(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】樹脂シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/38 20060101AFI20240326BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240326BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20240326BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240326BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240326BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240326BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240326BHJP
【FI】
B32B27/38
B32B27/20 Z
B32B7/06
H05K1/03 610R
H05K1/03 610L
H05K3/46 T
C08L63/00 C
C08K3/013
(21)【出願番号】P 2020058220
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-12-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真俊
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-045501(JP,A)
【文献】特開2020-015860(JP,A)
【文献】特開2016-147945(JP,A)
【文献】特開2016-102198(JP,A)
【文献】国際公開第2008/108357(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
H05K 1/03、 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に設けられた、樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、を有する樹脂シートであって、
JIS K7126に準拠した方法にて測定された支持体の酸素透過率が、23℃、50%RHの雰囲気下で20cc/m
2・day以下であり、
樹脂組成物層中に含まれる溶剤の量が、5質量%以下であり、
樹脂組成物が、(A-1)揮発性エポキシ樹脂、(A-2)200℃における重量減少率が3質量%未満のエポキシ樹脂、及び、(C)無機充填材を含有し、
(A-1)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、0.1質量%以上10質量%以下であり、
(A-2)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、5質量%以上40質量%以下であり、
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、60質量%以上である、樹脂シート。
【請求項2】
さらに(B)ラジカル重合性樹脂を含有し、
(A-1)成分及び(B)成分の合計含有量が、樹脂成分を100質量%としたとき、1質量%以上20質量%以下である請求項
1に記載の樹脂シート。
【請求項3】
JIS K7129に準拠した方法にて測定された支持体の水蒸気透過率が、40℃、90%RHの雰囲気下で20g/m
2・day以下である、請求項1
又は2に記載の樹脂シート。
【請求項4】
(A-1)成分、(B)成分、及び溶剤の合計含有量が、樹脂成分を100質量%としたとき、1質量%以上20質量%以下である、請求項2
又は3に記載の樹脂シート。
【請求項5】
(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、0.1質量%以上15質量%以下である、請求項2
~4のいずれか1項に記載の樹脂シート。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物により形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
【請求項7】
請求項
6に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【請求項8】
(I)内層基板上に、請求項1~
5のいずれか1項に記載の樹脂シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程、
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程、及び
(III)支持体を剥離する工程、をこの順で含む、プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートに関する。さらには、当該樹脂シートを用いて形成されたプリント配線板、及び半導体装置、並びにプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造技術としては、内層回路基板上に絶縁層と導体層とを交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。絶縁層は、一般に、樹脂組成物を硬化させることにより形成される。
【0003】
例えば、特許文献1には、液状エポキシ樹脂、固形エポキシ樹脂、活性エステル硬化剤、及び無機充填材を含有する樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、多層プリント配線板の製造に際し、絶縁層を形成するための樹脂組成物の硬化物は、誘電正接がより低いことが求められている。
【0006】
誘電正接を低くするには、誘電正接を低くする成分を樹脂組成物に含有させることが考えられる。本発明者が検討した結果、樹脂組成物層の熱硬化中に酸素が存在すると、誘電正接を低くする成分の架橋が酸素に阻害され樹脂組成物の硬化反応が妨げられる。また、樹脂組成物層の熱硬化中にエポキシ樹脂が揮発すると架橋可能な成分が減少し、硬化反応が妨げられる。その結果、樹脂組成物層の硬化物の架橋密度が低くなってしまい、誘電正接を低くできても樹脂組成物層の硬化物の絶縁信頼性が劣ってしまうことを知見した。
【0007】
本発明の課題は、誘電正接が低く、絶縁信頼性に優れる硬化物を得ることができる樹脂シート;当該樹脂シートを用いて形成された絶縁層を備えるプリント配線板;半導体装置;プリント配線板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、所定の支持体を用い、さらに樹脂組成物層を形成する樹脂組成物中の溶剤含有量を所定の範囲内とし、さらに、樹脂組成物中に(A-1)揮発性エポキシ樹脂、及び(B)ラジカル重合性樹脂のいずれかを含有させることで前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記の内容を含む。
【0009】
[1] 支持体と、該支持体上に設けられた、樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、を有する樹脂シートであって、
JIS K7126に準拠した方法にて測定された支持体の酸素透過率が、23℃、50%RHの雰囲気下で20cc/m2・day以下であり、
樹脂組成物層中に含まれる溶剤の量が、5質量%以下であり、
樹脂組成物が、(A-1)揮発性エポキシ樹脂、及び(B)ラジカル重合性樹脂のいずれかを含有する、樹脂シート。
[2] JIS K7129に準拠した方法にて測定された支持体の水蒸気透過率が、40℃、90%RHの雰囲気下で20g/m2・day以下である、[1]に記載の樹脂シート。
[3] (A-1)成分及び(B)成分の合計含有量が、樹脂成分を100質量%としたとき、1質量%以上20質量%以下である、[1]又は[2]に記載の樹脂シート。
[4] (A-1)成分、(B)成分、及び溶剤の合計含有量が、樹脂成分を100質量%としたとき、1質量%以上20質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂シート。
[5] 樹脂組成物は、さらに(C)無機充填材を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂シート。
[6] (C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、50質量%以上である、[5]に記載の樹脂シート。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物により形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
[8] [7]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
[9] (I)内層基板上に、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程、
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程、及び
(III)支持体を剥離する工程、をこの順で含む、プリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、誘電正接が低く、絶縁信頼性に優れる硬化物を得ることができる樹脂シート;当該樹脂シートを用いて形成された絶縁層を備えるプリント配線板;半導体装置;プリント配線板の製造方法を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の樹脂シート、当該樹脂シートを用いて形成された絶縁層を備える、プリント配線板、及び半導体装置、並びにプリント配線板の製造方法について詳細に説明する。
【0012】
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、を有する樹脂シートであって、JIS K7126に準拠した方法にて測定された支持体の酸素透過率が、23℃、50%RHの雰囲気下で20cc/m2・day以下であり、樹脂組成物層中に含まれる溶剤の量が、5質量%以下であり、樹脂組成物が、(A-1)揮発性エポキシ樹脂、及び(B)ラジカル重合性樹脂のいずれかを含有する。
【0013】
本発明の樹脂シートを用いて形成された樹脂組成物層の硬化物は、誘電正接が低く、絶縁信頼性に優れる。また、本発明では、通常、銅箔との間の密着性、及びHAST後の銅箔との間の密着性にも優れる硬化物を得ることもできる。以下、樹脂シートを構成する各層について詳述する。
【0014】
<支持体>
本発明の樹脂シートは、支持体を有する。支持体は、JIS K7126に準拠した方法にて測定された支持体の酸素透過率が、23℃、50%RHの雰囲気下で20cc/m2・day以下である。樹脂組成物層の熱硬化中に樹脂組成物層に酸素が存在すると樹脂組成物の硬化反応が妨げられる。また、酸素透過率が高い支持体を、揮発性エポキシ樹脂が透過することがあるので、樹脂組成物層の熱硬化中にエポキシ樹脂が揮発することで架橋可能な成分が減少することがある。その結果、樹脂組成物層の硬化物の架橋密度が低くなり、絶縁信頼性が劣ってしまう。本発明の樹脂シートは、JIS K7126に準拠した方法にて測定された酸素透過率が、23℃、50%RHの雰囲気下で20cc/m2・day以下である支持体を備えるので、支持体を介して樹脂組成物層に酸素が樹脂組成物層に侵入してくることを抑制することができる。また、酸素透過率が、23℃、50%RHの雰囲気下で20cc/m2・day以下である支持体を備えるので、樹脂組成物層に含まれるエポキシ樹脂が揮発することも抑制することができ、樹脂組成物層の硬化物の架橋密度を向上させることができる。よって、誘電正接が低く、絶縁信頼性に優れる絶縁層を得ることが可能となる。
【0015】
支持体の酸素透過率としては、誘電正接が低く、絶縁信頼性に優れる絶縁層を得る観点から、23℃、50%RHの雰囲気下で20cc/m2・day以下であり、好ましくは18cc/m2・day以下、より好ましくは15cc/m2・day以下、10cc/m2・day以下、5cc/m2・day以下、3cc/m2・day以下、又は1cc/m2・day以下である。下限は、好ましくは0cc/m2・day以上、より好ましくは0.01cc/m2・day以上、0.05cc/m2・day以上である。ここで、%RHとは相対湿度を表す。
【0016】
