縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、アゾ顔料等のn-型半導体を用いた場合、暗電流を生じ難く、薄膜にしても黒点と呼ばれる画像欠陥を抑制し得る。n-型の電荷発生材料としては、例えば、特開2012-155282号公報の段落[0288]~[0291]に記載された化合物(CG-1)~(CG-27)が挙げられるがこれに限られるものではない。
なお、n-型の判定は、通常使用されるタイムオブフライト法を用い、流れる光電流の極性によって判定され、正孔よりも電子をキャリアとして流しやすいものをn-型とする。
【0072】
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、結着樹脂としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。
結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0073】
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが好ましい。
【0074】
電荷発生層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0075】
電荷発生層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。なお、電荷発生層の形成は、電荷発生材料の蒸着により行ってもよい。電荷発生層の蒸着による形成は、特に、電荷発生材料として縮環芳香族顔料、ペリレン顔料を利用する場合に好適である。
【0076】
電荷発生層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等が挙げられる。これら溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いる。
【0077】
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液-液衝突や液-壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
なお、この分散の際、電荷発生層形成用塗布液中の電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0078】
電荷発生層形成用塗布液を下引層上(又は中間層上)に塗布する方法としては、例えばブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0079】
電荷発生層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下の範囲内に設定される。
【0080】
(電荷輸送層)
電荷輸送層は、例えば、電荷輸送材料と結着樹脂とを含む層である。電荷輸送層は、高分子電荷輸送材料を含む層であってもよい。
【0081】
電荷輸送層が最表面層である場合、電荷輸送層は、結着樹脂及び電荷輸送材料に加え、フッ素含有樹脂粒子を含有する。
なお、電荷輸送層上に他の層(例えば保護層等)が設けられており、電荷輸送層が最表面層ではない場合は、電荷輸送層は少なくとも結着樹脂及び電荷輸送材料を含有していればよく、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。結着樹脂、電荷輸送材料、及びその他の添加剤については、電荷輸送層が最表面層である場合と同様である。
以下、最表面層である電荷輸送層に含有される成分について説明する。
【0082】
-結着樹脂-
電荷輸送層に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、スチレン-アルキッド樹脂、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの中でも、結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂が好適である。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上で用いる。
なお、電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は、質量比で10:1から1:5までが好ましい。
ここで、結着樹脂の含有量は、例えば、感光層(電荷輸送層)の全固形分に対して、10質量%以上90質量%以下が好ましく、30質量%以上80質量%以下がより好ましく、40質量%以上70質量%以下が更に好ましい。
【0083】
-電荷輸送材料-
電荷輸送材料としては、p-ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物等の電子輸送性化合物が挙げられる。電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物も挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
電荷輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記構造式(a-1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(a-2)で示されるベンジジン誘導体が好ましい。
【0085】
【化1】
【0086】
構造式(a-1)中、ArT1、ArT2、及びArT3は、各々独立に置換若しくは無置換のアリール基、-C-C(RT4)=C(RT5)(RT6)、又は-C-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)を示す。RT4、RT5、RT6、RT7、及びRT8は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
