(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/039 20060101AFI20240326BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240326BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G03F7/039 601
G03F7/004 503A
G03F7/004 501
G03F7/20 501
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2020074996
(22)【出願日】2020-04-20
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2019111487
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】錦織 克聡
(72)【発明者】
【氏名】丸山 研
(72)【発明者】
【氏名】笠原 一樹
(72)【発明者】
【氏名】古川 剛
(72)【発明者】
【氏名】木下 奈津子
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/070327(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/230334(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/030445(WO,A1)
【文献】特開2016-197176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/039
G03F 7/004
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール性水酸基を含む第1構造単位、下記式(1)で表される基を含む第2構造単位及び酸解離性基を含む第3構造単位を有する重合体と、
感放射線性酸発生体と、
下記式(2)で表される化合物と
を含有する感放射線性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又は炭素数1~10の1価のフッ素化炭化水素基である。但し、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6のうちの少なくとも1つはフッ素原子又はフッ素化炭化水素基である。R
Aは、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。*は、上記第2構造単位における上記式(1)で表される基以外の部分との結合部位を示す。)
【化2】
(式(2)中、R
7
及びR
9は
、フッ素原
子であ
り、R
8
は、エステル構造及びケトン構造から選ばれる少なくとも1種を含む炭素数1~40の1価の有機基である。A
+は、1価の感放射線性オニウムカチオンである。)
【請求項2】
上記重合体における上記第3構造単位の含有割合が上記重合体を構成する全構造単位に対して30モル%以上80モル%以下である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
上記第1構造単位が下記式(3)で表される請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化3】
(式(3)中、R
10は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R
11は、単結合、-O-、-COO-又は-CONH-である。Arは、環員数6~20のアレーンから(p+q+1)個の芳香環上の水素原子を除いた基である。pは、0~10の整数である。pが1の場合、R
12は、炭素数1~20の1価の有機基又はハロゲン原子である。pが2以上の場合、複数のR
12は互いに同一又は異なり、炭素数1~20の1価の有機基若しくはハロゲン原子であるか、又は複数のR
12のうちの2つ以上が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部である。qは、1~11の整数である。但し、p+qは11以下である。)
【請求項4】
上記第3構造単位が下記式(4-1A)、式(4-1B)、式(4-1C)、式(4-2A)又は式(4-2B)で表される請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【化4】
(式(4-1A)、(4-1B)、(4-1C)、(4-2A)及び(4-2B)中、R
Tは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
式(4-1A)及び(4-1B)中、R
Xは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の1価の炭化水素基である。R
Y及びR
Zは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はR
YとR
Zとが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の脂環構造の一部である。
式(4-1C)中、R
Cは、水素原子である。R
D及びR
Eは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の1価の炭化水素基である。R
Fは、R
C、R
D及びR
Eがそれぞれ結合する炭素原子と共に環員数4~20の不飽和脂環構造を構成する炭素数1~20の2価の炭化水素基である。
式(4-2A)及び(4-2B)中、R
U及びR
Vは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、R
Wは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、R
U及びR
Vが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の脂環構造の一部であるか、又はR
U及びR
Wが互いに合わせられR
Uが結合する炭素原子及びR
Wが結合する酸素原子と共に構成される環員数5~20の脂肪族複素環構造の一部である。)
【請求項5】
極端紫外線露光用又は電子線露光用である請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
基板に直接又は間接に
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の感放射線性樹脂組成物を塗工する工程と、
上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する工程と、
上記露光工程後のレジスト膜を現像する工程と
を備
えるレジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィーによる微細加工に用いられる感放射線性樹脂組成物は、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)等の遠紫外線、極端紫外線(EUV)(波長13.5nm)等の電磁波、電子線等の荷電粒子線などの放射線の照射により露光部に酸を発生させ、この酸を触媒とする化学反応により露光部と未露光部との現像液に対する溶解速度に差を生じさせ、基板上にレジストパターンを形成する。
【0003】
かかる感放射線性組成物には、極端紫外線、電子線等の露光光に対しても感度が良好であることに加え、線幅の均一性を示すLWR(Line Width Roughness)性能にも優れることが要求される。
【0004】
これらの要求に対しては、感放射線性樹脂組成物に用いられる重合体やその他の成分の種類、分子構造などが検討され、さらにその組み合わせについても詳細に検討されている(特開2009-244805号公報、特開2004-012510号公報及び特開2017-141373号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-244805号公報
【文献】特開2004-012510号公報
【文献】特開2017-141373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レジストパターンのさらなる微細化に伴い、露光・現像条件のわずかなブレがレジストパターンの形状や欠陥の発生に及ぼす影響もますます大きくなっている。このようなプロセス条件のわずかなブレを吸収できるようなプロセスウィンドウ(プロセス余裕度)の広い感放射線性樹脂組成物も求められている。しかし、上記従来の感放射線性樹脂組成物ではこれらの要求を満たすことはできていない。
【0007】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能に優れ、かつプロセスウィンドウが広いレジストパターンを形成することができる感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、フェノール性水酸基を含む第1構造単位、下記式(1)で表される基を含む第2構造単位及び酸解離性基を含む第3構造単位を有する重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)と、感放射線性酸発生体(以下、「[B]酸発生体」ともいう)と、下記式(2)で表される化合物(以下、「[C]化合物」ともいう)とを含有する感放射線性樹脂組成物である。
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又は炭素数1~10の1価のフッ素化炭化水素基である。但し、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6のうちの少なくとも1つはフッ素原子又はフッ素化炭化水素基である。R
Aは、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。*は、上記第2構造単位における上記式(1)で表される基以外の部分との結合部位を示す。)
【化2】
(式(2)中、R
7、R
8及びR
9は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子若しくは炭素数1~40の1価の有機基であるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の環構造の一部である。A
+は、1価の感放射線性オニウムカチオンである。)
【0009】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、基板に直接又は間接に当該感放射線性樹脂組成物を塗工する工程と、上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する工程と、上記露光工程後のレジスト膜を現像する工程とを備えるレジストパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法によれば、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能に優れ、かつプロセスウィンドウが広いレジストパターンを形成することができる。したがって、これらは、今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイスの加工プロセス等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<感放射線性樹脂組成物>
