(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 11/42 20060101AFI20240326BHJP
B65H 5/02 20060101ALI20240326BHJP
B41J 11/02 20060101ALI20240326BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240326BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240326BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B41J11/42
B65H5/02 H
B41J11/02
B41J29/38
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/165 207
(21)【出願番号】P 2020076363
(22)【出願日】2020-04-22
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 重春
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-231667(JP,A)
【文献】特開平09-244342(JP,A)
【文献】特開昭62-175773(JP,A)
【文献】特開2003-341106(JP,A)
【文献】特開2011-213095(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0227980(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/42
B65H 5/02
B41J 11/02
B41J 29/38
B41J 2/01
B41J 2/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドと対向する位置に記録媒体を搬送するとともに、ベルト1周の基準を示す基準特定部を有する無端状の搬送ベルトと、
前記搬送ベルトを前記記録媒体の搬送方向に走行させる駆動ローラーと、
前記搬送ベルト上に前記記録媒体を供給する記録媒体供給部と、
前記基準特定部を検知する基準検知センサーと、
前記駆動ローラーおよび前記記録媒体供給部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記記録ヘッドから前記記録媒体に対して前記インクの吐出による画像形成を行う印刷ジョブの終了後、前記搬送ベルトの前記基準特定部が、前記基準検知センサーの検知位置から前記搬送ベルトの前記搬送方向の上流側に特定の距離以上遡った位置で停止するように、前記駆動ローラーを制御して前記搬送ベルトを停止させ、
前記特定の距離は、前記駆動ローラーの駆動によって停止状態の前記搬送ベルトが走行を開始してから所定の搬送速度に到達するまでに前記搬送ベルトが走行する距離であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、異なる印刷ジョブの終了ごとに、前記搬送ベルトの前記基準特定部が、前記搬送方向の上流側または下流側にずれて位置するように、前記駆動ローラーを制御して前記搬送ベルトを停止させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記印刷ジョブの終了後、前記搬送ベルトの前記基準特定部が、前記基準検知センサーの検知位置から前記搬送ベルトの前記搬送方向の上流側に前記特定の距離だけ遡った位置で停止するように、前記駆動ローラーを制御して前記搬送ベルトを停止させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記搬送ベルトは、前記記録媒体への画像形成に寄与するタイミングとは異なるタイミングで前記インクを吐出するフラッシングを前記記録ヘッドが実行したときに、前記インクを通過させる開口部を含む開口部群を、前記搬送方向に異なる間隔で複数箇所に有しており、
前記基準特定部は、前記搬送方向に隣り合う2つの前記開口部群のいずれかの組み合わせで構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記搬送ベルトは、前記記録媒体への画像形成に寄与するタイミングとは異なるタイミングで前記インクを吐出するフラッシングを前記記録ヘッドが実行したときに、前記インクを通過させる開口部を含む開口部群を、前記搬送方向に異なる間隔で複数箇所に有しているとともに、前記基準特定部として、前記開口部群のいずれかと所定の位置関係で位置する少なくとも1個の基準マークを有していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記記録媒体は、前記記録媒体のサイズに応じて決まる載置パターンで前記搬送ベルト上に載置されるように、前記記録媒体供給部によって前記搬送ベルトに順に供給され、
前記基準マークは、前記搬送ベルトにおいて、前記複数の開口部群のうちの特定の開口部群と所定の位置関係で位置しており、
前記特定の開口部群は、前記複数の開口部群のうち、前記記録媒体のサイズごとの各載置パターンの間で、前記搬送方向の上流側の直後に位置する記録媒体の種類が最も多い開口部群であることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記記録媒体は、前記記録媒体のサイズに応じて決まる載置パターンで前記搬送ベルト上に載置されるように、前記記録媒体供給部によって前記搬送ベルトに供給され、
前記基準マークは、前記搬送ベルトにおいて、前記複数の開口部群のうちの特定の開口部群と所定の位置関係で位置しており、
前記特定の開口部群は、予め設定された、使用頻度の最も高い前記記録媒体のサイズに応じた載置パターンで前記記録媒体を前記搬送ベルト上に載置したときに、前記搬送方向の上流側の直後に前記記録媒体が位置する開口部群のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記記録媒体は、前記記録媒体のサイズに応じて決まる載置パターンで前記搬送ベルト上に載置されるように、前記記録媒体供給部によって前記搬送ベルトに順に供給され、
前記搬送ベルトにおいて、前記基準マークは、前記複数の開口部群のそれぞれと所定の位置関係で位置するとともに、前記搬送方向に複数設けられて互いに区別され、
前記制御部は、前記印刷ジョブの終了後、前記複数の開口部群のうちのいずれかに対応する基準マークが、前記基準検知センサーの検知位置から前記搬送ベルトの前記搬送方向の上流側に前記特定の距離以上遡った位置で停止するように、前記駆動ローラーを制御して前記搬送ベルトを停止させることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記基準マークは、前記複数の開口部群のうち、前記記録媒体のサイズごとの各載置パターンの間で、前記搬送方向の上流側の直後に位置する記録媒体の種類が最も多い開口部群に対応する基準マークであることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記基準マークは、前記複数の開口部群のうち、使用頻度が最も高いとして予め設定されたサイズの前記記録媒体を、前記載置パターンに基づいて前記搬送ベルト上に載置したときに、前記搬送方向の上流側の直後に前記記録媒体が位置する開口部群のいずれかに対応する基準マークであることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記基準マークは、前記複数の開口部群のうち、過去の使用履歴に基づいて決定される使用頻度が最も高いサイズの記録媒体を、前記載置パターンに基づいて前記搬送ベルト上に載置したときに、前記搬送方向の上流側の直後に前記記録媒体が位置する開口部群のいずれかに対応する基準マークであることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記基準マークは、前記複数の開口部群のうち、前記搬送ベルトを停止させる直前に前記印刷ジョブが行われた記録媒体のサイズに応じた前記載置パターンに基づいて、前記記録媒体を前記搬送ベルト上に載置するときに、前記搬送方向の上流側の直後に前記記録媒体が位置する開口部群のいずれかに対応する基準マークであることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記基準マークは、次の印刷ジョブで使用する記録媒体のサイズが予め指定されている場合に、前記複数の開口部群のうち、前記記録媒体のサイズに応じた前記載置パターンに基づいて、前記記録媒体を前記搬送ベルト上に載置するときに、前記搬送方向の上流側の直後に前記記録媒体が位置する開口部群のいずれかに対応する基準マークであることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェットプリンターなどのインクジェット記録装置において、インクの乾燥によるノズルの目詰まりを低減または予防するため、定期的にノズルからインクを吐き出すフラッシング(空吐出)が行われている。