【0087】
【化2】
【0088】
構造式(a-2)中、RT91及びRT92は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。RT101、RT102、RT111及びRT112は各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは無置換のアリール基、-C(RT12)=C(RT13)(RT14)、又は-CH=CH-CH=C(RT15)(RT16)を示し、RT12、RT13、RT14、RT15及びRT16は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。Tm1、Tm2、Tn1及びTn2は各々独立に0以上2以下の整数を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
【0089】
ここで、構造式(a-1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び前記構造式(a-2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「-C-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「-CH=CH-CH=C(RT15)(RT16)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度の観点で好ましい。
【0090】
高分子電荷輸送材料としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知のものが用いられる。特に、特開平8-176293号公報、特開平8-208820号公報等に開示されているポリエステル系の高分子電荷輸送材料は特に好ましい。なお、高分子電荷輸送材料は、単独で使用してよいが、結着樹脂と併用してもよい。
【0091】
前記電荷輸送層の表面で測定される電荷輸送材料の濃度は、前記電荷輸送層の厚みの中央で測定される電荷輸送材料の濃度の0.4倍以上0.6倍以下であることが好ましく、0.45倍以上0.56倍以下であることがより好ましく、0.45倍以上0.54倍以下であることが更に好ましい。
【0092】
電荷輸送層の表面で測定される電荷輸送材料の濃度と、前記電荷輸送層の厚みの中央で測定される電荷輸送材料の濃度との比が上記範囲内となることで、電荷輸送材料が電荷輸送層の表面よりも電荷輸送層の厚みの中央部の方に多く含有される。
電荷輸送材料には正孔輸送材料を含み、正孔輸送材料は正極性が高いため、正孔輸送材料を含む電荷輸送材料を電荷輸送層の厚みの中央部に多く含有すると、摩擦による感光体表面の正極への摩擦帯電が、より抑制される。そのため、画像形成時に感光体を帯電させても、感光体の表面電位に筋状のムラがさらに生じにくくなり、振動によって感光体及びその接触部材が擦れることに起因する、筋状の画像欠陥の発生及び残留電位がより抑制される
【0093】
上述の電荷輸送層における電荷輸送材料の濃度の比の測定方法について説明する。電荷輸送層を厚み方向に斜めに切断し、その断面の電荷輸送層の表面に該当する部分と電荷輸送層の厚みの中央に該当する部分を顕微赤外分光分析により分析する。電荷輸送層の表面及び電荷輸送層の厚みの中央における測定結果から、「電荷輸送材料のC=C伸縮振動由来のピーク(1583.5cm-1)面積÷結着樹脂のC=O由来のピーク(1770cm-1)面積」を各々算出する。電荷輸送層の表面における測定結果から得られる前記値を、電荷輸送層の厚みの中央における測定結果から得られる前記値で割ることで算出する。
【0094】
電荷輸送層の表面で測定される電荷輸送材料の濃度と、前記電荷輸送層の厚みの中央で測定される電荷輸送材料の濃度との比を上記範囲内とする方法としては、電荷輸送層用塗布液を塗布した後に、急速に電荷輸送層用塗工液中の溶媒を除去することで、電荷輸送層を形成する方法が挙げられる。
急速に電荷輸送層用塗工液中の溶媒を除去する方法としては、電荷輸送層用塗工液により形成される塗膜表面に風を送りながら加熱する方法や、電荷輸送層用塗工液により形成される塗膜に熱が伝わりやすくなるように導電性基体の厚みを小さくする方法等が挙げられる。
【0095】
-フッ素含有樹脂粒子-
フッ素含有樹脂粒子としては、フルオロオレフィンのホモポリマーの粒子、2種以上の共重合体であって、フルオロオレフィンの1種又は2種以上と非フッ素系のモノマー(つまり、フッ素原子を有さないモノマー)との共重合体の粒子が挙げられる。
【0096】
フルオロオレフィンとしては、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、パーフルオロビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのパーハロオレフィン、フッ化ビニリデン(VdF)、トリフルオロエチレン、フッ化ビニルなどの非パーフルオロオレフィン等が挙げられる。これらの中でも、VdF、TFE、CTFE、HFPなどが好ましい。
【0097】