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体と[B]酸発生体と[C]化合物とを含有する。当該感放射線性樹脂組成物は、好適成分として溶媒(以下、「[D]有機溶媒」ともいう)を含有していてもよく、また、本発明の効果を損なわない範囲においてその他の任意成分を含有していてもよい。
【0012】
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体と[B]酸発生体と[C]化合物とを含有することで、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能に優れ、かつプロセスウィンドウが広いレジストパターンを形成することができる。当該感放射線性樹脂組成物が上記構成を備えることで上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。すなわち、当該感放射線性樹脂組成物が含有する[A]重合体は、フェノール性水酸基を含む第1構造単位及び上記式(1)で表される基を含む第2構造単位を有することにより、現像液に対する溶解性が向上する。さらに、当該感放射線性樹脂組成物が[C]化合物を含有することにより、現像液に対する溶解性がさらに向上する。その結果、当該感放射線性樹脂組成物により、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能に優れ、かつプロセスウィンドウが広いレジストパターンを形成することができると考えられる。
【0013】
以下、当該感放射線性樹脂組成物が含有する各成分について説明する。
【0014】
<[A]重合体>
[A]重合体は、フェノール性水酸基を含む第1構造単位(以下、単に「第1構造単位」ともいう)、上記式(1)で表される基を含む第2構造単位(以下、単に「第2構造単位」ともいう)及び酸解離性基を含む第3構造単位(以下、単に「第3構造単位」ともいう)を有する。[A]重合体は、上記第1構造単位、第2構造単位及び第3構造単位以外のその他の構造単位を有していてもよい。[A]重合体は、各構造単位を1種又は2種以上有していてもよい。
【0015】
以下、[A]重合体が有する各構造単位について説明する。
【0016】
[第1構造単位]
第1構造単位は、フェノール性水酸基を含む構造単位である。「フェノール性水酸基」とは、ベンゼン環に直結するヒドロキシ基に限らず、芳香環に直結するヒドロキシ基全般を指す。[A]重合体が第1構造単位を有することで、レジスト膜の親水性を高めることができ、現像液に対する溶解性を適度に調整することができ、加えて、レジストパターンの基板への密着性を向上させることができる。また、後述するレジストパターン形成方法における露光工程で照射する放射線として極端紫外線又は電子線を用いる場合には、露光光に対する感度をより向上させることができる。
【0017】
第1構造単位としては、例えば下記式(3)で表される構造単位などが挙げられる。
【0018】
【0019】
上記式(3)中、R10は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R11は、単結合、-O-、-COO-又は-CONH-である。Arは、環員数6~20のアレーンから(p+q+1)個の芳香環上の水素原子を除いた基である。pは、0~10の整数である。pが1の場合、R12は、炭素数1~20の1価の有機基又はハロゲン原子である。pが2以上の場合、複数のR12は互いに同一又は異なり、炭素数1~20の1価の有機基若しくはハロゲン原子であるか、又は複数のR12のうちの2つ以上が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部である。qは、1~11の整数である。但し、p+qは11以下である。
【0020】
R10としては、第1構造単位を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0021】
R11が-COO-である場合、オキシ酸素原子がArと結合することが好ましく、R11が-CONH-である場合、窒素原子がArと結合することが好ましい。すなわち、**がArとの結合部位を示すとすると、-COO-は、-COO-**であることが好ましく、-CONH-は、-CONH-**であることが好ましい。R11としては、単結合又は-COO-が好ましく、単結合がより好ましい。
【0022】
「環員数」とは、脂環構造、芳香族炭素環構造、脂肪族複素環構造及び芳香族複素環構造の環を構成する原子数をいい、多環の場合は、この多環を構成する原子数をいう。
【0023】
Arを与える環員数6~20のアレーンとしては、例えば例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、ピレン等が挙げられる。Arとしては、ベンゼン又はナフタレンが好ましく、ベンゼンがより好ましい。
【0024】
「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。「炭素数」とは、基を構成する炭素原子数をいう。R12で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば炭素数1~20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素-炭素間に2価のヘテロ原子含有基を含む基(α)、上記炭化水素基及び上記2価のヘテロ原子含有基を含む基が有する水素原子の一部又は全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基(β)、上記炭化水素基、基(α)又は基(β)と2価のヘテロ原子含有基とを組み合わせた基(γ)などが挙げられる。
【0025】
「炭化水素基」には、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が含まれる。この「炭化水素基」は、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよい。「鎖状炭化水素基」とは、環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された炭化水素基をいい、直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基の両方を含む。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基をいい、単環の脂環式炭化水素基及び多環の脂環式炭化水素基の両方を含む。但し、脂環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基をいう。但し、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環構造を含んでいてもよい。
【0026】
炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0027】
炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基等のアルキル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
【0028】
炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の脂環式飽和炭化水素基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基、テトラシクロドデセニル基等の脂環式不飽和炭化水素基などが挙げられる。
【0029】
炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0030】
1価及び2価のヘテロ原子含有基を構成するヘテロ原子としては、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、ハロゲン原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0031】
2価のヘテロ原子含有基としては、例えば-O-、-CO-、-S-、-CS-、-NR’-、これらのうちの2つ以上を組み合わせた基等が挙げられる。R’は、水素原子又は1価の炭化水素基である。
【0032】
R12としては、1価の炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0033】
複数のR12のうちの2つ以上が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~20の環構造としては、例えばシクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造等の脂環構造などが挙げられる。
【0034】
pとしては、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0035】
qとしては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましい。
【0036】
第1構造単位としては、例えば下記式(3-1)~(3-12)で表される構造単位などが挙げられる。
【0037】
【0038】
上記式(3-1)~(3-12)中、R10は、上記式(3)と同義である。
【0039】
第1構造単位としては、上記式(3-1)又は(3-2)で表される構造単位が好ましい。
【0040】
[A]重合体における第1構造単位の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、15モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましく、25モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、70モル%が好ましく、65モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましく、55モル%が特に好ましい。第1構造単位の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物により形成されるレジストパターンの露光光に対する感度及びLWR性能をより向上させることができ、プロセスウィンドウをより拡張させることができる。
【0041】
[第2構造単位]
第2構造単位は、下記式(1)で表される基を含む構造単位である。
【0042】
【0043】
上記式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又は炭素数1~10の1価のフッ素化炭化水素基である。但し、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうちの少なくとも1つはフッ素原子又はフッ素化炭化水素基である。RAは、水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。*は、上記第2構造単位における上記式(1)で表される基以外の部分との結合部位を示す。