例えば特許文献1のインクジェット記録装置では、記録媒体を搬送する搬送ベルトに開口部を設け、搬送ベルトの走行によって開口部が記録ヘッドと対向する位置にきたときにフラッシングを行っている。フラッシングのときに記録ヘッドのノズルから吐出されたインクは、搬送ベルトの開口部を通過し、インク受け部材で回収される。上記の搬送ベルトには、開口部を検出するためのマークが設けられており、上記マークの検知をトリガーとしてフラッシングが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通常のインク吐出によって記録媒体に画像を形成する印刷ジョブが終了すると、搬送ベルトはその後停止する。そして、次の印刷ジョブの開始が指示されると、駆動ローラーの駆動により、搬送ベルトは停止状態から走行を開始する。このとき、搬送ベルトが所定の搬送速度に到達する前に(搬送速度の変化の途中で)、レジストローラー対から搬送ベルトに記録媒体を一定速度で供給すると、搬送ベルトの搬送速度と、レジストローラー対による記録媒体の供給速度との間にズレが生じる。その結果、搬送ベルト上の所定の位置(例えばフラッシング用の開口部と搬送方向にずれた位置)に記録媒体を載置したい場合でも、そのような載置が困難となる。
【0005】
したがって、搬送ベルトが走行を開始してから所定の搬送速度に到達していない場合には、駆動ローラーの駆動によって所定の搬送速度に到達するまで、搬送ベルトをさらに走行(周回)させ、搬送ベルトが所定の搬送速度に到達するのを待って、搬送ベルトに記録媒体を供給することが必要である。この場合、搬送ベルトをさらに走行させる間、搬送ベルトへの記録媒体の供給が停止されるため、搬送ベルトへの記録媒体の供給が遅れる。その結果、開始が指示された次の印刷ジョブを早期に完了させることが困難となる。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、次の印刷ジョブを行うときに、搬送ベルトが停止した状態から走行を開始して所定の搬送速度に到達している状態で、記録媒体を搬送ベルトに速やかに供給することができ、これによって上記印刷ジョブを早期に完了させることができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面に係るインクジェット記録装置は、インクを吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドと対向する位置に記録媒体を搬送するとともに、ベルト1周の基準を示す基準特定部を有する無端状の搬送ベルトと、前記搬送ベルトを前記記録媒体の搬送方向に走行させる駆動ローラーと、前記搬送ベルト上に前記記録媒体を供給する記録媒体供給部と、前記基準特定部を検知する基準検知センサーと、前記駆動ローラーおよび前記記録媒体供給部を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記記録ヘッドから前記記録媒体に対して前記インクの吐出による画像形成を行う印刷ジョブの終了後、前記搬送ベルトの前記基準特定部が、前記基準検知センサーの検知位置から前記搬送ベルトの前記搬送方向の上流側に特定の距離以上遡った位置で停止するように、前記駆動ローラーを制御して前記搬送ベルトを停止させる。前記特定の距離は、前記駆動ローラーの駆動によって停止状態の前記搬送ベルトが走行を開始してから所定の搬送速度に到達するまでに前記搬送ベルトが走行する距離である。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、次の印刷ジョブを行うとき、制御部は駆動ローラーを制御することにより、搬送ベルトを停止状態から走行させることができる。このとき、搬送ベルトの走行は、搬送ベルトの基準特定部が基準検知センサーの検知位置から上流側に特定の距離以上遡った位置で停止した状態から開始される。このため、基準検知センサーは、搬送ベルトが所定の搬送速度に到達した状態で搬送ベルトの基準特定部を検知することができる。これにより、制御部は、基準検知センサーの検知結果に基づいて記録媒体供給部を速やかに制御して、記録媒体を搬送ベルト上の所定の位置に速やかに供給させることができる。したがって、搬送ベルトに供給された記録媒体に対して上記印刷ジョブを早期に完了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置としてのプリンターの概略の構成を示す説明図である。
【
図2】上記プリンターが備える記録部の平面図である。
【
図3】上記プリンターの給紙カセットから第1搬送ユニットを介して第2搬送ユニットに至る用紙の搬送経路の周辺の構成を模式的に示す説明図である。
【
図4】上記プリンターの主要部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】上記第1搬送ユニットが有する第1搬送ベルトの一構成例を示す平面図である。
【
図6】
図5の第1搬送ベルトを用いたときの、フラッシング用の開口部群のパターンの一例と、上記パターンに応じて上記第1搬送ベルト上に配置される用紙とを模式的に示す説明図である。
【
図7】上記パターンの他の例と、上記パターンに応じて上記第1搬送ベルト上に配置される用紙とを模式的に示す説明図である。
【
図8】上記パターンのさらに他の例と、上記パターンに応じて上記第1搬送ベルト上に配置される用紙とを模式的に示す説明図である。
【
図9】上記パターンのさらに他の例と、上記パターンに応じて上記第1搬送ベルト上に配置される用紙とを模式的に示す説明図である。
【
図10】印刷ジョブ終了後の上記第1搬送ベルトの停止状態における基準特定部の位置の一例を模式的に示す説明図である。
【
図11】上記第1搬送ベルトが
図10の停止状態から走行を開始し、所定の搬送速度に到達した時点での上記基準特定部の位置を模式的に示す説明図である。
【
図12】印刷ジョブ終了後の上記第1搬送ベルトの停止状態における基準特定部の位置の他の例を模式的に示す説明図である。
【
図13】印刷ジョブ終了後の上記第1搬送ベルトの停止状態における基準特定部の位置のさらに他の例を模式的に示す説明図である。
【
図14】上記第1搬送ベルトが
図3の停止状態から走行を開始し、所定の搬送速度に到達した時点での上記基準特定部の位置を模式的に示す説明図である。
【
図15】上記第1搬送ベルトの他の構成を模式的に示す平面図である。
【
図16】上記第1搬送ベルトのさらに他の構成を模式的に示す平面図である。
【
図17】上記第1搬送ベルトのさらに他の構成を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔1.インクジェット記録装置の構成〕
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置としてのプリンター100の概略の構成を示す説明図である。プリンター100は、用紙収容部である給紙カセット2を備えている。給紙カセット2は、プリンター本体1の内部下方に配置されている。給紙カセット2の内部には、記録媒体の一例である用紙Pが収容されている。
【0011】
給紙カセット2の用紙搬送方向下流側、すなわち
図1における給紙カセット2の右側の上方には給紙装置3が配置されている。この給紙装置3により、用紙Pは
図1において給紙カセット2の右上方に向け、1枚ずつ分離されて送り出される。
【0012】
プリンター100は、その内部に第1用紙搬送路4aを備えている。第1用紙搬送路4aは、給紙カセット2に対してその給紙方向である右上方に位置する。給紙カセット2から送り出された用紙Pは、第1用紙搬送路4aにより、プリンター本体1の側面に沿って垂直上方に搬送される。
【0013】
用紙搬送方向において第1用紙搬送路4aの下流端には、レジストローラー対13が設けられている。さらに、レジストローラー対13の用紙搬送方向下流側直近には、第1搬送ユニット5および記録部9が配置されている。給紙カセット2から送り出された用紙Pは、第1用紙搬送路4aを通ってレジストローラー対13に到達する。レジストローラー対13は、用紙Pの斜め送りを矯正しつつ、記録部9が実行するインク吐出動作とのタイミングを計り、第1搬送ユニット5(特に後述する第1搬送ベルト8)に向かって用紙Pを送り出す。つまり、レジストローラー対13は、第1搬送ベルト8上に用紙Pを供給する記録媒体供給部を構成している。
【0014】