支持体の酸素透過率の具体的な測定方法は、酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/21)を用いてJIS K7126(等圧法)に準じ、23℃、50%RHの雰囲気下で測定することができる。
【0017】
支持体の水蒸気透過率としては、誘電正接が低く、絶縁信頼性に優れる絶縁層を得る観点から、40℃、90%RHの雰囲気下で、好ましくは20g/m2・day以下であり、好ましくは18g/m2・day以下、より好ましくは15g/m2・day以下、10g/m2・day以下、5g/m2・day以下、3g/m2・day以下、又は1g/m2・day以下である。下限は、好ましくは0g/m2・day以上、より好ましくは0.01g/m2・day以上、0.05g/m2・day以上である。
【0018】
支持体の水蒸気透過率の具体的な測定方法は、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、PERMATRAN-W3/34)を用いてJIS K7129に準じ、40℃、90%RHの雰囲気下で測定することができる。
【0019】
支持体としては、JIS K7126に準拠した方法にて測定された支持体の酸素透過率が、23℃、50%RHの雰囲気下で20cc/m2・day以下であるものを用いることができる。このような支持体としては、例えば、酸素透過率が20cc/m2・day以下の基材、基材に離型層を積層させた支持体、基材にバリア層を積層させた支持体、離型層、基材及びバリア層の順で積層させた支持体等が挙げられる。なお、基材にバリア層又は離型層を積層させた支持体の場合、基材の酸素透過率が20cc/m2・day以下である必要はなく、基材にバリア層又は離型層を積層させた支持体の酸素透過率が20cc/m2・day以下であればよい。
【0020】
基材としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0021】
基材としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0022】
基材として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0023】
また、基材としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層基材を使用してもよい。離型層付き基材の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き基材は、市販品を用いてもよい。
【0024】
基材の厚みとしては、特に限定されないが、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、好ましくは75μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。なお、離型層付き基材を使用する場合、離型層付き基材全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0025】
支持体は、バリア層を備えていてもよい。バリア層を備えることで、酸素や水蒸気の透過を抑制することが可能となる。バリア層としては、例えば、無機膜、有機膜等が挙げられる。無機膜としては、例えば、アルミニウム、銅等の金属箔;シリカ蒸着膜;窒化ケイ素膜;酸化ケイ素膜;酸化マグネシウム膜等が挙げられる。また、有機膜としては、ポリビニルアルコール膜、エチレン-ビニルアルコール共重合体膜、ポリ塩化ビニリデン膜等が挙げられる。バリア層は、複数のバリア層で構成されていてもよく、無機膜と有機膜とから構成されていてもよい。
【0026】
無機膜の形成方法としては、例えば、熱、プラズマ、紫外線等による化学気相成長法;蒸着、スパッタリング等による物理気相成長法等が挙げられる。有機膜の形成方法としては、例えば、ダイコーター、コンマコーター、グラビアコーター、バーコーター等の塗布装置を用いて有機化合物を基材上に塗布することで形成可能である。
【0027】
バリア層の厚みとしては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.15μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
【0028】
支持体は、接着層を介して基材とバリア層とを接合してもよい。接着層に使用しうる接着剤としては、基材とバリア層とを接合することができるものを用いることができる。このような接着剤としては、例えば、水系、溶剤系、ホットメルト系、紫外線等の活性エネルギー線により硬化しうる活性エネルギー線硬化型等の接着剤等が挙げられる。
【0029】
接着剤層の厚みとしては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
【0030】
支持体は、離型層を備えていてもよい。離型層を備えることで支持体と樹脂組成物層との剥離を容易に行うことができる。離型層に使用しうる離型剤としては、例えば、アルキド系離型剤、シリコーン系離型剤、ウレタン系離型剤、及びオレフィン系離型剤からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、アルキド系離型剤が好ましい。
【0031】
離型層の厚みとしては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上であり、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。
【0032】
支持体の総厚みとしては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、好ましくは80μm以下、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは60μm以下である。
【0033】
支持体は、基材の樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0034】
<樹脂組成物層>
樹脂シートは樹脂組成物を含む樹脂組成物層を有し、樹脂組成物層中に含まれる溶剤の量は5質量%以下であり、樹脂組成物が、(A-1)揮発性エポキシ樹脂、及び(B)ラジカル重合性樹脂のいずれかを含有する。樹脂組成物層中に含まれる溶剤の量を5質量%以下とすることにより、樹脂組成物層の硬化物中に溶剤が残留することを抑制できるので、硬化物中の分子間隔が広がり、架橋密度が低くなることを抑制することが出来る。これによりイオンマイグレーションが起こりにくく、絶縁信頼性に優れる硬化物となる。また、溶剤の揮発による銅配線パターンの膨れを抑制することもできる。
【0035】
樹脂組成物は、誘電正接を低くする観点から、(A-1)成分及び(B)成分のいずれかを含有する。樹脂組成物は、必要に応じて、さらに、(A-2)(A-1)成分以外のエポキシ樹脂、(C)無機充填材、(D)有機充填材、(E)硬化剤、(F)硬化促進剤、(G)重合開始剤、(H)熱可塑性樹脂、(I)難燃剤、及び(J)その他の添加剤を含んでいてもよい。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。なお、本明細書において、(A-1)成分、及び(A-2)成分をまとめて(A)エポキシ樹脂ということがある。
【0036】
-(A-1)揮発性エポキシ樹脂-
樹脂組成物は、(A-1)成分として、(A-1)揮発性エポキシ樹脂を含有する。但し、(B)成分を含有する場合はこの限りではない。(A-1)揮発性エポキシ樹脂を樹脂組成物に含有させることで樹脂組成物の溶融粘度を低下させることが可能となる。これにより、後述する(C)無機充填材を多量に含有させて誘電正接を低くしても、樹脂組成物層の溶融粘度の上昇を抑制することが可能となる。(A-1)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
揮発性エポキシ樹脂の判定は、TG-DTA測定装置を用い、空気中で30~550℃まで10℃/minで昇温することによる重量減少率を測定した際、200℃での重量減少率が3質量%以上のエポキシ樹脂を揮発性エポキシ樹脂とする。具体的な揮発性エポキシ樹脂の判定方法は、アルミニウム製のサンプルパンにエポキシ樹脂を約10mg秤量し、蓋をせずオープンの状態で、空気流量200mL/分の雰囲気下、昇温速度10℃/分で30℃から550℃まで昇温し、各温度におけるサンプルの重量を測定する。得られた結果から、下記式を用い200℃における重量減少率を算出する。
200℃における重量減少率(質量%)=100×(加熱前の質量-200℃における質量)/加熱前の質量
【0038】
(A-1)揮発性エポキシ樹脂の200℃での重量減少率としては、本発明の所望の効果を得る観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは3.5質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0039】
(A-1)成分としては、本発明の所望の効果を得る観点から、1分子中に1個以上のエポキシ基を有することが好ましく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有することがより好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有することがさらに好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(A-1)成分の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0040】
(A-1)成分には、温度20℃で液状の(A-1)成分と、温度20℃で固体状の(A-1)成分とがある。(A-1)成分としては、本発明の所望の効果を得る観点から、液状であることが好ましい。
【0041】
(A-1)成分としては、前記の重量減少率が3質量%以上のエポキシ樹脂を用いることができる。このようなエポキシ樹脂としては、環状骨格を有することが好ましい。環状構造としては、脂環式構造、芳香環構造等が挙げられる。脂環式構造としては、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等が挙げられ、シクロヘキサン環が好ましい。芳香環構造としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられ、ベンゼン環が好ましい。
【0042】
(A-1)成分の具体例としては、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(液状フタル酸ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(A-1)成分のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、樹脂組成物層の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0044】
(A-1)成分の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは200~3000、さらに好ましくは250~1500である。
樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0045】
(A-1)成分の含有量は、良好な機械強度、及び絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。
なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0046】
-(A-2)(A-1)成分以外のエポキシ樹脂-
樹脂組成物は、任意の成分として、さらに(A-2)(A-1)成分以外のエポキシ樹脂を含んでいてもよい。(A-2)成分は、200℃における重量減少率が3質量%未満のエポキシ樹脂をいう。
【0047】
(A-2)成分としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
(A-2)成分としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(A-2)成分の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0049】
(A-2)成分には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。(A-2)成分としては、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよく、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含むことが好ましい。