【0044】
R1、R2、R3、R4、R5及びR6で表される炭素数1~10の1価のフッ素化炭化水素基におけるフッ素原子で置換される炭化水素基としては、例えば上記式(3)のR12として例示した炭化水素基と同様の基などが挙げられる。具体的には、炭素数1~10の1価のフッ素化炭化水素基としては、炭素数1~10のフッ素化アルキル基などが挙げられる。
【0045】
RAで表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば上記式(3)のR12として例示した1価の有機基と同様の基などが挙げられる。
【0046】
R1、R2、R3、R4、R5及びR6としては、フッ素原子又は炭素数1~10の1価のフッ素化炭化水素基が好ましく、フッ素原子又は炭素数1~10の1価のフッ素化アルキル基がより好ましく、フッ素原子がさらに好ましい。
【0047】
R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうちの少なくとも1つはフッ素原子又はフッ素化炭化水素基であり、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうちの少なくとも2つがフッ素原子又はフッ素化炭化水素基であることが好ましく、R1、R2及びR3のうちの少なくとも2つ並びにR4、R5及びR6のうちの少なくとも2つがフッ素原子又はフッ素化炭化水素基であることがより好ましく、R1、R2、R3、R4、R5及びR6がフッ素原子又はフッ素化炭化水素基であることがさらに好ましく、R1、R2、R3、R4、R5及びR6がフッ素原子であることが特に好ましい。
【0048】
RAとしては、水素原子が好ましい。
【0049】
第2構造単位としては、下記式(1-1)又は(1-2)で表される構造単位などが挙げられる。
【0050】
【0051】
上記式(1-1)及び(1-2)中、Ra1は、それぞれ独立して、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Xは、上記式(1)で表される基である。
【0052】
上記式(1-1)中、Lは、単結合又は-COO-である。Ra2は、炭素数1~20の(n+1)価の有機基である。nは、1~3の整数である。nが2以上の場合、複数のXは互いに同一又は異なる。
【0053】
上記式(1-2)中、Ra3は、炭素数1~10の2価の炭化水素基である。Ra4は、炭素数1~20の1価の炭化水素基である。Ra5及びRa6は、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~10の1価の炭化水素基であるか、又はRa5及びRa6が互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の環構造の一部である。
【0054】
Ra1としては、第2構造単位を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0055】
Lとしては、-COO-が好ましい。Lが-COO-である場合、オキシ酸素原子がRa2と結合することが好ましい。すなわち、***がRa2との結合部位を示すとすると、-COO-は、-COO-***であることが好ましい。
【0056】
Ra2としては、例えば上記式(3)のR12として例示した1価の有機基からn個の水素原子を除いた基などが挙げられる。Ra2としては、炭化水素基が好ましく、鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基がより好ましく、飽和の鎖状炭化水素基又は脂環式飽和炭化水素基がさらに好ましく、脂環式飽和炭化水素基が特に好ましい。
【0057】
nとしては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0058】
Ra3としては、例えば上記式(3)のR12として例示した1価の炭化水素基から1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。Ra3としては、鎖状炭化水素基が好ましく、飽和の鎖状炭化水素基がより好ましい。
【0059】
Ra4としては、例えば上記式(3)のR12として例示した炭化水素基と同様の基などが挙げられる。Ra4としては、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基が好ましく、アリール基がより好ましい。
【0060】
Ra5及びRa6で表される炭素数1~10の1価の炭化水素基としては、例えば上記式(3)のR12として例示した炭化水素基と同様の基などが挙げられる。Ra5及びRa6としては、水素原子が好ましい。
【0061】
Ra5及びRa6が互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の環構造としては、例えば環員数3~20の脂環構造などが挙げられる。
【0062】
第2構造単位のうち、上記式(1-1)で表される構造単位としては、例えば下記式(1-1-1)~(1-1-3)で表される構造単位などが挙げられる。
【0063】
【0064】
上記式(1-1-1)~(1-1-3)中、Ra1は、上記式(1-1)と同義である。
【0065】
第2構造単位のうち、上記式(1-2)で表される構造単位としては、例えば下記式(1-2-1)で表される構造単位などが挙げられる。
【0066】
【0067】
上記式(1-2-1)中、Ra1は、上記式(1-2)と同義である。
【0068】
第2構造単位としては、上記式(1-1-1)又は(1-2-1)で表される構造単位が好ましい。
【0069】
[A]重合体における第2構造単位の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、3モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、50モル%が好ましく、45モル%がより好ましく、40モル%がさらに好ましい。第2構造単位の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物により形成されるレジストパターンの露光光に対する感度及びLWR性能をより向上させることができ、プロセスウィンドウをより拡張させることができる。
【0070】
[第3構造単位]
第3構造単位は、酸解離性基を含む構造単位である。「酸解離性基」とは、カルボキシ基、フェノール性水酸基などの水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。[A]重合体が酸解離性基を有する第3構造単位を有することで、露光により[B]酸発生体から発生する酸の作用により露光部において酸解離性基が解離し、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差異が生じることにより、レジストパターンを形成することができる。
【0071】
第3構造単位としては、例えば下記式(4-1A)、(4-1B)、(4-2A)又は(4-2B)で表される構造単位などが挙げられる。なお、下記式(4-1A)~(4-2B)において、カルボキシ基又はフェノール性水酸基に由来するオキシ酸素原子に結合する-CRXRYRZ又は-CRURV(ORW)が酸解離性基である。
【0072】
【0073】
上記式(4-1A)、(4-1B)、(4-1C)、(4-2A)及び(4-2B)中、RTは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0074】
上記式(4-1A)及び(4-1B)中、RXは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の1価の炭化水素基である。RY及びRZは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はRY及びRZが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の脂環構造の一部である。
【0075】
上記式(4-1C)中、RCは、水素原子である。RD及びREは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~20の1価の炭化水素基である。RFは、RC、RD及びREがそれぞれ結合する炭素原子と共に環員数4~20の不飽和脂環構造を構成する炭素数1~20の2価の炭化水素基である。
【0076】
上記式(4-2A)及び(4-2B)中、RU及びRVは、それぞれ独立して、水素原子若しくは炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、RWは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、RU及びRVが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の脂環構造の一部であるか、又はRU及びRWが互いに合わせられRUが結合する炭素原子及びRWが結合する酸素原子と共に構成される環員数5~20の脂肪族複素環構造の一部である。
【0077】
RTとしては、第3構造単位を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0078】
RX、RY、RZ、RD、RE、RU、RV及びRWで表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば上記式(3)のR12として例示した炭化水素基と同様の基などが挙げられる。
【0079】
RFで表される炭素数1~20の2価の炭化水素基としては、例えば上記式(3)のR12として例示した1価の炭化水素基から1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0080】
RY及びRZ又はRU及びRVが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の脂環構造としては、例えばシクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造等の単環の飽和脂環構造、ノルボルナン構造、アダマンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等の多環の飽和脂環構造、シクロプロペン構造、シクロブテン構造、シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造等の単環の不飽和脂環構造、ノルボルネン構造、トリシクロデセン構造、テトラシクロドデセン構造等の多環の不飽和脂環構造などが挙げられる。
【0081】
RU及びRWが互いに合わせられRUが結合する炭素原子及びRWが結合する酸素原子と共に構成される環員数5~20の脂肪族複素環構造としては、例えばオキサシクロブタン構造、オキサシクロペンタン構造、オキサシクロヘキサン構造等の飽和酸素含有複素環構造、オキサシクロブテン構造、オキサシクロペンテン構造、オキサシクロヘキセン構造等の不飽和酸素含有複素環構造などが挙げられる。
【0082】