一方、非フッ素系のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテンなどのハイドロカーボン系オレフィン;シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)、エチルビニルエーテル(EVE)、ブチルビニルエーテル、メチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル;ポリオキシエチレンアリルエーテル(POEAE)、エチルアリルエーテルなどのアルケニルビニルエーテル;ビニルトリメトキシシラン(VSi)、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シランなどの反応性α,β-不飽和基を有する有機ケイ素化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステル;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、「ベオバ」(商品名、シェル社製のビニルエステル)などのビニルエステル;などが挙げられる。これらの中でも、ルキルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、ビニルエステル、反応性α,β-不飽和基を有する有機ケイ素化合物が好ましい。
【0098】
これらの中でも、フッ素含有樹脂粒子としては、フッ素化率の高い粒子が好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などの粒子がより好ましく、PTFE、FEP、PFAの粒子が特に好ましい。
【0099】
フッ素含有樹脂粒子は、カルボキシル基の個数が炭素数10個あたり0個以上30個以下であることが好ましく、0個以上20個がより好ましい。
【0100】
ここで、フッ素含有樹脂粒子のカルボキシル基は、例えば、フッ素含有樹脂粒子に含まれる末端カルボン酸に由来するカルボキシル基である。
【0101】
フッ素含有樹脂粒子のカルボキシル基の量を低減する方法としては、1)粒子製造の過程で放射線を照射しない方法、2)放射線を照射する際に酸素が存在しない条件又は酸素濃度を低減した条件で行う方法等が挙げられる。
【0102】
フッ素含有樹脂粒子のカルボキシル基の量は、特開平4-20507などに記載のように、次の通り測定する。
フッ素含有樹脂粒子をプレス機にて予備成型し、およそ0.1mm厚みのフィルムを作製した。作製したフィルムを赤外吸収スペクトルを測定した。フッ素含有樹脂粒子にフッ素ガスを接触させて作製したカルボン酸末端を完全にフッ素化したフッ素含有樹脂粒子についても赤外吸収スペクトルを測定し、両者の差スペクトルから次式によって末端カルボキシル基の個数(炭素数10個当たり)=(l×K)/t
l:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚さ(mm)
カルボキシル基の吸収波数は3560cm-1、補正係数は440とする。
【0103】
ここで、フッ素含有樹脂粒子は、放射線を照射して得られる粒子(本明細書では、「放射線照射型のフッ素含有樹脂粒子」とも称する)、重合法により得られる粒子(本明細書では、「重合型のフッ素含有樹脂粒子」とも称する)等が挙げられる。
【0104】
放射線照射型のフッ素含有樹脂粒子(放射線を照射して得られるフッ素含有樹脂粒子)とは、放射線重合と共に粒状化したフッ素含有樹脂粒子、重合後のフッ素含有樹脂を放射線照射による分解で、低分量化かつ微粒化したフッ素含有樹脂粒子を示す。
放射線照射型のフッ素含有樹脂粒子は、空気中での放射線の照射により、カルボン酸が多く生成するため、カルボキシル基も多く含有する。
【0105】
一方、重合型のフッ素含有樹脂粒子(重合法により得られるフッ素含有樹脂粒子)とは、懸濁重合法、乳化重合法等により、重合と共に粒状化し、かつ放射線照射されていないフッ素含有樹脂粒子を示す。
【0106】
フッ素含有樹脂粒子は、重合型のフッ素含有樹脂粒子がよい。重合型のフッ素含有樹脂粒子は、上述のように、懸濁重合法、乳化重合法等により、重合と共に粒状化し、かつ放射線照射されていないフッ素含有樹脂粒子である。
ここで、懸濁重合法によるフッ素含有樹脂粒子の製造は、例えば、分散媒中で、フッ素含有樹脂を形成するためのモノマーと共に、重合開始剤、触媒等の添加物を懸濁した後、モノマーを重合させつつ、重合物を粒子化する方法である。
また、乳化重合法によるフッ素含有樹脂粒子の製造は、例えば、分散媒中で、フッ素含有樹脂を形成するためのモノマーと共に、重合開始剤、触媒等の添加物を、界面活性剤(つまり乳化剤)により乳化させた後、モノマーを重合させつつ、重合物を粒子化する方法である。
特に、フッ素含有樹脂粒子は、製造工程において放射線照射を行われないで得られた粒子であることがよい。
ただし、フッ素樹脂粒子は、酸素が存在しない又は酸素濃度が低減された条件で放射線照射が行われた放射線照射型のフッ素樹脂粒子も適用してもよい。
【0107】
フッ素含有樹脂粒子の平均粒径は、特に制限はないが、0.2μm以上4.5μm以下が好ましく、0.2μm以上4μm以下がより好ましい。
【0108】
フッ素含有樹脂粒子の平均粒径は、次の方法により測定される値である。
SEM(走査型電子顕微鏡)により例えば倍率5000倍以上で観察し、フッ素含有樹脂粒子(一次粒子が凝集した二次粒子)の最大径を測定し、これを50個の粒子について行った平均値をフッ素含有樹脂粒子の平均粒径とする。なお、SEMとして日本電子製JSM-6700Fを使用し、加速電圧5kVの二次電子画像を観察する。
【0109】
フッ素含有樹脂粒子の比表面積(BET比表面積)は、分散安定性の観点から、5m/g以上15m/g以下であることが好ましく、7m/g以上13m/g以下であることがより好ましい。
なお、比表面積は、BET式比表面積測定器(島津製作所製:フローソープII2300)を用い窒素置換法にて測定した値である。
【0110】
フッ素含有樹脂粒子の見掛密度は、分散安定性の観点から、0.2g/ml以上0.5g/ml以下であることが好ましく、0.3g/ml以上0.45g/ml以下であることがより好ましい。