【0050】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0051】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0052】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0054】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0055】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
(A-2)成分として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:1~1:20、より好ましくは1:1.5~1:15、特に好ましくは1:2~1:10である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。さらに、通常は、樹脂シートの形態で使用する場合に、適度な粘着性がもたらされる。また、通常は、樹脂シートの形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する。さらに、通常は、十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる。
【0057】
(A-2)成分のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、樹脂組成物層の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。
【0058】
(A-2)成分の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000、より好ましくは200~3000、さらに好ましくは250~1500である。
【0059】
(A-2)成分の含有量は、良好な機械強度、及び絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0060】
(A-1)成分と(A-2)成分とを組み合わせて用いる場合、それらの量比((A-1)成分:(A-2)成分)は、本発明の効果を顕著に得る観点から、質量比で、好ましくは1:1~1:20、より好ましくは1:1.5~1:15、特に好ましくは1:2~1:10である。
【0061】
-(B)ラジカル重合性樹脂-
樹脂組成物は、(B)成分として、(B)ラジカル重合性樹脂を含有する。但し、(A-1)成分を含有する場合はこの限りではない。(B)ラジカル重合性樹脂を樹脂組成物に含有させることで、誘電正接が低い硬化物を得ることが可能となる。
【0062】
(B)成分としては、ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂を用いることができる。ラジカル重合性基とは、紫外線等の活性エネルギー線の照射、又は熱により硬化性を示すエチレン性二重結合を有する基をいう。このような基としては、例えば、ビニル基、ビニルフェニル基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基、マレイミド基、フマロイル基、マレオイル基が挙げられ、ビニルフェニル基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。ここで、アクリロイル基及びメタクリロイル基をまとめて、「(メタ)アクリロイル基」ということがある。また、ビニルフェニル基とは、以下に示す構造を有する基である。
【化1】
(*は結合手を表す。)
【0063】
(B)成分は、誘電正接が低い硬化物を得る観点から、1分子あたり2個以上のラジカル重合性不飽和基を有することが好ましい。
【0064】
(B)成分は、誘電正接が低い硬化物を得る観点から、環状構造を有することが好ましい。環状構造としては、2価の環状基が好ましい。2価の環状基としては、脂環式構造を含む環状基及び芳香環構造を含む環状基のいずれであってもよい。また、2価の環状基は、複数有していてもよい。
【0065】
2価の環状基は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは3員環以上、より好ましくは4員環以上、さらに好ましくは5員環以上であり、好ましくは20員環以下、より好ましくは15員環以下、さらに好ましくは10員環以下である。また、2価の環状基としては、単環構造であってもよく、多環構造であってもよい。
【0066】
2価の環状基における環は、炭素原子以外にヘテロ原子により環の骨格が構成されていてもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられ、酸素原子が好ましい。ヘテロ原子は前記の環に1つ有していてもよく、2つ以上を有していてもよい。
【0067】
2価の環状基の具体例としては、下記の2価の基(i)~(xiii)が挙げられる。
【化2】
(2価の基(xii)、(xiii)中、R
1、R
2、R
5、R
6、R
7、R
11、及びR
12は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数が6以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、R
3、R
4、R
8、R
9、及びR
10は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。)
【0068】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。炭素原子数が6以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基であることが好ましい。R1、R2、R5、R6、R7、R11、及びR12としては、メチル基を表すことが好ましい。R3、R4、R8、R9、及びR10は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0069】
また、2価の環状基は、複数の2価の環状基を組み合わせてもよい。2価の環状基を組み合わせた場合の具体例としては、下記の式(a)で表される2価の環状基(2価の基(a)が挙げられる。
【化3】
(式(a)中、R
21、R
22、R
25、R
26、R
27、R
31、R
32、R
35及びR
36は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数が6以下のアルキル基、又はフェニル基を表し、R
23、R
24、R
28、R
29、R
30、R
33及びR
34は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数6以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。n及びmは、0~300の整数を表す。但し、n及びmの一方は0である場合を除く。)
【0070】
R21、R22、R35及びR36は、2価の基(xii)中のR1と同じである。R23、R24、R33及びR34は、2価の基(xii)中のR3と同じである。R25、R26、R27、R31、及びR32は、式(xiii)中のR5と同じである。R28、R29、及びR30は、式(xiii)中のR8と同じである。
【0071】
n及びmは0~300の整数を表す。但し、n及びmの一方は0である場合を除く。n及びmとしては、1~100の整数を表すことが好ましく、1~50の整数を表すことがより好ましく、1~10の整数を表すことがさらに好ましい。n及びmは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0072】
2価の環状基としては、2価の基(x)、2価の基(xi)、又は2価の基(a)が好ましく、2価の基(x)又は2価の基(a)がより好ましい。
【0073】
2価の環状基は、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、オキソ基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。
【0074】
ラジカル重合性不飽和基は、2価の環状基に直接結合していてもよく、2価の連結基を介して結合していてもよい。2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-C(=O)O-、-O-、-NHC(=O)-、-NC(=O)N-、-NHC(=O)O-、-C(=O)-、-S-、-SO-、-NH-等が挙げられ、これらを複数組み合わせた基であってもよい。アルキレン基としては、炭素原子数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基、又は炭素原子数1~4のアルキレン基がさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、1,1-ジメチルエチレン基等が挙げられ、メチレン基、エチレン基、1,1-ジメチルエチレン基が好ましい。アルケニレン基としては、炭素原子数2~10のアルケニレン基が好ましく、炭素原子数2~6のアルケニレン基がより好ましく、炭素原子数2~5のアルケニレン基がさらに好ましい。アリーレン基、ヘテロアリーレン基としては、炭素原子数6~20のアリーレン基又はヘテロアリーレン基が好ましく、炭素原子数6~10のアリーレン基又はヘテロアリーレン基がより好ましい。2価の連結基としては、アルキレン基が好ましく、中でもメチレン基、1,1-ジメチルエチレン基が好ましい。
【0075】
(B)成分は、下記式(1)で表されることが好ましい。
【化4】
(式(1)中、R
51及びR
54はそれぞれ独立にラジカル重合性不飽和基を表し、R
52及びR
53はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。環Bは、2価の環状基を表す。)
【0076】
R51及びR54はそれぞれ独立にラジカル重合性不飽和基を表し、ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0077】
R52及びR53はそれぞれ独立に2価の連結基を表す。2価の連結基としては、上記の2価の連結基と同様である。
【0078】
環Bは、2価の環状基を表す。環Bとしては、上記の2価の環状基と同様である。
【0079】
環Bは、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記の2価の環状基が有していてもよい置換基と同様である。
【0080】
以下、(B)成分の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化5】
(n1は、式(a)中のnと同じであり、m1は、式(a)中のmと同じである。)
【0081】
(B)成分は、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ガス化学社製の「OPE-2St」、新中村化学工業社製の「A-DOG」、共栄社化学社製の「DCP-A」等が挙げられる。(B)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
(B)成分の数平均分子量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは3000以下、より好ましくは2500以下、さらに好ましくは2000以下、1500以下である。下限は、好ましくは100以上、より好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上、1000以上である。数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0083】
(B)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。上限は好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0084】
(A-1)成分及び(B)成分の合計含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂成分を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。ここで、樹脂成分とは、(C)無機充填材及び(D)有機充填材を除いた成分をいう。
【0085】