RFがRC、RD及びREがそれぞれ結合する炭素原子と共に構成する環員数4~20の不飽和脂環構造としては、例えばシクロブテン構造、シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造、ノルボルネン構造等の不飽和脂環構造などが挙げられる。
【0083】
RXとしては、炭化水素基が好ましく、鎖状炭化水素基又は芳香族炭化水素基がより好ましく、アルキル基又はアリール基がさらに好ましい。
【0084】
RY及びRZとしては、炭化水素基が好ましく、鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基がより好ましく、アルキル基又は脂環式飽和炭化水素基がさらに好ましい。
【0085】
RUとしては、水素原子又は炭化水素基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0086】
RV及びRWとしては、炭化水素基が好ましく、鎖状炭化水素基がより好ましい。
【0087】
第3構造単位としては、上記式(4-1A)で表される構造単位が好ましい。
【0088】
[A]重合体における第3構造単位の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、15モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい。第3構造単位の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物により形成されるレジストパターンの露光光に対する感度及びLWR性能をより向上させることができ、プロセスウィンドウをより拡張させることができる。
【0089】
[その他の構造単位]
その他の構造単位としては、例えばラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又はこれらの組み合わせを含む構造単位、第2構造単位以外のアルコール性水酸基を含む構造単位、ベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位などが挙げられる。[A]重合体は、これらのその他の構造単位をさらに有することで現像液への溶解性をより一層適度に調整することができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物により形成されるレジストパターンの露光光に対する感度及びLWR性能をより一層向上させることができ、プロセスウィンドウをより一層拡張させることができる。また、レジストパターンと基板との密着性をより一層向上させることもできる。
【0090】
ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又はこれらの組み合わせを含む構造単位としては、例えば下記式で表される構造単位などが挙げられる。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
上記式中、RL1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0096】
ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又はこれらの組み合わせを含む構造単位としては、ラクトン構造を含む構造単位が好ましく、ノルボルナンラクトン構造を含む構造単位がより好ましく、ノルボルナンラクトン-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がさらに好ましい。
【0097】
第2構造単位以外のアルコール性水酸基を含む構造単位としては、例えば下記式で表される構造単位などが挙げられる。
【0098】
【0099】
上記式中、RL2は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0100】
[A]重合体がその他の構造単位を有する場合、その他の構造単位の含有割合の下限としては、[A]重合体における全構造単位に対して、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましい。上記含有割合の上限としては、30モル%が好ましく、20モル%がより好ましい。
【0101】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の下限としては、2,000が好ましく、3,000がより好ましく、4,000がさらに好ましく、5,000が特に好ましい。上記Mwの上限としては、11,000が好ましく、10,000がより好ましく、9,000がさらに好ましく、8,000が特に好ましい。[A]重合体のMwを上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の塗工性を向上させることができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物により形成されるレジストパターンの露光光に対する感度及びLWR性能をより向上させることができ、プロセスウィンドウをより拡張させることができる。
【0102】
[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)の上限としては、2.50が好ましく、2.00がより好ましく、1.75がさらに好ましい。上記比の下限としては、通常1.00であり、1.10が好ましく、1.20がより好ましい。[A]重合体のMw/Mnを上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の塗工性をより向上させることができる。
【0103】
本明細書における重合体のMw及びMnは、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
GPCカラム:東ソー(株)の「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本及び「G4000HXL」1本
溶出溶媒 :テトラヒドロフラン
流量 :1.0mL/分
試料濃度 :1.0質量%
試料注入量 :100μL
カラム温度 :40℃
検出器 :示差屈折計
標準物質 :単分散ポリスチレン
【0104】
当該感放射線性樹脂組成物における[A]重合体の含有割合の下限としては、[D]有機溶媒以外の全成分に対して、50質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましく、80質量%が特に好ましい。
【0105】
[A]重合体は、例えば各構造単位を与える単量体を公知の方法で重合することにより合成することができる。
【0106】
<[B]酸発生体>
[B]酸発生体は、放射線の照射により酸を発生する物質である。放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、X線、γ線等の電磁波、電子線、α線等の荷電粒子線などが挙げられる。放射線の照射(露光)により[B]酸発生体から発生した酸により[A]重合体が有する第3構造単位に含まれる酸解離性基が解離してカルボキシ基が生じ、露光部と未露光部との間で[A]重合体の現像液に対する溶解性に差異が生じることにより、レジストパターンを形成することができる。当該感放射線性樹脂組成物における[B]酸発生体の含有形態としては、低分子化合物の形態(以下、「[B]酸発生剤」ともいう)、[A]重合体の一部として組み込まれた形態、又はこれらの両方の形態が挙げられる。
【0107】
酸が酸解離性基を解離させる温度の下限としては、80℃が好ましく、90℃がより好ましく、100℃がさらに好ましい。上記温度の上限としては、130℃が好ましく、120℃がより好ましく、110℃がさらに好ましい。酸が酸解離性基を解離させる時間の下限としては10秒が好ましく、1分がより好ましい。上記時間の上限としては、10分が好ましく、2分がより好ましい。
【0108】
[B]酸発生体から発生する酸としては、例えばスルホン酸、イミド酸などが挙げられる。
【0109】
[B]酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、N-スルホニルオキシイミド化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物などが挙げられる。
【0110】
オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩などが挙げられる。
【0111】
[B]酸発生剤の具体例としては、例えば特開2009-134088号公報の段落[0080]~[0113]に記載されている化合物などが挙げられる。
【0112】
放射線の照射によりスルホン酸を発生する[B]酸発生剤としては、例えば下記式(5)で表される化合物(以下、「化合物(5)」ともいう)などが挙げられる。[B]酸発生剤が下記構造を有することで、[A]重合体との相互作用等により、発生する酸のレジスト膜中の拡散長がより適度に短くなると考えられ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物により形成されるレジストパターンの露光光に対する感度及びLWR性能をより向上させることができ、プロセスウィンドウをより拡張させることができる。
【0113】
【0114】
上記式(5)中、Rp1は、環員数5以上の環構造を含む1価の基である。Rp2は、2価の連結基である。Rp3及びRp4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基又は炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。Rp5及びRp6は、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。np1は、0~10の整数である。np2は、0~10の整数である。np3は、0~10の整数である。但し、np1+np2+np3は、1以上30以下である。np1が2以上の場合、複数のRp2は互いに同一又は異なる。np2が2以上の場合、複数のRp3は互いに同一又は異なり、複数のRp4は互いに同一又は異なる。np3が2以上の場合、複数のRp5は互いに同一又は異なり、複数のRp6は互いに同一又は異なる。T+は、1価の感放射線性オニウムカチオンである。
【0115】
Rp1で表される環員数5以上の環構造を含む1価の基としては、例えば環員数5以上の脂環構造を含む1価の基、環員数5以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基、環員数5以上の芳香族炭素環構造を含む1価の基、環員数5以上の芳香族複素環構造を含む1価の基等が挙げられる。
【0116】
環員数5以上の脂環構造としては、例えばシクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造、シクロノナン構造、シクロデカン構造、シクロドデカン構造等の単環の飽和脂環構造、シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造、シクロヘプテン構造、シクロオクテン構造、シクロデセン構造等の単環の不飽和脂環構造、ノルボルナン構造、アダマンタン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造等の多環の飽和脂環構造、ノルボルネン構造、トリシクロデセン構造等の多環の不飽和脂環構造などが挙げられる。