なお、見掛密度はJIS K6891(1995年)に準拠して測定される値である。
【0111】
フッ素含有樹脂粒子の溶融温度は、300℃以上340℃以下であることが好ましく、325℃以上335℃以下であることがより好ましい。
なお、溶融温度はJIS K6891(1995年)に準拠して測定される融点である。
【0112】
電荷輸送層(つまり、最表面層)の表面で測定されるフッ素含有樹脂粒子の占有面積は、振動によって感光体及びその接触部材が擦れることに起因する、筋状の画像欠陥の発生及び残留電位を抑制する観点から、0.33%以上1.1%以下であることが好ましく、0.36%以上0.95%以下であることがより好ましく、0.38%以上0.90%以下であることが更に好ましい。
【0113】
電荷輸送層(つまり、最表面層)の表面で測定されるフッ素含有樹脂粒子の占有面積を上記範囲内とし、電荷輸送層(つまり、最表面層)の表面に負極性の高いフッ素含有樹脂粒子を多く存在させる。それにより、輸送時の振動によって、感光体と感光体に接触する部材との擦れが生じた場合であっても、摩擦によって生じる正電荷をより打ち消しやすく、感光体の擦れた部位の正極への摩擦帯電がより抑制される。そのため、画像形成時に感光体を帯電させても、感光体の表面電位に筋状のムラがさらに生じにくくなり、振動によって感光体及びその接触部材が擦れることに起因する、筋状の画像欠陥の発生及び残留電位がより抑制される。
【0114】
フッ素含有樹脂粒子の占有面積の測定方法について説明する。電荷輸送層(つまり、最表面層)の表面120μm×90μmの範囲を、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、電荷輸送層(つまり、最表面層)の表面に露出しているフッ素含有樹脂粒子の面積の合計値を算出し、観測面積値(つまり120μm×90μm)で割ることにより、フッ素含有樹脂粒子の占有面積を算出する。
【0115】
フッ素含有樹脂粒子の含有量は、電荷輸送層(つまり、最表面層)に対して1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
【0116】
-フッ素原子濃度-
本実施形態に係る感光体は、電荷輸送層(つまり、最表面層)の表面で測定されるフッ素原子濃度が、前記電荷輸送層(つまり、最表面層)の表面から1μmの深さで測定されるフッ素原子濃度の1.5倍以上5.0倍以下である。
【0117】
電荷輸送層(つまり、最表面層)のフッ素原子濃度を上記構成とすることで、電荷輸送層(つまり、最表面層)の表面にフッ素含有樹脂粒子を多く含み、振動によって感光体及びその接触部材が擦れることに起因する、筋状の画像欠陥の発生及び残留電位が抑制される。
【0118】
振動によって感光体及びその接触部材が擦れることに起因する、筋状の画像欠陥の発生及び残留電位及び残留電位を抑制する観点から、電荷輸送層(つまり、最表面層)の表面で測定されるフッ素原子濃度が、前記電荷輸送層(つまり、最表面層)の表面から1μmの深さで測定されるフッ素原子濃度の2.0倍以上5.0倍以下であることが好ましく、2.5倍以上4.0倍以下であることがより好ましい。
【0119】
フッ素原子濃度の測定は、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)によって行う。先ず電荷輸送層(つまり、最表面層)の表面をXPS法により分析し、全元素中のフッ素原子の濃度を算出する。続いて、電荷輸送層(つまり、最表面層)の表面から1μmの深さまでスパッタリングし、電荷輸送層(つまり、最表面層)の表面から1μmの深さの部分を露出させ、その表面をXPS法により分析し、全元素中のフッ素原子の濃度を算出する。
なお、XPSの測定条件は管電圧40kV、管電流90mAで行う。
【0120】
-添加剤、形成方法及び膜厚-
【0121】
電荷輸送層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0122】
添加剤としては、例えば、分散剤が好ましい。
分散剤としては、フッ素元素を有する分散剤であることが好ましく、具体的には、フッ素含有グラフトポリマーが挙げられる。
フッ素含有グラフトポリマーとしては、フッ化アルキル基を有する重合性化合物を単独重合又は共重合した重合体(以下「フッ化アルキル基含有重合体」とも称する)が挙げられる。
【0123】
フッ素含有グラフトポリマーとして具体的には、フッ化アルキル基を有する(メタ)アクリレートの単独重合体、フッ化アルキル基を有する(メタ)アクリレートとフッ素原子を有さないモノマーとのランダム又はブロック共重合体等が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの双方を意味する。
【0124】
フッ化アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アククリレートが挙げられる。
【0125】
フッ素原子を有さないモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アククリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルo-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールグリシジルエーテル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0126】
その他、フッ素含有グラフトポリマーとして具体的には、米国特許5637142号明細書、特許第4251662号公報などに開示されたブロック又はブランチポリマーも挙げられる。更に、フッ素含有グラフトポリマーとして具体的には、フッ素系界面活性剤も挙げられる。