(A-1)成分、(B)成分、及び樹脂組成物層に含まれる溶剤の合計含有量としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂成分を100質量%としたとき、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0086】
-(C)無機充填材-
樹脂組成物は、任意の成分として、さらに(C)無機充填材を含有していてもよい。
【0087】
無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。(C)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
(C)成分の市販品としては、例えば、デンカ社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;などが挙げられる。
【0089】
(C)成分の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0090】
(C)成分の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で(C)無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出できる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0091】
(C)成分の比表面積は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは2m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m2/g以下、50m2/g以下又は40m2/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0092】
(C)成分は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0093】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0094】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0095】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
【0096】
(C)成分の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0097】
(C)成分の含有量は、誘電正接を低くする観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0098】
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)成分の含有量(質量%)をcとし、(A-1)成分の含有量(質量%)をa1としたとき、c/a1としては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上であり、好ましくは90以下、より好ましくは85以下、さらに好ましくは80以下である。
【0099】
また、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B)成分の含有量(質量%)をbとしたとき、c/bとしては、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは30以上、より好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上であり、好ましくは80以下、より好ましくは70以下、さらに好ましくは60以下である。
【0100】
-(D)有機充填材-
感光性樹脂組成物は、任意の成分として、さらに(D)有機充填材を含んでいてもよい。(D)有機充填材は柔軟性を示すことから樹脂組成物の硬化物の応力を分散させることが可能となり、その結果、絶縁信頼性を向上させることが可能となる。
【0101】
(D)成分としては、例えば、ウレタン微粒子、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。
【0102】
ウレタン微粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、根上工業社製の「MM-101SW」、「MM-101SWA」、「MM-101SM」、「MM-101SMA」、「MM-110SMA」等が挙げられる。
【0103】
ゴム粒子としては、ゴム弾性を示す樹脂に化学的架橋処理を施し、有機溶剤に不溶かつ不融とした樹脂の微粒子体であるものならばどのようなゴム粒子でもよい。ゴム粒子の好ましい例としては、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。コアシェル型ゴム粒子は、コア層とシェル層とを有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、又は外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、中間層がゴム状ポリマーで構成され、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のものなどが挙げられる。ガラス状ポリマー層は、例えば、メタクリル酸メチルの重合物などで構成され、ゴム状ポリマー層は、例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)などで構成される。ゴム粒子は2種以上を組み合わせて使用してもよい。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、アイカ工業社製の「IM401-4-14」;ガンツ化成社製の「AC3832」、「AC3816N」、「AC3401N」、「IM-401改7-17」;三菱レイヨン社製の「メタブレンKW-4426」等が挙げられる。架橋アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、JSR社製の「XER-91」(平均粒径0.5μm)等が挙げられる。架橋スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、JSR社製の「XSK-500」(平均粒径0.5μm)等が挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、三菱レイヨン社製の「メタブレンW300A」(平均粒径0.1μm)、「W450A」(平均粒径0.2μm)等が挙げられる。
【0104】
ポリアミド微粒子としては、アミド結合を有する樹脂の50μm以下の微粒子を用いることができ、例えば、ナイロン等の脂肪族ポリアミド、ケブラー等の芳香族ポリアミド、ポリアミドイミドなどが挙げられる。ポリアミド微粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、ダイセルヒュルス社製の「VESTOSINT 2070」;東レ社製の「SP500」等が挙げられる。
【0105】
(D)成分の平均粒径は、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.2μm以上であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.6μm以下である。(D)成分の平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。(D)成分の平均粒径は、例えば、適当な有機溶剤に有機充填材を超音波などにより均一に分散させ、濃厚系粒径アナライザー(例えば大塚電子社製のFPAR-1000)を用いて、有機充填材の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。
【0106】
(D)成分の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは、0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0107】
-(E)硬化剤-
樹脂組成物は、任意の成分として、さらに(E)硬化剤を含有していてもよい。(E)成分は、通常、(A)成分と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有する。(E)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0108】
(E)成分としては、(A)成分と反応して樹脂組成物を硬化させることができる化合物を用いることができ、例えば、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤などが挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤のいずれかが好ましく、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤のいずれかがより好ましい。
【0109】
活性エステル系硬化剤としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する硬化剤が挙げられる。中でも、活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。
【0110】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0111】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0112】
活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造を表す。
【0113】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000」、「HPC-8000H」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「EXB-8150-65T」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150L-65T」、「EXB9416-70BK」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
【0114】
フェノール系硬化剤としては、芳香環(ベンゼン環、ナフタレン環等)に結合した水酸基を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上有する硬化剤が挙げられる。中でも、ベンゼン環に結合した水酸基を有する化合物が好ましい。また、耐熱性及び耐水性の観点からは、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤が好ましい。さらに、密着性の観点からは、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。特に、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点からは、トリアジン骨格含有フェノールノボラック硬化剤が好ましい。
【0115】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、「MEH-8000H」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-495V」、「SN-375」、「SN-395」;DIC社製の「TD-2090」、「TD-2090-60M」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」、「HPC-9500」、「KA-1160」、「KA-1163」、「KA-1165」;群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」、「ELPC75」等が挙げられる。
【0116】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「ODA-BOZ」、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」が挙げられる。
【0117】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V-03」、「V-05」、「V-07」;ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P等が挙げられる。