【0117】
環員数5以上の脂肪族複素環構造としては、例えばヘキサノラクトン構造、ノルボルナンラクトン構造等のラクトン構造、ヘキサノスルトン構造、ノルボルナンスルトン構造等のスルトン構造、オキサシクロヘプタン構造、オキサノルボルナン構造等の酸素原子含有複素環構造、アザシクロヘキサン構造、ジアザビシクロオクタン構造等の窒素原子含有複素環構造、チアシクロヘキサン構造、チアノルボルナン構造等の硫黄原子含有複素環構造などが挙げられる。
【0118】
環員数5以上の芳香族炭素環構造としては、例えばベンゼン構造、ナフタレン構造、フェナントレン構造、アントラセン構造などが挙げられる。
【0119】
環員数5以上の芳香族複素環構造としては、例えばフラン構造、ピラン構造、ベンゾフラン構造、ベンゾピラン構造等の酸素原子含有複素環構造、ピリジン構造、ピリミジン構造、インドール構造等の窒素原子含有複素環構造などが挙げられる。
【0120】
Rp1の環構造の環員数の下限としては、6が好ましく、8がより好ましく、9がさらに好ましく、10が特に好ましい。上記環員数の上限としては、15が好ましく、14がより好ましく、13がさらに好ましく、12が特に好ましい。上記環員数を上記範囲とすることで上述の酸の拡散長をさらに適度に短くすることができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物により形成されるレジストパターンの露光光に対する感度及びLWR性能をより向上させることができ、プロセスウィンドウをより拡張させることができる。
【0121】
Rp1の環構造が有する水素原子の一部又は全部は、置換基で置換されていてもよい。上記置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基等が挙げられる。これらの中でヒドロキシ基が好ましい。
【0122】
Rp1としては、環員数5以上の脂環構造を含む1価の基又は環員数5以上の脂肪族複素環構造を含む1価の基が好ましく、多環の飽和脂環構造を含む1価の基、酸素原子含有複素環構造を含む1価の基又は窒素原子含有複素環構造含む1価の基がより好ましく、アダマンチル基、ノルボルナンスルトン-イル基又はアザシクロヘキサン-イル基がさらに好ましい。
【0123】
Rp2で表される2価の連結基としては、例えばカルボニル基、エーテル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、チオカルボニル基、スルホニル基、2価の炭化水素基等が挙げられる。これらの中で、カルボニルオキシ基、スルホニル基、アルカンジイル基又は2価の脂環式飽和炭化水素基が好ましく、カルボニルオキシ基又はスルホニル基がより好ましい。
【0124】
Rp3及びRp4で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1~20のアルキル基等が挙げられる。Rp3及びRp4で表される炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば炭素数1~20のフッ素化アルキル基等が挙げられる。Rp3及びRp4としては、水素原子、フッ素原子又はフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子又はトリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0125】
Rp5及びRp6で表される炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば炭素数1~20のフッ素化アルキル基等が挙げられる。Rp5及びRp6としては、フッ素原子又はフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子又はトリフルオロメチル基がさらに好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0126】
np1としては、0~5が好ましく、0~2がより好ましく、0又は1がさらに好ましい。
【0127】
np2としては、0~5が好ましく、0~2がより好ましく、0又は1がさらに好ましい。
【0128】
np3の下限としては、1が好ましく、2がより好ましい。np3を1以上とすることで、上記化合物(5)から生じる酸の強さを高めることができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物により形成されるレジストパターンの露光光に対する感度及びLWR性能をより向上させることができ、プロセスウィンドウをより拡張させることができる。np3の上限としては、4が好ましく、3がより好ましく、2がさらに好ましい。
【0129】
np1+np2+np3の下限としては、2が好ましく、4がより好ましい。np1+np2+np3の上限としては、20が好ましく、10がより好ましい。
【0130】
T+で表される1価の感放射線性オニウムカチオンとしては、例えば下記式(r-a)で表されるカチオン(以下、「カチオン(r-a)」ともいう)、下記式(r-b)で表されるカチオン(以下、「カチオン(r-b)」ともいう)、下記式(r-c)で表されるカチオン(以下、「カチオン(r-c)」ともいう)などが挙げられる。
【0131】
【0132】
上記式(r-a)中、RB3及びRB4は、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基である。b3は、0~11の整数である。b3が1の場合、RB5は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。b3が2以上の場合、複数のRB5は、互いに同一又は異なり、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基若しくはハロゲン原子であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部を表す。nbbは、0~3の整数である。
【0133】
上記RB3、RB4及びRB5で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば上記式(3)のR12として例示した有機基と同様の基などが挙げられる。
【0134】
RB3及びRB4としては、炭素数1~20の1価の非置換の炭化水素基又は水素原子が置換基により置換された炭化水素基が好ましく、炭素数6~18の1価の非置換の芳香族炭化水素基又は水素原子が置換基により置換された芳香族炭化水素基がより好ましく、置換又は非置換のフェニル基がさらに好ましく、非置換のフェニル基が特に好ましい。
【0135】
上記RB3及びRB4として表される炭素数1~20の1価の炭化水素基が有する水素原子を置換していてもよい置換基としては、置換若しくは非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基、-OSO2-Rk、-SO2-Rk、-ORk、-COORk、-O-CO-Rk、-O-Rkk-COORk、-Rkk-CO-Rk又は-S-Rkが好ましい。Rkは、炭素数1~10の1価の炭化水素基である。Rkkは、単結合又は炭素数1~10の2価の炭化水素基である。
【0136】
RB5としては、置換若しくは非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基、-OSO2-Rk、-SO2-Rk、-ORk、-COORk、-O-CO-Rk、-O-Rkk-COORk、-Rkk-CO-Rk又は-S-Rkが好ましい。Rkは、炭素数1~10の1価の炭化水素基である。Rkkは、単結合又は炭素数1~10の2価の炭化水素基である。
【0137】
上記式(r-b)中、b4は、0~9の整数である。b4が1の場合、RB6は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。b4が2以上の場合、複数のRB6は、互いに同一又は異なり、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基若しくはハロゲン原子であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部を表す。b5は、0~10の整数である。b5が1の場合、RB7は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。b5が2以上の場合、複数のRB7は、互いに同一又は異なり、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基若しくはハロゲン原子であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子若しくは炭素鎖と共に構成される環員数3~20の環構造の一部を表す。nb2は、0~3の整数である。RB8は、単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。nb1は、0~2の整数である。
【0138】
上記RB6及びRB7としては、置換若しくは非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基、-ORk、-COORk、-O-CO-Rk、-O-Rkk-COORk又は-Rkk-CO-Rkが好ましい。Rkは、炭素数1~10の1価の炭化水素基である。Rkkは、単結合又は炭素数1~10の2価の炭化水素基である。
【0139】
上記式(r-c)中、b6は、0~5の整数である。b6が1の場合、RB9は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。b6が2以上の場合、複数のRB9は、互いに同一又は異なり、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基若しくはハロゲン原子であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部を表す。b7は、0~5の整数である。b7が1の場合、RB10は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。b7が2以上の場合、複数のRB10は、互いに同一又は異なり、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基若しくはハロゲン原子であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~20の環構造の一部を表す。
【0140】
上記RB9及びRB10としては、置換若しくは非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基、-OSO2-Rk、-SO2-Rk、-ORk、-COORk、-O-CO-Rk、-O-Rkk-COORk、-Rkk-CO-Rk、-S-Rk又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造が好ましい。Rkは、炭素数1~10の1価の炭化水素基である。Rkkは、単結合又は炭素数1~10の2価の炭化水素基である。
【0141】