【0127】
フッ素含有グラフトポリマーの含有量は、フッ素含有樹脂粒子の含有量に対して1.0質量%以上15.0質量%以下とすることが好ましく、2.0質量%以上10.0質量%以下とすることがより好ましく、3.0質量%以上8.0質量%以下とすることが更に好ましい。
フッ素含有グラフトポリマーの種類及び含有量を上記記載の様にすることで、フッ素含有樹脂粒子が電荷輸送層(つまり、最表面層)の表面に多く含有されやすくなり、電荷輸送層(つまり、最表面層)のフッ素原子濃度が上記構成となりやすいため好ましい。
【0128】
電荷輸送層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
【0129】
電荷輸送層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状又は直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
【0130】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0131】
電荷輸送層の膜厚は、例えば、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下の範囲内に設定される。
【0132】
(保護層)
保護層は、必要に応じて感光層上に設けられる。保護層は、例えば、帯電時の感光層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度をさらに改善する目的で設けられる。
そのため、保護層は、硬化膜(架橋膜)で構成された層を適用することがよい。これら層としては、例えば、下記1)又は2)に示す層が挙げられる。
【0133】
1)反応性基及び電荷輸送性骨格を同一分子内に有する反応性基含有電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり当該反応性基含有電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む層)
2)非反応性の電荷輸送材料と、電荷輸送性骨格を有さず、反応性基を有する反応性基含有非電荷輸送材料と、を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり、非反応性の電荷輸送材料と、当該反応性基含有非電荷輸送材料の重合体又は架橋体と、を含む層)
【0134】
反応性基含有電荷輸送材料の反応性基としては、連鎖重合性基、エポキシ基、-OH、-OR[但し、Rはアルキル基を示す]、-NH、-SH、-COOH、-SiRQ1 3-Qn(ORQ2Qn[但し、RQ1は水素原子、アルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、RQ2は水素原子、アルキル基、トリアルキルシリル基を表す。Qnは1~3の整数を表す]等の周知の反応性基が挙げられる。
【0135】
連鎖重合性基としては、ラジカル重合しうる官能基であれば特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基である。具体的には、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基等が挙げられる。なかでも、その反応性に優れることから、連鎖重合性基としては、ビニル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基であることが好ましい。
【0136】
反応性基含有電荷輸送材料の電荷輸送性骨格としては、電子写真感光体における公知の構造であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン骨格が好ましい。
【0137】
これら反応性基及び電荷輸送性骨格を有する反応性基含有電荷輸送材料、非反応性の電荷輸送材料、反応性基含有非電荷輸送材料は、周知の材料から選択すればよい。
【0138】
保護層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0139】
保護層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた保護層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等の硬化処理することで行う。
【0140】
保護層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
なお、保護層形成用塗布液は、無溶剤の塗布液であってもよい。
【0141】
保護層形成用塗布液を感光層(例えば電荷輸送層)上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0142】
保護層の膜厚は、例えば、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上10μm以下の範囲内に設定される。
【0143】
(単層型感光層)
単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)は、例えば、電荷発生材料と電荷輸送材料と、必要に応じて、結着樹脂、及びその他周知の添加剤と、を含む層である。なお、これら材料は、電荷発生層及び電荷輸送層で説明した材料と同様である。
そして、単層型感光層中、電荷発生材料の含有量は、全固形分に対して0.1質量%以上10質量%以下がよく、好ましくは0.8質量%以上5質量%以下である。また、単層型感光層中、電荷輸送材料の含有量は、全固形分に対して5質量%以上50質量%以下がよい。