レジストローラー対13によって第1搬送ユニット5に送り出された用紙Pは、第1搬送ベルト8によって記録部9(特に後述する記録ヘッド17a~17c)との対向位置に搬送される。記録部9から用紙Pにインクが吐出されることにより、用紙P上に画像が記録される。このとき、記録部9におけるインクの吐出は、プリンター100の内部の制御部110によって制御される。制御部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)によって構成され、必要な演算を行う演算部および時間を計時する計時部としての機能も有する。
【0015】
用紙搬送方向において、第1搬送ユニット5の下流側(
図1の左側)には、第2搬送ユニット12が配置されている。記録部9によって画像が記録された用紙Pは、第2搬送ユニット12へ送られる。用紙Pの表面に吐出されたインクは、第2搬送ユニット12を通過する間に乾燥される。
【0016】
用紙搬送方向において、第2搬送ユニット12の下流側であってプリンター本体1の左側面近傍には、デカーラー部14が設けられている。第2搬送ユニット12によってインクが乾燥された用紙Pは、デカーラー部14へ送られて、用紙Pに生じたカールが矯正される。
【0017】
用紙搬送方向において、デカーラー部14の下流側(
図1の上方)には、第2用紙搬送路4bが設けられている。デカーラー部14を通過した用紙Pは、両面記録を行わない場合、第2用紙搬送路4bを通り、プリンター100の左側面外部に設けられた用紙排出トレイ15に排出される。
【0018】
プリンター本体1の上部であって記録部9および第2搬送ユニット12の上方には、両面記録を行うための反転搬送路16が設けられている。両面記録を行う場合、用紙Pの一方の面(第1面)への記録が終了して第2搬送ユニット12およびデカーラー部14を通過した用紙Pは、第2用紙搬送路4bを通って反転搬送路16へ送られる。
【0019】
反転搬送路16へ送られた用紙Pは、続いて用紙Pの他方の面(第2面)への記録のために搬送方向が切り替えられる。そして、用紙Pは、プリンター本体1の上部を通過して右側に向かって送られ、レジストローラー対13を経て第2面を上向きにした状態で再び第1搬送ユニット5へ送られる。第1搬送ユニット5では、記録部9との対向位置に用紙Pが搬送され、記録部9からのインク吐出によって第2面に画像が記録される。両面記録後の用紙Pは、第2搬送ユニット12、デカーラー部14、第2用紙搬送路4bを順に介して用紙排出トレイ15に排出される。
【0020】
また、第2搬送ユニット12の下方には、メンテナンスユニット19およびキャップユニット20が配置されている。メンテナンスユニット19は、パージを実行する際に記録部9の下方に水平移動し、記録ヘッドのインク吐出口から押出されたインクを拭き取り、拭き取られたインクを回収する。なお、パージとは、インク吐出口内の増粘インク、異物、気泡を排出するために、記録ヘッドのインク吐出口からインクを強制的に押し出す動作を言う。キャップユニット20は、記録ヘッドのインク吐出面をキャッピングする際に記録部9の下方に水平移動し、さらに上方に移動して記録ヘッドの下面に装着される。
【0021】
図2は、記録部9の平面図である。記録部9は、ヘッドハウジング10と、ラインヘッド11Y、11M、11C、11Kとを備えている。ラインヘッド11Y~11Kは、駆動ローラー6a、従動ローラー6b、テンションローラー7aおよび7bを含む複数のローラーに張架された無端状の第1搬送ベルト8の搬送面に対して、所定の間隔(例えば1mm)が形成される高さでヘッドハウジング10に保持される。駆動ローラー6aは、第1搬送ベルト8を用紙Pの搬送方向(矢印A方向)に走行させる。この駆動ローラー6aの駆動は、制御部110によって制御される。なお、上記複数のローラーは、第1搬送ベルト8の走行方向に沿って、テンションローラー7a、テンションローラー7b、従動ローラー6b、および駆動ローラー6aの順に配置されている。
【0022】
ラインヘッド11Y~11Kは、複数(ここでは3個)の記録ヘッド17a~17cをそれぞれ有している。記録ヘッド17a~17cは、用紙搬送方向(矢印A方向)と直交する用紙幅方向(矢印BB’方向)に沿って千鳥状に配列されている。記録ヘッド17a~17cは、複数のインク吐出口18(ノズル)を有している。各インク吐出口18は、記録ヘッドの幅方向、つまり、用紙幅方向(矢印BB’方向)に等間隔で並んで配置されている。ラインヘッド11Y~11Kからは、記録ヘッド17a~17cのインク吐出口18を介して、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインクが、第1搬送ベルト8で搬送される用紙Pに向かってそれぞれ吐出される。
【0023】
図3は、給紙カセット2から第1搬送ユニット5を介して第2搬送ユニット12に至る用紙Pの搬送経路の周辺の構成を模式的に示している。また、
図4は、プリンター100の主要部のハードウェア構成を示すブロック図である。プリンター100は、上記の構成に加えて、レジストセンサー21と、第1用紙センサー22と、第2用紙センサー23と、ベルトセンサー24および25と、をさらに備えている。
【0024】
レジストセンサー21は、用紙カセット2から給紙装置3によって搬送され、レジストローラー対13に送られる用紙Pを検知する。このレジストセンサー21は、レジストローラー対13よりも用紙Pの供給方向の上流側に位置している。制御部110は、レジストセンサー21での検知結果に基づき、レジストローラー対13の回転開始タイミングを制御することができる。例えば、制御部110は、レジストセンサー21での検知結果に基づき、レジストローラー対13によるスキュー(斜行)補正後の用紙Pの第1搬送ベルト8への供給タイミングを制御することができる。
【0025】
第1用紙センサー22は、レジストローラー対13から第1搬送ベルト8に送られる用紙Pの幅方向の位置を検知する。制御部110は、第1用紙センサー22での検知結果に基づき、ラインヘッド11Y~11Kの記録ヘッド17a~17cの各インク吐出口18のうち、用紙Pの幅に対応するインク吐出口18からインクを吐出させて用紙Pに画像を記録することができる。
【0026】
第2用紙センサー23は、レジストローラー対13によって第1搬送ベルト8に供給された用紙Pの通過を検知する。つまり、第2用紙センサー23は、第1搬送ベルト8で搬送される用紙Pの搬送方向の位置を検知する。第2用紙センサー23は、用紙搬送方向において記録部9の上流側で第1用紙センサー22の下流側に位置している。制御部110は、第2用紙センサー23での検知結果に基づき、第1搬送ベルト8によってラインヘッド11Y~11K(記録ヘッド17a~17c)と対向する位置に到達する用紙Pに対するインクの吐出タイミングを制御することができる。
【0027】
ベルトセンサー24および25は、第1搬送ベルト8に設けられた基準特定部Mref(
図5参照)を検知する基準検知センサーである。基準特定部Mrefは、第1搬送ベルト8の1周の基準を示す部分であり、後述するように隣り合う2つの開口部群82の組み合わせ、または少なくともいずれかの開口部群82に対応する基準マークで構成される。
【0028】
ベルトセンサー24は、用紙搬送方向(第1搬送ベルト8の走行方向)において記録部9の下流側に位置している。ベルトセンサー25は、第1搬送ベルト8を張架する従動ローラー6bよりも用紙搬送方向の上流側に位置している。本実施形態では、ベルトセンサー25は、従動ローラー6bとテンションローラー7bとの間に位置しているが、テンションローラー7aとローラー7bとの間に位置していてもよい。従動ローラー6bは、記録部9に対して第1搬送ベルト8の走行方向の上流側に位置している。なお、ベルトセンサー24は、第2用紙センサー23と同等の機能を兼ね備えている。制御部110は、ベルトセンサー24または25での検知結果に基づき、第1搬送ベルト8に対して所定のタイミングで用紙Pを供給するように、レジストローラー対13を制御することができる。
【0029】
また、用紙の位置を複数のセンサー(第2用紙センサー23、ベルトセンサー24)で検知し、第1搬送ベルト8の基準特定部Mrefを複数のセンサー(ベルトセンサー24および25)で検知することにより、検知した位置の誤差修正や異常の検知も可能となる。
【0030】
上述した第1用紙センサー22、第2用紙センサー23、ベルトセンサー24および25は、透過型または反射型の光学センサー、CISセンサー(Contact Image Sensor、密着型イメージセンサー)などで構成されてもよい。
【0031】
その他、プリンター100は、第1搬送ベルト8の蛇行を検知する蛇行検知センサーを備え、その検知結果に基づいて第1搬送ベルト8の蛇行を修正する構成であってもよい。
【0032】
また、プリンター100は、操作パネル27と、記憶部28と、通信部29と、をさらに備えている。
【0033】