【0118】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられる。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、新日本理化社製の「MH-700」等が挙げられる。
【0119】
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上のアミノ基を有する硬化剤が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0120】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂);「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂);「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー);等が挙げられる。
【0121】
(E)硬化剤の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0122】
(A)成分のエポキシ基数を1とした場合、(E)硬化剤の活性基数は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、好ましくは2以下、より好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.5以下である。ここで、「(A)成分のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する(A)成分の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「(E)硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する(E)硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。(A)成分のエポキシ基数を1とした場合の(E)硬化剤の活性基数が前記範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。
【0123】
(A-1)成分のエポキシ基数を1とした場合、(E)硬化剤の活性基数は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上であり、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。ここで、「(A-1)成分のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する(A-1)成分の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。(A-1)成分のエポキシ基数を1とした場合の(E)硬化剤の活性基数が前記範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。
【0124】
-(F)硬化促進剤-
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(F)硬化促進剤を含んでいてもよい。
【0125】
硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0126】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0127】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0128】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0129】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0130】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0131】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0132】
(F)成分の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0133】
-(G)重合開始剤-
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(G)重合開始剤を含んでいてもよい。(G)成分は、通常(B)成分におけるラジカル重合性不飽和基の架橋を促進させる機能を有する。(G)成分は1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を併用してもよい。
【0134】
(G)重合開始剤としては、例えば、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートt-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物が挙げられる。
【0135】
(G)重合開始剤の市販品としては、例えば、日油社製の「パーブチルC」、「パーブチルA」、「パーブチルP」、「パーブチルL」、「パーブチルO」、「パーブチルND」、「パーブチルZ」、「パークミルP」、「パークミルD」等が挙げられる。
【0136】
(G)重合開始剤の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、さらに好ましくは0.03質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0137】
-(H)熱可塑性樹脂-
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に(H)熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
【0138】
(H)成分としての熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、フェノキシ樹脂が好ましい。また、熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0139】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。
【0140】
フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」;等が挙げられる。
【0141】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」;積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0142】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0143】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0144】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0145】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0146】
(H)熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは70,000以下、より好ましくは60,000以下、特に好ましくは50,000以下である。
【0147】
(H)熱可塑性樹脂の含有量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0148】
-(I)難燃剤-
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(I)難燃剤を含有していてもよい。
【0149】
(I)難燃剤としては、例えば、ホスファゼン化合物、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられ、ホスファゼン化合物が好ましい。難燃剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0150】
ホスファゼン化合物は、窒素とリンを構成元素とする環状化合物であれば特に限定されないが、ホスファゼン化合物は、フェノール性水酸基を有するホスファゼン化合物であることが好ましい。
【0151】
ホスファゼン化合物の具体例としては、例えば、大塚化学社製の「SPH-100」、「SPS-100」、「SPB-100」「SPE-100」、伏見製薬所社製の「FP-100」、「FP-110」、「FP-300」、「FP-400」等が挙げられ、大塚化学社製の「SPH-100」が好ましい。
【0152】
ホスファゼン化合物以外の難燃剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三光社製の「HCA-HQ」、大八化学工業社製の「PX-200」等が挙げられる。難燃剤としては加水分解しにくいものが好ましく、例えば、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド等が好ましい。
【0153】
(I)難燃剤の含有量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0154】
-(J)その他の添加剤-
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更にその他の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤等の樹脂添加剤などが挙げられる。これらの添加剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。それぞれの含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0155】
樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等を添加し、回転ミキサーなどを用いて混合・分散する方法などが挙げられる。
【0156】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化、及び当該樹脂組成物の硬化物が薄膜であっても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは60μm以下、50μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。
【0157】
<その他の層>
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、その他の層を含んでいてもよい。斯かるその他の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体の基材に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0158】
<樹脂シートの製造方法>
本発明の樹脂シートは、例えば、有機溶剤等の溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に樹脂組成物層中に含まれる溶剤の量が5質量%以下となるように乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0159】
樹脂組成物層中に含まれる溶剤の量としては、5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下である。下限は特に制限はないが、0質量%以上、0.1質量%以上等としうる。
【0160】
樹脂組成物層中に含まれる溶剤の量(残留溶剤量)は、支持体の質量、樹脂シートの質量、及び樹脂シートの乾燥後の質量を測定し、下記式により求める。
残留溶剤量(質量%)=100×(樹脂シートの初期質量-樹脂シートの乾燥質量)/(樹脂シートの初期質量-支持体の質量)
【0161】
具体的には、支持体を10cm×10cmに切り出し、電子天秤で重量を測定する。支持体と樹脂組成物層が積層された状態の樹脂シートを10cm×10cmに切り出し、電子天秤を用い初期質量を測定する。次いで、樹脂シートを金網に載せ、予め130℃に設定されたオーブンで15分加熱した後、デシケーター内に移して30分間静置し、室温まで冷却し、その後、電子天秤を用い、樹脂シートの乾燥質量を測定する。このように測定した支持体の質量、樹脂シートの質量、及び樹脂シートの乾燥後の質量を上記式により求める。