単層型感光層の形成方法は、電荷発生層や電荷輸送層の形成方法と同様である。
単層型感光層の膜厚は、例えば、5μm以上50μm以下がよく、好ましくは10μm以上40μm以下である。
【0144】
<画像形成装置(及びプロセスカートリッジ)>
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、を備える。そして、電子写真感光体として、上記本実施形態に係る感光体が適用される。
【0145】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー像の転写後、帯電前の電子写真感光体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に電子写真感光体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;電子写真感光体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための電子写真感光体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
【0146】
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー像が転写される中間転写体と、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0147】
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
【0148】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、電子写真感光体を備える部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、帯電手段、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
【0149】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0150】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、図2に示すように、電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置9(静電潜像形成手段の一例)と、転写装置40(一次転写装置)と、中間転写体50とを備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光し得る位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。図示しないが、中間転写体50に転写されたトナー像を記録媒体(例えば用紙)に転写する二次転写装置も有している。なお、中間転写体50、転写装置40(一次転写装置)、及び二次転写装置(不図示)が転写手段の一例に相当する。
【0151】
図2におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置8(帯電手段の一例)、現像装置11(現像手段の一例)、及びクリーニング装置13(クリーニング手段の一例)を一体に支持している。クリーニング装置13は、クリーニングブレード(クリーニング部材の一例)131を有しており、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。なお、クリーニング部材は、クリーニングブレード131の態様ではなく、導電性又は絶縁性の繊維状部材であってもよく、これを単独で、又はクリーニングブレード131と併用してもよい。
【0152】
なお、図2には、画像形成装置として、潤滑剤14を電子写真感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)、及び、クリーニングを補助する繊維状部材133(平ブラシ状)を備えた例を示してあるが、これらは必要に応じて配置される。
【0153】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の各構成について説明する。
【0154】
-帯電装置-
帯電装置8としては、例えば、導電性又は半導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が使用される。また、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も使用される。
【0155】
-露光装置-
露光装置9としては、例えば、電子写真感光体7表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、定められた像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体の分光感度領域内とする。半導体レーザの波長としては、780nm付近に発振波長を有する近赤外が主流である。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、カラー画像形成のためにはマルチビームを出力し得るタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
【0156】
-現像装置-
現像装置11としては、例えば、現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置が挙げられる。現像装置11としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、一成分系現像剤又は二成分系現像剤をブラシ、ローラ等を用いて電子写真感光体7に付着させる機能を有する公知の現像器等が挙げられる。中でも現像剤を表面に保持した現像ローラを用いるものが好ましい。