操作パネル27は、ユーザーによる各種の設定入力を受け付けるための操作部である。例えば、ユーザーは、操作パネル27を操作して、給紙カセット2にセットする用紙Pのサイズ、つまり、第1搬送ベルト8によって搬送する用紙Pのサイズの情報を入力することができる。また、ユーザーは、操作パネル27を操作して、印刷ジョブの開始を指示することもできる。
【0034】
記憶部28は、制御部110の動作プログラムを記憶するとともに、各種の情報を記憶するメモリであり、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどを含んで構成されている。操作パネル27によって設定された情報(例えば用紙Pのサイズの情報)は、記憶部28に記憶される。また、記憶部28には、過去の印刷ジョブで使用した用紙Pの履歴情報(例えば過去に使用した用紙Pのサイズの情報)なども記憶される。
【0035】
通信部29は、外部(例えばパーソナルコンピュータ(PC))との間で情報を送受信するための通信インターフェースである。例えば、ユーザーがPCを操作し、プリンター100に対して画像データとともに印刷コマンドを送信すると、上記の画像データおよび印刷コマンドが通信部29を介してプリンター100に入力される。プリンター100では、制御部110が上記画像データに基づいて記録ヘッド17a~17cを制御してインクを吐出させることにより、用紙Pに画像を記録することができる。
【0036】
また、
図3に示すように、プリンター100は、第1搬送ベルト8の内周面側に、インク受け部31Y、31M、31C、31Kを有している。インク受け部31Y~31Kは、フラッシングを記録ヘッド17a~17cに実行させたときに、記録ヘッド17a~17cから吐出されて第1搬送ベルト8の開口部80を通過したインクを受けて回収する。したがって、インク受け部31Y~31Kは、ラインヘッド11Y~11Kの記録ヘッド17a~17cと、第1搬送ベルト8を介して対向する位置に設けられている。なお、インク受け部31Y~31Kで回収されたインクは、例えば廃インクタンクに送られて廃棄されるが、廃棄せずに再利用されてもよい。
【0037】
ここで、フラッシングとは、インクの乾燥によるインク吐出口18の目詰まりを低減または予防する目的で、用紙Pへの画像形成(画像記録)に寄与するタイミングとは異なるタイミングでインク吐出口18からインクを吐出することを言う。記録ヘッド17a~17cにおけるフラッシングの実行は、制御部110によって制御される。
【0038】
上述した第2搬送ユニット12は、第2搬送ベルト12aと、乾燥器12bとを有して構成されている。第2搬送ベルト12aは、2つの駆動ローラー12cおよび従動ローラー12dによって張架されている。第1搬送ユニット5によって搬送され、記録部9によるインク吐出によって画像が記録された用紙Pは、第2搬送ベルト12aによって搬送され、搬送中に乾燥器12bによって乾燥されて上述したデカーラー部14に搬送される。
【0039】
〔2.第1搬送ベルトの詳細〕
(2-1.第1搬送ベルトの一構成例)
次に、第1搬送ユニット5の第1搬送ベルト8の詳細について説明する。
図5は、第1搬送ベルト8の一構成例を示す平面図である。本実施形態では、用紙Pを負圧吸引によって第1搬送ベルト8に吸着させて搬送する負圧吸引方式を採用している。このため、第1搬送ベルト8には、負圧吸引によって発生する吸引風を通過させる吸引孔8aが無数に設けられている。
【0040】
また、第1搬送ベルト8には、開口部群82も設けられている。開口部群82は、フラッシングのときに記録ヘッド17a~17cの各ノズル(インク吐出口18)から吐出されるインクを通過させる開口部80の集合である。1つの開口部80の開口面積は、1つの吸引孔8aの開口面積よりも大きい。第1搬送ベルト8は、開口部群82を用紙Pの搬送方向(A方向)に1周期で複数有しており、本実施形態は6個有している。なお、1周期とは、第1搬送ベルト8が1周する期間を指す。また、各開口部群82を互いに区別するときは、6個の開口部群82を、A方向の下流側から、開口部群82A~82Fと称する。上記の吸引孔8aは、A方向において隣り合う開口部群82と開口部群82との間に位置している。すなわち、第1搬送ベルト8において、開口部群82と重複する領域(開口部80の周囲)には、吸引孔8aは形成されていない。
【0041】
開口部群82は、第1搬送ベルト8の1周期において、A方向に不定期に位置する。つまり、A方向において、隣り合う開口部群82と開口部群82との間隔は一定ではなく、異なっている。このとき、A方向に隣り合う2つの開口部群82の最大間隔(例えば
図5の開口部群82Aと開口部群82Bとの間隔)は、印字可能な最小サイズ(例えばA4サイズ(横置き))の用紙Pが第1搬送ベルト8上に載置されたときの上記用紙PのA方向の長さよりも長い。
【0042】
上記の開口部群82は、開口部列81を有している。開口部列81は、A方向と直交するベルト幅方向(用紙幅方向、BB’方向)に複数の開口部80を並べて構成されている。1つの開口部群82は、開口部列81をA方向に少なくとも1列有しており、本実施形態では、開口部列81を2列有している。なお、2列の開口部列81を互いに区別するときは、一方を開口部列81aとし、他方を開口部列81bとする。
【0043】
1つの開口部群82において、いずれかの開口部列81(例えば開口部列81a)の開口部80は、他の開口部列81(例えば開口部列81b)の開口部80とBB’方向にずれて位置し、かつ、A方向に見て他の開口部列81(例えば開口部列81b)の開口部80の一部と重畳するように位置する。また、各開口部列81において、複数の開口部80は、BB’方向に等間隔で位置する。
【0044】
上記のように複数の開口部列81をA方向に並べて1つの開口部群82を形成していることにより、開口部群82のBB’方向の幅は、記録ヘッド17a~17cのBB’方向の幅よりも大きくなっている。したがって、開口部群82は、記録ヘッド17a~17cのBB’方向のインク吐出領域を全てカバーしており、フラッシング時に記録ヘッド17a~17cの全てのインク吐出口18から吐出されるインクは、開口部群82のいずれかの開口部80を通過する。
【0045】
以上のことから、第1搬送ベルト8は、フラッシングのときに記録ヘッド17a~17cが吐出するインクを通過させる開口部80を含む開口部群82を、搬送方向であるA方向に異なる間隔で複数箇所に有していると言える。
【0046】
(2-2.フラッシングのときに用いる開口部群のパターンについて)
本実施形態では、上記の第1搬送ベルト8を用いて用紙Pを搬送しながら、外部(例えばPC)から送信される画像データに基づいて、制御部110が記録ヘッド17a~17cを制御することにより、用紙P上に画像を記録する。その際に、搬送される用紙Pと用紙Pとの間で記録ヘッド17a~17cにフラッシング(紙間フラッシング)を実行させることにより、インク吐出口18の目詰まりを低減または予防するようにしている。
【0047】
ここで、本実施形態では、制御部110は、第1搬送ベルト8の1周期において、フラッシングのときに用いる複数の開口部群82のA方向のパターン(組み合わせ)を、用いる用紙Pのサイズに応じて決定する。なお、用いる用紙Pのサイズは、制御部110が、記憶部28に記憶された情報(操作パネル27aによって入力された用紙Pのサイズ情報)に基づいて認識することができる。なお、開口部群82のパターンは、後述する用紙Pの載置パターンと文言上区別される。
【0048】
図6~
図9は、サイズの異なる用紙Pごとの開口部群82のパターンの一例をそれぞれ示している。例えば、用いる用紙PがA4サイズ(横置き)またはレターサイズ(横置き)である場合、制御部110は、
図6で示す開口部群82のパターンを選択する。つまり、制御部110は、
図5で示した6つの開口部群82の中から、フラッシングに用いる開口部群82として、開口部群82A、82C、82Fを選択する。用いる用紙PがA4サイズ(縦置き)またはレターサイズ(縦置き)である場合、制御部110は、
図7で示すように、6つの開口部群82の中から、フラッシングに用いる開口部群82として、開口部群82A、82Dを選択する。用いる用紙PがA3サイズ、B4サイズまたはリーガルサイズ(いずれも縦置き)である場合、制御部110は、
図8で示すように、6つの開口部群82の中から、フラッシングに用いる開口部群82として、開口部群82A、82B、82Eを選択する。用いる用紙Pが13インチ×19.2インチのサイズである場合、制御部110は、
図9で示すように、6つの開口部群82の中から、フラッシングに用いる開口部群82として、開口部群82A、82Dを選択する。なお、各図面では、上記パターンに属する開口部群82の開口部80を、便宜的に黒塗りで示す。
【0049】