【0162】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0163】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、溶剤の量が5質量%以下である樹脂組成物層を形成することができる。乾燥の平均温度としては好ましくは91℃以上、より好ましくは93℃以上、さらに好ましくは95℃以上である。上限は特に制限はないが、200℃以下、150℃以下等としうる。乾燥時間としては、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、さらに好ましくは3分以上であり、好ましくは10分以下、より好ましくは8分以下、さらに好ましくは7分以下である。
【0164】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0165】
<樹脂シートの物性、用途>
樹脂組成物層を190℃で90分間熱硬化させた硬化物は、誘電正接が低いという特性を示す。よって、前記の硬化物は、誘電正接が低い絶縁層をもたらす。誘電正接としては、好ましくは0.005未満、さらに好ましくは0.0045以下、より好ましくは0.003以下である。一方、誘電正接の下限値は特に限定されないが、0.0001以上等とし得る。前記の誘電正接の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0166】
樹脂組成物層を100℃で30分間、次いで180℃で90分間熱硬化させた硬化物は、絶縁信頼性に優れるという特性を示す。よって、前記の硬化物は、絶縁信頼性に優れる絶縁層をもたらす。絶縁信頼性としては、130℃、85%RHの条件下で300時間経過させたHAST試験において、HAST試験後の絶縁抵抗値が、HAST試験前の初期絶縁抵抗値の50%を超える。絶縁信頼性の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0167】
樹脂組成物層を190℃で90分間熱硬化させた硬化物は、通常銅箔との間の密着性に優れるという特性を示す。よって、前記の硬化物は、銅箔との間に密着性に優れる絶縁層をもたらす。密着性としては、好ましくは0.5kgf/cm以上、より好ましくは0.55kgf/cm以上、さらに好ましくは0.6kgf/cm以上である。一方、密着性の上限値は特に限定されないが、5kgf/cm以下等とし得る。前記の密着性の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0168】
樹脂組成物層を190℃で90分間熱硬化させた硬化物は、通常、130℃、85%RHの条件で100時間経過させたHAST試験後において、銅箔との間の密着性に優れるという特性を示す。よって、前記の硬化物は、HAST試験後の銅箔との間に密着性に優れる絶縁層をもたらす。HAST試験後の密着性としては、好ましくは0.2kgf/cm以上、より好ましくは0.35kgf/cm以上、さらに好ましくは0.4kgf/cm以上である。一方、HAST試験後の密着性の上限値は特に限定されないが、5kgf/cm以下等とし得る。前記のHAST試験後の密着性の評価は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0169】
本発明の樹脂シートは、誘電正接を低くできるとともに、絶縁信頼性に優れる絶縁層をもたらすことができる。したがって、本発明の樹脂シートは、絶縁用途の樹脂シートとして好適に使用することができる。具体的には、絶縁層上に形成される導体層(再配線層を含む)を形成するための当該絶縁層を形成するための樹脂シート(導体層を形成するための絶縁層形成用樹脂シート)として好適に使用することができる。
【0170】
また、後述する多層プリント配線板において、多層プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂シート(多層プリント配線板の絶縁層形成用樹脂シート)、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂シート(プリント配線板の層間絶縁層形成用樹脂シート)として好適に使用することができる。
【0171】
また、例えば、以下の(1)~(6)工程を経て半導体チップパッケージが製造される場合、本発明の樹脂シートは、再配線層を形成するための絶縁層としての再配線形成層用の樹脂シート(再配線形成層形成用の樹脂シート)、及び半導体チップを封止するための樹脂シート(半導体チップ封止用の樹脂シート)としても好適に使用することができる。半導体チップパッケージが製造される際、封止層上に更に再配線層を形成してもよい。
(1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(3)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(4)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(5)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、及び
(6)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
【0172】
また、本発明の樹脂シートは、部品埋め込み性に良好な絶縁層をもたらすことから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。
【0173】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む。
【0174】
プリント配線板は、例えば、上述の樹脂シートを用いて、下記(I)、(II)及び(III)の工程をこの順で含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
(III)支持体を剥離する工程
【0175】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用し得る。
【0176】
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0177】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0178】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0179】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0180】
工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0181】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間とすることができる。
【0182】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間)予備加熱してもよい。
【0183】
絶縁層は、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成されているので、絶縁層の厚みを薄くすること可能である。絶縁層の厚みとしては、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下、10μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、5μm以上等とし得る。
【0184】
(II)工程終了後、誘電正接を低くでき、絶縁信頼性に優れる絶縁層を得る観点から、工程(III)にて支持体を剥離する。
【0185】
プリント配線板を製造するに際しては、(IV)絶縁層に穴あけする工程、(V)絶縁層を粗化処理する工程、(VI)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(IV)乃至工程(VI)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。工程(IV)~(V)は、工程(III)の前に行ってもよく、後に行ってもよい。通常、工程(IV)は、工程(III)の後に行われる。また、必要に応じて、工程(II)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
【0186】
工程(IV)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(IV)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0187】
工程(V)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(V)において、スミアの除去も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」、「スウェリングディップ・セキュリガントP」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に1分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0188】
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは300nm以下、より好ましくは250nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは30nm以上、より好ましくは40nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0189】
工程(VI)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0190】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0191】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0192】
一実施形態において、導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0193】
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0194】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
【0195】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0196】
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0197】
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例】
【0198】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。なお、特に断らない限り、常温、大気圧中で行った。
【0199】
<酸素透過率の測定法>
支持体の酸素透過率は、酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/21)を用いてJIS K7126(等圧法)に準じ、23℃、50%RHの雰囲気下で測定した。
【0200】
<水蒸気透過率の測定法>
支持体の水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、PERMATRAN-W3/34)を用いてJIS K7129に準じ、40℃、90%RHの雰囲気下で測定した。
【0201】
<200℃における重量減少率の測定法>
200℃における重量減少率の測定は、日立ハイテクサイエンス社製「TG/DTA EXSTAR6300」を用いて行った。具体的には、アルミニウム製のサンプルパンにエポキシ樹脂を約10mg秤量し、蓋をせずオープンの状態で、空気流量200mL/分の雰囲気下、昇温速度10℃/分で30℃から550℃まで昇温し、各温度におけるサンプルの重量を測定した。得られた結果から、下記式を用い200℃における重量減少率を算出した。
200℃における重量減少率(質量%)=100×(加熱前の質量-200℃における質量)/加熱前の質量
【0202】
<樹脂組成物層中に含まれる溶剤の量の測定法>
(1)支持体の質量測定
支持体を10cm×10cmに切り出し、電子天秤で重量を測定した。測定は3サンプルについて行い、その平均値を支持体の質量とした。