【0157】
現像装置11に使用される現像剤は、トナー単独の一成分系現像剤であってもよいし、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤であってもよい。また、現像剤は、磁性であってもよいし、非磁性であってもよい。これら現像剤は、周知のものが適用される。
【0158】
-クリーニング装置-
クリーニング装置13は、クリーニングブレード131を備えるクリーニングブレード方式の装置が用いられる。
クリーニングブレード131は、電子写真感光体7に対する接触圧が1.0g/mm以上4.0g/mm以下となるように、前記電子写真感光体7に接触させることが好ましい。
ここで、電子写真感光体7に対する接触圧とは、クリーニングブレード131が電子写真感光体7の接触部にかかる単位長さあたりの荷重、すなわち線圧を示している。
クリーニングブレード131の、電子写真感光体7に対する接触圧が上記範囲内となることで、振動によって電子写真感光体7及びクリーニングブレード131が擦れることで生じる摩擦が低減し、電子写真感光体7の表面が摩擦帯電しにくくなり、筋状の画像欠陥の発生及び残留電位が抑制されるため好ましい。
振動によって感光体及びその接触部材が擦れることに起因する、筋状の画像欠陥の発生及び残留電位を抑制する観点から、クリーニングブレード131は、電子写真感光体7に対する接触圧が1.5g/mm以上3.5g/mm以下であることがより好ましく、2.0g/mm以上3.0g/mm以下であることが更に好ましい。
なお、クリーニングブレード方式以外にも、ファーブラシクリーニング方式、現像同時クリーニング方式を採用してもよい。
【0159】
-転写装置-
転写装置40としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0160】
-中間転写体-
中間転写体50としては、半導電性を付与したポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ゴム等を含むベルト状のもの(中間転写ベルト)が使用される。また、中間転写体の形態としては、ベルト状以外にドラム状のものを用いてもよい。
【0161】
図3は、本実施形態に係る画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
図3に示す画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式の多色画像形成装置である。画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【実施例
【0162】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0163】
<フッ素含有樹脂粒子の製造>
(フッ素含有樹脂粒子(1)の製造)
次の通り、フッ素含有樹脂粒子(1)を製造した。
オートクレーブに、脱イオン水3リットルおよびパーフルオロオクタン酸アンモニウム3.0g、さらに乳化安定剤としてパラフィンワックス(日本石油(株)製)110gを仕込み、窒素で3回、TFE(テトラフルオロエチレン)で2回系内を置換して酸素を取り除いた後、TFEで内圧を1.0MPaにして、250rpmで撹拌しながら、内温を70℃に保った。つぎに、連鎖移動剤として常圧で150cc分のエタンおよび重合開始剤である300mgの過硫酸アンモニウムを溶かした20mlの水溶液を系内に仕込み反応を開始した。反応中は、系内の温度を70℃に保ち、オートクレーブの内圧は常に1.0±0.05MPaに保つように連続的にTFEを供給した。開始剤を添加してから反応で消費されたTFEが1000gに達した時点で、TFEの供給と撹拌を停止し、反応を終了した。その後遠心分離により粒子を分離し、更にメタノール400質量部を採取し超音波を照射しながら攪拌機250rpmにて10分洗浄し、上澄みをろ過した。本操作を3回繰り返した後、ろ過物を減圧下60度、17時間乾燥させた。
以上の工程を経て、フッ素含有樹脂粒子(1)を製造した。
【0164】
<実施例1>
(感光体の作製)
得られたフッ素含有樹脂粒子を使用し、次の通り感光体を作製した。
酸化亜鉛:(平均粒径70nm:テイカ社製:比表面積値15m/g)100部をテトラヒドロフラン500部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBE503:信越化学工業社製)1.4部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間)焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。
前記表面処理を施した酸化亜鉛110部を500部のテトラヒドロフランと攪拌混合し、アリザリン0.6部を50部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、さらに60℃で減圧乾燥を行い、アリザリン付与酸化亜鉛を得た。
このアリザリン付与酸化亜鉛60部と硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製):13.5部とブチラール樹脂 (エスレックBM-1、積水化学工業社製)15部とメチルエチルケトン85部とを混合し混合液を得た。この混合液38部と、メチルエチルケトン25部と、を混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社):30部を添加し、下引層用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて、円筒状アルミニウム基材上に塗布し、170℃、30分の乾燥硬化を行い厚さ24μmの下引層を得た。