そして、制御部110は、第1搬送ベルト8の走行により、決定したパターンで位置する開口部群82が記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングで、記録ヘッド17a~17cにフラッシングを実行させる。ここで、第1搬送ベルト8の走行速度(用紙搬送速度)、開口部群82A~82Eの各間隔、第1搬送ベルト8に対する記録ヘッド17a~17cおよびベルトセンサー24または25の位置関係は、全て既知である。このため、例えば第1搬送ベルト8において最もA方向の間隔が狭い開口部群82Aおよび開口部群82Bを、ベルト1周の基準を示す基準特定部Mrefと考えた場合、第1搬送ベルト8の走行によって基準特定部Mrefが通過したことをベルトセンサー24または25が検知すると、その検知時点から何秒後に開口部群82A~82Eのそれぞれが記録ヘッド17a~17cとの対向位置を通過するかがわかる。したがって、制御部110は、ベルトセンサー24または25の検知結果に基づき、上記で決定したパターンで位置する開口部群82が記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングで、記録ヘッド17a~17cにフラッシングを実行させることができる。
【0050】
(2-3.用紙の載置パターンについて)
制御部110は、上記で決定したパターンで位置する開口部群82とはA方向にずれるように用紙Pの第1搬送ベルト8への供給を制御する。つまり、制御部110は、第1搬送ベルト8上で、上記パターンでA方向に並ぶ複数の開口部群82の間に、レジストローラー対13によって用紙Pを供給させる。
【0051】
例えば、用いる用紙PがA4サイズ(横置き)またはレターサイズ(横置き)である場合、制御部110は、
図6で示すように、第1搬送ベルト8上で、開口部群82Aと開口部群82Cとの間に2枚の用紙Pが配置され、開口部群82Cと開口部群82Fとの間に2枚の用紙Pが配置され、開口部群82Fと次の周期の開口部群82Aとの間に1枚の用紙Pが配置されるように、レジストローラー対13を制御して所定の供給タイミングで用紙Pを第1搬送ベルト8に供給させる。このとき、制御部110は、第1搬送ベルト8上で、上記パターンで位置する開口部群82A、82C、82FからA方向(上流側、下流側の両方向を含む)に所定距離以上離れた位置に各用紙Pが配置されるように、レジストローラー対13を制御して用紙Pを第1搬送ベルト8に供給させる。なお、上記所定距離は、ここでは一例として10mmとしている。
【0052】
ここで、レジストローラー対13による用紙Pの供給タイミングは、制御部110がベルトセンサー24または25の検知結果に基づいて決定することができる。例えば、第1搬送ベルト8の走行によって基準特定部Mrefが通過したことをベルトセンサー25が検知すると、制御部110はその検知時点から何秒後にレジストローラー対13によって用紙Pを第1搬送ベルト8に供給すれば、
図6で示した各位置に用紙Pを配置できるかを判断することができる。したがって、制御部110は、ベルトセンサー25での検知結果に基づいて用紙Pの供給タイミングを決定し、決定した供給タイミングで用紙Pが供給されるようにレジストローラー対13を制御する。これにより、第1搬送ベルト8上の
図6で示した各位置に、およそ等間隔で用紙Pを配置することができる。
図6の例では、第1搬送ベルト8の1周期で用紙Pを5枚搬送することができ、用紙Pの1分あたりの印字枚数(生産性)として、150ipm(images per minute)を実現することができる。
【0053】
用いる用紙PがA4サイズ(縦置き)またはレターサイズ(縦置き)である場合、制御部110は、
図7で示すように、第1搬送ベルト8上で、開口部群82Aと開口部群82Dとの間に2枚の用紙Pが配置され、開口部群82Dと次の周期の開口部群82Aとの間に2枚の用紙Pが配置されるように、レジストローラー対13を制御して所定の供給タイミングで用紙Pを第1搬送ベルト8に供給させる。
図7の例では、第1搬送ベルト8の1周期で用紙Pを4枚搬送することができ、120ipmの生産性を実現することができる。
【0054】
用いる用紙PがA3サイズ、B4サイズまたはリーガルサイズ(いずれも縦置き)である場合、制御部110は、
図8で示すように、第1搬送ベルト8上で、開口部群82Aと開口部群82Bとの間に1枚の用紙Pが配置され、開口部群82Bと開口部群82Eとの間に1枚の用紙Pが配置され、開口部群82Eと次の周期の開口部群82Aとの間に1枚の用紙Pが配置されるように、レジストローラー対13を制御して所定の供給タイミングで用紙Pを第1搬送ベルト8に供給させる。
図8の例では、第1搬送ベルト8の1周期で用紙Pを3枚搬送することができ、90ipmの生産性を実現することができる。
【0055】
用いる用紙Pが13インチ×19.2インチのサイズである場合、制御部110は、
図9で示すように、第1搬送ベルト8上で、開口部群82Aと開口部群82Dとの間に1枚の用紙Pが配置され、開口部群82Dと次の周期の開口部群82Aとの間に1枚の用紙Pが配置されるように、レジストローラー対13を制御して所定の供給タイミングで用紙Pを第1搬送ベルト8に供給させる。
図9の例では、第1搬送ベルト8の1周期で用紙Pを2枚搬送することができ、60ipmの生産性を実現することができる。
【0056】
すなわち、
図6~
図9で示したように、フラッシングに用いる開口部群82のパターンは、用いる用紙Pのサイズに応じて決まり、それによって、開口部群82とA方向にずれて位置する用紙Pの載置パターンが決まる。このことから、第1搬送ベルト8上に載置される用紙Pの載置パターンは、用いる用紙Pのサイズに応じて決まると言える。
【0057】
制御部110は、第1搬送ベルト8の走行によって各用紙Pが記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングで、記録ヘッド17a~17cからインクを吐出させることにより、各用紙Pに対して画像を形成することができる。なお、各用紙Pが記録ヘッド17a~17cと対向するタイミングは、第2用紙センサー23(
図4参照)による用紙Pの検知結果に基づいて決定される。
【0058】
(2-4.印刷ジョブ終了後の第1搬送ベルトの停止制御について)
図6~
図9で示したように第1搬送ベルト8上に載置された用紙Pに対する画像形成(印刷ジョブ)が終了すると、制御部110は駆動ローラー6aを制御して第1搬送ベルト8を停止させる。
図10は、印刷ジョブ終了後の第1搬送ベルト8の停止状態における基準特定部Mrefの位置(便宜的に黒丸で示す)の一例を模式的に示している。
【0059】
本実施形態では、制御部110は、印刷ジョブの終了後、第1搬送ベルト8の基準特定部Mrefが、ベルトセンサー25の検知位置Qから第1搬送ベルト8の搬送方向(A方向)の上流側に特定の距離D以上遡った位置R
1で停止するように、駆動ローラー6aを制御して第1搬送ベルトを停止させている。なお、同図において、ベルトセンサー25の検知位置Qから第1搬送ベルト8のA方向の上流側に特定の距離Dだけ遡った位置をR
0とすると、位置R
1は、位置R
0と同じ位置であってもよいが(
図13参照)、この点については後述する。
【0060】
ここで、上記した特定の距離Dとは、駆動ローラー6aの駆動によって停止状態の第1搬送ベルト8が走行を開始してから所定の搬送速度V0(mm/sec)に到達するまでに第1搬送ベルト8が走行する距離(mm)である。なお、上記所定の搬送速度V0としては、例えば数百mm/secを考えることができる。また、制御部110は、記録ヘッド17a~17c(特にラインヘッド11Y)による印刷ジョブが終了し、その印刷ジョブが行われた用紙Pの下流側への搬送(例えば第2搬送ユニット12への搬送)が終了してから何秒後に駆動ローラー6aの駆動を停止させれば、基準特定部Mrefが位置R1に到達するかを事前に認識しているとする。
【0061】
なお、以下での説明の便宜上、時間的に前後して行われる2つの印刷ジョブのうち、先に行われる印刷ジョブを「前ジョブ」とも称し、後に行われる印刷ジョブを「後ジョブ」とも称する。
【0062】
前ジョブが終了し、第1搬送ベルト8が
図10のように停止している状態において、例えば操作パネル27の操作や外部のPCからのコマンド受信により、後ジョブの開始が指示されると、制御部110は、駆動ローラー6aを制御することにより、第1搬送ベルト8の走行を開始させることができる。このとき、第1搬送ベルト8は、基準特定部Mrefがベルトセンサー25の検知位置Qから上流側に、特定の距離D以上遡った位置R
1で停止した状態から走行を開始する。このため、第1搬送ベルト8が走行を開始すると、
図11に示すように、基準特定部Mrefが検知位置Qに到達する前に、つまり、基準特定部Mrefが位置R
1から距離Dだけ移動した時点で、第1搬送ベルト8が所定の搬送速度V
0に到達する。したがって、第1搬送ベルト8の走行によって基準特定部Mrefが検知位置Qに到達したときには、既に、第1搬送ベルト8が所定の搬送速度V