RB5、RB6、RB7、RB9及びRB10で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等の直鎖状のアルキル基、i-プロピル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等の分岐状のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0142】
RB8で表される2価の有機基としては、例えば上記式(r-a)のRB3、RB4及びRB5として例示した炭素数1~20の1価の有機基から1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0143】
上記RB5、RB6、RB7、RB9及びRB10で表される炭化水素基が有する水素原子を置換していてもよい置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基等が挙げられる。これらの中で、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0144】
RB5、RB6、RB7、RB9及びRB10としては、非置換の直鎖状若しくは分岐状の1価のアルキル基、1価のフッ素化アルキル基、非置換の1価の芳香族炭化水素基、-OSO2-Rk又は-SO2-Rkが好ましく、フッ素化アルキル基又は非置換の1価の芳香族炭化水素基がより好ましく、フッ素化アルキル基がさらに好ましい。
【0145】
式(r-a)におけるb3としては、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。nbbとしては、0又は1が好ましく、0がより好ましい。式(r-b)におけるb4としては、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。b5としては、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。nb2としては、2又は3が好ましく、2がより好ましい。nb1としては、0又は1が好ましく、0がより好ましい。式(r-c)におけるb6及びb7としては、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0146】
T+としては、これらの中で、カチオン(r-a)が好ましく、トリフェニルスルホニウムカチオンがより好ましい。
【0147】
[B]酸発生剤としては、スルホン酸を発生する酸発生剤として、例えば下記式(5-1)~(5-5)で表される化合物(以下、「化合物(5-1)~(5-5)」ともいう)などが挙げられる。
【0148】
【0149】
上記式(5-1)~(5-5)中、T+は、1価の感放射線性オニウムカチオンである。
【0150】
[B]酸発生体が[B]酸発生剤である場合、当該感放射線性樹脂組成物における[B]酸発生剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、1質量部がより好ましく、5質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、70質量部が好ましく、50質量部がより好ましく、40質量部がさらに好ましく、30質量部が特に好ましい。[B]酸発生剤の含有量を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物により形成されるレジストパターンの露光光に対する感度及びLWR性能をより一層向上させることができ、プロセスウィンドウをより一層拡張させることができる。
【0151】
<[C]化合物>
[C]化合物は、下記式(2)で表される化合物である。[C]化合物は、酸拡散制御剤として作用する。酸拡散制御剤は、露光により[B]酸発生体等から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を制御する効果を奏する。当該感放射線性樹脂組成物は[C]化合物を含有することにより、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能に優れ、かつプロセスウィンドウが広いレジストパターンを形成することができる。
【0152】
【0153】
上記式(2)中、R7、R8及びR9は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子若しくは炭素数1~40の1価の有機基であるか、又はこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の環構造の一部である。A+は、1価の感放射線性オニウムカチオンである。
【0154】
R7、R8及びR9で表される炭素数1~40の1価の有機基としては、例えば上記式(3)のR12として例示した1価の有機基と同様の基などが挙げられる。
【0155】
R7、R8及びR9のうちの2つ以上が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~20の環構造としては、例えば環員数3~20の脂環構造、環員数4~20の脂肪族複素環構造、環員数6~20の芳香族炭素環構造、環員数6~20の芳香族複素環構造などが挙げられる。
【0156】
環員数3~20の脂環構造、環員数4~20の脂肪族複素環構造、環員数6~20の芳香族炭素環構造及び環員数6~20の芳香族複素環構造としては、例えば上記式(5)のRp1としてそれぞれ例示した脂肪族複素環構造、脂肪族複素環構造、芳香族炭素環構造及び芳香族複素環構造と同様の環構造などが挙げられる。
【0157】
A+で表される1価の感放射線性オニウムカチオンとしては、例えば上記式(5)のT+として例示した1価の感放射線性オニウムカチオンなどが挙げられる。
【0158】
R7、R8及びR9としては、これらのうち少なくとも1つがフッ素原子であることが好ましく、これらのうち2つがフッ素原子であることがより好ましく、R7及びR9がフッ素原子であることがさらに好ましい。
【0159】
R8としては、炭素数1~40の1価の有機基が好ましい。なかでも、フッ素原子以外のヘテロ原子を含む炭素数1~40の1価の有機基がより好ましい。フッ素原子以外のヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられ、酸素原子が好ましい。R8はエステル構造、ケトン構造及び水酸基から選ばれる少なくとも1種を含む炭素数1~40の1価の有機基であることが更に好ましい。またR8は、環構造を有する炭素数1~40の1価の有機基であることも好ましい。このような環構造としては脂環構造、芳香族炭素環構造、脂肪族複素環構造、芳香族複素環構造が挙げられ、具体的な環構造は前記と同様である。中でも環構造としては脂環構造が好ましく、シクロアルキル環、アダマンタン環がより好ましい。あるいはR8は、フッ素原子を含まない炭素数1~40の1価の有機基であることも好ましい。R7及びR9がフッ素原子であり、且つR8がこのような態様であることが特に好ましい。
【0160】
A+としては、上記カチオン(r-a)、上記カチオン式(r-b)又は上記カチオン(r-c)が好ましく、上記カチオン(r-a)又は上記カチオン(r-b)がより好ましく、上記カチオン(r-a)がさらに好ましく、トリフェニルスルホニウムカチオンが特に好ましい。
【0161】
[C]化合物としては、例えば下記式(2-1)~(2-15)で表される化合物(以下、「化合物(2-1)~(2-15)」ともいう)などが挙げられる。
【0162】
【0163】
上記式(2-1)~(2-15)中、A+は、上記式(2)と同義である。
【0164】
[C]化合物としては、上記化合物(2-1)~(2-7)が好ましい。
【0165】
当該感放射線性樹脂組成物における[C]化合物の含有割合の下限としては、[B]酸発生剤100モル%に対して、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、200モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、50モル%がさらに好ましい。[C]化合物の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物により形成されるレジストパターンの露光光に対する感度及びLWR性能をより向上させることができ、プロセスウィンドウをより拡張させることができる。
【0166】
<[D]有機溶媒>
当該感放射線性樹脂組成物は、通常[D]有機溶媒を含有する。[D]有機溶媒は、少なくとも[A]重合体、[B]酸発生体、[C]化合物及び所望により含有される任意成分を溶解又は分散可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0167】
[D]有機溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0168】
アルコール系溶媒としては、例えば4-メチル-2-ペンタノール、n-ヘキサノール等の炭素数1~18の脂肪族モノアルコール系溶媒、シクロヘキサノール等の炭素数3~18の脂環式モノアルコール系溶媒、1,2-プロピレングリコール等の炭素数2~18の多価アルコール系溶媒、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル等の炭素数3~19の多価アルコール部分エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0169】
エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒、ジフェニルエーテル、アニソール等の芳香環含有エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0170】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、2-ヘプタノン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶媒、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノンなどが挙げられる。
【0171】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等の環状アミド系溶媒、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒などが挙げられる。
【0172】
エステル系溶媒としては、例えば酢酸n-ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶媒、γ-ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系溶媒、酢酸プロピレングリコール等の多価アルコールカルボキシレート系溶媒、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒、シュウ酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒などが挙げられる。
【0173】
炭化水素系溶媒としては、例えばn-ペンタン、n-ヘキサン等の炭素数5~12の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン等の炭素数6~16の芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。