【0165】
次に、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°に強い回折ピークを持つヒドロキシガリウムフタロシアニン1部を、ポリビニルブチラール(エスレックBM-5、積水化学工業社製)1部及び酢酸n-ブチル80部と混合し、これをガラスビーズと共にペイントシェーカーで1時間分散処理することにより電荷発生層用塗布液を調製した。得られた塗布液を下引層が形成された導電性基体上に浸漬塗布し、130℃で10分間加熱乾燥して膜厚0.15μmの電荷発生層を形成した。
【0166】
電荷輸送材料として下記式(CTM1)で表されるベンジジン化合物45部、結着樹脂として下記式(PCZ1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物(粘度平均分子量:40,000)55部をトルエン350部、テトラヒドロフラン150部に溶解させ、フッ素含有樹脂粒子(1)8.0部、及びフッ素含有グラフトポリマー(品名:GF400、東亜合成社製)0.4部加え、高圧ホモジナイザーで5回処理して、電荷輸送層用塗布液を調製した。
得られた塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布法で塗布し、風速1.5m/sで空気を吹き付けながら、120℃、30分の加熱を行い膜厚31μmの電荷輸送層を形成した。
【0167】
【化3】
【0168】
【化4】
【0169】
以上の工程を経て、感光体を作製した。
【0170】
(プロセスカートリッジの作製)
作成した感光体を、画像形成装置(DocuPrint CP500d、富士ゼロックス社製)のクリーニング部材を備えるプロセスカートリッジに装着し、プロセスカートリッジを得た。なお、クリーニング部材の、感光体に対する接触圧を表2の通りとしたプロセスカートリッジを合計5個作製した。
【0171】
<実施例2~18、比較例1~4>
フッ素含有樹脂粒子の種類、添加量及び占有面積、フッ素含有グラフトポリマーの添加量、電荷輸送層用塗布液の加熱条件並びに、クリーニング部材の、感光体に対する接触圧を表2及び表3記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、感光体及びプロセスカートリッジを作製した。なお、プロセスカートリッジは各例1個のみ作製した。
【0172】
<評価>
(画質評価)
各例で得られたプロセスカートリッジを個別梱包(出荷荷姿)し、振動試験機(株式会社振研社製G-9223LS型)にセットし、以下の表1に示す(i)から(iii)の振動条件をすべて加えた(表1中の*は、掃引割合0.3Hz/秒で3Hzから100Hzにした後、掃引割合0.3Hz/秒で100Hzから3Hzに周波数を変化させることを意味する)。プロセスカートリッジを画像形成装置(DocuPrint CP500d、富士ゼロックス社製)に装着し、22℃、55%RH環境下で30%濃度のハーフトーン画像をA4用紙(P紙、富士ゼロックス製)に出力して画像形成を行い、目視により1枚目及び15枚目に形成した画像を目視により評価した。その後、24時間放置後、1枚目に形成した画像を目視により評価した。判定基準は以下の通りである。
-判断基準-
A:筋が未発生。
B:注視すると微かに筋の存在が見られる。
C:ハーフトーンの画像において筋状の画像の存在が微かに確認できるが実用上問題にはならない。
D:ハーフトーンの画像において筋状の画像の存在が確認できるが、文字画像では検出できない。
E:ハーフトーンの画像ではっきりと筋状の画像の存在が識別でき、文字画像でも微かに筋の存在が分かる。
F:ハーフトーンの画像及び文字画像で筋の存在がはっきりと分かる。
【0173】
(残留電位評価)
各例で得られた感光体を100rpmで回転させた状態で、スコロトロン帯電器により感光体を-700Vに帯電させ、帯電の0.05秒後に波長780nmの半導体レーザを用いて2.0mJ/mの光を照射して放電させた。続いて、放電させてから0.1秒後の感光体に20mJ/mの赤色LED光を照射して徐電を行った。そして、徐電から100msec後の感光体の表面の電位Vを測定し、これを残留電位の値とした。
下記基準に従い残留電位を評価した。
A:-50V以上
B:-50V未満-100V以上
C:-100V未満
【0174】
以下、表2及び表3中の記載について説明する。
「加熱条件」は、電荷輸送層形成時の電荷輸送層用塗布液の塗膜加熱条件を示す。
「フッ素原子濃度比」は、電荷輸送層の表面で測定されるフッ素原子濃度の、前記電荷輸送層の表面から1μmの深さで測定されるフッ素原子濃度に対する倍数を表す。
「電荷輸送材料濃度比」は、電荷輸送層の表面で測定される電荷輸送材料の濃度の、前記電荷輸送層の厚みの中央で測定される電荷輸送材料の濃度に対する倍数を表す。
【0175】
【表1】
【0176】
【表2】
【0177】
【表3】
【0178】
上記結果から、本実施例の感光体は、振動によって感光体及びその接触部材が擦れることに起因する、筋状の画像欠陥の発生及び残留電位を抑制できることがわかる。
【符号の説明】
【0179】
1 下引層、2 電荷発生層、3 電荷輸送層、4 導電性基体、7A,7 電子写真感光体、8 帯電装置、9 露光装置、11 現像装置、13 クリーニング装置、14 潤滑剤、40 転写装置、50 中間転写体、100 画像形成装置、120 画像形成装置、131 クリーニングブレード、132 繊維状部材(ロール状)、133 繊維状部材(平ブラシ状)、300 プロセスカートリッジ
図1
図2
図3