0に到達している。
【0063】
これにより、制御部110は、ベルトセンサー25による基準特定部Mrefの検知結果に基づいて、レジストローラー対13の制御を速やかに開始することができる。そして、第1搬送ベルト8上で基準特定部Mrefに対して
図6~
図9で示した所定の位置関係となる位置に用紙Pが載置されるように、レジストローラー対13から所定のタイミングで第1搬送ベルト8に用紙Pを供給させることができる。
【0064】
ここで、例えば、基準特定部Mrefが検知位置Qに到達したときに、第1搬送ベルト8が所定の搬送速度V
0(=レジストローラー対13から供給される用紙Pの供給速度)に到達していない場合、第1搬送ベルト8の搬送速度と用紙Pの上記供給速度との間にズレが生じる。このため、用紙Pを
図6~
図9で示した第1搬送ベルト8上の所定の位置に載置したい場合でも、そのような載置が困難となる。したがって、この場合は、駆動ローラー6aの駆動によって第1搬送ベルト8が所定の搬送速度V
0に到達するまで、第1搬送ベルト8をさらに走行(周回)させることが必要となる。このように第1搬送ベルト8をさらに周回させると、その間、レジストローラー対13による第1搬送ベルト8への用紙Pの供給は停止されるため、レジストローラー対13から第1搬送ベルト8への用紙Pの供給が遅れることになる。
【0065】
本実施形態では、上述のように、後ジョブの開始が指示されたときに、制御部110は、ベルトセンサー25による基準特定部Mrefの検知結果に基づいて、レジストローラー対13の制御を速やかに開始して、第1搬送ベルト8に用紙Pを供給させることができる。したがって、その後、第1搬送ベルト8上に載置された用紙Pに対して記録ヘッド17a~17cからインクを吐出させて、画像形成を速やかに行うことが可能となる。その結果、第1搬送ベルト8が検知位置Qで所定の搬送速度V0に到達していない場合に第1搬送ベルト8をさらに走行させる制御に比べて、後ジョブを早期に完了させることが可能となる。
【0066】
なお、検知位置Qから位置R1までの第1搬送ベルト8の走行軌道に沿った距離が長すぎると、後ジョブの開始指示に従って、停止状態の第1搬送ベルト8が走行を開始したときに、基準特定部Mrefが検知位置Qよりもかなり上流側の位置にきた時点で、第1搬送ベルト8が所定の搬送速度V0に到達する。この場合、第1搬送ベルト8が所定の搬送速度V0に到達した時点から、基準特定部Mrefが検知位置Qに到達するまでに時間が空く。このことは、ベルトセンサー25による基準特定部Mrefの検知の遅れを招き、基準特定部Mrefの検知結果に基づくレジストローラー対13の制御の開始が遅れる要因ともなり得る。このような点を考慮すると、検知位置Qから位置R1までの第1搬送ベルト8の走行軌道に沿った距離は、第1搬送ベルト8の周長以下であることが望ましく、第1搬送ベルト8の周長の半分以下であることがより望ましい。
【0067】
また、第1搬送ベルト8がフラッシング用の開口部群82を複数有する構成において、基準特定部Mrefは、搬送方向に隣り合う2つの開口部群82Bおよび82Cの組み合わせで構成されている。この場合、第1搬送ベルト8が有する開口部群82を有効利用して基準特定部Mrefを実現することができる。また、開口部群82とは別個独立して基準特定部を第1搬送ベルト8に設ける構成に比べて、第1搬送ベルト8の構成が簡素化される。なお、基準特定部Mrefを構成する開口部群82は、搬送方向に隣り合う2つの開口部群82のいずれかの組み合わせで構成されればよく、上記した開口部群82Bおよび82Cの組み合わせには限定されない。
【0068】
図12は、前ジョブ終了後の第1搬送ベルト8の停止状態における基準特定部Mrefの位置の他の例を模式的に示している。制御部110は、異なる印刷ジョブの終了ごとに、基準特定部MrefがA方向の上流側または下流側にずれて位置するように、駆動ローラー6aを制御して第1搬送ベルト8を停止させてもよい。例えば、制御部110は、第1の印刷ジョブが終了した後、基準特定部Mrefが位置R
1で停止するように第1搬送ベルト8を停止させ(
図10参照)、次の第2の印刷ジョブが終了した後は、基準特定部Mrefが位置R
1よりもA方向上流側の位置R
2で停止するように第1搬送ベルト8を停止させてもよい(
図12参照)。また、以降の印刷ジョブについては、その終了ごとに、基準特定部Mrefの停止位置を、位置R
1と位置R
2とで交互に切り替えてもよい。
【0069】
例えば、第1搬送ベルト8を長時間同じ位置(例えば位置R1)で停止させると、第1搬送ベルト8における駆動ローラー6a等の周面との接触部では、上記周面に沿って曲がった状態が長時間維持される。このため、第1搬送ベルト8の上記接触部において「曲げ」のクセが付く。このような局所的なクセ付きは、第1搬送ベルト8のスムーズな走行を妨げる要因となり得る。
【0070】
上記のように、制御部110が、異なる印刷ジョブの終了ごとに、基準特定部Mrefの停止位置が上流側または下流側にずれるように、駆動ローラー6aを制御して第1搬送ベルト8を停止させることにより、第1搬送ベルト8において局所的な「曲げ」のクセが付くことを極力低減することができる。したがって、クセ付きによる第1搬送ベルト8の走行性能の低下を回避することができる。
【0071】
なお、上記の例では、異なる印刷ジョブの終了ごとに、基準特定部Mrefの停止位置を位置R1と位置R2とで切り替えているが、位置R0と位置R1とで切り替えてもよく、位置R0と位置R2とで切り替えてもよい。また、異なる印刷ジョブの終了ごとに、基準特定部Mrefの停止位置を、位置R1、位置R2、位置R3の3段階で切り替えてもよい。
【0072】
なお、基準特定部Mrefの停止位置を位置R0から上流側にずらしさえすれば、後ジョブの開始が指示されたときに、基準特定部Mrefが検知位置Qに到達した時点で第1搬送ベルト8は既に所定の搬送速度V0に到達しているため、後ジョブの開始指示から実際に印刷を開始できるようになるまでの時間の増加を少なくすることができる。
【0073】
なお、基準特定部Mrefの停止位置をずらすのは、1つの印刷ジョブが終わった後でなくてもよい。例えば、所定回数の印刷ジョブが終わった後や、所定時間が経過した後であっても構わない。
【0074】
図13は、前ジョブ終了後の第1搬送ベルト8の停止状態における基準特定部Mrefの位置のさらに他の例を模式的に示している。同図に示すように、制御部110は、前ジョブの終了後、基準特定部Mrefが検知位置Qから上流側に特定の距離Dだけ遡った位置R
0で常に(どの印刷ジョブが終了しても)停止するように、駆動ローラー6aを制御して第1搬送ベルト8を停止させてもよい。
【0075】
この場合、後ジョブの開始が指示されると、制御部110は、駆動ローラー6aを制御して、停止していた第1搬送ベルト8の走行を開始させる。このとき、基準特定部Mrefは上記の位置R
0から移動を開始するため、
図14に示すように、基準特定部Mrefが検知位置Qに到達した時点で(基準特定部Mrefが位置R
0から距離Dだけ移動した時点で)、第1搬送ベルト8が所定の搬送速度V
0に到達する。これにより、第1搬送ベルト8の走行開始から最短時間で、ベルトセンサー25が基準特定部Mrefを検知し、その検知結果に基づいて、制御部110がレジストローラー対13の制御を直ちに開始して、用紙Pを第1搬送ベルト8に速やかに供給させることができる。したがって、例えば、前ジョブの終了後、検知位置Qから上流側に距離Dよりも長い位置R
1に基準特定部Mrefを停止させる上述の制御に比べて、後ジョブをより早期に完了させることが可能となる。
【0076】
(2-5.第1搬送ベルトの他の構成例)
図15は、第1搬送ベルト8の他の構成を模式的に示す平面図である。第1搬送ベルト8は、
図5で示した開口部群82に加えて、基準特定部としての基準マークM1を有していてもよい。基準マークM1は、第1搬送ベルト8のベルト幅方向(BB’方向)の一端部側に、開口部群82Aと対応して位置している。つまり、基準マークM1は、第1搬送ベルト8において、複数の開口部群82のうちの特定の開口部群82Aと所定の位置関係で位置している。なお、上記の所定の位置関係とは、例えば、基準マークM1が、開口部群82Aとベルト幅方向に並ぶ位置からA方向の下流側に所定距離だけずれて位置する関係を指すが、開口部群82Aとベルト幅方向に並ぶ位置関係であっても勿論構わない。
【0077】
基準マークM1は、平面視で(A方向およびBB’方向を含む面に垂直な方向から見て)、例えば四角形の形状で形成されているが、この形状に限定されるわけではなく、他の形状(例えば三角形)で形成されてもよい。このような基準マークM1は、例えば孔で構成されているが、反射部材で構成されてもよい。上記の反射部材は、第1搬送ベルト8とは表面反射率が異なるシールや塗料を用いて構成することができる。
【0078】
本実施形態では、
図6~