【0203】
(2)樹脂シートの質量測定
支持体と樹脂組成物層が積層された状態の樹脂シートを10cm×10cmに切り出し、電子天秤を用い初期質量を測定した。次いで、樹脂シートを金網に載せ、予め130℃に設定されたオーブンで15分加熱した後、デシケーター内に移して30分間静置し、室温まで冷却した。その後、電子天秤を用い、樹脂シートの乾燥質量を測定した。初期質量、乾燥質量共に測定は3サンプルについて行い、その平均値を採用し、下記式を用いて樹脂組成物層中に含まれる溶剤の量(残留溶剤量)を算出した。
残留溶剤量(質量%)=100×(樹脂シートの初期質量-樹脂シートの乾燥質量)/(樹脂シートの初期質量-支持体の質量)
【0204】
<樹脂組成物1の作製>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量約180g/eq.)10部、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7760」、エポキシ当量約238g/eq.)20部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3000-L」、エポキシ当量約269g/eq.)25部、揮発性エポキシ樹脂として液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1658GS」、エポキシ当量約135g/eq.、TG-DTA測定で200℃における重量減少率7.2%)7部、ホスファゼン樹脂(大塚化学社製「SPS-100」)3部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部をMEK20部、ソルベントナフサ40部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、活性エステル型硬化剤(DIC社製「EXB9416-70BK」、活性基当量約330g/eq.の不揮発分70質量%のメチルイソブチルケトン溶液)86部、フェノール系硬化剤(DIC社製「LA3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)10部、ナフトール系硬化剤(日鉄ケミカル&マテリアル社製「SN395」、活性基当量約107g/eq.)2部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、固形分50質量%のトルエン溶液)10部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)8部、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g、アドマテックス社製「SO-C2」)400部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP100」)で濾過して、樹脂組成物1を作製した。
【0205】
<樹脂組成物2の作製>
樹脂組成物1の作製において、
1)ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3000-L」、エポキシ当量約269g/eq.)の量を25部から20部に変え、
2)揮発性エポキシ樹脂である液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1658GS」、エポキシ当量約135g/eq.、TG-DTA測定で200℃における重量減少率7.2%)7部を、ラジカル重合性樹脂である(メタ)アクリレート(新中村化学工業社製「NKエステルA-DOG」、分子量326)12部に変え、
3)重合開始剤(日油社製「パーブチルC」)0.2部をさらに用いた。
以上の事項以外は樹脂組成物1の作製と同様にして樹脂組成物2を作製した。
【0206】
<樹脂組成物3の作製>
樹脂組成物1の作製において、
1)ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)社製「NC-3000-L」、エポキシ当量約269g/eq.)の量を25部から10部に変え、
2)変性ナフタレン型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-475V」、エポキシ当量約330g/eq.)10部を用い、
3)ラジカル重合性樹脂である(メタ)アクリレート(新中村化学工業社製「NKエステルA-DOG」、分子量326)5部を用い、
4)重合開始剤(日油社製「パーブチルC」)0.2部を用いた。
以上の事項以外は樹脂組成物1の作製と同様にして樹脂組成物3を作製した。
【0207】
<樹脂組成物4の作製>
ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7760」、エポキシ当量約238)10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3000-L」、エポキシ当量約269g/eq.)10部、変性ナフタレン型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ESN-475V」、エポキシ当量約330g/eq.)20部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000H」、エポキシ当量約190g/eq.)7部、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4710」、エポキシ当量約170g/eq.)3部、揮発性エポキシ樹脂として液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1658GS」、エポキシ当量約135g/eq.、TG-DTA測定で200℃における重量減少率7.2%)7部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部をMEK20部、ソルベントナフサ40部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、ラジカル重合性樹脂として(メタ)アクリレート(新中村化学工業社製「NKエステルA-DOG」、分子量326)5部、活性エステル硬化剤(DIC社製「HPC8000-65T」、活性基当量約223g/eq.の不揮発分65質量%のトルエン溶液)94部、フェノール系硬化剤(DIC社製「LA3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液)5部、ベンゾオキサジン系硬化剤(JFEケミカル社製「ODA-BOZ」の固形分50質量%のMEK溶液、ベンゾオキサジン環当量約218g/eq.)3部、カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル社製「V-03」、活性基当量約216g/eq.、固形分50質量%のトルエン溶液)10部、硬化促進剤1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(四国化成工業社製「1B2PZ」)の固形分10質量%のメチルエチルケトン溶液)4部、重合開始剤(日油社製「パーブチルC」)0.2部、ゴム粒子(アイカ工業社製「IM401-4-14」、コアがポリブタジエンでシェルがスチレンとジビニルベンゼンの共重合体であるコアシェル型ゴム粒子)2部、難燃剤(三光社製「HCA-HQ-HST」、10-(2、5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド、平均粒径1.5μm)3部、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業社社製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g、アドマテックス社製「SO-C2」)400部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP100」)で濾過して、樹脂組成物4を作製した。
【0208】
<樹脂組成物5の作製>
樹脂組成物1の作製において、揮発性エポキシ樹脂として液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1658GS」、エポキシ当量約135g/eq.、TG-DTA測定で200℃における重量減少率7.2%)7部を、揮発性エポキシ樹脂として液状フタル酸ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製「EX-721」、エポキシ当量約154g/eq.、TG-DTA測定で200℃における重量減少率4.2%)7部に変えた。
以上の事項以外は樹脂組成物1の作製と同様に樹脂組成物5を作製した。
【0209】
<樹脂組成物6>
樹脂組成物2において、ラジカル重合性樹脂である(メタ)アクリレート(新中村化学工業社製「NKエステルA-DOG」、分子量326)12部をラジカル重合性樹脂であるスチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE-2St、数平均分子量1200」の不揮発分60質量%のトルエン溶液)20部に変更した以外は樹脂組成物2と同様に樹脂組成物6を作製した。
【0210】
以下、樹脂組成物1~6に用いた成分とその配合量を下記表に示す。
【表1】
【0211】
<実施例1>
樹脂組成物1を、支持体1(厚さ38μmのPETフィルムの一方の面にアルキド系離型処理を、もう一方の面に厚さ3μmの接着層を介して300nmのシリカ蒸着層を形成した厚さ12μmのPETフィルムを貼合したもの(総厚み53μm、酸素透過率0.1cc/m2・day、水蒸気透過率1.2g/m2・day))上に、乾燥後の樹脂組成物の厚みが40μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80~120℃(平均100℃)で6分間乾燥した。このときの樹脂組成物層中に含まれる溶剤の量は2.5質量%であった。次いで樹脂組成物層の表面に厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取った。ロール状の樹脂シートを幅507mmにスリットし、これより507mm×336mmサイズのシート状の樹脂シート1を得た。
【0212】
<実施例2>
実施例1において、樹脂組成物1を樹脂組成物2に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シート2を得た。樹脂組成物層中に含まれる溶剤のは2.6質量%であった。
【0213】
<実施例3>
実施例1において、樹脂組成物1を樹脂組成物3に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シート3を得た。樹脂組成物層中に含まれる溶剤のは2.5質量%であった。
【0214】
<実施例4>
実施例1において、樹脂組成物1を樹脂組成物4に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シート4を得た。樹脂組成物層中に含まれる溶剤のは2.3質量%であった。
【0215】
<実施例5>
実施例1において、樹脂組成物1を樹脂組成物5に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シート5を得た。樹脂組成物層中に含まれる溶剤の量は2.5質量%であった。
【0216】
<実施例6>
実施例1において、樹脂組成物1を樹脂組成物6に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シート6を得た。樹脂組成物層中に含まれる溶剤の量は2.7質量%であった。
【0217】
<実施例7>
実施例1において、支持体1(厚さ38μmのPETフィルムの一方の面にアルキド系離型処理を、もう一方の面に厚さ3μmの接着層を介して300nmのシリカ蒸着層を形成した厚さ12μmのPETフィルムを貼合したもの(総厚み53μm、酸素透過率0.1cc/m2・day、水蒸気透過率1.2g/m2・day))を、支持体2(厚さ38μmのPETフィルムの一方の面にアルキド系離型処理を、もう一方の面に厚さ2μmの有機バリア層(ポリビニルアルコール)を塗布したもの(総厚み40μm、酸素透過率0.1cc/m2・day、水蒸気透過率12g/m2・day))に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シート7を得た。樹脂組成物層中に含まれる溶剤の量は2.5質量%であった。
【0218】
<実施例8>