【0174】
[D]有機溶媒としては、アルコール系溶媒又はエステル系溶媒が好ましく、炭素数3~19の多価アルコール部分エーテル系溶媒又は多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒がより好ましく、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル又は酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルがさらに好ましい。[D]有機溶媒は、1種又は2種以上を含有することができる。
【0175】
当該感放射線性樹脂組成物が[D]有機溶媒を含有する場合、[D]有機溶媒の含有割合の下限としては、当該感放射線性樹脂組成物に含有される全成分に対して、50質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、70質量%がさらに好ましく、80質量%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、99.9質量%が好ましく、99.5質量%が好ましく、99.0質量%がさらに好ましい。
【0176】
<その他の任意成分>
その他の任意成分としては、例えば[C]化合物以外の他の酸拡散制御体、界面活性剤などが挙げられる。当該感放射線性樹脂組成物は、その他の任意成分をそれぞれ1種又は2種以上含有していてもよい。
【0177】
[[C]化合物以外の他の酸拡散制御体]
当該感放射線性樹脂組成物における[C]化合物以外の他の酸拡散制御体の含有形態としては、低分子化合物(以下、「他の酸拡散制御剤」ともいう)の形態、[A]重合体等の重合体の一部として組み込まれた形態、又はこれらの両方の形態が挙げられる。
【0178】
他の酸拡散制御剤としては、窒素原子含有化合物、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基(但し、[C]化合物に該当するものを除く)などが挙げられる。
【0179】
窒素原子含有化合物としては、例えばトリペンチルアミン、トリオクチルアミン等のアミン化合物、ホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド基含有化合物、尿素、1,1-ジメチルウレア等のウレア化合物、ピリジン、N-(ウンデシルカルボニルオキシエチル)モルホリン、N-t-ペンチルオキシカルボニル-4-ヒドロキシピペリジン等の含窒素複素環化合物などが挙げられる。
【0180】
光崩壊性塩基としては、例えば露光により分解するオニウムカチオンと弱酸のアニオンとを含む化合物(但し、[C]化合物に該当するものを除く)などが挙げられる。
【0181】
当該感放射線性樹脂組成物が他の酸拡散制御剤を含有する場合、当該感放射線性樹脂組成物における他の酸拡散制御剤の含有割合の下限としては、[B]酸発生剤100モル%に対して、1モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、200モル%が好ましく、100モル%がより好ましく、50モル%がさらに好ましい。
【0182】
[界面活性剤]
界面活性剤は、塗工性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn-オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn-ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤などが挙げられる。市販品としては、KP341(信越化学工業(株))、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学(株))、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ(株))、メガファックF171、同F173(以上、DIC(株))、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム(株))、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、同SC-101、同SC-102、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC-106(以上、旭硝子工業(株))などが挙げられる。
【0183】
当該感放射線性樹脂組成物が界面活性剤を含有する場合、当該感放射線性樹脂組成物における界面活性剤の含有量の上限としては、[A]重合体100質量部に対して、2質量部が好ましい。上記含有量の下限としては、例えば0.1質量部である。
【0184】
<感放射線性樹脂組成物の調製方法>
当該感放射線性樹脂組成物は、例えば[A]重合体、[B]酸発生体、[C]化合物及び必要に応じて、[D]有機溶媒及びその他の任意成分などを所定の割合で混合し、好ましくは得られた混合物を孔径0.2μm以下のメンブランフィルターでろ過することにより調製することができる。
【0185】
当該感放射線性樹脂組成物は、アルカリ現像液を用いるポジ型パターン形成用にも、有機溶媒含有現像液を用いるネガ型パターン形成用にも用いることができる。
【0186】
当該感放射線性樹脂組成物は、後述するレジストパターン形成方法における露光工程で照射する放射線(露光光)による露光用である。露光光の中でも極端紫外線(EUV)又は電子線は比較的高いエネルギーを有するが、当該感放射線性樹脂組成物によれば、露光光として極端紫外線又は電子線を用いた場合であっても、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能に優れ、かつプロセスウィンドウが広いレジストパターンを形成することができる。したがって、当該感放射線性樹脂組成物は、極端紫外線露光用又は電子線露光用として特に好適に用いることができる。
【0187】
<レジストパターン形成方法>
当該レジストパターン形成方法は、基板に直接又は間接に当該感放射線性樹脂組成物を塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう)と、上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)と、上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)とを備える。
【0188】
当該レジストパターン形成方法によれば、塗工工程において当該感放射線性樹脂組成物を用いることにより、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能に優れ、かつプロセスウィンドウが広いレジストパターンを形成することができる。
【0189】
以下、当該レジストパターン形成方法が備える各工程について説明する。
【0190】
[塗工工程]
本工程では、基板に直接又は間接に当該感放射線性樹脂組成物を塗工する。これによりレジスト膜が形成される。基板としては、例えばシリコンウエハ、二酸化シリコン、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知のもの等が挙げられる。また、下層膜として、例えば特公平6-12452号公報や特開昭59-93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の反射防止膜を基板上に形成してもよい。塗工方法としては、例えば回転塗工(スピンコーティング)、流延塗工、ロール塗工等が挙げられる。塗工した後に、必要に応じて、塗膜中の溶媒を揮発させるため、プレベーク(PB)を行ってもよい。PBの温度の下限としては、60℃が好ましく、80℃がより好ましい。上記温度の上限としては、150℃が好ましく、140℃がより好ましい。PBの時間の下限としては、5秒が好ましく、10秒がより好ましい。上記時間の下限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。形成されるレジスト膜の平均厚みの下限としては、10nmが好ましく、20nmがより好ましい。上記平均厚みの上限としては、1,000nmが好ましく、500nmがより好ましい。
【0191】
[露光工程]
本工程では、上記塗工工程により形成されたレジスト膜を露光する。この露光は、フォトマスクを介して(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)露光光を照射することにより行う。露光光としては、目的とするパターンの線幅等に応じて、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV)、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線などが挙げられる。これらの中でも、遠紫外線、EUV又は電子線が好ましく、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、EUV又は電子線がより好ましく、ArFエキシマレーザー光、EUV又は電子線がさらに好ましく、EUV又は電子線が特に好ましい。なお、露光量等の露光条件は、当該感放射線性樹脂組成物の配合組成、添加剤の種類、露光光の種類等に応じて適宜選定することができる。
【0192】
上記露光の後、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行い、レジスト膜の露光された部分において、露光により[B]酸発生体等から発生した酸による[A]重合体が有する酸解離性基の解離を促進させることが好ましい。このPEBによって、露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性の差異を増大させることができる。PEBの温度の下限としては、50℃が好ましく、80℃がより好ましく、90℃がさらに好ましい。上記温度の上限としては、180℃が好ましく、130℃がより好ましい。PEBの時間の下限としては、5秒が好ましく、10秒がより好ましく、30秒がさらに好ましい。上記時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましく、100秒がさらに好ましい。
【0193】
[現像工程]
本工程では、上記露光されたレジスト膜を現像する。これにより、所定のレジストパターンを形成することができる。現像後は、水又はアルコール等のリンス液で洗浄し、乾燥することが一般的である。現像工程における現像方法は、アルカリ現像であっても、有機溶媒現像であってもよい。
【0194】
アルカリ現像の場合、現像に用いる現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等が挙げられる。これらの中で、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
【0195】