図9で示したように、用紙Pがサイズに応じて決まる載置パターンで第1搬送ベルト8上に載置されるように、レジストローラー対13によって第1搬送ベルト8に順に供給される。このとき、開口部群82Aは、複数の開口部群82の中で、A方向の上流側の直後(例えば距離が10~20mmの位置)に載置される用紙Pの種類(サイズ)が最も多い開口部群82である。つまり、A4サイズ(横置き)、レターサイズ(横置き)、A4サイズ(縦置き)、レターサイズ(縦置き)、A3サイズ(縦置き)、B4サイズ(縦置き)、リーガルサイズ(縦置き)、13インチ×19.2インチのサイズ、のどの用紙Pについても、第1搬送ベルト8上では特定の開口部群82Aに対してその上流側の直後に載置される。
【0079】
このように、第1搬送ベルト8において、基準マークM1が上記した特定の開口部群82Aと所定の位置関係にあることにより、用いる用紙Pのほとんどのサイズについて(上記の例では用紙Pの全てのサイズについて)、基準マークM1の検知結果に基づくレジストローラー対13の制御により、第1搬送ベルト8上で特定の開口部群82Aの上流側の直後に用紙Pを速やかに載置して後ジョブを行い、後ジョブを早期に完了させることができる。したがって、例えば印刷ジョブごとに異なるサイズの用紙Pを用いる場合でも、それぞれの印刷ジョブを早期に完了させることができ、用紙Pの異なるサイズにも容易に対応することが可能となる。
【0080】
また、どのサイズの用紙Pを用いる場合でも、実際に用紙Pが第1搬送ベルト8に供給されて載置されるのは、ベルトセンサー25が基準マークM1を検知した後、第1搬送ベルト8がさらに走行して、特定の開口部群82Aがレジストローラー対13から供給される用紙Pと合流する地点を過ぎてからである。したがって、そのような特定の開口部群82Aと所定の位置関係にある基準マークM1を検知することにより、基準マークM1の検知結果に基づいてレジストローラー対13を制御して、特定の開口部群82Aを基準とする用紙Pの連続した(次々の)載置が、どのサイズの用紙Pについてもしやすくなる。
【0081】
(2-6.第1搬送ベルトのさらに他の構成例)
図16は、第1搬送ベルト8のさらに他の構成を模式的に示す平面図である。第1搬送ベルト8は、
図5で示した開口部群82に加えて、基準特定部としての基準マークM2を有していてもよい。基準マークM2は、第1搬送ベルト8のベルト幅方向(BB’方向)の一端部側に、開口部群82Bと対応して位置している。つまり、基準マークM2は、第1搬送ベルト8において、複数の開口部群82のうちの特定の開口部群82Bと所定の位置関係で位置している。なお、上記の所定の位置関係とは、例えば、基準マークM2が、開口部群82Bとベルト幅方向に並ぶ位置からA方向の下流側に所定距離だけずれて位置する関係を指すが、開口部群82Bとベルト幅方向に並ぶ位置関係であっても勿論構わない。
【0082】
基準マークM2は、平面視で例えば四角形の形状で形成されているが、この形状に限定されるわけではなく、他の形状(例えば三角形)で形成されてもよい。このような基準マークM2は、上述した基準マークM1と同様に、孔または反射部材で構成される。
【0083】
例えば、A3サイズの用紙Pを使う頻度が高いと予めわかっているプリンター100では、
図8で示したA3サイズの用紙Pの載置パターンにおいて、用紙Pと重ならない(A方向にずれて位置する)開口部群82、つまり、フラッシングに用いる開口部群82A、82B、82Eのいずれかの位置を、後ジョブの開始指示があった後に速やかに検出できるほうが、後ジョブを早期に完了させる可能性が高いと言える(後ジョブもA3サイズが使用される可能性が高いため)。
【0084】
上記した基準マークM2は、第1搬送ベルト8において特定の開口部群82Bと所定の位置関係で位置する。そして、上記の特定の開口部群82Bは、予め設定された使用頻度の最も高い用紙Pのサイズ(上記の例ではA3サイズ)に応じた載置パターンで用紙Pを第1搬送ベルト8上に載置したときに、A方向の上流側の直後に用紙Pが位置する開口部群82のいずれかに相当する。この場合、制御部110は、後ジョブの開始が指示された後、ベルトセンサー25による基準マークM2の検知結果に基づいてレジストローラー対13を速やかに制御して、使用頻度の最も高いサイズの用紙Pを、第1搬送ベルト8上で特定の開口部群82の上流側の直後に速やかに載置することができる。これにより、使用頻度の高いサイズの用紙Pについては、後ジョブを速やかに行って早期に完了させることができ、その利便性を増大させることができる。
【0085】
なお、ここでは、A3サイズの用紙Pの使用頻度が最も高いとした場合に、載置パターンにおいて上記用紙Pと重ならない第1搬送ベルト8の開口部群82A、82B、82Eのうち、開口部群82Bを特定の開口部群として説明したが、残りの開口部群82Aまたは82Eを特定の開口部群とし、この特定の開口部群と所定の位置関係となるように基準マークを第1搬送ベルト8に設けてもよい。また、他のサイズの用紙Pの使用頻度が最も高い場合でも、上記と同様に、使用頻度の最も高い用紙Pの載置パターンにおいて、その用紙Pと重ならない第1搬送ベルト8の開口部群82のいずれかを特定の開口部群とし、上記特定の開口部群と所定の位置関係となるように基準マークを第1搬送ベルト8に設ければよい。
【0086】
(2-7.第1搬送ベルトのさらに他の構成例)
図17は、第1搬送ベルト8のさらに他の構成を模式的に示す平面図である。第1搬送ベルト8は、
図5で示した開口部群82に加えて、基準特定部としての基準マークM1~M6を有していてもよい。基準マークM1~M6は、第1搬送ベルト8のベルト幅方向(BB’方向)の一端部側に、開口部群82A~82Fとそれぞれ対応して位置している。つまり、基準マークM1~M6はそれぞれ、開口部群82A~82Fと所定の位置関係となるように、第1搬送ベルト8においてA方向の複数箇所に設けられている。なお、上記した所定の位置関係とは、例えば、基準マークM1~M6が、開口部群82A~82Fとベルト幅方向に並ぶ位置から下流側に所定距離だけずれて位置する関係を指すが、開口部群82A~82Fとベルト幅方向に並ぶ位置関係であっても勿論構わない。
【0087】
基準マークM1~M6は、平面視で、例えば、A方向の幅が互いに異なる四角形の形状でそれぞれ形成されている。これにより、ベルトセンサー25は、第1搬送ベルト8の走行に伴って、基準マークM1~M6を互いに区別して検知することができるとともに、対応する開口部群82A~82Fの位置(開口部群82A~82Fの通過)をそれぞれ区別して検知することができる。なお、基準マークM1~M6の形状は、ベルトセンサー25がそれらを互いに区別して検知できる形状であればよく、
図15で示した四角形の形状には限定されない。このような基準マークM1~M6は、上記と同様に、孔または反射部材で構成される。
【0088】
このように互いに区別される基準マークM1~M6を有する第1搬送ベルト8を用いる場合、制御部110は、前ジョブの終了後、複数の開口部群82A~82Fのうち、いずれかの基準マークに対応する開口部群82が、ベルトセンサー25の検知位置Qから第1搬送ベルト8のA方向の上流側に特定の距離D以上遡った位置(位置R1等)で停止するように、駆動ローラー6aを制御して第1搬送ベルトを停止させてもよい。この場合、後ジョブの開始が指示されたときに、後ジョブを早期に完了させる効果を、少なくともいずれかのサイズの用紙Pを用いた場合について必ず得ることができる。
【0089】
ここで、位置R1等で停止する上記いずれかの基準マークは、複数の開口部群82A~82Fのうち、用紙Pのサイズごとの各載置パターンの間で、A方向の上流側の直後に位置する用紙Pの種類(サイズ)が最も多い開口部群82Aに対応する基準マークM1であってもよい。
【0090】
この場合、後ジョブの開始指示後、停止していた第1搬送ベルト8が走行を開始し、基準マークM1が検知位置Qに到達した時点では、第1搬送ベルト8は所定の搬送速度V0に到達している。したがって、制御部110は、ベルトセンサー25による基準マークM1の検知結果に基づいてレジストローラー対13を速やかに制御して、ほとんどのサイズの用紙Pについて、第1搬送ベルト8上で特定の開口部群82Aの上流側の直後に用紙Pを速やかに載置して後ジョブを行い、後ジョブを早期に完了させることができる。したがって、上記した(2-5)の制御の場合と同様に、印刷ジョブごとに異なるサイズの用紙Pを用いる場合でも、それぞれのサイズの用紙Pについて印刷ジョブを早期に完了させることができ、用紙Pの異なるサイズにも容易に対応することが可能となる。
【0091】
また、位置R
1等で停止する上記いずれかの基準マークは、複数の開口部群82A~82Fのうち、使用頻度が最も高いとして予め設定されたサイズの用紙Pを、
図6~