実施例1において、支持体1(厚さ38μmのPETフィルムの一方の面にアルキド系離型処理を、もう一方の面に厚さ3μmの接着層を介して300nmのシリカ蒸着層を形成した厚さ12μmのPETフィルムを貼合したもの(総厚み53μm、酸素透過率0.1cc/m2・day、水蒸気透過率1.2g/m2・day))を、支持体3(厚さ38μmのPETフィルムの一方の面にアルキド系離型処理を、もう一方の面に厚さ2μmの有機バリア層(エチレンービニルアルコール共重合体)を塗布したもの(総厚み40μm、酸素透過率0.1cc/m2・day、水蒸気透過率11g/m2・day))に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シート8を得た。樹脂組成物層中に含まれる溶剤の溶剤量は2.5質量%であった。
【0219】
<実施例9>
実施例1において、支持体1(厚さ38μmのPETフィルムの一方の面にアルキド系離型処理を、もう一方の面に厚さ3μmの接着層を介して300nmのシリカ蒸着層を形成した厚さ12μmのPETフィルムを貼合したもの(総厚み53μm、酸素透過率0.1cc/m2・day、水蒸気透過率1.2g/m2・day))を、支持体4(厚さ38μmのPETフィルムの一方の面にアルキド系離型処理を、もう一方の面に厚さ2μmの有機バリア層(ポリ塩化ビニリデン)を塗布したもの(総厚み40μm、酸素透過率0.1cc/m2・day、水蒸気透過率5.0g/m2・day))に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シート9を得た。樹脂組成物層中に含まれる溶剤の溶剤量は2.5質量%であった。
【0220】
<実施例10>
実施例1において、支持体1(厚さ38μmのPETフィルムの一方の面にアルキド系離型処理を、もう一方の面に厚さ3μmの接着層を介して300nmのシリカ蒸着層を形成した厚さ12μmのPETフィルムを貼合したもの(総厚み53μm、酸素透過率0.1cc/m2・day、水蒸気透過率1.2g/m2・day))を、支持体5(厚さ25μmのPENフィルムの一方の面にアルキド系離型処理したもの(総厚み25μm、酸素透過率14cc/m2・day、水蒸気透過率5.6g/m2・day))に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シート10を得た。樹脂組成物層中に含まれる溶剤の溶剤量は2.5質量%であった。
【0221】
<実施例11>
実施例1において、支持体1(厚さ38μmのPETフィルムの一方の面にアルキド系離型処理を、もう一方の面に厚さ3μmの接着層を介して300nmのシリカ蒸着層を形成した厚さ12μmのPETフィルムを貼合したもの(総厚み53μm、酸素透過率0.1cc/m2・day、水蒸気透過率1.2g/m2・day))を、支持体6(厚さ38μmのPENフィルムの一方の面にアルキド系離型処理したもの(総厚み38μm、酸素透過率10cc/m2・day、水蒸気透過率3.8g/m2・day))に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シート11を得た。樹脂組成物層中に含まれる溶剤の溶剤量は2.5質量%であった。
【0222】
<実施例12>
実施例1において、支持体1(厚さ38μmのPETフィルムの一方の面にアルキド系離型処理を、もう一方の面に厚さ3μmの接着層を介して300nmのシリカ蒸着層を形成した厚さ12μmのPETフィルムを貼合したもの(総厚み53μm、酸素透過率0.1cc/m2・day、水蒸気透過率1.2g/m2・day))を、支持体7(特許第5500074号の実施例1に記載の金属膜付きフィルムのPET面側にアルキド系離型処理を施したもの(総厚み41μm、酸素透過率0.1cc/m2・day、水蒸気透過率0.5g/m2・day))に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シート12を得た。樹脂組成物層中に含まれる溶剤の溶剤量は2.5質量%であった。
【0223】
<実施例13>
実施例1において、支持体1(厚さ38μmのPETフィルムの一方の面にアルキド系離型処理を、もう一方の面に厚さ3μmの接着層を介して300nmのシリカ蒸着層を形成した厚さ12μmのPETフィルムを貼合したもの(総厚み53μm、酸素透過率0.1cc/m2・day、水蒸気透過率1.2g/m2・day))を、支持体8(特許第5500074号実施例1に記載の金属膜付きフィルムの金属膜側にアルキド系離型処理を施したもの(総厚み41μm、酸素透過率0.1cc/m2・day、水蒸気透過率0.5g/m2・day))に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シート13を得た。樹脂組成物層中に含まれる溶剤の溶剤量は2.5質量%であった。
【0224】
<実施例14>
実施例1において、支持体1(厚さ38μmのPETフィルムの一方の面にアルキド系離型処理を、もう一方の面に厚さ3μmの接着層を介して300nmのシリカ蒸着層を形成した厚さ12μmのPETフィルムを貼合したもの(総厚み53μm、酸素透過率0.1cc/m2・day、水蒸気透過率1.2g/m2・day))を、支持体9(総厚み18μm、酸素透過率0.1cc/m2・day、水蒸気透過率0.1g/m2・day))に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シート14を得た。樹脂組成物層中に含まれる溶剤の溶剤量は2.5質量%であった。
【0225】
<比較例1>
実施例1において、支持体1(厚さ38μmのPETフィルムの一方の面にアルキド系離型処理を、もう一方の面に厚さ3μmの接着層を介して300nmのシリカ蒸着層を形成した厚さ12μmのPETフィルムを貼合したもの(総厚み53μm、酸素透過率0.1cc/m2・day、水蒸気透過率1.2g/m2・day))を、支持体10(アルキド系離型処理が施されたPETフィルム(厚み38μm、酸素透過率40cc/m2・day、水蒸気透過率15g/m2・day)に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シート15を得た。樹脂組成物層中に含まれる溶剤の溶剤量は2.5質量%であった。
【0226】
<比較例2>
比較例1において、樹脂組成物1を樹脂組成物2に変えた。以上の事項以外は比較例1と同様にして樹脂シート16を得た。樹脂組成物層中に含まれる溶剤の溶剤量は2.6質量%であった。
【0227】
<比較例3>
実施例1において、樹脂組成物1を樹脂組成物3に変え、乾燥条件を80~120℃(平均100℃)で6分間から、80~100℃(平均90℃)で4分間に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂シート17を得た。樹脂組成物層中に含まれる溶剤の溶剤量は5.1質量%であった。
【0228】
<銅箔密着性の測定>
(1)サンプルの作製
電解銅箔(三井金属鉱業社製「3EC-III」、厚さ35μm)の光沢面をマイクロエッチング剤(メック社製「CZ-8101」)に浸漬して銅表面に粗化処理(Ra値=1μm)を行い、次いで、防錆溶液(メック社製「CL8300」)を用いて防錆処理を施した。得られた銅箔をCZ銅箔という。さらに、130℃のオーブンで30分間加熱処理した。
【0229】
内層回路基板として、内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)を準備した。次いで、樹脂シート1~17を、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機製作所社製「MVLP-500」)を用いて、樹脂組成物層が内層回路基板と接合するように、内層回路基板の両面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより実施した。積層後、支持体を剥離した。露出した樹脂組成物層上に、CZ銅箔の処理面を、上記と同様の条件で、積層した。その後、190℃、90分の硬化条件で樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成することで、CZ銅箔/絶縁層/内層回路基板/絶縁層/CZ銅箔の構造を有するサンプルを作製した。
【0230】
(2)高温高湿環境試験(HAST)前の銅箔密着性(密着性1)の測定
作製したサンプルを150×30mmの小片に切断した。小片の銅箔部分に、カッターを用いて幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれて、銅箔の長さ方向にある一端を剥がしてつかみ具(TSE社製「AC-50C-SL」)で掴み、インストロン万能試験機を用いて、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重をJIS C6481に準拠して測定した。こうして測定された荷重を、「密着性1」と称する。
【0231】
(3)高温高湿環境試験(HAST)後の銅箔密着性(密着性2)の測定
作製したサンプルを150×30mmの小片に切断した。小片の銅箔部分に、カッターを用いて幅10mm、長さ100mmの部分の切込みを入れ、高度加速寿命試験装置(楠本化成社製「PM422」)を用いて、130℃、85%RHの条件で100時間の高温高湿環境試験を実施した。その後、銅箔の長さ方向にある一端を剥がしてつかみ具(TSE社製「AC-50C-SL」)で掴み、インストロン万能試験機を用いて、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重をJIS C6481に準拠して測定した。こうして測定された荷重を、「密着性2」と称する。また、密着性2について、以下の基準で評価した。
◎:0.4kgf/cm以上のもので膨れの無いもの
〇:0.2kgf/cm以上、0.4kgf/cm未満のもので膨れの無いもの
×:0.2kgf/cm未満のもの、もしくは0.2kgf/cm以上であっても膨れのあるもの
【0232】
<誘電正接の測定>
(1)評価用硬化物の作製
樹脂シート1~17から厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを剥離し、各実施例および比較例で使用した支持体を離型面が樹脂組成物と接するように積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより実施した。積層後、190℃のオーブンに投入後90分間の硬化条件で樹脂組成物層を熱硬化させた。熱硬化後、樹脂組成物層の両面の支持体を剥がし、シート状の硬化物を得た。得られた硬化物を「評価用硬化物」と称する。
【0233】
(2)誘電正接の測定
評価用硬化物を長さ80mm、幅2mmに切り出し評価サンプルとした。この評価サンプルについてアジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)社製「HP8362B」を用い空洞共振摂動法により測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電正接を測定した。2つの評価サンプルについて測定を行い、平均値を算出した。また、得られた誘電正接の平均値から以下の基準で評価した。
◎:0.0030以下のもの
〇:0.0030より大きく、0.0050未満
×:0.0050以上のもの
【0234】
<絶縁信頼性の評価>
(1)評価用積層体の作製
櫛歯型電極(ライン/スペース=15μm/15μm)が形成されたイミドフィルムを準備した。樹脂シート1~17を、バッチ式真空加圧ラミネーター(名機製作所社製「MVLP-500」)を用いて、樹脂組成物層がイミドフィルムの回路形成面と接合するように積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより実施した。その後、100℃で30分間、続いて180℃で90分間加熱処理を行い、評価用積層体を得た。
【0235】
(2)絶縁信頼性の評価
得られた評価用積層体の初期絶縁抵抗値を測定した後、130℃、湿度85%の雰囲気下の高温高湿槽に入れ、電圧3.3Vを荷電し、300時間、槽内にて、130℃、85%RHの条件下でHAST試験を行った。300時間経過後の評価用積層体の絶縁抵抗値を測定し、以下の基準で評価した。
〇:300時間経過後の絶縁抵抗値が初期絶縁抵抗値の50%を超える。
×:300時間経過後の絶縁抵抗値が初期絶縁抵抗値の50%以下。
【0236】
【0237】
比較例3は密着性1及び密着性2の測定をすることができたが、絶縁層とCZ銅箔の界面に膨れの発生を確認した。
【0238】
各実施例において、(A-2)成分、(C)成分~及び(I)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。