有機溶媒現像の場合、現像液としては、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒等の有機溶媒、上記有機溶媒を含有する溶媒等が挙げられる。上記有機溶媒としては、例えば上述の感放射線性樹脂組成物の[D]有機溶媒として例示した溶媒の1種又は2種以上等が挙げられる。これらの中でも、エステル系溶媒又はケトン系溶媒が好ましい。エステル系溶媒としては、酢酸エステル系溶媒が好ましく、酢酸n-ブチルがより好ましい。ケトン系溶媒としては、鎖状ケトンが好ましく、2-ヘプタノンがより好ましい。現像液中の有機溶媒の含有量の下限としては、80質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましく、99質量%が特に好ましい。現像液中の有機溶媒以外の成分としては、例えば水、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0196】
現像方法としては、例えば現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出し続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0197】
当該レジストパターン形成方法により形成されるパターンとしては、例えばラインアンドスペースパターン、ホールパターン等が挙げられる。
【実施例】
【0198】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0199】
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分散度(Mw/Mn)]
重合体のMw及びMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、東ソー(株)のGPCカラム(「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本、及び「G4000HXL」1本)を使用し、以下の条件により測定した。また、分散度(Mw/Mn)は、Mw及びMnの測定結果より算出した。
【0200】
溶出溶媒 :テトラヒドロフラン
流量 :1.0mL/分
試料濃度 :1.0質量%
試料注入量:100μL
カラム温度:40℃
検出器 :示差屈折計
標準物質 :単分散ポリスチレン
【0201】
[重合体の各構造単位の含有割合]
重合体の各構造単位の含有割合は、核磁気共鳴装置(日本電子(株)の「JNM-Delta400」)を用いた13C-NMR分析により行った。
【0202】
<[A]重合体の合成>
各実施例及び比較例における各重合体の合成で用いた単量体を以下に示す。なお、以下の合成例においては特に断りのない限り、質量部は使用した単量体の合計質量を100質量部とした場合の値を意味し、モル%は使用した単量体の合計モル数を100モル%とした場合の値を意味する。
【0203】
【0204】
[合成例1]重合体(A-1)の合成
単量体(M-1)、単量体(M-3)及び単量体(M-10)をモル比率が40/40/20(モル%)となるようプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル(200質量部)に溶解し、開始剤としてAIBN(6モル%)を添加し、単量体溶液を調製した。空の反応容器にプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル(100質量部)を入れ、攪拌しながら85℃に加熱した。次に、上記単量体溶液を3時間かけて反応容器に滴下し、さらに85℃で3時間加熱し、上記単量体溶液の滴下開始を重合反応の開始時間として、重合反応を合計6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を室温まで冷却した。冷却した上記重合溶液をヘキサン(重合溶液100質量部に対して500質量部)中に投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末をヘキサン(重合溶液100質量部に対して100質量部)で2回洗浄した後、ろ別し、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル(300質量部)に溶解した。次に、メタノール(500質量部)、トリエチルアミン(50質量部)及び超純水(10質量部)を加え、攪拌しながら70℃で6時間加水分解反応を実施した。加水分解反応終了後、残溶媒を留去し、得られた固体をアセトン(100質量部)に溶解させた。この溶液を500質量部の水に滴下して樹脂を凝固させ、得られた固体をろ別し、50℃で12時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A-1)を得た。重合体(A-1)のMwは5600であり、Mw/Mnは1.62であった。また、13C-NMR分析の結果、(M-1)、(M-3)及び(M-10)に由来する各構造単位の含有割合はそれぞれ42.3モル%、39.8モル%及び17.9モル%であった。
【0205】
[合成例2~8]重合体(A-2)~(A-8)の合成
下記表1に示す種類及び配合割合の単量体を用いたこと以外は合成例1と同様にして、重合体(A-2)~(A-8)を合成した。得られた重合体の各構造単位の含有割合及び物性値(Mw及びMw/Mn)を下記表1に合わせて示す。なお、下記表1における「-」は、該当する単量体を使用しなかったことを示す。
【0206】
[合成例9]重合体(A-9)の合成
下記表1に示す種類及び配合割合の単量体を用いて、特開2009-244805号公報に記載の「ポリマー(B-3-1)」の合成方法と同様の方法により重合体(A-9)を合成した。得られた重合体の各構造単位の含有割合及び物性値(Mw及びMw/Mn)を下記表1に合わせて示す。
【0207】
【0208】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
感放射線性樹脂組成物の調製に用いた[A]重合体以外の成分を以下に示す。なお、以下の実施例及び比較例においては特に断りのない限り、質量部は使用した重合体の質量を100質量部とした場合の値を意味し、モル%は使用した[B]酸発生剤のモル数を100モル%とした場合の値を意味する。
【0209】
[[B]酸発生剤]
B-1~B-4:下記式(B-1)~(B-4)で表される化合物
【0210】
【0211】
[[C]酸拡散制御剤]
C-1~C-9:下記式(C-1)~(C-9)で表される化合物
【0212】
【0213】
[[D]有機溶媒]
D-1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
D-2:プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル
【0214】
[実施例1]
[A]重合体としての(A-1)100質量部、[B]酸発生剤としての(B-1)20質量部、[C]酸拡散制御剤としての(C-1)を20モル%、[D]有機溶媒としての(D-1)4800質量部及び(D-2)2000質量部を混合し、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過することにより、感放射線性樹脂組成物(R-1)を調製した。
【0215】
[実施例2~14及び比較例1~3]
下記表2に示す種類及び含有量の各成分を用いたこと以外は実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物(R-2)~(R-14)及び(CR-1)~(CR-3)を調製した。
【0216】
【0217】
<レジストパターンの形成(EUV露光、アルカリ現像)>
平均厚さ20nmの下層膜(ブルワーサイエンス社の「AL412」)が形成された12インチのシリコンウエハの下層膜上に上記調製した感放射線性樹脂組成物をスピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT12」)を用いて塗布し、130℃で60秒間ソフトベーク(SB)を行った。その後、23℃で30秒間冷却することにより、平均厚さ50nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に対し、EUV露光装置(ASML社の「NEX3300」)を用い、NA=0.33、照明条件:Conventional s=0.89、マスク:imecDEFECT32FFR02にて露光した。露光後、アルカリ現像液として2.38質量%のTMAH溶液を用い、23℃で30秒間現像し、ポジ型のレジストパターン(32nmラインアンドスペースパターン)を形成した。
【0218】
<評価>
上記形成したレジストパターンについて、感度、LWR性能及びプロセスウィンドウを下記方法に従って評価した。レジストパターンの測長には、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクテクノロジー(株)の「CG-4100」)を用いた。評価結果を下記表3に示す。なお、下記表3における「-」は、比較例2において、未露光部までもアルカリ現像液に溶解したことによりレジストパターンが形成されず、各種評価を行うことができなかったことを示す。
【0219】
[感度]
上記レジストパターンの形成において、32nmラインアンドスペースパターンを形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度(mJ/cm2)とした。感度は、30mJ/cm2以下の場合は「良好」と、30mJ/cm2を超える場合は「不良」と評価できる。
【0220】
[LWR性能]
上記走査型電子顕微鏡を用いて上記形成したレジストパターンをレジスタパターンの上部から観察した。線幅を任意箇所で計50点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、この3シグマ値をLWR(nm)とした。LWRは、その値が小さいほどラインのがたつきが小さく、良好であることを示す。LWR性能は、4.0nm以下の場合は「良好」と、4.0nmを超える場合は「不良」と評価できる。
【0221】
[プロセスウィンドウ]
「プロセスウィンドウ」とは、ブリッジ欠陥や倒れのないパターンを形成できるレジスト寸法の範囲を意味する。32nmラインアンドスペースパターン(1L/1S)を形成するマスクを用いて、低露光量から高露光量までのパターンを形成した。一般的に、低露光量の場合にはパターン間におけるブリッジ形成などの欠陥が見られ、高露光量の場合にはパターン倒壊などの欠陥が見られる。これらの欠陥が見られないレジスト寸法の最大値と最小値との差を「CD(Critical Demension)マージン」とした。CDマージンは、その値が大きいほどプロセスウィンドウが広く、良好であることを示す。CDマージンが30nm以上の場合は「良好」と、30nm未満の場合は「不良」と評価できる。
【0222】
【0223】
表3の結果から明らかなように、実施例の感放射線性樹脂組成物は比較例の感放射線性樹脂組成物と比較して、感度、LWR性能及びCDマージンがいずれも良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0224】
本発明の感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法によれば、露光光に対する感度が良好であり、LWR性能に優れ、かつプロセスウィンドウが広いレジストパターンを形成することができる。したがって、これらは、今後さらに微細化が進行すると予想される半導体デバイスの加工プロセス等に好適に用いることができる。