図9の載置パターンに基づいて第1搬送ベルト8上に載置したときに、A方向の上流側の直後に用紙Pが位置する開口部群82のいずれかに対応する基準マークであってもよい。例えば、A3サイズの用紙Pの使用頻度が最も高いとして予め設定されている場合、制御部110は、
図8の載置パターンでA方向の上流側の直後に用紙Pが位置する開口部群82A、82B、82Eのいずれかに対応する基準マーク(基準マークM1、M2、M5のいずれか)が、位置R
1または位置R
0で停止するように、駆動ローラー6aを制御して第1搬送ベルト8を停止させる。
【0092】
例えば、前ジョブの終了後、基準マークM2が位置R0で停止するように、第1搬送ベルト8が停止しているとする。この状態で後ジョブの開始が指示されると、停止していた第1搬送ベルト8の走行が開始される。そして、基準マークM2が検知位置Qに到達した時点では、第1搬送ベルト8は所定の搬送速度V0に到達している。したがって、制御部110は、ベルトセンサー25による基準マークM2の検知結果に基づいてレジストローラー対13を速やかに制御して、使用頻度の最も高いA3サイズの用紙Pを、第1搬送ベルト8上で特定の開口部群82Bの上流側の直後に速やかに載置して後ジョブを行い、後ジョブを早期に完了させることができる。したがって、上記した(2-6)の制御の場合と同様に、使用頻度の高いサイズの用紙Pについては、後ジョブを速やかに行って早期に完了させることができ、その利便性を増大させることができる。
【0093】
また、位置R
1等で停止する上記いずれかの基準マークは、複数の開口部群82A~82Fのうち、過去の使用履歴に基づいて決定される使用頻度が最も高いサイズの用紙Pを、
図6~
図9の載置パターンに基づいて第1搬送ベルト8上に載置したときに、A方向の上流側の直後に用紙Pが位置する開口部群82のいずれかに対応する基準マークであってもよい。例えば、制御部110が、記憶部28に記憶された過去の使用履歴の情報に基づいて、A4サイズ(縦置き)の用紙Pの使用頻度が最も高いと判断したとする。この場合、制御部110は、
図7の載置パターンでA方向の上流側の直後に用紙Pが位置する開口部群82A、82Dのいずれかに対応する基準マーク(基準マークM1またはM4)が、位置R
1または位置R
0で停止するように、駆動ローラー6aを制御して第1搬送ベルト8を停止させる。
【0094】
例えば、前ジョブの終了後、基準マークM4が位置R0で停止するように、第1搬送ベルト8が停止しているとする。この状態で後ジョブの開始が指示されると、停止していた第1搬送ベルト8の走行が開始される。そして、基準マークM4が検知位置Qに到達した時点では、第1搬送ベルト8は所定の搬送速度V0に到達している。したがって、制御部110は、ベルトセンサー25による基準マークM4の検知結果に基づいてレジストローラー対13を速やかに制御して、使用頻度の最も高いA4サイズ(縦置き)の用紙Pを、第1搬送ベルト8上で特定の開口部群82Dの上流側の直後に速やかに載置して後ジョブを行い、後ジョブを早期に完了させることができる。したがって、上記した(2-6)の制御の場合と同様に、過去の使用履歴に基づいて使用頻度が高いと決定されるサイズの用紙Pについては、後ジョブを速やかに行って早期に完了させることができ、その利便性を増大させることができる。
【0095】
また、位置R
1等で停止する上記いずれかの基準マークは、複数の開口部群82A~82Fのうち、前ジョブが行われた用紙P、つまり、第1搬送ベルト8を停止させる直前に前ジョブが行われた用紙Pのサイズに応じた載置パターンに基づいて、用紙Pを第1搬送ベルト8上に載置するときに、A方向の上流側の直後に用紙Pが位置する開口部群82のいずれかに対応する基準マークであってもよい。例えば、前ジョブでA4サイズ(横置き)の用紙Pが用いられていた場合(使用履歴は記憶部28に記憶)、制御部110は、A4サイズ(横置き)に応じた
図6の載置パターンで、用紙Pを第1搬送ベルト8上に載置するときに、A方向の上流側の直後に用紙Pが位置する開口部群82A、82C、82Fのいずれか(例えば開口部群82A)に対応する基準マーク(例えば基準マークM1)が、位置R
1または位置R
0で停止するように、駆動ローラー6aを制御して第1搬送ベルト8を停止させる。
【0096】
前ジョブが終了して次に行われる後ジョブでは、前ジョブが行われた用紙Pと同じサイズの用紙Pが用いられることが経験上多い。したがって、後ジョブの開始が指示され、第1搬送ベルト8の走行によって基準マークM1が検知位置Qに到達すると、制御部110は、ベルトセンサー25による基準マークM1の検知結果に基づいてレジストローラー対13を速やかに制御することができる。これにより、用紙Pのサイズの変更が指定されない限り、前ジョブで用いた用紙Pと同じサイズの用紙Pを、第1搬送ベルト8上で特定の開口部群82Aの上流側の直後に速やかに載置して後ジョブを実行し、早期に完了させることができる。
【0097】
また、位置R
1等で停止する上記いずれかの基準マークは、後ジョブで使用する用紙Pのサイズが予め指定されている場合に、複数の開口部群82A~82Fのうち、指定された上記用紙Pのサイズに応じた載置パターンに基づいて、上記用紙Pを第1搬送ベルト8上に載置するときに、A方向の上流側の直後に上記用紙Pが位置する開口部群のいずれかに対応する基準マークであってもよい。例えば、後ジョブで使用する用紙PのサイズがA4サイズ(縦置き)であることが予め指定され、その情報が記憶部28に記憶されている場合、制御部110は、
図7で示したA4サイズ(縦置き)の載置パターンで用紙Pを第1搬送ベルト8上に載置するときに、A方向の上流側の直後に用紙Pが位置する開口部群82A、82Dのいずれか(例えば開口部群82D)に対応する基準マーク(例えば基準マークM4)が、位置R
1または位置R
0で停止するように、駆動ローラー6aを制御して第1搬送ベルト8を停止させる。
【0098】
後ジョブの開始が指示され、第1搬送ベルト8の走行によって基準マークM4が検知位置Qに到達すると、制御部110は、ベルトセンサー25による基準マークM4の検知結果に基づいてレジストローラー対13を速やかに制御する。これにより、後ジョブで予め指定されたサイズの用紙Pを、第1搬送ベルト8上で特定の開口部群82Dの上流側の直後に速やかに載置して後ジョブを実行し、早期に完了させることができる。
【0099】
(2-8.第1搬送ベルトの基準特定部のまとめ)
以上で説明した(2-5)~(2-7)で用いた第1搬送ベルト8は、以下のように記載することができる。すなわち、第1搬送ベルト8は、フラッシングのときに記録ヘッド17a~17cから吐出されるインクを通過させる開口部80を含む開口部群82A~82Fを、A方向に異なる間隔で複数箇所に有している。そして、第1搬送ベルト8は、ベルト1周の基準を示す基準特定部として、開口部群82A~82Fのいずれかと所定の位置関係で位置する少なくとも1個の基準マーク(基準マークM1~M6の少なくともいずれか)を有している。
【0100】
第1搬送ベルト8がフラッシング用の開口部群82A~82Fとは別に、開口部群82A~82Fの少なくともいずれかと所定の位置関係で位置する基準マークを有する構成であっても、後ジョブの開始指示に伴って、第1搬送ベルト8が停止状態から走行を開始し、ベルトセンサー25が基準特定部としての基準マーク(例えば基準マークM1)を検知し、制御部110がベルトセンサー25の検知結果に基づいてレジストローラー対13を速やかに制御することにより、用紙Pを第1搬送ベルト8に速やかに供給させることができる。これにより、指示された後ジョブを早期に完了させることができる。
【0101】
(3.その他)
以上では、用紙Pを負圧吸引によって第1搬送ベルト8に吸着させて搬送する場合について説明したが、第1搬送ベルト8を帯電させ、用紙Pを第1搬送ベルト8に静電吸着させて搬送するようにしてもよい(静電吸着方式)。この場合でも、第1搬送ベルト8に複数のマーク90を設ける構成を適用することは可能である。
【0102】
以上では、インクジェット記録装置として、4色のインクを用いてカラーの画像を記録するカラープリンターを用いた例について説明したが、ブラックのインクを用いてモノクロの画像を記録するモノクロプリンターを用いた場合でも、本実施形態の構成および制御を適用することは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、インクジェットプリンターなどのインクジェット記録装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0104】
6a 駆動ローラー
8 第1搬送ベルト
13 レジストローラー対(記録媒体供給部)
17a~17c 記録ヘッド
18 インク吐出口(ノズル)
25 ベルトセンサー(基準検知センサー)
80 開口部
82、82A~82F 開口部群
100 プリンター(インクジェット記録装置)
110 制御部
M1~M6 基準マーク(基準特定部)
Mref 基準特定部